カーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサ及びその製造方法
【課題】カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサを提供すること。
【解決手段】CNT−FETセンサ10は、基板12上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブ14と、該カーボンナノチューブ14に接続して形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、上記カーボンナノチューブ14の上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブ14の少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体20と、を備える。
【解決手段】CNT−FETセンサ10は、基板12上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブ14と、該カーボンナノチューブ14に接続して形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、上記カーボンナノチューブ14の上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブ14の少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体20と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサとして利用可能なカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(以下、CNT−FETと略記する)センサ、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、非特許文献1に示すように1991年に発見されたものであり、近年、そのようなカーボンナノチューブに代表されるナノカーボン材料には、様々な応用が期待されている。
【0003】
例えば、電位窓が広いことを利用して、チャネル部分にナノ炭素材料を用いたFETは、トランジスタのゲート部分に付着した蛋白質やDNAを検知するバイオセンサとしての応用が期待されている。チャネルに用いる炭素材料は、ナノカーボン、とくにカーボンナノチューブやカーボンナノワイヤが有望である。
【0004】
そのようなバイオセンサは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
従来、CNT−FETでは、カーボンナノチューブが露出しているため、感度は高いものの、安定性が悪く、ノイズも大きく、またヒステリシスがある。そのため、実際のセンサとして使用できる感度は高くない。
【0006】
これに対して、上記特許文献1では、カーボンナノチューブを絶縁体で覆うことで、感度は低いが、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さいCNT−FETセンサを提案している。
【非特許文献1】S.Iijima、 Nature Vol.354 p.56 (1991)
【特許文献1】特開2004−347532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のCNT−FETセンサは、カーボンナノチューブの内部を利用するものではなかった。
【0008】
本発明は、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のCNT−FETセンサの一態様は、
基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
上記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のCNT−FETセンサの製造方法の一態様は、
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のCNT−FETセンサの製造方法の別の態様は、
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
上記チタン層上に金層を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサ及びその製造方法を提供することができる。さらにカーボンナノチューブの内部を利用することで、感度が高く、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さいCNT−FETセンサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るCNT−FETセンサ10の構成を示す図である。
【0015】
このCNT−FETセンサ10は、基板12上に形成された、両端部が開放された(孔が開けられた)カーボンナノチューブ(CNT)14と、該カーボンナノチューブ14に接続して形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、上記カーボンナノチューブ14の開放された両端部が露出して上記カーボンナノチューブ14を覆うように形成された絶縁体20と、からなる。
【0016】
このような構成のCNT−FETセンサ10では、カーボンナノチューブの両端部が開放されているため、カーボンナノチューブの内部に分子が入ることができる。そして、その内部に入った分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化する。その変化を利用して、分子の濃度をセンシングする。例えば、人体に害のあるNO等のガス濃度を検知するガスセンサとして利用可能である。
【0017】
次に、このようなCNT−FETセンサ10の製造方法を説明する。図2A乃至図2Eは各工程での平面図であり、図3A乃至図3Eは各工程での断面図である。
【0018】
(工程1) 即ち、まず、図2A及び図3Aに示すように、シリコンウェハ12Aを熱処理してシリカ層(酸化膜)12Bを形成した基板12上に、触媒を散布し、定められた位置にカーボンナノチューブ14を成長させる(合成したカーボンナノチューブ14を基板12上に散布しても良い)。ただし、この段階ではカーボンナノチューブ14の両端部は図14に示すようにチューブ状の端面を露出していない。
【0019】
(工程2) 次に、図2B及び図3Bに示すように、基板12下面にゲート電極22を蒸着すると共に、上記カーボンナノチューブ14を形成した基板12上面に、電極材料24としてチタン層24A、金層24Bをそれぞれ蒸着し、パターニングして、金層24B、チタン層24Aをそれぞれエッチングすることで、カーボンナノチューブ14の両先端部を露出させる。カーボンナノチューブ14上に直接、金層24Bを形成したのでは密着性が悪いが、このような二層構造の電極層によれば、チタンを介在することで、その密着性の問題を回避できる。
【0020】
(工程3) その後、図2C及び図3Cに示すように、上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放する。即ち、チューブ状の端面が露出された状態になる。なお、除去法としては、酸化(加熱、酸処理、アルカリ処理、酸化剤処理)、プラズマ処理、光照射、等の手法が利用可能である。
【0021】
(工程4) 次に、図2D及び図3Dに示すように、パターニングして、上記金層24B及びチタン層24Aをそれぞれエッチングすることで、ソース電極16及びドレイン電極18を形成する。
【0022】
(工程5) そして、図2E及び図3Eに示すように、上記カーボンナノチューブ14の上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブ14の少なくともソース−ドレイン間を覆うように、シリカ等の絶縁体20を形成する。これにより、図1に示すCNT−FETセンサ10が完成する。
【0023】
以上のように、本一実施形態によれば、カーボンナノチューブ14の内部を利用したCNT−FETセンサ10が得られる。即ち、カーボンナノチューブ14の開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化するので、その変化を利用して、分子の濃度をセンシングすることができる。
【0024】
特に、絶縁体20でカーボンナノチューブ14を覆っているため、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さい。
【0025】
さらに、カーボンナノチューブ14に直接、分子が接するため、感度が高くなる。
【0026】
また、クロマト等を組み合わせることで、選択性も付加できる。
【0027】
さらに、カーボンナノチューブ先端部の孔を化学修飾することで、選択性を付加できる。
【0028】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0029】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0030】
(1) 基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
上記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサ。
【0031】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、絶縁体20が上記絶縁体に、それぞれ対応する。
【0032】
(作用効果)
この(1)に記載のCNT−FETバイオセンサ装置によれば、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化するので、その変化を利用して、分子の濃度をセンシングすることができる。従って、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサが得られる。
【0033】
(2) 基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサの製造方法。
【0034】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、工程1が上記カーボンナノチューブを形成する工程に、電極材料24が上記電極材料に、工程2が上記電極材料を形成する工程に、工程3が上記カーボンナノチューブの両端部を開放する工程に、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、工程4が上記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程に、絶縁体20が上記絶縁体に、工程5が上記絶縁体を形成する工程に、それぞれ対応する。
【0035】
(作用効果)
この(2)に記載のCNT−FETセンサの製造方法によれば、両端部に孔が開けられ、絶縁体で覆われたカーボンナノチューブを形成できるので、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によって変化するソース−ドレイン間の電流に基づいて、分子の濃度をセンシングすることができる、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサを製造することができる。
【0036】
(3) 基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
上記チタン層上に金層を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサの製造方法。
【0037】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、工程1が上記カーボンナノチューブを形成する工程に、チタン層24Aが上記チタン層に、金層24Bが上記金層に、電極材料24が上記二相構造の電極層に、工程2が上記二層構造の電極層を形成する工程に、工程3が上記カーボンナノチューブの両端部を開放する工程に、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、工程4が上記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程に、絶縁体20が上記絶縁体に、工程5が上記絶縁体を形成する工程に、それぞれ対応する。
【0038】
(作用効果)
この(3)に記載のCNT−FETセンサの製造方法によれば、両端部に孔が開けられ、絶縁体で覆われたカーボンナノチューブを形成できるので、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によって変化するソース−ドレイン間の電流に基づいて、分子の濃度をセンシングすることができる、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサを製造することができる。
また、二層構造の電極層により密着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るCNT−FETセンサの構成を示す図である。
【図2A】図2Aは、工程1での平面図である。
【図2B】図2Bは、工程2での平面図である。
【図2C】図2Cは、工程3での平面図である。
【図2D】図2Dは、工程4での平面図である。
【図2E】図2Eは、工程5での平面図である。
【図3A】図3Aは、工程1での断面図である。
【図3B】図3Bは、工程2での断面図である。
【図3C】図3Cは、工程3での断面図である。
【図3D】図3Dは、工程4での断面図である。
【図3E】図3Eは、工程5での断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…FETセンサ、 12…基板、 12A…シリコンウェハ、 12B…シリカ層、 14…カーボンナノチューブ、 16…ソース電極、 18…ドレイン電極、 20…絶縁体、 22…ゲート電極、 24…電極材料、 24A…チタン層、 24B…金層。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサとして利用可能なカーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(以下、CNT−FETと略記する)センサ、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、非特許文献1に示すように1991年に発見されたものであり、近年、そのようなカーボンナノチューブに代表されるナノカーボン材料には、様々な応用が期待されている。
【0003】
例えば、電位窓が広いことを利用して、チャネル部分にナノ炭素材料を用いたFETは、トランジスタのゲート部分に付着した蛋白質やDNAを検知するバイオセンサとしての応用が期待されている。チャネルに用いる炭素材料は、ナノカーボン、とくにカーボンナノチューブやカーボンナノワイヤが有望である。
【0004】
そのようなバイオセンサは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
従来、CNT−FETでは、カーボンナノチューブが露出しているため、感度は高いものの、安定性が悪く、ノイズも大きく、またヒステリシスがある。そのため、実際のセンサとして使用できる感度は高くない。
【0006】
これに対して、上記特許文献1では、カーボンナノチューブを絶縁体で覆うことで、感度は低いが、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さいCNT−FETセンサを提案している。
【非特許文献1】S.Iijima、 Nature Vol.354 p.56 (1991)
【特許文献1】特開2004−347532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のCNT−FETセンサは、カーボンナノチューブの内部を利用するものではなかった。
【0008】
本発明は、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のCNT−FETセンサの一態様は、
基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
上記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明のCNT−FETセンサの製造方法の一態様は、
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0011】
また、本発明のCNT−FETセンサの製造方法の別の態様は、
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
上記チタン層上に金層を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサ及びその製造方法を提供することができる。さらにカーボンナノチューブの内部を利用することで、感度が高く、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さいCNT−FETセンサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係るCNT−FETセンサ10の構成を示す図である。
【0015】
このCNT−FETセンサ10は、基板12上に形成された、両端部が開放された(孔が開けられた)カーボンナノチューブ(CNT)14と、該カーボンナノチューブ14に接続して形成されたソース電極16及びドレイン電極18と、上記カーボンナノチューブ14の開放された両端部が露出して上記カーボンナノチューブ14を覆うように形成された絶縁体20と、からなる。
【0016】
このような構成のCNT−FETセンサ10では、カーボンナノチューブの両端部が開放されているため、カーボンナノチューブの内部に分子が入ることができる。そして、その内部に入った分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化する。その変化を利用して、分子の濃度をセンシングする。例えば、人体に害のあるNO等のガス濃度を検知するガスセンサとして利用可能である。
【0017】
次に、このようなCNT−FETセンサ10の製造方法を説明する。図2A乃至図2Eは各工程での平面図であり、図3A乃至図3Eは各工程での断面図である。
【0018】
(工程1) 即ち、まず、図2A及び図3Aに示すように、シリコンウェハ12Aを熱処理してシリカ層(酸化膜)12Bを形成した基板12上に、触媒を散布し、定められた位置にカーボンナノチューブ14を成長させる(合成したカーボンナノチューブ14を基板12上に散布しても良い)。ただし、この段階ではカーボンナノチューブ14の両端部は図14に示すようにチューブ状の端面を露出していない。
【0019】
(工程2) 次に、図2B及び図3Bに示すように、基板12下面にゲート電極22を蒸着すると共に、上記カーボンナノチューブ14を形成した基板12上面に、電極材料24としてチタン層24A、金層24Bをそれぞれ蒸着し、パターニングして、金層24B、チタン層24Aをそれぞれエッチングすることで、カーボンナノチューブ14の両先端部を露出させる。カーボンナノチューブ14上に直接、金層24Bを形成したのでは密着性が悪いが、このような二層構造の電極層によれば、チタンを介在することで、その密着性の問題を回避できる。
【0020】
(工程3) その後、図2C及び図3Cに示すように、上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放する。即ち、チューブ状の端面が露出された状態になる。なお、除去法としては、酸化(加熱、酸処理、アルカリ処理、酸化剤処理)、プラズマ処理、光照射、等の手法が利用可能である。
【0021】
(工程4) 次に、図2D及び図3Dに示すように、パターニングして、上記金層24B及びチタン層24Aをそれぞれエッチングすることで、ソース電極16及びドレイン電極18を形成する。
【0022】
(工程5) そして、図2E及び図3Eに示すように、上記カーボンナノチューブ14の上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブ14の少なくともソース−ドレイン間を覆うように、シリカ等の絶縁体20を形成する。これにより、図1に示すCNT−FETセンサ10が完成する。
【0023】
以上のように、本一実施形態によれば、カーボンナノチューブ14の内部を利用したCNT−FETセンサ10が得られる。即ち、カーボンナノチューブ14の開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化するので、その変化を利用して、分子の濃度をセンシングすることができる。
【0024】
特に、絶縁体20でカーボンナノチューブ14を覆っているため、安定性があり、ノイズが小さく、ヒステリシスも小さい。
【0025】
さらに、カーボンナノチューブ14に直接、分子が接するため、感度が高くなる。
【0026】
また、クロマト等を組み合わせることで、選択性も付加できる。
【0027】
さらに、カーボンナノチューブ先端部の孔を化学修飾することで、選択性を付加できる。
【0028】
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0029】
(付記)
前記の具体的実施形態から、以下のような構成の発明を抽出することができる。
【0030】
(1) 基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
上記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサ。
【0031】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、絶縁体20が上記絶縁体に、それぞれ対応する。
【0032】
(作用効果)
この(1)に記載のCNT−FETバイオセンサ装置によれば、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によってソース−ドレイン間の電流が変化するので、その変化を利用して、分子の濃度をセンシングすることができる。従って、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサが得られる。
【0033】
(2) 基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサの製造方法。
【0034】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、工程1が上記カーボンナノチューブを形成する工程に、電極材料24が上記電極材料に、工程2が上記電極材料を形成する工程に、工程3が上記カーボンナノチューブの両端部を開放する工程に、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、工程4が上記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程に、絶縁体20が上記絶縁体に、工程5が上記絶縁体を形成する工程に、それぞれ対応する。
【0035】
(作用効果)
この(2)に記載のCNT−FETセンサの製造方法によれば、両端部に孔が開けられ、絶縁体で覆われたカーボンナノチューブを形成できるので、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によって変化するソース−ドレイン間の電流に基づいて、分子の濃度をセンシングすることができる、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサを製造することができる。
【0036】
(3) 基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で上記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
上記チタン層上に金層を形成する工程と、
上記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、上記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
上記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
上記カーボンナノチューブの上記開放された両端部が露出し且つ上記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするCNT−FETセンサの製造方法。
【0037】
(実施形態との対応)
一実施形態において、基板12が上記基板に、カーボンナノチューブ14が上記カーボンナノチューブに、工程1が上記カーボンナノチューブを形成する工程に、チタン層24Aが上記チタン層に、金層24Bが上記金層に、電極材料24が上記二相構造の電極層に、工程2が上記二層構造の電極層を形成する工程に、工程3が上記カーボンナノチューブの両端部を開放する工程に、ソース電極16が上記ソース電極に、ドレイン電極18が上記ドレイン電極に、工程4が上記ソース電極及びドレイン電極を形成する工程に、絶縁体20が上記絶縁体に、工程5が上記絶縁体を形成する工程に、それぞれ対応する。
【0038】
(作用効果)
この(3)に記載のCNT−FETセンサの製造方法によれば、両端部に孔が開けられ、絶縁体で覆われたカーボンナノチューブを形成できるので、カーボンナノチューブの開放された両端部から分子がカーボンナノチューブの内部に入ることができ、その分子の電荷によって変化するソース−ドレイン間の電流に基づいて、分子の濃度をセンシングすることができる、カーボンナノチューブの内部を利用したCNT−FETセンサを製造することができる。
また、二層構造の電極層により密着性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るCNT−FETセンサの構成を示す図である。
【図2A】図2Aは、工程1での平面図である。
【図2B】図2Bは、工程2での平面図である。
【図2C】図2Cは、工程3での平面図である。
【図2D】図2Dは、工程4での平面図である。
【図2E】図2Eは、工程5での平面図である。
【図3A】図3Aは、工程1での断面図である。
【図3B】図3Bは、工程2での断面図である。
【図3C】図3Cは、工程3での断面図である。
【図3D】図3Dは、工程4での断面図である。
【図3E】図3Eは、工程5での断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10…FETセンサ、 12…基板、 12A…シリコンウェハ、 12B…シリカ層、 14…カーボンナノチューブ、 16…ソース電極、 18…ドレイン電極、 20…絶縁体、 22…ゲート電極、 24…電極材料、 24A…チタン層、 24B…金層。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサ。
【請求項2】
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で前記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
前記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、前記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
前記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサの製造方法。
【請求項3】
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で前記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
前記チタン層上に金層を形成する工程と、
前記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、前記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
前記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサの製造方法。
【請求項1】
基板上に形成された、両端部が開放されてチューブ状の端面が露出したカーボンナノチューブと、
前記カーボンナノチューブに接続して形成されたソース電極及びドレイン電極と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように形成された絶縁体と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサ。
【請求項2】
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で前記カーボンナノチューブを覆うように電極材料を形成する工程と、
前記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、前記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
前記電極材料を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサの製造方法。
【請求項3】
基板上にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの両側先端部が露出した状態で前記カーボンナノチューブを覆うようにチタン層と金層の二層構造の電極層を形成する工程と、
前記チタン層上に金層を形成する工程と、
前記露出したカーボンナノチューブの両先端部を除去することで、前記カーボンナノチューブの両端部を開放してチューブ状の端面を露出する工程と、
前記二層構造の電極層を選択的に除去することで、ソース電極及びドレイン電極を形成する工程と、
前記カーボンナノチューブの前記開放された両端部が露出し且つ前記カーボンナノチューブの少なくともソース−ドレイン間を覆うように、絶縁体を形成する工程と、
を具備することを特徴とするカーボンナノチューブ電界効果トランジスタセンサの製造方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【公開番号】特開2009−210545(P2009−210545A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56869(P2008−56869)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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