説明

カード用コネクタ

【課題】ハウジングの幅寸法の短縮化と、ハウジングの変形に対する強度の確保とを両立させることができるカード用コネクタを提供することにある。
【解決手段】ハウジング2に挿入されたカード20の幅方向の移動を規制するハウジング2の左側壁部が、折り曲げ加工によりカバー部材4の上板部4aと一体に設けられた左側板部4dからなる。この左側板部4dはハウジング本体3の底板部3aの左側面に対向して位置するとともに、折り曲げ加工よりハウジング本体3の方向に突出して設けられた突出部4fを有する。この突出部4fは底板部3aと係合することにより、底板部3aの左側面から離れる方向の左側板部4dの移動と、上板部4aを底板部3aに近づかせる方向の左側板部4dの移動とを阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードが挿入されるハウジングを有し、このハウジングが、挿入されたカードの一方の面に対向して位置する底板部を含む樹脂製のハウジング本体と、挿入されたカードの端子側の他方の面に対向して位置する上板部を含む金属製のカバー部材とが結合してなるカード用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来のカード用コネクタにおいて、ハウジング本体には、挿入されたカードの側面に対向して位置するよう底板部から突出した側壁部が設けられている。カバー部材は、折り曲げ加工により上板部と一体に設けられた側板部を有し、この側板部は、ハウジング本体の側面にハウジング本体の外方側から対向して位置する。ハウジング本体の側面にはスナップフィット結合のための爪が突出して設けられていて、カバー部材の側板部には、その爪が挿入される孔が設けられている。これにより、カバー部材はハウジング本体に対して、上板部を底板部から離れさせる方向の移動が阻止される状態となっている。
【0003】
カバー部材の上板部は、ハウジング本体の側壁部の突端に当接することにより、ハウジング本体の底板部に近づく方向の移動が阻止される状態となっている。
【0004】
カバー部材の上板部には、ハウジング本体の方向に延びた突出部が折り曲げ加工により設けられている。この突出部はハウジング本体の側壁部の突端に圧入されている。これにより、ハウジング本体の側壁部からカバー部材の側板部が離れるカバー部材の変形を防止している。
【0005】
ここで説明した従来のカード用コネクタについては特許文献1,2を参照されたい。
【特許文献1】特開2007−48606号公報
【特許文献2】特開2007−157356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、カード用コネクタに対しては、カードの幅方向に対応するハウジングの幅方向の寸法(以下「幅寸法」という)の短縮化が要望されている。
【0007】
そこで、前述した従来のカード用コネクタにおいて、ハウジング本体の少なくとも一方の側壁部を取り除き、カバー部材の側板部をハウジングの側壁部として、ハウジング本体の幅寸法を短縮することが考えられる。しかし、そのようにハウジング本体から側壁部を取り除くと、カバー部材の上板部がハウジング本体の底板部に近づく方向の移動を阻止できなくなる。さらに、カバー部材の上板部に設けられた突出部を圧入する個所がなくなって、ハウジング本体の側壁部からカバー部材の側板部が離れるカバー部材の変形を防止できなくなる。これらの結果、ハウジングの変形に対する強度の確保が困難となる。
【0008】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ハウジングの幅寸法の短縮化と、ハウジングの変形に対する強度の確保とを両立させることができるカード用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のカード用コネクタは前述の目的を達成するために次のように構成されている。
【0010】
〔1〕 本発明は、カードが挿入されるハウジングを有し、このハウジングは、挿入された前記カードの一方の面に対向して位置する底板部を含む樹脂製のハウジング本体と、前記挿入されたカードの他方の面に対向して位置する上板部を含む金属製の前記カバー部材とが結合してなるカード用コネクタであって、前記挿入されたカードの幅方向の移動を規制する前記ハウジングの両側壁部の少なくとも一方が、前記カバー部材の側板部からなり、前記側板部は前記ハウジング本体の底板部の側面の外方側に対向して位置するとともに、折り曲げ加工より前記ハウジング本体の位置する方向に突出して設けられた突出部を有し、前記突出部は前記底板部と係合することにより、前記底板部の側面から離れる方向の前記側板部の移動と、前記上板部を前記底板部に近づかせる方向の前記側板部の移動とを阻止することを特徴とする。
【0011】
この「〔1〕」に記載の本発明によれば、ハウジングの側壁がカバー部材の側板部からなるので、ハウジングの幅寸法を短縮化することができる。
【0012】
さらに、「〔1〕」に記載の本発明によれば、カバー部材の側板部に設けられた突出部が、底板部の側面から離れる方向の側板部の移動と、上板部を底板部に近づかせる方向の側板部の移動とを阻止するので、ハウジングの変形に対する強度を確保することができる。
【0013】
〔2〕 本発明は「〔1〕」に記載の発明において、前記突出部は、前記側板部から、前記カードの幅方向に対応する前記ハウジングの幅方向に延びた第1辺部と、この第1辺部の先端に折り曲げ加工により設けられ前記上板部から離れる方向に延びた第2辺部とを有し、前記底板部には、前記カードの厚さ方向に対応する前記ハウジングの厚さ方向において前記第1辺部と対向する第1係止部と、前記ハウジングの幅方向において前記ハウジング本体の外方側から前記第2辺部と対向する第2係止部とが設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
この「〔2〕」に記載の本発明では、上板部を底板部に近づかせる方向の側板部の移動は、第1辺部が第1係止部に引っ掛かることにより阻止される。また、底板部の側面から離れる方向の側板部の移動は、第2辺部が第2係止部に引っ掛かることにより阻止される。つまり、「〔2〕」に記載の本発明によれば、底板部の側面から離れる方向の側板部の移動と、上板部を底板部に近づかせる方向の側板部の移動との阻止を、突出部により確実に行うことができる。
【0015】
〔3〕 本発明は「〔1〕」または「〔2〕」に記載の発明において、前記底板部は、前記挿入されたカードの前記他方の面に対向して位置し、前記カバー部材の前記上板部との間で前記カードの厚さ方向の移動を規制する規制面を有し、前記突出部は、前記カードの厚さ方向に対応する前記ハウジングの厚さ方向において、前記規制面と同一位置、または、その規制面よりも前記カードの前記他方の面から離れた位置に位置することを特徴とするものであってもよい。
【0016】
この「〔3〕」に記載の本発明は、カードの厚さ方向の移動をカバー部材の上板部と規制面と間で規制してハウジングへのカードの挿入およびハウジングからのカードの抜取りを円滑に行わせることができるようにしつつ、突出部がカードのハウジング内での移動の障害になることを確実に防止することができる。
【0017】
〔4〕 本発明は、「〔1〕」〜「〔3〕」のいずれか1項に記載の発明において、前記ハウジング内には、前記挿入されたカードの側面に沿って位置し、そのカードを前記ハウジングに対する挿入方向と逆向きの排出方向に押し動かすことが可能な排出機構が設けられていて、この排出機構は前記側板部に隣接して位置することを特徴とするものであってもよい。
【0018】
このように構成された本発明は、ハウジングからのカードの抜き取りを排出機構により行いやすくすることができる。また、排出機構は、ハウジングの側壁部を形成しているカバー部材の側板部に隣接しているので、その側壁部がハウジング本体に設けられていて排出機構とカバー部材の側板部との間に介在している場合と比較して、排出機構とカードとの寸法誤差を小さくしやすい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、前述のように、ハウジングの幅寸法の短縮化と、ハウジングの変形に対する強度の確保とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るカード用コネクタついて図を用いて説明する。
【0021】
図1は本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの斜視図である。図2は図1に示されたカード用コネクタに挿入されるカードの3面図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。図3は図1に示されたカード用コネクタの5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。図4は図1に示されたハウジング本体の5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。図5は図1に示されたカバー部材の5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。図6は図2のVI−VI断面図である。図7は図6のVII部拡大図である。図8は図2のVIII−VIII断面図である。図9は図7のIX部拡大図である。図10は図4(a)に示されたハウジング本体の左縁部の拡大図である。図11は図3(a)に示されたカード用コネクタからカバー部材を取り除いた状態の図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係るカード用コネクタ1の外形は、ハウジング2により形成されている。このハウジング2は、図2に示すカード20の挿入口2aが形成されている。図2(c)に示すように、カード20の一方の面には、複数の端子21がカード20の幅方向(図2(c)の左右方向)に並列して露出している。これらの端子21は、カード20のハウジング2に対する挿入方向の前端側に配置されている。また、カード20の右側部には、切欠き22が設けられている。
【0023】
図1,図3に示すように、ハウジング2は、樹脂製のハウジング本体3と、金属製のカバー部材4とが結合してなる。図4に示すように、ハウジング本体3は、ハウジング2に挿入されたカード20の端子21側の面に対向して位置する底板部3aと、ハウジング2に挿入されたカード20の前端部に対向する前端壁部3bとを有する。底板部3aには、カード20の複数の端子21に対応して複数並列して端子5が設けられている。これらの端子5は底板部3aに片持ち梁状の板バネ状からなり、カード20の厚さ方向に対応するハウジング2の厚さ方向(図3(e)の左右方向)の可撓性を有し、底板部3aからハウジング2内に突出している。
【0024】
図1,図5に示すように、カバー部材4は、ハウジング2に挿入されたカード20の他方の面、すなわち端子21側の裏側の面と対向して位置する上板部4aと、ハウジング本体3の前端壁部3bにハウジング本体3の外方側から対向して位置する前板部4b,4cと、ハウジング本体3の底板部3aの左側面にハウジング本体3の外方側から対向して位置する左側板部4dと、底板部3aの右側面にハウジング本体3の外方側から対向して位置する右側板部4eとを有する。これら上板部4a、前板部4b,4c、左側板部4dおよび右側板部4eは金属板の折り曲げ加工により一体に形成されている。左側板部4dは、ハウジング2に挿入されたカード20の左方向の移動を規制するハウジング2の左側壁を形成している。右側板部4eはハウジング2の右側壁を形成している。
【0025】
図4(a)に示すように、ハウジング本体3の底板部3aには、ハウジング2に挿入されたカード20の端子21側の面に対向して位置し、カバー部材4の上板部4aとの間でカード20の厚さ方向の移動を規制する規制面3c,3dが形成されている。
【0026】
図6,図7に示すように、ハウジング2の左側部には、ハウジング本体3とカバー部材4とをスナップフィット結合させる結合部6Aが設けられている。この結合部6Aは、ハウジング本体3の底板部3aの左側面に突出して設けられた爪6a(図4(d)参照)と、カバー部材4の左側板部4dに設けられていて爪6aが挿入されている係止孔6b(図5(d)参照)とからなる。この結合部6Aは、ハウジング2の左側部の複数個所、例えば図3(d)に示すように、ハウジング2の左側部の前端側、後端側および中間部の3箇所に設けられている。これらの結合部6Aにおいて、係止孔6bの縁が爪6aに引っ掛かることにより、ハウジング本体3の底板部3aの左側面に対するカバー部材4の左側板部4dの、上板部4aを底板部3aから離れさせる方向の移動(図6の上方向)、および、前後方向の移動が、阻止されるようになっている。また、図3(e)に示すように、結合部6Aと同様の構成の結合部6Bが、ハウジング2の右側部の前端側、後端側および中間部の3箇所にも設けられていて、これらの結合部6Bにより、ハウジング本体3の底板部3aの右側面に対するカバー部材4の右側板部4eの、上板部4aを底板部3aから離れさせる方向の移動、および、前後方向の移動が、阻止されるようになっている。つまり、ハウジング2では、3つの結合部6Aと3つの結合部6Bとによって、上板部4aを底板部3aから離れさせる方向のハウジング本体3に対するカバー部材4の移動、および、ハウジング本体3に対するカバー部材4の前後方向の移動が阻止される状態となっている。
【0027】
図5(c),図8,図9に示すように、カバー部材4の左側板部4dは、折り曲げ加工よりハウジング本体3の方向(図5(c),図8,図9の右方向)に突出して設けられた突出部4fを有する。この突出部4fは、カバー部材4の左側板部4dから、カード20の幅方向に対応するハウジング2の幅方向(図5(c),図8,図9の左右方向)に延びた第1辺部4f1と、この第1辺部4f1の先端に折り曲げ加工により設けられカバー部材4の上板部4aから離れる方向(図5(c),図8,図9の下方向)に延びた第2辺部4f2とを有する。
【0028】
図9,10に示すように、ハウジング本体3の底板部3aの左側縁部には、カード20の厚さ方向に対応するハウジング2の厚さ方向(図9の上下方向)の深さを有する係合溝3eが形成されている。この係合溝3eは、底板部3aの規制面3c,3dよりもカバー部材4の上板部4aから離れて位置する第1底面3e1と、この第1底面3e1よりもハウジング2の内側に形成され、第1底面3e1よりも上板部4aから離れて位置する第2底面3e2とを有する。第1底面3e1はハウジング2の厚さ方向において第1辺部4f1と対向して位置する。第2底面3e2は第2辺部4f2の先端と対向して位置する。第2底面3e2と第1底面3e1との間に立ち上がった壁面3e3は、ハウジング2の幅方向においてカバー部材4の第2辺部4f2の外方側から第2辺部4f2と対向して位置する。なお、第1底面3e1は「課題を解決するための手段」の欄の「〔2〕」に記載の第1係止部に対応するものであり、壁面3e3は同第2係止部に対応するものである。
【0029】
上板部4aをハウジング本体3の底板部3aに近づかせる方向(図9の下方向)のカバー部材4の左側板部4dの移動は、第1辺部4f1が第1底面3e1(第1係止部)に引っ掛かることにより阻止される。また、ハウジング本体3の底板部3aの左側面から離れる方向(図9の左方向)のカバー部材4の左側板部4dの移動は、第2辺部4f2が壁面3e3(第2係止部)に引っ掛かることにより阻止される。つまり、突出部4fはハウジング本体3の底板部3aと係合することにより、ハウジング本体3の底板部3aの左側面から離れる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動と、カバー部材4の上板部4aをハウジング本体3の底板部3aに近づかせる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動とを阻止している。
【0030】
突出部4fは、ハウジング2の厚さ方向において、それらの規制面3c,3dよりもカード20の端子21側の面から離れた位置に配置されている。
【0031】
突出部4fと係合溝3eとの組合せは、ハウジング2の左側部の複数個所、例えば2個所、結合部6Aと交互に並んで設けられている。
【0032】
図11に示すように、ハウジング2内の右側には、ハウジング2内でカード20を挿入方向と逆向きの排出方向に押し動かすことが可能な排出機構10が設けられている。この排出機構10は、ハウジング2内をカード20の挿入方向および排出方向に移動可能なスライダ11を有する。このスライダ11は、カード20の挿入方向の前端部に前方から当接可能な前側当接部11aと、カード20の右側部に当接可能な右側当接部11bとを有し、カバー部材4の右側板部4eに隣接して配置されている。スライダ11とハウジング本体3の前端壁部3bとの間には、スライダ11を所定のカード排出位置(図11に示す位置)の方向に付勢するコイルスプリング12が設けられている。なお、スライダ11は、ハウジング2の右側部において、カバー部材4の上板部4aがハウジング本体3の底板部3aに近づく方向の移動を規制し、これにより、カバー部材4の右側板部4eの同方向における移動が間接的に規制されている。また、ハウジング2に挿入されたカード20は、スライダ11の右側当接部11bとカバー部材4の左側板部4dとの間で幅方向の移動を規制されるようになっている。
【0033】
スライダ11の後端部からは、ハウジング2の幅方向の可撓性を有する片持ち梁状の板バネ11cが延びている。この板バネ11cは、折り曲加工によりハウジング2の内側に向って突出した屈曲部11c1を有する。この屈曲部11c1は、ハウジング2へのカード20の挿入の際、カード20に押し退けられて右方向に撓み、スライダ11の前側当接部11aにカード20が当接したときに復帰してカード20の切欠き22に挿入されるようになっている。カード20の切欠き22に屈曲部11c1が挿入されることにより、スライダ11に対するカード20の排出方向の移動が規制される。なお、スライダ11に対するカード20の移動の規制を解除する解除機構については図示および説明を省略する。
【0034】
また、スライダ11は、ハート型カム機構13により、コイルスプリング12の付勢力(弾性力)に抗してスライダ11を所定のカード装着位置(図14参照)にロックすること、および、このロックを解除することが可能になっている。そのハート型カム機構13は、ハウジング本体3の前端壁部3bに一端が保持されてハウジング2の幅方向に回動可能なピン13aと、スライダ11に形成されピン13aの他端が挿入されたハート型カム溝13bと、ピン13aをハート型カム溝13bの底面に弾性的に押し付ける片持ち梁状の板バネ13c(図3等に示す)とを有する。このハート型カム機構13によって排出機構10は、スライダ11をロックさせるための操作と、そのロックを解除するための操作との両方がスライダ11の挿入方向のプッシュ操作であるプッシュプッシュ操作式となっている。
【0035】
本実施形態に係るカード用コネクタ1の動作について図12〜図14を用いて説明する。図12は排出機構のスライダがカード排出位置に保持されている状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。図13は排出機構のスライダがカード装着位置を通過して挿入方向の限界位置に達した状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。図14は排出機構のスライダがカード装着位置に保持されている状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。
【0036】
カード20がハウジング2に挿入される前、ハウジング2内においてスライダ11はハート型カム機構13によりカード排出位置に保持されている。この状態のカード用コネクタ1にカード20を装着する際、ユーザーは、まず、図12に示すようにカード20をその前端部がスライダ11の前側当接部11aに当接する位置まで挿入する。これにより、カード20の切欠き22に板バネ11cの屈曲部11c1が挿入され、スライダ11に対するカード20の排出方向の移動、すなわちハウジング2に対するカード20の排出方向の移動が阻止される状態となる。
【0037】
次に、ユーザーはカード20をスライダ11とともにコイルスプリング12の付勢力に抗して押し込み、スライダ11を図13に示す限界位置に到達させる。
【0038】
最後に、ユーザーはカード20に対する挿入方向の押圧を止める。これに伴い、スライダ11はコイルスプリング12により限界位置からカード装着位置に押し戻される。このとき、ハート型カム機構13によりスライダ11が排出方向の移動を阻止され、すなわち、ロックされ、図14に示すように、ハウジング2に対するカード20の装着が完了する。
【0039】
図14に示す状態のカード用コネクタ1からカード20を取り出す際、ユーザーはカード20をスライダ11とともに限界位置まで押し込む。これにより、ハート型カム機構13によるスライダ11のロックが解除される。その後、ユーザーはカード20に対する挿入方向の押圧を止める。これに伴い、スライダ11はカード20とともにコイルスプリング12によりカード排出位置に押し戻されて、図12に示す状態となる。この状態において、板バネ11cの屈曲部11c1を、図示しない解除機構によりカード20の切欠き22から離脱させ、ハウジング2からカード20を排出方向に引けば、ハウジング2からカード20を抜き取ることができる。
【0040】
本実施形態に係るカード用コネクタ1によれば次の効果を得られる。
【0041】
カード用コネクタ1によれば、ハウジング2の左側壁がカバー部材4の左側板部4dからなるので、ハウジング2の幅寸法を短縮化することができる。
【0042】
カード用コネクタ1によれば、カバー部材4の左側板部4dに設けられた突出部4fが、ハウジング本体3の底板部3aの左側面から離れる方向の左側板部4dの移動と、カバー部材4の上板部をハウジング本体3の底板部に近づかせる方向の左側板部4dの移動とを阻止するので、ハウジング2の変形に対する強度を確保することができる。
【0043】
カード用コネクタ1では、カバー部材4の上板部4aをハウジング本体3の底板部3aに近づかせる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動は、第1辺部4f1がハウジング本体3の係合溝3eの第1底面(第1係止部)に引っ掛かることにより阻止される。また、ハウジング本体3の底板部3aの左側面から離れる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動は、第2辺部4f2が係合溝3eの壁面3e3(第2係止部)に引っ掛かることにより阻止される。これにより、ハウジング本体3の底板部3aの左側面から離れる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動と、カバー部材4の上板部をハウジング本体3の底板部3aに近づかせる方向のカバー部材4の左側板部4dの移動との阻止を、突出部4fにより確実に行うことができる。
【0044】
カード用コネクタ1は、カバー部材4の上板部4aとの間でカード20の厚さ方向の移動を規制する規制面3c,3dを有する。そして、突出部4fはハウジング2の厚さ方向において、それらの規制面3c,3dよりもカード20の他方の面から離れて位置する。これにより、カード20の厚さ方向の移動をカバー部材4の上板部4aと規制面3c,3dと間で規制してハウジング2へのカード20の挿入およびハウジング2からのカード20の抜取りを円滑に行わせることができるようにしつつ、突出部4fがカード20のハウジング2内での移動の障害になることを確実に防止することができる。
【0045】
カード用コネクタ1では、排出機構10はハウジング2の右側壁部を形成しているカバー部材4の右側板部4eに隣接しているので、その右側壁部がハウジング本体3に設けられていて排出機構10とカバー部材4の右側板部4eとの間に介在している場合と比較して、排出機構10とカード20との寸法誤差を小さくしやすい。
【0046】
なお、前述の実施形態に係るカード用コネクタ1では、カバー部材4に設けられた突出部4fが第1辺部4f1と第2辺部4f2とを有して全体として屈曲した形状であり、ハウジング本体3の底板部3aにその突出部4fを係合させる係合溝3eが設けられているが、本発明における突出部と底板部との係合関係はこれに限定されるものではない。例えば、突出部がハウジング2の外方側から内方側に向ってカバー部材4から離れる方向に傾斜した直線状であって、底板部3aの左側面に差し込まれていてもよい。
【0047】
また、前述の実施形態に係るカード用コネクタ1では、突出部4fは、ハウジング2の厚さ方向において、それらの規制面3c,3dよりもカード20の端子21側の面から離れた位置に配置されているが、突出部4fの第1辺部4f1は、ハウジング2の厚さ方向において規制面3c,3dと同一位置に配置されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るカード用コネクタの斜視図である。
【図2】図1に示されたカード用コネクタに挿入されるカードの3面図であり、(a)は上面図、(b)は右側面図、(c)は下面図である。
【図3】図1に示されたカード用コネクタの5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
【図4】図1に示されたハウジング本体の5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
【図5】図1に示されたカバー部材の5面図であり、(a)は上面図、(b)は前面図、(c)は背面図、(d)は左側面図、(e)は右側面図である。
【図6】図2のVI−VI断面図である。
【図7】図6のVII部拡大図である。
【図8】図2のVIII−VIII断面図である。
【図9】図7のIX部拡大図である。
【図10】図4(a)に示されたハウジング本体の左縁部の拡大図である。
【図11】図3(a)に示されたカード用コネクタからカバー部材を取り除いた状態の図である。
【図12】排出機構のスライダがカード排出位置に保持されている状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。
【図13】排出機構のスライダがカード装着位置を通過して挿入方向の限界位置に達した状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。
【図14】排出機構のスライダがカード装着位置に保持されている状態を、カバー部材を取り除いて示す上面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 カード用コネクタ
2 ハウジング
2a 挿入口
3 ハウジング本体
3a 底板部
3b 前端壁部
3c,3d 規制面
3e 係合溝
3e1 第1底面
3e2 第2底面
3e3 壁面
4 カバー部材
4a 上板部
4b 前板部
4c 左側板部
4d 右側板部
4e 突出部
4e1 第1辺部
4e2 第2辺部
5 端子
6A,6B 結合部
6a 爪
6b 係止孔
10 排出機構
11 スライダ
11a 前側当接部
11b 右側当接部
11c 板バネ
11c 屈曲部
12 コイルスプリング
13 ハート型カム機構
13a ピン
13b ハート型カム溝
13c 板バネ
20 カード
21 端子
22 切欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードが挿入されるハウジングを有し、このハウジングは、挿入された前記カードの一方の面に対向して位置する底板部を含む樹脂製のハウジング本体と、前記挿入されたカードの他方の面に対向して位置する上板部を含む金属製の前記カバー部材とが結合してなるカード用コネクタであって、
前記挿入されたカードの幅方向の移動を規制する前記ハウジングの両側壁部の少なくとも一方が、前記カバー部材の側板部からなり、
前記側板部は前記ハウジング本体の底板部の側面の外方側に対向して位置するとともに、折り曲げ加工より前記ハウジング本体の位置する方向に突出して設けられた突出部を有し、
前記突出部は前記底板部と係合することにより、前記底板部の側面から離れる方向の前記側板部の移動と、前記上板部を前記底板部に近づかせる方向の前記側板部の移動とを阻止する
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載の発明において、
前記突出部は、前記側板部から、前記カードの幅方向に対応する前記ハウジングの幅方向に延びた第1辺部と、この第1辺部の先端に折り曲げ加工により設けられ前記上板部から離れる方向に延びた第2辺部とを有し、
前記底板部には、前記カードの厚さ方向に対応する前記ハウジングの厚さ方向において前記第1辺部と対向する第1係止部と、前記ハウジングの幅方向において前記ハウジング本体の外方側から前記第2辺部と対向する第2係止部とが設けられている
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の発明において、
前記底板部は、前記挿入されたカードの前記他方の面に対向して位置し、前記カバー部材の前記上板部との間で前記カードの厚さ方向の移動を規制する規制面を有し、
前記突出部は、前記カードの厚さ方向に対応する前記ハウジングの厚さ方向において、前記規制面と同一位置、または、その規制面よりも前記カードの前記他方の面から離れた位置に位置する
ことを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明において、
前記ハウジング内には、前記挿入されたカードの側面に沿って位置し、そのカードを前記ハウジングに対する挿入方向と逆向きの排出方向に押し動かすことが可能な排出機構が設けられていて、この排出機構は前記側板部に隣接して位置する
ことを特徴とするカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−272219(P2009−272219A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123376(P2008−123376)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】