説明

カードプリンタ

【課題】印字方向が一方向に限定された印字ヘッドを用いても、装置の構成や制御系が複雑とならずに、カード媒体への両面に対して短時間で印字を行うことができるカードプリンタを提供する。
【解決手段】カードプリンタ1の制御部71は、印字ヘッド25がカード搬送路12に対して上部に位置する正転状態にして、カード搬入排出口11から搬入されたカード2の表面に印字する。そして、制御部71は、カード2を印字部20の後端に搬送して一時的に停留させる。そして、制御部71は、回転機構27で印字部20を180度回転させて、印字ヘッド25がカード搬送路12に対して下部に位置する反転状態にする。続いて、制御部71は、停留させたカード2を逆方向に搬送して、印字部20へ搬送してカード2の裏面に印字を行い、カード搬入排出口11からカード2を排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気カード、接触式ICカード、非接触式ICカード等、両面に印字面を有するカード媒体の両面に印字を行うカードプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
図1乃至3は、従来のカードプリンタの概略構成を示す側面図である。一方向に搬送するカード媒体には印字ができ、反対方向に搬送するカード媒体には印字ができない、印字方向が一方向に限定された印字ヘッドにより、カードの表裏に印字するカードプリンタとしては、従来3つの構成があり、下記のように印字処理を行う。
【0003】
第1に、搬送路の片側に印字ヘッド103を1つ備えた構成のカードプリンタ101は、まず、図1(A)に示すように、搬入排出口102からカード2が挿入されると、搬送機構104でカード2を搬送して、カード2の表面に印字ヘッド103で印字を行い、一旦カード2を搬入排出口102から排出する。操作者は、反転させたカード2を搬入排出口102から再挿入する。カードプリンタ101は、図1(B)に示すように、搬送機構104でカード2を搬送して、挿入されたカード2の裏面に印字を行い、カードを搬入排出口102から排出する。
【0004】
第2に、搬送路の両側に表面用印字ヘッド113と裏面用印字ヘッド114を1つずつ備えた構成のカードプリンタ111は、まず、図2に示すように、搬入排出口112からカード2が挿入されると、搬送機構115でカード2を搬送して、カード2の表面に表面用印字ヘッド113で印字を行う。続いて、カードプリンタ111は、搬送機構115でカード2を裏面用印字ヘッド114の後方に搬送して停止させる。そして、カード2を逆方向に搬送してカード2の裏面に裏面用印字ヘッド114で印字を行い、搬入排出口112からカード2を排出する。
【0005】
第3に、カード反転機構125を備えた構成のカードプリンタ121(例えば、特許文献1を参照。)は、まず、図3に示すように、搬入排出口122からカード2が挿入されると、搬送機構124でカード2を搬送して、カード2の表面に印字ヘッド123で印字を行い、印字が終了するとカード2をカード反転機構125に搬送し、カード反転機構125でカード2を反転させて、このカードを印字ヘッド123の前方(搬入排出口122側)へ搬送する。続いて、カードプリンタ121は、搬送機構124でカード2を搬送してカード2の裏面に印字ヘッド123で印字を行い、カード2を逆方向に搬送して搬入排出口122から排出する。
【特許文献1】特開2003−252487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1〜図3に示した従来のカードプリンタでは、いずれの構成においても、カードの表裏に対して印字を行うことができる。しかしながら、上記従来のカードプリンタでは、カードの表裏に印刷するために、多くの時間が必要であったり、装置の構成が複雑になり装置の大型化や装置コストの上昇が発生したりするという問題があった。
【0007】
すなわち、図1に示したカードプリンタ101では、装置の操作者がカード2を反転させなければならず、操作者の作業が繁雑であり、また、片面ずつ印字を行うため、カード2の搬送距離及び印字時間が長くなるという問題があった。
【0008】
また、図2に示したカードプリンタ111では、1つの制御系で2つの印字ヘッド113・114を制御しなければならず、制御回路や印字処理が複雑になるとともに、装置本体のコストが高価になるという問題があった。また、これに伴い装置本体のサイズが大きくなるという問題があった。
【0009】
さらに、図3に示したカードプリンタ121では、印字ヘッド123の印字方向が一方向に限定されていることから、カード2の表面を印字して、カード反転機構125でカードを反転した後に、一旦カード2を印字ヘッドの印刷方向手前の位置まで移動させてから、再度カード2の裏面に印字を行うことになり、カード2の搬送距離及び印字時間が長くなるという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、印字方向が一方向に限定された印字ヘッドを用いても、装置の構成や制御系が複雑とならずに、カード媒体への両面に対して短時間で印字を行うことができるカードプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0012】
(1)カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体を搬送するカード媒体搬送路と、前記カード媒体搬送路を搬送されるカード媒体に印字を行う印字ヘッドと、を備えたカードプリンタにおいて、
前記印字ヘッドに対向して設けられたプラテンローラと前記印字ヘッドとが一体的に構成され、前記カード媒体搬送路に対して点対称に180度回転可能な印字手段と、
前記印字手段を180度回転させる回転手段と、
前記印字ヘッドによりカード媒体の一方の面に印字させた後、前記印字ヘッドよりも後方に前記カード媒体を搬送し、前記回転手段により前記印字手段を180度回転させてから、前記カード媒体を逆方向に搬送し、前記印字ヘッドによりカード媒体の他方の面に印字させた後、前記カード媒体を外部へ排出する制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
この構成においては、印字手段は、プラテンローラと前記印字ヘッドが一体的に構成され、カード媒体搬送路に対して、プラテンローラと印字ヘッドが点対称の位置関係に配置されて、180度回転可能である。また、制御手段は、カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体の一方の面に印字ヘッドにより印字された後に、印字ヘッドよりも後方にカード媒体を搬送し、回転手段により印字手段を180度回転させると、このカード媒体を逆方向に搬送し、印字ヘッドによりカード媒体の他方の面に印字された後に、前記カード媒体を外部へ排出する。したがって、カードプリンタは、カード媒体がカード媒体搬送路を一往復する間に、その両面に印字することができるので、カード媒体の両面への印字を最短の搬送距離で行うことができ、両面印刷を短時間で行うことが可能となる。また、印字ヘッドを1つのみ備えているので、印字ヘッドの制御系を簡素化できる。
【0014】
(2)前記カード媒体搬送路の前記印字ヘッドよりも後方に配置され、前記カード媒体を検出する第1センサを備え、
前記回転手段は、一方の面に印字されたカード媒体の後端を前記第1センサが検出すると、前記印字手段を180度回転させることを特徴とする。
【0015】
この構成においては、カード媒体搬送路の印字ヘッドよりも後方に配置された第1センサが一方の面に印字されたカード媒体の後端を検出すると、回転手段は印字手段を180度回転させる。したがって、カード媒体が印字ヘッドよりも後方に確実に搬送されてから印字手段を回転させることができ、カードの破損等を防止して、確実にカード媒体の両面に印字を行うことができる。
【0016】
(3)前記カード媒体搬送路の前記印字ヘッドよりも前方に配置され、前記カード媒体を検出する第2センサを備え、
前記回転手段は、他方の面に印字されたカード媒体の後端を前記第2センサが検出すると、前記印字手段を180度回転させることを特徴とする。
【0017】
この構成においては、カード媒体搬送路の印字ヘッドよりも前方に配置された第2センサが、他方の面に印字されたカード媒体の後端を検出すると、回転手段は印字手段を180度回転させる。したがって、カード媒体が印字ヘッドよりも前方に確実に搬送されてから印字手段を回転させることができ、カードの破損等を防止し、また、次のカード媒体に対しても印字をすぐに行うことができる。
【0018】
(4)前記カード媒体搬送路の前記カード媒体搬入口よりも後方に、前記カード媒体を検出する第3センサを備え、
前記制御手段は、前記カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体の前端を前記第3センサが検出すると、前記カード媒体を前記印字ヘッドへ搬送することを特徴とする。
【0019】
この構成においては、カード媒体搬入口の後方に配置された第3センサが、カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体の前端を検出すると、搬送手段はカード媒体を印字ヘッドへ搬送する。したがって、カードプリンタは、カード媒体がカード媒体搬入口へ搬入されると、速やかに印字を開始できる。
【0020】
(5)カード媒体の特定面の画像を記憶する記憶手段を備え、
前記第3センサは、カード媒体の一方の面を読み取るイメージセンサであり、
前記制御手段は、前記第3センサが読み取ったカード媒体の一方の面の画像が、前記記憶手段が記憶する特定面の画像と異なる場合には、前記カード媒体を前記搬入口から排出することを特徴とする。
【0021】
この構成においては、第3センサはイメージセンサなので、カード媒体搬送路の入口へ搬送されるカード媒体の前端の検出だけでなく、カード媒体の片面の画像を読み取ることが可能である。したがって、カード媒体搬送路の入口へ搬送するカード媒体の一方の面の画像が、特定面の画像と異なる場合には、カード媒体の表裏が逆であるため、カード媒体に印字する前にカード媒体搬入口から直ちにカード媒体を排出させることができ、カード媒体に表裏逆に印字してしまうのを防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のカードプリンタでは、印字ヘッドとプラテンローラが一体的に構成された印字手段が、カード媒体搬送路に対して点対称に180度回転するので、カード媒体がカード媒体搬送路を一往復する間に、その両面に印字することができる。このため、従来のカードプリンタと比較して、カード媒体の搬送距離や印字時間を最短にすることができる。また、印字ヘッドを1つだけ備えているので、装置の構成や制御系が複雑になることがなく、シンプルな構成のカードプリンタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図4は、カードプリンタの概略構成を示す側面図である。カードプリンタ1は、両面に印刷可能なカード媒体であるカード2の両面、すなわち表面及び裏面に情報を印刷する装置である。ここで、カード2としては、磁気カード、接触式ICカード、非接触式ICカード等両面に印字が可能なカードであれば、特に限定しない。また、カードプリンタ1では、カード2がカード搬送路12を往復するが、以下の説明では常に、カード2の搬送方向(進行方向)の前側をカード2の前端と称し、カード2の搬送方向(進行方向)の後ろ側をカード2の後端と称する。
【0024】
図4(A)に示すように、カードプリンタ1は、カード2を挿入・排出するためのカード搬入排出口11、及びカード搬入排出口11から挿入(搬入)されたカード2の搬送路であるカード搬送路12を備えている。また、カードプリンタ1は、カード搬送路12の中間に、カード2に印字を行う印字ヘッド25、及び印字ヘッド25に対向して設置された駆動ローラであるプラテンローラ26がフレーム21に一体的に設けられた印字部20を備えている。図4(B)に示すように、印字部20は、カード搬送路12に対して点対称に180度回転可能である。すなわち、印字部20は、カード搬送路12に対して、前記印字ヘッド25とプラテンローラ26とが点対称の位置関係に配置されて、180度回転可能であり、回転手段である回転機構27により回転される。
【0025】
ここで、図4(A)に示すように、印字ヘッド25がカード搬送路12に対して上部に位置する状態を、正転状態と称する。また、図4(B)に示すように、印字ヘッド25がカード搬送路12に対して下部に位置する状態を、反転状態と称する。また、印字ヘッド25は、印字方向が一方向に限定されている。
【0026】
カードプリンタ1は、カード搬送路12における印字部20よりも前方に、つまりカード搬入排出口11側に、カード2を搬送するローラ対13・14、カード搬入排出口11におけるカード2の挿入または排出を検出する光学式センサの搬入排出センサ15、カード2の後端の通過を検出する光学式センサである前方センサ16、及びローラ対13・14を駆動するモータ17を備えている。
【0027】
また、カードプリンタ1は、カード搬送路12における印字部20よりも後方に、つまりカード搬入排出口11と反対側に、カード2を搬送するローラ対32・33、カード2の後端の通過を検出する光学式センサである後方センサ34、及びローラ対32・33を駆動するモータ35を備えている。
【0028】
ここで、図4には、カード搬入排出口11の後方に配置された第3センサである搬入排出センサ15、印字部20よりも前方に配置された第2センサである前方センサ16、及び印字部20よりも後方に配置された第1センサである後方センサ34として、光学式通過センサを一例として示しているが、これに限るものではなく、例えば、光学式反射センサを用いることも可能である。また、搬入排出センサ15としては、光学式センサに代えてCCDやCMOSなどのイメージセンサを用いることも可能である。搬入排出センサ15としてイメージセンサを用いた場合には、カード2の画像を読み込むこともできるので、カード2の挿入または排出の検出に加えて、カード2の表裏を判定することができる。
【0029】
ローラ対13・ローラ対14、プラテンローラ26、ローラ対32・ローラ対33において、隣接する2つのローラ間の各間隔は、カード2の全長Lcよりも短くなるように構成されている。
【0030】
また、カード搬送路12に設置した搬入排出センサ15の検出位置と、カード搬入排出口11と、の距離L1は、カード2の搬送方向における全長Lcよりも短くなるように構成されている。これにより、後述するカードプリンタ1の制御部71(不図示)は、搬入排出センサ15によりカード2の前端を検出することで、カード搬入排出口11からカード2が挿入されたことを検出できる。また、カードプリンタ1の制御部71(不図示)は、搬入排出センサ15によりカード2の後端を検出した際には、カード2の前端がカード搬入排出口11から突出した状態にすることができる。
【0031】
さらに、図4(A)に示すように前記正転状態の場合の印字ヘッド25の印字位置と、カード搬送路12に設置した前方センサ16の検出位置と、の距離L2は、一例としてカード2の表面における前端側の印字開始位置からカード2の後端までの長さLhと等しくなるように構成されている。これにより、カードプリンタ1の制御部71(不図示)は、前方センサ16によってカード2の後端を検出することで、カード2の表面の印字開始位置から印字を行うことができる。
【0032】
加えて、図4(B)に示すように前記反転状態の場合の印字ヘッド25の印字位置と、カード搬送路12における印字ヘッド25の後方に設置した後方センサ34の検出位置と、の距離L3は、一例としてカード2の裏面における前端側の印字開始位置からカード2の後端までの長さLrと等しくなるように構成されている。これにより、カードプリンタ1の制御部71(不図示)は、後方センサ34によってカード2の後端を検出することで、カード2の裏面の印字開始位置から印字を行うことができる。
【0033】
また、前記距離L2を任意の値としておき、カード搬入排出口11から印字部20へ搬送されるカード2の前端を前方センサ16で検出すると、前方センサ16が出力するパルスをカウントすることで、カード2の搬送量(搬送距離)を求めるようにしても良い。この場合、カード2の搬送量(搬送距離)が予め設定した値になると、印字ヘッド25でカード2の表面に印字を開始するように設定することで、カード2の表面における印字開始位置から印字を行うことができる。
【0034】
また、同様に、前記距離L3を任意の値に設定しておき、ローラ対33から印字部20の方向へ搬送されるカードの2の前端を後方センサ34で検出すると、後方センサ34が出力するパルスをカウントすることで、カード2の搬送量(搬送距離)を求めるようにしても良い。この場合、カード2の搬送量(搬送距離)が予め設定した値になると、印字ヘッド25でカード2の裏面に印字を開始するように設定することで、カード2の裏面における印字開始位置から印字を行うことができる。
【0035】
図5は、図4に示したカードプリンタの一部構成を変更したカードプリンタの側面図である。ここで、プラテンローラ26がモータにより駆動されない従動ローラの場合には、図5に示すように、ローラ対14とローラ対32の間をカード2の搬送方向の全長Lcよりも短くする必要がある。また、前記のように距離L2と長さLh、及び距離L3と長さLrを等しくなるように構成する場合には、カード搬送路12に対するローラ対14と前方センサ16の位置関係と、カード搬送路12に対するローラ対32と後方センサ34の位置関係と、を入れ替える必要がある。
【0036】
次に、印字部20及び回転機構27の詳細な構成について説明する。図6は、印字部及び回転機構の構成を示す正面図である。図7は、印字部及び回転機構の構成を示す側面図である。図6に示すように、フレーム21は、対向して配置されたフレーム21aとフレーム21bとから成る。フレーム21aとフレーム21bとは、印字ヘッド25及びプラテンローラ26をそれらの両側から支持する。フレーム21a及びフレーム21bは円形に形成され、フレーム21aの中心には印字ヘッド25と反対側に延出し、水平に配置された回転軸41aが設けられ、フレーム21bの中心には印字ヘッド25と反対側に延出し、水平に配置された回転軸41bが設けられている。さらに、フレーム21aに対向して本体フレーム51aが鉛直に立設され、フレーム21bに対向して本体フレーム51bが鉛直に立設されている。加えて、本体フレーム51aには、回転軸41aを回転自在に軸支する孔51a1が形成され、本体フレーム51bには、回転軸41bを回転自在に軸支する孔51b1が形成されている。
【0037】
フレーム21a及びフレーム21bにおいて、その中心よりも下側に、プラテンローラ26を回転自在に軸支するための孔21a1・孔21b1が形成されている。また、フレーム21a及びフレーム21bにおいて、その中心よりも上側に、印字ヘッド25を上下方向に移動自在に軸支するための長孔21a2・21b2が形成されている。
【0038】
フレーム21a及びフレーム21bの外周(図6におけるフレーム21a及びフレーム21bの上端部)には、印字ヘッド25のケーブル25kや、後述するソレノイド44a及びソレノイド44bのケーブルを配線するためのケーブルガイド42が接合されている。なお、ケーブル25kは、印字ヘッド25が上下方向に移動しても問題がないように、余裕を持たせてケーブルガイド42に取り付けたり、カール加工を施したケーブルを用いたりすると良い。
【0039】
ケーブルガイド42と印字ヘッド25の間には、バネ43a・43bが取り付けられている。また、印字ヘッド25の一方の側面25aには軸25ajが設けられ、他方の側面25bには軸25bjが設けられている。軸25ajは長孔21a2を介して印字ヘッド25の一方の側面25aから水平方向に延出し、軸25bjは長孔21b2を介して印字ヘッド25の他方の側面25bから水平方向に延出する。
【0040】
また、フレーム21aにはソレノイド44aが取り付けられ、フレーム21bにはソレノイド44bが取り付けられている。ソレノイド44aからフレーム21aの中心方向に延出するプランジャ45aは軸25ajに当接し、ソレノイド44bからフレーム21bの中心方向に延出するプランジャ45bが軸25bjに当接する。
【0041】
カード2への印字を行う際にソレノイド44a及びソレノイド44bを動作させると、プランジャ45aにより軸25ajがプラテンローラ26の方向に押され、プランジャ45bにより軸25bjがプラテンローラ26の方向に押されて、印字ヘッド25とプラテンローラ26とでカード2を挟持する。また、カード2への印字が終了した際に、ソレノイド44a及びソレノイド44bの動作を停止させると、プランジャ45aがソレノイド44aに引き込まれ、プランジャ45bがソレノイド44bに引き込まれるので、バネ43a・43bにより印字ヘッド25がプラテンローラ26と反対の方向に引っぱられて、印字ヘッド25はプラテンローラ26と離れた状態になる。
【0042】
また、プラテンローラ26を、カード2を搬送する駆動ローラとして使用する場合には、フレーム21bに薄型のモータ28を設けて、このモータ28に取り付けた平歯車29から、プラテンローラ26の軸26bjに取り付けた平歯車30に、モータ28の動力が伝わるように構成すると良い。これにより、プラテンローラ26を、モータ28により回転させて、カード2を搬送する駆動ローラとして使用することができる。
【0043】
回転軸41aの端部には、平歯車61が取り付けられている。また、本体フレーム51aには、回転自在な平歯車62と、モータ64が取り付けられ、モータ64の軸には平歯車63が取り付けられている。平歯車61、平歯車62、平歯車63、及びモータ64によって回転機構27が構成され、前記のように印字部20は、回転機構27により180度回転される。
【0044】
本体フレーム51bには、図7に示すように、孔51b1を中心として、C形の長孔51b2が形成されている。ケーブルガイド42は、この長孔51b2から水平方向に延出し、途中で直角に曲げられており、ケーブル25kは、印字部20が回転する際の支障とならないように、このケーブルガイド42に沿って配線されている。
【0045】
また、孔51b1を通過する鉛直線と長孔51b2が交差する2カ所の点50a・50bの近傍、つまり長孔51b2の両端部に、正転ストッパ53・54と、光学式の正転検出センサ55・光学式の反転検出センサ56と、が設けられている。
【0046】
印字部20は、回転機構27により回転されると、正転ストッパ53にケーブルガイド42が当接して停止し、正転状態となる。正転検出センサ55は、印字部20が正転状態で停止したことを確認するために設けられており、ケーブルガイド42の有無を検出する。一方、印字部20は、回転機構27により反対方向に回転されると、反転ストッパ54にケーブルガイド42が当接して停止し、反転状態となる。反転検出センサ56は、印字部20が反転状態で停止したことを確認するために設けられており、ケーブルガイド42の有無を検出する。
【0047】
次に、図8は、カードプリンタの制御系統のブロック図である。図8に示すように、CPUから成る制御部71は、カードプリンタ1の各部を制御する。すなわち、制御部71は、搬入排出センサ15、前方センサ16、後方センサ34、正転検出センサ55、及び反転検出センサ56のいずれかから出力された信号を検出する。また、制御部71は、この信号に応じて、駆動回路72に信号を出力して、モータ17、モータ28、モータ35、回転機構27のモータ64、ソレノイド44a、及びソレノイド44bの動作を制御する。さらに、制御部71は、メモリ74に情報を記憶させたり、メモリ74から情報を読み出したりする。加えて、制御部71は、各センサから出力された信号に応じて、メモリ74から情報を読み出し、印刷回路73に信号を出力して、印字ヘッド25の動作を制御する。
【0048】
次に、カードプリンタ1の動作をフローチャートに基づいて説明する。図9・図10は、カードプリンタがカードの両面に印字を行う処理を説明するためのフローチャートである。ここで、以下の説明では、搬入排出センサ15としてイメージセンサを用いた場合について記載する。制御部71は、搬入排出センサ15が読み取ったカード2の表面の画像を、記憶部であるメモリ74に予め記憶させている。また、カードプリンタ1では、正転状態のときにカード2の表面に印字し、反転状態のときにカード2の裏面に印字するように設定されている。
【0049】
図9に示すように、カードプリンタ1の制御部71は、カード2がカード搬入排出口11から挿入されるまで待機しており、カード2がカード搬入排出口11から挿入されたことを、搬入排出センサ15で検出すると(s1)、正転検出センサ55が出力する信号により、印字部20が正転状態で停止しているか確認する(s2)。制御部71は、印字部20が正転状態で停止していない場合には、駆動回路72に制御信号を出力して、印字部20が正転状態となるようにモータ64を駆動させ(s3)、印字部20が正転状態となったことを正転センサが検出して信号を出力すると(s4)、駆動回路72に制御信号を出力してモータ64の駆動を停止させる(s5)。
【0050】
一方、制御部71は、ステップs2において、正転検出センサ55が出力する信号により印字部20が正転状態で停止していることを確認できた場合には、制御部71は、駆動回路72に信号を出力して、モータ64の駆動を停止させる(s5)。そして、制御部71は、モータ17によりローラ対13・14を駆動させて、カード2をカード搬送路12から印字部20へ搬送する(s6)。このとき、搬入排出センサ15は、カード2の片面の画像を読み取っている。制御部71は、搬入排出センサ15で読み取った画像と、メモリ74から読み出したカード2の表面の画像と、を比較する(s7)。制御部71は、両画像が異なる場合には、カード2が誤って裏面を上にしてカード搬入排出口11から挿入されたと判断し、駆動回路72に制御信号を出力して、ローラ対13・14によりカード2がカード搬入排出口11から排出されるようにモータ17を制御する。そして、制御部71は、搬入排出センサ15で、カード2の後端の通過を検出して、カード2が排出されたと判断すると、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ17の動作を停止させる(s8)。そして、ステップs1の処理を行う。
【0051】
一方、制御部71は、ステップs7において比較した2つの画像が一致する場合には、カード2が正しく表面を上にしてカード搬入排出口11から挿入されたと判断し、そのまま、ローラ対13・14によりカード2を印字部20へ搬送させる(s9)。
【0052】
制御部71は、前方センサ16でカード2の後端を検出すると(s10)、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ17を停止させるとともに、ソレノイド44a・ソレノイド44bを動作させて、プランジャ45a・プランジャ45bにより、印字ヘッド25をプラテンローラ26の方向に移動させて、カード2を印字ヘッド25及びプラテンローラ26により挟持した状態にする(s11)。
【0053】
続いて、制御部71は、メモリ74からカード2の表面に対して印字する情報を読み出して、印刷回路73に制御信号を出力し、カード2の表面に対して印字する情報を印字ヘッド25に印字させる(s12)。印刷回路73は、カード2の表面に対して印字する情報を全て印字すると(s13)、印字ヘッド25の印字動作を停止させる(s14)。
【0054】
制御部71は、後方センサ34でカード2の後端の通過を検出すると(s15)、駆動回路72に制御信号を出力して、ソレノイド44a・ソレノイド44bの動作を停止させて、プランジャ45aがソレノイド44aに引き込まれ、プランジャ45bがソレノイド44bに引き込まれた状態にする。このとき、印字ヘッド25は、バネ43a・43bによりプラテンローラ26と反対の方向に引っぱられて、印字ヘッド25はプラテンローラ26と離れた状態になる。また、制御部71は、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ35を停止させてカード2の搬送を停止するとともに、モータ64を動作させて印字部20を180度回転させる(s16)。
【0055】
制御部71は、反転検出センサ56が信号を出力すると(s17)、印字部20が反転状態で停止したと判断して(s17)、駆動回路72に信号を出力し、モータ64の駆動を停止させる(s18)。
【0056】
続いて、図10に示すように、制御部71は、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ35によりローラ対32・33を駆動させて、カード2を印字部20へ搬送する(s19)。
【0057】
制御部71は、後方センサ34でカード2の後端を検出すると(s20)、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ35を停止させるとともに、ソレノイド44a・ソレノイド44bを動作させて、プランジャ45a・プランジャ45bにより、印字ヘッド25をプラテンローラ26の方向に移動させて、カード2を印字ヘッド25及びプラテンローラ26により挟持した状態にする(s21)。続いて、制御部71は、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ17・モータ35を駆動して、カード2をカード搬入排出口11の方向へ搬送する。また、制御部71は、メモリ74からカード2の裏面に対して印字する情報を読み出して、印刷回路73に制御信号を出力し、カード2の裏面に対して印字する情報を印字ヘッド25に印字させる(s22)。印刷回路73は、カード2の裏面に対して印字する情報を全て印字すると(s23)、印字ヘッド25の印字動作を停止させる(s24)。
【0058】
制御部71は、前方センサ16でカード2の後端の通過を検出すると(s25)、駆動回路72に制御信号を出力して、ソレノイド44a・ソレノイド44bの動作を停止させて、プランジャ45aがソレノイド44aに引き込まれ、プランジャ45bがソレノイド44bに引き込まれた状態にする。このとき、印字ヘッド25は、バネ43a・43bによりプラテンローラ26と反対の方向に引っぱられて、印字ヘッド25はプラテンローラ26と離れた状態になる。また、制御部71は、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ35を停止させるとともに、モータ64を駆動させて、印字部20を180度回転させて正転状態にする(s26)。
【0059】
制御部71は、正転検出センサ55が出力する信号により、印字部20が正転状態で停止していることを確認すると(s27)、駆動回路72に信号を出力し、モータ64を停止させる(s28)。
【0060】
また、制御部71は、搬入排出センサ15でカード2の後端の通過を検出すると(s29)、駆動回路72に制御信号を出力して、モータ17を停止させる(s30)。このとき、カード2は、その前端がカード搬入排出口11から突き出た状態となる。操作者は、カードプリンタ1のカード搬入排出口11からカード2が突出しているので、容易にカード2を引き抜くことかできる。
【0061】
以上のように、カードプリンタでカードの両面に印字を行う場合には、途中での操作者が操作を行うことなく、一連の処理動作が行われる。また、カードがカード搬送路を一往復する間にカードの両面に印字できるので、カードの搬送距離が最小限で済み、両面印字処理を短時間で実行できる。
【0062】
なお、以上の説明では、カードプリンタ1がカード2の搬入と、カード2の排出を行うカード搬入排出口11を備えた構成について説明したが、これに限るものではなく、他の構成であっても良い。図11は、カードプリンタの別の概略構成を示す側面図である。例えば、図11(A)に示すカードプリンタ1Kのように、カード2を挿入するカード搬入口4と、カードを排出するカード排出口5とを設けて、カード搬入口から搬入されたカード2を搬送するカード搬送路12と、カード排出口5へ排出するカード2の搬送路6と、が印字部の手前で交差し、切り替え器7により搬送路の切り替えを行うように構成することも可能である。また、図11(A)に示したように、複数のカード2をストックしておき、順番にカード2をカード搬入口へ供給するカード供給装置8をカード搬入口4に設けることも可能である。このような構成により、カードプリンタ1Kでは、複数のカード2の両面に印字が必要な場合でも、効率良く処理を行うことができる。
【0063】
また、図11(B)に示すように、カードプリンタ1Hにおいて、カード搬入排出口11の直後に印字部20を設けるように構成することも可能である。これにより、カード搬送路を大幅に短くできるので、カードプリンタにカードを挿入してから、両面に印字されたカードが排出されるまでの印字時間をさらに短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来のカードプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図2】従来のカードプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図3】従来のカードプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図4】カードプリンタの概略構成を示す側面図である。
【図5】図4に示したカードプリンタの一部構成を変更したカードプリンタの側面図である。
【図6】印字部及び回転機構の構成を示す正面図である。
【図7】印字部及び回転機構の構成を示す側面図である。
【図8】カードプリンタの制御系統のブロック図である。
【図9】カードプリンタがカードの両面に印字を行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図10】カードプリンタがカードの両面に印字を行う処理を説明するためのフローチャートである。
【図11】カードプリンタの別の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1,1K,1H−カードプリンタ 2−カード 11−カード搬入排出口 12−カード搬送路 13,14,32,33−ローラ対 15−搬入排出センサ 16−前方センサ 17,28,35,64−モータ 20−印字部 21,21a,21b−フレーム 25k−ケーブル 25−印字ヘッド 26−プラテンローラ 27−回転機構 34−後方センサ 42−ケーブルガイド 43a−バネ 44a,44b−ソレノイド 45a,45b−プランジャ 51a,51b−本体フレーム 53−正転ストッパ 54−反転ストッパ 55−正転検出センサ 56−反転検出センサ 29,30,61,62,63−平歯車 71−制御部 72−駆動回路 73−印刷回路 74−メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体を搬送するカード媒体搬送路と、前記カード媒体搬送路を搬送されるカード媒体に印字を行う印字ヘッドと、を備えたカードプリンタにおいて、
前記印字ヘッドに対向して設けられたプラテンローラと前記印字ヘッドとが一体的に構成され、前記カード媒体搬送路に対して点対称に180度回転可能な印字手段と、
前記印字手段を180度回転させる回転手段と、
前記印字ヘッドによりカード媒体の一方の面に印字させた後、前記印字ヘッドよりも後方に前記カード媒体を搬送し、前記回転手段により前記印字手段を180度回転させてから、前記カード媒体を逆方向に搬送し、前記印字ヘッドによりカード媒体の他方の面に印字させた後、前記カード媒体を外部へ排出する制御手段と、
を備えたカードプリンタ。
【請求項2】
前記カード媒体搬送路の前記印字ヘッドよりも後方に配置され、前記カード媒体を検出する第1センサを備え、
前記回転手段は、一方の面に印字されたカード媒体の後端を前記第1センサが検出すると、前記印字手段を180度回転させる請求項1に記載のカードプリンタ。
【請求項3】
前記カード媒体搬送路の前記印字ヘッドよりも前方に配置され、前記カード媒体を検出する第2センサを備え、
前記回転手段は、他方の面に印字されたカード媒体の後端を前記第2センサが検出すると、前記印字手段を180度回転させる請求項1また2に記載のカードプリンタ。
【請求項4】
前記カード媒体搬送路の前記カード媒体搬入口よりも後方に、前記カード媒体を検出する第3センサを備え、
前記制御手段は、前記カード媒体搬入口から搬入されたカード媒体の前端を前記第3センサが検出すると、前記カード媒体を前記印字ヘッドへ搬送する請求項1乃至3のいずれかに記載のカードプリンタ。
【請求項5】
カード媒体の特定面の画像を記憶する記憶手段を備え、
前記第3センサは、カード媒体の一方の面を読み取るイメージセンサであり、
前記制御手段は、前記第3センサが読み取ったカード媒体の一方の面の画像が、前記記憶手段が記憶する特定面の画像と異なる場合には、前記カード媒体を前記搬入口から排出する請求項4に記載のカードプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−190778(P2007−190778A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10443(P2006−10443)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】