説明

カードリーダ

【課題】 カードリーダにおいて、カード不正盗用などを有効に防止する。
【解決手段】 カードリーダ内部にカード状媒体Cが存在せず、シャッタ4が閉じた状態を待機状態として監視する。その待機状態から、カード状媒体Cが新たにカード挿入口から挿入された形跡も無いのに(カード挿入無検出)、シャッタ4が不正行為で無理に開かれた場合、検出時間計測部21はシャッタ開閉センサ6による検出中の実測検出時間t、つまりシャッタ4が開き放しになっている時間tを計測し続ける。この実測検出時間tと規定検出時間Tとを比較し、実測検出時間tが規定検出時間Tを超えると、異常判定部22は異常発生と判断し、上位装置の指示を待つことなく、異常対応部30にその異常に即応するよう指示する。異常対応部30は作動して不正者に対してトラップなど仕掛けてカード不正詐取するのを断念させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカードなどのカード状記録媒体(以下、カード状媒体と呼ぶ)に記録されたカード情報に基づいて処理するカードリーダに関し、さらに詳しくは、カード状媒体の不正盗用を防止する機能を備えたカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ATM装置(現金自動預け払い機)や自動販売機などに装備されたカードリーダは、カード挿入口から挿入されたカード状媒体の磁気記録領域などに記録された情報を読み取り処理、または書き込み処理をしてカード取引を行うための装置である。そうしたカードリーダは、カード挿入口から挿入されたカード状媒体が正規カードであることを検出すると、シャッタを開いてシャッタ内側にそのカード状媒体を取り込む。そして、取り込み後、シャッタを閉じる。その取り込みの際、シャッタが開かれると、駆動源のモータを起動させてカード搬送系を作動させ、カード状媒体を搬送ベルト上に取り込んで搬送中の位置をカード検出センサで検出しながら、カード情報を読み取りまたは書き込みを行う磁気ヘッドまで搬送してカード取引を実行する。通常、シャッタは、カード状媒体が搬送途中で詰まった(ジャム)ような場合、カード挿入口を閉塞することでその詰まったカード状媒体が悪意の第三者によって引き抜かれて不正盗用されるのを防止し(例えば特許文献1参照)、また悪戯によってカード挿入口から棒状の異物が挿入されてカード搬送系が損傷を受けるのを防止する防護機能を果たす(例えば特許文献2参照)。
【0003】
カード不正盗用を防止する防護機能を備えた従来のカードリーダとして次の構造も周知である。カード取引終了後にカード挿入口まで返却されてきたカードを顧客が取り忘れ、そのまま放置された状態になることがある。その場合次の顧客が取引できず、また不正者がその取り忘れカードを引き抜いて盗用するおそれがある。そうしたトラブルを防止するため、カード取り忘れによる放置状態が一定時間経過すると、カードリーダ装置内に設けたカード回収容器にその取り忘れカードを回収し、回収後はシャッタが閉じて次のカード取引まで待機状態となる。
【0004】
ところで、カード挿入口から挿入される異物は上記のような悪戯を目的とした棒状のものばかりではなく、搬送途中で詰まったカードやカード回収容器内の回収カードを不正詐取するために仕掛けられるトラップ(罠)である場合がある。トラップは予め不正者がカード取引を装ってカード挿入と一緒に挿入したり、また閉じて待機状態のシャッタを無理矢理こじ開けて仕掛けられる場合がある。仕掛けられたトラップが硬質の物体の場合は、シャッタがそのトラップを踏んだ格好になって完全に閉じきらないことで、異常が発生したことを検出することができる。しかし、トラップが軟質で薄いシート状の場合は、シャッタがそのシート状トラップの上から閉じてしまうので、トラップが仕掛けられたことの異常を検出できない。その結果、その後の取引で取り込まれたカード状媒体やカード回収容器内の回収カードをそのトラップで不正詐取するのを許してしまうおそれがある。
【0005】
上記特許文献2の場合、カード挿入口から挿入されたカード状媒体を取り込んだ状態であるにもかかわらず、シャッタが開き放しになっておれば、カード取り込み時に一緒にトラップが仕掛けられているかも知れないとの予測に基づいて、カードリーダの制御系は異常発生と判断してその旨の警告を上位装置に通知し、その上位装置から指示を待って待機するようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開平13−222686号公報
【特許文献2】特開平11−39434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2を含む従来のカードリーダにあっては、トラップを仕掛けたことなどによる異常発生を上位装置に通報し、上位装置から指示されるまで対応待ち状態になって、カードリーダ自らは異常に対応しない。結果、そうした対応待ち中に不正者によるカード詐取を許してしまうおそれがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、異常発生時に自ら対応してカード不正盗用を未然に防止できるようにしたカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、カードリーダは、カード挿入口にカードリーダ内部へのカード状媒体の取り込みを許容する開閉自在なシャッタが設けられ、カード状媒体が正規のものであるときにカードリーダ内部に取り込んで所定の処理を行うように構成されたものにおいて、カード状媒体が前記カードリーダ内部に存在せずかつ前記シャッタが閉じた状態の待機状態で、前記カード挿入口からカード状媒体が新たに挿入されたという検出も無く、前記シャッタが開けられたことをシャッタ開閉検出手段が検出したときは制御手段が異常発生と判断して異常処理を行うようにしている。
【0010】
したがって、この請求項1記載のカードリーダは、カードリーダ内部にカード状媒体が取り込まれておらず、存在していない状態でしかもシャッタが閉じた状態を待機状態とする。この待機状態において、カード挿入口からカード状媒体が新たに挿入されたという検出が無いのに、シャッタが開かれたことをシャッタ開閉検出手段が検出した場合、制御手段はそれを異常発生と判断し、上位装置などからの指示を待つことなく、自ら異常に対処する。
【0011】
また、請求項2に記載のカードリーダは、制御手段はシャッタ開閉検出手段による検出時間を予め設定した規定検出時間Tとシャッタの開状態時に実際に検出中の実測検出時間tとを比較して、規定検出時間Tを実測検出時間tが超えたとき異常発生と判断する異常判定部を有するとともに、この異常判定部からの指示で異常に対応する異常対応部を有する。
【0012】
したがって、この請求項2記載のカードリーダは、待機状態からシャッタが開かれると、それを検出するシャッタ開閉検出手段の検出時間が計測される。この実測検出時間tが予め設定した規定検出時間Tよりも長く、つまりシャッタが異常に開き放しになっておれば、異常判定部はそれを不正行為などによる異常発生と判断し、異常対応部に指示を送ってしかるべき異常に対応させる。この場合、請求項1で示したように、待機状態からカード状媒体が新たに挿入されたという形跡が無いのに、シャッタが異常に長く開かれておれば、不正者がトラップなどの異物を仕掛けるために、シャッタを無理にこじ開けるなどした異常と判断し、異常対応部を作動させて、カードが不正詐取されないように不正行為を断念させ、周囲には異常発生した旨を知らしめる。
【0013】
また、請求項3に記載のカードリーダは、異常対応部による異常対応処理が異常メッセージを画面表示して通知する表示部、異常を報知する警報部および前記シャッタを緊急閉鎖作動させるシャッタ非常閉鎖部の少なくとも1つによって構成されるようにしている。
【0014】
したがって、この請求項3に記載のカードリーダは、異常判定部から異常に対応するよう指示された異常対応部は、例えばカードリーダ機体に表示部として表示画面が設けられていれば、その画面に異常発生した旨のメッセージを表示することで周囲に注意を促す。その場の不正者に対しては、不正行為を感知したことを知らしめ、不正行為を止めるよう喚起する。また、例えばカードリーダ機体にブザーが鳴動する警報部が設けられていれば、その警報部を鳴らして周囲に警報し、また不正行為を止めさせる。また、例えばカードリーダ機体にシャッタ非常閉鎖部が設けられている場合、緊急作動信号を駆動系に送信してシャッタを緊急閉鎖動させることで、それ以上の不正行為をできないようにする。以上のような表示部、警報部およびシャッタ緊急閉鎖部のどれか1つを設けて異常対応部を構成する他、それら3つの対応部の幾つかを組み合わせて異常対応部として対応させる。
【発明の効果】
【0015】
したがって、請求項1に記載のカードリーダによれば、平常時の待機状態から、カード状媒体が新たにカード挿入口から挿入されたという形跡も無いのに、シャッタが開かれたならば、即座にそれを異常発生と判断して、上位装置からの指示を待つことなく、異常対応部を作動させて自らその異常に対応し、不正行為によるカード詐取などを未然に防止するのに有効である。
【0016】
また、請求項2に記載のカードリーダによれば、制御手段はシャッタが時間的にいつまで開き放し状態になっているか、規定検出時間Tか超えたかどうか監視を続け、規定検出時間Tを超えてなおかつシャッタが開いておれば、異常判定部はそれを異常発生と判断して異常対応部に指示し、不正者によるトラップ仕掛けなど不正行為が実行されないような処置をとることで、その後に取り込まれたカード状媒体が詐取されないよう未然に防止できる。
【0017】
また、請求項3に記載のカードリーダによれば、表示部、警報部、シャッタ非常閉鎖部の少なくともどれか1つを作動させることにより、周囲に注意を促し、また不正者当人にはそれ以上不正行為を働くのを止めさせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1〜図3において、本発明によるカードリーダの一実施形態を示す。このカードリーダは、本体1のハウジング前部に顧客がクレジットカードなどカード状媒体Cを挿入するカード挿入口2が設けられている。カード挿入口2から本体内部へ延びるカード搬送路には、挿入されたカード状媒体Cが磁気カードである場合、記録部の磁気ストライプに対面できる位置にカード検出用の磁気ヘッド3が転圧ローラと上下対向する位置に設けられている。また、そのカード検出用磁気ヘッド3による検出結果からカード状媒体Cが本来の正規カードではなく、不正カードであると判断された場合は閉状態を維持してそれ以上カードリーダ内部へのカード取り込みを阻止するシャッタ4が設けられている。挿入されたカード状媒体Cが正規カードならば、それを検知してシャッタ4は開き、その正規のカード状媒体Cの通過を許容する。また、平常時にシャッタ4を開閉動させる駆動源ソレノイド5が設けられ、このソレノイド5は平常時だけでなく異常発生時にもシャッタ4を緊急閉鎖させる本発明でいうシャッタ非常閉鎖部として機能するよう設定することができる。
【0020】
また、シャッタ4から内側のカードリーダ内部にはカード搬送路に沿って搬送ベルト7が配設され、この搬送ベルト7をカード搬送方向へ走行させるカード送り用駆動源であるモータ8が設けられている。また、モータ8の出力軸8aから出力された回転を設定回転速度に減速して搬送ベルト7に伝達するために、減速装置、プーリ9、搬送ローラ10〜12の原動ローラ10a,11a,12a、そしてベルト張力調整用テンションローラ13,14などのカード搬送系部材が配設されている。図中符号10b,11b,12bは原動ローラ10a,11a,12aに対をなす従動ローラである。搬送ローラ11と対向する位置には、搬送されてきたカード状媒体Cに記録されている磁気記録領域(磁気ストライプなど)のカード情報を読み込んだり、書き込んだりする磁気ヘッド15が配置されている。
【0021】
かかるカード搬送路には、カード搬送系の各部材の作動を検出する以下の検出手段が配置されている。
【0022】
シャッタ4の近傍には、このシャッタ4が開いているか閉じているかを検出する例えば光学式フォトカプラなどによるシャッタ開閉センサ6が配置されている。また、搬送ローラ10〜12に対応する位置には、それら各ローラをカード状媒体Cが例えば通過したかどうかでカード有無を検出するカード検出センサ16,17,18が配置されている。これらカード検出センサ16〜18には、発光素子と受光素子のダイオードからなるフォトセンサを用いることもできるし、マイクロスイッチなどのスイッチ手段を用いることができる。また、カード検出センサ16〜18の他にも、カード検出手段として、カードリーダ本体1の内部に設置されているカード回収容器(図示省略)に回収されたカード状媒体Cの有無を検出する回収カード検出センサ(図示省略)が設けられている。また、モータ8の出力軸8aと同軸上には、モータ回転速度を検出する手段としてエンコーダなどのモータ回転速度検出手段(図示省略)が配置されている。但し、以上のようなフィードローラやカード検出センサの設置数に限定されるものではない。
【0023】
本発明でいう制御手段の主要部をなすCPU(中央処理装置)20が設けられ、上記カード搬送系の各部材やセンサなどで構成されたカードリーダ全体の制御を司り、制御部および演算部に含まれる検出時間計数部21と異常判定部22を有し、記憶部であるROMやRAMに読み込みかつ書き込む情報やデータを送り、それら情報やデータを読み出して演算処理などを実行し、必要な部材に作動信号や命令信号を入出力部のI/Oポートから入出力して送受信可能となっている。例えば、CPU20には、カード挿入口2の近傍に設けられた上記カード検出用磁気ヘッド3からの検出信号が送信されて正規のカードか不正カードかを判定したり、また上記カード検出センサ16〜18から検出信号を受け取り、それら各センサ間距離はカード状媒体Cのカード長さ寸法と同等かそれに近い長さに設定されているので、カード先端部とカード後端部を検出する時間経過などを検出することで、CPU20はそのカード状媒体Cのカード長さを演算部で算出可能であり、正規カードか不正カードかを判定可能となっている。
【0024】
検出時間計数部21は、シャッタ4が開かれた際、シャッタ開閉センサ6がどれくらいの時間検出し続けるか、つまりシャッタ4がどれくらいの時間開かれているか、シャッタ開閉センサ6が開始してからの実測検出時間tをカウントし、それを逐一異常判定部22に送信して通知するようになっている。異常判定部22は、検出時間計数部21から送られてきた実測検出時間tと、予め設定してROMに記憶されている規定検出時間Tとを比較し、実測検出時間tが規定検出時間T内かまたは超えているかをチェックし、実測検出時間tが規定検出時間Tを超えてシャッタ4が異常に長く開いた状態になっておれば、異常発生と判断して異常対応部30に対してしかるべき対応を実行させる作動指示の信号を送信するようプログラムされている。
【0025】
そのようにCPU20の異常判定部22から指示を受ける異常対応部30としては、表示部31、警報部32およびシャッタ非常閉鎖部33のいずれか1つ、あるいはそれらの幾つかを組み合わせて構成することができる。
【0026】
表示部31は、カードリーダ本体1の適所に設けるか、あるいはカードリーダ本体1が組み込まれたATM装置などの機体に例えばLCD(液晶表示装置)などで設けることができ、CPU20の異常判定部22から指示された作動指示信号によって、カードリーダ本体1に異常が発生したことを文字メッセージなどで表示させることができる。この表示部31は、当カードリーダがホストコンピュータなどの上位装置に送受信可能に接続されている場合、その上位装置のモニタ画面やディスプレイ画面に異常発生した旨を表示させて通知できるよう、上位装置側に設けることもできる。
【0027】
警報部32は、カードリーダ本体1、ATM装置、あるいは上位装置のどれかに取り付けることができ、CPU20の異常判定部22からの指示信号でアラームブザーを鳴動させたり、LEDランプを点滅させるなどして異常発生を警報するように構成することができる。
【0028】
また、シャッタ非常閉鎖部33としては、上記したシャッタ開閉用ソレノイド5を利用することができ、平常作動している当該ソレノイド5に対して非常作動信号がCPU20の異常判定部22から送られた際、シャッタ4を緊急に下ろして閉鎖作動させる機能を備えさせることができる。
【0029】
次に、上述したカードリーダの動作を説明する。
【0030】
ATM装置用などとしてカードリーダの平常作動時、店頭にて顧客がクレジットカードやプリペイカードなどの磁気カード方式のカード状媒体Cをカード挿入口2から挿入すると、カード検出磁気ヘッド3によってそのカード状媒体Cの磁気ストライプが検出される。磁気ストライプの検出によってそのカード状媒体Cが正規カードと判断されると、その旨の信号に基づいてCPU20はソレノイド5を起動させてシャッタ4を開く。シャッタ開放により、カード状媒体Cはさらに装置内部へと顧客の手動で押し込まれ、これに同期してモータ8が起動して出力軸8aからプーリ9、搬送ベルト7などに伝達されてフィードローラ10〜12を正回転方向へ回転させ、カード状媒体Cを読み取りまたは書き込んでカード情報を取得するための磁気ヘッド15の位置まで搬送する。カード状媒体Cのカード情報に基づいてカード取引終了後、カード状媒体Cは逆送して戻されてカード挿入口2から顧客に返却される。
【0031】
返却されてきたカード状媒体Cが、顧客の取り忘れでカード挿入口2に放置された状態になることがある。次の顧客はカード取引をできず、また悪意の第三者によって盗用されてしまう危険がある。それを防ぐために、取り忘れカードがある程度の時間そのまま放置状態にされると、カード状媒体Cは順送されてカードリーダ本体1奥側のカード回収容器に回収される場合がある。
【0032】
また、カード状媒体Cが、カード検出センサ16〜18の各センサによる検出でカード搬送系の搬送路上に詰まって異常停止(ジャム)となる場合がある。
【0033】
一方、そうしたトラブルも無くシャッタ4が平常通り閉じた状態にあり、またカード回収箱内にも回収されたカードが存在していない場合、そうした情報は信号によってCPU20に通知され、かくして次の顧客によるカード取引まで待機状態となる。
【0034】
次に、かかる待機状態から異常が発生した場合、その対応処理の流れを図3の動作フローチャートで説明する。
【0035】
待機状態において(ステップ:S1)、他人のカード盗用を意図して不正者がシャッタ4をこじ開けてトラップを予め機体内に入れ込んで工作することがある。ステップS4において、シャッタ開閉センサ6はシャッタ4が開かれたか否かを検出し、不正者がトラップを仕掛けるためにシャッタ4がこじ開けられたような場合、それをシャッタ開閉センサ6が検出する(Yes)。
【0036】
すなわち、カード状媒体Cがカードリーダ内部に存在していない待機状態であるにも拘わらず(ステップ:S2)、また新たにカード状媒体Cがカード挿入口2から挿入された形跡も無いのに、言い換えればカード検出用の磁気ヘッド3による検出も無いのに(ステップ:S3)、シャッタ4が開けられたことを検出した信号はCPU20の検出時間計測部21に送信される。検出時間計測部21は送られてきた検出信号によって実測検出時間tをカウント開始し(ステップ:S5)、逐一その実測検出時間tを異常判定部22に通知する。異常判定部22は、ROMに格納されている規定検出時間Tを読み出し、シャッタ開閉センサ6による実測検出時間tとの比較を行い、実測検出時間tが規定検出時間Tの時間範囲内か超えたかを監視している(ステップ:S6)。実測検出時間tが規定検出時間Tを超えてt>Tとなったとき(Yes)、異常判定部22はそれを機構の故障などによる異常ではなく、不正行為によって発生した異常と判断して緊急作動信号を異常対応部30に送る(ステップ:S7)。
【0037】
また、このような異常対応をとる。かかる異常発生時、そうした事情を知らない上位装置からカードリーダ現状の装置状態を通知するよう指示を受けたり、あるいはカード取り込み許可を受けたような場合は、CPU20は現在そうしたカード取り扱い状況下にはなく異常事態である旨を上位装置に返答する。
【0038】
ステップS8において、CPU20の異常判定部22から緊急作動信号によって指示を受けると、異常対応部30では、例えば表示部31がカードリーダ本体1またはATM装置にLCD画面として設けられている場合、そのLCD画面に異常が発生したことのメッセージを表示させることにより、装置管理者を含む周辺に知らせて警告する。それにより、次の顧客に当ATM装置によるカード取引を一旦とどまらせたり、あるいはその場の不正者に対しては、それ以上不正行為を続けることを断念させる。このような異常処理と平行して、CPU20は異常発生した旨を上位装置に送信して即時報告し、例えば管理センターなどにおいてはオペレータを通して緊急通知がなされる。
【0039】
一方、異常対応部30としてカードリーダ本体1またはATM装置に警報部32が設けられている場合は、アラームブザーを鳴動させて異常発生を警報し、周囲の注意を喚起するとともに、不正者によるトラップ除去を促してそれ以上の不正行為を断念させる。
【0040】
また、異常対応部30としてシャッタ非常閉鎖部33が設けられている場合は、シャッタ開閉用のソレノイド5に対して非常作動信号が送られ、シャッタ4を下ろして緊急閉鎖させ、顧客のカード取引を一時止めたり、不正者による不正行為を断念させる。
【0041】
このように、異常対応部30としては表示部31、警報部32およびシャッタ非常閉鎖部33のうち、設けられたどれかを作動させることで異常に即応する。勿論、表示部31と警報部32を組み合わせて設けることも可能であるし、あるいはそれら3つを組み合わせて設ければ、それだけ不正防止に有効である。
【0042】
なお、以上は本発明の好適な形態の一例として述べられたが、そうした形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形させた実施形態も可能である。
【0043】
例えば、上記の本実施形態においてはシャッタ非常閉鎖部33として既存のソレノイド5を利用し、異常時に緊急作動させてシャッタ4を閉じる形態が説明された。しかし、トラップに硬質物体が仕掛けられて、緊急閉鎖作動させるシャッタ4がその硬質トラップのために完全に閉じないような事態が考えられる。そうした場合に対応させるべく、既存のシャッタ4およびソレノイド5とは別に、カードリーダのカード挿入口の前面部を覆って閉塞するような大型の非常専用シャッタおよびその駆動系を設ける実施形態も可能である。
【0044】
また、次のような実施形態も可能である。カード詐取を意図したトラップが仕掛けられ、そうした異常発生を検出した場合、CPU20からの制御信号によって、平常時はカード取り込み方向へ正回転動作する上記搬送ベルト7やフィードローラ10〜12などのカード搬送系に対して、逆回転動作させることにより仕掛けられたトラップをカード挿入口2から外部に排出させるように構成することも可能である。この場合、搬送ベルト7上に沿って仕掛けられたシート状のトラップを排除するのに有効である。
【0045】
以上の各実施形態において、上位装置からの指示を受けることなくカード取り込み処理を実行できるカード取り込み許可状態において、前述のようにシャッタ4が不正に開かれて異常と判断した時点で、カード状媒体Cがカード挿入口2から挿入されたとしても、それ以上内部への取り込みを行えないように禁止状態にすることができる。そのように取り込み禁止状態にすることで、上位装置はその事態を認識し、改めて上位装置からカード取り込み禁止の指示を発令しなくとも、カード状媒体Cをカードリーダ内部に取り込むトラブルを回避できる。
【0046】
さらに、本実施の形態では、磁気ヘッド15を用いて、カード状媒体Cの磁気ストライプに記録されている情報を読み取りまたは書き込む磁気カードリーダで説明しているが、ICカードリーダに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によるカードリーダの実施形態を概略的に示す側面図である。
【図2】実施形態の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】実施形態の異常時対応処理の流れを示す動作フローチャートである。
【符号の説明】
【0048】
1 カードリーダ本体
2 カード挿入口
6 シャッタ開閉センサ(シャッタ開閉検出手段)
16〜18 カード検出センサ
20 CPU(制御手段)
21 検出時間計測部
22 異常判定部
30 異常対応部
31 表示部
32 警報部
33 シャッタ非常閉鎖部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード挿入口にカードリーダ内部へのカード状媒体の取り込みを許容する開閉自在なシャッタが設けられ、カード状媒体が正規のものであるときにカードリーダ内部に取り込んで所定の処理を行うように構成してなるカードリーダにおいて、
カード状媒体が前記カードリーダ内部に存在せずかつ前記シャッタが閉じた状態の待機状態で、前記カード挿入口からカード状媒体が新たに挿入されたという検出も無く、前記シャッタが開けられたことをシャッタ開閉検出手段が検出したときは、制御手段が異常発生と判断して異常処理を行うようにしたことを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記制御手段は、前記シャッタ開閉検出手段による検出時間を予め設定した規定検出時間Tと前記シャッタの開時に計測された実測検出時間tとを比較して、規定検出時間Tを実測検出時間tが超えたとき異常発生と判断する異常判定部を有するとともに、この異常判定部からの指示で異常に対応する異常対応部を有することを特徴とする請求項1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記異常対応部は、異常メッセージを画面表示して通知する表示部、異常を報知する警報部および前記シャッタを緊急閉鎖作動させるシャッタ非常閉鎖部の少なくとも1つで構成されることを特徴とする請求項1または2に記載のカードリーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−155390(P2006−155390A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−347345(P2004−347345)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】