説明

カートリッジシステム及び液体カートリッジ

【課題】 耐光性の低い液体をも収容できるように遮光性壁面で構成したタンクを有する液体カートリッジを備え、視認によっても液体残量をより正確に把握することができるカートリッジシステムと、該システムに用いる液体カートリッジとを提供する。
【解決手段】 プリンタ装置1は、遮光性壁面で構成されるタンク30を有するカートリッジ10とカートリッジ装着部8とを備え、カートリッジ10には、タンク30内のインク31の液面31aに対応する視認可能な模式的液面S1を表示する磁性シート37が設けられ、該磁性シート37は、インク31の容量変化に伴って、液面31aの位置変化に比例して模式的液面S1の位置を変化させるよう構成されており、カートリッジ装着部8には、模式的液面S1の位置を検出する光学センサ40が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光性壁面で構成されるタンクを有する液体カートリッジをカートリッジ装着部へ挿脱可能に装着するカートリッジシステム、及びこれに用いられる液体カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体を収容するタンクを有する液体カートリッジをカートリッジ装着部に装着して使用するものとして、例えばインクジェットプリンタ装置などの液体吐出装置がある。該液体吐出装置では、フォトインタラプタなどの光学素子を用いてタンク内の液体残量を検出し、残量が一定未満になった場合にユーザに通知することにより、新たな液体カートリッジへの効果を促すようにしている。このような残量検出手段では、カートリッジ装着部に発光素子と受光素子とが対向配置され、液体カートリッジには、前記両素子に挟まれる位置の壁面に透光性の窓が設けられると共に、液面に応じて変位するフロートがタンク内に収容されている。そして、残量が一定以上のときは、発光素子からの光は窓を通過する光路を経て受光素子にて受光される一方、残量が一定未満になると、フロートが上記光路を遮断し、発光素子からの光を受光素子は受光できなくなる。従って、受光素子での受光の有無を検出することにより、液体の残量が一定未満か否かを検出可能になっている。
【0003】
しかしながら、このような残量検出手段の場合、タンクに収容する液体として、発光素子からの光だけでなく、その他の外部からの光に対しても比較的耐性の高いものを用いる必要があり、使用できる液体に制限がある。
【0004】
これに対して、タンクを遮光部材によって構成したものもある(特許文献1参照)。特許文献1に係る液体カートリッジでは、軟質のインクバックと該インクバックの左右の側面から延びるフィルム状の2本のストリップとを有し、各ストリップの先端部はインクバックの上方にて重ね合わされている。そして、タンク内のインクが減少するに従って、2本のストリップに位置ズレが生じるため、この位置ズレ量を各ストリップの先端部にて視認することにより、液体の残量を検出できるようになっている。
【0005】
一方、残量検出手段として光学素子を用いないものもある(特許文献2参照)。特許文献2に係る液体カートリッジでは、磁性体を含むフロートをタンク内に収容し、このフロートをタンクの下部に設けた磁気センサにて検出することにより、液面が磁気センサの位置に到達したことを検出するようにしている。
【特許文献1】特開平05−201019号公報
【特許文献2】特開平01−120353号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1に開示された構成によれば、液体カートリッジが貯留する液体に耐光性の点で制約が生じないものの、タンク内の液体残量をユーザが正確に把握し辛いという課題がある。より具体的に言えば、特許文献1の構成では、ストリップのズレ量に基づいて液体残量の目安的に視認することができるが、当該文献の段落0014に「側面11aと11bとでバッグのへこみに多少のばらつきがある場合を考慮して」と記載されているように、ストリップのズレ量は液体残量に対して一義的ではなく、あくまで目安とすることができる程度であり、正確な残量の把握には不向きである。
【0007】
また、特許文献2の構成では、磁気センサがフロートを検出する構成であるため、光学素子を用いることなく液体残量検出することができるが、磁気センサを動作させた状態でなければ液体残量を把握することはできない。さらに、磁気センサの故障や誤作動によって、液体残量を把握することができなくなる。
【0008】
そして、このような、タンク内の液体残量を視認によっても正確に把握したいという課題は、インクジェットプリンタ装置のようにタンクにインクを収容するカートリッジシステムの他、エタノール等の燃料をタンクに収容する燃料電池におけるカートリッジシステムなど、他のカートリッジシステムにおいても同様に存在又は内在している。
【0009】
そこで本発明は、耐光性の低い液体をも収容できるように遮光性壁面で構成したタンクを有する液体カートリッジを備え、視認によっても液体残量をより正確に把握することができるカートリッジシステムと、該システムに用いる液体カートリッジとを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るカートリッジシステムは、液体を内部に収容して遮光性壁面で構成されるタンクを有する液体カートリッジと、該液体カートリッジが挿脱可能に装着されるカートリッジ装着部とから成るカートリッジシステムであって、前記液体カートリッジには、前記タンク内の残留液体の液面に対応する視認可能な模式的液面を表示する表示部が設けられ、該表示部は、前記残留液体の容量変化に伴って、該残留液体の液面の位置変化に比例して前記模式的液面の位置を変化させるよう構成されており、前記カートリッジ装着部には、前記模式的液面の位置を検出する液面検出部が設けられている。
【0011】
このような構成とすることにより、タンクが遮光性壁面で構成されているため、耐光性の制約を受けない液体を収容することができると共に、残留液体の液面の位置変化に比例する模式的液面が表示されるため、視認によって液体残量を正確に把握することができる。
【0012】
また、前記タンク内には、前記残留液体の液面位置の変化に伴って位置変動する磁石が収容され、前記表示部は、前記磁石の位置に対応する部分が変色する磁性シートから成るものであってもよい。このような構成とすることにより、磁性シートの変色境界位置を、残留液体の模式的液面として視認可能に表示させることができる。
【0013】
また、前記タンク内には、前記磁石を有して前記液体に浮遊するフロート部材が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、液面の位置変動に対して磁石を正確に追従させ、その位置を模式的液面としてより正確に表示させることができる。
【0014】
また、前記磁性シートは、前記磁石が通過することによって変色した領域に記号が表示されるべく成してあってもよい。このような構成とすることにより、例えば磁石が通過した変色領域に「empty」と表示させるようにし、この表示が全て視認可能になると液体カートリッジの交換時期である、ということを文字情報によってもユーザに促すことができる。また、表示する記号としては文字に限られず、図形などであってもよい。
【0015】
また、前記磁石は、永久磁石から成るものであってもよい。このような構成とすることにより、液体カートリッジの構成が簡単になり、本システムを低コストによって実現することができる。
【0016】
また、前記磁石は、前記カートリッジ装着部に前記液体カートリッジが装着されることによって通電して磁化される電磁石であり、該電磁石は軟磁性体から成る芯材を有していてもよい。このような構成とすることにより、液体カートリッジがカートリッジ装着部に装着されていない状態では、磁石の位置変化によって磁性シートの表示が変化しないようにすることができる。従って、例えばユーザが、液体カートリッジをカートリッジ装着部から取り外して持ち運んだ場合であっても、取り外す直前に表示していた模式的液面の位置情報を保持することができる。
【0017】
また、前記磁石は、前記カートリッジ装着部に前記液体カートリッジが装着されることにより、該液体カートリッジの外部に配設された磁石によって磁化される軟磁性材料から成る磁性体であってもよい。このような構成とすることにより、未装着状態では磁性シートの表示が変化しない液体カートリッジを、簡単な構成によって実現することができる。
【0018】
また、前記表示部は、熱に反応して変色する感熱紙から成り、前記カートリッジ装着部には、前記液体カートリッジが装着された状態で前記感熱紙に対向するように熱源が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、感熱紙のうち液体に浸されている部分に比べて、液面より上方に位置する部分は加熱によって温度が上昇しやすくなるため、液面上の部分だけが変色することによって、模式的液面を表示することができる。
【0019】
また、前記液面検出部は、前記表示部における変色部分を検出する光学センサを有するようにしてもよい。例えば、上述したような変色部分は、反射型フォトインタラプタ等の光学センサによって読み取ることができ、これにより、液体残量を電気的に検出することができる。
【0020】
また、前記カートリッジ装着部は、前記液体カートリッジが挿脱される挿脱口を有し、前記表示部は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着された状態で前記挿脱口を通じて視認可能な部分に設けられていてもよい。このような構成とすることにより、カートリッジ装着部に液体カートリッジが装着された状態であっても、別途の窓を設けることなく、挿脱口を通じてユーザが表示部を視認することができる。
【0021】
また、前記液体カートリッジは前記タンク内に前記液体としてインクを収容しており、該インクを被記録体へ吐出して画像を形成するプリンタであってもよい。このような構成とすることにより、耐光性の点で制約されないインクを使用することができ、且つ、インクの残量を視認によって直感的に把握することができるプリンタを実現することができる。
【0022】
本発明に係る液体カートリッジは、液体を内部に収容して遮光性壁面で構成されるタンクを有し、カートリッジシステムに装着される液体カートリッジであって、前記タンク内の残留液体の液面に対応する視認可能な模式的液面を表示する表示部を備え、該表示部は、前記残留液体の容量変化に伴って、該残留液体の液面の位置変化に比例して前記模式的液面の位置を変化させるよう構成されている。
【0023】
このような構成とすることにより、タンクが遮光性壁面で構成されているため、耐光性の制約を受けない液体を収容することができると共に、残留液体の液面の位置変化に比例する模式的液面が表示されるため、視認によって液体残量を正確に把握することができる。
【0024】
また、前記タンク内には、前記残留液体の液面位置の変化に伴って位置変動する磁石が収容され、前記表示部は、前記磁石の位置に対応する部分が変色する磁性シートから成るものであってもよい。このような構成とすることにより、磁性シートの変色境界位置を、残留液体の模式的液面として視認可能に表示させることができる。
【0025】
また、前記タンク内には、前記磁石を有して前記液体に浮遊するフロート部材が設けられていてもよい。このような構成とすることにより、液面の位置変動に対して磁石を正確に追従させ、その位置を模式的液面としてより正確に表示させることができる。
【0026】
また、前記表示部は、前記カートリッジシステムに装着された状態で外部熱源から発せられる熱に反応して変色する感熱紙から成るものであってもよい。このような構成とすることにより、感熱紙のうち液体に浸されている部分に比べて、液面より上方に位置する部分は加熱によって温度が上昇しやすくなるため、液面上の部分だけが変色することによって、模式的液面を表示することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、耐光性の低い液体をも収容できるように遮光性壁面で構成したタンクを有する液体カートリッジを備え、視認によっても液体残量をより正確に把握することができるカートリッジシステムと、該システムに用いる液体カートリッジとを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態に係るカートリッジシステム及び液体カートリッジについて、インクジェットプリンタ装置(以下、「プリンタ装置」と称する)と、液体インクを収容する液体カートリッジ(以下、「カートリッジ」と称する)とを例にとって、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
[プリンタ装置全体の概要]
図1は、本発明に係るカートリッジシステムを適用したプリンタ装置1の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態ではプリンタ装置1としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。図1に示すようにプリンタ装置1は、インクジェット方式によって画像を記録するプリンタ部2を、略直方体形状の筐体1aの下部に備え、且つスキャナ部3を筐体1aの上部に備えて構成されている。
【0030】
プリンタ装置1のプリンタ部2は、筐体1aの正面(前側)に開口4を有しており、この開口4の内側には、下側の給紙トレイ5と上側の排紙トレイ6とが2段にして設けられている。給紙トレイ5には被記録体として複数枚の記録用紙を収容でき、例えば、A4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が複数枚収容できるようになっている。
【0031】
プリンタ部2の正面の右下部分には扉7が開閉自在に設けられ、該扉7の内方にはカートリッジ装着部8(図2参照)が設けられている。従って、扉7が開かれるとカートリッジ装着部8が正面側に露出し、カートリッジ10(図2参照)が水平方向から、カートリッジ装着部8の開口である挿脱口8aを通じて着脱可能になっている。カートリッジ装着部8には、使用されるインク色に対応したカートリッジ10の収容ケース9(図2参照)が備えられており、本プリンタ部2では、例えば、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の3色のカラーインクと、顔料インクであるブラック(Bk)のブラックインクとが使用される。したがって、カートリッジ装着部8には内部が4つに区分けされた収容ケース9が設けられており、区分けされた各スペースに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)の各色インクを貯留するカートリッジ10が収容される。
【0032】
プリンタ装置1の上部に設けられたスキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。即ち、図1に示されるようにプリンタ装置1の上面には、該プリンタ装置1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー1bが備えられている。そして、原稿カバー1bの下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。
【0033】
プリンタ装置1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル11が設けられている。操作パネル11は、各種操作ボタンや情報を出力する出力部としての液晶ディスプレイ11a等から構成されており、プリンタ装置1は、オペレータによる操作パネル11の操作の結果、該操作パネル11から出力される指示に基づいて動作可能になっている。また、プリンタ装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいてもプリンタ装置1は動作可能になっている。
【0034】
プリンタ装置1の正面左上部分にはスロット部12が設けられている。スロット部12には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能であり、操作パネル11において所定の操作を行うことにより、スロット部12に装填された小型メモリカードに記憶されたデータが読み出し可能となっている。読み出されたデータは、操作パネル11の液晶ディスプレイに表示させることも可能であり、この表示に基づいて任意に選択された画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
【0035】
図2は、プリンタ装置1が有するプリンタ部2の構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、プリンタ装置1の底部近傍には給紙トレイ5が設けられており、該給紙トレイ5の上方には、図1の左右方向に長寸を成す平坦な板状のプラテン14が設けられている。このプラテン14の更に上方には、キャリッジ16に収容された画像記録ユニット17が設けられており、この画像記録ユニット17は、図示しないノズル孔からインクを吐出する吐出ヘッド15a、該吐出ヘッド15aへインクを供給するサブタンク15b、及び吐出ヘッド15aが備える圧電アクチュエータ(図示せず)への駆動信号を出力するヘッド制御基板15c(例えばCOF:Chip on Film)等から構成されている。この画像記録ユニット17が有するサブタンク15bは、プリンタ装置1のカートリッジ装着部8へ装着されたカートリッジ10との間で、可撓性のチューブ22を介して連通するようになっており、カートリッジ10から供給されたインクを一時的に貯留し、更にこれを吐出ヘッド15aへと供給する。
【0036】
また、給紙トレイ5の後方からは用紙搬送路18が延設されている。この用紙搬送路18は、給紙トレイ5の後方から上方へ向かい更に前方へ向かうように湾曲した湾曲パス18aと、該湾曲パス18aの終点から更に前方へ延びるストレートパス18bとから成り、画像記録ユニット17の配設箇所以外の部分では、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とで構成されている。
【0037】
給紙トレイ5の直上には、該給紙トレイ5内の記録用紙を用紙搬送路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。また、用紙搬送路18における湾曲パス18aの下流部分近傍には、搬送ローラ及びピンチローラから成る一対の搬送ローラ対20が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。更に、用紙搬送路18におけるストレートパス18bの下流部分近傍には、排紙ローラ及びピンチローラから成る一対の排紙ローラ対21が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。上述した画像記録ユニット17とプラテン14とは、搬送ローラ対20と排紙ローラ対21との間にて、ストレートパス18bを上下から挟むようにして設けられている。
【0038】
[カートリッジの構成]
(実施例1)
図3は、上述したプリンタ装置1に用いられるカートリッジ10の一例として、実施例1に係るカートリッジ10Aの構成を示す模式的図面であり、(a)は側方から見たときの断面図を示し、(b)は(a)でのIIIb-IIIb矢視断面図を示している。図3(a),(b)に示すように、カートリッジ10Aは、左右方向の厚み寸法が上下方向寸法及び前後方向寸法よりも小さい扁平な直方体形状を成すタンク30を備えている。このタンク30は、外部から自然光などの光を内部に透過させないように遮光性壁面部材で構成されており、その内部には、記録用紙へ吐出されて画像を形成するためのインク31と、該インク31の残量に応じて位置変化するフロート32とが収容されている。
【0039】
このフロート32は、図3(a)に示すように略前後方向へ延びるアーム形状を成し、その後端にはタンク30の壁部に枢支される枢支部33が設けられ、先端部(前端部)34には、タンク30の一方の側壁部30aへ向くようにして磁石35が設けられている。また、枢支部33と先端部34との間には中空を成す浮力体36が設けられている。この浮力体36は、フロート32の先端がタンク30の内壁面に接触するなどの外的な阻害要因がない限り、フロート32の姿勢(傾き)に関わらず、インク31の液面31aから一部が露出可能なだけの浮力を生じ得るように構成されている。従って、図3(a)にて二点鎖線で示すように、カートリッジ10のタンク30内のインク31が比較的多く残されている場合には、磁石35及び浮力体36は相対的に上方に位置しており、この状態からインク31の減少に伴って(即ち、液面31aの位置が下降するのに伴って)図3(a)に実線で示すように下降するようになっている。また、このような浮力体36の下降動に伴って磁石35も下降動し、本実施例に係る磁石35の場合、枢支部33に対して浮力体36よりも離隔して位置しているため、磁石35の移動範囲は浮力体36の移動範囲より広くなっている。
【0040】
SHAPE \* MERGEFORMAT 図3(b)に示すように、タンク30の一方の側壁部30a外面には磁性シート(表示部)37が貼付されており、且つ、図3(a)にて破線で示すように、この磁性シート37は側面視で磁石35の可動範囲の全てを含むように設けられている。この磁性シート37は、磁性粉を内包材とするマイクロカプセルである磁性粉カプセル37aを透明フィルム37bに付着させたものであり、外部からの磁界によって磁性粉カプセル37a内の磁性粉が転向し、その向きに応じて二色(例えば、白及び黒)を切り換えて表示できるようになっている。また、本実施例に係る磁性シート37は、外部から見たときに、磁石35からの磁界の影響を未だ受けていない部分では濃色(例えば、黒色)を表示する一方、磁石35からの磁界を受けた部分は薄色(例えば、白色)に反転(変色)して表示するようになっている。また、一般に磁性シート37における色の反転(変色)状態は、新たに外部磁界が作用しない限り保持される。なお、図3(b)に示す磁性シート37は、構成の理解を容易にするために厚みを大きくして磁性粉カプセル37aを拡大して示しているが、実際には、厚み1ミリメートル以下のフィルム状を成している。
【0041】
このような実施例1に係るカートリッジ10Aの場合、側壁部30aを挟んで磁石35と対向する磁性シート37の部分であってタンク30に接触する面とは反対側の面(即ち、外方から視認できる面)は、磁石35からの磁界によって薄色を表示する。そして、インク31が消費されてタンク30内の液面31aが下降すると、これに伴って磁石35も下降し、磁性シート37において薄色の領域が拡大していく。ここで、磁石35が対向する前の磁性シート37の濃色領域は、タンク30内にてインク31が存在する領域に対応する模式的充填領域A2を成し、薄色領域はインク31が存在しない領域に対応する模式的空隙領域A1を成している。そして、模式的空隙領域A1と模式的充填領域A2との境界線は、タンク30内におけるインク31の液面31aに対応する模式的液面S1を成している(図3(b)参照)。
【0042】
以上のような構成により、本実施例に係るカートリッジ10Aは、ユーザが磁性シート37に表示される模式的液面S1を視認することができ、インク残量を把握することができる。また、この模式的液面S1は、実際のインク31の液面31aに比例して変位するため、インク残量をより正確かつ直感的に把握することができる。また、タンク30が遮光性壁面から構成されているため、インク素材として耐光性の点で制約を受けることがなく、選択の自由度が高くなる。
【0043】
なお、上記説明では、フロート32の構成として、枢支部33に対して浮力体36よりも磁石35が離隔したものを示したが、浮力体36よりも磁石35が枢支部33に近接した構成としてもよい。この場合、浮力体36は、より小さい浮力であってもよくなるため、カートリッジ10Aの小寸法化、又はインク貯留容量の増大を図ることができる。また、浮力体36と磁石35とを、枢支部33からの等距離の位置に設けてもよい。
【0044】
また、枢支部33を挟んで磁石35と浮力体36とを配置するようにフロート32を構成してもよい。この場合、液面31aの下降に伴って磁石35は上昇するため、上述した説明の例とは模式的空隙領域A1と模式的充填領域A2との上下位置関係が反対になる。
【0045】
更に、上記説明では、磁性シート37を側面視で磁石35の可動範囲の全てを含むように設けるものとしたが、これに限られない。例えば、磁石35の全可動範囲のうち、最も下方の位置を含む一部分の範囲を含むように設けてもよい。この場合であっても、インク31の残量が少なくなってきた途中の時点から、磁性シート37に模式的空隙領域A1を表示させることができる。
【0046】
図4は、上述したカートリッジ10Aをカートリッジ装着部8に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。図4に示すように、カートリッジ装着部8には、磁性シート37に対向するようにして光学センサ40が設けられている。この光学センサ40は、反射型のフォトインタラプタなどから成り、発光部41及び受光部42を有している。また、カートリッジ装着部8には図示しないアクチュエータが備えられており、光学センサ40を磁性シート37に沿って昇降動可能になっている。従って、磁性シート37の表示は、光学センサ40によってスキャンすることが可能であり、そのスキャン・データを用いて模式的液面S1の位置を検出し、検出結果に基づいて、液晶ディスプレイ11a(図1参照)にカートリッジ10Aの交換を促す情報を表示させることが可能である。
【0047】
なお、インク31の残量が所定未満であることを検出するだけで済む場合には、上記光学センサ40を昇降動可能に構成する必要はなく、アクチュエータを設けずに、光学センサ40をタンク30の下部所定位置に対向配置させればよい。これにより、光学センサ40が対向する磁性シート37の位置に模式的液面S1が表示されると、この表示を読み取って、インク31の残量が所定未満であることを検出することができる。
【0048】
また、図4に示すカートリッジ装着部8では、磁石35に対して、タンク30に貼付された磁性シート37とは反対側に位置するカートリッジ装着部8の壁面8bにも磁性シート43が設けられている。この磁性シート43も、タンク30に貼付された磁性シート37と同様の構成になっており、側面視で磁石35の可動範囲の全てを含むように、又は、磁石35の可動範囲のうち最も下方位置を含む一部分の範囲を含むように設けられている。これにより、磁性シート43においても、模式的空隙領域A1、模式的充填領域A2、及び模式的液面S1を表示させることができ、カートリッジ10Aを抜き出した後、該カートリッジ10Aのインク残量をこの磁性シート43から視認して把握することができる。
【0049】
なお、図4では、この磁性シート43として上記磁性シート37と同様の特性を有するものを用いた場合を示しているため、結果的に磁性シート43の表示色は磁性シート37の表示色の反転色になっている。但し、磁石35からの磁界の作用がない場合に濃色を表示し、磁界の作用によって薄色を表示するものを用いれば、磁性シート37と同様に、模式的空隙領域A1では薄色を呈し、模式的充填領域A2では濃色を呈するようにすることも可能である。
【0050】
図5は、未使用状態の上記カートリッジ10Aの構成を模式的に示す正面断面図であり、未使用時の磁石35の変位によって磁性シート37に模式的液面S1が表示されないようにするための構成を例示している。この図5に示すように、本実施例に係る未使用状態のカートリッジ10Aには、磁性シート37の外表面にシート状の永久磁石から成るシート磁石45が重ねられており、このシート磁石45は、保護シール46によってタンク30に支持されている。また、シート磁石45は、磁性シート37に磁界を作用させて全領域を濃色に表示させるようになっている。
【0051】
このような構成により、搬送中や店頭に陳列されている未使用状態のカートリッジ10Aにおいて、磁石35からの磁界によって磁性シート37に模式的液面S1が表示されるのを防止することができる。なお、保護シール46を外す際にシート磁石45も外すことができるため、その後は、上述したように磁石35からの磁界によって磁性シート37にて模式的液面S1を表示させることができる。
【0052】
(実施例2)
図6は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例2に係るカートリッジ10Bをカートリッジ装着部8に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。この図6に示すように、カートリッジ10Bは、実施例1に係るカートリッジ10Aと大部分において同様の構成を備えており、カートリッジ10Aの磁石35に代えて、カートリッジ10Bでは軟磁性体50がフロート32の先端部34に備えられている点で相違している。また、カートリッジ装着部8において、軟磁性体50に対して磁性シート37とは反対側に位置する壁面8bに、磁石51が設けられている。この磁石51は永久磁石でも電磁石でもよく、軟磁性体50の可動範囲のうち、側面視で少なくとも磁性シート37が占める領域を含むように設けられている。なお、カートリッジ10Bにおいて、カートリッジ10Aと同様の構成を備える部分には同符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
このような構成により、カートリッジ装着部8に装着されたカートリッジ10Bは、磁石51によって軟磁性体50が磁化され、該軟磁性体50からの磁界によって磁性シート37に模式的液面S1を表示させることができる。一方、カートリッジ10Bがカートリッジ装着部8から取り外された状態では、軟磁性体50は磁化されておらず、磁界を生じさせないため、磁性シート37は、軟磁性体50の変位に関わらずその表示が変更されることがない。従って、搬送中や店頭に陳列されている未使用状態のカートリッジ10Bにおいて、磁性シート37に模式的液面S1が表示されるのを防止することができる。
【0054】
(実施例3)
図7は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例3に係るカートリッジ10Cをカートリッジ装着部8に装着した状態を側方から模式的に示す断面図である。この図7に示すように、カートリッジ10Cは、実施例1に係るカートリッジ10Aと部分的に同様の構成を備えているが、カートリッジ10Aの磁石35に代えて、鉄心にコイルが巻回されて成る電磁石53がフロート32の先端部34に備えられている。また、タンク30の前壁部30cには上下に配された2つの電極55が取り付けられており、各電極55と電磁石53が有するコイル(図示せず)との間は、タンク30内の空中を架線された導線54によって接続されている。また、カートリッジ装着部8において、装着されたカートリッジ10Cの前壁部30cに対向する壁部には、図示しない電源から電力が供給される電極56が設けられており、カートリッジ10Cが装着された状態では、電極55,56が互いに導通するようになっている。なお、カートリッジ10Cにおいて、カートリッジ10Aと同様の構成を備える部分には同符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
このような構成のカートリッジ10Cの場合、カートリッジ10Cがカートリッジ装着部8に装着されると、電極55,56が導通してコイルが通電され、電磁石53が磁化される。その結果、電磁石53からの磁界によって、上述したカートリッジ10A,10Bと同様に、磁性シート37に模式的液面S1を表示させることができる。また、カートリッジ10Cがカートリッジ装着部8から取り外された状態では、電磁石53は磁化されておらず、磁界を生じさせないため、磁性シート37は、電磁石53の変位に関わらずその表示が変更されることがない。従って、搬送中や店頭に陳列されている未使用状態のカートリッジ10Cにおいて、磁性シート37に模式的液面S1が表示されるのを防止することができる。
【0056】
(実施例4)
図8は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例4に係るカートリッジ10Dを模式的に示す図面であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は上方から見た断面図である。図8(a)に示すように、カートリッジ10Dは、実施例3に係るカートリッジ10Cと大部分において同様の構成を備えているが、本実施例に係るカートリッジ10Dでは、カートリッジ10Cにおいて空中を架線された導線54に代えて、フロート32及びタンク30に配線された導線58を備えている。即ち、図8の破線で示すように、電磁石53から引き出された2本の導線58は、フロート32内を通って先端部34から枢支部33まで配線され、該枢支部33の軸芯を通ってタンク30の左右の側壁部30a,30b外へ引き出されている。更に、左右へ引き出された各導線58は、側壁部30a,30bに沿ってタンク30の前壁部30cまで配線され、ここに設けられた電極59に接続されている。なお、カートリッジ10Dにおいて、カートリッジ10Cと同様の構成を備える部分には同符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
このような構成のカートリッジ10Dの場合、カートリッジ10Dがカートリッジ装着部8に装着されると、電極59から導線58を通じてコイルが通電され、電磁石53が磁化される。その結果、電磁石53からの磁界によって、上述したカートリッジ10A〜10Cと同様に、磁性シート37に模式的液面S1を表示させることができる。また、導線58はフロート32内を配線されているため、液面31aが下降したときのフロート32の動作に影響することがない。その他の作用効果について、上記カートリッジ10におけるものと同様である。
【0058】
(実施例5)
図9は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例5に係るカートリッジ10Eをカートリッジ装着部8に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。この図9に示すカートリッジ10Eは、上述したカートリッジ10A〜10Dと同様に、左右方向の厚み寸法が上下方向寸法及び前後方向寸法よりも小さい扁平な直方体形状を成すタンク30を備えている。このタンク30は、外部から自然光などの光を内部に透過させないように遮光性壁面部材で構成されており、その内部には、記録用紙へ吐出されて画像を形成するためのインク31が収容されているが、カートリッジ10A〜10Dのようなフロート32は備えられていない。
【0059】
一方、タンク30の一方の側壁部30aには感熱紙(表示部)60が貼付されており、この感熱紙60は、インク31の液面31aの可動範囲の全てを含むように、上下方向に長い範囲にわたって設けられている。この感熱紙60は、外部からの所定温度以上の熱に反応して変色するものであり、本実施例では、常温で白色を示し、所定温度以上になると黒色になるものを用いている。また、カートリッジ装着部8において、感熱紙60に対向する部分には熱源61が設けられており、この熱源61によって感熱紙60の全領域を加熱することができる。
【0060】
このような構成のカートリッジ10Eは、カートリッジ装着部8に装着された状態で熱源61によって加熱されると、感熱紙60のうち、インク31の液面31aより上方に位置する領域は所定温度以上に加熱されて黒色を呈し、液面31aより下方に位置する領域は、熱源61からの熱がインク31に吸収されて所定温度に至らず、白色を呈したままとなる。従って、感熱紙60において黒色を呈する領域は模式的空隙領域A1を成し、白色を呈する領域は模式的充填領域A2を成し、その境界線は模式的液面S1を成すこととなる。そして、この模式的液面S1を視認することにより、インク31の液面31aを正確に把握することができる。
【0061】
なお、本実施例に係るカートリッジ10Eにおいても、図4に示した光学センサ40を用いることによって模式的液面S1の位置を検出し、検出結果に基づいて、液晶ディスプレイ11a(図1参照)にカートリッジ10Aの交換を促す情報を表示させることが可能である。
【0062】
(実施例6)
図10は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例6に係るカートリッジ10Fをカートリッジ装着部8に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。この図10に示すカートリッジ10Fは、上述したカートリッジ10Eと同様に、タンク30の一方の側壁部30aに感熱紙60が貼付された構成となっている。一方、このカートリッジ10Eは、タンク30内のインク残量に応じて昇降動する可動台64に載置されている。該可動台64は、カートリッジ10Eが載せられる基台65と、該基台65の下部に接続されたコイルバネ等から成る弾性体66とから構成されており、タンク30内での液面31aの下降距離と略同一寸法だけ基台65が上昇する機構になっている。また、カートリッジ装着部8において、感熱紙60に対向する部分には熱源67が設けられており、この熱源67は、タンク30内のインク31の液面31aに側方から対向するように高さ位置が固定されている。
【0063】
このような構成のカートリッジ10Fは、カートリッジ装着部8に装着された状態で熱源67によって加熱されると、感熱紙60において、液面31aに対応する部分を含むその近傍領域が加熱され、模式的液面S1が表示される。また、インク31が消費されると、その重量の減少に伴って弾性体66が伸長し、カートリッジ10Fを上昇させ、熱源67は常に液面31aに側方から対向して位置することとなる。従って、液面31aの位置が変化した場合であっても、熱源67からの熱によって、感熱紙60には模式的液面S1を表示させることができ、視認によってインク31の液面31aを正確に把握することができる。
【0064】
(実施例7)
図11は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例7に係るカートリッジ10Gをカートリッジ装着部8に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。この図11に示すカートリッジ10Gは、上述したカートリッジ10Fと大部分において同様の構成になっているが、熱源67が上下方向に可動となっており、且つ熱源67と基台65とが、滑車68に掛けられたワイヤ69を介して接続されている点で異なっている。
【0065】
このようなカートリッジ10Gの場合、タンク30内でのインク31の液面31aの下降距離に対して、基台65がその半分の寸法だけ上昇する機構(即ち、そのようなバネ常数の弾性体66)になっている場合に、熱源67を液面31aに対向する位置に保持することができる。即ち、液面31aがタンク30内でHだけ下降した場合、この機構では基台65がH/2だけ上昇するため、タンク30の外部の系から見ると液面31aはH/2だけ下降したことになる。一方、基台65の上昇に伴って、これにワイヤ69を介して接続された熱源67はH/2だけ下降する。従って、タンク30内の液面31aと熱源67との相対位置は常に一定に保たれる。
【0066】
このように、本実施例に係る構成の場合、液面31aの下降距離に対する基台65の上昇距離を小さくすることができるため、高さ寸法の抑えることができる。なお、弾性体66のバネ定数や、滑車68及びワイヤ69による基台65と熱源67との接続態様は、上述した構成に限られず、弾性体66のバネ定数に応じて他の接続態様を採用することができる。また、弾性体66のバネ定数を小さくするほど、カートリッジ10Fの昇降範囲を小さくすることができる。
【0067】
(実施例8)
図12は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例8に係るカートリッジ10Hを側方から模式的に示す断面図である。この図12に示すカートリッジ10Hは、実施例1に係るカートリッジ10Aと部分的に同様の構成を備えているが、本カートリッジ10Hでは、タンク30の側壁部30aではなく、後壁部30dに磁性シート(表示部)70が貼付されている。また、タンク30内には略前後方向へ延びるアーム形状を成すフロート71が設けられており、その前端にはタンク30の壁部に枢支される枢支部72が設けられ、先端部(後端部)73には、タンク30の後壁部30dへ向くようにして磁石74が設けられている。また、枢支部72と先端部73との間には中空を成す浮力体75が設けられている。
【0068】
このようなカートリッジ10Hの場合、実施例1に係るカートリッジ10Aと同様に、液面31aの下降に伴って磁石74も下降し、該磁石74からの磁界によって磁性シート70には模式的空隙領域A1と模式的充填領域A2と模式的液面S1とが表示される。一方、本カートリッジ10Hでは、磁性シート70がタンク30の後壁部30dに設けられているため、カートリッジ装着部8に装着された状態であっても、プリンタ部2の正面に設けられた扉7(図1参照)を開くことにより、挿脱口8aを通じて磁性シート70の表示を視認することができ、カートリッジ10Hを取り外さなくてもインク残量を把握することができる。
【0069】
なお、このようにタンク30の後壁部30dに磁性シート70を設ける構成は、軟磁性体50を有する実施例2、及び電磁石53を有する実施例3,4にも適用することができる。更には、感熱紙60を有する実施例5〜7においても、感熱紙60をタンク30の後壁部30dに設けることにより、扉7を開いて挿脱口8aを通じてインク残量を視認することが可能である。
【0070】
また、磁性シート37,70を表示部として備える実施例1〜4,8の変形例として、これら磁性シート37,70をタンク30の上壁部に設けることも可能である。この場合は、フロート32,71において磁石35等が取り付けられた部分が、液面31aの下降に伴い、タンク30の上壁部の磁性シート37,70に沿って移動するように適宜構成すればよい。これにより、例えば筐体1aの上部に窓を設け、扉7を操作せずとも、この窓を通じて磁性シート37,70の表示を視認することができる。
【0071】
(実施例9)
図13は、上記カートリッジ10の他の例として、実施例9に係るカートリッジ10Iを側方から模式的に示す断面図である。この図13に示すカートリッジ10Iは、実施例1に係るカートリッジ10Aと大部分において同様の構成になっており、磁性シート37の模式的空隙領域A1に文字列等の記号が表示されるように構成されている点が異なっている。即ち、本カートリッジ10Iの磁性シート37は、複数の磁性粉カプセル37a(図3(b)参照)に混じって磁界によって不変の粒子(図示せず)が透明フィルム37b(図3(b)参照)に付着されており、この粒子の配列によって記号(図13に示す「empty」)が形成されている。
【0072】
この粒子は、模式的充填領域A2における磁性粉カプセル37aの表示色と同様の色彩を有しており、磁性シート37においてインク31の残量が僅かになったときに磁石35が対向する位置(本実施例では、磁性シート37の下部)に設けられている。そして、この位置に磁界が作用し、磁性粉カプセル37aの表示色が変化して模式的空隙領域A1になると、この模式的空隙領域A1に記号が視認可能に表示されるようになっている。
【0073】
このようなカートリッジ10Iによれば、磁性シート37には、模式的液面S1を表示するだけでなく、文字や図形といった記号によってもユーザへ情報を表示することができ、インク残量が少なくなったときに、カートリッジ10Iの交換を促すことができる。なお、実施例5〜7に係るカートリッジ10E〜10Gのように、表示部として感熱紙60を備える構成の場合においても、感熱紙60の下部など所定箇所に予め記号を形成しておくことにより、熱源61,67からの熱で黒色を呈した模式的空隙領域A1に同様の記号を表示させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、耐光性の低い液体をも収容できるように遮光性壁面で構成したタンクを有する液体カートリッジを備え、視認によっても液体残量をより正確に把握することができるカートリッジシステムと、該システムに用いる液体カートリッジとに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明に係るカートリッジシステムを適用したプリンタ装置の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態では記録装置としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。
【図2】図1に示す記録装置が有するプリンタ部の構成を示す模式的断面図である。
【図3】プリンタ装置に用いられるカートリッジの一例として、実施例1に係るカートリッジの構成を示す模式的図面であり、(a)は側方から見たときの断面図を示し、(b)は(a)でのIIIb-IIIb矢視断面図を示している。
【図4】実施例1に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図5】未使用状態のカートリッジの構成を模式的に示す正面断面図であり、未使用時の磁石の変位によって磁性シートに模式的液面が表示されないようにするための構成を例示している。
【図6】カートリッジの他の例として、実施例2に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図7】カートリッジの他の例として、実施例3に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を側方から模式的に示す断面図である。
【図8】カートリッジの他の例として、実施例4に係るカートリッジを模式的に示す図面であり、(a)は側方から見た断面図であり、(b)は上方から見た断面図である。
【図9】カートリッジの他の例として、実施例5に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図10】カートリッジの他の例として、実施例6に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図11】カートリッジの他の例として、実施例7に係るカートリッジをカートリッジ装着部に装着した状態を正面方向から模式的に示す断面図である。
【図12】カートリッジの他の例として、実施例8に係るカートリッジを側方から模式的に示す断面図である。
【図13】カートリッジの他の例として、実施例9に係るカートリッジを側方から模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1 記録装置(液滴吐出装置)
8 カートリッジ装着部
8a 挿脱口
10,10A〜10I カートリッジ
30 タンク
31 インク
31a 液面
32,71 フロート
35,74 磁石
36,75 浮力体
37,43,70 磁性シート
40 光学センサ
50 軟磁性体
51 磁石
54,58 導線
55,56,59 電極
60 感熱紙
61,67 熱源
64 可動台
A1 模式的空隙領域
A2 模式的充填領域
S1 模式的液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を内部に収容して遮光性壁面で構成されるタンクを有する液体カートリッジと、該液体カートリッジが挿脱可能に装着されるカートリッジ装着部とから成るカートリッジシステムであって、
前記液体カートリッジには、前記タンク内の残留液体の液面に対応する視認可能な模式的液面を表示する表示部が設けられ、該表示部は、前記残留液体の容量変化に伴って、該残留液体の液面の位置変化に比例して前記模式的液面の位置を変化させるよう構成されており、
前記カートリッジ装着部には、前記模式的液面の位置を検出する液面検出部が設けられていることを特徴とするカートリッジシステム。
【請求項2】
前記タンク内には、前記残留液体の液面位置の変化に伴って位置変動する磁石が収容され、前記表示部は、前記磁石の位置に対応する部分が変色する磁性シートから成ることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジシステム。
【請求項3】
前記タンク内には、前記磁石を有して前記液体に浮遊するフロート部材が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のカートリッジシステム。
【請求項4】
前記磁性シートは、前記磁石が通過することによって変色した領域に記号が表示されるべく成してあることを特徴とする請求項2又は3に記載のカートリッジシステム。
【請求項5】
前記磁石は、永久磁石から成ることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項6】
前記磁石は、前記カートリッジ装着部に前記液体カートリッジが装着されることによって通電して磁化される電磁石であり、該電磁石は軟磁性体から成る芯材を有していることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項7】
前記磁石は、前記カートリッジ装着部に前記液体カートリッジが装着されることにより、該液体カートリッジの外部に配設された磁石によって磁化される軟磁性材料から成る磁性体であることを特徴とする請求項2乃至4の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項8】
前記表示部は、熱に反応して変色する感熱紙から成り、前記カートリッジ装着部には、前記液体カートリッジが装着された状態で前記感熱紙に対向するように熱源が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジシステム。
【請求項9】
前記液面検出部は、前記表示部における変色部分を検出する光学センサを有することを特徴とする請求項2乃至8の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項10】
前記カートリッジ装着部は、前記液体カートリッジが挿脱される挿脱口を有し、前記表示部は、前記液体カートリッジが前記カートリッジ装着部に装着された状態で前記挿脱口を通じて視認可能な部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項11】
前記液体カートリッジは前記タンク内に前記液体としてインクを収容しており、該インクを被記録体へ吐出して画像を形成するプリンタであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のカートリッジシステム。
【請求項12】
液体を内部に収容して遮光性壁面で構成されるタンクを有し、カートリッジシステムに装着される液体カートリッジであって、
前記タンク内の残留液体の液面に対応する視認可能な模式的液面を表示する表示部を備え、該表示部は、前記残留液体の容量変化に伴って、該残留液体の液面の位置変化に比例して前記模式的液面の位置を変化させるよう構成されていることを特徴とする液体カートリッジ。
【請求項13】
前記タンク内には、前記残留液体の液面位置の変化に伴って位置変動する磁石が収容され、前記表示部は、前記磁石の位置に対応する部分が変色する磁性シートから成ることを特徴とする請求項12に記載の液体カートリッジ。
【請求項14】
前記タンク内には、前記磁石を有して前記液体に浮遊するフロート部材が設けられていることを特徴とする請求項13に記載の液体カートリッジ。
【請求項15】
前記表示部は、前記カートリッジシステムに装着された状態で外部熱源から発せられる熱に反応して変色する感熱紙から成ることを特徴とする請求項12に記載の液体カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−105252(P2010−105252A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278696(P2008−278696)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】