説明

カンジダ症予防又は治療剤

【課題】優れた抗カンジダ菌作用を示すカンジダ症予防又は治療剤を提供する。
【解決手段】(A)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;及び(B)アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;を含有するカンジダ症予防又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンジダ症予防又は治療剤に関する。また本発明は、抗カンジダ菌作用の増強方法及び増強剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カンジダ症は、カンジダ菌と呼ばれる真菌の感染及び繁殖により生じる。カンジダ症は、カンジダ菌と他の常在菌とのバランスが崩れることにより発症する。カンジダ症としては、皮膚カンジダ症、膣カンジダ症、外陰部カンジダ症、口腔カンジダ症、カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲爪炎、食道・腸管カンジダ症等が知られている。
【0003】
カンジダ症に対して種々の治療法が存在する。それらは主に抗真菌剤を有効成分として用いるものである。
【0004】
しかしながら、従来の抗真菌剤においては、抗カンジダ菌作用が不十分であるという問題があった。これまでに、抗真菌剤の抗真菌作用を増強した製剤処方が種々報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の製剤処方では、抗カンジダ菌作用が依然として不十分であるという問題があった。抗カンジダ菌作用が不十分だと、治癒までに要する治療剤の量や投与回数が増える等するため、患者のQOLが低下してしまう。
【特許文献1】特開平7−233088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、優れた抗カンジダ菌作用を示すカンジダ症予防又は治療剤を提供することを課題とする。
【0006】
また、本発明は、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の抗カンジダ菌作用を増強させる増強方法及び増強剤を提供することも別の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種という特定の抗真菌剤に対して、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種という特定の化合物を併用することにより、これら抗真菌剤の抗カンジダ菌作用がより増強されることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)カンジダ症予防又は治療剤
(1−1)(A)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;及び(B)アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;を含有するカンジダ症予防又は治療剤。
(1−2)前記ミコナゾールの塩が硝酸塩である、(1−1)に記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−3)前記オキシコナゾールの塩が硝酸塩である、(1−1)に記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−4)前記ジフェンヒドラミンの塩が塩酸塩及びサリチル酸塩から選択される少なくとも1種である、(1−1)に記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−5)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量0.02〜4.0重量部を含有する(1−1)〜(1−4)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−6)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量0.1〜4.0重量部を含有する(1−1)〜(1−5)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−7)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量2.0〜4.0重量部を含有する(1−1)〜(1−6)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−8)カンジダ症が皮膚カンジダ症、カンジダ性爪炎、食道カンジダ症、口腔カンジダ症、又は膣カンジダ症である請求項(1−1)〜(1−7)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−9)カンジダ症が膣カンジダ症である請求項(1−1)〜(1−8)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(1−10)錠剤、軟膏剤、坐剤又は液剤である請求項(1−1)〜(1−9)のいずれかに記載のカンジダ症予防又は治療剤。
(2)抗カンジダ菌作用を増強する方法
(2−1)(A)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;に(B)アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;を併用することを特徴とする、前記(A)成分の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−2)前記ミコナゾールの塩が硝酸塩である、(2−1)に記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−3)前記オキシコナゾールの塩が硝酸塩である、(2−1)に記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−4)前記ジフェンヒドラミンの塩が塩酸塩及びサリチル酸塩から選択される少なくとも1種である、(2−1)に記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−5)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量0.02〜4.0重量部を併用する(2−1)〜(2−4)のいずれかに記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−6)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量0.1〜4.0重量部を併用する(2−1)〜(2−5)のいずれかに記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(2−7)前記(A)成分の総量1重量部に対して、前記(B)成分の総量2.0〜4.0重量部を併用する(2−1)〜(2−6)のいずれかに記載の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
(3)抗カンジダ菌作用を増強する増強剤
(3−1)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の抗カンジダ菌作用を増強する増強剤であって、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する増強剤。
(3−2)前記ミコナゾールの塩が硝酸塩である、(3−1)に記載の増強剤。
(3−3)前記オキシコナゾールの塩が硝酸塩である、(3−1)に記載の増強剤。
(3−4)前記ジフェンヒドラミンの塩が塩酸塩、サリチル酸塩から選択される少なくとも1種である、(3−1)に記載の増強剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカンジダ症予防又は治療剤は、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種に対して、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を併用することにより、優れた抗カンジダ菌作用を発揮することができる。
【0009】
また、本発明の抗カンジダ菌作用の増強方法は、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌剤に対して、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を併用することにより、抗カンジダ菌作用を増強することができる。
【0010】
さらに、本発明の抗カンジダ菌作用の増強剤は、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とすることにより、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の抗真菌剤と組み合わせて用いると、抗カンジダ菌作用を増強することができる。
【0011】
そのため、本発明は優れたカンジダ症の予防乃至治療を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.本発明のカンジダ症予防又は治療剤について
本発明の予防又は治療剤は、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種と、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種とを含有するカンジダ症予防又は治療剤である。
【0013】
本発明の予防又は治療剤は、ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に「(A)成分」と表記することもある)を含有する。
【0014】
ミコナゾール及びオキシコナゾールは、いずれも真菌に対する殺菌効果を有するイミダゾール系抗真菌剤である。
【0015】
ミコナゾール及びオキシコナゾールの塩は、薬理学的に許容されることを限度として、特に制限されない。ミコナゾール及びオキシコナゾールの塩として、例えば、硝酸塩が挙げられる。具体的には、ミコナゾール硝酸塩やオキシコナゾール硝酸塩が例示される。
【0016】
(A)成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0017】
本発明の予防又は治療剤における(A)成分の含有量は、(A)成分の種類、該剤の形態、及び1回当たりの投与量、投与形態、使用目的、カンジダ症の種類、及び症状の程度等に応じて適宜設定される。一例として、(A)成分の総量の含有量は、該剤の総量に対して、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1.0〜30重量%、さらに好ましくは3.0〜30重量%が挙げられる。
【0018】
本発明の予防又は治療剤は、(A)成分に加えてアラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種(以下、単に「(B)成分」と表記することもある)を含有する。
【0019】
アラントインは、抗炎症作用及び組織修復作用を示す化合物である。
【0020】
また、ジフェンヒドラミンは、抗炎症作用を示す化合物である。
【0021】
ジフェンヒドラミンの塩は、薬理学的に許容されることを限度として、特に制限されない。ジフェンヒドラミンの塩として、例えば、有機酸塩、無機酸塩等の各種の塩が挙げられる。具体的には、ジフェンヒドラミン塩酸塩やジフェンヒドラミンサリチル酸塩が例示される。ジフェンヒドラミンの塩は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0022】
ジフェンヒドラミンの塩の好ましいものとしては、ジフェンヒドラミン塩酸塩が挙げられる。
【0023】
(B)成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0024】
本発明の予防又は治療剤における(B)成分の(A)成分に対する配合比率は、抗カンジダ菌作用の増強効果がみられる範囲内で選択できるが、例えば、 (A)成分の総量1重量部に対して、(B)成分の総量で0.02〜4重量部含有されていれば好ましく、0.1〜4重量部含有されていればより好ましく、2〜4重量部含有されていればさらに好ましい。このような範囲内で(A)成分と(B)成分とを併用することにより、抗カンジダ菌作用をより増強することができる。
【0025】
本発明の予防又は治療剤における(B)成分の含有量は、上記の(A)成分に対する(B)成分の比率の範囲内であればよく、(B)成分の種類、該剤の形態、及び1回当たりの投与量、投与形態、使用目的、カンジダ症の種類、及び症状の程度等に応じて適宜設定される。例えば、(B)成分の総量の含有量として、該剤の総量に対して、好ましくは0.2〜16重量%、より好ましくは0.4〜16重量%、さらに好ましくは2.4〜8重量%が挙げられる。
【0026】
本発明の予防又は治療剤が液状又は半固形状の場合、pHの範囲は例えば2〜8、好ましくは3〜8、さらに好ましくは3〜6が挙げられる。
【0027】
本発明の予防又は治療剤は、本発明の効果を妨げないことを限度として、上記成分の他に、種々の薬理活性成分や生理活性成分を含有することができる。このような成分の種類は特に制限されず、例えば、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、テルペノイド、殺菌成分、ビタミン類、鎮痛成分、鎮痒成分、収斂保護成分、血管収縮成分、生薬成分等が例示できる。好適な成分としては、例えば、次のような成分が挙げられる。
【0028】
抗ヒスタミン剤:ケトチフェン、ベポタスチン、クロルフェニラミン、ジフェニルピラリン、ジフェニルイミダゾール、イプロヘプチン、エメダスチン、クレマスチン、アゼラスチン、レボカバスチン、オロパタジン、ヒドロキシジン、メキタジン、ロラタジン、フェキソフェナジン、セチリジン、オキサトミド、テルフェナジン、エピナスチン、アステミゾール、エバスチン、及びこれらの塩等。
【0029】
局所麻酔剤:リドカイン、オキシブプロカイン、ジブカイン、プロカイン、アミノ安息香酸エチル、メプリルカイン、メピバカイン、ブピバカイン、コカ
イン、ジエチルアミノエチル、オキシポリエトキシドデカン及びこれらの塩等。
【0030】
テルペノイド:メントール、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、アネトール、リモネン、オイゲノール、ペパーミント油、クールミント油、ハッカ油、ユーカリ油、ベルガモット油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、スペアミント油等。
【0031】
殺菌成分:アクリノール、アルキルポリアミノエチルグリシン、イソプロピルメチルフェノール、セチルピリジニウム、デカリニウム、ベルベリン、ベンザルコニウム、クロルヘキシジン、セトリミド、レゾルシン、ベンゼトニウム、ヒノキチオール、及びこれらの塩類(例えば塩化セチルピリジニウム、塩化デカリニウム、塩化ベルベリン、塩化ベンザルコニウム、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン、酢酸デカリウム、安息香酸ベルベリン、塩化ベンゼトニウム等)等。
【0032】
ビタミン類:ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンE、それらの誘導体、及びそれらの塩類(例えば酢酸トコフェロール、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノール、アスコルビン酸ナトリウム等)等。
【0033】
鎮痛成分:サリチル酸、その誘導体、及び塩類(サリチル酸メチル等)等。
【0034】
鎮痒成分:クロタミトン等。
【0035】
収斂保護成分:酸化亜鉛、タンニン酸、クロルヒドロキシアルミニウム等。
【0036】
血管収縮成分:エフェドリン、テトラヒドロゾリン、ナファゾリン、フェニレフリン、それらの誘導体、及びそれらの塩類(例えば塩酸エフェドリン、塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸メチルエフェドリン等)等。
【0037】
生薬成分:シコン、ハマメリス、タイサン、トウキ、セイヨウトチノキ種子及びこれらの粉末、エキス等。
【0038】
また、本発明の予防又は治療剤には、発明の効果を損ねない範囲内であれば、その形態等に応じて、基材、担体又は添加物等を適宜選択し、1種又は2種以上を併用して含有することができる。それらの基材、担体又は添加物として、例えば、固形剤、半固形剤、液剤等の調製に一般的に使用される担体(水、水性溶媒、水性または油性基剤等)、安定化剤、増粘剤、界面活性剤、緩衝剤、pH調整剤、防腐剤等の各種添加剤を挙げることができる。
【0039】
以下に本発明の予防又は治療剤に使用される代表的な成分を例示するが、これらに限定されない。
【0040】
基材又は担体成分:水、その他水性溶媒、カルボキシメチルスターチナトリウム、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、乳糖、ハードファット、オクチルドデカノール、グリセリン、ポリエチレングリコール(マクロゴール)、軽質流動パラフィン、ゲル化炭化水素、ショ糖脂肪酸エステル、酒石酸、シリコン樹脂、ジエタノールアミン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ジメチルポリシロキサン、スクワラン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ステアリン酸グリセリン、セタノール、セトステアリルアルコール、D−ソルビトール、炭酸水素ナトリウム、中鎖脂肪酸トリグリセリド、トウモロコシデンプン、パラフィン、パルミチン酸、パルミチン酸セチル、プロピレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、モノステアリン酸グリセリン、ワセリン等。
【0041】
安定化剤:ジブチルヒドロキシトルエン、エデト酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乾燥亜硫酸ナトリウム等。
【0042】
増粘剤:キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール400、マクロゴール1500、マクロゴール4000、カルボキシビニルポリマー等。
【0043】
界面活性剤:ポリソルベート60、ステアリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸ポリオキシル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリソルベート80等。
【0044】
防腐剤:ブチルパラベン、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、安息香酸ナトリウム、ベンジルアルコール等。
【0045】
緩衝剤:ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、イプシロン−アミノカプロン酸、アスパラギン酸、アスパラギン酸塩等。
【0046】
pH調整剤:塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、ホウ酸等の無機酸;乳酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、シュウ酸、グルコン酸、フマル酸、プロピオン酸、酢酸、アスパラギン酸、イプシロン−アミノカプロン酸、グルタミン酸、アミノエチルスルホン酸等の有機酸;炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、リジン等の有機塩等。
【0047】
本発明の予防又は治療剤の形態は、固形状、半固形状、液状のいずれであってもよく、適用対象となる患部、適用方法等に応じて適宜設定される。当該剤の形態として、具体的には、錠剤、顆粒、散剤、坐剤、カプセル剤等の固形状;クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤等の半固形状;液剤、ローション剤等の液状等が例示される。これらの中で、好適な形態として、錠剤、軟膏剤、坐剤、クリーム剤、ゲル剤、液剤が挙げられる。
【0048】
本発明の予防又は治療剤は、適用対象となるカンジダ症についても特に制限されるものではなく、例えば、皮膚カンジダ症、膣カンジダ症、外陰部カンジダ症、口腔カンジダ症、カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲爪炎、食道・腸管カンジダ症等のカンジダ症に対して適用することができる。なお、皮膚カンジダ症、膣カンジダ症、外陰部カンジダ症、男性の性器カンジダ症、口腔カンジダ症、カンジダ性指間びらん症、カンジダ性爪囲爪炎等のカンジダ症に対して適用する場合、本発明の予防又は治療剤は、経皮又は経粘膜投与可能な形態に調製すればよい。また、口腔カンジダ症や食道・腸管カンジダ症等のカンジダ症に対して適用する場合、本発明の予防又は治療剤は、例えば前述する固形状の形態のものを経口適用可能な形態に調製すればよい。経皮または経粘膜投与可能な形態は、半固形状、液状が多用されている。
【0049】
本発明の予防又は治療剤は、錠剤、軟膏剤、坐剤又は液剤であるため、膣カンジダ症に対して好ましく用いられる。
【0050】
本発明の予防又は治療剤は、カンジダ症の治療を目的として使用してもよく、また、カンジダ症の予防や再発防止を目的として使用してよい。
【0051】
本発明の予防又は治療剤の投与量や投与頻度については、該剤の形態、投与形態、使用目的、カンジダ症の種類や症状の程度、被投与者の年齢、及び使用するA及び(B)成分の種類等に応じて適宜設定される。例えば、本発明の予防又は治療剤の1日当たりの投与量の平均としては、(A)成分の量に換算して、通常5〜600mg、好ましくは100〜600mg程度が挙げられる。また、本発明の予防治療剤は、例えば、1日当たり1回の頻度で若しくは2又は3回程度に分割して投与してもよく、また、2日〜1週間分の投与量を一度にまとめて投与してもよい。
【0052】
2.本発明の抗カンジダ菌作用の増強方法又は増強剤について
以下、本発明の抗カンジダ菌作用の増強方法又は増強剤について説明するが、有効成分についての説明は、上記した本発明の予防又は治療剤についての説明と重複するため、省略する。
【0053】
本発明の抗カンジダ菌作用の増強方法は、(A)成分の抗カンジダ菌作用を増強させる方法である。該増強方法は、(A)成分に(B)成分を併用することを特徴とする。
【0054】
(B)成分は、1種単独で使用しても、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0055】
本発明の増強方法における(B)成分の使用量は(B)成分の種類や該剤の形態等によっても異なるが、(A)成分と併用する際における(B)成分の(A)成分に対する比率が、抗カンジダ菌作用の増強効果がみられる範囲内となるよう選択できる。(B)成分の(A)成分に対する比率は、例えば(A)成分の総量1重量部に対して、(B)成分の総量が0.02〜4重量部であれば好ましく、0.1〜4重量部であればより好ましく、2〜4重量部であればさらに好ましい。このような範囲内で(A)成分と(B)成分とを併用することにより、抗カンジダ菌作用をより増強することができる。
【0056】
また本発明の抗カンジダ菌作用の増強剤は、(A)成分の抗カンジダ菌作用を増強させる増強剤である。該増強剤は、(B)成分を含有する。
【0057】
本発明の増強剤における(B)成分の含有量は、上記増強方法と同様に、(A)成分を含有する抗カンジダ菌剤に添加した後に、該カンジダ菌剤における(B)成分の(A)成分に対する比率が、抗カンジダ菌作用の増強効果がみられる範囲内で選択できるが、(B)成分の種類や該剤の形態等によっても異なる。(B)成分の(A)成分に対する比率は、上記増強方法におけるのと同様である。
【実施例】
【0058】
以下に実施例、比較例、試験例、及び製造例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0059】
[試験例]
以下の(1)〜(7)の溶液、DMSO及び精製水を用いて表1に示す配合割合で試験検体を調製した。(1)〜(3)が抗真菌剤であり、(4)〜(6)が併用薬剤である。
【0060】
[試験検体]
%:w/w
(1)ミコナゾール硝酸塩のエタノール(95)溶液(濃度4%)
(2)オキシコナゾール硝酸塩のエタノール(95)溶液(濃度4%)
(3)イソコナゾール硝酸塩のエタノール(95)溶液(濃度4%)
(4)ジフェンヒドラミン塩酸塩のエタノール(95)溶液(濃度4%)
(5)アラントインのエタノール(95)溶液(濃度4%)
(6)クロルフェニラミンマレイン酸塩のエタノール(95)溶液(濃度4%)
(7)リドカインのエタノール(95)溶液(濃度4%)
【0061】
【表1】

【0062】
[抗真菌力の評価方法]
MIC(最小発育阻止濃度)に基づくFIC(Fractional Inhibitory Concentration) index法を用いた。菌株としてはCandida albicans(寄託番号:NBRC1594)を使用した。
【0063】
まず96穴プレートの各穴にサブローブロス液体培地(オキソイド製)をあらかじめ100μlずつ入れ、プレートの一列目に各試験検体を各穴に100μlずつ添加してよく懸濁した。この懸濁液を100μlずつとり、同プレートの2列目に移しよく懸濁した。この作業を繰り返し、希釈系列を作成した(段階希釈法)。
【0064】
菌懸濁液を各穴に5μlずつ添加した後、37℃で48時間培養した。培養後、菌の発育を目視にて判定しMICを求めた。FIC indexは次の通り算出した。
【0065】
FIC index =a/a0+b/b0
a:抗真菌剤と併用薬剤使用時の抗真菌剤のMIC
0:抗真菌剤の単独でのMIC
b:抗真菌剤と併用薬剤使用時の併用薬剤のMIC
0:併用薬剤単独でのMIC
以下の基準により増強作用および阻害作用の有無を判定した。
2より大きい:× 阻害
2以下〜1より大きい:○ 増強
1以下:◎ 増強
増強作用および阻害作用の評価結果を表1に示す。
【0066】
表1に示す通り、ミコナゾール硝酸塩又はオキシコナゾール硝酸塩に対して、抗炎症剤であるジフェンヒドラミン塩酸塩又はアラントインを併用することによる増強作用がみられた。一方、ミコナゾール硝酸塩に対して、同じく抗炎症剤であるマレイン酸クロルフェラミンを併用したところ、かえって阻害作用がみられた。同じく局所麻酔剤であるリドカインを併用しても阻害作用がみられた。また、ミコナゾール硝酸塩及びオキシコナゾール硝酸塩とそれぞれ構造が類似しており同じく抗真菌剤であるイソコナゾール硝酸塩に対して、ジフェンヒドラミン塩酸塩を併用しても、かえって阻害作用がみられるのみであった。ミコナゾール硝酸塩又はオキシコナゾール硝酸塩という特定の抗真菌剤に対して、ジフェンヒドラミン塩酸塩又はアラントインという特定の抗炎症剤を併用することにより、はじめて特異的な増強作用が現れることがこれらの結果から理解される。
【0067】
特に、ミコナゾール硝酸塩、又はオキシコナゾール硝酸塩1重量部に対して、アラントイン又はジフェンヒドラミン塩酸塩2重量部以上を配合することにより、より顕著な増強作用が現れることがこれらの結果から理解される。
【0068】
[製剤例1〜9]表2に示す処方の注入軟膏剤を常法に従い調製した。
【0069】
【表2】

【0070】
[製剤例10〜18]表3に示す処方の注入軟膏剤を常法に従い調製した。
【0071】
【表3】

【0072】
[製剤例19〜28]表4に示す処方の軟膏剤を常法に従い調製した。
【0073】
【表4】

【0074】
[製剤例29〜34]表5に示す処方の注入軟膏剤を常法に従い調製した。
【0075】
【表5】

【0076】
[製剤例35〜38]表6に示す処方の膣坐剤を常法に従い調製した。
【0077】
【表6】

【0078】
[製剤例39〜44]表7に示す処方の軟膏剤を常法に従い調製した。
【0079】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;及び
(B)アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;
を含有するカンジダ症予防又は治療剤。
【請求項2】
カンジダ症が膣カンジダ症である請求項1に記載のカンジダ症予防又は治療剤。
【請求項3】
(A)ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;に
(B)アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種;
を併用することを特徴とする、前記(A)成分の抗カンジダ菌作用を増強する方法。
【請求項4】
ミコナゾール、オキシコナゾール、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の抗カンジダ菌作用を増強する増強剤であって、アラントイン、ジフェンヒドラミン、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする増強剤。

【公開番号】特開2010−83814(P2010−83814A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255474(P2008−255474)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】