カーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法
【課題】カーボンナノホーン集合体の比表面積が小さい。
【解決手段】カーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下である。
【解決手段】カーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法に関し、特に、大きい比表面積を有するカーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)、カーボンナノホーン(Carbon Nanohorn;CNH)などのナノサイズの大きさを有するナノ炭素材料が注目されている。ナノ炭素材料は、触媒担体、吸着剤、分離剤、インク、トナーなどへの応用が期待されており、その用途についてはこれまでにも多くの鋭意研究が行われてきた。
【0003】
さらに、ナノ炭素材料は、電池を大容量化させるための電極材料への応用も期待されている。例えば、大きい比表面積を有する活性炭が電極材料として使用された例がある。しかしながら、この電極にはエッジが多く含まれるため、導電性や耐久性が低いなどの問題があった。そこで、この問題を解決するナノ炭素材料として、CNH集合体(Carbon Nanohorn Assemblies;CNHs)が注目されている。CNHsは高い導電性と耐久性を備え、大きい比表面積を有することが可能なナノ炭素材料として期待されている。
【0004】
特許文献1に開示されているように、CNHsはCNHが集合して球状になったものである。CNHsは、円錐形状の先端部と管形状のチューブ部とからなるCNHを複数個有する。CNHのチューブ部はCNHsの中心側に位置する。一方、CNHの円錐部はCNHsの表面から突き出るように配置される。
【0005】
特許文献2には、CNHsからなる吸着材であって、CNHのチューブ部および先端部に細孔が設けられたものが開示されている。この細孔の径は制御することができる。さらに、特許文献2には、CNHsの吸着剤であって、その比表面積が1006m2/gであるものが開示されている。
【0006】
また、非特許文献1には、CNHに細孔が設けられたCNHsであって、その比表面積が1450m2/gのものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−159851(段落「0012」、図2)
【特許文献2】特開2002−326032(段落「0007」、「0024」)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Phys Chem B.,;110(4)、2006: 1587−91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2及び非特許文献1に記載されたいずれのカーボンナノホーン集合体(CNHs)の比表面積も小さく、これらカーボンナノホーン集合体には比表面積の改善の余地があった。カーボンナノホーン集合体が吸着剤やキャパシタ等に使用される場合、カーボンナノホーン集合体はより大きい比表面積を有しているのが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題である、カーボンナノホーン集合体の比表面積が小さいという課題を解決するカーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下である。
【0012】
また、本発明の電池は、本発明のカーボンナノホーンを含む電極を有する。
【0013】
また、本発明のカーボンナノホーン集合体の製造方法は、複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、分散液を超音波処理し、超音波処理した後に、カーボンナノホーン集合体を熱処理する。
【0014】
また、本発明の電池の製造方法は、本発明のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造されたカーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、電極を用いて電池を作製する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカーボンナノホーン集合体によれば、カーボンナノホーン集合体が大きい比表面積を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るCNHsの製造方法を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るCNHsの製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施例の熱重量分析の結果とその結果を微分した微分曲線を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)の画像を示す図である。
【図5】本発明の実施例の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の画像を示す図である。
【図6】本発明の実施例のX線回折結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例の比表面積を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例の細孔容量を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図11】本発明の実施例の電気容量を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例の比表面積を電気容量でプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書におけるCNHsの比表面積とは、CNHsの重さあたりの表面積を表すこととする。また、CNHsの細孔容量とは、CNHsの重さあたりの体積を表すこととする。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るCNHs及びその製造方法について、図1を用いて説明する。
【0019】
はじめに、図1(a)に示すように、CNHs101を準備する。CNHs101は、CNH100が集合して凝集体を形成したものである。
【0020】
次に、このCNHs101をエタノールなどの分散液に浸漬させる。そして、このCNHs101が浸漬した分散液を超音波処理することで、図1(b)に示すように、エタノール102をCNH100同士の間にインターカレートさせる。この時、CNHs111は分散液中で単分散状態になる。なお、CNHs101を浸漬させる溶媒は、浸漬したCNHs101を分散させるものであれば良く、無機溶媒であっても良く、有機溶媒であっても良い。このような溶媒として、好ましくは有機溶媒であるエタノール、メタノール、イソプロパノール(Isopropyl Alcohol;IPA)、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン、ジクロロエタンなどを用いることができる。
【0021】
次に、CNHs111が単分散状態となった分散液を800〜1800℃、例えば1200℃程度で熱処理することにより、CNH100同士の隙間にあるエタノール102を除去する。この熱処理は、真空中又はHe、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性ガス若しくは窒素の存在下で行われる。その結果、図1(c)に示すように、CNH100同士の隙間が広がる。なお、この熱処理は、電気炉内で行うことができる。
【0022】
本実施形態のCNHs111の製造方法によれば、CNHs101が有する複数のCNH100同士の隙間にエタノール102などの分子がインターカレートされる。そして、この後、エタノール102が除去される。このため、CNH100同士の隙間が広がり、その結果、CNHsの比表面積が増加する。
【0023】
エタノール102が熱により除去される際には、この温度の範囲内で昇華や分解するフラーレンなどがCNHs111から実質的に分離される。
【0024】
CNHs111が単分散状態となった分散液は、熱処理される前に、遠心分離されても良い。遠心分離により、この分散液に混入されているグラファイト状の不純物などを分離することができる。遠心分離はフィルターを用いて行われる。分散液を遠心分離した場合、不純物が下に堆積するので、上澄みのみを回収するのが望ましい。すなわち、回収した上澄みを用いることで、カーボンナノホーン集合体の純度を高めることができる。この場合、回収した上澄みを加熱処理すれば、結果、上澄みに含まれるカーボンナノホーン集合体を熱処理することができる。
【0025】
図1(a)に示すような出発物質として用いられるCNHs101は、直径が1〜5nmのCNH100が円錐形状の先端部を外側にして球形に集合した凝集体である。CNHs101の直径は30〜200nmであるのが望ましい。
【0026】
CNHs101は、レーザアブレーション、アーク放電で合成され、特にCO2レーザアブレーションで合成されるのが望ましい。合成されるCNHs101の種類は、合成条件に基づいて決められ、特に、レーザー照射密度とカーボンターゲットの回転速度を制御することで、所望のCNHs101を合成することができる。合成雰囲気は、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性雰囲気下、または、N2、COなどの存在下とされても良い。。また合成温度は室温付近〜1300℃程度とされても良いが、大量製造をする場合は室温とされるのが望ましい。また、レーザーパワー密度を10〜50kW/cm2とし、そのときのターゲット回転数を0.5〜6rpmに制御することで、合成するCNHsをペタルーダリア型(ペタル含有カーボンナノホーン)、ダリア型、つぼみ型又はSeed型に作り分けることが可能である。作製されるペタル含有カーボンナノホーンは、1〜10層程度のグラフェンシートを有し、30〜200nmの凝集構造からなる。また、このペタル含有カーボンナノホーンは、直径が1〜5nmであるCNHを含む構造を有する。
【0027】
CNH100同士の隙間が広げられたCNHs111では、CNH100同士の隙間の幅が通常のグラファイトの層間距離である0.335nmと同等か、それ以上になると考えられる。
【0028】
本実施形態に係るCNHs111は吸着剤として用いられても良い。その場合、吸着剤の吸着能が上がる。
【0029】
また、本実施形態に係るCNHs111は電池の電極材料としても用いられても良い。本実施形態に係るCNHs111は大きい比表面積を有するため、CNHs111を電極材料として用いた場合、キャパシタとしての容量が向上する。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に本発明の第2の実施形態に係るCNHs及びその製造方法について、図2を用いて説明する。本実施形態に係るCNHsの製造方法は、CNHsを酸化処理して、CNHに開孔部を設けることを特徴とする。
【0031】
はじめに、図2(a)に示すようにCNHs201を準備する。次に、図2(b)に示すように、エタノール202などの分散液をCNH200同士の間にインターカレートさせる。次に、図2(c)に示すように、CNHs211を熱処理して、エタノール202を除去する。なお、図2(a)〜図2(c)の工程は第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0032】
次に、CNHs211を酸化させる。このように、CNH200同士の隙間が広がって比表面積が大きくなったCNHs211を酸化させることで、図2(d)に示すように、CNH200により多く孔を開けて開孔部203を設けたCNHs221を製造することができる。これは、CNHs211の比表面積が大きくなったことにより、CNH200のより多くの表面部分を酸化させることができるためである。開孔部203は、CNH200の側面や先端部などの五員環や七員環を有する部位が開孔することにより形成される。このように開孔部203を設ける処理を開孔処理と呼ぶ。
【0033】
開孔部203のサイズは、酸化条件を変えることで制御することができる。CNHs211を酸素雰囲気中で熱処理してCNHs211を酸化する場合、酸化処理温度を変えることで、開孔部203のサイズを制御することができる。例えば、CNHs211の燃焼は、酸素中では350℃付近から開始するため、酸化処理温度を350℃以上とするのが望ましい。また、例えば、350℃から550℃で熱処理すれば、直径0.3から3.0nmの孔をCNH200に開けることができる。また、酸などを用いて酸化処理する場合でも開孔部203のサイズを制御することができる。例えば、硝酸溶液を用いれば、110℃、15分の熱処理で1nmの孔をCNH200に開けることが可能である。また、過酸化水素を用いれば、100℃、2時間の熱処理で1nmの孔をCNH200に開けることができる。また、CNHs211と酸の液相反応のときに光照射を行うと効率的にCNH200に孔を開けることができる。
【0034】
本実施形態のCNHs221の製造方法によれば、CNH200同士の隙間が広がったCNHs211を酸化処理して、CNH200に多くの開孔部203を設けている。このため、CNHs221の比表面積はさらに大きくなる。
【0035】
本実施形態のCNHs221は、前述のとおり大きな比表面積を有する。また、CNHs221は、活性炭などとは異なり開孔部203以外にエッジを含まないため、耐久性が高い。また、CNHs221には、製造工程上、金属や他の不純物が含まれないため、耐久性が高い。
【0036】
なお、CNHs211を不活性ガスまたは真空で熱処理することで、CNHs201の製造時に混入されるフラーレンなどを昇華、分解させて除去してもよい。さらに、CNHs211を空気などで酸化処理することで、フラーレンやアモルファスカーボンなどを燃焼させるなどして除去してもよい。これにより、CNHs211及びCNHs221の純度を高めることができる。
【0037】
開孔処理は、酸素雰囲気下では450℃以上、580℃以下で行われるのが望ましく、特に500℃以上、550℃以下で行われるのが望ましい。また、過酸化水素、硝酸、硫酸のような液相では、室温以上、100℃以下で行われるのが望ましい。
【実施例】
【0038】
次に本発明の実施例に係るCNHs及びその製造方法について説明する。
【0039】
CNHs50mgとエタノール50mlの混合液を超音波処理して、分散液を作製した。このとき、分散時間を30分とし、周波数を45kHzとした。
【0040】
次に、得られた分散液を、遠心分離機を用いて上澄みと沈殿物とに分離し、これらを別々に回収した。遠心分離を行う際の条件は、温度を5℃、回転速度を5000rpm、時間を30分とした。
【0041】
次に、得られたサンプルを真空中で1200℃で2時間、加熱処理した。上澄みから得られたカーボンナノホーン(HTCNH)、沈殿物から得られたCNH(HTCNHR)と未処理のカーボンナノホーン(asCNH)の熱重量分析(Thermo Gravimetry Analyzer;TGA)の結果(熱重量(%))とその結果を微分した微分曲線(微分熱重量(%/℃))を図3に示す。なお、微分曲線の600℃付近のピークがCNHに由来するものである。また、微分曲線の700℃〜750℃付近のピークがグラファイト不純物に由来するものと思われる。
【0042】
図3に示すasCNHの熱重量は、700℃〜750℃の間で約6%程度緩やかに減少している。これは、asCNHに含まれる1μm程度のグラファイト不純物に由来するものだと思われる。asCNH及びグラファイト不純物の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)の画像を図4に示す。この画像の中に示された100nm程度の球状のものがasCNHである。
【0043】
HTCNHの微分曲線では、asCNHの微分曲線に比べ、600℃付近のピークが増加し、700〜750℃付近のピークがなくなっている。この結果から、HTCNHに含まれるCNHの割合が増加した一方で、グラファイト不純物の割合がほぼゼロとなったことが分かる。これは、分散液が遠心分離されたときに、グラファイト不純物がHTCNHから分離されたためである。
【0044】
一方、HTCNHRの微分曲線では、600℃付近のピークが減少し、700〜750℃付近のピークが増加している。この結果から、HTCNHRに含まれるCNHsの割合が減少し、グラファイト不純物の割合が増加したことが分かる。
【0045】
TGAの結果の400℃付近での熱重量減少は、フラーレンやアモルファスカーボン由来であると思われる。図5は透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の画像である。この画像の矢印で示されたCNHsの周りに吸着しているのが、フラーレンが凝集したものである。
【0046】
図6は、asCNH、HTCNH、HTCNHRのX線回折結果である。図6から、グラファイト構造に相当する2θ=26.0−26.5度のピークがHTCNHではなくなり、HTCNHRでは増加していることが分かる。この結果から、遠心分離によりグラファイト不純物がすべて沈殿したことが推測される。
【0047】
次に、HTCNHを空気雰囲気下で1℃/minの昇温速度で450℃、500℃、550℃、580℃の温度まで加熱し、酸化処理した。そして、asCNH、HTCNH、酸化処理したHTCNHの吸着能を調べた。図7に、77Kの窒素吸着等温線を示す。なお、450℃で加熱したHTCNHはNHox450、500℃で加熱したものはNHox500、550℃で加熱したものはNHox550、580℃で加熱したものはNHox580と示す。図7に示すように、HTCNHを酸化させて、HTCNHのCNHに開孔部を設けたことにより、CNHsの吸着能は劇的に大きくなった。
【0048】
図8に、図7の吸着等温線からBrunauer‐Emmett‐Teller(BET)法により各状態のCNHsの比表面積を求めた結果を示す。asCNHの比表面積は400m2/gであったのに対して、HTCNHの比表面積は470m2/gであった。すなわち、HTCNHではCNH同士の隙間を広げられたことにより、その比表面積が約1.2倍になった。また、HTCNHを酸化してCNHに開孔部を設けることにより、その比表面積が大幅に増加した。特に、加熱条件を500℃としたNHox500では、1720m2/gという大きい比表面積を有するCNHsを作製することができた。この値は、非特許文献1にて報告されているCNHsが有する1450m2/gの比表面積に比べて、1.2倍程度に増加している。また、加熱条件を550℃としたNHox550においても、その比表面積は1690m2/gであり、非特許文献1にて報告されている値以上の大きい比表面積を有するCNHsを作製することができた。
【0049】
なお、カーボン材料の比表面積の最大値は、理論上は2630m2/gになる。この値は、2次元平面状に広がるグラフェンシートの比表面積が2630m2/gになることに基づく。
【0050】
従って、本実施例から、CNHsの比表面積は1460m2/g以上、2630m2/g以下となり、好ましくは1600m2/g以上、1800m2/g以下となり、さらに好ましくは1650m2/g以上、1750m2/g以下となる。
【0051】
図9に、図7の吸着等温線からBarrett−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔容量を求めた結果を示す。asCNHの細孔容量が0.6cm3/gであったのに対して、HTCNHの細孔容量は0.8cm3/gであった。すなわち、HTCNHではCNH同士の隙間を広げられたことにより、その細孔容量が増加することが分かった。さらに、NHox500とNHox550の細孔容量は非特許文献1にて報告されている値0.92cm3/g、0.82cm3/gと比べて、1.7倍程度に増加していることが分かった。なお、450℃、500℃、550℃、580℃の加熱条件で開孔処理が施されたCNHsは、図9から、その細孔容量が1.4cm3/g以上、1.75cm3/g未満になると思われる。
【0052】
比表面積の増加からCNHsの細孔容量を計算すると、HTCNHを酸化処理してCNHに開孔部を設けた場合、CNHsの細孔容量は0.94cm2/g以上、2.0cm3/g未満になると考えられる。
【0053】
次に、上述の工程を経て作製したNHox500にポリテトフルオロエチレンをバインダーとして混錬してシート化したものを作用電極とし、参照電極をLi/Li+で構成し、対極をLiで構成した三極セルを用いてキャパシタ特性を評価した。ここで、1M LiPF6/PCを有機電解液として使用し、多孔質のポリプロピレンをセパレータとして使用した。また、比較のためにasCNHと、asCNHを上述の酸化条件と同様の条件で酸化処理してCNHに開孔部を設けた試料(asNHox500)のキャパシタ特性を同様に評価した。その結果を図10に示す。図10は、1.5kV〜4kVまで分極した際のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す。通常の活性炭電極によるキャパシタでは矩形のCVとなるのに対して、図10に示すように、asCNHを電極として用いた場合では分極電圧の増加にしたがって電流量が増加(減少)した。この電流量の増加は、CNH同士の間にインターカレートされたエタノール分子による電気化学的ドーピング効果と考えることができる。また、asNHox500やNHox500を電極として用いた場合では、asNHoxの電極の場合に比べ電流量が増加した。またasNHox500の電極に比べNHox500の電極の場合では、分極した際の電流増加部分が大きいことが分かった。このことはインターカレーションによる効果が大きいということを示している。
【0054】
また、図11に、定電流法(0.1mA、1.5〜4kV)による充放電測定から求めた各状態のCNHsの比容量を示す。asCNH、asNHox500、NHox500の場合の比容量は、それぞれ58、86、96F/gであった。
【0055】
さらに、図12に、BET法で求めた比表面積を比容量でプロットした結果を示す。これらの結果から、CNH同士の隙間を広げることにより、CNHsの比表面積が増加するとともに、電気容量も増加することが分かった。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0057】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0058】
(付記1)複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下であるカーボンナノホーン集合体。
【0059】
(付記2)前記比表面積は、1600m2/g以上、1800m2/g以下である付記1に記載のカーボンナノホーン集合体。
【0060】
(付記3)前記比表面積は、1650m2/g以上、1750m2/g以下である付記1又は2に記載のカーボンナノホーン集合体。
【0061】
(付記4)前記カーボンナノホーン同士の隙間が、前記カーボンナノホーン同士の間に前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒の溶媒分子がインターカレートされ、前前記溶媒分子が除去されることにより広げられた付記1から3のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0062】
(付記5)前記カーボンナノホーン集合体の細孔容量が、1.4cm3/g以上、1.75cm3/g未満になる付記1から4のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0063】
(付記6)前記カーボンナノホーンは開孔部を有する付記1から5のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0064】
(付記7)付記1から6のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含む電極を有する電池。
【0065】
(付記8)複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、前記分散液を超音波処理し、前記超音波処理した後に、前記カーボンナノホーン集合体を熱処理するカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0066】
(付記9)前記熱処理は、800℃以上、1800℃以下で熱処理にて行われる付記8に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0067】
(付記10)前記熱処理は、真空中又は不活性ガス若しくは窒素の存在下で行われる付記8又は9に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0068】
(付記11)前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン又はジクロロエタンである付記8から10のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0069】
(付記12)前記熱処理された前記カーボンナノホーン集合体を酸化処理して、前記カーボンナノホーンに開孔部を設ける請求項8から11のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0070】
(付記13)前記酸化処理では、前記カーボンナノホーン集合体が酸素雰囲気下で、350℃以上、580℃以下で熱される請求項8から12のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0071】
(付記14)前記熱処理で、前記分散液に含まれていたフラーレン又はアモルファスカーボンを除去する請求項8から13のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0072】
(付記15)前記熱処理を行う前に前記分散液を遠心分離し、
遠心分離した分散液の上澄みのみを回収し、
回収した前記上澄みを加熱処理することで、前記カーボンナノホーン集合体を前記熱処理する請求項8から14のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0073】
(付記16)付記8から15のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造された前記カーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、前記電極を用いて電池を作製する電池の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
100、200 CNH
101、111、201、211、221 CNHs
102、202 エタノール
203 開孔部
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法に関し、特に、大きい比表面積を有するカーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube;CNT)、カーボンナノホーン(Carbon Nanohorn;CNH)などのナノサイズの大きさを有するナノ炭素材料が注目されている。ナノ炭素材料は、触媒担体、吸着剤、分離剤、インク、トナーなどへの応用が期待されており、その用途についてはこれまでにも多くの鋭意研究が行われてきた。
【0003】
さらに、ナノ炭素材料は、電池を大容量化させるための電極材料への応用も期待されている。例えば、大きい比表面積を有する活性炭が電極材料として使用された例がある。しかしながら、この電極にはエッジが多く含まれるため、導電性や耐久性が低いなどの問題があった。そこで、この問題を解決するナノ炭素材料として、CNH集合体(Carbon Nanohorn Assemblies;CNHs)が注目されている。CNHsは高い導電性と耐久性を備え、大きい比表面積を有することが可能なナノ炭素材料として期待されている。
【0004】
特許文献1に開示されているように、CNHsはCNHが集合して球状になったものである。CNHsは、円錐形状の先端部と管形状のチューブ部とからなるCNHを複数個有する。CNHのチューブ部はCNHsの中心側に位置する。一方、CNHの円錐部はCNHsの表面から突き出るように配置される。
【0005】
特許文献2には、CNHsからなる吸着材であって、CNHのチューブ部および先端部に細孔が設けられたものが開示されている。この細孔の径は制御することができる。さらに、特許文献2には、CNHsの吸着剤であって、その比表面積が1006m2/gであるものが開示されている。
【0006】
また、非特許文献1には、CNHに細孔が設けられたCNHsであって、その比表面積が1450m2/gのものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−159851(段落「0012」、図2)
【特許文献2】特開2002−326032(段落「0007」、「0024」)
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Phys Chem B.,;110(4)、2006: 1587−91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2及び非特許文献1に記載されたいずれのカーボンナノホーン集合体(CNHs)の比表面積も小さく、これらカーボンナノホーン集合体には比表面積の改善の余地があった。カーボンナノホーン集合体が吸着剤やキャパシタ等に使用される場合、カーボンナノホーン集合体はより大きい比表面積を有しているのが望ましい。
【0010】
本発明の目的は、上述した課題である、カーボンナノホーン集合体の比表面積が小さいという課題を解決するカーボンナノホーン集合体及びその製造方法並びにカーボンナノホーンを備える電池及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のカーボンナノホーン集合体は、複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下である。
【0012】
また、本発明の電池は、本発明のカーボンナノホーンを含む電極を有する。
【0013】
また、本発明のカーボンナノホーン集合体の製造方法は、複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、分散液を超音波処理し、超音波処理した後に、カーボンナノホーン集合体を熱処理する。
【0014】
また、本発明の電池の製造方法は、本発明のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造されたカーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、電極を用いて電池を作製する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカーボンナノホーン集合体によれば、カーボンナノホーン集合体が大きい比表面積を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るCNHsの製造方法を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るCNHsの製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施例の熱重量分析の結果とその結果を微分した微分曲線を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)の画像を示す図である。
【図5】本発明の実施例の透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の画像を示す図である。
【図6】本発明の実施例のX線回折結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例の窒素吸着等温線を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例の比表面積を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例の細孔容量を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例のサイクリックボルタモグラムを示すグラフである。
【図11】本発明の実施例の電気容量を示すグラフである。
【図12】本発明の実施例の比表面積を電気容量でプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本明細書におけるCNHsの比表面積とは、CNHsの重さあたりの表面積を表すこととする。また、CNHsの細孔容量とは、CNHsの重さあたりの体積を表すこととする。
【0018】
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態に係るCNHs及びその製造方法について、図1を用いて説明する。
【0019】
はじめに、図1(a)に示すように、CNHs101を準備する。CNHs101は、CNH100が集合して凝集体を形成したものである。
【0020】
次に、このCNHs101をエタノールなどの分散液に浸漬させる。そして、このCNHs101が浸漬した分散液を超音波処理することで、図1(b)に示すように、エタノール102をCNH100同士の間にインターカレートさせる。この時、CNHs111は分散液中で単分散状態になる。なお、CNHs101を浸漬させる溶媒は、浸漬したCNHs101を分散させるものであれば良く、無機溶媒であっても良く、有機溶媒であっても良い。このような溶媒として、好ましくは有機溶媒であるエタノール、メタノール、イソプロパノール(Isopropyl Alcohol;IPA)、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン、ジクロロエタンなどを用いることができる。
【0021】
次に、CNHs111が単分散状態となった分散液を800〜1800℃、例えば1200℃程度で熱処理することにより、CNH100同士の隙間にあるエタノール102を除去する。この熱処理は、真空中又はHe、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性ガス若しくは窒素の存在下で行われる。その結果、図1(c)に示すように、CNH100同士の隙間が広がる。なお、この熱処理は、電気炉内で行うことができる。
【0022】
本実施形態のCNHs111の製造方法によれば、CNHs101が有する複数のCNH100同士の隙間にエタノール102などの分子がインターカレートされる。そして、この後、エタノール102が除去される。このため、CNH100同士の隙間が広がり、その結果、CNHsの比表面積が増加する。
【0023】
エタノール102が熱により除去される際には、この温度の範囲内で昇華や分解するフラーレンなどがCNHs111から実質的に分離される。
【0024】
CNHs111が単分散状態となった分散液は、熱処理される前に、遠心分離されても良い。遠心分離により、この分散液に混入されているグラファイト状の不純物などを分離することができる。遠心分離はフィルターを用いて行われる。分散液を遠心分離した場合、不純物が下に堆積するので、上澄みのみを回収するのが望ましい。すなわち、回収した上澄みを用いることで、カーボンナノホーン集合体の純度を高めることができる。この場合、回収した上澄みを加熱処理すれば、結果、上澄みに含まれるカーボンナノホーン集合体を熱処理することができる。
【0025】
図1(a)に示すような出発物質として用いられるCNHs101は、直径が1〜5nmのCNH100が円錐形状の先端部を外側にして球形に集合した凝集体である。CNHs101の直径は30〜200nmであるのが望ましい。
【0026】
CNHs101は、レーザアブレーション、アーク放電で合成され、特にCO2レーザアブレーションで合成されるのが望ましい。合成されるCNHs101の種類は、合成条件に基づいて決められ、特に、レーザー照射密度とカーボンターゲットの回転速度を制御することで、所望のCNHs101を合成することができる。合成雰囲気は、He、Ne、Ar、Kr、Xeなどの不活性雰囲気下、または、N2、COなどの存在下とされても良い。。また合成温度は室温付近〜1300℃程度とされても良いが、大量製造をする場合は室温とされるのが望ましい。また、レーザーパワー密度を10〜50kW/cm2とし、そのときのターゲット回転数を0.5〜6rpmに制御することで、合成するCNHsをペタルーダリア型(ペタル含有カーボンナノホーン)、ダリア型、つぼみ型又はSeed型に作り分けることが可能である。作製されるペタル含有カーボンナノホーンは、1〜10層程度のグラフェンシートを有し、30〜200nmの凝集構造からなる。また、このペタル含有カーボンナノホーンは、直径が1〜5nmであるCNHを含む構造を有する。
【0027】
CNH100同士の隙間が広げられたCNHs111では、CNH100同士の隙間の幅が通常のグラファイトの層間距離である0.335nmと同等か、それ以上になると考えられる。
【0028】
本実施形態に係るCNHs111は吸着剤として用いられても良い。その場合、吸着剤の吸着能が上がる。
【0029】
また、本実施形態に係るCNHs111は電池の電極材料としても用いられても良い。本実施形態に係るCNHs111は大きい比表面積を有するため、CNHs111を電極材料として用いた場合、キャパシタとしての容量が向上する。
【0030】
〔第2の実施形態〕
次に本発明の第2の実施形態に係るCNHs及びその製造方法について、図2を用いて説明する。本実施形態に係るCNHsの製造方法は、CNHsを酸化処理して、CNHに開孔部を設けることを特徴とする。
【0031】
はじめに、図2(a)に示すようにCNHs201を準備する。次に、図2(b)に示すように、エタノール202などの分散液をCNH200同士の間にインターカレートさせる。次に、図2(c)に示すように、CNHs211を熱処理して、エタノール202を除去する。なお、図2(a)〜図2(c)の工程は第1の実施形態と同じであるため、詳細な説明を省略する。
【0032】
次に、CNHs211を酸化させる。このように、CNH200同士の隙間が広がって比表面積が大きくなったCNHs211を酸化させることで、図2(d)に示すように、CNH200により多く孔を開けて開孔部203を設けたCNHs221を製造することができる。これは、CNHs211の比表面積が大きくなったことにより、CNH200のより多くの表面部分を酸化させることができるためである。開孔部203は、CNH200の側面や先端部などの五員環や七員環を有する部位が開孔することにより形成される。このように開孔部203を設ける処理を開孔処理と呼ぶ。
【0033】
開孔部203のサイズは、酸化条件を変えることで制御することができる。CNHs211を酸素雰囲気中で熱処理してCNHs211を酸化する場合、酸化処理温度を変えることで、開孔部203のサイズを制御することができる。例えば、CNHs211の燃焼は、酸素中では350℃付近から開始するため、酸化処理温度を350℃以上とするのが望ましい。また、例えば、350℃から550℃で熱処理すれば、直径0.3から3.0nmの孔をCNH200に開けることができる。また、酸などを用いて酸化処理する場合でも開孔部203のサイズを制御することができる。例えば、硝酸溶液を用いれば、110℃、15分の熱処理で1nmの孔をCNH200に開けることが可能である。また、過酸化水素を用いれば、100℃、2時間の熱処理で1nmの孔をCNH200に開けることができる。また、CNHs211と酸の液相反応のときに光照射を行うと効率的にCNH200に孔を開けることができる。
【0034】
本実施形態のCNHs221の製造方法によれば、CNH200同士の隙間が広がったCNHs211を酸化処理して、CNH200に多くの開孔部203を設けている。このため、CNHs221の比表面積はさらに大きくなる。
【0035】
本実施形態のCNHs221は、前述のとおり大きな比表面積を有する。また、CNHs221は、活性炭などとは異なり開孔部203以外にエッジを含まないため、耐久性が高い。また、CNHs221には、製造工程上、金属や他の不純物が含まれないため、耐久性が高い。
【0036】
なお、CNHs211を不活性ガスまたは真空で熱処理することで、CNHs201の製造時に混入されるフラーレンなどを昇華、分解させて除去してもよい。さらに、CNHs211を空気などで酸化処理することで、フラーレンやアモルファスカーボンなどを燃焼させるなどして除去してもよい。これにより、CNHs211及びCNHs221の純度を高めることができる。
【0037】
開孔処理は、酸素雰囲気下では450℃以上、580℃以下で行われるのが望ましく、特に500℃以上、550℃以下で行われるのが望ましい。また、過酸化水素、硝酸、硫酸のような液相では、室温以上、100℃以下で行われるのが望ましい。
【実施例】
【0038】
次に本発明の実施例に係るCNHs及びその製造方法について説明する。
【0039】
CNHs50mgとエタノール50mlの混合液を超音波処理して、分散液を作製した。このとき、分散時間を30分とし、周波数を45kHzとした。
【0040】
次に、得られた分散液を、遠心分離機を用いて上澄みと沈殿物とに分離し、これらを別々に回収した。遠心分離を行う際の条件は、温度を5℃、回転速度を5000rpm、時間を30分とした。
【0041】
次に、得られたサンプルを真空中で1200℃で2時間、加熱処理した。上澄みから得られたカーボンナノホーン(HTCNH)、沈殿物から得られたCNH(HTCNHR)と未処理のカーボンナノホーン(asCNH)の熱重量分析(Thermo Gravimetry Analyzer;TGA)の結果(熱重量(%))とその結果を微分した微分曲線(微分熱重量(%/℃))を図3に示す。なお、微分曲線の600℃付近のピークがCNHに由来するものである。また、微分曲線の700℃〜750℃付近のピークがグラファイト不純物に由来するものと思われる。
【0042】
図3に示すasCNHの熱重量は、700℃〜750℃の間で約6%程度緩やかに減少している。これは、asCNHに含まれる1μm程度のグラファイト不純物に由来するものだと思われる。asCNH及びグラファイト不純物の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)の画像を図4に示す。この画像の中に示された100nm程度の球状のものがasCNHである。
【0043】
HTCNHの微分曲線では、asCNHの微分曲線に比べ、600℃付近のピークが増加し、700〜750℃付近のピークがなくなっている。この結果から、HTCNHに含まれるCNHの割合が増加した一方で、グラファイト不純物の割合がほぼゼロとなったことが分かる。これは、分散液が遠心分離されたときに、グラファイト不純物がHTCNHから分離されたためである。
【0044】
一方、HTCNHRの微分曲線では、600℃付近のピークが減少し、700〜750℃付近のピークが増加している。この結果から、HTCNHRに含まれるCNHsの割合が減少し、グラファイト不純物の割合が増加したことが分かる。
【0045】
TGAの結果の400℃付近での熱重量減少は、フラーレンやアモルファスカーボン由来であると思われる。図5は透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)の画像である。この画像の矢印で示されたCNHsの周りに吸着しているのが、フラーレンが凝集したものである。
【0046】
図6は、asCNH、HTCNH、HTCNHRのX線回折結果である。図6から、グラファイト構造に相当する2θ=26.0−26.5度のピークがHTCNHではなくなり、HTCNHRでは増加していることが分かる。この結果から、遠心分離によりグラファイト不純物がすべて沈殿したことが推測される。
【0047】
次に、HTCNHを空気雰囲気下で1℃/minの昇温速度で450℃、500℃、550℃、580℃の温度まで加熱し、酸化処理した。そして、asCNH、HTCNH、酸化処理したHTCNHの吸着能を調べた。図7に、77Kの窒素吸着等温線を示す。なお、450℃で加熱したHTCNHはNHox450、500℃で加熱したものはNHox500、550℃で加熱したものはNHox550、580℃で加熱したものはNHox580と示す。図7に示すように、HTCNHを酸化させて、HTCNHのCNHに開孔部を設けたことにより、CNHsの吸着能は劇的に大きくなった。
【0048】
図8に、図7の吸着等温線からBrunauer‐Emmett‐Teller(BET)法により各状態のCNHsの比表面積を求めた結果を示す。asCNHの比表面積は400m2/gであったのに対して、HTCNHの比表面積は470m2/gであった。すなわち、HTCNHではCNH同士の隙間を広げられたことにより、その比表面積が約1.2倍になった。また、HTCNHを酸化してCNHに開孔部を設けることにより、その比表面積が大幅に増加した。特に、加熱条件を500℃としたNHox500では、1720m2/gという大きい比表面積を有するCNHsを作製することができた。この値は、非特許文献1にて報告されているCNHsが有する1450m2/gの比表面積に比べて、1.2倍程度に増加している。また、加熱条件を550℃としたNHox550においても、その比表面積は1690m2/gであり、非特許文献1にて報告されている値以上の大きい比表面積を有するCNHsを作製することができた。
【0049】
なお、カーボン材料の比表面積の最大値は、理論上は2630m2/gになる。この値は、2次元平面状に広がるグラフェンシートの比表面積が2630m2/gになることに基づく。
【0050】
従って、本実施例から、CNHsの比表面積は1460m2/g以上、2630m2/g以下となり、好ましくは1600m2/g以上、1800m2/g以下となり、さらに好ましくは1650m2/g以上、1750m2/g以下となる。
【0051】
図9に、図7の吸着等温線からBarrett−Joyner−Halenda(BJH)法により細孔容量を求めた結果を示す。asCNHの細孔容量が0.6cm3/gであったのに対して、HTCNHの細孔容量は0.8cm3/gであった。すなわち、HTCNHではCNH同士の隙間を広げられたことにより、その細孔容量が増加することが分かった。さらに、NHox500とNHox550の細孔容量は非特許文献1にて報告されている値0.92cm3/g、0.82cm3/gと比べて、1.7倍程度に増加していることが分かった。なお、450℃、500℃、550℃、580℃の加熱条件で開孔処理が施されたCNHsは、図9から、その細孔容量が1.4cm3/g以上、1.75cm3/g未満になると思われる。
【0052】
比表面積の増加からCNHsの細孔容量を計算すると、HTCNHを酸化処理してCNHに開孔部を設けた場合、CNHsの細孔容量は0.94cm2/g以上、2.0cm3/g未満になると考えられる。
【0053】
次に、上述の工程を経て作製したNHox500にポリテトフルオロエチレンをバインダーとして混錬してシート化したものを作用電極とし、参照電極をLi/Li+で構成し、対極をLiで構成した三極セルを用いてキャパシタ特性を評価した。ここで、1M LiPF6/PCを有機電解液として使用し、多孔質のポリプロピレンをセパレータとして使用した。また、比較のためにasCNHと、asCNHを上述の酸化条件と同様の条件で酸化処理してCNHに開孔部を設けた試料(asNHox500)のキャパシタ特性を同様に評価した。その結果を図10に示す。図10は、1.5kV〜4kVまで分極した際のサイクリックボルタモグラム(CV)を示す。通常の活性炭電極によるキャパシタでは矩形のCVとなるのに対して、図10に示すように、asCNHを電極として用いた場合では分極電圧の増加にしたがって電流量が増加(減少)した。この電流量の増加は、CNH同士の間にインターカレートされたエタノール分子による電気化学的ドーピング効果と考えることができる。また、asNHox500やNHox500を電極として用いた場合では、asNHoxの電極の場合に比べ電流量が増加した。またasNHox500の電極に比べNHox500の電極の場合では、分極した際の電流増加部分が大きいことが分かった。このことはインターカレーションによる効果が大きいということを示している。
【0054】
また、図11に、定電流法(0.1mA、1.5〜4kV)による充放電測定から求めた各状態のCNHsの比容量を示す。asCNH、asNHox500、NHox500の場合の比容量は、それぞれ58、86、96F/gであった。
【0055】
さらに、図12に、BET法で求めた比表面積を比容量でプロットした結果を示す。これらの結果から、CNH同士の隙間を広げることにより、CNHsの比表面積が増加するとともに、電気容量も増加することが分かった。
【0056】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。
【0057】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0058】
(付記1)複数のカーボンナノホーンを有し、カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下であるカーボンナノホーン集合体。
【0059】
(付記2)前記比表面積は、1600m2/g以上、1800m2/g以下である付記1に記載のカーボンナノホーン集合体。
【0060】
(付記3)前記比表面積は、1650m2/g以上、1750m2/g以下である付記1又は2に記載のカーボンナノホーン集合体。
【0061】
(付記4)前記カーボンナノホーン同士の隙間が、前記カーボンナノホーン同士の間に前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒の溶媒分子がインターカレートされ、前前記溶媒分子が除去されることにより広げられた付記1から3のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0062】
(付記5)前記カーボンナノホーン集合体の細孔容量が、1.4cm3/g以上、1.75cm3/g未満になる付記1から4のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0063】
(付記6)前記カーボンナノホーンは開孔部を有する付記1から5のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0064】
(付記7)付記1から6のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含む電極を有する電池。
【0065】
(付記8)複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、前記分散液を超音波処理し、前記超音波処理した後に、前記カーボンナノホーン集合体を熱処理するカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0066】
(付記9)前記熱処理は、800℃以上、1800℃以下で熱処理にて行われる付記8に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0067】
(付記10)前記熱処理は、真空中又は不活性ガス若しくは窒素の存在下で行われる付記8又は9に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0068】
(付記11)前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン又はジクロロエタンである付記8から10のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0069】
(付記12)前記熱処理された前記カーボンナノホーン集合体を酸化処理して、前記カーボンナノホーンに開孔部を設ける請求項8から11のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0070】
(付記13)前記酸化処理では、前記カーボンナノホーン集合体が酸素雰囲気下で、350℃以上、580℃以下で熱される請求項8から12のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0071】
(付記14)前記熱処理で、前記分散液に含まれていたフラーレン又はアモルファスカーボンを除去する請求項8から13のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【0072】
(付記15)前記熱処理を行う前に前記分散液を遠心分離し、
遠心分離した分散液の上澄みのみを回収し、
回収した前記上澄みを加熱処理することで、前記カーボンナノホーン集合体を前記熱処理する請求項8から14のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【0073】
(付記16)付記8から15のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造された前記カーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、前記電極を用いて電池を作製する電池の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
100、200 CNH
101、111、201、211、221 CNHs
102、202 エタノール
203 開孔部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のカーボンナノホーンを有し、
カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下であるカーボンナノホーン集合体。
【請求項2】
前記比表面積は、1600m2/g以上、1800m2/g以下である請求項1に記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項3】
前記比表面積は、1650m2/g以上、1750m2/g以下である請求項1又は2に記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項4】
前記カーボンナノホーン同士の隙間が、前記カーボンナノホーン同士の間に前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒の溶媒分子がインターカレートされ、前前記溶媒分子が除去されることにより広げられた請求項1から3のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項5】
前記カーボンナノホーンは開孔部を有する請求項1から4のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含む電極を有する電池。
【請求項7】
複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、
前記分散液を超音波処理し、
前記超音波処理した後に、前記カーボンナノホーン集合体を熱処理するカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン又はジクロロエタンである請求項7に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理された前記カーボンナノホーン集合体を酸化処理して、前記カーボンナノホーンに開孔部を設ける請求項7又は8に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造された前記カーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、前記電極を用いて電池を作製する電池の製造方法。
【請求項1】
複数のカーボンナノホーンを有し、
カーボンナノホーン集合体の比表面積が1460m2/g以上、2630m2/g以下であるカーボンナノホーン集合体。
【請求項2】
前記比表面積は、1600m2/g以上、1800m2/g以下である請求項1に記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項3】
前記比表面積は、1650m2/g以上、1750m2/g以下である請求項1又は2に記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項4】
前記カーボンナノホーン同士の隙間が、前記カーボンナノホーン同士の間に前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒の溶媒分子がインターカレートされ、前前記溶媒分子が除去されることにより広げられた請求項1から3のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項5】
前記カーボンナノホーンは開孔部を有する請求項1から4のいずれかに記載のカーボンナノホーン集合体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のカーボンナノホーンを含む電極を有する電池。
【請求項7】
複数のカーボンナノホーンを有するカーボンナノホーン集合体を、前記カーボンナノホーン集合体を分散させられる溶媒に浸漬させた分散液を用意し、
前記分散液を超音波処理し、
前記超音波処理した後に、前記カーボンナノホーン集合体を熱処理するカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、ベンゼン、安息香酸、アニリン又はジクロロエタンである請求項7に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理された前記カーボンナノホーン集合体を酸化処理して、前記カーボンナノホーンに開孔部を設ける請求項7又は8に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のカーボンナノホーン集合体の製造方法により製造された前記カーボンナノホーン集合体とバインダーとを混錬して電極を作製し、前記電極を用いて電池を作製する電池の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図6】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−41250(P2012−41250A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186440(P2010−186440)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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