説明

カード表示体及びその認識方法

【課題】高速で印字ができて、かつ、多様なデザインへの適応性とトレーサビリティに優れた信頼性を有するカード表示体及びその認識方法を提供することにある。
【解決手段】カードの少なくとも片面に、COレーザーを用いて深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による潜像の印字パターンを形成したことを特徴とするカード表示体で、またさらには、前記カード表示体に、波長660nmの赤色LED光源を平行光源として照射する照明手段と、照射した光の反射光をCCDカメラで読み取る手段と、読み取ったデータを画像処理する手段により文字認識することを特徴とする認識方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレジットカードやキャッシュカードに用いられている磁気カードやICカードのカード類の表面に、レーザー光を照射して肉眼では視認できない文字パターンなどを潜像として印字したカード表示体及びそれを認識する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クレジットカードやキャッシュカードに用いられている磁気カードやICカードのカード類は、一般に、カードの表面に製造工場、製造年月日や製造ロットなどのトレーサビリティ用の固有情報が印字されており、しかも肉眼ではっきりと認識できるように印字されている。これらのカード類への印字方法としては、各種印刷方式による印刷文字やプレスによる凹凸で表現されたエンボス文字などが用いられている。
【0003】
従来から、上記カード類への印字方法としては、印字する文字や数字がより明確に目視で認識でき、かつ、高速で印字できる方法が提案されている。例えば、特許文献1では、カード基材の上に第2印刷層として白色層、その上に第1印刷層として白色以外の色からなる着色層を設けたブランクのカード基材を作製し、前記第1印刷層の上からレーザー光を照射して着色層を削除することにより、下地である第2印刷層の白色層が印字パターンとして表示される高速印字方法が開示されている。しかしながら、この方法はレーザー光を用いることで高速化は達成されるが、白色の表示パターンが肉眼ではっきりと認識できるため、カード表面のデザインとのマッチングに制約を受ける問題がある。
【0004】
また、カードに表示された種々の文字パターンを自動で高速かつ正確に認識する方法として特許文献2が開示されている。この方法は照明装置に光源としてLEDが採用されているが、刻印文字の段差が微小の場合や文字の濃淡がないような無地の刻印文字の場合には認識に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−175013号公報
【特許文献2】特開平9−128483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は上記の課題を解決するためのものであり、高速で印字ができて、かつ、多様なデザインへの適応性とトレーサビリティに優れた信頼性を有するカード表示体及びその認識方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、カードの少なくとも片面に、COレーザーを用いて深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による潜像の印字パターンを形成したことを特徴とするカード表示体である。すなわち、カードの表面にCOレーザーを用いて深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による印字パターンを形成することで、前記印字パターンが肉眼では認識できない、いわゆる潜像とすることにより、トレーサビリティに優れた信頼性に加えて、カードの同一表面上に制約の少ないデザインを施すことができ、カードとして幅広いアプリケーションに対応できる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記カードがICカードであることを特徴とす
る請求項1に記載のカード表示体である。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載のカード表示体に、波長660nmの赤色LED光源を平行光源として照射する照明手段と、照射した光の反射光をCCDカメラで読み取る手段と、読み取ったデータを画像処理する手段により文字認識することを特徴とする認識方法である。すなわち、光源として波長660nmの赤色LED光源を用いることにより、散乱性の低い安定した平行光線を照射することができ、深さ1〜4μmの微細な凹による印字パターンの潜像を精度良く認識できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多様なデザインへの適応性とトレーサビリティに優れた信頼性を有するカード表示体及びその認識方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施態様に係るカード表示体の平面概要図である。
【図2】図1に示すカード表示体のAA´間の断面概要図である。
【図3】本発明の一実施態様に係るカード表示体の認識方法の説明図である。
【図4】図3に示す認識方法の部分的拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のカード表示体及び認識方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明の一実施態様に係るカード表示体の平面概要図を示している。また、図2は図1に示すカード表示体10のAA´間の断面概要図を示す。図1及び図2に示すように、本発明のカード表示体10は、磁気カードやICカードなどのカード1の表面に、COレーザーを用いて微細な凹型の集合体よる印字パターン2の潜像が形成されたものである。
【0014】
以下、カード1として非接触型ICカードを例に基本的な構成を説明する。本発明は前記非接触カードの表面に、トレーサビリティに必要な製造工場、製造年月日や製造ロットなどの情報を、COレーザーを用いて微細な凹型ドット形状の集合体よる印字パターン2を潜像として形成したカード表示体10である。
【0015】
一般に前記非接触ICカードは、金属箔をエッチングして形成されたアンテナとICチップが搭載された基材シート、中間シートおよび封止剤(インモールド樹脂)からなるコアシートと、前記コアシートの表裏に積層する表面用外装シートおよび裏面用外装シートから構成される。この表裏面用外装シートは予め印刷を施すことができ、非接触ICカードの用途に応じた文字や絵柄のデザインを施すことができる。
【0016】
本発明に係る前記基材シートとしては、低融点でラミネート時に溶融する熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)などの絶縁性を有するものが単独、または複合体として、厚さ15〜200μmの範囲で用いることが好ましい。
【0017】
また、前記中間シートは、基材シート上に搭載されたICチップとそれを封止剤するインモールド樹脂を挟み込むように配置されたものであり、低融点でラミネート時に溶融する熱可塑性樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、非晶質ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂などが使用できる。
【0018】
また、前記封止剤(インモールド樹脂)としては、エポキシ系のモールド樹脂が使用できる。
【0019】
前記表裏面用外装シートは、カードの最表面になる面が白色であることが好ましい。例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド(PI)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)などの絶縁性を有する高分子材料を単独、または複合体として、厚さ100〜150μmの範囲で用いることが好ましい。なお、前記高分子材料の最表面を白色にする方法としては特に限定するものではないが、一般的に行われている白色顔料の練り込みや、あるいは白色インクの塗布が利用できる。
【0020】
上記のカードの最表面になる面が白色であることが好ましい理由としては、下記説明する凹型ドット形状の集合体による印字パターンの潜像を明確に認識することにおいて、非印字部である平面での反射光を白色に、印字部である凹面での反射光をCCDカメラに入光させず黒色で認識させる上で、よりコントラストを得るためである。
【0021】
本発明のカード表示体は上述した前記非接触ICカードの表面に、COレーザーを用いて深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体により印字パターンを形成して得られる。この深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による印字パターンは、通常、肉眼では目視できず、前記非接触ICカードの表面に潜像として形成されるため、予め印刷された文字や絵柄などのデザインを制約することなく多様なデザインに対応することができる。
【0022】
具体的には、前記非接触ICカードの表面に、スキャンスピード12,000mm/s、平均出力30Wの条件下で、波長10.6μmのCOレーザーを用いて、深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による印字パターンを形成することにより、レーザーの照射エネルギーによる印字部の発色(変色)を防ぐことができ、トレーサビリティの固有情報を潜像として形成することができる。
【0023】
例えば、シリアルナンバーとして使用する数字や英文字を、文字高さ及び文字幅がそれぞれ0.5〜3.0mmの文字サイズで非接触ICカード表示体を作製することができる。
【0024】
図3は本発明の一実施態様に係るカード表示体10の認識方法の説明図を示す。カード表示体10として、上記で得られた非接触ICカード表示体を例に、潜像として形成したトレーサビリティの固有情報の認識方法について説明する。散乱率の低い波長660nmの赤色LEDを用いたレーザー光源3を平行光線として照射して、その反射光6をCCDカメラ4に入光して読み取り、読み取ったデータを画像処理して文字認識する。
【0025】
具体的には、平坦面での反射光を白色に、凹面でのCCDカメラに入光されない反射光を黒色にして2値化により一つの文字を画像処理し、予めコントローラに登録した文字との照合により文字認識する方法である。
【0026】
図4は図3に示す認識方法の部分的拡大図である。先ず、深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体によるパターンを潜像として形成した印字パターン2に、散乱率の低い波長660nmの赤色LEDを用いたレーザー光源3を平行光線として照射する。その時、平坦面での入射光5に対する反射光6は、正反射光としてCCDカメラ4に入光して白色として認識される。一方、凹面では反射光6が拡散し、その結果、正反射光としてCCDカメラ4に入光する光の量が激減し、黒色として認識される。そして白色、黒色の2値化により一つの文字が画像処理される。そして最後に予めコントローラに登録した文字との照合により、潜像である文字パターンが正確に文字認識される。
【0027】
上記のように本発明は、カード類の表面にCOレーザーにより深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状を集合体として形成することで、肉眼では認識できない潜像の文字パターンを設けることができ、さらに、その文字パターン上に散乱率の低い波長660nmの赤色LEDを用いたレーザー光源3を平行光線として照射した反射光の、CCDカメラへの入光量の差によるは白色、黒色の2値化により、一つの文字が画像処理され認識されるカード表示体及び認識方法である。
【符号の説明】
【0028】
1 ・・・カード
2 ・・・印字パターン
3 ・・・レーザー光源
4 ・・・CCDカメラ
5 ・・・入射光
6 ・・・反射光
10 ・・・カード表示体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードの少なくとも片面に、COレーザーを用いて深さ1〜4μm、直径1μmの微細な凹型ドット形状の集合体による印字パターンの潜像を形成したことを特徴とするカード表示体。
【請求項2】
前記カードがICカードであることを特徴とする請求項1に記載のカード表示体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカード表示体に、波長660nmの赤色LED光源を平行光源として照射する照明手段と、照射した光の反射光をCCDカメラで読み取る手段と、読み取ったデータを画像処理する手段により文字認識することを特徴とする認識方法。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−1058(P2013−1058A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137202(P2011−137202)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】