説明

カーボンナノチューブ層含有構造体

【課題】ガラス支持体とカーボンナノチューブ層との密着性に優れたカーボンナノチューブ層含有構造体を提供する。
【解決手段】ガラス上にカーボンナノチューブ層が塗設されたカーボンナノチューブ層含有構造体であって、該ガラスの表面に少なくとも1つ以上のポリマー層が存在し、かつ、該ポリマー層がガラスと化学結合にて固定されている、カーボンナノチューブ層含有構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ層含有構造体に関し、さらに詳しくは、ガラス支持体とカーボンナノチューブ層との密着性に優れたカーボンナノチューブ層含有構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、電気特性、熱特性、光学特性、機械的特性、耐熱性、耐食性など多くの面ですぐれた性能を示すことから、今後の発展が期待される材料であり、これまでにも多くの検討がなされてきている。しかしながら、カーボンナノチューブを実際の材料として活用するには、支持体上に密着性よく分散、塗設させる必要があるが、これまでは必ずしも充分なレベルではないのが実状である。すなわち、支持体上に密着性よくカーボンナノチューブを塗設させる技術の開発が望まれている。
【0003】
ガラス支持体は、耐久性、透明性、機械強度、平滑性、コストの観点から優れた支持体であり、そのうえに、機能性材料を塗設することは重要である。一般的に、シリカから形成されているガラス表面に、炭素を多く含む材料を密着性よく塗設することは難しく、従来から多くの提案がなされているものの、必ずしも満足できない場合があった。
【0004】
よって、ガラス上にカーボンナノチューブを密着性よく塗設させる技術の開発が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガラス支持体とカーボンナノチューブ層との密着性に優れたカーボンナノチューブ層含有構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ガラス表面に特定の有機ポリマーを用いてポリマー層(下塗り層)を設けることで、カーボンナノチューブ層の密着性を特異的に向上させるという予期せぬ知見を得た。本発明はこのような知見に基づきなされるに至ったものである。
【0007】
本発明の課題は、下記の手段によって解決された。
[1]ガラス上にカーボンナノチューブ層が塗設されたカーボンナノチューブ層含有構造体であって、該ガラスの表面に少なくとも1つ以上のポリマー層が存在し、かつ、該ポリマー層がガラスと化学結合にて固定されていることを特徴とするカーボンナノチューブ層含有構造体。
[2]前記ポリマー層が、下記一般式(I)で表されるポリマー鎖を化学結合させてなる、[1]項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【化1】

(前記一般式(I)中、X〜Xは各々独立して水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又は−COを表し、ここで、Rは水素原子、アルカリ金属、または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。X〜Xのうち任意の2以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。Yは−NHSO、−NHCOR、−SONHR、−CONHR、−CO、−SO、−PO、−OR、−Si(OR)、及び−CFからなる群より選択される少なくとも1つの基を有する分子量10万以下の官能基を表す。ここで、Rは前記したのと同義であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。nは10〜5000の繰り返し単位を表す。ここで、前記一般式(I)において示されるポリマー鎖は、前記一般式(I)で表される異なる複数種の構造単位を含む共重合体をも包含するものとする。また、ガラスの表面と一般式(I)で表されるポリマー鎖との化学結合は、前記一般式(I)におけるYから原子を少なくとも1つ取り除いて形成されるか、または、ポリマー鎖の末端において形成されるものとする。)
[3]前記ポリマー層が、下記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーをゾルゲル法によりガラス表面に共有結合させることで、前記一般式(I)で表されるポリマー鎖をガラス表面に共有結合させてなる、[2]項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【化2】

(前記一般式(II)中、Zは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子からなる群から選択される少なくとも1つの原子から構成される2価の連結基を表す。Mは、−Si(OR)、−Ti(OR)、−Al(OR)、又は−Zr(OR)を表す。X〜X、Y、n及びRは、前記一般式(I)におけるのと同義である。)
[4]前記カーボンナノチューブが、マルチウォールカーボンナノチューブである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
[5]前記カーボンナノチューブが、シングルウォールカーボンナノチューブである、[1]〜[3]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
[6]前記カーボンナノチューブが、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基で修飾されている、[1]〜[5]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
[7]前記カーボンナノチューブが架橋している、[1]〜[6]のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【発明の効果】
【0008】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、ガラス支持体に対するカーボンナノチューブ層の密着性が優れ、カーボンナノチューブ層の剥離がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、ガラス上にカーボンナノチューブ層が塗設されたカーボンナノチューブ層含有構造体であって、該ガラスの表面に少なくとも1つ以上のポリマー層が存在し、かつ、該ポリマー層がガラスと化学結合にて固定されていることを特徴とする。
【0010】
ポリマー層をガラスに化学結合させて固定する手段としては特に限定されず、いかなるものであってもよいが、好ましくは、下記一般式(I)で表されるポリマー鎖をガラス表面に化学結合させる。
【0011】
【化3】

【0012】
前記一般式(I)中、X〜Xは各々独立して水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又は−COを表し、ここで、Rは水素原子、アルカリ金属、または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
〜Xで表される炭化水素基としては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基などが挙げられ、炭素数8以下の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
【0013】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。
アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N'−アルキルウレイド基、N',N'−ジアルキルウレイド基、N'−アリールウレイド基、N',N'−ジアリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、
【0014】
N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N',N'−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N'−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N'−アリール−N−アリールウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N',N'−ジアリール−N−アリールウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アルキルウレイド基、N'−アルキル−N'−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、
【0015】
アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO32)及びその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0016】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、前述のアルキル基が挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル2基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0017】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0018】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチルと、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチルル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0019】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0020】
炭化水素として、好ましくは炭素数8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以下の炭化水素基である。最も好ましくは炭素数1の炭化水素基である。
【0021】
〜Xが−COを表す場合のRは、水素原子、アルカリ金属、または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。
が表す炭化水素基は、前記X〜Xにおけるのと同義であり、好ましくは、炭素数8以下の炭化水素基、より好ましくは炭素数3以下の炭化水素基である。最も好ましくは炭素数1の炭化水素基である。
また、アルカリ金属としては、Li、Na、K、Rbが挙げられ、1価のカチオンとなりカルボン酸アニオン結合していることを表す。
1、X2、およびX3の最も好ましい例としては、水素原子、炭素数1の炭化水素基、−COCH、−COHが挙げられ、特にXとして最も好ましい例としては、−COCH、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルキルチオメチル基、アシルチオメチル基、アルキルアミノメチル基、アシルアミノメチル基が挙げられる。
前記一般式(I)においては、X〜Xのうち任意の2以上が互いに結合して環状構造を形成してもよく、好ましい環状構造としては5員環、6員環が挙げられる。
【0022】
前記一般式(I)におけるYは、−NHSO、−NHCOR、−SONHR、−CONHR、−CO、−SO、−PO、−OR、−Si(OR)、または−CFからなる群より選択される少なくとも1つの基を有する分子量10万以下の官能基を表す。ここで、Rは前記したのと同義であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。なお、ここでいう炭化水素基はRにおいて記載したものと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0023】
Yの最も好ましい例としては、−CONH、−COH、−CONa、−SOH、−SONa−CONHC(CH)CHSOH、−CONHC(CH)CHSONa、−CO(OCHCH)CONH、−CO(OCHCH)COH、−CO(OCHCH)CONa、−CO(OCHCH)SOH、−CO(OCHCH)SONa、−CO(OCHCHOH、−CO(OCHCH)OCH、−Q−(CHCH(CONH))−、−Q−(CHCH(COH))−、−Q−(CHCH(CONHC(CH)CHSOH))−が挙げられる。
【0024】
上記Yの好ましい構造における、kは1〜20000である。Qは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子からなる群から選択される少なくとも1つの原子から構成される2価の連結基であり、好ましいQとしては、−CHOCOCHCHS−、−COCHCH(OH)CHOCOCHCHS−が挙げられる。
【0025】
nは10〜5000の繰り返し単位を表す。nは好ましくは10〜1000、より好ましくは30〜1000、最も好ましくは50〜500の範囲である。
本発明において、前記一般式(I)で表されるポリマー鎖は、前記一般式(I)に包含される異なる構造単位を含む共重合体であってもよい。
【0026】
以下に、前記一般式(I)に包含されるポリマー鎖を構成しうる構造単位の例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。以下に示される如き構造単位の1種又は2種以上を10〜5000程度結合して前記一般式(I)で表されるポリマー鎖が形成される。
【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
また、ガラスと前記一般式(I)で表されるポリマー鎖との化学的結合は、前記一般式(I)におけるYから原子を少なくとも1つ取り除いて形成されるか、または、ポリマー鎖の末端において形成されるものとする。
【0034】
以下、本発明に用いられる前記一般式(I)で表されるポリマーの具体例〔例示化合物(I−1)〜(I−20)〕を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下の具体例において複数の構造単位が記載されている例示化合物(I−1)〜(I−6)及び(I−14)は、記載の2種の構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0035】
【化10】

【0036】
【化11】

【0037】
【化12】

【0038】
ガラス表面とポリマー鎖との化学的結合には、例えば、ガラス表面のシラノール基に対して、シランカップリング基のように共有結合するもの、アンモニウム基のように強くイオン結合するもの、リン酸基やホスホン酸基のように強く水素結合するものが挙げられるが、最も好ましくは、下記一般式(II)で表す末端結合型ポリマーをゾルゲル法によりガラス表面のシラノール基に対して、脱水縮合し共有結合を形成するものである。
【0039】
【化13】

【0040】
前記一般式(II)中、X〜X、Y及びnはそれぞれ前記一般式(I)におけるX〜X、Y及びnと同義であり、好ましい例も同様である。
Zは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子からなる群から選択される少なくとも1つの原子から構成される2価の連結基を表す。
Zの好ましい例としては、イオウ原子を含む炭素数1〜10の炭化水素連結基、より好ましくは、酸素原子及びイオウ原子を含む炭素数1〜10の炭化水素連結基、最も好ましくは、窒素原子及びイオウ原子を含む炭素数1〜10の炭化水素連結基が挙げられる。
【0041】
Zの好ましい例としては、より具体的には、−CHCHS−、−CHCHCHS−が挙げられ、より好ましい例としては、−CHCH(OH)CHOCOCHCHS−、−CHCH(OH)CHOCOCHCHCHS−、−CHCHOCOCHCHS−などが挙げられ、最も好ましい例としては、−CHCHCONHCHCHS−、−CHCHCONHCHCHCHS−、−CHCHCONHCHCHS−、−CHCHCONHCHCHCHS−、−CHCHNHCOCHCHS−、−CHCHCONHCHCHS−などが挙げられる。
【0042】
Mは、−Si(OR)、−Ti(OR)、−Al(OR)、または−Zr(OR)を表し、ここで、Rは前記一般式(I)におけるRと同義であり、好ましい例も同様である。
【0043】
以下、本発明に用いられる前記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーの具体例〔例示化合物(II−1)〜(II−25)〕を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
【化14】

【0045】
【化15】

【0046】
【化16】

【0047】
【化17】

【0048】
<ポリマーの合成>
本発明に用いられる前記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーの合成は、例えば、特開平2002−361800号公報に記載の方法により実施することができる。
本発明に係る特定親水性ポリマーは、下記一般式(i)で表されるラジカル重合可能なモノマーと、下記一般式(ii)で表されるラジカル重合において連鎖移動能を有するシランカップリング剤を用いてラジカル重合することにより合成することができる。シランカップリング剤(ii)が連鎖移動能を有するため、ラジカル重合においてポリマー主鎖末端にシランカップリング基が導入された下記一般式(iii)で表される如きポリマーを合成することができる。
【0049】
【化18】

【0050】
前記一般式(i)、(ii)及び(iii)において、X1〜X3、Y及びnはそれぞれ、前記一般式(II)におけるX1〜X3、Y及びnと同義であり、Rは、前記一般式(II)におけるR1と同義である。また、合成に用いられる前記一般式(i)、(ii)で表される化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
【0051】
前記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、任意の方法を使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局)等に記載されており、これらを適用することができる。
【0052】
<ガラス表面へのポリマー鎖結合工程>
前記一般式(I)で表されるポリマーをガラス表面に結合させるための好ましい方法について述べる。
ガラス表面とポリマー鎖との化学的結合は、例えば、ガラス表面のシラノール基に対して、シランカップリング基のように共有結合するもの、アンモニウム基のように強くイオン結合するもの、リン酸基やホスホン酸基のように強く水素結合するものなどを用いて実施することができる。これらを用いる方法としては、ガラスの表面を酸や塩基で処理し、表面シラノール基の活性点を増やした後に、シランカップリング基、アンモニウム基、及びリン酸基やホスホン酸基を分子内に有する前記一般式(I)で表されるポリマーをその表面にコートする方法が挙げられる。このように前記一般式(I)で表されるポリマーをガラス表面にコートすることで、ガラスへの共有結合、イオン結合、水素結合が形成され、ポリマーとガラスとの化学結合による強固な固定化が達成される。またこれらのガラスへの結合性基については、前記一般式(I)のYから結合する場合とポリマー鎖の末端から結合する場合がある。Yとしては、−POまたは−Si(OR)の場合が好ましく、−POの場合にはガラス表面に対し水素結合していることが考えられ、−Si(OR)の場合には、例えば、−Si(OR)O−のように共有結合していることが考えられる。また、Yから結合する場合とポリマー鎖の末端から結合する場合では、防曇性及び防汚性の機能を有するポリマー側鎖官能基の自由運動を高める点からポリマーの末端で結合させる方が好ましい。
より好ましくは、前記一般式(I)で表されるポリマーを後述する一般式(III)で表される化合物と併用し、ゾルゲル反応によりガラス表面に高密度にかつ強固な皮膜形成させる方法が挙げられる。
【0053】
また、最も好ましい方法としては、先に述べたように、化学的に強固で安定な共有結合を形成しうる前記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーをゾルゲル法によりガラス表面のシラノール基に対し結合させる方法が挙げられ、その方法について、以下、工程順に詳細を説明する。
まず、前記一般式(II)で表される末端結合性ポリマー(以下、適宜、特定ポリマーと称する)を含む塗布液組成物を調製し、それをガラス表面に塗布する。
ポリマー塗布液組成物を調製するにあたっては、特定ポリマーの含有量は固形分換算で、10質量%以上、50質量%未満とすることが好ましい。この範囲において、好ましい膜強度と皮膜特性が得られ、膜へのクラックの発生が抑制され、好ましい。
また、この特定ポリマーに加えて、下記一般式(III)で表される加水分解性化合物を添加することが、ポリマーの結合強度を高める観点から好ましい。
ここで用いられる下記一般式(III)で表される加水分解性化合物(以下、適宜、単に、加水分解性化合物と称する)は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、前記特定ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な皮膜を形成する。
【0054】
【化19】

【0055】
前記一般式(III)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、Rはアルキル基又はアリール基を表し、XはSi、Al、Ti又はZrを表し、mは0〜2の整数を表す。
及びRがアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1〜4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。
なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0056】
以下に、該加水分解性化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
XがSiの場合、即ち、加水分解性化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0057】
また、XがAlである場合、即ち、加水分解性化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
XがTiである場合、即ち、チタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
XがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
【0058】
ポリマー塗布液組成物に加水分解性化合物を添加する場合の添加量は、特定親水性ポリマー中のシランカップリング基に代表される末端結合性基に対して加水分解性化合物中の重合性基が5mol%以上、さらに10mol%以上となる量であることが好ましい。架橋剤添加量の上限は親水性ポリマーと十分架橋できる範囲内であれば特に制限はないが、大過剰に添加した場合、架橋に関与しない架橋剤により、作製した強化ガラスの表面がべたつくなどの問題を生じる可能性がある。
【0059】
末端反応性基を有する特定ポリマー、好ましくは、さらに加水分解性化合物(架橋剤)とを溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解し、重縮合することにより製造される有機無機複合体ゾル液が本発明に係るポリマー塗布液となり、これによって、高い親水性と高い膜強度を有する表面層が形成される。
有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、触媒を含むことが特に好ましい。
【0060】
触媒としては、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、あるいは水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、それぞれ酸性触媒、塩基性触媒と称する)を用いる。溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよいが、濃度が高い場合は加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
【0061】
酸性触媒あるいは塩基性触媒の種類は特に限定されないが、濃度の濃い触媒を用いる必要がある場合には乾燥後に塗膜中にほとんど残留しないような元素から構成される触媒がよい。
具体的には、酸性触媒としては、塩酸などのハロゲン化水素、硝酸、硫酸、亜硫酸、硫化水素、過塩素酸、過酸化水素、炭酸、蟻酸や酢酸などのカルボン酸、そのRCOOHで表される構造式のRを他元素または置換基によって置換した置換カルボン酸、ベンゼンスルホン酸などのスルホン酸などが挙げられ、塩基性触媒としては、アンモニア水などのアンモニア性塩基、エチルアミンやアニリンなどのアミン類などが挙げられる。
【0062】
ポリマー塗布液の調製は、加水分解性化合物及び末端反応性基を有する特定ポリマーをエタノールなどの溶媒に溶解後、上記触媒を加え、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0063】
前記特定ポリマー及び、好ましくは加水分解性化合物を含有するポリマー塗布液組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0064】
以上述べたように、本発明に係るガラス表面に結合した防曇、防汚性の表面層を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性塗布液組成物)の調製はゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明に係るポリマー塗布液組成物の調製に適用することができる。
【0065】
ガラス表面へのポリマー塗布液組成物の適用方法には特に制限はなく、ディッピング法、スプレー法、フローコート法、スピンコート法ならびに各種印刷法等既知の塗布手段が適用できるが、なかでもフローコート法が、機能を発現するのに十分な厚膜を生成可能であり、生産性が高いという観点から好ましい。
ポリマー塗布液組成物の塗布量は、目的により適宜選択されるが、一般的には、固形分換算で0.1〜100g/mの範囲であることが好ましく、1.0〜10g/mの範囲であることがより好ましい。
【0066】
このようにガラス表面にポリマー塗布液組成物を適用した後、ゾルゲル反応を生起、進行させることで、ガラス表面へのポリマー鎖の結合が達成される。
ゾルゲル反応を行わせる条件としては、ゾルゲル反応が効率よく行われ、ポリマー膜の熱劣化による強度低下を抑制するという観点からは、50℃〜300℃の温度範囲が好ましく、より好ましい温度範囲は70℃〜250℃であり、最も好ましくは100℃〜200℃である。また、反応時間は、10秒〜4時間が好ましく、より好ましくは、30秒〜1時間、最も好ましくは、1分〜30分である。
【0067】
<ガラス組成物の種類と好ましい例>
次に、本発明に使用されるガラスについて説明する。
ガラスは構成する材料組成により、一般的には、A)ソーダライムガラス(ソーダガラス)、B)ホウケイ酸ガラス、C)鉛ガラス、D)その他酸化物ガラスに分類される。
A)ソーダ石灰ガラスは成型が容易であり、化学的耐久性にも優れ、かつ原料が入手しやすく安価である。板ガラスやびんガラス等に使用されている。
B)ホウケイ酸ガラスは、ホウ砂Bを材料に混入したガラスでタッチパネル用のガラスである低膨張ガラス、化学実験用のパイレックス(登録商標)、水銀灯やガラス管用の耐熱ガラスとして使用されている。
C)鉛ガラスは、酸化鉛を含みクリスタルガラス、光学レンズ用の高屈折ガラス、ブラウン管の放射線遮蔽ガラスとして使用されている。
D)その他酸化物ガラスとしては、耐水性に優れるアルミノケイ酸ガラス、ガラス接合用のはんだとして使用するホウ酸塩ガラス、人工骨等に利用されているリン酸塩ガラスなどがある。
その中でも、A)ソーダライムガラスとD)その他の酸化ガラスであるアルミノケイ酸ガラスは、フロート法及びダウンドロー法により好適に製造される。特にアルミノケイ酸ガラスについては、通常のソーダライムガラスに対して優れた耐傷性を有する。
【0068】
本発明に用いられるガラス基材は、フロート法及びダウンドロー法により製造されたガラスであれば、いずれも用いることができるが、上記の如く、強化ガラスの耐傷性、寸法精度、平滑性をより高めるという観点からは、ソーダライムガラスやアルミノケイ酸ガラスであって、フロート法及びダウンドロー法により製造されたものが好ましい。
以下、本発明に好適に用いられ、フロート法及びダウンドロー法により好適に製造されるガラスの好ましい組成について説明する。
このようなガラスの一例としては、例えば、国際公開第WO94/08910(PCT/FR93/01035)パンフレットに記載される、航空機等に好適に用いられる質量%で、SiO:65.0〜76.0%、Al:1.5〜50.%、MgO:4.0〜8.0%、CaO:0.0〜4.5%、NaO:10.0〜18.0%、KO:1.0〜7.5%、B:0.0〜4.0%よりなる組成物のガラス、特開平11−11988号公報に記載される合わせガラスに好適に使用される単一ガラス板であって、組成物の質量%が、SiO:58〜66%、Al:13〜19%、LiO:3〜4.5%、NaO:6〜13%、KO:0〜5%、RO:10〜18%、(ただし、RO=LiO+NaO+KO)、MgO:0〜3.5%、CaO:1〜7%、SrO:0〜2%、BaO:0〜2%、RO:2〜10%(ただし、RO=MgO+CaO+SrO+BaO)、TiO:0〜2%、CeO:0〜2%、Fe:0〜2%、MnO:0〜1%、(ただし、TiO+CeO+Fe+MnO=0.01〜3%)のアルミノシリケートガラス組成物、
【0069】
ガラス組成物の質量%で表して、SiO:60〜66%、Al:15〜18%、LiO:3〜4.5%、NaO:7.5〜12.5%、KO:0〜2%、(ただし、LiO+NaO+KO=11〜17%)、MgO:0.5〜3%、CaO:2.5〜6%、SrO:0〜2%、BaO:0〜2%、(ただし、MgO+CaO+SrO+BaO=3〜9%)、TiO:0〜2%、CeO:0〜2%、Fe:0〜2%、MnO:0〜1%、(ただし、TiO+CeO+Fe+MnO=0.01〜3%)のアルミノシリケートガラス組成物などが好ましい。
【0070】
ガラス組成物の配合は、本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体の使用目的に応じて適宜選択できるが、その際の各成分の選択の裏付けについて以下に説明する。
まず、ガラスの主成分については、SiOが挙げられ、必須の構成成分である。その割合が一般には、58%〜66%の範囲で、良好な耐水性が得られ、ガラス融液の粘性が適切に維持されて、熔融や成形が作業性よく行える。このため、SiOの範囲としては58〜66%が好ましく、さらに60〜66%が好ましい。
Alもまたガラスの重要な構成成分の1つである。Alを含有することにより耐水性が向上するが、大量に加えると粘度が向上するため、十分な効果を得て、作業性を低下させないという観点からは、13〜19%が好ましく、さらに15〜19%が好ましい。
【0071】
LiOは、溶解性を高める成分であるが、過剰に添加すると耐水性が悪化し、液相温度が上昇し、成形が困難となる傾向がある。このため、LiOの範囲としては、3〜4.5%が好ましい。
NaOは溶解性を高める成分であり、硬化の観点からは、含有量は6〜13%が好ましく、さらに7.5〜12.5%が好ましい。
Oもまた溶解性を高める成分である。KOの範囲としては5%以下が好ましく、さらに2%以下が好ましい。
なお、上記3成分はいずれも溶解性を高める成分であり、そのような観点からは、LiO+NaO+KOの合計ROは9〜18%が好ましく、さらに10〜17%が好ましい。
【0072】
MgOは溶解性を高める成分であるが、過剰に添加すると液相温度が上がり、成形が困難となる傾向がある。このため、MgOの含有量は3.5%以下が好ましく、さらに0.5〜3%が好ましい。
CaOもMgOと同様の機能を有しており、添加量は1〜7%が好ましく、さらに2.5〜6%が好ましい。
SrOやBaOは、溶解性を高める成分であるとともに液相温度を下げるのに有効な成分である。しかし、ガラスの密度が大きくなるとともに、原料代のアップの要因となる。このため、SrOやBaOはそれぞれ2%以下が好ましく、さらに1%以下が好ましい。
さらに、MgO+CaO+SrO+BaOの合計をROとしたとき、ガラス融液の粘性や液相温度の範囲を適切に維持し、良好な熔融、成形性を達成するという観点からは、ROの範囲としては2〜10%が好ましく、さらに3〜9%が好ましい。
【0073】
Feはガラス融液中でFe2+とFe3+が平衡状態にあり、これらのイオンが融液中の光の透過率、特に赤外域の透過率を大きく左右する。全鉄をFeに換算して2%以上では赤外域の吸収が大きくなりすぎ、熔融や成形時にガラスの温度分布をコントロールできなくなり、品質の悪化を招く。このため、全鉄はFeとして2%以下が好ましい。
TiO,CeO,MnOはFe2+とFe3+の平衡状態を変化させ、また相互作用することにより光の透過率を変化させるのに有効な成分である。しかし、過剰に含有するとガラス素地品質が悪化するとともに、原料代のアップにつながる。このため、TiOの範囲としては3%以下が好ましく、さらに2%以下が好ましい。また、CeOの範囲としては2%以下が好ましい。MnOの範囲としては1%以下が好ましい。
【0074】
ガラス組成物には、以上の成分の他に、目的とする特性を損なわない範囲において、他の成分、例えば、NiO,Cr,CoO等の着色剤、SO,As,Sb等の清澄剤などを含有することができる。
SOは清澄剤として用いる硫酸塩に起因するものであり、硫酸塩を清澄剤に用いる場合に、ガラス中の残存量が0.05%以上とすることで、清澄の効果が得られるが、残存量が0.5%を越えても清澄の効果は同等であり、さらにガラス熔融時の排ガス中に含まれるSOが増加するので、環境上好ましくない。このため、ガラス中に残存するSOは0.05%〜0.5%が好ましい。
一般に清澄剤として用いられるAs,Sbはその毒性より1%以下が好ましく、不純物からの混入する量以下、すなわち0.1%以下とするのが望ましい。
また、揮発性の高いB,ZnO,P,PbO等は、ガラス溶解炉のレンガを浸食するとともに、揮発成分が炉の天井に凝集し、レンガとともにガラス上に落下するなど品質を悪化させるので、不純物からの混入する量以下、すなわち0.1%以下とするのが好ましい。
【0075】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体に用いられるガラス基材は、フロート法又はダウンドロー法で形成されることが好ましい。ガラスの生産方式には、コルバーン方式、フルコール方式、フロート法、ヒュウジョン法、ダウンドロー法、リードロー法が知られているが、フロート法およびダウンドロー法により生産されたガラスは、他の生産方式に対し、形状精度が高いことから自動車や建築用のガラス、およびディスプレー用のガラス等に使用されている。
フロート法は、溶解スズの上に溶融したガラスを流し、板ガラスを形成する方法である。フロート法により形成されたガラス板は平滑性に優れるため、研磨等の後処理が不要となり、低コストでサイズ的にも大きな素板を得ることができる。さらに、フロート法においてはガラスの成形時に、溶解されたガラス素地が熔融錫バス上に送り込まれ、展開されて成形されるため、ガラス内部の応力がよく解放されている。このことから、他の製法と比して、衝撃等でガラスにクラックが入ることが少ないという特徴がある。
また、ダウンドロー法は、空気を冷却媒としてガラス板を成形する方法であり、非接触成形のため、型枠に起因する不純物の混入の懸念がなく、平滑性に優れ、高純度で且つ薄層のガラス板が成形できるため、液晶表示装置などのディスプレイ用として好適に使用される。ダウンドロー法によるガラスの成形方法については、例えば、特開平5−163032号公報、特開2002−167226号などに詳細に記載され、これらに記載の方法で得られたガラスもまた本発明に好適に使用しうる。
【0076】
ガラスの粘性は、高品質ガラスを溶解するには、熔融温度すなわち10poiseの粘性を有する温度が1550℃以下であることが好ましく、さらに1540℃以下が望ましい。また、高平坦度のシート状に成形する目的でガラス組成物をフロート法により形成するためには、作業温度すなわち10poiseの粘性を有する温度が1100℃以下、かつ液相温度が作業温度以下であることが好ましく、さらに作業温度が1055℃以下、かつ液相温度が作業温度以下であることが望ましい。
【0077】
特にフロート法やダウンドロー法により作製されたアルミノケイ酸ガラスやソーダライムガラスを用いることで、上述したゾルゲル法によりポリマー鎖を結合させてなるポリマーハイブリッド膜形成の際に強固な結合を作る。
これは、フロート法やダウンドロー法が表面平滑性の高いガラスを提供し、ゾルゲル工程の際の液塗布が均一にできること、また、アルミノケイ酸ガラスやソーダライムガラスの成分比や結晶構造の点で、表面のシラノール基の密度や活性が高く、ゾルゲル反応の実効率が高いことが起因しているものと考えている。
【0078】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、前記のポリマー層が形成されたガラス支持体上にカーボンナノチューブ層を形成して構成される。
本発明に用いられるカーボンナノチューブについて説明する。
カーボンナノチューブは、マルチウォールカーボンナノチューブ(多層カーボンナノチューブ;MWNT)、シングルウォールカーボンナノチューブ(単層カーボンナノチューブ;SWNT)のいずれであってもよい。各々単独に用いても、混合してもよい。また、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノビーズを用いても良い。シングルウォールカーボンナノチューブに関しては、半導体性であっても、金属性であってもよい。用途に応じて、半導体性と金属性の混合比率を調整することが好ましい。電極用途として、本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体を用いる場合には、金属性カーボンナノチューブの比率が高いほうが好ましい。
さらに、カーボンナノチューブは、金属などが内包されていてもよい。また、フラーレンが内包されたピーポッドナノチューブを用いても良い。
カーボンナノチューブは、任意の方法、例えばアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法などによって合成することができる。
【0079】
本発明に用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。より好ましくは、1nm以上30nm以下である。
本発明に用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0080】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、表面を官能基で修飾されていることが好ましく、官能基としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基が好ましい。これらの官能基は、上記ポリマー層との化学反応により、カーボンナノチューブ層とポリマー層との密着性をより高めることに効果がある。これらの官能基は、任意の方法を利用して導入することが可能であり(例えば、特開2005−41835号公報を参照。)、官能基の導入量としては、用途に応じて適宜調整することが好ましい。
【0081】
本発明に用いられるカーボンナノチューブは、高い機械強度を与えてカーボンナノチューブ層含有構造体の特性を高める観点から、架橋されていることが好ましい。カーボンナノチューブの架橋については、カーボンナノチューブ表面に導入したヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基を利用して架橋剤と反応させる方法が好ましい。架橋反応としては、エステル化、エーテル化、アミド化反応が好適に用いられる(たとえば、特開2005−41835号公報)。架橋密度は、用途に応じて調整することが好ましい。
【0082】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、上記のガラス上に塗設されたポリマー層上にカーボンナノチューブ層を塗布して形成する。この際に用いる、カーボンナノチューブを含有する塗布液については、用途に応じて、適宜、粘度、表面張力などの物性を調整することが好ましい。カーボンナノチューブを含有する塗布液の塗布に関しては、原崎勇次著、「コーティング方式」、慎書店1979年10月発行に示されているリバースコータ、グラビアコータ、ロッドコータ、エアドクタコータなどをはじめ、任意の塗布装置を用いることができる。カーボンナノチューブ層の厚さは、特に限定されないが、0.01〜100μmが好ましい。
【0083】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、カーボンナノチューブ層の密着性が優れ、製造工程(塗布、転写、搬送)や取扱時(輸送、切断、張り合せ時等)にカーボンナノチューブ層の剥離がない。本発明の作用は、明確ではないが、以下のように推定される。すなわち、本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体においては、前記一般式(I)で表される親水性または撥油性を有する官能基が高密度に存在するポリマーを、ポリマー鎖の自由運動性を生かしつつ、そのままガラスに化学結合させており、このポリマー鎖とカーボンナノチューブとが互いに分離することなく相溶していることから、高い密着性が達成されたものと考えられる。このとき、本発明の好ましい態様では、カーボンナノチューブと反応しうる官能基を有する末端結合性ポリマーをゾルゲル法によりガラス表面に共有結合させて表面層を形成しているため、本来、これらのポリマーが有する物理的強度が有効に働くことができる厚膜をガラス表面に形成でき、且つ、このような表面層が被膜内に架橋構造を有することから、表面耐傷性が確保され、且つ、ガラス表面への柔軟性付与によるカーボンナノチューブ層含有構造体の強度向上にもつながったものと考える。
【0084】
本発明のカーボンナノチューブ層含有構造体は、複合材料、水素吸蔵材料、ガス吸蔵材料、電子材料(発光材料、光学材料、電極材料、電磁波吸収材料、半導体材料、制振材料、振動材料、研磨材料など)、電子機器材料(プローブ、センサー、照明、トランジスタ、キャパシター、コンデンサー、導体、サージアブソーバなど)、医薬品材料、バイオ材料、触媒、潤滑剤、その他化成品として、適宜用いられる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0086】
[合成例1]
<特定ポリマー(1)の合成>
500ml三口フラスコに、アクリルアミド50g、メルカプトプロピルトリメトキシシラン3.4g、及びジメチルアセトアミド220gを入れ、65℃窒素気流下、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.5gを加えた。6時間攪拌しながら同温度に保った後、室温まで冷却した。酢酸エチル2リットル中に投入し、析出した固体をろ取し、水洗して特定ポリマー(1)を得た。乾燥後の質量は52.4gであった。GPC(ポリスチレン標準)により重量平均分子量3000のポリマーであり、13C−NMR(DMSO−d6)により末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された、前記例示化合物II−1の構造を有するポリマーであることが同定された。
【0087】
[合成例2]
上記合成例1におけるメルカプトプロピルトリメトキシシラン(3.4g)を下記化合物(4.4g)に変更した他は、同様にして特定ポリマー(2)を得た。乾燥後の質量は13.0gであった。GPC(ポリスチレン標準)により重量平均分子量3000のポリマーであり、13C−NMR(DMSO−d6)により末端にトリメトキシシリル基(50.0ppm)が導入された、前記例示化合物II−2の構造を有するポリマーであることが同定された。
【0088】
【化20】

【0089】
[実施例1]
<ポリマー塗布液組成物(ゾルゲル液)の調製>
以下の成分を均一に混合し、20℃で、2時間撹拌して加水分解を行い、ゾル状のポリマー塗布液組成物を得た。
・特定ポリマー(化合物I−1) 0.21g
・テトラメトキシシラン(加水分解性化合物) 0.62g
・エタノール 4.7g
・水 4.7g
・硝酸水溶液(1N)〔触媒〕 0.1g
【0090】
<ガラス基材表面へのポリマー鎖の結合>
基材であるガラス板は、フロート法で作成したソーダライムを用い、その表面に、上記ポリマー塗布液組成物を乾燥後の塗布量が2g/m2となるように塗布し、さらに、100℃、10分加熱乾燥させてガラス基材表面にポリマー鎖を化学結合させた。
【0091】
<カーボンナノチューブ層含有構造体の形成>
(1)カーボンナノチューブ塗布液の調製
多層カーボンナノチューブ(純度90%、三井物産製)3gを濃硝酸(60質量%、関東化学製)2000mlに加え、120℃、20時間加熱還流を行い、カルボキシ基が導入されたカーボンナノチューブを得た。なお、カーボンナノチューブは遠心分離操作を繰り返すことで精製した。つぎに、得られたカルボキシ基で修飾されたカーボンナノチューブを水中に超音波分散してカーボンナノチューブを含む塗布液を調製した。
【0092】
(2)カーボンナノチューブ塗布液の塗布
塗布手段として、エクストルージョンタイプの塗布ヘッドを用いたダイコータを使用した。塗布液の湿潤状態の厚さは、乾燥後の膜厚が100nmになるように調整した。乾燥手段としては、熱風循環式の乾燥装置を用いた。熱風の温度は100℃とした。ニップローラとして、直径が200mmで、表面にゴム硬度が90のシリコンゴムの層を形成したローラを使用した。
【0093】
このようにして得られたカーボンナノチューブ層含有構造体は、以下の密着性評価をしたところ、カーボンナノチューブ層の良好な密着性を示すことがわかった。
【0094】
(接着性評価:テープ剥離試験)
得られたカーボンナノチューブ層含有構造体の表面に11本の切込みをNTカッターによって形成した。この切込みの各々は、ポリエステルフィルム(ウェブ)を貫通する深さまで1mm幅にクロスカットされたものである。
【0095】
そして、この被検体の表面の全面にセロハンテープ(セロテープ:ニチバン社製、商品名)を貼付し、そのセロハンテープを剥がす剥離試験を行った。そして、セロハンテープに付着して剥離されるカーボンナノチューブ層の切断片の数を計測した。
【0096】
[実施例2]
特定ポリマー(I−1)のかわりにI−7を用いたこと以外は実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ層含有構造体を作製した。その結果、実施例1と同様に、密着性の高いカーボンナノチューブ層含有構造体を得ることができた。
【0097】
[実施例3]
下記のカーボンナノチューブ塗布液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ層含有構造体を作製した。
【0098】
(1)カーボンナノチューブ塗布液の調製
実施例1で得た表面にカルボキシ基を導入したカーボンナノチューブ100mgを、メチルエチルケトン(和光純薬製)200mlに添加し、N−エチル−N−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(塩酸塩、アルドリッチ製)300mgを超音波分散により混合して、カーボンナノチューブ同士が酸無水物で架橋されたカーボンナノチューブ塗布液を作成し用いた。
【0099】
その結果、実施例1と同様に、密着性の高いカーボンナノチューブ層含有構造体を得ることができた。
【0100】
[比較例1]
実施例1で特定ポリマー(I−1)が何も塗設されていないこと以外は実施例1と同様にして、カーボンナノチューブ層含有構造体を得た。得られた構造体は密着性の低いものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス上にカーボンナノチューブ層が塗設されたカーボンナノチューブ層含有構造体であって、該ガラスの表面に少なくとも1つ以上のポリマー層が存在し、かつ、該ポリマー層がガラスと化学結合にて固定されていることを特徴とするカーボンナノチューブ層含有構造体。
【請求項2】
前記ポリマー層が、下記一般式(I)で表されるポリマー鎖を化学結合させてなる、請求項1記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【化1】

(前記一般式(I)中、X〜Xは各々独立して水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又は−COを表し、ここで、Rは水素原子、アルカリ金属、または炭素数1〜10の炭化水素基を表す。X〜Xのうち任意の2以上が互いに結合して環状構造を形成していてもよい。Yは−NHSO、−NHCOR、−SONHR、−CONHR、−CO、−SO、−PO、−OR、−Si(OR)、及び−CFからなる群より選択される少なくとも1つの基を有する分子量10万以下の官能基を表す。ここで、Rは前記したのと同義であり、Rはそれぞれ独立に炭素数1〜10の炭化水素基を表し、Rは水素原子、又は炭素数1〜10の炭化水素基を表す。nは10〜5000の繰り返し単位を表す。ここで、前記一般式(I)において示されるポリマー鎖は、前記一般式(I)で表される異なる複数種の構造単位を含む共重合体をも包含するものとする。また、ガラスの表面と一般式(I)で表されるポリマー鎖との化学結合は、前記一般式(I)におけるYから原子を少なくとも1つ取り除いて形成されるか、または、ポリマー鎖の末端において形成されるものとする。)
【請求項3】
前記ポリマー層が、下記一般式(II)で表される末端結合性ポリマーをゾルゲル法によりガラス表面に共有結合させることで、前記一般式(I)で表されるポリマー鎖をガラス表面に共有結合させてなる、請求項2記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【化2】

(前記一般式(II)中、Zは、炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子及びイオウ原子からなる群から選択される少なくとも1つの原子から構成される2価の連結基を表す。Mは、−Si(OR)、−Ti(OR)、−Al(OR)、又は−Zr(OR)を表す。X〜X、Y、n及びRは、前記一般式(I)におけるのと同義である。)
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、マルチウォールカーボンナノチューブである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、シングルウォールカーボンナノチューブである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【請求項6】
前記カーボンナノチューブが、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基で修飾されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブが架橋している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブ層含有構造体。

【公開番号】特開2009−84083(P2009−84083A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−252726(P2007−252726)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】