説明

カード状記録媒体情報処理装置

【課題】カードを手動でスワイプする際に、カードに帯電した静電気がイメージスキャナに放電することなく、イメージスキャナの静電気による誤動作や破壊を確実に防止し、カードに記録された情報を正確に読取ることができる情報処理装置を提供する。
【解決手段】走行路10と、走行路10に臨むとともに、走行路10においてカード状記録媒体の走行の有無を検出する検出手段(読取開始センサ20)と、走行路10に臨むとともに、カード状記録媒体に記録された画像を撮像する撮像手段(密着型イメージスキャナ14)とを備え、撮像手段(密着型イメージスキャナ14)と検出手段(読取開始センサ20)との間にカード状記録媒体に帯電する静電気を除去する除電手段(導電性部材17)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の情報を記録する紙やプラスチックなどのカード状記録媒体に記録された情報を読み取って処理するカード状記録媒体情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガイド(カード走行路)内においてカードを手動でスワイプさせて、カードに記録された情報を読取る手動スワイプ式の情報処理装置が知られている。なお、本明細書でいう「スワイプ」とは、カード状のカード状記録媒体を情報処理装置のガイド(カード走行路)に沿って手動でさっと走らせる動作をいう。
【0003】
手動スワイプ式の情報処理装置には、二次元バーコードなど、カード表面の模様を撮像して画像データを取得するイメージスキャナが設けられている。イメージスキャナとしては、例えば、縮小光学型イメージスキャナがある(例えば特許文献1参照)。縮小光学型イメージスキャナが採用されている理由は、被写界深度が深いことから、カードを移動(スワイプ)させることに起因して、読み取り面に対するカードの相対的な距離が多少変位したとしても、焦点を合わせることが容易だからである。
【0004】
ところが、この縮小光学型イメージスキャナを採用した場合には、ある程度の光路長を確保する必要があるため、装置全体が大型化する傾向にある。特に、持ち運び可能な携帯型の情報処理装置に搭載するイメージスキャナとして採用を考えた場合には、不向きである。また、縮小光学型イメージスキャナは、例えば密着型イメージスキャナなど他のスキャナと比べて高価であるため、製品単価が廉価な携帯型の情報処理装置に搭載するイメージスキャナとしては、好ましいものではない。
【0005】
このような観点から、縮小光学型イメージスキャナではなく、密着型イメージスキャナを搭載した携帯型の情報処理装置が見直されつつある。密着型イメージスキャナは、縮小光学型イメージスキャナよりも奥行きが少なく小型であるため、携帯型の情報処理装置には適している。
【0006】
【特許文献1】特開2002−259902号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、密着型イメージスキャナを採用した情報処理装置の場合には、次のような問題がある。
【0008】
すなわち、ガイド(カード走行路)に沿ってカードを手動でスワイプさせる場合には、人が手で掴んだカードは静電気が帯電したままガイド(カード走行路)を通過することがあるため、カードに帯電した静電気がイメージスキャナへと放電し、それによってイメージスキャナが誤動作を起こしたり、破壊されたりするおそれがある。
【0009】
カードに帯電した静電気のイメージスキャナへの放電を防ぐために、ガイド(カード走行路)に金属等の導電部材を用い、除電する方法も考えられる。しかし、ガイド(カード走行路)全体に導電部材を用いた場合には、情報処理装置の重量が重くなる。また、軽量化のためにガイドに炭素を含有する導電性の樹脂材料を使用することも考えられるが、一般に炭素を含有する高価な導電部材が必要となり、製造コストがかかる。ガイド(カード走行路)の底部にのみ導電部材を用いれば、軽量化及び製造コストの問題は解消できるが、手動でスワイプさせたカードは底部から浮く場合があり、このような場合には確実に除電を行うことができない。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、カードを手動でスワイプする際に、カードに帯電した静電気がイメージスキャナに放電することなく、イメージスキャナの静電気による誤動作や破壊をより確実に防止できるカード状記録媒体処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) カード状記録媒体を走行させる走行路と、前記走行路を挟んで対向する第1フレームおよび第2フレームから構成されるフレームと、前記走行路に臨むとともに、前記走行路において前記カード状記録媒体の走行の有無を検出する検出手段と、前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に記録された画像を撮像する撮像手段と、を有し、前記検出手段及び前記撮像手段は、前記フレームに、前記カード状記録媒体の走行方向に沿ってこの順に配置され、前記撮像手段と前記検出手段との間に前記カード状記録媒体に帯電する静電気を除去する除電手段を備えることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0013】
本発明によれば、走行路を挟んで対向する第1フレームおよび第2フレームから構成されるフレームと、走行路においてカード状記録媒体の走行の有無を検出する検出手段と、カード状記録媒体に記録された画像を撮像する撮像手段と、を備えたカード状記録媒体処理装置であって、検出手段及び撮像手段は、フレームに、カード状記録媒体の走行方向に沿ってこの順に配置され、撮像手段と検出手段との間にカード状記録媒体に帯電する静電気を除去する除電手段を備えることとしたので、カード状記録媒体に帯電する静電気による撮像手段の誤動作や破壊を防止することができる。
【0014】
すなわち、除電手段を、撮像手段よりもカード状記録媒体の走行方向上流側に配置することにより、カード状記録媒体に帯電した静電気は、撮像手段よりも前に除電手段に向かって放電されることになる。したがって、撮像手段に静電気が放電されるのを防ぐことができ、ひいては静電気によって撮像手段に誤動作が起きたり、撮像手段が破壊されたりすることをより確実に防ぐことができる。
【0015】
なお、撮像手段と検出手段の間に備えた除電手段により、より確実に放電を行うことができるため、除電手段にのみ導電部材を用いて、装置全体を樹脂等の安価な素材で形成することとしてもよい。これにより、カード状記録媒体処理装置の軽量化が可能となり、また、製造コストの削減を図ることができる。
【0016】
(2) 前記撮像手段は、前記カード状記録媒体に記録された画像を読取る読取面を有し、前記第1フレームに前記読取面を臨ませて配置され、前記第2フレームは、前記走行路を挟んで前記読取面に対向配置されるとともに前記走行路を走行する前記カード状記録媒体を前記読取面の方向に押圧する押圧部材を備え、前記第1フレームは、さらに、前記走行路を走行する前記カード状記録媒体の前記読取面からの距離を一定に保つガイド部を備えることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0017】
本発明によれば、撮像手段は、第1フレームに読取面を臨ませて配置され、第2フレームは、走行路を挟んで読取面に対向配置されるとともに走行路を走行するカード状記録媒体を読取面の方向に押圧する押圧部材を備え、第1フレームは、さらに、走行路を走行するカード状記録媒体の読取面からの距離を一定に保つガイド部を備えることとしたので、カード状記録媒体の走行によって読取面が傷つくのを防ぐことができる。
【0018】
また、カード状記録媒体に記録された画像(情報)を、より正確に読取ることができる。詳細には、カード状記録媒体に記録された画像(情報)を正確に読取るためには、カード状記録媒体を撮像手段の読取面に近接して走行させることが望ましく、また、読取面からの距離を一定に保つことが必要となる。本発明は、押圧部材によってカード状記録媒体を読取面の方向に押圧してカード状記録媒体を読取面に近接させ、第1フレームに備えられたガイドによってカード状記録媒体と読取面との距離を一定に保つことができる。したがって、カード状記録媒体は、読取面の近くを、安定した距離を保って走行することとなり、その結果、カード状記録媒体に記録された画像(情報)をより正確に読取ることができる。
【0019】
(3) 前記撮像手段は、光透過性部材よりなるカバー部材を有し、前記カバー部材の一面側は前記読取面であって、前記カバー部材の他面側は、前記撮像手段に接着された接着面であって、前記除電手段は、前記走行路に臨むように配置され、前記カバー部材と前記撮像手段との接着面よりも前記走行路側に突出するとともに、前記走行路に対して前記読取面よりも前記第1フレーム側の位置に備えられることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0020】
本発明によれば、撮像手段は、光透過性部材よりなるカバー部材を有し、カバー部材の一面側は読取面であって、他面側は撮像手段に接着された接着面であって、除電手段は、走行路に臨むように配置され、カバー部材と撮像手段との接着面よりも走行路側に突出するとともに、走行路に対して読取面よりも第1フレーム側の位置に(例えば第2フレームに対して読取面よりも突出しないように、すなわち第2フレームに対して凹んで内側に退避して)備えられることとしたので、カード状記録媒体を傷つけることなく、より確実に除電を行うことができ、カード状記録媒体上の画像(情報)をより正確に読取ることができる。
【0021】
すなわち、除電手段を読取面と撮像手段との接着面と同じ高さに設置した場合には、カード状記録媒体に帯電した静電気は除電手段に放電する前に撮像手段に放電する恐れがある。除電手段を接着面よりも走行路側に突出させることにより、接着面からの静電気の飛込みをより確実に防止することができる。
【0022】
さらに、除電手段を読取面と同じ高さで設置した場合には、カード状記録媒体が走行路を走行する際に除電手段と接触し、カード状記録媒体に傷が付く恐れがある。そこで、除電手段を読取面よりも低い位置に備えることにより、除電手段が走行路を走行するカード状記録媒体と接触するのを防ぐことができる。また、除電手段を走行路に臨むように配置するので、除電手段が読取面よりわずかに低く位置していても、より確実に除電を行うことができる。
【0023】
従って、走行路に対して、撮像手段の接着面よりも高く、読取面よりも低い位置に除電手段を備えることにより、走行路を走行するカード状記録媒体を傷つけることなく、より確実に除電を行うことができる。
【0024】
なお、カバー部材をガラス板により構成されることとした場合には、樹脂製の板等によって構成される場合と比べ、より鮮明な画像を撮像することができ、カード状記録媒体上の画像(情報)をより正確に読取ることができる。
【0025】
(4) 前記撮像手段は、前記検出手段の出力を契機として、画像読取可能状態となることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0026】
本発明によれば、撮像手段は、検出手段の出力を契機として、画像読取可能状態となることとしたので、読取り直前に画像読取可能状態への切り替えを行うことにより、消費電力を抑えることができる。詳細に説明すると、撮像手段がカード状記録媒体の画像(情報)を読取るためには、まず、待機状態から画像読取可能状態への切り替えを行うことが必要である。その切り替えを例えば手動で行う場合には、撮像手段を画像読取可能状態にしてからカード状記録媒体を走行させることとなるため、画像読取可能状態にしておく時間が長くなり、その分、消費する電力も多くなる。本発明では、カード状記録媒体の走行開始後、画像の読取り前に画像読取可能状態となるため、画像読取可能状態にしておく時間が短時間となり、消費電力を抑えることができる。
【0027】
また、カード状記録媒体が誤った方向に走行した場合には、撮像手段が作動しないため、消費電力を抑えることができるとともに、静電気による撮像手段の誤動作や破壊を防ぐことができる。詳細に説明すると、検出手段、除電手段、撮像手段は、カード状記録媒体の走行方向に沿ってこの順に配置されているため、カード状記録媒体が正常な方向(走行方向)に走行した場合には、上述のとおり、除電手段により撮像手段を保護することが可能である。一方で、カード状記録媒体が走行方向と逆方向に走行した場合には、最初に撮像手段が作動しないため、静電気が放電されたとしても誤動作が起きたり、撮像手段が破壊されたりするのを防ぐことができる。
【0028】
(5) 前記検出手段と前記除電手段との間に、絶縁材料からなる壁が設けられることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0029】
本発明によれば、検出手段と除電手段との間に、絶縁材料からなる壁が設けられることとしたので、カード状記録媒体から除電手段に放電した静電気は、絶縁材料によって遮られることになり、ひいては検出手段への二次放電を防ぐことができる。また、本発明における絶縁性を有する壁によって、検出手段と撮像手段とをより近接させて設置することができるため、画像読取可能状態への切り替えを読取りの直前に行うことが可能となり、画像読取可能状態にしておく時間をより短時間にすることができ、その結果、消費電力をさらに抑えることができる。
【0030】
(6) 前記撮像手段は、密着型ラインセンサであることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0031】
本発明によれば、カード状記録媒体に記録された画像を撮像する撮像手段は、密着型ラインセンサであることとしたので、一般的に安価な密着型ラインセンサを用いることにより、製造コストの削減を図ることができる。また、密着型ラインセンサは消費電力が少なく、小型化が可能であるため、消費電力を抑えることができ、携帯性かつ実用性に優れたカード状記録媒体処理装置を提供することができる。
【0032】
(7) 前記除電手段は、前記走行路に向かって先端が尖った形状の除電部材からなることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0033】
本発明によれば、除電手段は、走行路に向かって先端が尖った形状の除電部材からなることとしたので、除電部材の先端に静電気を集中させることにより、静電気を引き込みやすくなり、カード状記録媒体に帯電した静電気を、より効果的に放電させることができる。
【0034】
(8) 前記カード状記録媒体処理装置には、さらに、前記フレームに設けられた回路基板が備えられ、前記除電手段は、ケーブルによって前記回路基板のグランドに接続されていることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0035】
本発明によれば、カード状記録媒体処理装置には、さらに、フレームに設けられた回路基板が備えられ、除電手段は、ケーブルによって回路基板のグランド(アース)に接続されていることとしたので、カード状記録媒体に帯電した静電気を簡易にグランドに逃がすことができる。
【0036】
(9) 前記フレームは、前記第1フレーム、前記第2フレーム、及び、前記第1フレームと前記第2フレームとの間に形成される走行基準面よりなるコの字型であることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0037】
本発明によれば、フレームは、第1フレーム、第2フレーム、及び、その間に形成される走行基準面よりなるコの字型であることとしたので、簡易な構造とすることにより、小型化が可能であって、また、製造コストの削減を図ることができる。
【0038】
(10) 前記第2フレームは、前記読取面と対向する領域が開閉自在であることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0039】
本発明によれば、第2フレームは、読取面と対向する領域が開閉自在であることとしたので、読取面を常に汚れのない状態に保つことができる。
【0040】
カード状記録媒体処理装置は、読取面にゴミや塵が付着し易く、構造上、その清掃は困難である。読取面にゴミや塵が付着すると、読取りの際にそれらも一緒に読み取ってしまい、正確な読取りができないばかりでなく、カード状記録媒体を傷つけるおそれがある。本発明によれば、読取面を清掃する際には、読取面と対向する領域を開いて読取面を露出させることにより、読取面に付着したゴミや塵をより確実に除去することができる。また、読取面と対向する領域には押圧部材が備えられているため、読取面を露出させると、対向する押圧部材も視認可能となるので、たとえばローラなどの押圧部材に付着したゴミや塵も確実に除去することができる。押圧部材に付着したゴミや塵が除去できれば、これらのゴミや塵がスキャナの読取面に転写されることもなく、読取面を常に汚れのない状態に保つことができるため、カード状記録媒体を傷つけることなく、正確な読取りを行うことができる。
【発明の効果】
【0041】
以上説明したように、本発明によれば、カード状記録媒体に帯電した静電気が撮像手段に放電するのを防止して、静電気による撮像手段の誤作動や破壊を防止することができる。また、除電手段によって、より確実に放電を行うことにより、装置全体を樹脂等の安価な素材で形成することが可能となり、カード状記録媒体処理装置の軽量化、及び、製造コストの削減を図ることができる。さらに、フレームにガイド部及び押圧部材を備えることにより、カード状記録媒体に記録された情報の読取り時に、読取り面とカード状記録媒体との距離を一定に保つことができ、より正確な読取りを実現することができると共に、カード状記録媒体を除電手段に近づけて確実に除電をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
図1は、本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置1の外観構成を示す斜視図である。図2は、本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置1の機械構成を示す断面図である。なお、図2(a)では、第2フレーム12に対して支持板15を固定している様子を示しており、図2(b)では、支持板15を開いて、密着型イメージスキャナ14の読取面14aを露出させている様子を示している。
【0044】
図1及び図2において、(スワイプ式の)カード状記録媒体処理装置1は、カード状記録媒体上の画像(例えばバーコードやOCR文字)を撮像する密着型イメージスキャナ14を有する第1フレーム11と、走行路10を挟んで第1フレームと対向し、密着型イメージスキャナ14の読取面14aに対してカード状記録媒体を押圧するローラ16を有する第2フレーム12と、第1フレームと第2フレームとの間に形成される走行基準面30と、を有しており、第1フレーム11,第2フレーム12,及び走行基準面30によって、断面形状がほぼコ字形状をなすフレームが形成されている(図1参照)。
【0045】
密着型イメージスキャナ14は、読取面14aを介して光源から照射された光をカード状記録媒体に当て、カード状記録媒体からの反射光を、例えばフォトダイオードやCCDなどの受光素子で受光することによって、カード状記録媒体上の画像を撮像するようにしている。
【0046】
読取面14aには、読取面部材として樹脂製の板やガラス板を用いることができるが、本実施形態においては、読取面14aはガラス板14bによって構成されており、より鮮明な画像を撮像することができる。なお、密着型イメージスキャナ14は撮像手段の一例であって、例えば各種密着型ラインセンサその他のセンサを採用してもよい。
【0047】
また、カード状記録媒体処理装置1において、支持板15には、カード状記録媒体に向けて光を照射するLED21(発光素子)が設けられ、第1フレーム11には、LED21からの光を受光する読取開始センサ20(受光素子)が設けられている。この読取開始センサ20は、制御基板13に実装されており、読取開始センサ20の出力を契機として、密着型イメージスキャナ14の画像読取可能状態(読取開始)となる。なお、読取開始センサ20は検出手段の一例である。
【0048】
第2フレーム12の、読取面14aと対向する領域には、一端が軸支され、ローラ16を支持する支持板15が、開閉自在に取り付けられている。この支持板15は、ローラ16を走行路に臨ませた固定位置(図2(a)参照)と、密着型イメージスキャナ14の読取面14aを露出させた開放位置(図2(b)参照)との間で、ローラ16を移動可能に支持している。
【0049】
なお、ローラ16は、押圧部材の一例であり、弾性材料よりなることが望ましい。ローラ16が弾性材料によって形成されることにより、カード状記録媒体の形状に合わせてローラ16の形状が変化し、カード状記録媒体を傷つけることなく、読取面14aの方向により確実に押圧することができる。
【0050】
図3(a)は、本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置1において、イメージスキャナ14周辺の機械構成を示す断面図であり、図3(b)は、図3(a)のX部分の拡大図である。
【0051】
図3において、第1フレームには、走行路10に対して突出してガイド部11aが設けられている(図3(b)参照)。なお、ガイド部11aは、読取面14aに近付くにつれてなだらかな斜面状になるように、すなわち、ガイド部11aの方が、ガイド部先端11bよりも第1フレーム1に対して突出するように形成されている。走行路10を走行するカード状記録媒体は、ガイド部11aを通過した後、ローラ16によって読取面14aの方向に押圧され、読取面14aから一定の距離を走行する。このガイド部11aによって走行路10を走行するカード状記録媒体の読取面14aからの距離は一定に保たれ、カード状記録媒体に記録された情報をより正確に読取ることができる。
【0052】
すなわち、カード状記録媒体に記録された画像(情報)を正確に読取るためには、カード状記録媒体の読取面14aからの距離を短くすることが望ましいが、カード状記録媒体の読取面14aからの距離を短くすると、カード状記録媒体と読取面14aとが接触してしまうことがあり、カード状記録媒体の走行を繰り返すことにより、読取面14aに傷が付くおそれがある。読取面14aに傷が付くと、その傷を介して画像を読取ることとなり、正確な読取りの妨げとなる。そこで、本発明のように、ガイド部11aが走行路10に対して突出して設けられることによって、カード状記録媒体と読取面14aとの間に距離をとることができるため、カード状記録媒体の走行を繰り返しても読取面14aを傷つけることなく、より正確な読取り状態を維持することができる。
【0053】
ここで、図3及び図4において、密着型イメージスキャナ14と、読取開始センサ20との間には、導電性部材17が備えられている。図4は、本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置1におけるイメージスキャナ14周辺の構成を示す模式図である。なお、図4は、第1フレーム11や、読取面11aなどを省略している。この導電性部材17は、除電手段の一例であり、カード状記録媒体に帯電した静電気を除去する。
【0054】
導電性部材17は、走行路10に臨むように配置されており、導電性部材17の先端(凸状部)17aが密着型イメージスキャナ14の読取面14aよりも第1フレーム11の内側(図3(b)でいう上側)に位置するように備えられている(図3(b)参照)。このことにより、走行路10を走行するカード状記録媒体は、導電性部材17によって傷つけられることなく、カード状記録媒体に帯電した静電気は、走行路10に臨む導電性部材17に放電されることになる。
【0055】
また、導電性部材17の先端(凸状部)17aを、読取面14aを構成するガラス板と密着型イメージスキャナ14との接着面14c(静電気が最も入り込みやすい面)よりも走行路10側に突出させて(図3(b)でいうと、接着面14cよりも下側)配置することが望ましい。導電性部材17を、接着面14cよりも走行路10に近い位置に配置することにより、導電性部材17は静電気を引き込みやすくなり、接着面14cからの静電気の飛び込みを防止するので、より確実に放電することが可能になる。
【0056】
なお、導電性部材17の先端(凸状部)17aを、走行路10に向けて読取面14aよりも突出させる(図3(b)でいうと、読取面14aよりも下側)とともに、ガイド部11aの先端11bよりも第1フレーム11の内側(図3(b)でいうと、先端11bよりも上側)に配置してもよい。導電性部材17を、走行路10にさらに近づけることにより、静電気をより引き込みやすくなる。
【0057】
このように、導電性部材17の先端(凸状部)17aが、密着型イメージスキャナ14の接着面14cよりも突出し、ガイド部11aよりも第1フレーム11の内側、且つ、ガイド部11aの先端11bよりも第1フレーム11の内側にあるように、すなわち、図3(b)に示すPの範囲内にあるように配置することにより、カード状記録媒体を傷つけることなく、より確実に放電を行うことが可能となる。
【0058】
導電性部材17は、図示しないケーブルによって走行路10に接続され、走行路10は、図示しないケーブルによって第1フレーム11に設けられた制御基板13(回路基板)のグランドに接続されている。制御基板13のグランドは、USBケーブル等のインターフェースケーブルのフレームグランドに接続されることにより接地される。
【0059】
このように、導電性部材17を用いることにより、カード状記録媒体帯電した静電気を、フレームグランドへ確実に逃がすことができるため、カード状記録媒体処理装置1を、導電性材料ではなく安価な樹脂製等の素材を用いて製造することができ、装置の軽量化及び製造コストの削減を図ることができる。なお、導電性部材17は、除電手段の一例である。
【0060】
図5は、導電性部材17の形状を示す図である。図5(a)は導電性部材17の斜視図、図5(b)は平面図、図5(c)は正面図、図5(d)は側面図を示す。
【0061】
図5において、本実施の形態に係る導電性部材17は、走行路10に向かう2つの凸状部17aを有し、その先端は尖った形状となっている。先端の尖った凸状部を有することにより、静電気を引き込みやすくなり、カード状記録媒体に帯電した静電気をより効果的に放電させることができる。また、導電性部材17が、複数の凸状部を有することにより、1つの凸状部を有する場合と比べて、静電気をより引き込みやすくなり、効果的に放電させることができる。
【0062】
また、本実施の形態に係る導電性部材17は、第1フレーム11への設置面に略半円状の切欠部17bを有している(図5(a)、図5(b)参照)。導電性部材17は、この切欠部17bによって読取開始センサ20を囲うように設置することができる形状となっている(図1、図4参照)。これにより、読取開始センサ20と密着型イメージスキャナ14との距離をより短くすることができ、読取開始センサ20による検出の後、密着型イメージスキャナ14による撮像までの時間を短縮することができるため、消費電力を抑えることができる。
【0063】
上述のように、読取開始センサ20と密着型イメージスキャナ14との距離を短くすると、その間に設けられた導電性部材17と読取開始センサ20との距離も短くなるため、導電性部材17に放電された静電気が読取開始センサ20に二次放電し、読取開始センサ20が破壊されるおそれが生じる。そこで、読取開始センサ20と、導電性部材17との間には、絶縁材料からなる絶縁壁18が設けられている(図1、図3参照)。本実施形態においては、読取開始センサ20を筒状の絶縁材料で囲み、導電性部材17側を高く形成して絶縁壁18とすることによって、導電性部材17に放電した静電気の、読取開始センサ20への二次放電を防止している。絶縁壁18の高さを、導電性部材17よりも高くするといっそう好ましい。
【0064】
以上説明したように、本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置1によれば、密着型イメージスキャナ14と、読取開始センサ20との間に備えられた導電性部材17によって、カード状記録媒体に帯電した静電気が密着型イメージスキャナ14に放電することなく、静電気による誤作動や破壊を防止することができる。
【0065】
また、導電性部材17によって確実に放電を行うことにより、装置全体を樹脂等の安価な素材で形成することが可能となり、カード状記録媒体処理装置1の軽量化、及び、製造コストの削減を図ることができる。
【0066】
さらに、フレームにガイド部11a及びローラ16を備えたことにより、カード状記録媒体に記録された情報の読取り時に、読取り面とカード状記録媒体との距離を一定に保つことができ、より正確な読取りを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係るカード状記録媒体処理装置は、カード状記録媒体に帯電した静電気による撮像手段の誤作動や破壊を防止することができるものとしても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置の機械構成を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置のイメージスキャナ周辺の機械構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るカード状記録媒体処理装置のイメージスキャナ周辺の構成を示す模式図である。
【図5】導電性部材の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0069】
1 カード状記録媒体処理装置
10 走行路
11 第1フレーム
11a ガイド部
11b ガイド部先端
12 第2フレーム
13 制御基板
14 密着型イメージスキャナ
14a 読取面
14b ガラス板
14c 接着面
15 支持板
16 ローラ
17 導電性部材
17a 凸状部
17b 切欠部
18 絶縁壁
20 読取開始センサ
21 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード状記録媒体を走行させる走行路と、
前記走行路を挟んで対向する第1フレームおよび第2フレームから構成されるフレームと、
前記走行路に臨むとともに、前記走行路において前記カード状記録媒体の走行の有無を検出する検出手段と、
前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に記録された画像を撮像する撮像手段と、を有し、
前記検出手段及び前記撮像手段は、前記フレームに、前記カード状記録媒体の走行方向に沿ってこの順に配置され、
前記撮像手段と前記検出手段との間に前記カード状記録媒体に帯電する静電気を除去する除電手段を備えることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記撮像手段は、前記カード状記録媒体に記録された画像を読取る読取面を有し、前記第1フレームに前記読取面を臨ませて配置され、
前記第2フレームは、前記走行路を挟んで前記読取面に対向配置されるとともに前記走行路を走行する前記カード状記録媒体を前記読取面の方向に押圧する押圧部材を備え、
前記第1フレームは、さらに、前記走行路を走行する前記カード状記録媒体の前記読取面からの距離を一定に保つガイド部を備えることを特徴とする請求項1のカード状記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、光透過性部材よりなるカバー部材を有し、前記カバー部材の一面側は前記読取面であって、前記カバー部材の他面側は、前記撮像手段に接着された接着面であって、
前記除電手段は、前記走行路に臨むように配置され、前記カバー部材と前記撮像手段との接着面よりも前記走行路側に突出するとともに、前記走行路に対して前記読取面よりも前記第1フレーム側の位置に備えられることを特徴とする請求項1又は2記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記撮像手段は、前記検出手段の出力を契機として、画像読取可能状態となることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項5】
前記検出手段と前記除電手段との間に、絶縁材料からなる壁が設けられることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項6】
前記撮像手段は、密着型ラインセンサであることを特徴とする請求項2から5のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項7】
前記除電手段は、前記走行路に向かって先端が尖った形状の除電部材からなることを特徴とする請求項1から6のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項8】
前記カード状記録媒体処理装置には、さらに、前記フレームに設けられた回路基板が備えられ、
前記除電手段は、ケーブルによって前記回路基板のグランドに接続されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項9】
前記フレームは、前記第1フレーム、前記第2フレーム、及び、前記第1フレームと前記第2フレームとの間に形成される走行基準面よりなるコの字型であることを特徴とする請求項1から8のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項10】
前記第2フレームは、前記読取面と対向する領域が開閉自在であることを特徴とする請求項2から9のいずれか記載のカード状記録媒体処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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