説明

カーボンナノチューブ含有ゴム組成物

【課題】カーボンナノチューブ含有ゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、特有の水素化ニトリルゴム、少なくとも1つの架橋剤およびカーボンナノチューブを含有する加硫可能な組成物、かかる組成物の調製方法、ならびに加硫物を製造するためそれの使用を提供する。前記加硫物は、優れた熱性能、耐油性および機械的強度を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の水素化ニトリルゴム、架橋剤およびカーボンナノチューブを含有する加硫可能な組成物、かかる組成物の調製方法、それの加硫および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
エラストマーは原則として、多数の用途において広範囲に及ぶ適用を見いだされてきた。さらに、広範囲の機械的特性、化学的特性ならびに物理的特性に対処している多数の特殊ゴムが入手可能である。ニトリルゴムの水素化生成物、すなわち「HNBR」とも略記される水素化されたニトリルゴムだけでなく、ニトリルゴム(NBR)も、かかる特殊ゴムである。特にHNBRは、非常に良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐化学薬品性、ならびに優れた耐油性を有する。HNBRは、例えば、自動車部門におけるシール、ホース、ベルトおよび締め付け要素向けに、油抽出の分野における固定子、油井シールおよびバルブシール向けにもまた、そして航空機産業、エレクトロニクス産業、機械エンジニアリングおよび造船における多数の部品向けにもまた使用されている。
【0003】
しかしながら、技術の発展と共に、機能性ゴム装備品に対する近代産業の要求はより厳しくなっている。特殊ゴムを添加剤と組み合わせてエラストマー材料の特性を向上させる新規の加硫可能な配合物を捜し求めることは絶対に必要である。カーボンナノチューブ(CNT)の発見以来、それらは、それらの優れた機械的、電気的および熱的特性のために多くの研究者の注目を集めてきた。エラストマー中へ組み込まれた強化フィラーとしてのCNTは、効果的にマトリックスの機械的特性を向上させることができる。
【0004】
カーボンナノチューブは、細長いフラーレンと見なすことができる(非特許文献1)。カーボンナノチューブは、六角形でできており、フラーレンのように、両端でのみ五角形と六角形でできている。構造上、CNTの形状は、グラフェンシートが1000以上の非常に高いアスペクト比で端継ぎ目なしキャップの細管形態へ丸くなっていると描写することができよう。個々の分子として、CNTは、それらの低い密度にもかかわらず高い強度につながる欠陥のない構造であると考えられる。
【0005】
カーボンナノチューブについては2つの基本的な形態、単層ナノチューブ(SWNT)と言われる、単一グラファイトシートから生成したもの、および多層ナノチューブ(MWNT)として知られる幾つかの同心シートで構成されるナノチューブがある。SWNTは、BahrおよびTour(非特許文献2)、Hirsch(非特許文献3)、Colbert(非特許文献4)、ならびにBaughmanおよびHeer(非特許文献5)によるものをはじめとする、この主題に関する幾つかの関連総説で学界においてかなりの関心を引き起こしてきた。
【0006】
カーボンナノチューブは20年超前に発見されているため、それらを製造するための様々な技法が開発されている。飯島(非特許文献6)は初めて多層ナノチューブを観察した。飯島らおよびBethuneら(非特許文献7)は独立して、2、3年後に単層ナノチューブの合成を報告した。単層および多層カーボンナノチューブの第一の合成方法には、アーク放電(非特許文献8)、レーザーアブレーション(非特許文献9)、一酸化炭素からの気相触媒成長(非特許文献10)、および炭化水素からの化学蒸着(CVD)(非特許文献11)、(非特許文献12)が含まれる。その後の精製工程は、チューブを分離することを必要とされる。気相法は、不純物がより少ないナノチューブを生成する傾向があり、大規模加工により適している。低コストの大規模製造方法はこれまで全く存在しないが、伝統的方法がさらに開発されつつあり、流動床反応器などの新規方法が、安定した手ごろな価格でのCNT供給を生み出すために研究されつつある。CNTの入手可能性が低くかつそれらの価格が高いことにより、多くの実用的用途向けポリマー−CNT複合材料の実現を制限してきた。
【0007】
カルボキシル化ニトリル−共役ジエンゴム(少なくとも1つの共役ジエン、少なくとも1つの不飽和ニトリル、少なくとも1つのカルボキシル化モノマーおよび場合によりさらなるコモノマーの繰り返し単位を含む共重合体である、「XNBR」とも略記される)の選択的水素化によって製造される、水素化カルボキシル化ニトリルゴム(「HXNBR」とも略記される)は、非常に良好な耐熱性、優れた耐オゾン性および耐化学薬品性、ならびに優れた耐油性を有する特殊ゴムである。ゴムの高レベルの機械的特性(特に高い耐摩耗性)と相まって、XNBRおよびHXNBRが他の産業の中で、自動車産業(シール、ホース、ベアリングパッド)、油産業(固定子、坑口シール、バルブプレート)、電気産業(ケーブルシーティング)、機械工学産業(車輪、ローラー)および造船産業(パイプシール、連結器)で広範囲に及ぶ使用を見いだしてきたことは驚くべきではない。
【0008】
HXNBRポリマーの製造方法は特許文献1に記載されており、一方、幾つかの他の特許出願は、例えば、特許文献2および特許文献3のように、HXNBRポリマーについての様々な配合技法に関して出願されている。
【0009】
「究極的な」繊維と考えられることもあるカーボンナノチューブは、異なる、そして興味ある用途を有する。詳細にまだ探究されてこなかったものは、エラストマー材料中へのチューブの組み込みの問題である。今まで溶媒混合、溶融混合および噴霧乾燥法が、幾つかのゴム/CNT複合材料を製造するための加工方法として用いられてきた。既存の研究におけるゴムマトリックスには、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フルオロカーボンエラストマー(FKM)および水素化アクリロニトリルゴム(HNBR)が含まれる。
【0010】
非特許文献13で、シリコーンベースのエラストマーでのカーボンナノ粒子の使用の、生じた試料の機械的特性に対する影響が研究されている。単層カーボンナノチューブまたはより大きいカーボンナノフィブリルの使用は、フィラー使用量に応じて、生じた試料の初期弾性率の増大につながるが、最終的な特性の低下を伴う。
【0011】
ポリマーマトリックス中へのカーボンナノチューブの組み込みは既に、シロキサン、イソプレンゴム、ニトリルブタジエン、フルオロポリマー(FKM)および水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)などの様々なポリマーについて探究されてきた。
【0012】
非特許文献14に、HNBRの硬化特性および機械的特性に対するMWNTの影響が記載されている。2つの方法がナノ複合材料を製造するために用いられている。第1方法では、CNTは、50℃で10分間硬化剤と共に2ロールミルで直接HNBRへ混ぜ込まれ、次に相当する配合物は、T90の間、ホットプレッシングによって170℃で加硫させられた。第2方法は、低分子液体HNBR(LHNBR)が先ずアセトンに溶解され、その後、表面改質CNTが溶液に添加され、次に超音波分散が混合物に用いられた。アセトンを真空乾燥によって混合物から除去すると、CNTがLHNBR中に予め分散された配合物が得られた。この溶媒法を用いるとき、HNBR/MWNT複合材料の最高の引張強度は、25phrのMWNT含有率で18.6MPaであった。
【0013】
特許文献4は、HNBRの耐熱性、耐久性および機械的強度を高めるためのカーボンナノチューブによるHNBRの改質を開示している。HNBR複合ゴム材料を製造するために、カーボンナノチューブおよび液体ゴムが先ず超音波混合され、次にマスターバッチを調製するために部分水素化ニトリル−ブタジエンゴムへ添加され;このマスターバッチが次に、残りの量の水素化ニトリル−ブタジエンゴム、カーボンブラック、酸化亜鉛および硫化剤と混合される。この混合物は回転ミキサーまたはBanburyミキサーでブレンドされ、次に加硫によって、カーボンナノチューブ改質水素化ニトリル−ブタジエンゴムが製造される。
【0014】
特許文献5は、カーボンナノチューブの配向に関してポリマー−カーボンナノチューブ複合材料の熱伝導性依存を教示している。推奨されるポリマーマトリックスには、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)および水素化ニトリルゴム(HNBR)が含まれる。これらのポリマー−カーボンナノチューブ複合材料は、空気式タイヤおよび車両用車輪の製造のために使用されてきた。
【0015】
特許文献6は、カーボンナノチューブ−エラストマー複合材料の製造方法を記載している。かかる複合材料の引張弾性率が高められることがさらに開示されている。エラストマーとして、ポリシロキサン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、ハロゲン化ポリイソプレン、ハロゲン化ポリブタジエン、ハロゲン化ポリイソブチレン、低温エポキシ、EPDM、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、EPMおよび他のアルファ−オレフィンベース共重合体、ならびに幾つかの特定のフッ素含有共重合体が述べられている。
【0016】
特許文献7は、歯付ベルトの表面が、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴムおよび水素化ニトリルゴムなどの、ポリマーラテックスを含む歯付ベルトの製造を教示している。これらのポリマー複合材料は、レソルシノール−ホルムアルデヒド樹脂の存在下でのカーボンナノチューブの混合によって生み出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】国際公開第A−2001/077185号パンフレット
【特許文献2】国際公開第A−2005/080493号パンフレット
【特許文献3】国際公開第A−2005/080492号パンフレット
【特許文献4】中国特許第1554693号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2006/0061011号明細書
【特許文献6】カナダ国特許第2,530,471号明細書
【特許文献7】特開2003−322216号公報
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Nature、318(1985)、162ページ
【非特許文献2】J.Mater.Chem.、12(2002)、1952ページ
【非特許文献3】Angewandte Chemie−International Edition、41(2002)、1853ページ
【非特許文献4】Plastics Additives & Compounding、2003 1月/2月、18ページ
【非特許文献5】Science、297(2002)、787ページ
【非特許文献6】Nature、354(1991)、56ページ
【非特許文献7】Nature、363(1993)、605ページ
【非特許文献8】Nature、388(1997)、756ページ
【非特許文献9】Applied Physics A:Materials Science & Processing、67(1998)、29ページ
【非特許文献10】Chemical Physics Letters、313(1999)、91ページ
【非特許文献11】Applied Physics Letters、75(1999)、1086ページ
【非特許文献12】Science、282(1998)、1105ページ
【非特許文献13】Composites Science & Technology、63(2003)、1647ページ
【非特許文献14】Journal of Material Science、41(2006)、2541ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
エラストメリック配合物に対する安定した需要を考慮して、特殊ゴムを添加剤と組み合わせた新規の加硫可能な配合物を提供することが本発明の目的である。水素化カルボキシル化アクリロニトリル−ブタジエンゴム(「HXNBR」)はそれ自体既に、金属への良好な接着性だけでなく耐油性、耐摩耗性を包含する魅力的な特性プロフィルを有する。しかしながら、特定のカルボキシル基含有率のためにHXNBRは、他の汎用エラストマーほど詳細に研究されてこなかったので、任意の配合物におけるその挙動は、他のより典型的なエラストマーについて利用可能であるかもしれない結果に基づいての予測はできない。しかしながら、HXNBRが好適であるかもしれない用途は、油井特殊品、高性能ベルト、およびロールカバリングなどの極端なものであるので、改良および新規のHXNBRベース組成物の余地は依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、水素化カルボキシル化ニトリルゴム、少なくとも1つの架橋剤、およびカーボンナノチューブを含む加硫可能な組成物に、かかる加硫可能な組成物の調製方法に、ならびに成形品を製造するための使用だけでなくかかる組成物の加硫に関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明による加硫可能な組成物は、水素化カルボキシル化ニトリルゴム、少なくとも1つの架橋剤、およびカーボンナノチューブを含む。
【0022】
本明細書の全体にわたって用いるところでは、用語「水素化カルボキシル化ニトリルポリマー」またはHXNBRは、a)少なくとも1つの共役ジエン、b)少なくとも1つのα,β−不飽和ニトリル、c)少なくとも1つのカルボン酸基を有する少なくとも1つのモノマーまたはそれの誘導体、およびd)場合によりさらなる1つ以上の共重合性モノマーに由来する繰り返し単位を有するポリマーであって、出発カルボキシル化ニトリルポリマー中に存在する残存二重結合(RDB)の50%超が水素化され、好ましくはRDBの90%超が水素化され、より好ましくはRDBの95%超が水素化され、最も好ましくはRDBの99%超が水素化されているポリマーを包含することを意図される。
【0023】
共役ジエンは任意の性質のものであることができる。(C〜C)共役ジエンを使用することが好ましい。1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチルブタジエン、ピペリレンまたはそれらの混合物が特に好ましい。1,3−ブタジエンおよびイソプレンまたはそれらの混合物が非常に特に好ましい。1,3−ブタジエンがとりわけ好ましい。
【0024】
α,β−不飽和ニトリルとして、任意の公知のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリルまたはそれらの混合物などの(C〜C)α,β−不飽和ニトリルを使用することが可能である。アクリロニトリルが特に好ましい。
【0025】
少なくとも1つのカルボン酸基を有するモノマーまたはそれの誘導体として、例えば、α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸、それらのエステルまたはアミドを使用することが可能である。
【0026】
α,β−不飽和モノカルボン酸もしくはジカルボン酸として、フマル酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好ましい。
【0027】
α,β−不飽和カルボン酸のエステルとして、それらのアルキルエステルおよびアルコキシアルキルエステルを使用することが好ましい。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルキルエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、第三ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルメタクリレート、第三ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびオクチルアクリレートである。α,β−不飽和カルボン酸の特に好ましいアルコキシアルキルエステルは、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレートである。アルキルエステル、例えば上述のものと、例えば上述のものの形態でのアルコキシアルキルエステルとの混合物を使用することもまた可能である。
【0028】
好ましい実施形態では、アクリロニトリル、ブタジエンおよびマレイン酸をベースとする水素化ターポリマーが使用される。さらなる好ましい実施形態では、アクリロニトリル、ブタジエンおよびα,β−不飽和カルボン酸のアルキルエステル、特にn−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、および第三ブチルアクリレートをベースとする水素化ターポリマーが使用される。
【0029】
典型的には、水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは、
a)1つ以上の共役ジエン、好ましくはブタジエンに由来する40〜85重量パーセントの範囲の繰り返し単位、
b)1つ以上のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリルに由来する15〜60重量パーセントの範囲の繰り返し単位、および
c)少なくとも1つのカルボン酸基を有する1つ以上のモノマーまたはそれの誘導体、好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、より好ましくはマレイン酸、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、または第三ブチルアクリレートに由来する0.1〜30重量パーセントの範囲の繰り返し単位
を含み、
ここで、3つのモノマーa)、b)およびc)は、合計100重量パーセントになるように所与の範囲で選ばれなければならない。
【0030】
好ましくは、水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは、
a)1つ以上の共役ジエン、好ましくはブタジエンに由来する55〜75重量パーセントの範囲の繰り返し単位、
b)1つ以上のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリルに由来する25〜40重量パーセントの範囲の繰り返し単位、および
c)少なくとも1つのカルボン酸基を有する1つ以上のモノマーまたはそれの誘導体、好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、より好ましくはマレイン酸、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、または第三ブチルアクリレートに由来する1〜7重量パーセントの範囲の繰り返し単位
を含み、
ここで、3つのモノマーa)、b)およびc)は、合計100重量パーセントになるように所与の範囲で選ばれなければならない。
【0031】
より好ましくは、水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは、
a)1つ以上の共役ジエン、好ましくはブタジエンに由来する55〜75重量パーセントの範囲の繰り返し単位、
b)1つ以上のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリルに由来する25〜40重量パーセントの範囲の繰り返し単位、および
c)少なくとも1つのカルボン酸基を有する1つ以上のモノマーまたはそれの誘導体、好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、より好ましくはマレイン酸、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、または第三ブチルアクリレートに由来する1〜30重量パーセントの範囲の繰り返し単位
を含み、
ここで、3つのモノマーa)、b)およびc)は、合計100重量パーセントになるように所与の範囲で選ばれなければならない。
【0032】
代わりの実施形態では、共役ジエン、α,β−不飽和ニトリル、および少なくとも1つのカルボキシル基を有するモノマーまたはそれの誘導体は別として、1つ以上のさらなる共重合性モノマーを使用することが可能である。かかる共重合性モノマーは、当業者に公知である。それ故、水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは、アルキルアクリレートまたはスチレンなどの、1つ以上の共重合性モノマーに由来する繰り返し単位をさらに含んでもよい。かかるさらなる共重合性モノマーに由来する繰り返し単位は、ニトリルゴムのα,β−不飽和ニトリル部分か、共役ジエン部分かのどちらかに置き換わるであろうし、上述の数字が100重量パーセントという結果になるように調整されなければならないことは当業者に明らかであろう。
【0033】
上述のモノマーの重合およびその後の水素化による水素化カルボキシル化ニトリルポリマーの製造は、当業者に十分に公知であり、ポリマー文献に包括的に記載されている。典型的には、かかる水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは、ラジカル乳化重合によって製造される。水素化カルボキシル化ニトリルポリマーはまた、例えば、Lanxess Deutschland GmbHから商品名Therban(登録商標)の製品範囲からの製品として、商業的に入手可能である。
【0034】
本発明による加硫可能な組成物を調製するために使用される水素化カルボキシル化ニトリルポリマーは典型的には、5〜90、好ましくは65〜85の範囲のムーニー(Mooney)粘度(100℃での(ML 1+4)を有する。これは、50,000〜500,000の範囲の、好ましくは、200,000〜450,000の範囲の重量平均分子量Mに相当する。使用される水素化カルボキシル化ニトリルゴムはまた、1.7〜6.0の範囲の、好ましくは2.0〜3.0の範囲の多分散性PDI=M/M(Mは重量平均分子量であり、Mは数平均分子量である)を有する。
【0035】
ムーニー粘度(100℃でのML 1+4)の測定は、ASTM標準D 1646に従って実施される。
【0036】
本発明で水素化は好ましくは、出発ニトリルポリマー/NBR中に存在する残存二重結合(RDB)の50%超が水素化されていることによって理解され、好ましくはRDBの90%超が水素化され、より好ましくはRDBの95%超が水素化され、最も好ましくはRDBの99%超が水素化されている。
【0037】
本発明は、水素化カルボキシル化ニトリルゴムの特別な製造方法に限定されない。しかしながら、本発明に好ましいHXNBRは、国際公開第A−01/077185号パンフレットに開示されているように容易に入手可能である。この手順を可能にする権限のために、国際公開第A−01/077185号パンフレットは、参照により本明細書に援用される。
【0038】
本発明による加硫可能な組成物は、単層カーボンナノチューブ(SWNT)か多層カーボンナノチューブ(MWNT)かのどちらかを含む。
【0039】
SWNTは、2つの重要な構造パラメーターを有する分子スケールのワイヤである。グラフェン平面の格子ベクトルの始まりおよび終わりが一緒になるようにグラフェンシートを円筒へ巻き込む。インデックスがナノチューブの直径、かつまた、いわゆる「キラリティ」を決定する。チューブは、円周周りの原子が肘掛け椅子パターンにあるので、「肘掛け椅子型」チューブである。ナノチューブは、円周に沿った原子立体配置を考慮して「ジグザグ」と称される。ナノチューブの他のタイプは、六角形の列がナノチューブ軸に沿って螺旋状になっていて、キラルである(Surface Science、500(1−3)(2002)、218ページ)。
【0040】
多層ナノチューブ(MWNT)は、それら自体上に丸まってチューブ形状を形成するグラファイトの多層からなる。
【0041】
かかるカーボンナノチューブは、商業的に入手可能であるか、先行技術から公知の方法に従って製造されてもよいかのどちらかである。単層および多層カーボンナノチューブのための第一の合成法には、アーク放電法(Nature、354(1991)、56ページ)、レーザーアブレーション法(Applied Physics A:Materials Science & Processing、67(1)(1998)、29ページ)、一酸化炭素からの気相触媒成長法(Chemical Physics Letters、313(1999)、91ページ)、および炭化水素からの化学蒸着(CVD)法(Applied Physics Letters、75(8)(1999)、1086ページ;Science、282(1998)、1105ページ)方法が含まれる。複合材料でのカーボンナノチューブの用途向けには、大量のナノチューブが必要とされ、アーク放電およびレーザーアブレーション技法のスケール−アップ制限は、ナノチューブベース複合材料のコストをひどく高いものにする。気相法は、不純物がより少ないナノチューブを生成する傾向があり、大規模加工により適している。ナノチューブ成長のための、CVDなどの、気相技法は、複合材料の加工用ナノチューブ製造のスケール−アップの最大の可能性を提供すると考えられる。
【0042】
本発明による組成物は典型的には、各場合に水素化カルボキシル化ニトリルゴムの100重量部を基準として、1〜50重量部のカーボンナノチューブ、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部のカーボンナノチューブを含む。
【0043】
本発明による加硫可能な組成物は、1つ以上の架橋剤をさらに含む。本発明は、特別な架橋剤に限定されない。硫黄ベースの架橋剤だけでなく過酸化物ベースの架橋剤が単独でまたは混合物でも使用されてもよい。過酸化物架橋剤またはその場で過酸化物を放出する架橋剤が好ましい。
【0044】
本発明は特別な過酸化物架橋剤に限定されない。例えば、無機または有機過酸化物が好適である。ジ−第三ブチルペルオキシド、ビス−(第三ブチルペルオキシイソプロピル)−ベンゼン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)−ヘキセン−(3)、1,1−ビス−(第三ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、ベンゾイル−ペルオキシド、第三ブチル−クミル−ペルオキシド、過安息香酸第三ブチルなどの、ジアルキルペルオキシド、ケタールペルオキシド、アラルキルペルオキシド、ペルオキシドエーテル、およびペルオキシドエステルなどの有機過酸化物および過酸化亜鉛が好ましい。かかる過酸化物は容易に商業的に入手可能である。
【0045】
通常、本加硫可能な組成物中の架橋剤の、特に過酸化物の量は、1〜10phr(=ゴム、すなわちHXNBRの百部当たり)の範囲に、好ましくは4〜8phrの範囲にある。過酸化物は、ポリマー−結合形態で有利に適用されてもよい。好適なシステムは、Rhein Chemie Rheinau GmbH、D製のPolydispersion T(VC)D−40P(=ポリマー結合ジ−第三ブチルペルオキシ−イソプロピルベンゼン)など、商業的に入手可能である。
【0046】
一実施形態では、本加硫可能な組成物は、
a)100重量部のHXNBR、
b)HXNBRの100重量部を基準として、1〜10重量部、好ましくは4〜8重量部の少なくとも1つの架橋剤、および
c)HXNBRの100重量部を基準として、1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部のカーボンナノチューブ
を含む。
【0047】
フィラー
本発明組成物は場合により、少なくとも1つのフィラーをさらに含む。フィラーは、活性もしくは不活性フィラーまたはそれらの混合物であってもよい。
【0048】
フィラーは特に、
−5〜1000m/gの範囲の比表面積の、および10〜400nmの範囲の一次粒度の、例えば、シリケート溶液の沈澱またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって製造される、高度分散シリカ;このシリカは場合によりまた、Al、Mg、Ca、Ba、Zn、ZrおよびTiなどの他の金属酸化物との混合酸化物として存在することができる;
−20〜400m/gの範囲のBET比表面積および10〜400nmの範囲の一次粒径の、ケイ酸アルミニウムおよびケイ酸マグネシウムもしくはケイ酸カルシウムのようなアルカリ土類金属シリケートなどの合成シリケート;
−カオリンおよび他の天然に存在するシリカなどの、天然シリケート;
−ガラス繊維およびガラス繊維製品(マット、押出品)またはガラス微小球;
−酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムなどの、金属酸化物;酸化マグネシウムが好ましい。
−炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸亜鉛などの、金属炭酸塩;
−金属水酸化物、例えば、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウム;
−カーボンブラック;ここで使用されるべきカーボンブラックは、ランプブラック法、ファーネスブラック法またはガスブラック法によって製造され、好ましくは20〜200m/gの範囲のBET(DIN 66 131)比表面積を有する、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEFまたはGPFカーボンブラック;
−ゴムゲル、特にポリブタジエン、ブタジエン/スチレン共重合体、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体およびポリクロロプレンをベースとするもの;
またはそれらの混合物
であってもよい。
【0049】
好ましい鉱物フィラーの例には、シリカ、シリケート、ベントナイトなどの粘土、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルク、これらの混合物などが挙げられる。これらの鉱物粒子は、それらの表面上にヒドロキシル基を有し、それらを親水性および疎油性にする。これは、フィラー粒子とゴムとの間の良好な相互作用を達成することの困難さを増幅する。多くの目的のために、好ましい鉱物はシリカ、特にケイ酸ナトリウムの二酸化炭素沈澱によって製造されたシリカである。本発明に従った使用に好適な乾燥非晶質シリカ粒子は、1〜100ミクロン、好ましくは10〜50ミクロン、最も好ましくは10〜25ミクロンの範囲の平均凝集塊粒度を有してもよい。凝集塊粒子の10容量パーセント未満はサイズが5ミクロンより下または50ミクロン超であることが好ましい。好適な非晶質乾燥シリカはさらに通常、DIN(ドイツ工業規格(Deutsche Industrie Norm))66131に従って測定された1グラム当たり50〜450平方メートルの範囲のBET表面積、およびDIN 53601に従って測定されるような、シリカの100グラム当たり150〜400グラムの範囲のDBP吸収、ならびにDIN ISO 787/11に従って測定されるような、0〜10重量パーセントの範囲の乾燥減量を有する。好適なシリカフィラーは、PPG Industries Inc.から商標HiSil(登録商標)210、HiSil(登録商標)233およびHiSil(登録商標)243で入手可能である。Lanxess Deutschland GmbHから、Vulkasil(登録商標)SおよびVulkasil(登録商標)Nもまた好適である。
【0050】
多くの場合に、フィラーとしてのカーボンブラックの使用は有利である。通常、カーボンブラックは、20〜200重量部、好ましくは30〜150重量部、より好ましくは40〜100重量部の範囲の量でポリマー複合材料中に存在する。さらに、カーボンブラックと鉱物フィラーとの組み合わせを本発明ポリマー複合材料に使用することが有利であるかもしれない。この組み合わせで、鉱物フィラー対カーボンブラックの比は通常、0.05〜20、好ましくは0.1〜10の範囲にある。
【0051】
さらなる補助化合物
本発明によるポリマー−カーボンナノチューブ組成物は、ゴム産業に公知である、反応促進剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、酸化防止剤、発泡剤(foaming agents)、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、オゾン安定剤、加工助剤、可塑剤、粘着付与剤、発泡剤(blowing agents)、染料、顔料、ワックス、増量剤、有機酸、阻害剤、金属酸化物、およびトリエタノールアミン、ポリエチレングリコール、ヘキサントリオールなどのような活性化剤などの、ゴム用の補助化合物をさらに含有することができる。
【0052】
これらのゴム助剤は、意図される用途にとりわけ依存する、通常の量で使用されてもよい。通常の量は、ゴムを基準として、例えば0.1〜50重量%である。好ましくは本組成物は、補助製品として0.1〜20phrの範囲の有機脂肪酸、好ましくは1個または2個以上の炭素二重結合を分子中に有する不飽和脂肪酸を含み、より好ましくは、少なくとも1つの共役炭素−炭素二重結合をその分子中に有する10重量%以上の共役ジエン酸を含む。好ましくはそれらの脂肪酸は、8〜22個、より好ましくは12〜18個の範囲の炭素原子を有する。例には、ステアリン酸、パルミチン酸およびオレイン酸ならびにそれらのカルシウム、亜鉛−、マグネシウム−、カリウム−およびアンモニウム塩が挙げられる。
【0053】
さらなる実施形態では、本加硫可能な組成物は、補助製品として5〜50phrの範囲のアクリレートを含んでもよい。好適なアクリレートは、欧州特許出願公開第A1−0 319 320号明細書、特に3ページ、16〜35行から、米国特許第5,208,294号明細書、特に列2、25〜40行から、および米国特許第4,983,678号明細書、特に列2、45〜62行から公知である。亜鉛アクリレート、亜鉛ジアクリレートもしくは亜鉛ジメタクリレートまたはトリメチロールプロパントリメタクリレート(TRIM)、ブタンジオール−ジ−メタクリレート(BDMA)およびエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)などの液体アクリレートが特に言及される。異なるアクリレートおよび/またはそれらの金属塩の組み合わせを使用することが有利であるかもしれない。多くの場合、立体障害のあるフェノール類(例えば、メチル置換アミノアルキルフェノール、特に2,6−ジ−第三ブチル−4−ジメチルアミノメチルフェノール)などの、スコーチ防止剤と組み合わせて金属アクリレートを使用することが特に有利である。
【0054】
本発明による加硫可能な組成物の調製
本発明のさらなる目的は、HXNBR、カーボンナノチューブおよび架橋剤ならびに場合により本組成物の他の原料のいずれかが一緒に混合される、加硫可能な組成物の調製である。
【0055】
典型的には混合は、20℃〜200℃の範囲であってもよい高温で行われる。
【0056】
混合はさらに溶媒の存在下に行われてもよく、溶媒は混合後に除去される。
【0057】
通常、混合時間は1時間を超えず、2〜30分の範囲の時間が通常適切である。
【0058】
混合は好適には、ブレンディング装置、例えばBanburyミキサー、またはHaakeもしくはBrabender小型内部ミキサーなどの内部ミキサーで実施される。2ロールミルミキサーもまた、エラストマー内の他の任意の添加剤の良好な分散だけでなくカーボン−ナノチューブの良好な分散を提供する。押出機もまた、良好な混合を提供し、混合時間を短縮可能にする。混合を2つ以上の段階で実施することが可能であり、混合は、異なる装置で、例えば、1段階を内部ミキサーで、そして1段階を押出機で行うことができる。しかしながら、望まれない前架橋(=スコーチ)が混合段階中に全く起こらないように注意するべきである。
【0059】
配合および加硫は、当業者に公知であるように行われてもよい(例えば、Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第4巻、66ページ以下参照(配合(Compounding))および第17巻、666ページ以下参照(加硫(Vulcanization))を参照されたい)。典型的には、かかる加硫は100〜200℃、好ましくは130〜180℃の範囲の温度で行われる。一実施形態では、ポリマー加硫物の製造は、本発明組成物を射出成形中に加硫にかける工程を含む。
【0060】
本発明のさらなる目的はそれ故、シール、ロールカバー、ベルト、固定子または無限軌道車の軌道に取り付けるベアリングパッドなどの好ましくは成形品の形態での、加硫後に得られる加硫物である。
【0061】
本発明による組成物を加硫することによって得ることができるこれらの加硫物は、破断点伸びおよび歪み特性を維持しながら、HXNBRと比較して改良された引張強度および弾性率特性を示す。
【実施例】
【0062】
以下の実施例に使用される原材料の詳細を、次の表1にまとめる。
【0063】
【表1】

【0064】
本発明による加硫可能な組成物の調製
HXNBRおよびMWNTを、9:1の重量比で内部ミキサーを用いて混合した。10重量%MWNTのマスターバッチを、2ロールミルを用いて異なる濃度のMWNTへ希釈した。HXNBR中のMWNTの最終濃度は、HXNBRの百部当たり0、1、2および4部(phr)であった(表2を参照されたい)。硬化剤DCPは、HXNBR/MWNTを5分間素練り(masticating)した後に添加した。最後に、HXNBR混合物を10℃で20分間硬化させた。
【0065】
試験手順/方法
引張強度試験は、500mm/分のクロスヘッド速度でInstron 4465引張機(Instron Co.,UK)で実施した。ダンベル形状サンプルは、長さが75mm、厚さが1mm、幅が4mmであった。ショア(Shore)A硬度は、ASTM D2240−97に従ってハンドヘルド・ショアAデュロメーターによって測定した。結果は5秒後に読み取った。動的機械分析(DMA)は、−60℃から40℃まで5℃/分の加熱速度および1Hzの周波数で窒素下にDMA 242C(NETZSCH、Germany)で行った。
【0066】
次の表2において、全ての量はHXNBRの100重量部当たりの部で与える。
【0067】
【表2】

【0068】
表2から分かるように、HXNBRへのMWNTの添加は、著しい強化をもたらす。MWNTの添加は特に、物理的特性にかなりの便益をもたらし、特性強化の大きさは、複合材料処方に含められるカーボンナノチューブのレベルに関係することができた。ポリマー複合材料への便益には、引張強度の増加、100、200および300%歪みでのポリマー複合材料弾性率の増加、最終的にはポリマー複合材料の硬度の増加が含まれるが、それらに限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素化カルボキシル化ニトリルゴム(HXNBR)、少なくとも1つの架橋剤およびカーボンナノチューブを含む加硫可能な組成物。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブのいずれかである、請求項1に記載の加硫可能な組成物。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブが、前記水素化カルボキシル化ニトリルゴムの100重量部を基準として1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部で存在する、請求項1または2に記載の加硫可能な組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが5〜30nmの平均直径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項5】
前記水素化カルボキシル化ニトリルポリマーが
a)1つ以上の共役ジエン、好ましくはブタジエンに由来する40〜85重量パーセントの範囲の繰り返し単位、
b)1つ以上のα,β−不飽和ニトリル、好ましくはアクリロニトリルに由来する15〜60重量パーセントの範囲の繰り返し単位、および
c)少なくとも1つのカルボン酸基を有する1つ以上のモノマーまたはそれの誘導体、好ましくはα,β−不飽和モノ−もしくはジカルボン酸、より好ましくはマレイン酸、n−ブチルアクリレート、イソ−ブチルアクリレート、または第三ブチルアクリレートに由来する0.1〜30重量パーセントの範囲の繰り返し単位
を含み、
3つのモノマーa)、b)およびc)が、合計100重量パーセントになるように所与の範囲で選ばれなければならない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が過酸化物、過酸化物放出化合物または硫黄のいずれかである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項7】
1)100重量部のHXNBR、
2)HXNBRの100重量部を基準として、1〜10重量部、好ましくは4〜8重量部の少なくとも1つの架橋剤、および
3)HXNBRの100重量部を基準として、1〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部のカーボンナノチューブ
を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物。
【請求項8】
前記HXNBR、前記カーボンナノチューブおよび前記架橋剤が一緒に混合される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の加硫可能な組成物の調製方法。
【請求項9】
前記混合工程が20℃から200℃の範囲の温度で行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記混合工程が、混合後に除去される溶媒の存在下に行われる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物を、好ましくは射出成形中に、加硫にかける工程を含むポリマー加硫物の製造方法。
【請求項12】
特にシール、ロールカバー、ベルト、固定子または無限軌道車の軌道に取り付けるベアリングパッドの形態で、請求項11に記載の方法によって得られるポリマー加硫物。

【公開番号】特開2010−1475(P2010−1475A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−147982(P2009−147982)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】