説明

カードにエンボス加工するためのエンボス装置および方法

本発明は、カードに、具体的にはプラスチックカードにエンボス加工するためのエンボス装置に関し、該エンボス装置は、カードをエンボス領域に送給するための送給ユニットと、エンボスデバイスとを備える。エンボスデバイスは、エンボス領域内のエンボス加工すべき位置の上に配置することができる、変位および作動可能なエンボスダイと、作動可能なエンボスダイを前方へ移動させるための変位可能なプランジャを有するプランジャユニットと、エンボスダイによってエンボス領域内のカード上にエンボス加工を行うために、プランジャユニットのプランジャに圧力を印加するための打撃機構とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに、具体的にはチップカード、IDカード等のようなプラスチックカードにエンボス加工および印字を行うためのエンボス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラスチックカード用のエンボス加工および印字システムでは、複数のエンボスダイを備えた1つ以上のドラムが使用される。全てのドラムが回転され、それによって、複数のエンボスダイのうちの1つが選択されて、カード上のエンボス加工を行うべき領域の上に位置決めされる。次いで、選択されたエンボスダイは、エンボス加工が行われるように、カード上に押圧される。
【0003】
このようなエンボスシステムには、概して複数の不利な点がある。ドラムの重量は比較的重く、これが、ドラムの位置決めおよび回転、およびエンボス加工のためのカード方向への移動による振動を発生させるので、カードのエンボス加工中には多くの振動が発生する。さらに、ドラムのサイズのために、カードの全幅を利用することが不可能であり、あるいは、好適なグリッパを使用した再配置によって不要なマークがカード上に生じる。さらに、エンボス加工システムを通じてカードを移送するために、端部の一部を非エンボス状態にしておかなければならないので、カードの表面領域全体にエンボス加工を行うことができない。
【0004】
プレート型エンボス装置も、従来技術によって公知である。例えば、DE 33 30 563 A1は、エンボス装置のための駆動装置を開示しており、該装置では、ある載置間隔(resting distance)で互いに対向させて配列した2つのエンボスダイを、それらの間に保持されたエンボスプレートに対してあるエンボス圧力で互いに押圧する。ここで、エンボスダイは、第1の駆動装置によって変位動作距離(displacement travel)に従って互いに対して前方へ移動され、第2の駆動装置によってエンボス圧力を受ける。
【0005】
特許文献1は、プラスチック製品に、具体的には容器に文字データをエンボス加工するためのエンボス装置を開示しており、該装置では、交換可能な文字データユニットを含むエンボスユニットを備えた少なくとも1つのエンボスダイが、装置のフレーム内を長手方向に変位可能な様態で案内される。エンボスダイが上昇した状態において、エンボス加工すべき製品を送給すること、およびエンボス加工した製品を取り出すことが可能であり、エンボス加工は、エンボスダイを下降させた状態で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/113054 A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、従来技術の不利な点を回避する、具体的には、振動の無い動作、または振動を低減した動作を可能にし、また、カード上のエンボス加工すべき領域をより大きくすることができるエンボス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
該目的は、請求項1に記載のエンボス装置によって、および他の独立請求項に記載の、カードをエンボス加工するための方法によって達成される。
【0009】
本発明のさらなる好適な実施形態は、従属請求項に明記される。
【0010】
本発明の一側面によれば、カードに、具体的にはプラスチックカードにエンボス加工するためのエンボス装置が提供される。エンボス装置は、カードをエンボス領域に送給するための送給ユニットと、エンボスデバイスとを備える。エンボスデバイスは、エンボス領域内のエンボス加工すべき位置の上に位置決めすることができる、変位および作動可能なエンボスダイと、作動可能なエンボスダイを前方へ移動させるための変位可能なプランジャを有するプランジャユニットと、エンボスダイによってエンボス領域内のカード上にエンボス加工を行うために、プランジャユニットのプランジャに圧力を印加するための打撃機構とを備え、複数の個々に作動可能なエンボスダイを備えたエンボスマトリクスが提供され、エンボスマトリクスは、エンボス領域内のエンボス加工すべき位置に、エンボスダイのうちの選択された1つを位置決めするために、Xおよび/またはY方向に変位させることができるように設計される。ここでは、送給方向の平面がX方向であり、送給方向に対して直角な平面がY方向である。これら2つの方向は、エンボス加工装置の水平平面を画定する。したがって、Z方向は、送給方向(X)および横方向(Y)を通る垂直面内に延びる。
【0011】
エンボスマトリクスを、カードの横方向の送給方向に対して略横方向に変位させるためのアクチュエータが提供されることによって、選択されたエンボスダイが、エンボス加工すべき位置に依存する様態で、横方向に対しカード上に位置決めされることが好ましい。
【0012】
さらに、送給ユニットは、互いに平行に配向された、カードをそれらに沿って送給方向に移送することができる、案内溝(guide groove)を備えることができる。具体的には、送給ユニットの案内溝の送給方向に沿って、嵌合した形態によって該カードを移送するために、印字すべきカードが配置されるカード区画を画定する歯付ベルトを備えた、移送装置を提供することができる。
【0013】
本発明のさらなる一実施形態によれば、エンボスダイと、エンボス加工すべき位置との間に印字テープを提供する、印字テープユニットを提供することができる。
【0014】
回転可能なカムディスクを備えた打撃機構が提供されることによって、プランジャユニットのプランジャが、カムディスクの位置に依存した様態で、圧力によって作動することが好ましい。さらに、打撃機構は、カムディスクの回転運動によって旋回可能な打撃レバーを有し得るので、カムディスクの位置に依存した様態で、打撃レバーの一部が、圧力プレート上に作用して、プランジャユニットのプランジャに圧力を印加することができる。好適な一実施形態では、打撃機構は定位置に配置され、プランジャは、XおよびY方向に変位させることができる。さらに好適な一実施形態では、打撃機構は、変位可能な様態で配置され、プランジャおよび打撃機構が互いにY方向に連結される。それでも、X方向において、プランジャを打撃機構とは無関係に変位させることができる。
【0015】
各エンボス領域のうちの対応するエンボス領域内にカードを送給するための、複数の送給ユニットを提供することができ、エンボス領域は、エンボスマトリクスによって該領域に連続して接近させることができるように配置される。この場合、送給ユニットは、エンボス加工すべきカードを、それぞれのエンボス領域内に交互に提供するように適合させることができる。
【0016】
本発明のさらなる一実施形態によれば、互いに適合させた様態で、エンボスマトリクスの運動、プランジャユニットの運動、送給ユニットの運動を制御し、さらに打撃機構による圧力の印加も制御するための制御ユニットが提供される。
【0017】
エンボス領域に関してエンボスデバイスの反対側に配置され、さらに、個々に作動可能なエンボスダイを備えたさらなるエンボスマトリクスを備えた、さらなるエンボスデバイスを提供することができる。さらなるエンボスマトリクスは、エンボス領域内のエンボス加工すべき位置に、さらなるエンボスダイのうちの選択された1つを位置決めするために、変位可能な様態で設計される。エンボスデバイスは、作動可能なさらなるエンボスダイのうちの選択された1つを前方へ移動させるためのさらなる変位可能なプランジャを備えた、さらなるプランジャユニットをさらに有し、また、さらなるプランジャユニットのさらなるプランジャに圧力を印加するためのさらなる打撃機構も有し、打撃機構、プランジャユニット、およびエンボスマトリクスは、エンボス領域内のカード上の位置に同時に両側からエンボス圧力を印加するように連結される。
【0018】
本発明のさらなる一側面によれば、エンボス領域内でカードにエンボス加工するための方法であって、エンボス領域内のカード上のエンボス加工すべき位置の上で、Xおよび/またはY方向に変位させることができるように設計された、エンボスマトリクスを位置決めするステップと、変位可能なエンボスマトリクス内に配置されたエンボスダイを前方へ移動させるように、変位可能なプランジャを使用するステップと、エンボス領域内のカードが、変位可能なエンボスマトリクス内に配置されたエンボスダイによってエンボス加工されるように、プランジャに圧力を印加するステップとを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1および2は、本発明の好適な一実施形態によるエンボス装置の種々の斜視図である。
【図2】図1および2は、本発明の好適な一実施形態によるエンボス装置の種々の斜視図である。
【図3】図3は、図1および2のエンボス装置の送給ユニットの詳細図である。
【図4】図4は、図1および2の実施形態のエンボスユニットの詳細図である。
【図5】図5は、図1および2の実施形態の打撃機構の詳細図である。
【図6】図6は、図1および2の実施形態のプランジャユニットの詳細図である。
【図7】図7は、図1および2の実施形態の印字テープユニットの詳細図である。
【図8】図8は、2つの送給ユニットを備えた本発明によるエンボス装置のさらなる実施形態を示す図である。
【図9】図9は、図8の実施形態の平面図である。
【図10】図10、11および12は、本発明によるエンボス装置のための送給ユニットのさらなる実施形態の種々の図である。
【図11】図10、11および12は、本発明によるエンボス装置のための送給ユニットのさらなる実施形態の種々の図である。
【図12】図10、11および12は、本発明によるエンボス装置のための送給ユニットのさらなる実施形態の種々の図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。
【0021】
図1および2は、本発明の好適な一実施形態によるエンボス装置1の斜視図である。エンボス装置1は、機械的構造体を担送するハウジング2を備える。エンボス装置1は、例えばチップカード、IDカード等で数多く使用されているような、プラスチックカードにエンボス加工するように機能する。
【0022】
エンボス装置1は、送給ユニット3を備え、該ユニットを介して、エンボス加工すべきカードをエンボス装置1内へX方向に送給することができ、該装置では、エンボス領域4内でカードが印字される。X方向にさらに変位させることによって、カードは、エンボス装置1のエンボス領域4から外へ搬送される。
【0023】
エンボス領域4には、打撃機構6、エンボスマトリクス7、およびプランジャユニット8を備えた、エンボスユニット5が連結される。エンボスマトリクス7およびプランジャユニット8は、エンボスマトリクス7のエンボスダイ41(図4を参照のこと)を、エンボス領域4内に送給されたカードの上に位置決めするために、それらが対応する調整ユニットによってエンボス領域4上を送給方向Xに対して略横方向に(好ましくは、送給方向Xに対して直角に)移動するように設計される。したがって、所望の文字を、所望のカード位置の上に個々に前方へ移動させることができ、また、それに対応してエンボス加工することができる。他の動作シーケンスも考えられるが、XおよびY方向に変位可能なカードおよびエンボスマトリクス7の相対運動は、それらの速度に関して本質的に異なる。打撃機構6が固定様態であっても、変位可能な様態であっても、カード本体は、X方向およびY方向の両方に変位させることができる。
【0024】
エンボスマトリクス7は、エンボス領域4上を、マトリクスホルダ10によって移送レール11に沿ってY方向に、すなわち、送給方向Xに対して垂直な横方向に移動させることができ、それによって、エンボスマトリクス内に配置されたエンボスダイは、Y方向の印字すべき位置に位置決めされる。
【0025】
エンボスマトリクス7内のエンボスダイと、印字すべきカードとの間では、印字テープ16が、エンボスダイ41と、第1の印字テープユニット15によって印字すべきカードとの間に沿って案内され、それによって、エンボス加工と同時に、それぞれのエンボスダイ41によって規定されたエンボスシンボルの印字も行う。
【0026】
エンボスマトリクス7に加えて、さらなるエンボスマトリクス20を提供することができ、該さらなるエンボスマトリクスは、エンボス領域4および該領域内に配置された印字すべきカードに関して、該マトリクス7の反対側に位置決めされ、該さらなるエンボスマトリクスは、エンボス領域4内で、印字すべきカードの下側にエンボス加工および/または印字を行うこともできるように、適切な様態で打撃機構6に連結される。さらなるエンボスマトリクス20は、同様にマトリクスホルダ10上に配置され、それによって、エンボスマトリクス7およびさらなるエンボスマトリクス20が、共通のマトリクスホルダ10によってY方向に変位されることが好ましい。このように、エンボスマトリクス7、20内に配置されたエンボスダイは、エンボス加工すべき対応する選択された位置に、好ましくは、エンボス加工すべきカードの両側上に互いに対向して配置される。エンボス加工すべき文字は、この場合、変位可能な打撃機構(6)によって前方へ移動させることもできる。
【0027】
送給ユニット3を、別途図3に示す。送給ユニット3は、エンボス装置1を通じて送給方向Xに、印字すべきカードを移送するように機能する。送給ユニット3は、2つの案内要素31、32を有し、該案内要素は、互いに平行に配置され、また互いに対向して位置する表面上にそれぞれの案内溝33、34を有し、印字すべきカードは、送給および排出されるときに、該案内溝を通って摺動する。案内溝33、34は、0.5〜2mmの深さ、特に1mmの深さを有することが好ましい。案内要素31、32は、受け取り領域内にテーパが付いているので、いずれの場合においても狭ウェブだけが残り、対応する案内溝33、34を支持する。受け取り領域によって、エンボスマトリクス7を、エンボス領域4内へ、またその領域内のカードの表面の上に接近して、送給方向Xに対して横方向に変位させることができる。
【0028】
カードは、案内要素31、32上に配置された移送ローラ35によって推進され、該移送ローラは、エンボス装置1を通じてカードを送給方向Xに移動するために、駆動ユニット(図示せず)によって回転される。移送ローラ35は、ゴムローラとして設計されることが好ましく、カードの通過中の高さの変化を補うことができるように、また、カードに駆動力を及ぼすために必要な特定の支持力を確保するように、少なくとも部分的にばね実装される。移送ローラ35の個々の軸は、例えば歯付ベルトまたは歯車を介して、互いに連結される(図示せず)。移送ローラ35のための駆動ユニット(図示せず)は、サーボモータとして設計されることが好ましい。エンボス加工すべきカードの送給および排出作業の他に、送給ユニット3には、カードをX方向に位置決めし、一方で、エンボス加工すべき位置で、対応する選択されたエンボスダイ41をY方向へ位置決めする作業も行う。
【0029】
図4は、U字形のマトリクスホルダ10を有し、エンボスマトリクス7およびさらなるエンボスマトリクス20をその脚部上に有する、エンボスユニット40を示す図である。共通のマトリクスホルダ10は、移送レール11に沿ってY方向に変位させることができ、それによって、エンボスマトリクス7をエンボス領域4の上で変位させること、およびさらなるエンボスマトリクス20をエンボス領域4の下で変位させることができ、したがって、エンボス加工すべきカードをそれらの間に収容することができる。エンボスマトリクス7、20は、いずれの場合においても、合わせ穴(guide hole)内に案内されるエンボスダイ41を有し、そのダイ表面(エンボス加工すべきシンボルに従って凸部および凹部を有する表面)は、互いに対向して位置し、例えばダイの行およびダイの列に配置される。各エンボスダイ41のダイ表面の対向端部には、選択されたエンボスダイ41を作動させるために、プランジャ83(図6を参照のこと)によって作動させることができるプランジャ表面42があり、それによって、ダイ表面上のシンボルを、エンボス加工すべきカード上にエンボス加工する。さらに、個々のエンボスダイ、または一組のドラム内の文字を交換するのではなく、マトリクスセット全体を交換することで時間が節約される。また、例えば異なる言語のマトリクスセットのための、自動フォント検出の使用にも好都合である。
【0030】
エンボスマトリクス7、20の複数のエンボスダイ41のうちの1つは、エンボスユニット40のY方向のそれぞれの運動によって、エンボス加工すべきカード上の位置でのY方向における、選択されたエンボスダイ41が位置するダイの行を位置決めすることによって、また、X方向に印字すべき位置に従って、送給ユニット3によってカードのX方向の位置を選択して、そこに向かって移動させることによって選択することができ、それによって、選択されたエンボスダイ41は、エンボス加工すべき位置の上に正確に位置決めされる。
【0031】
図5は、打撃機構6を示すエンボス装置1の一部を示す図である。打撃機構6は、打撃機構駆動62を介して回転されるカムディスク61を備える。カムディスク61は、第1の打撃レバー63および第2の打撃レバー64のそれぞれの第1の部分に連結され、それによって、打撃機構の駆動が行われ、打撃レバー63、64の旋回運動が行われる。カムディスク61が回転したときに、打撃レバー63、64の第2の端部が、カムディスク61によって、または例えばばね(図示せず)によって互いの方へ移動し、その後再び互いに遠ざかって移動するように、打撃レバー63、64は、それぞれの旋回軸点65に実装される。打撃レバー63、64の第2の端部は、XおよびY方向に垂直なZ方向に移動することができる圧力プレート66に連結され、該圧力プレートは、打撃レバー63、64の運動に従って互いの方へ移動され、その後、打撃レバー63、64による圧力プレート66への圧力が解放されたときに、ばね装置(図示せず)によって再び互いの反対方向へ押される。圧力プレート66は、いずれの場合においても、プランジャユニット8のプランジャ83が変位したときに、あらゆる変位状態で圧力プレート66によってその後方に作用させることができるように、エンボスマトリクス7の幅に本質的に対応する幅を有する。旋回可能な打撃レバーの代わりに、圧力プレートに直接作用する、2つの連結カムディスクを提供することもできる。この場合、カムディスクは、片側で互いに機械的に連結することができる。カムディスクは、別個の駆動装置によって作動させることもでき、該駆動装置は、制御ユニットによって、同期的にまたは他の好適な様態で作動する。
【0032】
図6は、プランジャユニット8をさらに詳細に示す図である。プランジャユニット8は、いずれの場合においてもプランジャ83が配置される外側端部に、第1のプランジャホルダ81と、第2のプランジャホルダ82とを備える。プランジャ83は、打撃機構6の圧力プレート66に割り当てられた圧力面84を有する。それぞれのプランジャ表面85は、圧力表面84に対向して配置され、打撃機構6の圧力プレート66によって打撃または圧力が及ぼされたときに、エンボスユニット40の選択されたエンボスダイ41のプランジャ表面42を打撃し、したがって、エンボス領域内のエンボス加工すべきカードの方向にエンボスダイを移動させる。エンボスダイ41からプランジャ83を再び遠ざけるために、プランジャ83のばね弾性支点が提供される。該支点は、プランジャ83のための案内においてそれぞれのプランジャホルダ81、82の外側端部に提供することができるが、さもなければ、プランジャ83のそれぞれの圧力面84に力が印加されたときに、その後方が互いの方へ押され、その後、力が取り除かれたときにプランジャ83が再び互いに遠ざかって移動するように、プランジャホルダ81、82全体が弾性様態で載置される。プランジャホルダ81、82、およびプランジャ83は、2つの方向に変位させることができる。プランジャホルダ81、82は、第1の調整モータ86によってY方向に変位させ、第2の調整モータ87によってX方向に変位させることができる。一方で、カード上のY方向の異なる位置に印字できるように、プランジャホルダをY方向に変位させる必要がある。さらに、プランジャホルダ81、82は、エンボスマトリクス7の異なるダイ列から、エンボスダイ41を選択することができるように、X方向に変位させることもできる。
【0033】
エンボスマトリクス7は、マトリクスの形態で配置された別々に作動可能なエンボスダイ41を有し、該ダイは、プランジャユニット8のプランジャ83によって個々に選択して作動させることができる。これは、エンボスマトリクス7およびプランジャ83が互いに対して変位可能であり、それによって、打撃機構6によって、プランジャ83が、エンボスダイ41上に作用するエンボス圧力を及ぼされて、印字すべきカードがエンボス加工されるように、エンボスマトリクス7内の選択されたエンボスダイ41が、エンボス加工すべき位置の方へ移動され、その後(または同時に)、選択されたエンボスダイ41がプランジャ83によって前方へ移動されるような方法で、エンボスマトリクス7が、エンボス領域4の上に配置されるという点で、本質的に達成される。エンボス高さ、すなわちエンボス加工すべき文字の深さは、打撃機構6の動作距離を変化させて好都合に決定することができる(プランジャのストロークを変化させることで、エンボス深さが変化する)。
【0034】
図7は、印字テープユニット15を示す図であり、該ユニットは、エンボス加工中に、それぞれのエンボスダイ41とエンボス加工すべきカードの表面との間に配置される、印字テープ16を提供する。印字テープユニット15は、印字テープ16が巻き出される供給ロール71と、使用済みの印字テープが巻き取られる巻き取りテープ72とを有する。印字テープユニット15のコンパクトな構造のために、印字テープ16は、複数のローラ73を通じて案内される。
【0035】
図8は、本発明によるエンボス装置のさらなる実施形態を示す図であり、図中、同じ要素、または同じ機能を有する要素には同じ参照番号が付与される。送給ユニット3に加えて、例えば送給ユニット3と略同一の様態で設計され、さらなるエンボス領域26にカードを送給する、さらなる送給ユニット25も提供される。送給ユニット3、25は、互いに平行に配置されることが好ましい。エンボスユニット40は、移送レール11によって、エンボスユニット40を、カードが送給ユニット3によって送給されるエンボス領域4の上、およびカードがさらなる送給ユニット25によって送給されるエンボス領域26の上の両方に配置できるように本質的に設計される。
【0036】
エンボス加工は、通常、エンボス領域内に位置するカードが停止している間に行わなければならないので、2つの送給ユニット3、25が提供された場合、それぞれのエンボス領域4、26の装填は、交互の様態で行うことができ、それによって、エンボス領域におけるカードの引き通しおよび取り出しには全く影響を及ぼさないか、または、総じて、システムのスループットに比較的小さい影響しか及ぼさない。換言すれば、印字したカードの排出、および印字すべき次のカードの送り込みによって生じる、エンボスユニットのあらゆる待ち時間を生じること無く、エンボスユニットを使用して、エンボス領域4内のカード、およびエンボス領域26内のさらなるカードを交互に印字することができる。したがって、直前のカードがまだ処理されている間に、新しいカードをその中に送給しておくことができる。
【0037】
図9は、図8の実施形態の平面図である。エンボス領域4内のカード、およびエンボス領域26内のさらなるカードの両方を印字するために、プランジャユニット8およびエンボスユニット40をY方向に変位させなければならないことは明らかである。
【0038】
図10、11、および12は、送給ユニット90を備えた、本発明のさらなる実施態様の異なる図であり、該ユニットでは、ガイド溝33、34を通じたカードの移送は、移送ローラ35によって行われずに、歯付ベルト92によって行われる。歯付ベルトは、送給ユニット3の側部要素31と32との間に配置され、搬送用歯91を有する。搬送用歯91は、カード区画を画定し、その中にカードが配置され、したがって、個々のカードは、それらがどの時点にあるかが分かるように、ガイド溝33、34を通じて画定された様態で案内される。歯付ベルト92は、対応する偏向ローラ95を介して好適な駆動装置94(例、ステッピングモータ)によって駆動される、エンドレスベルトとして設計されることが好ましい。このように、カードは、図3に示される送給ユニットの場合の、移送ローラ35によって行われるような摩擦による力の伝達の代わりに、嵌合した形態の力の伝達によって送給方向に移動させることができる。したがって、本実施形態では、ローラの摩擦値を変化させる環境の影響による、カードの位置決め精度の低下は全く生じない。
【0039】
エンボス加工すべき所定のシンボルに従った個々の駆動および運動を協調させる、制御ユニット(図示せず)が提供される。例えば、送給ユニット3の駆動ユニット、エンボスマトリクス7、20の変位運動、プランジャユニット8の変位運動、および打撃機構6の作動は、互いに適合させた一連の運動に従って作動される。カードが引き出されたときに、これは、エンボス領域内4へ変位され、印字すべきシンボルに従った様態で、すなわち、エンボスマトリクス7上で使用すべき選択されたエンボスダイ41の位置の上に位置決めされる。エンボスマトリクス7は、次いで、選択されたエンボスダイ41が、エンボス加工すべき位置の上に位置決めされるように、エンボス領域4の上でY方向に変位される。同時または略同時に、プランジャユニット8は、プランジャが、選択されたエンボスダイ41の上(Z方向)に配置されるように作動される。打撃機構6の作動は、概して周期的な様態で行われ、カード、マトリクス、およびプランジャ83の位置決めが完了するとすぐに、圧力プレート66を介したプランジャ83への加圧が行われるように適合される。
【0040】
プランジャユニット8によるエンボスダイ41と打撃機構6との分離によって、エンボス装置の動作中の振動が低減される。
【0041】
本願明細書に開示された全ての特徴は、それらが個々に、または組み合わせとして従来技術に対して新規である限りにおいて、本発明の本質的事項として請求される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに、特にプラスチックカードにエンボス加工するためのエンボス装置(1)であって、
エンボス領域(4)内のエンボス加工すべき位置の上に位置決めすることができる、変位および作動可能なエンボスダイ(41)を備えたエンボスデバイスを備え、
該エンボスデバイスは、
前記作動可能なエンボスダイ(41)を前方へ移動させるための垂直に変位可能なプランジャ(83)を有するプランジャユニット(8)と、
前記エンボスダイ(41)によって前記エンボス領域(4)内のカード上にエンボス加工を行うために、前記プランジャユニット(8)の前記プランジャ(83)に圧力を印加するための打撃機構(6)と
を備え、
カードを前記エンボス領域(4)に送給するための送給ユニット(3)が提供されることと、複数の個々に作動可能なエンボスダイ(41)を備えたエンボスマトリクス(7)も提供されることとを特徴とし、前記エンボスマトリクス(7)は、前記エンボス領域(4)内のエンボス加工すべき位置に、選択されたエンボスダイ(41)を垂直および/または水平に位置決めするために、Xおよび/またはY方向に変位させることができるように設計されている、エンボス装置(1)。
【請求項2】
前記エンボスマトリクス(7)を、前記カードの横方向の送給方向に対して略横方向に変位させるためのアクチュエータが提供されることによって、前記選択されたエンボスダイ(41)が、エンボス加工すべき位置に依存する様態で、横方向に対し前記カード上に位置決めされることを特徴とする、請求項1に記載のエンボス装置(1)。
【請求項3】
前記送給ユニット(3)は、案内溝(33、34)を備えることを特徴とし、前記案内溝(33、34)は、互いに平行に配向され、前記カードをそれらに沿って前記送給方向に移送することができる、請求項1または2に記載のエンボス装置(1)。
【請求項4】
前記送給ユニット(90)の前記案内溝(33、34)の前記送給方向に沿って、嵌合した形態によって前記カードを移送するために、印字すべき前記カードが配置されるカード区画を画定する歯付ベルト(92)を備えた、移送装置が提供されることを特徴とする、請求項3に記載のエンボス装置(1)。
【請求項5】
前記エンボスダイ(41)と、エンボス加工すべき位置との間に印字テープ(16)を提供する、印字テープユニット(15)が提供されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの回転可能なカムディスク(61)を備えた打撃機構(6)が提供されることによって、前記プランジャユニット(8)の前記プランジャ(83)の一部が、前記カムディスク(61)の位置に依存した様態で、圧力によって作動することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項7】
前記打撃機構(6)は、定位置に配置され、前記プランジャ(83)は、前記XおよびY方向に変位させることができることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項8】
前記打撃機構(6)は、変位可能な様態で配置され、前記プランジャ(83)および前記打撃機構(6)が互いにY方向に連結されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項9】
各エンボス領域のうちの対応するエンボス領域(4、26)内にカードを送給するための、複数の送給ユニット(3、25)が提供され、前記エンボス領域(4、26)は、前記エンボスマトリクス(7)によって該領域に連続して接近させることができるように配置されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項10】
前記送給ユニットは、エンボス加工すべきカードを、それぞれのエンボス領域(4)内に交互に提供するように適合されることを特徴とする、請求項9に記載のエンボス装置(1)。
【請求項11】
互いに適合させた様態で、前記エンボスマトリクス(7)の調整運動、前記送給ユニット(3)の前記プランジャユニット(8)の運動を制御し、さらに前記打撃機構(6)による圧力の印加も制御するための制御ユニットが提供されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項12】
前記エンボス領域に関して前記エンボスデバイスに対向して配置されたさらなるエンボスデバイスが提供され、
個々に作動可能なエンボスダイを備えたさらなるエンボスマトリクス(20)であって、前記エンボス領域(4)内のエンボス加工すべき位置に、前記さらなるエンボスダイのうちの選択された1つを位置決めするために、変位可能な様態で設計されたさらなるエンボスマトリクス(20)と、
前記作動可能なさらなるエンボスダイのうちの選択された1つを前方へ移動させるためのさらなるプランジャ(83)と、
前記さらなるプランジャ(83)に圧力を印加するためのさらなる打撃機構と
をさらに備え、
前記打撃機構、プランジャ、およびエンボスマトリクス(7、20)は、エンボス領域(4)に同時に両側からエンボス圧力を印加するように連結されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンボス装置(1)。
【請求項13】
エンボス領域(4)内でカードにエンボス加工するための方法であって、
前記エンボス領域内の前記カード上のエンボス加工すべき位置の上で、Xおよび/またはY方向に変位させることができるように設計され、複数の個々に作動可能なエンボスダイ(41)を備えた、エンボスマトリクス(7)を位置決めするステップと、
変位可能なエンボスマトリクス(7)内に配置された前記作動可能なエンボスダイ(41)を前方へ移動させるように、垂直に変位可能なプランジャを使用するステップと、
前記エンボス領域(4)内のカードが、変位可能なエンボスマトリクス(7)内に配置された前記エンボスダイ(41)によってエンボス加工されるように、前記プランジャ(83)に圧力を印加するステップと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2009−542462(P2009−542462A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−517284(P2009−517284)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056883
【国際公開番号】WO2008/003777
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(508110962)ミュールバウアー アーゲー (10)
【Fターム(参考)】