説明

カロチノイドの生物変換方法

この発明は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素、特に好熱性細菌、特にThermus属エス・ピーのモノオキシゲナーゼ、を用いたカロチノイドの生物変換方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性、特に、好熱性細菌、特にサームス属エス・ピー(Thermus sp.)由来のモノオキシゲナーゼ、を有する酵素を用いたカロチノイドの生物変換方法に関する。本発明はまた、そのような方法に使用し得る微生物および発現構築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
ゼアキサンチンやクリプトキサンチンなどのキサントフィルは、含酸素カロチノイドであり、色素あるいはビタミンA誘導体の前駆体として、ヒトまたは動物の食餌に対する重要な添加物である。また、キサントフィルは健康増進効果をもつと考えられている。それらは免疫反応を強化し、それらの抗酸化特性のために癌予防効果を有し、栄養剤として興味の対象とされている。
【0003】
チトクロムP450モノオキシゲナーゼは、産業上関心のある酸化反応を触媒する能力を有するため、長い間集中的に研究されてきた。従って、例えばBacillus megaterium由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼBM-3が単離され、特徴付けられ、今では組換え経路によって入手することができる(例えばDE-A-199 35 115参照)。
【0004】
通常このチトクロムP450モノオキシゲナーゼは、長鎖飽和酸ならびにその対応するアミドおよびアルコールの末端付近のヒドロキシル化反応を触媒し、あるいは不飽和長鎖脂肪酸または中間鎖長の飽和脂肪酸のエポキシ化を触媒する。飽和脂肪酸の最適な鎖長は、14〜16炭素原子である。
【0005】
P450 BM−3のヘムドメインの構造はX線構造解析によって決定されている。基質結合部位は分子の表面からヘム分子に向かって延びた長いトンネルのような穴形状であり、疎水性アミノ酸残基とほぼ独占的に結合されている。ヘムドメインの表面で唯一荷電される残基はArg47およびTyr51残基である。これらは水素結合の形成を介した基質のカルボキシレート基の結合に関与すると推定されている。現在ではこの酵素の基質範囲の拡張は、目的とする点突然変異の導入によって可能となっている。したがって、現在ではより短い、およびより長い鎖のカルボン酸、アルカン、アルケン、シクロアルカン、シクロアルケンおよび多様な芳香族化合物をこの酵素によって酸化することも可能である(DE-A-199 35 115、199 55 605 、100 11 723 および100 14 085参照)。
【0006】
WO-A-02/33057は、多様な有機基質の生物変換に適する好熱性細菌由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼを開示している。例えば、β−カロチンなどのカロチノイドはチトクロムP450モノオキシゲナーゼの潜在的な基質であることは、その中に述べられていない。
【0007】
DE-A-199 16 140は、特にゼアキサンチンおよびクリプトキサンチンへのβ−カロチンの変換を触媒する緑藻Haematococcus pluvialisのカロチンヒドロキシラーゼを記載している。β−カロチンの生物変換におけるチトクロムP450モノオキシゲナーゼの利用可能性には言及されていない。
【0008】
この種のチトクロムP450モノオキシゲナーゼ酵素の産業上の有用性をさらに改善するため、その応用の新たな領域を見出すことが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、チトクロムP450モノオキシゲナーゼの応用の新たな領域を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の簡単な説明
本発明者らは、この目的が、カロチノイドを酸化するための方法であって、さらにカロチノイドの酸化を可能にするチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素の存在下でカロチノイドを反応すること、ならびに酸化生成物を単離することを含む方法を提供することによって達成されることを見出した。
【0011】
チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有し、かつさらにカロチノイドの酸化を可能にする酵素は、β−イオノン環(Iononringes)の3位の炭素あるいは4−ケト−β−イオノン環の3位の炭素にヒドロキシル基を導入する本発明による効果を有する。
【0012】
適当なカロチノイドの例は、β,β−カロチン(後述でβ−カロチンと称する)、β,ε−カロチンあるいはカンタキサンチンである。
【0013】
本発明の意味するカロチンの酸化には、カロチンのモノまたはポリヒドロキシル化が含まれる。本発明によって生じる酸化生成物は好ましくは、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチン、ルテインあるいはそれらの混合物を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、付属の図を参照することにより、より詳細に明らかにされる。
【0015】
a)カロチノイドの酸化方法
本発明の第1の態様は特に、カロチノイド、例えばβ−カロチンの酸化方法に関し、この方法は、
a1) チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素を産生する組換え微生物を外因性のカロチノイドまたは中間体として形成されたカロチノイドの存在下の培養培地で培養すること、または
a2) カロチノイドを含む反応培養培地をチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素とともにインキュベートすること、ならびに
b) 形成された酸化生成物またはその二次産物を培養培地から単離すること、
を含む。
【0016】
本発明の方法は、β−カロチンのようなカロチノイドの酸化を好ましく促進するが、少なくとも妨げたり、または抑制したりしない条件下で実施される。酸化は、好ましくは、少なくとも約20℃、例えば20〜40℃などの培養温度および約6〜9のpHで、酸素の存在下で組換え微生物を培養することにより行われる。
【0017】
好ましく用いられる微生物は、異種相補性(heterologe Komplementierung)によって、カロチノイド、例えばβ−カロチンを産生することができ、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現することができる微生物である。異種相補性を有するE.coli株、および類似した方法で本発明のP450モノオキシゲナーゼ活性(カロチノイド酸化活性を有する)を導入し得るその他の微生物は、例えば参照により本明細書に取り込まれる上記のDE-A-199 16 140に記載されている。
【0018】
他の好適な変形において、例えばβ−カロチンなどのカロチノイドが外因性の基質として培地に加えられ、また酸化が、少なくとも約20℃の温度および約6〜9のpHで、酸素の存在下で、基質含有培地の酵素反応により実施される。ここで、基質含有培地が、基質に基づいてほぼ10〜100倍モル過剰の還元性等価物をさらに含むことができる。
【0019】
上述の方法は、バイオリアクターで好ましく実施され得る。したがって本発明は、本発明の少なくとも1種のモノオキシゲナーゼまたは本発明の少なくとも1種の組換え微生物(いずれの場合も、適切には固定化形態である)を含むバイオリアクターに関する。
【0020】
反応が組換え微生物を用いて実施される場合、微生物の培養は好ましくはまず、適切な細胞密度に達するまで、酸素の存在下およびTBまたはLB培地などの複合培地中で、約20℃かそれ以上の培養温度で、かつ約6〜9のpHで行われる。酸化反応をより良く制御することを可能とするため、誘導性プロモーターを用いるのが好ましい。例えば培養は、モノオキシゲナーゼ生成の誘導後、酸素の存在下で、12時間〜3日間続けられる。
【0021】
一方、本発明による反応が、精製または富化された酵素によって実施される場合、本発明の酵素は外因性の基質(約0.01〜10mM、または0.05〜5mM)を含有する培地中に溶解されるかあるいは可溶化され、反応は、酸素の存在下、約10℃あるいはそれ以上の温度、および約6〜9のpH(例えば100〜200mMのリン酸またはTrisバッファーで調整される)で、かつ還元剤の存在下で、酸化される基質に基づいてほぼ10〜100倍モル過剰の還元性等価物(電子供与体)をさらに含む基質含有培地中で実施するのが好ましい。好適な還元剤はNADPHである。
【0022】
本発明の基質酸化方法において、反応培地中に存在するかあるいは加えられる酸素の還元的酵素開裂がある。必要な還元性等価物は、添加された還元剤(電子供与体)によって利用される。
【0023】
その後、形成された酸化生成物は、従来の方法で、例えば抽出および/またはクロマトグラフィーによって、培地から取り出され、精製し得る。適切な方法は、当業者に知られているため、特に説明を要しないであろう。
【0024】
特に好適な方法は、使用されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Pro328からGlu345までの部分配列、および適切には、さらに配列番号2に示されるアミノ酸残基Val216からAla227までの部分配列、を含むアミノ酸配列を有する方法である。
【0025】
特に好適な方法は、配列番号2に示されるアミノ酸残基Met1からPhe327およびGly346からAla389によって特定される配列領域に由来する、連続した少なくとも10アミノ酸の部分配列から選択される少なくとも1つの他の部分配列を含むアミノ酸配列を有するモノオキシゲナーゼを用いる方法であり、特に、配列番号2に本質的に対応するアミノ酸配列を有するモノオキシゲナーゼを用いる方法である。
【0026】
微生物を利用して本発明方法を実施するときには、調節ヌクレオチド配列の制御下で、上述のチトクロムP450モノオキシゲナーゼのコード配列を含む発現構築物を保有する組換え微生物の培養を必要とする。
【0027】
本発明の別の態様は、例えばβ−カロチンなどのカロチノイドの微生物学的酸化のための、上述のチトクロムP450モノオキシゲナーゼまたはそれをコードするヌクレオチド配列の使用に関する。
【0028】
b)本発明方法を実施するための組換え微生物
本発明はさらに、異種相補性によって、例えばβ−カロチンのようなカロチノイドを産生することができ、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現することができる組換え微生物に関する。そのような異種相補性は例えばcrtE、crtB、crtIおよびcrtYなどのカロチン産生遺伝子に存在するのが好ましい。これらはE.coli、特に大腸菌 JM 109などのエシェリシア属エス・ピー(Escherichia sp.)の微生物に由来する。
【0029】
本発明の微生物は特に、調節ヌクレオチド配列の遺伝子制御下で上述のチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含む発現ベクターで形質転換される。
【0030】
上述のチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含む好適な発現ベクターは、その配列の上流に強力tacプロモーターおよび下流に強力rrnBリボソームターミネーターを機能するような形で含む。
【0031】
さらに使用可能な微生物および本発明方法を実施するためのそれらの生産が、例えば参照により本明細書に組み入れられる、DE-A-199 16 140に開示されている。
【0032】
本発明はまた、カロチノイド、特にβ−カロチンの酸化活性を有する本発明のP450酵素の使用、または遺伝子改変された生物、特に本発明方法を実施するための生物を産生するための、P450酵素をコードする核酸配列の使用に関する。
【0033】
本発明はさらに、対応的に遺伝子改変された生物に関し、この遺伝子改変によって、出発生物が本発明に使用される遺伝子を含む場合に野生型と比較してカロチノイド、特にβ−カロチン酸化活性のための本発明の遺伝子の発現が増加されるか、あるいは出発生物が本発明に使用される遺伝子を含まない場合に該遺伝子の発現が引き起こされる、そのような生物に関する。
【0034】
遺伝子改変された生物とは、本発明のP450遺伝子あるいは核酸構築物が、好ましくは本明細書に記載された方法の1つによって挿入された生物を意味する。
【0035】
遺伝子改変された生物は、カロチノイド特に、β−カロチンを酸化する本発明の少なくとも1つの遺伝子、または本発明の少なくとも1つの核酸構築物を含む。出発生物によって、その核酸は染色体内に存在してもよいしあるいは染色体外に存在してもよい。
【0036】
遺伝子改変された生物は、野生型と比較して改変されたカロチノイド代謝を示すのが好ましい。
【0037】
適切な遺伝子改変生物は、原則的にはカロチノイドまたはキサントフィルを合成することができる全ての生物である。
【0038】
好適な出発生物は、自然にキサントフィルを合成することができる生物である。しかし、カロチノイド生合成の遺伝子の導入のために、キサントフィルの合成が可能である出発生物も適する。
【0039】
出発生物とは、原核生物あるいは真核生物、例えば微生物や植物を意味する。好適な微生物は細菌、酵母、藻類または真菌類である。
【0040】
使用することができる細菌は、カロチノイド産生生物のカロチノイド生合成遺伝子の導入のために、キサントフィルを合成することができる細菌、例えばErwinia由来のcrt遺伝子を含むEscherichia属の細菌、ならびに、固有にキサントフィルの合成が可能な細菌、例えばErwina属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、フラボバクテリウム(Flavobacterium)、Alcaligenes、またはSynechocystis属のシアノバクテリアの細菌、の両方の細菌である。好適な細菌は、Escherichia coli、Erwinia herbicola、Erwinia uredovora、Agrobacterium aurantiacum、Alcaligenes sp. PC-1、Flavobacterium sp.R1534株、シアノバクテリウムSynechocystis sp.PCC6803、Paracoccus marcusu、あるいはParacoccus carotinifaciensである。
【0041】
好適な酵母は、Candida属、Saccharomyces属、Hansenula属またはPichia属である。
【0042】
好適な真菌類は、Aspergillus属、Trichoderma属、Ashbya属、Neurospora属、Blakeslea属、Phycomyces属、Fusarium属またはIndian Chem. Engr. SectionB. Vol.37, No.1,2(1995) 15頁の表6に記載されるその他の真菌類である。
【0043】
好適な藻類は、例えば、Haematococcus属の藻類、Phaedactylum tricornatum、Volvox属、またはDunaliella属などの緑藻である。特に好適な藻類はHaematococcus pluvialisまたはDunaliella bardawilである。
【0044】
好適な実施形態において、植物は出発生物として、したがって遺伝子改変された生物としても、使用されている。好適な植物の例は、マンジュギク、ヒマワリ、シロイヌナズナ、タバコ、トウガラシ、ダイズ、トマト、ナス、パプリカ、ニンジン、ジャガイモ、トウモロコシ、レタス、およびアブラナ種、オート麦、ライ麦、小麦、ライ小麦、粟、イネ、アルファルファ、アマ、アブラナ科、例えばナタネまたはカノラの脂肪種子、砂糖大根、砂糖きび、あるいは例えばヤマナラシ、イチイなどの木本である。
【0045】
特に好ましい植物は、Arabidopsis thaliana、Tagetes erecta、ナタネの脂肪種子、カノラ、ジャガイモ、および脂肪種子、ならびに例えばダイズ、ヒマワリ、パプリカ、ニンジン、コショウまたはトウモロコシなどの典型的なカロチノイド生産体である。
【0046】
c)酵素、ポリヌクレオチドおよび構築物
本発明によって用いることができるチトクロムP450モノオキシゲナーゼは特に好熱性細菌、好ましくは例えばThermus thermophilus種のHB27株(受託番号DSM7039下でDSMに寄託されている)などのThermus属エス・ピー(sp.)の細菌から単離することができる。本発明において、「好熱性」細菌は、好熱性および極めて好熱性の生物(すなわち、生育最適温度40℃以上)のための温度耐性基準(H.G.SchlegelおよびAllgemeine mikrobiologieによるThieme Verlag Stuttgart第5版173頁)を満たすものである。
本発明によって好ましく使用されるモノオキシゲナーゼは、増加した熱安定性によって特徴付けられるのが好ましい。これは、高められた温度(例えば、30〜60℃の範囲で、pH7.5、25mM Tris/HCl)でBacillus megaterium由来のP450 BM−3の活性損失よりも低い活性損失によって明示される。
【0047】
好適な実施形態において、好熱性細菌T.thermophilus由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼが本発明によって使用される。このタンパク質はおよそ44kDaの分子量(SDSゲル電気泳動によって決定された)で、可溶性であり、ならびに還元状態で、酸化状態で、およびカルボニル付加物として、他のP450酵素と類似した吸収スペクトルを示す。本発明のこのT.thermophilus酵素と他の公知のP450酵素との配列比較によって、以下の同一性:すなわち、P450 BM3と32%の同一性、CYP119と29%の同一性、P450eryFと31%の同一性であることを確定した。本発明の酵素は、すぐれた熱安定性を示し、これはおよそ85℃の融解温度すなわちP450camの値よりもおよそ30℃上回る温度によって説明される。
【0048】
本発明の更なる態様は、β−カロチンの酸化方法における、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ、特にThermus属エス・ピー(sp.)由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードするポリヌクレオチドの使用に関する。
【0049】
好適なポリヌクレオチドは、配列番号1に示される核酸配列、該配列と相補的な核酸配列、ならびにそれらに由来する核酸配列を本質的に有しているものである。
【0050】
本発明の更なる態様は、本発明の反応に使用することができる組換え微生物の生産のための、発現カセットまたは組換えベクターの使用に関する。
【0051】
同様に、本発明には、本発明の反応のために特定的に開示された新規のP450モノオキシゲナーゼの「機能的同等物」の使用も含まれる。
【0052】
本発明の目的のための、特定的に開示されたモノオキシゲナーゼの「機能的同等物」または類似体は、該モノオキシゲナーゼと異なる酵素であるが、上で確定された酸化反応の範囲内で所望の基質特異性を依然として有する、および/または例えば、約30〜60℃の範囲の温度、および適切にはそれより高温度で、25mM Tris/HClで30分処理した後、P450 BM3と比較して増加した熱安定性を有する酵素である。
【0053】
本発明による「機能的同等物」とは、特に、上述した配列位置の少なくとも一ヶ所で、特定的に述べたアミノ酸と異なるアミノ酸を有するが、それにも拘らず、上述の酸化反応の1つを触媒する変異体を意味する。したがって、「機能的同等物」は、1以上、例えば1〜30、または1〜20、または1〜10などのアミノ酸の付加、置換、欠失および/または転位によって得られうる変異体が含み、該改変は、それらが本発明の性質のプロフィールを有する変異体に導く限り、いかなる配列位置に生じることができる。機能的同等物は特に、反応性パターンにおいて変異体酵素と未改変の酵素とで質的な一致を有する場合、例えば同一基質の変換率が相違する場合、にも存在する。
【0054】
本発明に含まれる「機能的同等物」は、少なくとも1つの位置において配列番号2と異なるアミノ酸配列を有するものであって、その配列中に好ましくは、モノオキシゲナーゼ活性を、ほんのわずかに、すなわちおよそ±90%以下、特に±50%以下、または±30%以下だけ変える改変を含むアミノ酸配列を有する。この改変は、標準化された条件下、例えば0.1〜0.5Mの基質、pH範囲6〜8、特にpH7、温度30〜70℃下で、参照基質例えばβ−カロチンなどを用いることによって決定することができる。
【0055】
上述の意味の「機能的同等物」はまた、上述のポリペプチドの前駆体、該ポリペプチドの機能的誘導体および塩である。「塩」という用語は、カルボキシル基の塩および本発明のタンパク分子のアミノ基の酸付加塩を意味する。カルボキシル基の塩は、それ自体公知の方法で調製され得、例えばナトリウム、カルシウム、アンモニウム、鉄、亜鉛塩などの無機塩、ならびに例えば(トリエタノールアミン、アルギニン、リシン、ピペリジンといった)アミンなどの有機塩基との塩が含まれる。酸付加塩、例えば、塩酸あるいは硫酸などの鉱酸との塩、酢酸やシュウ酸などの有機酸との塩などの酸付加塩も同様に本発明の一態様である。
【0056】
本発明のポリペプチドの「機能的誘導体」も同様に、公知の技術によってアミノ酸側鎖官能基あるいはそのN末端またはC末端で調製され得る。この種の誘導体は、例えば、カルボキシル基の脂肪族エステル、カルボキシル基のアミドであって、アンモニアまたは第一もしくは第二アミンとの反応によって得ることができる誘導体;アシル基との反応によって調製される遊離アミノ基のN−アシル誘導体;あるいは、アシル基との反応によって調製される遊離ヒドロキシル基のO−アシル誘導体を含む。
【0057】
本発明に含まれる「機能的同等物」は、特定的に開示されたタンパク質のホモログ(同族体)である。これらは、特定的に開示された配列の一つと、PearsonおよびLipmanのアルゴリズム(Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85(8)、1988、2444-2448)により計算された、少なくとも60%、好ましくは少なくとも75%、特に少なくとも85%、例えば90%、95%または99%の相同性を有するものである。
【0058】
本発明のタンパク質またはポリペプチドのホモログは、突然変異誘発、例えばタンパク質の点突然変異またはトランケーションによって生成され得る。
【0059】
本発明のタンパク質のホモログは、例えばトランケーション変異体などの変異体の組合せライブラリーのスクリーニングによって同定することができる。例えば、合成オリゴヌクレオチド混合物の酵素的連結反応などの、核酸レベルでの突然変異誘発の組合せによって、タンパク質変異体の多彩なライブラリーを作製することは可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から潜在的なホモログのライブラリーを作るために使用できる方法が数多く存在する。縮重遺伝子配列の化学合成は、自動DNA合成装置によって実施することができるし、また、合成遺伝子はその後適当な発現ベクターに連結することができる。遺伝子の縮重セットの使用によって、1つの混合物中で、所望の組の潜在的タンパク質配列をコードする全ての配列を提供することが可能になる。縮重オリゴヌクレオチドを合成する方法は、当業者には公知である(例えばNarang,S.A.(1983) Tetrahedron 39:3、Itakuraら(1984)Annu.Rev.Biochem.53:323、Itakuraら(1984)Science 198:1056、Ikeら(1083)Nucleic Acids Res.11:447)。
【0060】
必然的に「機能的同等物」はまた、他の生物、例えば、本明細書で特定的に述べたもの以外の細菌から得ることができるP450モノオキシゲナーゼおよび天然変異体を含む。例えば、ホモログ配列領域は、配列比較によって見つけることができ、同等の酵素は本発明の特定の必要条件に基づいて樹立することができる。
【0061】
本発明はまた、上述の方法を実施するための、上述のモノオキシゲナーゼおよびそれらの機能的同等物の一つをコードする核酸配列(1本鎖および2本鎖のDNAおよびRNA配列)の使用に関する。さらに本発明の核酸配列は、配列番号1に由来し、1以上のヌクレオチドの付加、置換、挿入または欠失によりそれとは異なるものであるが、なおも所望の特性プロフィールを有するモノオキシゲナーゼをコードしている。
【0062】
本明細書に記載した全ての核酸配列は、例えば、二重らせんの、個々の重複する相補的な核酸ビルディングブロックの断片縮合などの、ヌクレオチドビルディングブロックからの化学合成によるそれ自体公知の方法で調製することができる。オリゴヌクレオチドの化学合成は、例えばホスホアミダイト法(Voet、Voet、Biochemie,第2版,Wiley Press New York 869‐897頁)による公知の方法で行うことができる。DNAポリメラーゼのKlenow断片およびライゲーション反応を用いた合成オリゴヌクレオチドのアニーリングおよびギャップの充填、ならびに一般的なクローニング方法はSambrookら((1989)、Molecular Cloning:A laboratory manual、Cold Spring Harbor Laboratory Press)に記載されている。
【0063】
本発明はまた、いわゆるサイレント突然変異を含む核酸配列、あるいは、天然変異体、例えばスプライス変異体のみならず、特定の起源または宿主生物のコドン使用に従って、特定的に記載した配列との比較によって改変された核酸配列も含まれる。同様に、本発明は、保存的ヌクレオチド置換(すなわち、関連したアミノ酸配列が同じ電荷、大きさ、極性および/または溶解度のアミノ酸によって置換される)によって得ることができる配列に関する。
【0064】
さらに本発明は、上述したコード配列とハイブリダイズするまたはこれと相補的な核酸配列を含む。これらのポリヌクレオチドは、ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーのスキャニングによって見つけることができるし、また適切には例えば、該ライブラリーから適切なプライマーを用いたPCR法によって増幅し、その後、例えば適切なプローブを用いて単離することができる。他の可能性は、本発明のポリヌクレオチドあるいはベクターで適当な微生物を形質転換し、微生物(したがってポリヌクレオチド)を増殖し、その後それらを単離することである。さらなる可能性は化学的経路によって本発明のポリペプチドを合成することである。
【0065】
ポリヌクレオチドに「ハイブリダイズ」することができるという性質は、ストリンジエント条件下でほぼ相補的な配列と結合するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドの能力を意味し、これらの条件下では非相同のパートナー間で非特異的な結合は存在しない。この目的のためには、配列は70〜100%、好ましくは90〜100%の相補性を有するべきである。互いに特異的に結合することができる相補的配列の性質は、例えばノーザンまたはサザンブロット法、あるいはプライマー結合の場合はPCRまたはRT−PCRで使用される。通常30bp以上の長さのオリゴヌクレオチドがこの目的に使用される。ストリンジエント条件とは、例えばノーザンブロットにおいて、非特異的にハイブリダイズしたcDNAプローブまたはオリゴヌクレオチドを溶離するため、50〜70℃、好ましくは60〜65℃で、例えば0.1%SDSを含む0.1×SSCバッファー(20×SSC:3M NaCl,0.3M クエン酸Na、pH7.0)で、洗浄溶液を使用することを意味する。この場合、上述したように、高い度合いの相補性を有する核酸のみが互いに結合を維持する。
【0066】
これらの核酸は、調節核酸配列の遺伝子制御下で、本発明の酵素をコードする核酸配列を含む発現構築物中に組み込まれるのが好ましく、また、ベクターはこれらの発現構築物の少なくとも一つを含むのが好ましい。本発明のそのような構築物は、好ましくは特定のコード配列の5'上流にプロモーターを、3'下流にターミネーター配列を、さらに適切には他の通常の制御要素を含み、特にその各々がコード配列に機能し得る形で結合される。「機能し得る形で結合」とは、それぞれの調節要素がコード配列の発現のために意図されたその機能を満たすことができるような仕方での、プロモーター、コード配列、ターミネーターおよび、適切には、他の調節要素の連続的配置を意味する。機能し得る形で結合され得る配列の例は、標的配列、翻訳エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどである。他の調節要素には、選択マーカー、増幅シグナル、複製起点などが含まれる。
【0067】
人工調節配列に加えて、天然の調節配列も依然として実際の構造遺伝子の前に存在することが可能である。この天然の調節配列は、適切には、遺伝子改変によってスイッチオフにされて、遺伝子の発現を増加させたり、あるいは減少させることができる。しかし、遺伝子構築物はまた、より単純な構造を有してもよく、すなわち構造遺伝子の前に更なる調節シグナルが挿入されておらず、その調節をもつ天然のプロモーターが欠失されていない。代わりに、天然の調節配列が、もはや調節を起こさないように突然変異されることによって、遺伝子発現が増進されあるいは減少される。その核酸配列は、遺伝子構築物内に1以上のコピーで存在してもよい。
【0068】
使用可能なプロモーターの例は、グラム陰性細菌において有利に用いられるcos、tac、trp、tet、trp-tet、lpp、lac、lpp-lac、laclg、T7、T5、T3、gal、trc、ara、SP6、λ−PRまたはλ−PLプロモーター、グラム陽性プロモーターamyおよびSPO2、酵母プロモーターADC1、MFα、AC、P−60、CYC1、GAPDH、または植物プロモーターCaMV/35S、SSU、OCS、lib4、usp、STLS1、B33であり、ユビキチンまたはファゼオリンプロモーターは有用ではない。誘導性プロモーター、例えば光誘導性プロモーター、および特にPrPlプロモーターなどの温度誘導性プロモーター、の使用が特に好ましい。
【0069】
原則的には、これらの調節配列を有する全ての天然プロモーターを使用することが可能である。加えて、合成プロモーターを都合よく用いることも可能である。
【0070】
前記調節配列は特定の核酸配列の発現およびタンパク質発現を可能にすることを意図する。これは、例えば宿主生物に依存して、遺伝子が、誘導後のみ発現または過剰発現されること、あるいは即時に発現および/または過剰発現されることを意味してもよい。
【0071】
調節配列または調節要素は、正に影響することにより、発現を増加あるいは減少させるのがさらに好ましいかもしれない。したがって、調節要素の増強は、プロモーターおよび/またはエンハンサーなどの強力な転写シグナルを用いることによって転写レベルで有利に生じることができる。しかし、例えばmRNAの安定性の改善によって翻訳を増進することも可能である。
【0072】
発現カセットは、安定なプロモーターを、適切なモノオキシゲナーゼヌクレオチド配列、およびターミネーターシグナルまたはポリアデニル化シグナルと融合することによって産生される。組み換えおよびクローニングの従来技術がこの目的のために利用され、例えばT.Maniatis、E.F.FritschおよびJ.Sambrook(Molecular Cloning:A Labroratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989))、T.J.Silhavy、M.L.BermanおよびL.W.Enquist(Experiments with Gene Fusions,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1984))、ならびにAusubel,F.M.ら(Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience(1987))に記載されている。
【0073】
適当な宿主生物内での発現のため、組換え核酸構築物または遺伝子構築物は、宿主特異的ベクターに都合よくに挿入され、宿主内で遺伝子の最適な発現を可能にする。ベクターは当業者によく知られており、例えば「Cloning Vectors」(Pouwels P.H.ら編、Elsevier,Amsterdam-New York-Oxford,1985)で見出すことができる。ベクターは、プラスミドのみならず当業者に知られた他の全てのベクター、例えばファージや、SV40、CMV、バキュロウイルスおよびアデノウイルスなどのウイルス、トラスポゾン、IS要素、ファスミド、コスミド、ならびに線状または環状DNAを意味する。これらのベクターは、宿主生物内で自立複製あるいは染色体複製を行うことができる。
【0074】
適切な発現ベクターとして記載し得る例は以下の通りである。
【0075】
それぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE-結合タンパクおよびプロテインAが、組換え標的タンパク質と融合する、例えばpGEX(Pharmacia Biotech Inc;Smith,D.BおよびJohnson,K.S.(1988)Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs,Beverly,MA)およびpRIT 5(Pharmacia,Piscataway,NJ)などの慣用の融合発現ベクター。
【0076】
pTrc(Amannら、(1988)Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studierら、Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,California(1990)60-89)などの非融合タンパク質発現ベクター。
【0077】
pYepSec1(Baldariら、(1987)Embo J.6:229-234)、pMFα(KurijanおよびHerskowitz(1982)Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら(1987)Gene 54:113-123)およびpYES2(Invitrogen Corporation,San Diego,CA)などの、酵母S.cerevisiaeにおける発現のための酵母発現ベクター。糸状菌などの他の真菌類での使用に適切なベクターを構築するためのベクターおよび方法は、van den Hondel, C.A.M.J.J.& Punt,P.J (1991)、「Gene transfer systems and vector development for filamentous fungi」、Applied Molecular Genetics of Fungi、J.F.Peberdyら編、1〜28頁,Cambridge University Press:Cambridgeに詳細に記載されるものを含む。
【0078】
培養昆虫細胞(例えばSf9細胞)内でタンパク質の発現に利用可能なバキュロウイルスベクターには、pAc系(Smithら、(1983)Mol.Cell Biol.3:2156-2165)およびpVL系(LucklowおよびSummers(1989) Virology 170:31-39)が含まれる。
【0079】
Becker,D.、Kemper,E.、Schell,J.およびMasterson,R(1992)、「New plant binary vectors with selectable markers located proximal to the left border」、Plant Mol Biol.20:1195-1197、ならびにBevan,M.W.(1984)、「Binary Agrobacterium vectors for plant transformation」、Nucl.Acids Res,12:8711-8721に詳細に記載される植物発現ベクター。
【0080】
pCDM8(Seed,B.(1987)Nature 329:840)およびpMT2PC(Kaufmanら(1987)EMBO J.6:187-195)などの哺乳類の発現ベクター。
【0081】
原核細胞および真核細胞のためのさらに適切な発現系がSambrook,J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T、Molecular cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY, 1989の16章および17章に記載されている。
【0082】
本発明の発現構築物およびベクターは、例えば本発明の少なくとも1つのベクターで形質転換された組換え微生物を作製するのに用いることができ、本発明に使用される酵素を産生するために、および/または本発明の方法を実施するために用いることができる。上記の本発明の組換え構築物は、適切な宿主系に都合よく導入されて発現される。例えば、共沈降、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、レトロウイルストランスフェクションなど当業者になじみのあるクローニングおよびトランスフェクション方法は、特定の発現系において前記核酸の発現をもたらすために好ましく使用される。適切な発現系は、例えばCurrent Protocols in Molecular Biology(F.Ausubelら編、Wiley Interscience,New York 1997)に記載されている。
【0083】
適切な宿主生物は、原則的には本発明の核酸、それらの対立遺伝子変異体、それらの機能的同等物または誘導体、の発現を可能にする全ての生物である。宿主生物は、例えば細菌、真菌類、酵母、植物細胞または動物細胞を意味する。好適な生物は、例えばEscherichia coliなどのEscherichia属の細菌、Streptomyces、BacillusまたはPseudomonasなどの細菌、Saccharomyces cerevisiae、Aspergillus、Blakeslea、Phycomycesなどの真核微生物、動物または植物由来の高等真核細胞、例えばSf9またはCHO細胞、である。
【0084】
首尾よく形質転換された生物は、ベクターあるいは発現カセット内に同様に存在している選択マーカーを介して選択され得る。このようなマーカー遺伝子の例は、抗生物質耐性遺伝子および形質転換細胞の染色を引き起こす着色形成反応を触媒する酵素の遺伝子である。これらはその後自動細胞選別によって選択され得る。首尾よくベクターで形質転換され、適切な抗生物質耐性遺伝子(例えばG418またはハイグロマイシン)を有する微生物は、適切な抗生物質含有培地あるいは栄養培地によって選択され得る。細胞表面に存在するマーカータンパク質はアフィニティークロマトグラフィーによる選択に用いることができる。
【0085】
宿主生物と該生物に適したベクターとの組合せが発現系を形成する。該ベクターは、例えばプラスミド、ウイルスまたはファージ、例えばRNAポリメラーゼ/プロモーター系、λファージ、μファージもしくは他の溶原性ファージ、またはトランスポゾンおよび/あるいは他の有利な調節配列を含むプラスミドである。「発現系」という用語は、例えばCHO細胞などの哺乳類細胞と、哺乳動物に適切である例えばpcDNA3neoベクターなどのベクターとの組合せを意味する。
【0086】
必要に応じて、遺伝子産物はまた、トランスジェニック生物、例えばトランスジェニック動物、例えば特にトランスジェニックマウス、またはトランスジェニックヒツジ、あるいはトランスジェニック植物中で発現され得る。
【0087】
本発明に使用され得るモノオキシゲナーゼの組換え生産はまた、モノオキシゲナーゼ産生微生物が培養される場合に可能であり、モノオキシゲナーゼの適切な発現が誘発され、その培養物からモノオキシゲナーゼが単離される。このように、モノオキシゲナーゼは、所望ならば、工業的規模で生産可能である。
【0088】
組換え微生物は既知の方法で培養され、発酵させることができる。細菌は、例えばTB培地またはLB培地中で、20〜40℃の温度、およびpH6〜9で増殖され得る。適切な培養条件の詳細は、例えばT.Maniatis、E.F.FritschおよびJ.Sambrook、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY(1989)に記載されている。
【0089】
もしモノオキシゲナーゼが培養培地中に分泌されない場合には、その後細胞は破壊され、酵素は既知のタンパク質単離方法によって溶菌液から得られる。細胞は代替的に、高周波超音波、高圧(例えば、French圧力セル中)、浸透圧、界面活性剤、溶菌酵素または有機溶媒への暴露、ホモジナイザー、あるいは記載した複数の方法の組合せによって破壊されてもよい。
【0090】
モノオキシゲナーゼは、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲルろ過)(例えばQ-セファロースクロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーなどの公知のクロマトグラフィー法、ならびに限界ろ過、結晶化、塩析、透析および非変性ゲル電気泳動などの他の通常の方法、によって精製され得る。適切な方法は、例えばCooper,T.G、Biochemische Arbeitsmethoden(Verlag Walter de Gruyter,Berlin,New York)、またはScopes,R、Protein Purification(Springer Verlag,New York,Heidelberg,Berlin)に記載されている。
【0091】
特に組換えタンパク質の単離のために、ベクター系、または特定のヌクレオチド配列によってDNAを伸長する、したがって例えばより単純な精製に役立つ修飾ポリペプチドまたは融合タンパクをコードするオリゴヌクレオチド、を使用することが好都合である。このタイプの適切な修飾は、例えばヘキサヒスチジンアンカーとして知られる修飾、あるいは抗体によって抗原として認識され得るエピトープ(例えばHarlow,E.およびLane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbor(N.Y.)Pressに記載されている)などの、アンカーとして働くいわゆるタグである。これらのアンカーは、タンパク質を、例えばクロマトグラフィーカラム内に充填し得る、またはミクロタイタープレートもしくは他の担体上で使用され得る高分子マトリックス、などの固体担体に結合させるために使用することができる。
【0092】
これらのアンカーは、同時にタンパク質の認識にも使用され得る。また蛍光染料や、基質との反応後に検出可能な反応生成物を形成する酵素マーカー、あるいは放射性ラベルなどのタンパク質の慣用マーカーの識別のため、単独であるいはタンパク質を誘導体化するためのアンカーと組み合わせて使用することも可能である。
【0093】
以下の非限定的実施例は本発明の特定の実施形態を説明する。
【実施例】
【0094】
一般的な実験の詳細
a)一般的なクローニング方法
本発明の目的のために実施されたクローニング工程、例えば、制限酵素による開裂、アガロースゲル電気泳動、DNA断片の精製、ニトロセルロースおよびナイロンメンブレンへの核酸の転写、DNA断片の結合、E.coli細胞の形質転換、細菌の培養、ファージの複製、および組換えDNAの配列分析は、Sambrookら(1989)(上記)によって記載されるように実施した。
【0095】
b)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
PCRは標準プロトコールに従って、以下の標準混合液を用いることによって実施した:8μlのdNTPミックス(200μl)、MgCl2を含まない10μlのTaqポリメラーゼバッファー(10×)、8μlのMgCl2(25mM)、1μlの各プライマー(0.1μM)、1μlの増幅されるDNA試料、2.5UのTaqポリメラーゼ(MBI Fermentas社、Vinius、Lithuaia)、脱イオン化水を加えて100μl。
【0096】
c)E.coliの培養
組換えE.coli DH5α株はLB-AMP培地(トリプトン10.0g、NaCl 5.0g、酵母エキス5.0g、アンピシリン100g/ml、H2Oを加えて100ml)中で37℃で培養した。このために、いずれの場合も1つのコロニーを接種用白金ループを用いて寒天平板から5mlのLB-AMPに移した。約18時間、220rpmの振とう回数による振とう培養後、2リットルフラスコ内の培地400mlに4mlの培養物を接種した。E.coli内のP450発現の誘導は、OD578 が0.8〜1.0の値に達した後、42℃で3時間〜4時間の熱ショック誘導により行った。
【0097】
d)細胞破壊
最高15gのE.coli DH5αの湿潤バイオマスを含む細胞ペレットを氷上で融解し、25mlの燐酸カリウムバッファー(50mM、pH7.5、1mM EDTA)またはTris/HClバッファー(50mM、pH7.5、1mM EDTA)内で懸濁した。氷上で冷却されたE.coli細胞の懸濁液は3分間の超音波処理(Branson Sonifier W250(ディーツェンバッハ、ドイツ)、パワー出力80W、ワーキングインターバル20%)により破壊した。タンパク質精製の前に、細胞懸濁液を32500gで20分間遠心し、0.22mm Sterivex GPフィルター(Millipore)を通してろ過することにより粗抽出物を得た。
【0098】
実施例1
Thermus thermophilus HB27由来P450およびそのHisタグ誘導体のクローニングと発現
1.Thermus thermophilus HB27由来P450のクローニング
P450をコードする配列を含むクローン(TTHB66;以後CYP175A1遺伝子とも称する)をThermus遺伝子ライブラリーから得た。P450をコードする(平滑末端化された)配列を、プラスミドpTZ19R(MBl Fermentas社)のHincII切断部位にクローニングした。P450をコードする配列を、このようにして得られたプラスミドTTHB66からPCRによって増幅した。以下がこのPCRに使用されたプライマーである。
【0099】
a) P450 ATG開始コドンの一部としてNdeI 切断部位(イタリック(太字))を含む30merのセンスオリゴヌクレオチド:
5'-CGAAGCTCATATGAAGCGCCTTTCCCTGAG (配列番号7).
b)TGA終止コドンの一部としてEcoRI切断部位(イタリック(太字))を含む30merのアンチセンスオリゴヌクレオチド:
5'-GCGAATTCACGCCCGCACCTCCTCCCTAGG (配列番号8)
その結果生じた断片を、ベクターpCYTEXP1(バクテリオファージ8(Belev T.N.,ら、Plasmid(1991)26:147)の温度誘導性のPRPLプロモーター系を含むプラスミド)のNdeI切断部位にクローニングし、E.coli DH-5α(Clontech社、Heidelberg)中に形質転換した。
【0100】
目的のプラスミドを含むE.coli DH-5αを、アンピシリンの存在下、LB培地に植菌し、培養菌を37℃で一晩インキュベートした。サンプルの一部を新鮮なLB培地(アンピシリン存在)に植菌し、その結果生じた培養菌は37℃でODが0.9に達するまで培養した。誘導は24時間にわたって42℃まで温度を高めることによって行われた。発現の間のP450含量の変化は、CO示差スペクトルの測定に基づいて決定された。
【表1】

2.N末端Hisタグを有するThemus thermophilus HB27由来P450のクローニング
P450をコードする配列を、以下のプライマーを用いてプラスミドTTHB66からPCRによって増幅した。
【0101】
(a) P450 ATG開始コドンの一部としてのNdeI切断部位(イタリック(太字))およびタグコーディングコドン(下線)を含む50merのセンスオリゴヌクレオチド:
5'-CGAAGCTCATATGCATCACCATCATCATCACAAGCGCCTTTC (配列番号9);
(b) TGA終止コドンの一部としてEcoRI切断部位(イタリック(太字))を含む30merのアンチセンスオリゴヌクレオチド:
5'-GCGAATTCACGCCCGCACCTCCTCCCTAGG (配列番号8)
その結果生じた断片を、ベクターp−CYTEXP1のNdeI切断部位およびEcoRI切断部位にクローニングし、E.coli DH−5α中に発現した。
【0102】
目的のプラスミドを含むE.coli DH5-αを、アンピシリンの存在下、LB培地に植菌し、培養菌を37℃で一晩インキュベートした。サンプルの一部を、新鮮なLB培地(アンピシリン存在)に植菌し、その結果生じた培養菌を37℃でODが0.9に達するまで培養した。誘導は、24時間にわたって42℃まで温度を高めることによって行った。発現の間のP450の含量の変化は、CO示差スペクトルの測定に基づいて決定された。
【表2】

【0103】
3.C末端Hisタグを有するThermus thermophilus HB27由来p450のクローニング
P450をコードする配列を、以下のプライマーを用いてプラスミドTTHB66からPCRによって増幅した。
【0104】
(a) P450 ATG開始コドンの一部としてNdeI切断部位(イタリック)を含む30merセンスオリゴヌクレオチド:
5'-CGAAGCTCATATGAAGCGCCTTTCCCTGAG (配列番号7)
(b) TGA終止コドンの一部としてEcoRI切断部位(イタリック)およびタグコーディング部分配列(下線)を含む47merアンチセンスオリゴヌクレオチド:
5'-CGGAATTCAGTGATGATGATGGTGATGCGCCCGCACCTCCTC (配列番号10)
その結果生じた断片を、ベクターp-CYTEXP1のNdeI切断部位およびEcoRI切断部位にクローニングし、E.coli DH-5α中に発現した。
【0105】
目的のプラスミドを含むE.coli DH-5αを、アンピシリンの存在下、LB培地に植菌し、培養菌を37℃で一晩インキュベートした。サンプルの一部を、新鮮なLB培地(アンピシリン存在)に植菌し、その結果生じた培養菌を、ODが0.9に達するまで37℃で培養した。誘導は、24時間にわたり42℃まで温度を高めることによって行った。発現の間のP450含量の変化は、CO示差スペクトルの測定に基づいて決定された。
【表3】

【0106】
実施例2
P450 BM3との比較におけるThermu thermophilus由来P450の熱安定性の決定
2種類の酵素をそれぞれTris/HClバッファー(pH7.5、25mM)内で様々な温度で30分間インキュベートした。その後混合液を冷却し、P450の濃度を分光光度法によって決定した。結果を下記の表に要約し、さらに図2のグラフに示した。
【表4】

【0107】
実験結果から分かる通り、本発明の酵素は、いずれの温度で30分間インキュベートした後であっても有意に高い熱安定性を有している。
【0108】
実施例3
T.thermophilus HB27由来チトクロムP450モノオキシゲナーゼ用発現ベクターの製造
チトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列(CYP175A1遺伝子)を含むプラスミドDNA(クローンTTHB66)を出発点とした。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、EcoRIおよびPstI制限部位をCYP175A1遺伝子中に導入した。この遺伝子は以下のプライマーを用いて増幅された。
【0109】
5'-CCGGAATTCATGAAGCGCCTTTCCCTGAGG; (配列番号11)
5'-CCAATGCATTGGTTCTGCAGTCAGGCCCGCACCTCCTCCCTAGG (配列番号12)
新しい制限部位は下線で示されている。PCRのための反応混合液は、鋳型DNA(100ng)、2.5Uのpfu DNAポリメラーゼ(Stratagene社)、5μlの反応バッファー、5μlのDMSO、0.4μmolの各オリゴヌクレオチド、400μmolのdNTP、およびH2Oを加えて50μlから成る。以下のPCRサイクルパラメーターを設定した:95℃で1分;(95℃で1分、53℃で1分30秒、68℃で1分30秒)30サイクル;68℃で4分。CYP175A1遺伝子配列はDNA配列決定法によって確かめた。
【0110】
PCR産物の制限消化後、CYP175A1遺伝子をプラスミドpKK223−3(Amersham Pharmacia社)のEcoRIおよびPstI制限部位にクローニングした。PKK223−3は、タンパク質発現を制御するため、マルチプルクローニングサイトの上流に強力なtacプロモーターおよびその下流に強力なrrnBリボソームターミネーターを含んでいる。その結果生じたプラスミドはpKK_CYPと呼ぶ。
【0111】
実施例4
組換えE.coli株でのβ−カロチンの生物変換
異種相補性を介してβ−カロチンの生産を可能にする組換えE.coli株をβ−カロチンの生物変換のために製造した。
【0112】
E.coli JM109株はプラスミドpACYC_YおよびpKK_CYP(実施例3と同様に調製された)を用いた相補性実験のための宿主細胞として用いられた。プラスミドpACYC_Yは、カロチン産生遺伝子crtE、crtB、cutIC14およびcrtYを含み、これらの遺伝子はE.uredovoraから単離された。いずれの場合においても、前記遺伝子は、発現を可能にするために、それら自身のlacプロモーターと一緒にクローニングされた。これらのプラスミドの産生は、I.Kauffmannによる学位論文、Erhohung mikrobieller Diversitat von Carotinoiden(2002年6月、Institute of Technical Biology、Stuttgart University)に記載されている。カロチン産生遺伝子crtE、crtB、crtIC14を含む前駆体構築物は、Schmidt-Dannert(2000)(Curr. Opin.Biotechnol.11,255-261)に記載されている。
【0113】
異種相補性の更なる詳細もまた、例えばRuther,A.、Appl. Mikrobiol. Biotechnol (1997) 48:162-167、Sandmann,G、Trends in Plant Science (2001) 6:1, 1, 14-17.およびSandmann,Gら、TIBTECH(1999),17:233-237に記載されている。
【0114】
上述の刊行物中の開示内容は参照により本明細書に組み入れる。
【0115】
E.coli JM109の培養菌を、それ自体既知の方法で、プラスミドpACYC_YおよびpKK_CYPで形質転換し、LB培地中で30℃および37℃で2日間培養した。アンピシリン(1μg/ml)、クロラムフェニコール(50μg/ml)およびイソプロピルβ−チオガラクトシド(1mmol)を慣用的な方法で加えた。比較サンプルとして、E.coli JM109株を、唯一プラスミドpACYC_Yで形質転換し、同様の方法で培養した。
【0116】
カロチノイドは、アセトンおよびその後ヘキサンによる細胞の抽出によって、組換えE.coli株から単離した。組み合わせた抽出物を水を用いて分配した。有機層を単離し、蒸発乾固し、そして水/アセトニトリル(5:95)を用いてDXSIL C8カラム上でのHPLCによって分画した。次の条件をこの方法のために設定した。
【0117】
分離カラム: DXSIL C8, 3 μm, 120 A, 2.1 x 100 mm
流速: 0.35 mL/min
溶出剤: アイソクラチック水/アセトニトリル 5/95
検出:
UV_VIS_第1波長 = 453 nm
UV_VIS_第1バンド幅=4 nm
3DFIELD最大波長 =600 nm
3DFIELD最小波長 = 190 nm
3DFIELD参照波長 = 399 nm
3DFIELD参照バンド幅=40 nm
スペクトルは、ダイオードアレイ検出器を用いて、溶出されたピークから直接決定した。単離された物質を、それらの吸収スペクトルおよびそれらの保持時間を標準サンプルとの比較によって同定した。
【0118】
β−カロチン、ゼアキサンチンおよびクロプトキサンチンの各標準のクロマトグラムは添付した図4Aから図4Cに示した。図5AはpACYC_Yプラスミドで形質転換したE.coli株から得られたサンプルのクロマトグラフィー分析を示している。後者が異種相補性に起因してβ−カロチンを生産できることが明らかである。図5Bは、本発明による異種相補性を用いて作製し、かつさらにpKK_CYPプラスミドで形質転換したE.coli株のクロマトグラムを示している。この場合、β−カロチンに加えて、有意な量の対応するヒドロキシル化生成ゼアキサンチンおよびクリプトキサンチンが検出されることが、驚くべきことに明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】この図は、Thermus Thermophilus由来のP450とBacillus megaterium由来のP450 BM3のヘムドメインの配列比較である。ヘム結合部位は二重下線で示した(P450 BM3中のCys400は補欠分子族の鉄原子と配位するシステイン残基である)。脂肪酸鎖のT末端と接触している領域は一重線を引いた。一致の程度は異なる記号で示した(「」は同一残基、「:」および「.」は類似残基である)。
【図2】この図は、Thermus sp.由来のP450 BM3およびP450の熱安定性を決定するための比較試験の結果を示す。熱安定性は、ヘム基の含有量を介して、400nm〜500nmとの間の波長範囲で分光光度法により測定することによって決定した。
【図3】この図は、本発明による、β−カロチンの、クリプトキサンチンおよびゼアキサンチンへの生物変換の反応スキームを示す。
【図4】この図は、β−カロチン(A)、ゼアキサンチン(B)およびクリプトキサンチン(C)を含む標準試料のHPLC溶出プロフィールを示す。
【図5】この図は、カロチン生成遺伝子crtE、crtB、crtIおよびcrtYの他に(A)、本発明によりpKK_CYP構築物で形質転換された組換え大腸菌(E.coli)株(B)による生物変換実験の結果を示し、pKK_CYPの存在下でゼアキサンチンおよびクリプトキサンチンの有意な産生が観察される。
【配列表】
















【特許請求の範囲】
【請求項1】
チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素の存在下でカロチノイドを反応すること、および酸化生成物を単離することを含む、カロチノイドの酸化方法。
【請求項2】
a1) チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素を産生する組換え微生物を、外因性のカロチノイドまたは中間体として形成されたカロチノイドの存在下の培養培地中で培養すること、あるいは
a2) カロチノイドを含有する反応培地を、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素とともにインキュベートすること、ならびに
b) 形成された酸化生成物またはその二次産物を培地から単離すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酸化生成物がゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチン、ルテイン、またはその混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸化を、少なくとも約20℃の培養温度、および約6〜9のpHで、酸素の存在下で微生物を培養することによって実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
微生物が、異種相補性によって、カロチノイドを生産することができ、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カロチノイドを外因性の基質として培地に加え、酸化を、少なくとも約20℃の温度で、約6〜9のpHで、酸素の存在下で、基質含有培地の酵素反応によって実施する、ここで該基質含有培地が基質に基づいて約10〜100倍モル過剰の還元性等価物をさらに含むことができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
チトクロムP450モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Pro328〜Glu345由来の部分配列を含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Val216〜Ala227由来の部分配列をさらに含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Met1〜Phe327およびGly346〜Ala389によって特定される配列領域由来の連続した少なくとも10アミノ酸の部分配列から選択される少なくとも1つの他の部分配列を含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
モノオキシゲナーゼが、配列番号2に本質的に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
サームス属エス・ピー(Thermus sp.)の細菌由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼを用いる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
サームス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)種の細菌由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼを用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
調節ヌクレオチド配列の制御下で請求項7〜12のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含む発現構築物を保有する組換え微生物を培養する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
カロチノイドの微生物学的酸化のための、請求項7〜12のいずれかに規定されるチトクロムP450 モノオキシゲナーゼ、あるいはそれをコードするヌクレオチド配列、の使用。
【請求項15】
異種相補性によってβ−カロチンを生産することができ、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現する、組換え微生物。
【請求項16】
異種相補性がカロチン産生遺伝子に存在する、請求項15に記載の微生物。
【請求項17】
エシェリシア属エス・ピー(Escherichia sp.)の細菌に由来するものである、請求項15および16のいずれかに記載の微生物。
【請求項18】
E.coli、特に大腸菌JM 109に由来する、請求項17に記載の微生物。
【請求項19】
調節ヌクレオチド配列の遺伝子制御下で請求項7〜12のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含む発現ベクターで形質転換された、請求項15〜18のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項20】
請求項7〜12のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含み、該配列が、その上流に強力なtacプロモーターを、かつ下流に強力なrrnBリボソームターミネーターをそれぞれ機能し得る形で結合している、発現ベクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サームス属エス・ピー(Thermus sp.)の細菌由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素の存在下でカロチノイドを反応すること、および酸化生成物を単離すること、を含むカロチノイドの酸化方法。
【請求項2】
a1) チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素を産生する組換え微生物を、外因性のβ−カロチンまたは中間体として形成されたβ−カロチンの存在下で、培養培地中で培養すること、
a2) β−カロチンを含有する反応培地を、チトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素とともにインキュベートすること、
b) 形成された酸化生成物またはその二次産物を培地から単離すること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸化生成物がゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アドニルビン、アスタキサンチン、ルテイン、またはその混合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸化を、少なくとも約20℃の培養温度および約6〜9のpHで、酸素の存在下で前記微生物を培養することによって実施する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記微生物が、異種相補性により、カロチノイドを生産することができ、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
カロチノイドを外因性の基質として培地に加え、酸化を、少なくとも約20℃の温度および約6〜9のpHで、酸素の存在下で、基質含有培地の酵素反応によって実施する、ここで該基質含有培地が基質に基づいて約10〜100倍モル過剰の還元性等価物をさらに含むことができる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記チトクロムP450モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Pro328からGlu345までの部分配列を含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Val216からAla227までの部分配列をさらに含むアミノ配列を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記モノオキシゲナーゼが、配列番号2に示されるアミノ酸残基Met1〜Phe327およびGly346〜Ala389によって特定される配列領域由来の連続した少なくとも10アミノ酸の部分配列から選択される少なくとも1つの他の部分配列を含むアミノ酸配列を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記モノオキシゲナーゼが、配列番号2に本質的に対応するアミノ酸配列を有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
サームス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)種の細菌由来のチトクロムP450モノオキシゲナーゼを用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
調節ヌクレオチド配列の制御下で請求項7〜11のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含む発現構築物を保有する組換え微生物を培養する、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
カロチノイドの微生物学的酸化のための、請求項7〜11のいずれかに規定されるチトクロムP450 モノオキシダーゼ、あるいはそれをコードするヌクレオチド配列、の使用。
【請求項14】
異種相補性により、カロチノイドを生産することができ、かつチトクロムP450モノオキシゲナーゼ活性を有する酵素をさらに発現することができる組換え微生物。
【請求項15】
前記異種相補性がカロチン産生遺伝子に存在する、請求項14に記載の微生物。
【請求項16】
エシェリシア属エス・ピー(Escherichia sp.)の細菌に由来するものである、請求項14および15のいずれかに記載の微生物。
【請求項17】
大腸菌(E.coli)、特に大腸菌JM 109に由来する、請求項16に記載の微生物。
【請求項18】
調節ヌクレオチド配列の遺伝子制御下で、請求項7〜11のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする遺伝子を含む発現ベクターで形質転換された、請求項14〜17のいずれか1項に記載の微生物。
【請求項19】
請求項7〜11のいずれかに規定されるチトクロムP450モノオキシゲナーゼをコードする配列を含み、該配列が、その上流に強力なtacプロモーターを、かつ下流に強力なrrnBリボソームターミネーターをそれぞれ機能し得る形で結合している、発現ベクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−500922(P2006−500922A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−525313(P2004−525313)
【出願日】平成15年7月25日(2003.7.25)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008199
【国際公開番号】WO2004/013345
【国際公開日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【Fターム(参考)】