説明

カード供給装置及びオフセット印刷機

【課題】簡易な構成で、カードの捌きを確実に行い、製造コストを削減できるカード供給装置を提供する。
【解決手段】吸着ヘッド31がカードを吸着する前に、捌きコロ36間でカード群の上層側でカードKの両端面を挟み込んで持ち上げることにより最上側のカードKと2枚目以降のカードを捌く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給トレイに積層されたカード群から最上側のカードのみを分離して供給するカード供給装置及びオフセット印刷機に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷機を用いて名刺、葉書などの紙カードや、プリペイドカード、キャッシュカード、ICカードなどのプラスチックカードなどにカード印刷が行われている。このカードは、カード供給装置から一枚ずつ分離供給されて印刷部へ搬送してインキ像が印刷された後、UV乾燥機を通過させて印刷面を乾燥させ、排出装置によって排出トレイに排出される。
【0003】
図11(a)(b)(c)においてカード供給装置の一例について説明する。供給トレイ101には、カードKが積載されている。供給トレイ101は、図示しないエレベータ機構により昇降可能に設けられている。供給トレイ101に積載されたカードKは押さえばね102により後端側より前端側に向けて付勢されている。吸着ヘッド103は支持棒104に2箇所に設けられており、図示しない真空ポンプより吸引動作が行われる。支持棒104は図示しない揺動機構により揺動し、供給トレイ101に積載された最上側のカードKを吸着保持する吸着位置と搬送ベルト105と従動コロ106のニップ部へ受け渡す受渡し位置との間を往復動するようになっている。カードKの前端部には、カードKを捌き易くするためエアブローを行う送風部107や最上側のカードKと2枚目以降のカードKとを分離する分離爪108が設けられている。
【0004】
カード供給動作が開始されると、送風部107よりエアブローが行われて上層のカードKの前端部の捌き易くした状態で、支持棒104を移動させて吸着ヘッド103が吸着位置へ移動して最上側のカードKが吸着保持される。吸着ヘッド103は、カードKを吸着保持したまま支持棒104が反転移動し、最上側のカードKのみが分離爪108を乗り超えることで分離が行われる。そして、吸着ヘッド103が受渡し位置へ移動すると吸着動作を停止して搬送ベルト105と従動コロ106のニップ部へカードKを受け渡すようになっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した送風部107からのエアー吹出し動作と吸着ヘッド103のエアー吸引動作とは同一の真空ポンプから配管路が形成されて行われており、比較的高圧でエアーの吹き出し及び吸引を行う必要があるため、真空ポンプが大型になり、製造コストも上昇する。
また、プラスチック製のカードKの場合、静電気によるカード間に吸着力が作用してエアブローだけでは、捌き難いという課題がある。
【0006】
本発明は上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構成で、カードの捌きを確実に行い、製造コストを削減できるカード供給装置及びオフセット印刷機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
供給トレイに積層されたカード群から最上側のカードのみを分離して供給するカード供給装置において、積層されたカード群から最上側のカードのみを吸着して下流側へ供給する吸着ヘッドと、吸着ヘッドがカードを吸着する前に、積層されたカードを捌くカード捌き機構を備え、カード捌き機構は、カード群の上層側でカード両端面を挟み込んで持ち上げることにより最上側のカードと2枚目以降のカードとを捌くことを特徴とする。
また、カード捌き機構は、捌きコロ間でカード群の上層を挟み込んで持ち上げることで最上側のカードからカードどうしを分離させて捌くことを特徴とする。この場合、捌きコロは周面にギヤ歯が形成されたギヤローラが用いられ、ギヤローラ対を互いに逆方向へ同期をとって所定量回転させてギヤ歯間で最上側のカードからカードを順次挟み込んだままローラ間で挟持して捌くことを特徴とする。
また、カード高さを検出するカード高さセンサが設けられ、カード高さの減少を検出すると昇降機構はセンサがカードを検出する高さ位置まで供給トレイを上昇させることを特徴とする。更に、オフセット印刷機においては、上述したカード供給装置と、該カード供給装置から供給されたカードにインキ像を形成する印刷部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上述したカード供給装置を用いれば、カード捌き機構は、吸着ヘッドがカードを吸着する前に、カード群の上層側でカード両端面を挟み込んで持ち上げることにより最上側のカードと2枚目以降のカードとを捌くので、従来のような高出力の真空ポンプは不要であり、装置コストを低減できるうえに、樹脂製カードのように静電吸着が生じても機械力により分離することができ、カードの捌きが確実に行える。特に、捌きコロ間でカード群の上層を挟み込んで持ち上げることでカードを傷付けることなく最上側のカードから順次カードどうしを撓ませて分離させて捌くことができ、捌きコロとして周面にギヤ歯が形成されたギヤローラを用いることでカードどうしの捌きが確実に行える。また、カード高さセンサがカード高さの減少を検出すると昇降機構はセンサがカードを検出する高さ位置まで供給トレイを上昇させることで、連続したカード供給動作を確実に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係るカード供給装置及びオフセット印刷機の最良の実施形態について添付図面とともに詳細に説明する。以下では、樹脂製カードを供給するカード供給装置及び該カード供給装置を備えたオフセット印刷機について説明する。
【0010】
先ず、図5を参照してオフセット印刷機の概略構成について説明する。
図5において、カード供給装置1にストックされた樹脂カードは1枚ずつ分離供給され、送り装置2により所定のタイミングで印刷部3へ送り込まれる。印刷部3は、ワークにモノクロ印刷はもちろんカラー印刷が行えるようになっている。図示しないイメージスキャナにより読み取られた刷版の画像データ或いはパーソナルコンピュータなどに描かれた刷版の画像データに基づいてブランケットに形成されたインキ像が、ブランケット胴と圧胴とのニップ部をワークが通過する際に印刷が行われる。印刷部3でインキ像が印刷されたワークは、カード排出部4へ排出される。装置本体には操作部5が設けられており、印刷開始/印刷停止、印刷枚数、印刷速度、インキ濃度などを任意に入力設定できる。尚、印刷部3は水を使用せずインキのみ使用するタイプのオフセット印刷機であっても良い。
【0011】
次に、印刷部3の概略構成について図4を参照して説明する。
インキ壷6には、M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)、K(ブラック)のいずれか1色のインキを貯留している。また、インキフォンテンローラ7は、インキ壷6に貯留されているインキを下流側に配置されたインキディストリビュータ8に供給する。インキディストリビュータ8は、インキフォンテンローラ7とインキ送りローラ9との間を交互に接離動することにより、インキ量を調節して供給するようになっている。
【0012】
インキ送りローラ8に供給されたインキは下流側に配置され互いに圧接するインキ練りローラ群10により練られてインキが引き伸ばされてインキの偏りにより縞模様が発生するのを防止している。この練られたインキは、2箇所に設けられたインキ付けローラ11により、版胴12の版面へ供給される。また、水皿13に貯留された水は、汲み上げローラ14に汲み上げられて水送りローラ15により送られて水付けローラ16により版胴12の版面へ供給される。尚、印刷部3は水とインキを混合して使用するタイプでも水を使用せずインキのみ使用するタイプのオフセット印刷機の何れであっても良い。
【0013】
版胴12は金属製のシリンダーの周面に刷版が巻き付けられ、該刷版に塗付されたインキ像をブランケット胴17に転写するものである。刷版は例えば原画フィルムを露光してカードKに印刷される印刷画像が焼き付けられて形成される。インキ付けローラ11及び水付けローラ16は、版胴12に対して接離動可能になっており、印刷が開始されると、所定のタイミングで版胴12に接動して刷版に水及びインキを供給してインキ像を形成する。
【0014】
ブランケット胴17は、金属製のシリンダーの周面にゴム製のブランケットが巻き付けられている。圧胴18は金属製のシリンダーが用いられる。ブランケット胴17は固定されており、版胴12及び圧胴18が所定のタイミングで接離動するようになっている。本実施例の場合、印刷が開始されると先ず版胴12がブランケット胴17に圧接され(版圧が入る)、ブランケットに転写された後、圧胴18がブランケット胴17へ近接し(印圧が入る)、装置稼動中は印圧が入ったままであり、装置の稼動が停止すると印圧を解除するようになっている。
【0015】
次に、図3のブロック図を参照してオフセット印刷機の制御系の構成について説明する。
制御部19は、装置各部から入力された信号に基づいて装置各部へ制御指令を出力するCPU(図示せず)、各種動作プログラムが格納されたROM(図示せず)、入力されたデータやCPUのワークエリアとして使用されるRAM(図示せず)等を備えている。
【0016】
制御部19には、ブランケット胴17の回転軸に設けられたエンコーダ20よりエンコーダ出力信号(Z相、A相、B相出力信号)が入力される。また、カード供給装置1に設けられたカード高さセンサ21から供給トレイに積載されたカード高さの検出信号が入力される。また、操作部5からテンキー、ファンクションキーを用いて、印刷枚数、印刷濃度、印刷速度、シートサイズなどの様々な設定データが入力される。
【0017】
また、制御部19は、ブランケット胴17の駆動回路を兼用し、ブランケット胴17を回転駆動するメインモータ22を駆動制御する。また、制御部19は、カード供給装置1に設けられる真空ポンプ23を駆動制御する。また、制御部19は、後述する捌きコロを回転駆動する捌きコロ駆動モータ24を駆動制御する。更には、制御部19は、カード高さセンサ21の検出信号に応じてエレベータ駆動モータドライバ25を通じてエレベータ駆動モータ26を駆動制御し、供給トレイを昇降させる。尚、印刷部3は1色のみの単独機のみならず複数台連結されたカラー印刷用の複合機であっても良い。
【0018】
次に、カード供給装置1の構成について図1及び図2を参照して説明する。
図1において、供給トレイ27にはカードKが積層されている。両側の装置フレーム28には、上下に設けられたホイール29間に無端状のチェーン30が架設されている。供給トレイ27の一部はチェーン30に連繋しており、正逆回転可能なエレベータ駆動モータ26を所定方向へ回転駆動すると、チェーン30が周回して供給トレイ27が上昇若しくは下降するようになっている。
【0019】
吸着ヘッド31は、カードKの幅方向に沿って設けられた支持棒32に2箇所で支持されている。支持棒32は揺動軸を中心に揺動する揺動アーム33の先端側に連繋している。吸着ヘッド31は、供給トレイ27に積層されたカードKを吸着保持して送り装置2の搬送ベルト34及び従動コロ35のニップ部へ供給する。
【0020】
また、吸着ヘッド31がカードKを吸着する前に、積層されたカードKを捌くカード捌き機構が設けられている。カード捌き機構は、カード群の上層側でカードKの両側端面を押圧して最上側のカードKと2枚目以降のカードKとを挟圧しながら捌く捌きコロ36を備えている。この捌きコロ36によりカード両端を挟み込みなら回転することでカードKどうしを機械力によって分離させて捌く。この捌きコロ36には、周面にカードKの板厚分を挟み込める間隔でギヤ歯が形成されたギヤローラ(ゴムギヤ)が好適に用いられる。捌きコロ駆動モータ24によって各ゴムギヤを互いに逆方向へ同期をとって所定量回転させることでギヤ歯の間でカードKを挟持して捌くことができる。また、装置フレーム28には、カード高さセンサ21設けられている。カード高さセンサ21がカードKの減少を検出するとエレベータ駆動モータ26を起動して供給トレイ27を上昇させるようになっている。
【0021】
吸着ヘッド31は、エアー吸引動作を行う際にロッドが下方に伸びて最上側のカードKに押し当て得られ、カードKが吸着されるとロッドが上方に引き込まれるようになっている。本実施例ではエアブローによるカードKの捌きを行っていないため、吸着ヘッド31を作動させる真空ポンプ23(図4参照)は比較的小型で低出力のポンプを使用できる。
吸着ヘッド31は、予め捌きコロ36により捌かれた上層部のカード群のうち最上側のカードKを吸着保持して搬送ベルト34と従動コロ35のニップ部へ供給し、搬送ベルト34により送り装置2へ搬送される(図5参照)。
【0022】
また、図2(b)(c)において、供給トレイ27に積載されたカードKの前端側には分離爪37が設けられており、最上側のカードKとそれ以外のカード群とを分離するようになっている。また図2(a)において、カードKの後端側には押さえバネ38が設けられており、カードKを前方へ揃えるように付勢している。
【0023】
次に、カード供給装置のカード供給動作について図6(a)(b)のフローチャートに基づいて、図7乃至図10の状態図を参照しながら説明する。
先ず、図6(a)において、先ず、カード供給装置1の制御系に初期設定を行う。供給トレイ27にカードKを積載し(ステップS1)、カード高さセンサ21がカードKを検出可能な高さまでエレベータ駆動モータ26を駆動させて供給トレイ27を上昇させておく(ステップS2;図7参照)。次いで、捌きコロ駆動モータ24を起動して、捌きコロ36を所定量回転させ、上層のカード群を捌いた状態にしておく(ステップS3)。このとき、捌きコロ36が回転するにしたがって、最上側のカードKから捌きコロ36のギヤ歯に挟み込まれ(図8参照)後続のカードKもギヤ歯に挟み込まれて互いに離間して持ち上げられたまま停止する(図9参照)。以上で初期設定が終了する。
【0024】
次に、図6(b)において、カード供給動作が開始されると、吸着ヘッド31の吸引動作を開始し、揺動アーム33を作動させて吸着ヘッド31をカードKの吸着位置へ移動させて最上側のカードKを吸着保持したまま、揺動アーム33を反転移動させて搬送ベルト34へカードKを受け渡す(ステップS11;図10参照)。
【0025】
次いで、捌きコロ36を所定量回転させて捌かれたカードKの更なる挟み込みを行う(ステップS12;図9参照)。このとき、カード高さセンサ21がカードKを検出するか否かを判断し(ステップS13)、カードKを検出しなければ、エレベータ駆動モータ26を起動してカード高さセンサ21がカードKを検出するまで供給トレイ27を上昇させる(ステップS14)。次いで、更なるカード供給があるか否か(給紙終了か否か)を判断し、カード印刷を行う場合には、ステップS11からS14までのカード供給動作を繰り返し行い、カード印刷がなければカード供給動作を終了する。
【0026】
尚、カード供給装置は、オフセット印刷機に限らず、他の記録装置(例えばインクジェット記録装置など)に適用しても良い。また、カード捌き機構としては、捌きコロ36に限らず、押圧部材など他の機構を採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】カード供給装置の斜視説明図である。
【図2】カード供給装置の要部の正面図、右側面図及び平面図である。
【図3】オフセット印刷機の制御系のブロック図である。
【図4】印刷部の模式説明図である。
【図5】オフセット印刷機の説明図である。
【図6】初期設定動作及びカード供給動作のフローチャートである。
【図7】カード供給動作の状態説明図である。
【図8】カード供給動作の状態説明図である。
【図9】カード供給動作の状態説明図である。
【図10】カード供給動作の状態説明図である。
【図11】従来のカード供給装置の要部の正面図、右側面図及び平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 カード供給装置
2 送り装置
3 印刷部
4 カード排出部
5 操作部
6 インキ壷
7 インキフォンテンローラ
8 インキディストリビュータ
9 インキ送りローラ
10 インキ練りローラ
11 インキ付けローラ
12 版胴
13 水皿
14 汲み上げローラ
15 水送りローラ
16 水付けローラ
17 ブランケット胴
18 圧胴
19 制御部
20 エンコーダ
21 カード高さセンサ
22 メインモータ
23 真空ポンプ
24 捌きコロ駆動モータ
25 エレベータ駆動モータドライバ
26 エレベータ駆動モータ
27 供給トレイ
28 装置フレーム
29 ホイール
30 チェーン
31 吸着ヘッド
32 支持棒
33 揺動アーム
34 搬送ベルト
35 従動コロ
36 捌きコロ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給トレイに積層されたカード群から最上側のカードのみを分離して供給するカード供給装置において、
積層されたカード群から最上側のカードのみを吸着して下流側へ供給する吸着ヘッドと、
吸着ヘッドが吸着する前に、積層されたカードを捌くカード捌き機構を備え、
カード捌き機構は、カード群の上層側でカード両端面を挟み込んで持ち上げることにより最上側のカードと2枚目以降のカードとを捌くことを特徴とするカード供給装置。
【請求項2】
カード捌き機構は、捌きコロ間でカード群の上層を挟み込んで持ち上げることで最上側のカードからカードどうしを分離させて捌くことを特徴とする請求項1記載のカード供給装置。
【請求項3】
捌きコロは周面にギヤ歯が形成されたギヤローラが用いられ、ギヤローラ対を互いに逆方向へ同期をとって所定量回転させてギヤ歯間で最上側のカードからカードを順次挟み込んだままローラ間で挟持して捌くことを特徴とする請求項2記載のカード供給装置。
【請求項4】
カード高さを検出するカード高さセンサが設けられ、カード高さの減少を検出すると昇降機構が供給トレイをセンサが検出する高さ位置まで上昇させることを特徴とする請求項1記載のカード供給装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のカード供給装置と、該カード供給装置から供給されたカードにインキ像を形成する印刷部を備えたことを特徴とするオフセット印刷機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−124079(P2006−124079A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312636(P2004−312636)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【Fターム(参考)】