説明

カーブベルト

【課題】簡略な構成で安価に耐久性、帯電防止性に優れたカーブコンベア用ベルトを提供する。
【解決手段】原反14の経糸12aと緯糸12bに所定間隔で導電性の部材を用いる。原反14から扇形のカーブベルト11を切り取り、端縁部同士を接合し、切頭円錐台状に成型する。カーブベルト11をコンベア本体の一対のエンドローラに掛け回し、扇形に張設する。ベルトの走行時に蓄積する静電気の滞電を経糸12aと緯糸12bを用いて防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカーブコンベアに用いられるカーブベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
ベルトを走行させると、ベルトを駆動するローラにベルトの裏面が繰り返し接触、離接し、又はローラとベルトの間でスリップが発生して静電気がベルトの内部に滞留する。
【0003】
ベルトが帯電すると、埃の吸着や搬送物(例えば紙など軽量のもの)の吸着による輸送不備などが発生する。また、帯電圧が高い場合、スパーク(火花)の発生により電気系統のトラブルや火災の危険性などがある。したがってベルトに除電のための構成を設けたものが提案されている。
【0004】
従来、非導電性帆布に導電材として界面活性剤やカーボン入り接着剤を塗布することで帯電を防止する方法が知られているが、耐久性において問題がある。また、ベルトの除電にベルト走行方向に導電部材を配設するものも提案されている。例えば直線コンベアでは帆布のベルト走行方向に一致する布糸の一部に導電性繊維を用いたものが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平9−142687号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カーブコンベアの場合、ベルトは原反から円弧状に切り取られ、端縁を接合されて切頭円錐型に成型されるために帆布の布糸とベルトの走行方向の関係は一定ではなく場所によって異なる。そのため、カーブコンベアでは直線コンベアベルトと同じ方法ではカーブベルト全体に渡ってベルトの走行方向に沿った導電部材を配置出来ず、カーブベルトの特定の位置でしか帯電を抑制できない。また、導電部材を走行方向に一致させるためにカーブベルトの円弧に沿って導電部材を配置することは製造上困難であり、コストを増大させる。
【0006】
本発明は上記問題に鑑み、簡略な構成で安価に耐久性、帯電防止性に優れたカーブコンベア用ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカーブベルトは、ベルトの帆布において、第一の方向に沿って配設される第一の導電性部材と、ベルトの帆布において、前記第一の方向と交わる第二の方向に沿って配設される第二の導電性部材を備え、第一及び第二の導電性部材により、ベルトに帯電される静電気をベルト全体に渡って除電することを特徴としている。
【0008】
カーブベルトに用いられる導電性部材は第一の方向と第二の方向が直交することが好ましく、例えば、カーブベルトは帆布からなる層とカバー部材からなる層とから構成される。このとき、第一、第二の導電性部材は帆布の経緯糸であり、第一、第二の導電性部材が、帆布に所定間隔毎に配設される。また、カーブベルトは切頭円錐型に成型される。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば簡略な構成で安価に耐久性、帯電防止性に優れたカーブベルトを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態であるカーブベルトを用いたカーブコンベア全体の平面図である。
【0011】
カーブコンベア10においては、所定角度で開かれた2本のエンドローラ20の相互間に本実施形態のカーブベルト11が張られる。カーブベルト11は2本のエンドローラ20に掛け回されるため、図のような扇形に張設される。
【0012】
カーブベルト11の外周部には周方向に沿ってビード31が設けられる。ビード31はカーブベルト11が走行される際に向心力により内側に滑らないように、コンベア本体10に固定された案内部材33に係合する突起を備える。
【0013】
案内部材33は円弧状の棒部材であり、抑え部材32によってコンベア本体10に固定される。案内部材33はカーブベルト11の外周に沿ってビード31の突起に係合するように配置される。これによりカーブベルト11は内側にずれることなく駆動される。
【0014】
なお、本実施形態では、ビード31として分割ビードを用い、分割ビードを棒状の案内部材により保持する構成を例に説明を行ったが、カーブベルトの外周部に沿って分割されていない一続きのビードを設けこれをローラ等により把持し、カーブベルトの外周部を保持する構成であってもよい。
【0015】
カーブベルト11の駆動部はモーター41と駆動ローラ42からなる。駆動ローラ42はモーター41と連結しており、ピンチローラ(図示せず)との間でカーブベルト11を挟む。モーター41により駆動ローラ42が回転し、駆動ローラ42とピンチローラに挟まれているカーブベルト11が駆動される。
【0016】
図2はカーブベルト11の断面図である。カーブベルト11は例えば帆布12とポリウレタン等からなるカバー部材13から構成され、カバー部材13は帆布12上に積層される。カーブベルト11は帆布12面を裏、カバー部材13面を表として図1の2本のエンドローラ20に掛け回される。
【0017】
図3は帆布12にカバー部材13が積層されたカーブベルト11の原反14からカーブベルト11を切り取る時の平面図である。帆布12は例えばポリエステル繊維などの非導電性繊維から成る織布であるが、所定間隔毎に導電性を備えた経糸12aと緯糸12b(導電性繊維)が織り込まれる。
【0018】
なお、図2において帆布12は図3のII−II線に沿った断面図に対応(緯糸がカーブベルトの径方向に一致する位置)する。図2では模式的に非導電性繊維5本置きに導電性繊維1本が織り込まれているが、実際には多数の繊維が縦横隙間なく織り込まれている。なお、導電性の経糸12a、緯糸12bとしては、例えば金属線、炭素繊維や、これらを非導電性繊維に撚り合わせた撚糸などが用いられる。
【0019】
図3に示されるようにカーブベルト11は原反14から所定の中心角の扇形に切り出される。本実施形態ではカーブベルト11は例えば略180°の中心角で扇形に切り出され、切り出された扇形のカーブベルト11は端縁相互を接続して図4に示すような切頭円錐台状をなす無端ベルトとして成型される。切頭円錐台状とされたカーブベルト11をエンドローラ20に装着すると図1のようにカーブベルト11は中心角が略90°の扇形に張設される。
【0020】
図1のようにカーブベルト11は円弧に沿って矢印Aの向きに駆動される。この際に導電性繊維が設けられていないカーブベルトでは、ベルトの裏側がエンドローラ20や駆動ローラ42に接触、離接を繰り返し、あるいはベルトローラ間にスリップが発生することにより静電気が発生して電荷が蓄積する。
【0021】
ベルトの帯電は、一般にベルトの走行方向と一致するように導電性繊維を織り込むことで抑制でき、このような除電効果は導電性繊維の向きとベルトの走行方向の関係に依存する。例えばベルトの走行方向と導電性繊維が平行なときは除電効果が大きいが、ベルトの走行方向と導電性繊維が直交するときは除電効果が殆どない。すなわち、除電効果はベルトの走行方向と導電性繊維が交わる角度が0°(平行時)のとき最大であり角度が90°(直交時)に近づくにしたがってその効果は小さくなり、90°で最小となる。
【0022】
直線コンベアの場合、ベルト走行方向を帆布の経糸又は緯糸の一方に常に一致させることが出来る。しかし、縦横に経糸12a、緯糸12bが使用されたカーブベルト11においては経糸12a、緯糸12bの向きと走行方向との関係はその位置により様々に変化する。
【0023】
経糸12a、緯糸12bどちらか一方向に注目すると、カーブベルト11の走行方向と略一致する向きに配向された導電性繊維は一定の領域に限定される。例えばカーブベルト11において図3のII−II線付近を見てみると経糸12aはカーブベルトの走行方向(接線方向)に一致するので除電に大きく貢献するが緯糸12bはカーブベルト11の走行方向に直交するので除電に殆ど貢献しない。一方、互いに接続される端縁付近を見ると緯糸12bはカーブベルトの走行方向(接線方向)に一致するので除電に大きく貢献するが経糸12aはカーブベルト11の走行方向に直交するので除電に殆ど貢献しない。
【0024】
本実施形態では経糸12aと緯糸12b両方に導電性繊維を使用したことによりカーブベルト11のどの位置においても十分な除電性能を確保している。すなわち、本実施形態のカーブベルト11では、どの位置でもベルトの走行方向に対して45°以内で交わる導電性繊維が存在する。図3の領域Bではベルトの走行方向(円弧の方向)に対して経糸12aと緯糸12bはどちらも略45°の角度で交わるためそれぞれの除電効果は平行のときに比べ半分ほどとなるが両方の除電効果を合わせると例えば、II−II線付近において走行方向に平行な経糸12a単独で除電を行うときと略同じ効果を発揮する。
【0025】
なお、走行方向に対する経糸の角度が大きいときにはその分緯糸の角度が小さくなり、経糸の角度が小さいときにはその分緯糸の角度が大きくなるため除電効果はカーブベルトの何れの位置においてもほぼ同程度に維持される。
【0026】
以上のように本実施形態のカーブベルトではベルトのどの位置でもベルト走行により発生する帯電を効果的に防止出来る。なお、本実施形態におけるカーブベルトには螺旋コンベア用のベルトも含まれる。
【0027】
本実施形態では、非導電性繊維5本置きに1本の割合で導電性繊維を織り込んだが、導電性繊維の経糸、緯糸への織り込み割合は任意であって本実施形態に限定されない。
【0028】
また、導電性部材はカーブベルトの面内の2方向に配設されていればよく、経緯糸として織り込まれていなくともよい。例えば、帆布に縫い付けてもよい。
【0029】
また、導電性部材が配設される方向も異なる2方向であればよく、直交したものに限定されない。更に異なる3方向以上に導電性部材を配設することも可能である。
【0030】
また、本実施形態では、一層の帆布と一層のカバー部材からなる2層構造(1プライ)のベルトを例に説明を行ったが、ベルトの構造はこれに限定されるものではなく、例えば、2層の帆布と2層のカバー部材とを交互に積層させた4層構造(2プライ)のベルトにも用いることができる。この場合、導電性部材は、カバー部材間に挟まれる中間帆布あるいは裏面帆布の少なくとも一方に設けられればよい。また、帆布層とカバー部材層の組み合わせは任意である。
【実施例】
【0031】
次に、比較例とともに実施例を挙げて本実施形態の効果について説明する。すなわち、比較例および実施例では、帆布において2方向に織り込まれた導電性部材(導電性繊維)による除電効果について検証した。なお、試験ではカーブベルトの代わりに直線ベルトを用い、帆布層にはポリエステル帆布をカバー部材にはPVC樹脂を使用した。
【0032】
図5は、比較例および実施例で用いられた除電試験用の装置の概略図である。図5に示されるように、試験装置では、原動プーリ100と従動プーリ101に掛け回された直線ベルト103が図5の矢印B方向に走行され、点P1、P2、P3の3点においてベルトの帯電状態が計測された。
【0033】
まず、比較例1について説明する。比較例1には、図6に模式的に示されるように、導電性部材(導電性繊維)が織り込まれていない2プライの直線ベルトが用いられた。表1に比較例1に用いられた2本の2プライ直線ベルト(サンプル1、2)の計測結果を示す。表1に示されるように、導電性部材が用いられない場合、何れのサンプル1、2においても、各点P1〜P3において−0.1、−0.15、−0.2(kV)の帯電が計測された。
【0034】
【表1】

【0035】
次に、比較例2について説明する。比較例2には、図7に模式的に示されるように、導電性部材(導電性繊維)がベルト幅方向(ベルト走行方向に直交する方向)に配設された2プライの直線ベルトが用いられた。なお、導電性部材は、外側の帆布のみに織り込まれたものが用いられた。また表2に、比較例2における2本のサンプル(サンプル1、2)に対する計測結果を示す。表2に示されるように、ベルト走行方向に直交する方向に導電性部材が配設された場合には、点P1では除電されているものの点P2、P3ではそれぞれ−0.1、−0.2(kV)の帯電が計測され、プーリから離れると殆ど除電の効果が得られない。
【0036】
【表2】

【0037】
次に、比較例3について説明する。比較例3には、1プライの直線ベルトが用いられ、図8に模式的に示されるように、帆布には1方向に走行方向斜め45°に導電性部材(導電性繊維)が織り込まれている。比較例3においても2本のサンプル(サンプル1、2)に対して試験が行われた。表3に示されるように比較例3のサンプル1、2においても、点P1では帯電は計測されなかったものの、点P2、P3においては、サンプル1では−0.1、−0.2(kV)、サンプル2では−0.05、−0.15(kV)と帯電が計測され、除電は十分になされていなかった。
【0038】
【表3】

【0039】
次に、実施例1について説明する。実施例1には、1プライの直線ベルトが用いられ、帆布には図9に模式的に示されるように、直交する2方向に導電性部材(導電性繊維)が織り込まれた帆布が用いられた。また2方向に配設された各導電性部材は、ベルト走行方向に対してそれぞれ45°の方向となるように配置された。表4に示されるように、実施例1のベルトではサンプル1、2における何れの点P1〜P3においても帯電は認められず、除電の効果が十分に得られたことが確認された。
【0040】
【表4】

【0041】
なお、実施例2、3として、図9に示される構成で、2プライの直線ベルトに対しても同様の試験を行ったが、実施例1と同様に表4に示される結果が得られ、十分な除電効果が得られることが確認された。なお、実施例2は、両帆布に2方向に導電性部材(導電性繊維)が織り込まれた帆布を用い、実施例3では、外側の帆布のみに2方向に導電性部材(導電性繊維)が織り込まれた帆布を用いた。
【0042】
以上のように、実施例1〜3と比較例1〜3との比較からも、ベルト走行方向に対して異なる2方向に配設された導電性部材を組み合わせることにより、高い除電効果が得られることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施形態であるカーブコンベアの平面図である。
【図2】図1のカーブベルトの縦断面図である。
【図3】図1のカーブベルトの原反上での展開図である。
【図4】図3の扇形の端縁部同士を接合し、切頭円錐台状に成型されたカーブベルトの模式図である。
【図5】比較例および実施例で用いられた除電試験用の装置の概略図である。
【図6】比較例1における試験の構成を示す模式図である。
【図7】比較例2における試験の構成を示す模式図である。
【図8】比較例3における試験の構成を示す模式図である。
【図9】実施例1〜3における試験の構成を示す模式図である。
【符号の説明】
【0044】
10 カーブコンベア
11 カーブベルト
12a、12b 導電性部材
12 帆布
13 カバー部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトの帆布において、第一の方向に沿って配設される第一の導電性部材と、
前記帆布において、前記第一の方向と交わる第二の方向に沿って配設される第二の導電性部材を備え、
前記第一及び第二の導電性部材により、ベルトに帯電される静電気を前記ベルト全体に渡って除電する
ことを特徴とするカーブベルト。
【請求項2】
前記第一の方向と前記第二の方向が直交することを特徴とする請求項1に記載のカーブベルト。
【請求項3】
前記カーブベルトが、前記帆布からなる層とカバー部材からなる層とから構成されることを特徴とする請求項1に記載のカーブベルト。
【請求項4】
前記第一、第二の導電性部材が、前記帆布の経緯糸であることを特徴とする請求項3に記載のカーブベルト。
【請求項5】
前記カーブベルトが切頭円錐型に成型されたベルトであることを特徴とする請求項4に記載のカーブベルト。
【請求項6】
前記第一、第二の導電性部材が、前記帆布に所定間隔毎に配設されることを特徴とする請求項4に記載のカーブベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−239314(P2008−239314A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84145(P2007−84145)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】