説明

カーシュレッダーダストの処理方法

【課題】ダイオキシン類の発生が抑制されると共に、タール分の付着やコーキングの発生を防ぐことが出来、かつ、設備費用、運転・保守費用などが低減された経済的なカーシュレッダーダストの処理方法を提供する。
【解決手段】水および/またはスチームの供給口と酸化剤供給口とガス排出口とを有する改質チャンバー、および、その大部分が改質チャンバー25で包囲され且つその周面に複数のガス抜き孔を有する金属製回転レトルト21を備え、同レトルトにカーシュレッダーダストを供給して加熱乾留し、改質チャンバー中において可燃性ガスと酸化剤と混合し、可燃性ガスの部分燃焼による発熱で金属製回転レトルトを加熱することにより前記の加熱乾留を行ない、この際、改質チャンバー内の酸素濃度を15容量%以下に制御し、有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍の水および/またはスチームを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーシュレッダーダストの処理方法に関し、詳しくは、自動車の解体によって生じたカーシュレッダーダストを加熱乾留して可燃性ガスと炭化混合物とに分解した後に可燃性ガスを改質することから成る、ダイオキシン類の発生が抑制されたカーシュレッダーダストの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の解体の最後に残るカーシュレッダーダストは、繊維質、硬軟、発泡各種プラスチック、ゴム類、布・紙・木、被覆導線、その他雑多なものを含んでいて、そのままでは部品や素材としてリサイクル困難な廃棄物であり、焼却するとダイオキシン類などの有害物質を発生する恐れがある。そのため、カーシュレッダーダストの乾留処理により、燃料ガスとして回収、銅などの非鉄金属の回収などが考えられており、特に、得られるガスの発電用熱源としての利用が最も実際的な方法として考えられている。
【0003】
例えば、カーシュレッダーダスト等の廃棄物の処理方法として、燃料と空気を燃焼させて得られた高温の燃焼ガスにより外部から加熱した熱分解炉を使用し、空気遮断状態下で廃棄物を加熱乾留して可燃性ガスと炭化混合物とに分解する熱分解工程、得られた可燃性ガスをガス改質装置に導入して可燃性ガス中の重質成分を軽質化するガス改質工程、可燃性ガス中に含まれるダスト及びダイオキシン類などの有害成分を浄化処理するガス浄化工程とから成る廃棄物の処理方法が提案されている。
【特許文献1】特開2000−202419号公報
【0004】
しかしながら、上述の廃棄物の処理方法は、ダイオキシン類などの発生が十分抑制されるものとは言い難い。そして、軽質化処理工程に可燃性ガスを移送する際に、配管などにタール分の付着やコーキングが発生するという問題がある。この問題を解決するために、配管などを500〜600℃に加熱しなければならず、電気ヒーター等の付設が必要となる。さらに、熱分解炉を外側から加熱するための燃料や得られた重質可燃性ガスを軽質化するためのガス改質装置が必要である。その結果、設備費用、運転・保守費用が増大すると言う問題が生ずる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、ダイオキシン類の発生が抑制されると共に、タール分の付着やコーキングの発生を防ぐことが出来、かつ、設備費用、運転・保守費用などが低減された経済的なカーシュレッダーダストの処理方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討を重ねた結果、改質チャンバーとその大部分が改質チャンバーで包囲され且つその周面に複数のガス抜き孔を有する金属製回転レトルトとを備えたガス化炉を使用し、金属製回転レトルトにカーシュレッダーダストを供給して加熱乾留し、改質チャンバー中において複数のガス抜き孔から噴出した可燃性ガスと酸化剤とを混合し、可燃性ガスの部分燃焼による発熱で金属製回転レトルトを加熱することによりカーシュレッダーダストの加熱乾留を行なう際に、改質チャンバー内の酸素濃度を特定量以下に制御すると共に、特定量の水および/またはスチームを改質チャンバー内に供給すると、意外にも、上記の目的を容易に達成し得るとの知見を得た。
【0007】
本発明は、上記の知見に基づき完成されたものであり、その要旨は、カーシュレッダーダストを加熱乾留して可燃性ガスと炭化混合物とに分解した後に可燃性ガスを改質することから成るカーシュレッダーダストの処理方法において、水および/またはスチームの供給口と酸化剤供給口とガス排出口とを有する改質チャンバー、および、その大部分が改質チャンバーで包囲され且つその周面に複数のガス抜き孔を有する金属製回転レトルトを備え、金属製回転レトルトの一端にカーシュレッダーダストの供給装置が接続され、他端に排出装置を介して選別機が設けられているガス化炉を使用し、金属製回転レトルトにカーシュレッダーダストを供給して加熱乾留し、改質チャンバー中においてガス抜き孔から噴出した可燃性ガスと酸化剤と混合し、可燃性ガスの部分燃焼による発熱で金属製回転レトルトを加熱することにより前記の加熱乾留を行ない、この際、改質チャンバー内の酸素濃度を15容量%以下に制御し、更に、改質チャンバー内にカーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍の水および/またはスチームを供給することを特徴とするカーシュレッダーダストの処理方法に存する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダイオキシン類の発生を抑制することが出来ると共に、配管へのタール分の付着やコーキングの発生が起こることなく、且つ、発電用熱源として利用価値の高いガスを得ることが出来、さらに、加熱乾留を行なうために必要な燃料を著しく低減することが出来る。しかも、熱分解ガスの軽質化のためのガス改質装置、タール分の付着やコーキングの発生を防ぐための電気ヒーター等の付設も必要としないため、設備費用、運転・保守費用などを低減することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るカーシュレッダーダストの処理方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係るカーシュレッダーダストの処理装置を説明する図である。図2は、排出されたガスの発電への利用を説明図である。図3は、排出されたガスの発電への別の利用を説明する図である。図4は、排出されたガスの発電への他の利用を説明する図である。
【0010】
先ず、図1により、本発明で使用するカーシュレッダーダストの処理装置について説明する。カーシュレッダーダストの処理装置は、水および/またはスチームの供給口(251)と酸化剤供給口(252)とガス排出口(253)とを有する改質チャンバー(25)と、その大部分が改質チャンバー(25)で包囲され且つその周面に複数のガス抜き孔(H)を有する金属製回転レトルト(21)とから構成されているガス化炉(20)と、金属製回転レトルト(21)の一端に接続されているカーシュレッダーダスト(D)の供給装置(10)と、他端に排出装置(図示は省略)を介して設けられている選別機(80)とから構成されている。
【0011】
ガス化炉(20)を構成する改質チャンバー(25)は、通常、固定式であり、改質チャンバー(25)のカーシュレッダーダストの供給装置側には水および/またはスチームの供給口(251)と酸化剤供給口(252)とが設けられ、排出装置側にはガス排出口(253)とが設けられている。
【0012】
金属製回転レトルト(21)は、その大部分が改質チャンバー(25)で包囲されており、そして、外部から空気の大量流入を阻止するために、その前後の各端部が前後のフード(22)及び(23)包囲されている。また、金属製回転レトルト(21)の周面には改質チャンバー(25)に通じる複数のガス抜き管(H)が設けられている。ガス抜き管(H)は、金属製回転レトルト(21)の固形分が改質チャンバー(25)に落下しないよう、金属製回転レトルト(21)内へ向って直筒状のものが突設されているが、その先端がL字状に折り曲げられた筒状のもの、好ましくは、その先端が金属製回転レトルト(21)の略中心軸まで延びたL字状管などが挙げられるが、後述するように、金属製回転レトルト(21)内で得られた重質可燃性ガスは通過可能であるが、炭化混合物などの固形分は改質チャンバー(25)に落下しないよう構成されているものであれば、これに限定されるものではない。
【0013】
金属製回転レトルト(21)としては、通常、金属製のロータリーキルンを使用することが出来る。
【0014】
供給装置(10)は、破砕機により破砕されたカーシュレッダーダスト(D)を金属製回転レトルト(21)内に供給するためのものである。選別機(80)は、加熱乾留によって得られた炭化混合物(C)に含まれる銅屑等の非鉄金属を選別するためのものである。本発明で使用するガス化炉(20)は、カーシュレッダーダスト(D)を破砕する破砕機(図示は省略)、炭化混合物(C)を間接水冷する回転式クーラ(図示は省略)および炭化混合物(C)に含まれる鉄分を分離する磁選機(図示は省略)などを備えていてもよい。そして、必要があれば、排出される可燃性ガスををさらに改質するための改質装置(図示は省略)を設けていてもよい。
【0015】
次に、図2〜4により、排出されたガスの発電への利用を説明する。図2に示す発電設備(90)は、排出されたガスの顕熱を回収し、スチームを発生させる廃熱回収ボイラ(91)、得られたスチームによって駆動されるスチームタービン(92)および発電機(93)を備えている。なお、廃熱回収ボイラ(91)から排出された可燃性ガス(G2)は、精製装置(30)で精製されたうえ、ガスホルダ(94)に貯蔵される。
【0016】
図3に示す発電設備(190)は、ガスホルダ(94)からの可燃性ガス(G2)を燃料とするガスエンジン(191)、発電機(192)、その排ガスの顕熱を回収してスチームを発生させる廃熱回収ボイラ(193)、得られたスチームによって駆動されるスチームタービン(194)および発電機(195)を備えている。図4に示す発電設備(290)は、空気圧縮機(291)、ガスホルダ(94)からのガスを燃料とするガスタービン(292)、発電機(293)、ガスタービン(292)からの排ガスの顕熱を回収してスチームを発生させる廃熱回収ボイラ(294)、得られたスチームによって駆動されるスチームタービン(295)および別の発電機(296)を備えている。
【0017】
次に、本発明に係わるカーシュレッダーダストの処理方法について説明する。本発明の処理方法は、上述のガス化炉を使用し、金属製回転レトルトにカーシュレッダーダストを供給して加熱乾留し、改質チャンバー中において可燃性ガスと酸化剤とを混合し、可燃性ガスの部分燃焼による発熱で金属製回転レトルトを加熱することにより前記の加熱乾留を行なう際、改質チャンバー内の酸素濃度を15容量%以下に制御し、更に、改質チャンバー内にカーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍の水および/またはスチームを供給する方法である。
【0018】
先ず、供給装置(10)から金属製回転レトルト(21)にカーシュレッダーダスト(D)を供給する。外側から加熱されている金属製回転レトルト(21)内では、カーシュレッダーダスト(D)の加熱乾留によって可燃性ガス(G1)および炭化混合物(C)を生成する。生成した可燃性ガス(G1)は、金属製回転レトルト(21)の周面に設けられたガス抜き孔(H)から改質チャンバー(25)内に噴出する。噴出した可燃性ガス(G1)は、改質チャンバー(25)内において酸化剤供給口(252)から供給された酸化剤(OG)と供給口(251)から供給された水および/またはスチームと混合され、可燃性ガスの少なくとも一部分が燃焼すると共に、水性ガス化反応が生起して可燃性ガス(G1)の軽質化および改質を行う。そして、前述の可燃性ガスの部分燃焼により金属製回転レトルト(21)を加熱するして、前記の加熱乾留を行なう。
【0019】
本発明の被処理物であるカーシュレッダーダストは、自動車の解体の最後に残る廃棄物であり、繊維質、硬軟、発泡各種プラスチック、ゴム類、布・紙・木、被覆導線、その他雑多なものを含んでいる。
【0020】
本発明で使用する酸化剤としては、酸素ガスまたは酸素を含むガスが挙げられ、具体的には、空気、酸素、酸素富化空気が挙げられる。なお、「少なくとも一部分が燃焼」、「部分燃焼」とは、可燃性ガスの完全燃焼も含まれる。
【0021】
本発明においては、改質チャンバー内の酸素濃度を15容量%以下に制御し、更に、改質チャンバー内にカーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍の水および/またはスチームを供給することが重要である。
【0022】
酸化剤供給口(252)から改質チャンバー(25)に供給する酸化剤の量を調整して、上述の改質チャンバー(25)内の酸素濃度を15容量%以下に制御する。改質チャンバー(25)内の酸素濃度が15容量%を超えると、大容積のガス化炉を必要とし経済的でない。
【0023】
特に、絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%以上の場合、改質チャンバー(25)内の酸素濃度は、通常5容量%以下、好ましくは3容量%以下、より好ましくは1容量%以下である。絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%未満の場合、改質チャンバー(25)内の酸素濃度は、通常5〜15容量%、好ましくは7〜15容量%、より好ましくは10〜15容量%である。
【0024】
改質チャンバー(25)におけるダイオキシン類の発生を抑制するためには、可燃性ガスを完全燃焼することが必要である。それ故、改質チャンバー(25)に供給する酸化剤量を多くして可燃性ガスを完全燃焼すれば、ダイオキシン類の発生を抑制する出来る。しかしながら、カーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が多くなると、当然可燃性ガスの量も多くなり、供給される酸化剤の量およびスチームの量も多くなる。その結果、大容積の金属製回転レトルトおよび改質チャンバーが必要となり経済的でない。
【0025】
従って、絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%以上の場合は、カーシュレッダーダストの加熱乾留に必要な熱量を供給するに要する可燃性ガス量が燃焼される。そして、大半の可燃性ガスは、燃焼、軽質化、改質されることなく、ガス排出口(253)から排出され、後工程で新たに設けた燃焼炉(図示は省略)で完全燃焼する、或いは、改質装置(図示は省略)で軽質化または改質する。それため、改質チャンバー(25)に供給される酸化剤の量は、カーシュレッダーダストの加熱乾留に必要な熱量を供給するために可燃性ガスの燃焼に要する量であって、改質チャンバー(25)内の酸素濃度が通常5容量%以下となる量である。
【0026】
絶乾状態におけるカーシュレッダーダスト中の有機成分の割合が50重量%未満の場合は、生成した可燃性ガスは、改質チャンバー(25)内で完全燃焼される。それため、改質チャンバー(25)に供給される酸化剤の量は、可燃性ガスを完全燃焼させるために要する量であって、改質チャンバー(25)内の酸素濃度が通常5〜15容量%となる量である。
【0027】
改質チャンバー(25)内に供給される水および/またはスチームの量は、カーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍、好ましくは1.0〜3.0重量倍である。水および/またはスチームの量が0.2重量倍未満の場合は、ダイオキシン類の発生を抑制することが困難となり、ガス排出口(253)から排出される排ガス中のダイオキシン類の濃度が高くなる。水および/またはスチームの量が3.0重量倍を超える場合は、大容積のガス化炉を必要とし経済的でない。
【0028】
水および/またはスチーム(S)の供給によって、改質チャンバー(25)内の可燃性ガスは、水性ガス反応を生起し、可燃性ガス(G1)の軽質化、改質が行われる。さらに、カーシュレッダーダスト(D)の構成および性状が変動しても、改質チャンバー(25)への水および/またはスチーム(S)の供給量の増減によって、水性ガス反応量、それに伴う熱発生量、加熱量を容易に調節可能であるため、運転が暴走することなく、運転の安定化を図ることが出来ると共に、加熱乾留が不十分のまま金属製回転レトルト(21)から排出されたり、金属製回転レトルト(21)が過剰に過熱されたりすることがない。
【0029】
さらに、改質チャンバー(25)に導入された水および/またはスチーム(S)からのスチームによってガスが稀釈されるため、可燃性ガス(G2)の重合およびタール化が抑制され、可燃性ガスの軽質化によりタール分やコークがガス化されて、改質チャンバー(25)内面のコーキング進行速度を抑制する。従って、改質チャンバー(25)から排出される軽質可燃性ガス(G2)は、精製装置(30)へ輸送する途中の配管にタールの付着やコーキングが生ずることない。そのため、配管の加熱の設備や運転保守の負担が大幅に軽減されると共に、精製が一層容易になる。
【0030】
改質チャンバー(25)への水および/またはスチーム(S)の供給量は、金属製回転レトルト(21)の外面温度を所定の温度範囲に維持する制御システム(40)によってコントロールされる。この運転安定化制御は、重質可燃性ガス(G1)の部分燃焼に伴う発熱と、水および/またはスチーム(S)からのスチームとの水性ガス反応に伴う吸熱(蒸発、加熱によるものも含まれる)とを利用したものである。なお、運転の安定化は、水および/またはスチーム(S)の供給量ばかりでなく、改質チャンバー(25)への酸化剤(OG)の供給量、金属製回転レトルト(21)への酸化剤(OG)の供給量、カーシュレッダーダストダスト(D)の供給量の調節によっても可能である。
【0031】
本発明において、改質チャンバー(25)内の温度は、通常600〜750℃、好ましくは600〜650℃であり、カーシュレッダーダストの加熱乾留が行われる金属製回転レトルト(21)内の温度は、通常450〜550℃、好ましくは500〜550℃である。そして、改質チャンバー(25)内の圧力は、金属製回転レトルト(21)内で発生した重質可燃性ガス(G1)が改質チャンバー(25)へ噴出可能となる様に、金属製回転レトルト(21)内のガス圧力よりも僅かに低く保持される。改質チャンバー(25)内では重質可燃性ガス(G1)が酸化剤(OG)と混合して部分燃焼し、スチーム(S)と混合して水性ガス化され、それらの反応に伴って発生する熱が金属製回転レトルト(21)の外側からカーシュレッダーダスト(D)に伝達される。そして、改質チャンバー(25)内のガス(G2)は、ガス排出口(253)から排出される。
【0032】
金属製回転レトルト(21)内の酸素濃度は、通常3容量%以下、好ましくは1容量%以下、より好ましくは0.5容量%以下である。酸素濃度が3容量%を超える場合は、ダイオキシン類の発生を抑制することが困難となり、排ガス中のダイオキシン類の濃度が高くなる。
【0033】
カーシュレッダーダストの加熱乾留は、通常、空気遮断状態下で行われ、金属製回転レトルト(21)内の酸素濃度は、0容量%である。しかしながら、原料のカーシュレッダーダスト中に酸素が含有されている場合は、加熱乾留中の熱分解により、金属製回転レトルト(21)内の可燃性ガス(G1)中に酸素ガスとして存在することがある。そして、金属製回転レトルト(21)内の温度が可燃性ガス(G1)の着火温度よりも高い場合、生成した酸素ガスは、その酸素当量分の可燃性ガス(G1)を燃焼(部分燃焼)させる。
【0034】
金属製回転レトルト(21)内の温度が可燃性ガス(G1)の着火温度よりも低い場合は、酸素ガスが可燃性ガス(G1)の燃焼によって消費されることが無いので、酸素濃度が3容量%を超えることがある。この場合、金属製回転レトルト(21)内の温度を可燃性ガス(G1)の着火温度よりも高くして、可燃性ガス(G1)の部分燃焼によって酸素ガスを消費する等の手段により、金属製回転レトルト(21)内の酸素濃度を3容量%以下にするのが好適である。
【0035】
上述の金属製回転レトルト(21)内の部分燃焼によって、金属製回転レトルト(21)内面に付着したタールやコークも燃焼する。なお、僅少とは言え、金属製回転レトルト(21)内での部分燃焼によって発生する熱量分だけ、金属製回転レトルト(21)の外側から伝えられる熱量が低減される。そのため、金属製回転レトルト(21)の温度が低く抑えられ、それに対する負担(材料の耐熱性)が軽減され、耐熱性の低い材料の使用が可能になる。また、可燃性ガス(G1)は、前述の部分燃焼によって生成したスチーム及びその他のガスによる稀釈および/またはスチームとの水性ガス反応により、金属製回転レトルト(21)内のタールやコークの生成が抑制されると共に、コーキング進行速度が抑制され、連続運転期間を延長することが出来る。
【0036】
本発明によれば、金属製回転レトルト(21)内カーシュレッダーダスト(D)のガス化に必要な熱が改質チャンバー(25)内の重質可燃性ガス(G1)の部分燃焼によって十分賄われるため、精製された高価な燃料は殆ど不要である。しかも、カーシュレッダーダスト(D)から取り扱いが容易で、貯蔵が可能な、且つ、ガスタービン、ボイラ等の燃料としても利用可能な軽質可燃性ガス(G2)および有用な非鉄金属を含む炭化混合物(C)が得られる。
【0037】
金属製回転レトルト(21)から排出される炭化混合物(C)は、溶融しておらず、崩壊し易いため、還元雰囲気下で酸化されなかった銅線屑などの非鉄金属が、風簸、水簸などの比重差を利用した選別機(80)によって容易に回収できる。また、炭化混合物(C)には、硫黄と塩素が灰分に固定されるため、軽質可燃性ガス(G2)に含まれる硫黄と塩素の量は微量である。塩化ビニル樹脂などから発生するHClは、軽質可燃性ガス(G2)に含まれるが、塩基性溶液によって容易に吸収、除去されるため、可燃性ガス(G2)の精製は容易であり、排出物による環境汚染の問題も一挙に解消される。
【0038】
図2において、改質チャンバー(25)から排出されたガスは高温であので、可燃性、不燃性を問わず、その顕熱が回収されてスチームが得られ、発電に利用される。例えば、廃熱ボイラ(91)において、改質チャンバー(25)排出されたガスの顕熱を利用してスチームを生成し、スチームタービン(92)を駆動し、発電機(93)にて発電する。そして、改質チャンバー(25)から排出されたガスが可燃性である場合は、その顕熱が回収され、精製された後、ガスホルダ(94)に貯蔵する。得られた電力は、例えば、負荷電力が激しく変動する、自動車解体作業に効果的に活用可能であり、電力費用の節減が可能である。
【0039】
図3において、ガスホルダ(94)に貯蔵された可燃性ガス(G2)を燃料として使用し、ガスエンジン(191)を駆動し、発電機(192)にて発電する。そして、ガスエンジン(191)から得られた排ガスの顕熱を利用して廃熱回収ボイラ(193)でスチームを生成し、スチームタービン(194)を駆動し、発電機(195)にて発電する。
【0040】
図4において、改質チャンバー(25)から排出されたガスが可燃性である場合は、可燃性ガス(G2)を燃料として直接使用して、ガスエンジン(191)又はガスタービン(292)を駆動し、発電機(293)にて発電する。そして、ガスエンジン(191)又はガスタービン(292)から得られた排ガスの顕熱を利用して廃熱回収ボイラ(294)でスチームを生成し、スチームタービン(295)を駆動し、発電機(296)にて発電する。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を、実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1:
原料として自動車の解体の最後に残るカーシュレッダーダスト(ASR)を図1に示す処理装置を使用して以下の要領にて処理をした。
【0043】
上記の原料を供給装置(10)から金属製回転レトルト(21)に供給し、供給口(251)からスチームをガス化炉(20)に供給し、酸化剤供給口(252)空気をガス化炉(20)に供給して加熱乾留を行った。ガス化炉(20)の操作条件を表1示し、ガス排出口(253)からの排ガスの組成を表2に示す。
【0044】
【表1】

【0045】
【表2】

【0046】
表2におけるダスト濃度、窒素酸化物濃度、硫黄酸化物濃度、塩化水素濃度、ダイオキシン類の濃度は夫々以下の方法で測定した。
【0047】
(1)ダスト濃度は、JIS Z 8808.8に記載の方法に準じて行った。(2)窒素酸化物濃度は、JIS K 0104.4.2に記載の方法に準じて行った。(3)硫黄酸化物濃度は、JIS K0103.6.1に記載の方法に準じて行った。(4)塩化水素濃度は、JIS K 0107.6.2に記載の方法に準じて行った。ダイオキシン類の濃度は、「廃棄物処理におけるダイオキシン類標準測定分析マニュアル」(平成9年2月厚生省生活衛生局水道環境部環境整備課)に記載の方法に準じて行った。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】カーシュレッダーダストの処理装置を説明する図
【図2】排出されたガスの発電への利用を説明する図
【図3】排出されたガスの発電への別の利用を説明する図
【図4】排出されたガスの発電への他の利用を説明する図
【符号の説明】
【0049】
10:供給装置
20:ガス化炉
21:金属製回転レトルト
22:フード
23:フード
25:改質チャンバー
30:精製装置
40:制御システム
80:非鉄金属の選別機
90:発電設備
91:廃熱回収ボイラ
92:スチームタービン
93:発電機
94:ガスホルダ
190:発電設備
191:ガスエンジン
192:発電機
193:廃熱回収ボイラ
194:スチームタービン
195:発電機
251:供給口
252:酸化剤供給口
253:ガス排出口
290:発電設備
291:空気圧縮機
292:ガスタービン
293:発電機
294:廃熱回収ボイラ
295:スチームタービン
296:発電機
C:炭化混合物
D:カーシュレッダーダスト
G1:重質可燃性ガス
G2:軽質可燃性ガス
H:ガス抜き孔
OG:酸化剤
S:水および/またはスチーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーシュレッダーダストを加熱乾留して可燃性ガスと炭化混合物とに分解した後に可燃性ガスを改質することから成るカーシュレッダーダストの処理方法において、水および/またはスチームの供給口と酸化剤供給口とガス排出口とを有する改質チャンバー、および、その大部分が改質チャンバーで包囲され且つその周面に複数のガス抜き孔を有する金属製回転レトルトを備え、金属製回転レトルトの一端にカーシュレッダーダストの供給装置が接続され、他端に排出装置を介して選別機が設けられているガス化炉を使用し、金属製回転レトルトにカーシュレッダーダストを供給して加熱乾留し、改質チャンバー中においてガス抜き孔から噴出した可燃性ガスと酸化剤と混合し、可燃性ガスの部分燃焼による発熱で金属製回転レトルトを加熱することにより前記の加熱乾留を行ない、この際、改質チャンバー内の酸素濃度を15容量%以下に制御し、更に、改質チャンバー内にカーシュレッダーダスト中の有機成分量に対して0.2〜3.0重量倍の水および/またはスチームを供給することを特徴とするカーシュレッダーダストの処理方法。
【請求項2】
金属製回転レトルト内の酸素濃度を3容量%以下に制御する請求項1に記載のカーシュレッダーダストの処理方法。
【請求項3】
改質チャンバーから排出された排ガスが発電に供せられる請求項1に記載のカーシュレッダーダストの処理方法。
【請求項4】
改質チャンバーから排出されたガスの顕熱の一部が回収されてスチームタービンの駆動用スチームを製造する請求項3に記載のカーシュレッダーダストの処理方法。
【請求項5】
改質チャンバーから排出された排ガスをガスエンジン又はガスタービン用燃料として使用する請求項3に記載のカーシュレッダーダストの処理方法。
【請求項6】
選別機によって炭化混合物から非鉄金属を選別する請求1に記載のカーシュレッダーダストの処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−75755(P2006−75755A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263642(P2004−263642)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(300078615)広島ガステクノ株式会社 (13)
【出願人】(598098467)株式会社 メッツコーポレーション (10)
【Fターム(参考)】