説明

カード回収機構およびカード発行装置

【課題】簡易な構成で、カードの回収時間を短縮することが可能なカード回収機構を提供すること。
【解決手段】カード回収機構55は、カード2を回収するカード回収庫37と、直線状に形成されるカード2の搬送路8からカード回収庫37へカード2を搬送する搬送ローラ11と、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部38とを備えている。ガイド部38は、カード回収庫37へのカード2の搬送時に搬送ローラ11の表面に向かう付勢力がカード2に生じる方向にカード2を撓ませながらカード2を案内するとともに、搬送ローラ11は、カード2がカード回収庫37に回収可能な状態までカード2を搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードの回収を行うカード回収機構およびこのカード回収機構を備えるカード発行装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、磁気カード等のカードの情報の再生やカードへの情報の記録を行うカードリーダ部と、使用前のカードが収納されたカードホッパと、使用後のカードが回収されるリジェクトボックスとを備え、カードの発行機能と回収機能とを有するカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1および2参照)。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダでは、カードホッパとリジェクトボックスとが上からこの順番で上下方向に重なるように配置されている。具体的には、カードが搬送される直線状の搬送路よりも上側にカードホッパが配置され、搬送路よりも下側にリジェクトボックスが配置されている。また、このカードリーダは、カードホッパおよびリジェクトボックスとカードリーダ部との間に、カードリーダ部に向かってカードを発行し、また、カードリーダ部からのカードを回収するためのカードの搬送機構を備えている。
【0004】
この特許文献1に記載された搬送機構では、リジェクトボックスにカードを回収する際、直線状の搬送路を搬送されたカードが搬送路よりも下側に配置されたリジェクトボックスへ案内されるため、カードは一旦撓んだ状態となる。ただし、カードが適切に搬送され、回収されるように、この搬送機構は、一旦撓んだカードが再び直線状に戻った状態で、カードの後端側部分が搬送可能となる位置に配置された取り込みローラを備えている。
【0005】
特許文献2に記載のカードリーダでは、カードホッパとリジェクトボックスとが上からこの順番で上下方向に重なるように配置されている。具体的には、カードホッパおよびリジェクトボックスは、直線状のカードの搬送路よりも上側に配置されている。また、このカードリーダは、カードホッパおよびリジェクトボックスとカードリーダ部との間に、カードリーダ部に向かってカードを発行し、また、カードリーダ部からカードを回収するためのフラッパと3連ローラとを備えている。
【0006】
この特許文献2に記載のカードリーダでは、リジェクトボックスにカードを回収する際、直線状の搬送路を搬送されたカードが搬送路よりも上側に配置されたリジェクトボックスへ案内されるため、フラッパによってカードは一旦撓んだ状態となる。ただし、カードが適切に搬送され、回収されるように、一旦撓んだカードが再び直線状に戻った状態で、カードの後端側部分が搬送可能となる位置に、3連ローラが配置されている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−159110号公報
【特許文献2】特開2001−243426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、この特許文献1および2に記載のカードリーダでは、リジェクトボックス(カード回収庫)へカードを回収するために、一旦撓んだカードが再び直線状に戻った状態で、カードの後端側部分が搬送可能となる位置に、取り込みローラあるいは3連ローラが配置されている。そのため、カード回収庫が設けられたカードリーダの構成が複雑になる。また、カードの搬送方向におけるカードリーダの全長も長くなり、カード回収庫までのカードの搬送時間が長くなるため、カードの回収時間を短縮することが困難である。
【0009】
そこで、本発明の課題は、簡易な構成で、カードの回収時間を短縮することが可能なカード回収機構およびこのカード回収機構を備えるカード発行装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のカード回収機構は、カードを回収するカード回収庫と、直線状に形成されるカードの搬送路からカード回収庫へカードを搬送する搬送ローラと、カード回収庫へカードを案内するガイド部とを備え、ガイド部は、カード回収庫へのカードの搬送時に搬送ローラの表面に向かう付勢力がカードに生じる方向にカードを撓ませながらカードを案内するとともに、搬送ローラは、カードがカード回収庫に回収可能な状態までカードを搬送することを特徴とする。
【0011】
ここで、本明細書において、「カード回収庫に回収可能な状態」とは、カードに別途、外力を与えなくても、カード回収庫にカードを回収できる状態をいう。すなわち、「搬送ローラは、カードがカード回収庫に回収可能な状態までカードを搬送する」とは、別途、カードの搬送手段を用いなくても、搬送ローラによるカードの搬送でカード回収庫にカードが回収できることをいう。
【0012】
本発明のカード回収機構では、ガイド部によって撓んだ状態のカードを搬送する搬送ローラが、カード回収庫に回収可能な状態までカードを搬送している。そのため、従来のように、一旦撓んだカードが再び直線状に戻った状態で、カードの後端側部分が搬送可能となる位置に、別途、搬送手段を配置する必要がなくなる。したがって、本発明では、カード回収機構が搭載される装置の構成を簡素化できる。また、搬送ローラとカード回収庫との距離を短縮できるため、カードの回収時間を短縮することが可能になる。
【0013】
また、本発明のカード回収機構では、ガイド部は、カード回収庫へのカードの搬送時に搬送ローラの表面に向かう付勢力がカードに生じる方向にカードを撓ませながらカードを案内している。そのため、搬送ローラによるカードの搬送力を確実に発生させることができる。その結果、本発明では、搬送ローラによるカードの確実な搬送および回収が可能になる。
【0014】
本発明において、カード回収機構は、搬送ローラに対向するとともに搬送ローラに向かって付勢されたパッドローラと、搬送ローラからカード回収庫に向かってカードが通過する第1通路とを備え、第1通路は、カード回収庫へ向かって搬送されるカードの後端が搬送ローラとパッドローラとの間を抜けたときに、カードが撓まないように構成されていることが好ましい。
【0015】
このように構成すると、搬送ローラとパッドローラとの間を抜けた後のカードが第1搬送路で引っ掛かるおそれが低減されるため、カードをより確実にカード回収庫へ回収できる。すなわち、搬送ローラとパッドローラの間を抜けた後のカードが撓んだ状態にあると、カードが直線状に復元する際に、第1搬送路の所定の構成部材間でカードが突っ張った状態となるおそれがあるが、このように構成すると、そのおそれがなくなるため、カードが第1搬送路で引っ掛かるおそれが低減される。
【0016】
本発明において、搬送ローラは、搬送ローラからカード回収庫に向かってカードを搬送する第1搬送方向と、第1搬送方向とは反対方向であって、カードに対して所定の処理を行うカード処理部から搬送ローラに向かってカードを搬送する第2搬送方向とにカードを搬送可能に構成され、ガイド部は、第1搬送方向にカードが搬送されるときには、カード回収庫へカードを案内し、第2搬送方向にカードが搬送されるときには、カード処理部から搬送ローラへのカードの搬送を許容することが好ましい。このように構成すると、ガイド部を用いて、カードが通過する通路を分岐することができる。
【0017】
本発明において、カード回収機構は、搬送ローラからカード回収庫に向かってカードが通過する第1通路と、カード処理部から搬送ローラに向かってカードが通過する第2通路とを備え、ガイド部は、第1通路および第2通路に少なくとも一部が配置される板バネを備えることが好ましい。このように構成すると、板バネを用いて、ガイド部の構成を簡素化できる。
【0018】
本発明のカード回収機構は、カードが収納されるカード収納部およびカード収納部に収納されるカードを搬送ローラに向かって送り出すカード送出機構を有しカード回収庫と上下方向に重なるように配置されるカード発行部を備えるカード発行装置に用いることができる。このように構成されたカード発行装置では、装置の構成を簡素化できる。また、カードの回収時間を短縮することが可能になる。さらに、搬送ローラによるカードの確実な搬送および回収が可能になる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明にかかるカード回収機構およびカード発行装置では、簡易な構成で、カードの回収時間を短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(カード発行装置の概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカード発行装置1の概略構成を側面から説明するための図である。
【0022】
本形態のカード発行装置1は、内部に収納されたカード2を発行する機能と、不要、使用済み、あるいは、エラーとなったカード2(以下、「不要なカード2」とする。)を回収する機能とを備えている。このカード発行装置1は、図1に示すように、カード2に記録された情報の再生および/またはカード2への情報の記録を行うカードリーダ3と、収納されたカード2を発行するとともに、不要なカード2を回収するカード発行回収部4と、カードリーダ3が載置されるとともにカード発行装置1の制御基板(図示省略)が収納される載置部5とを備えている。本形態では、載置部5に載置されたカードリーダ3とカード発行回収部4とは、図1の右側からこの順番で互いに接するように配置されている。
【0023】
なお、以下の説明では、図1の紙面手前側を「前」、図1の紙面奥側を「後(後ろ)」、図1の左側を「左」、図1の右側を「右」、図1の上側を「上」、図1の下側を「下」とする。また、以下では、図1におけるカード2の左端を「先端」、右端を「後端」とする。
【0024】
本形態のカード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。このカード2の表面には、たとえば、磁気情報が記録される磁気ストライプが形成されている。なお、カード2の表面には、ICチップが固定されても良い。また、カード2には、通信用のアンテナが内蔵されても良いし、カード2の表面に、感熱方式によって印字が行われる印字部が形成されても良い。さらに、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0025】
カードリーダ3は、右端に配置されカード2が挿入、排出されるカード挿入排出部7と、カード2が搬送される搬送路8と、搬送路8内に配置される3個の駆動ローラ9〜11と、駆動ローラ9〜11を駆動するローラ駆動機構12と、駆動ローラ9〜11にそれぞれ対向するとともに駆動ローラ9〜11に向かって付勢されたパッドローラ13〜15とを備えている。
【0026】
なお、カードリーダ3は、たとえば、使用されるカード2が磁気ストライプが形成された磁気カードである場合には、磁気ヘッド(図示省略)を備えている。また、カードリーダ3は、使用されるカード2がICチップが固定された接触式ICカードである場合には、IC接点(図示省略)を備え、使用されるカード2が通信用アンテナが内蔵された非接触式ICカードである場合には、通信用のアンテナ(図示省略)を備えている。さらに、カードリーダ3は、使用されるカード2に印字部が形成されている場合には、感熱方式で印字等を行うサーマルヘッド(図示省略)を備えている。
【0027】
搬送路8は、カード挿入排出部7の左端からカードリーダ3の右端に亘って、左右方向に直線状に形成されている。具体的には、搬送路8は、上側に配置されるブロック状の上搬送ガイド17と、下側に配置されるブロック状の下搬送ガイド18との間に直線状に形成されている。
【0028】
駆動ローラ9〜11は、搬送路8の上側に配置されている。具体的には、駆動ローラ9〜11の下端側が上搬送ガイド17よりも下側に突出するように、駆動ローラ9〜11が配置されている。また、本形態では、駆動ローラ9が搬送路8の右端部に配置され、駆動ローラ10が左右方向における搬送路8の略中心部に配置され、駆動ローラ11が搬送路8の左端部に配置されている。本形態では、左端部に配置される駆動ローラ11は、搬送路8からカード発行回収部4を構成する後述のカード回収庫37へカード2を搬送する搬送ローラとなっている。
【0029】
ローラ駆動機構12は、駆動ローラ9〜11のそれぞれの回転軸19〜21に固定される従動プーリ22〜24と、駆動ローラ10の回転軸20に従動プーリ23と平行に固定される従動大プーリ25と、駆動ローラ9〜11を駆動する駆動モータ26と、駆動モータ26の出力軸に固定された駆動プーリ27とを備えている。また、ローラ駆動機構12は、駆動プーリ27と従動大プーリ25との間に掛け渡されたタイミングベルト28と、従動プーリ22〜24に掛け渡されたタイミングベルト29と、タイミングベルト29の張力(テンション)を調整するための複数のテンションプーリ30とを備えている。なお、回転軸19〜21は、カードリーダ3のフレーム(図示省略)に回転可能に支持されている。
【0030】
本形態の駆動モータ26は、両方向に回転可能となっている。すなわち、駆動ローラ9〜11は、カード2を左右両方向へ搬送できるように、時計方向および反時計方向の両方に回転可能となっている。
【0031】
パッドローラ13〜15は、搬送路8の下側に配置されている。このパッドローラ13〜15はそれぞれ回転軸33〜35とともに回転可能となっている。また、回転軸33〜35は、パッドローラ13〜15がそれぞれ、駆動ローラ9〜11に圧接されるように、図示を省略する付勢手段によって、上方向に向かって付勢されている。
【0032】
カード発行回収部4は、内部に予め収納されたカード2を発行するカード発行部36と、不要なカード2を回収するカード回収庫37と、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部38とを備えている。図1に示すように、カード発行部36は、カード発行回収部4の上側部分に配置され、カード回収庫37は、カード発行回収部4の下端側に配置されている。具体的には、上下方向において、搬送路8よりも上側にカード発行部36が配置され、搬送路8よりも下側にカード回収庫37が配置されている。また、カード発行部36とカード回収庫37とは、上下方向で重なるように配置されている。
【0033】
カード発行部36は、発行前の複数のカード2が上下方向に積層され収納されるカード収納部39と、カード収納部39に収納された複数のカード2の中で一番下に収納されているカード2(最下位のカード2)を搬送路8に向かって(具体的には、駆動ローラ11に向かって)送り出すカード送出機構40とを備えている。本形態では、カード発行部36は、カード2に対して所定の処理を行う(具体的には、カード2の発行を行う)カード処理部である。
【0034】
カード収納部39は、上面が開口する直方体の箱状に形成されている。このカード収納部39の底面を形成する底面部39aには、カード送出機構40を構成する後述の送出爪42が通過する通過孔(図示省略)が形成されている。また、カード収納部39の右側壁39bの下端と底面部39aとの間には、カード収納部39に収納されるカード2が搬送ローラ11に向かって(右側に向かって)通過するゲート41が形成されている。このゲート41の上下方向の隙間は、1枚のカード2は通過できるが、2枚のカード2が重なった状態で通過できないように設定されている。
【0035】
カード送出機構40は、カード収納部39に収納された最下位のカード2の先端に係合するとともに、カード収納部39からカード2を1枚ずつゲート41に向けて送り出す送出爪42と、送出爪42が固定されるチェーン43と、チェーン43が掛け渡される一対のスプロケット44、45と、送出爪42を駆動する駆動モータ46と、駆動モータ46の動力をスプロケット45へ伝達する一対のプーリ47、48およびプーリ47、48に掛け渡されたタイミングベルト49とを備えている。
【0036】
図1に示すように、チェーン43およびスプロケット44、45は、底面部39aよりも下方に配置されている。プーリ47は、右側に配置されるスプロケット45の回転軸に、スプロケット45と平行に固定されている。プーリ48は、駆動モータ46の出力軸に固定されている。なお、駆動モータ46は、載置部5に配置されている
【0037】
スプロケット44、45が回転すると、送出爪42はチェーン43とともに、スプロケット44、45間を行き来する。本形態では、通常の動作では、スプロケット44、45は、図1における時計方向に回転するため、送出爪42がスプロケット44からスプロケット45に向かって移動するときには、送出爪42はスプロケット44、45よりも上側を通過する。そして、送出爪42は、最下位のカード2の先端に当接して、最下位のカード2をゲート41に向けて送り出す。また、送出爪42がスプロケット45からスプロケット44に向かって移動するときには、送出爪5はスプロケット44、45よりも下側を通過する。
【0038】
カード回収庫37は、上面が開口する直方体の箱状に形成されている。このカード回収庫37の内側の前後方向の幅は、カード2の短手方向の幅よりも広く、カード回収庫37の内側の左右方向の幅は、カード2の長手方向の幅よりも広くなっている。
【0039】
ガイド部38は、搬送路8を右側から左側に向かって搬送され、駆動ローラ11を通過したカード2の先端が当接する板バネ52と、板バネ52の動きを規制する規制ローラ53とを備えている。
【0040】
本形態では、ガイド部38と、カード回収庫37と、駆動ローラ11と、パッドローラ15と、上搬送ガイド17の左端側部分および下搬送ガイド18の左端側部分と等によって、カード2を回収するカード回収機構55が構成されている。ガイド部38の詳細な構成を含むカード回収機構55の詳細な構成を以下に説明する。
【0041】
(カード回収機構の構成)
図2は、図1に示すカード回収機構55を示す平面図である。図3は、図1に示すカード回収庫37にカード2が回収されるときのカード回収機構55の状態を示す図であり、(A)は、駆動ローラ11とパッドローラ15とにカード2が挟まれている状態を示し、(B)は、カード2の後端が、駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けたときの状態を示す。図4は、図1に示すカード発行部36からカード2が発行されるときのカード回収機構55の状態を示す図である。
【0042】
上述のように、本形態のカード回収機構55は、ガイド部38と、カード回収庫37と、駆動ローラ11と、パッドローラ15と、上搬送ガイド17の左端側部分および下搬送ガイド18の左端側部分と等によって構成されている。
【0043】
図3等に示すように、カード回収庫37の右端と上搬送ガイド17および下搬送ガイド18の左端とは、左右方向でほぼ一致している。すなわち、左右方向においては、駆動ローラ11とカード回収庫37とが隣接するように配置されている。より具体的には、カード2が右側から左側に向かって搬送されるときの搬送方向において、カード回収庫37は、駆動ローラ11の直後に配置されている。
【0044】
図2に示すように、上搬送ガイド17の左端には、右側に向かって窪む矩形状の凹部17aが形成されている。この凹部17aには、駆動ローラ11が配置されている。また、この凹部17aを、板バネ52の右端側部分が上下方向へ通過する。なお、下搬送ガイド18にも、板バネ52の右端側部分が上下方向へ通過可能な凹部(図示省略)が形成されている。
【0045】
板バネ52は、ステンレスの薄鋼板等の板状部材が3箇所で折り曲げられることで形成されている。この板バネ52は、図3等に示すように、右上がりに傾斜した状態でカード発行回収部4のフレーム(図示省略)に固定されている。具体的には、チェーン43およびスプロケット44、45の下方に板バネ52の左端側部分が配置され、駆動ローラ11の近傍に板バネ52の右端側部分が配置されるように、板バネ52の左端側部分がカード発行回収部4のフレームに固定されている。この板バネ52の傾斜角度θ(図3(A)参照)は、カード2を撓ませることが可能であり、かつ、駆動ローラ11によるカード2の搬送が可能となる角度に設定されている。なお、図2に示すように、板バネ52では、右端側の幅が右端に向かうにしたがって狭くなっており、上述のように、上搬送ガイド17に形成された凹部17aを、板バネ52の右端側部分が上下方向へ通過する。
【0046】
規制ローラ53は、カード発行回収部4のフレーム(図示省略)に固定された固定軸56に回転可能に取り付けられている。この規制ローラ53は、板バネ52の右端側部分の上限位置を規制する位置に配置されている。具体的には、規制ローラ53は、カード回収庫37の右端部分の上方に配置されている。また、規制ローラ53は、駆動ローラ11の左側で、駆動ローラ11に隣接するように配置されている。
【0047】
板バネ52は、カード発行回収部4のフレームに固定された左端側部分を支点として、上方向への付勢力を発生させるように、規制ローラ53に当接している。また、図3等に示すように、規制ローラ53に当接した状態の板バネ52の右端側は、上搬送ガイド17および下搬送ガイド18の左端側部分と、カード収納部39の底面部39aの右端との間を右上がりの斜め上方へ横切るように配置されている。
【0048】
以上のように構成されたカード回収機構55では、左側に向かって駆動ローラ11を通過するように搬送されるカード2は、図3に示すように、板バネ52の下側を通過してカード回収庫37へ回収される。すなわち、カード2がカード回収庫37へ回収されるときには、搬送路8からカード回収庫37に向かって、カード2は板バネ52の下側を通過する。
【0049】
具体的には、左側に向かって駆動ローラ11を通過したカード2は、駆動ローラ11とパッドローラ15との間に挟まれた状態で搬送され、やがて、規制ローラ53によって上方向への動きが規制されている板バネ52の下側の面にカード2の先端が当接する。カード2の先端が板バネ52に当接すると、図3(A)に示すように、カード2は、板バネ52に沿って左斜め下方へ案内されながら、駆動ローラ11によって搬送される。すなわち、駆動ローラ11によって搬送されるカード2は、板バネ52によって、カード2の先端側が下側に反るように撓みながらカード回収庫37に向かって案内される。換言すると、カード2は、カード回収庫37への搬送時に、板バネ52によって、駆動ローラ11の表面(下面)に向かう付勢力が生じる方向に撓みながらカード回収庫37へ案内される。
【0050】
また、カード2の後端が駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けると、図3(B)に示すように、カード2はそのまま、カード回収庫37に向かって落下する。すなわち、カードリーダ3に設置された駆動ローラ11によって、直接、カード回収庫37までカード2が搬送される。すなわち、駆動ローラ11は、カード2がカード回収庫37に回収可能な状態までカード2を搬送する。換言すると、駆動ローラ11は、カード2に別途、外力を与えなくても、カード回収庫37にカード2を回収できる状態までカード2を搬送する。
【0051】
ここで、本形態のカード回収機構55は、カード2の後端が駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けたときに、図3(B)に示すように、カード2が撓まないように構成されている。すなわち、上搬送ガイド17、下搬送ガイド18および規制ローラ53等のカード回収機構55の各構成は、カード2の後端が駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けたときに、板バネ52との間でカード2を撓ませないように形成され、また、板バネ52との間でカード2を撓ませない位置に配置されている。
【0052】
一方、カード発行部36から発行されるカード2は、図4に示すように、板バネ52の上側を通過して、カードリーダ3側へ発行される。すなわち、カード2が発行されるときには、カード2は板バネ52の上側を通過する。具体的には、まず、送出爪42によって先端が押されたカード2の後端が、板バネ52の上側の面に当接して、板バネ52を下側に撓ませる。その後、カード2が板バネ52の右端側部分に当接しながら板バネ52の上側を通過する。このとき、板バネ52の右端側部分は、上搬送ガイド17の凹部17aを通過して、下搬送ガイド18の凹部(図示省略)まで移動する。
【0053】
このように、板バネ52は、カードリーダ3からカード発行部36へカード2を搬入させないが、カード2が発行されるときには、カード発行部36からカードリーダ3へのカード2の搬送を許容している。
【0054】
なお、本形態では、搬送路8からカード回収庫37に向かう方向は、カード2の第1搬送方向である。また、カード発行部36から搬送路8に向かう方向は、第1搬送方向と反対の方向となるカード2の第2搬送方向である。さらに、カード2の回収時に、搬送路8からカード回収庫37に向かってカード2が通過する板バネ52の下側は、第1通路60となっている。また、カード発行時に、カード発行部36から搬送路8に向かってカード2が通過する板バネ52の上側は、第2通路61となっている。
【0055】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、板バネ52によって撓んだ状態のカード2を搬送する駆動ローラ11が、カード回収庫37に回収可能な状態までカード2を搬送している。そのため、従来のように、一旦撓んだカード2が再び直線状に戻った状態で、カード2の後端側部分が搬送可能となる位置に、別途、搬送手段を配置する必要がなくなる。したがって、本形態では、カード発行装置1の構成を簡素化できる。また、駆動ローラ11とカード回収庫37との距離を短縮できるため、カード2の回収時間を短縮できる。
【0056】
また、本形態では、板バネ52は、カード回収庫37へのカード2の搬送時に駆動ローラ11の表面に向かう付勢力がカード2に生じる方向にカード2を撓ませながらカード2を案内している。そのため、駆動ローラ11とカード2との接触力を高めることができ、駆動ローラ11によるカード2の搬送力を確実に発生させることができる。その結果、駆動ローラ11によってカード2を確実に搬送して、カード回収庫37へカード2を確実に回収することができる。
【0057】
本形態では、カード回収機構55は、カード2の後端が駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けたときに、カード2が撓まないように構成されている。すなわち、板バネ52の下側に形成される第1通路60は、カード2の後端が駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けたときに、カード2が撓まないように構成されている。そのため、駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けた後のカード2が第1搬送路60で引っ掛かるおそれが低減される。すなわち、駆動ローラ11とパッドローラ15との間を抜けた後のカード2が撓んだ状態にあると、カード2が直線状に復元する際に、第1搬送路60の所定の構成部材と板バネ52との間でカード2が突っ張った状態となるおそれがあるが、本形態のように構成されていれば、そのおそれがなくなる。その結果、カード2をより確実にカード回収庫37へ回収できる。
【0058】
本形態では、板バネ52は、第1搬送方向にカード2が搬送されるときには、カード回収庫37へカード2を案内して、カード発行部36へカード2を搬入させない。また、第2搬送方向にカード2が搬送されるときには、カード発行部36からカードリーダ3へのカード2の搬送を許容している。すなわち、板バネ52は、カード2の進路の切替を行っている。そのため、板バネ52を用いた簡易な構成で、カード2が通過する通路を分岐することができる。
【0059】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。たとえば、上述した形態では、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部38は、板バネ52および規制ローラ53等によって構成されている。この他にもたとえば、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部は、上述した特許文献2に記載されているようなフラッパであっても良い。
【0060】
上述した形態では、カード回収庫37の上方にカード発行部36が配置されている。この他にもたとえば、カード回収庫37が上側に配置され、カード回収庫37の下方にカード発行部36が下側に配置されても良い。この場合には、たとえば、上下方向において、搬送路8よりも下側にカード発行部36が配置され、搬送路8よりも上側にカード回収庫37が配置される。また、この場合には、駆動ローラ11が搬送路8の下側に配置され、パッドローラ15が搬送路8の上側に配置される。
【0061】
また、カード回収庫37とカード発行部36とが前後方向で重なるように配置されても良い。この場合には、駆動ローラ11とパッドローラ15とが前後方向で対向するように配置される。
【0062】
上述した形態では、カードリーダ3の左側にカード発行部36とカード回収庫37とを備えるカード発行回収部4が配置されている。この他にもたとえば、カード発行部36に代えて、カード2の搬送方向を切り替える切替部、カード2の表面に印字を行うプリンタやカード2の表面の印字等を読み取るイメージセンサ等をカード回収庫37と組み合わせて、カードリーダ3の左側に配置しても良い。この場合には、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部をフラッパで構成し、カードリーダ3から切替部、プリンタ等に向かってカード2を搬入できるように構成しても良い。なお、この場合には、切替部、プリンタ、イメージセンサ等は、カード2に対して所定の処理を行うカード処理部となる。
【0063】
また、カードリーダ3の右側には、カード回収庫37のみが配置されても良い。すなわち、カード回収庫37の上方にカード発行部36が配置されていなくても良い。あるいは、搬送路8よりも上側にカード回収庫37のみが配置されても良い。この場合には、カード回収庫37へカード2を案内するガイド部は、固定された壁面状のガイド部材によって構成されても良い。
【0064】
上述した形態では、カード発行装置1は、カードリーダ3を備えている。この他にもたとえば、カード発行装置は、カードリーダ3に代えて、カード2の搬送方向を切り替える切替装置、カード2の表面に印字を行うプリンタ、カード2の表面の印字等を読み取るイメージセンサ、あるいは、カード2の搬送のみを行う搬送路を備えていても良い。すなわち、駆動ローラ11に相当する搬送ローラを備えている装置ならば、カードリーダ3に代えて、カード発行回収部4に隣接配置しても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
また、カード発行回収部4が、駆動ローラ11に相当する搬送ローラを備えていても良い。この場合には、カード発行回収部4は単体で使用されても良い。この場合であっても、上述した形態と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態にかかるカード発行装置の概略構成を側面から説明するための図である。
【図2】図1に示すカード回収機構を示す平面図である。
【図3】図3は、図1に示すカード回収庫にカードが回収されるときのカード回収機構の状態を示す図であり、(A)は、駆動ローラとパッドローラとにカードが挟まれている状態を示し、(B)は、カードの後端が、駆動ローラとパッドローラとの間を抜けたときの状態を示す。
【図4】図1に示すカード発行部からカードが発行されるときのカード回収機構の状態を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 カード発行装置
2 カード
8 搬送路
11 駆動ローラ(搬送ローラ)
15 パッドローラ
36 カード発行部(カード処理部)
37 カード回収庫
38 ガイド部
39 カード収納部
40 カード送出機構
52 板バネ
55 カード回収機構
60 第1通路
61 第2通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードを回収するカード回収庫と、直線状に形成される前記カードの搬送路から前記カード回収庫へ前記カードを搬送する搬送ローラと、前記カード回収庫へ前記カードを案内するガイド部とを備え、
前記ガイド部は、前記カード回収庫への前記カードの搬送時に前記搬送ローラの表面に向かう付勢力が前記カードに生じる方向に前記カードを撓ませながら前記カードを案内するとともに、
前記搬送ローラは、前記カードが前記カード回収庫に回収可能な状態まで前記カードを搬送することを特徴とするカード回収機構。
【請求項2】
前記搬送ローラに対向するとともに前記搬送ローラに向かって付勢されたパッドローラと、前記搬送ローラから前記カード回収庫に向かって前記カードが通過する第1通路とを備え、
前記第1通路は、前記カード回収庫へ向かって搬送される前記カードの後端が前記搬送ローラと前記パッドローラとの間を抜けたときに、前記カードが撓まないように構成されていることを特徴とする請求項1記載のカード回収機構。
【請求項3】
前記搬送ローラは、前記搬送ローラから前記カード回収庫に向かって前記カードを搬送する第1搬送方向と、前記第1搬送方向とは反対方向であって、前記カードに対して所定の処理を行うカード処理部から前記搬送ローラに向かって前記カードを搬送する第2搬送方向とに前記カードを搬送可能に構成され、
前記ガイド部は、前記第1搬送方向に前記カードが搬送されるときには、前記カード回収庫へ前記カードを案内し、前記第2搬送方向に前記カードが搬送されるときには、前記カード処理部から前記搬送ローラへの前記カードの搬送を許容することを特徴とする請求項1または2記載のカード回収機構。
【請求項4】
前記搬送ローラから前記カード回収庫に向かって前記カードが通過する第1通路と、前記カード処理部から前記搬送ローラに向かって前記カードが通過する第2通路とを備え、
前記ガイド部は、前記第1通路および前記第2通路に少なくとも一部が配置される板バネを備えることを特徴とする請求項3記載のカード回収機構。
【請求項5】
請求項1から4いずれかに記載のカード回収機構を備えるとともに、前記カードが収納されるカード収納部および前記カード収納部に収納される前記カードを前記搬送ローラに向かって送り出すカード送出機構を有し前記カード回収庫と上下方向に重なるように配置されるカード発行部を備えることを特徴とするカード発行装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−165483(P2008−165483A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354199(P2006−354199)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】