説明

カーボンブラックの混合物およびこれを含む製品

カーボンブラックまたは他のフィラーの混合物が記載される。カーボンブラックまたは他のフィラーの混合物は、エラストマー製品またはポリマー製品等の製品中に混合物を導入する前に好ましく予混合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンブラックおよび他のフィラーに関し、そしてより詳細には、2以上の種類のカーボンブラックまたはフィラーの混合物に関し、そしてさらに、カーボンブラックまたはフィラーの混合物を含む製品に関する。
【背景技術】
【0002】
単一製品中に2以上の種類のカーボンブラックを用いることが可能である。典型的には、末端消費者が異なる2種のカーボンブラックの使用を望む場合、該末端消費者は、典型的には、異なる2種のカーボンブラックを他の成分とともに別個にミキサー内に添加する。例えば、ポリマー製品に対しては、製造者がすべての原料をミキサー内に導入してすべての成分を同時に混合することになる。ポリマー製品等の最終製品の形成において異なる2種のカーボンブラックがどのようにしてミキサー内に導入されるかは関係ないと信じられていた。さらに、ポリマー製品が典型的には、ポリマー製品中に存在する各種カーボンブラックのパーセントに基づいて、存在する各種カーボンブラックの特性を実現できるものと信じられていた。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の特徴は、ポリマー製品またはエラストマー製品等の製品中に2以上の種類のカーボンブラックまたはフィラーを導入する方法を改善することにある。
【0004】
本発明のさらなる特徴は、カーボンブラックまたは他のフィラーの密接な混合物を提供することにある。
【0005】
本発明の他の特徴は、単一グレードのカーボンブラックと比較して改善された性能を提供することが可能なカーボンブラックの混合物を使用することにある。本発明のさらなる特徴および利点は、この後続く詳細な説明に記載され、および一部は詳細な説明から明らかとなり、または本発明の実施によって知ることができる。
【0006】
本発明の目的および他の利点は、詳細な説明および特許請求の範囲において詳細に指摘される要素および組み合わせの手段によって理解および到達されよう。
【0007】
これらのおよび他の利点を実現するために、そして本発明の目的に関し、実施およびここに広く記載されるように、本発明は、少なくとも2つの異なる種類のカーボンブラック(またはフィラー)を含むカーボンブラック(または一般的にはフィラー)の混合物に関する。
【0008】
さらに本発明は、ポリマー製品またはエラストマー製品等の最終製品を形成する他の成分に導入される前に共に混合されるカーボンブラック(またはフィラー)混合物に関する。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、実質的に単峰型または単峰型の凝集サイズ分布(ASD)を与える異なる2種以上のカーボンブラックのカーボンブラック混合物にある。
【0010】
さらに本発明は、単峰型または実質的に単峰型の細孔サイズ分布を有するカーボンブラックの混合物に関する。
【0011】
さらに本発明は、ここに記載されるカーボンブラックの混合物を含む組成物または製品に関する。
【0012】
さらに本発明は、カーボンブラックを含む製品を製造する方法であって、異なる2種以上のカーボンブラックの混合物が、製品を形成する他の成分と導入されまたは組み合わされまたは混合される前に、共に混合される方法に関する。
【0013】
さらに本発明は、高エネルギー粉砕等の粉砕によって共に混合されるカーボンブラックの混合物に関する。
【0014】
本発明はまた、使用可能であるかまたはカーボンブラックに対してここに記載されるような利点を有する一般的なフィラーまたは補強剤の混合物に関する。
【0015】
以上の一般的な説明および以下の詳細な説明はともに例示および解説に過ぎず、そしてクレームされる本発明のさらなる説明を与えることを意図することを理解すべきである。
【0016】
組み入れられそして本願の一部を構成する添付の図面は、本発明の幾つかの態様を示しそして詳細な説明とともに本発明の理念の説明の役割を果たす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
少なくとも1つの態様において、本発明はカーボンブラックに関し、そしてより詳細には、異なる2種以上のカーボンブラックの混合物に関する。より広範な態様において、本発明はさらに、カーボンブラック、シリカ、他の金属酸化物、他の無機フィラー等のようなフィラーまたは補強剤の混合物に関する。好ましい態様である異なる2種以上のカーボンブラックの混合物を以下に特に詳細に説明することになるが、本発明は、1種類のカーボンブラックと1種類のシリカ等との混合物等のような異なる2種以上の一般的なフィラーまたは補強剤の混合物に拡張されることを理解すべきである。カーボンブラック等のフィラーまたは補強剤は、キャボット・コーポレーション、デグッサ・コーポレーション等により提供されるような、任意の工業用に入手可能なカーボンブラックであることができる。他の種類のカーボンブラックまたは他の補強剤もしくはフィラーと混合されるカーボンブラックの種類にはいかなる臨界もない。カーボンブラックの混合物は、異なる2種以上のカーボンブラックを含み得る。よって、カーボンブラックの混合物は、任意の物理的、分析的、および/または形態学的な特性を有することができる。好適なカーボンブラックの例としては、ここに列挙されるものの他、非導電性または導電性のファーネスブラック、キャボットのBlack Pearls(登録商標)カーボンブラック,キャボットのVulcan(登録商標)カーボンブラック,キャボットのSterling(登録商標)カーボンブラック,キャボットのUnited(登録商標)カーボンブラック,キャボットのRegal(登録商標)カーボンブラック,キャボットのSpheron(登録商標)カーボンブラック,キャボットのMonarch(登録商標)カーボンブラック,キャボットのElftex(登録商標)カーボンブラック,キャボットのEmperor(登録商標)カーボンブラック,キャボットのIRX(商標)カーボンブラック,キャボットのMogul(登録商標)カーボンブラック,キャボットのCRX(商標)カーボンブラック,キャボットのCSX(商標)カーボンブラック,キャボットのEcoblack(登録商標)カーボンブラック,デグッサのCK−3カーボンブラック,デグッサのCorax(登録商標)カーボンブラック,デグッサのDurex(登録商標)カーボンブラック,デグッサのEcoraxカーボンブラック,デグッサのPrintex(登録商標)カーボンブラック,デグッサのPurex(登録商標)カーボンブラックが挙げられる。他の例としては、ランプブラック、付属する有機基等の単数または複数の化学基を有するカーボンブラック、シリコン処理されたカーボンブラック、金属処理されたカーボンブラック、シリカコートされたカーボンブラック、化学的処理された(例えば、界面活性剤処理された)カーボンブラック、および任意のグレードのカーボンブラックが挙げられる。典型的には、カーボンブラックの混合物は、類似の末端消費者用途を有するが、物理的、化学的、分析的、および/または形態学的な特性が異なるカーボンブラックの混合物であることができる。
【0018】
上記のように、カーボンブラックの混合物は、3種類のカーボンブラック、4種類のカーボンブラック、5種類以上のカーボンブラック等の、異なる2種以上のカーボンブラックであることができる。
【0019】
さらに、上記のように、カーボンブラックと他の補強剤またはフィラーとの混合物もまた使用できる。さらに、カーボンブラック以外の補強剤および/またはフィラーの混合物を、全体で記載したのと同様に使用できる。
【0020】
カーボンブラックの混合物の調製において、好ましくは、異なる種類のカーボンブラックが、最終製品を形成する他の成分に該カーボンブラックを導入する前に共に混合される。言い換えると、そして厳密には一例として、エラストマーコンパウンドが形成される場合には、カーボンブラックの混合物は、好ましくは別個に混合および調製され、そして次いで該エラストマーコンパウンドを形成する1種以上の他の成分と共に導入される。よって、カーボンブラックの混合物は、好ましくは、他の成分との導入前に予混合される。カーボンブラックの混合は、任意の混合技術を用いて起こさせることができる。好ましくは、カーボンブラックの混合は、異なる2種以上のカーボンブラックの密接な混合物を与える混合技術により実現される。例えば、カーボンブラックの混合は、粉砕メディアを伴うかまたは伴わない高エネルギーミル等の粉砕を用いて実現できる。時には、ペレット化でも本発明の目的に対して好ましい所望の程度の混合を実現できる。粉砕は乾式粉砕または湿式粉砕であることができる。高エネルギーミルは、例えばグレンミルズ社またはレッチェの遊星ボールミル等の遠心ミル等の任意の高エネルギーミルであることができる。高エネルギー粉砕の他の例としては、限定されるものではないが、旋回気流型ジェットミルのようなジェットミル、または、対向ジェット流体エネルギーミルのような流体エネルギーミルが挙げられる。また、磨砕ミル(Attritor mill)も、本発明の目的に対して有用である可能性がある。ミルの例はまた、すべて参照によりその全部がここに組み入れられる米国特許番号5,522,558;5,232,169;6,126,097;および6,145,765に記載される。
【0021】
少なくとも1つの態様において、高エネルギーミル等の該ミルは、約0.1Gから約25Gの高衝撃の力を破砕メディアおよび/または粉末に与えるのに十分な速さで回転する。例えば、高エネルギーミルは、約100から約400rpm以上で回転できる。カーボンブラックまたは他のフィラーの例えばミル内での粉砕は、24時間以下、10時間以下、約5分間から約10時間、または中間の任意の他の時間等の、任意の既定長さの時間起こさせることができる。
【0022】
少なくとも1つの態様におけるカーボンブラックの混合は、好ましくは、混合された粉末の凝集サイズ分布が実質的に単峰型の凝集サイズ分布または完全に単峰型の凝集サイズ分布を与えるように行われる。単峰型凝集サイズ分布は広範なショルダーを有することができるが、好ましくは、混合カーボンブラックに対する凝集サイズ分布全体で1つのピークのみが存在する。この種のサイズ分布は、2種のカーボンブラックまたは他のフィラーの好ましい密接な混合を示す。単峰型凝集サイズ分布のある例を図1(ショルダーを有さないピークおよびショルダーを有するピーク)に示す。
【0023】
他の態様において、カーボンブラックまたは他のフィラーの混合物は、ログ差分圧入(mL/g)または他の細孔サイズ分布測定技術によって測定されるような単峰型細孔サイズ分布を有する。繰り返すが、混合されたカーボンブラックまたはフィラーに対するこの細孔サイズ分布は、好ましくは、広範なショルダーを有するかまたは有さない単峰型細孔サイズ分布を有することができる。混合されたカーボンブラックまたはフィラーに対する凝集サイズ分布および/または細孔サイズ分布は、使用されるカーボンブラックもしくはフィラーの種類によって、および/または所望される密接な混合の量によって、狭サイズ分布または広サイズ分布を有することができる。
【0024】
他の態様において、本発明は、単峰型細孔サイズ分布と同様に、単峰型凝集サイズ分布を有する混合されたカーボンブラックまたはフィラーを有することができる。
【0025】
カーボンブラックまたは他のフィラーの混合物は、ポリマー製品、エラストマー製品、タイヤ用途、ケーブル、成形、燃料電池、インク、コーティング、トナー、および従来のカーボンブラックまたはフィラーが有用な任意の用途等の、任意の末端使用用途に対して使用できる。
【0026】
本発明は、少なくとも1つの態様において、カーボンブラック(またはフィラー)を含む製品全体を通じて異なる種類のカーボンブラック(またはフィラー)の均一な分布を可能にし、さらに、1種類のカーボンブラックの導入または製品中の異なる2種以上のカーボンブラックの別個の導入では以前に実現できなかった特性を与える。少なくとも1つの態様において、カーボンブラックの混合物の化学的、形態学的、および/または分析的な特性は、出発のカーボンブラックまたはフィラーの特性から予測されるものよりも異なる。例えば、混合物のDBPおよび/または破砕DBPは、混合物を形成する個別のカーボンブラックよりも異なる可能性があり、そして、例えば、予想よりも低い可能性がある。より詳細には、一般的に、カーボンブラック等の2種以上のフィラーの化学的、形態学的、および/または分析的な特性は、同時に使用される場合、存在する各々のフィラーまたはカーボンブラックに対して使用されるカーボンブラックまたはフィラーの量に基づいて予測できる。一般的に、これは、各々のフィラーまたはカーボンブラックに対する特定の特性を、組成物中に存在するその特定の原料の量に基づいて平均化することを含む。本発明によれば、そしてフィラーの密接な混合物を与えることにより、および配合物中またはバッチ中にフィラーを導入する前にフィラーを混合することにより、混合物の化学的、形態学的、および/または分析的な特性が、ある態様において、存在する2種以上のフィラー(例えばカーボンブラック)の予測値よりも異なる可能性がある。詳細な例としては、混合物のDBPおよび/または破砕DBPが、ある態様において、存在する特定のフィラーの組み合わされたDBPの予測値(各フィラーの各DBPの平均化および存在する特定のフィラーの量に基づく)よりも低い可能性がある。本発明の混合物のDBPは、混合物となる2以上のフィラーの平均(存在する各成分の量に基づく)よりも低い可能性があり、および/または、混合物のDBPは、存在する各々個別のフィラーのいずれのDBPよりも低い可能性がある。より詳細な例としては、例えば、2種のカーボンブラックの90/10混合物(ここで、該90/10は質量%に基づく)において、カーボンブラックAはDBPが119cc/100gであり、カーボンブラックBはDBPが133.9cc/100gであり、そしてこれにより、各カーボンブラックに対する質量パーセントおよびDBP値に基づく予測DBP値は、120.5cc/100gとなり、そして、さらに、カーボンブラックの密接な予混合物を調製することにより、測定されるDBPは、予測値よりも低く、そしてまたこの場合混合物を形成する個別のDBP値の各々よりも低い、112.4cc/100gである。同様に、カーボンブラックAは、破砕DBP値82.6cc/100gを有し、一方でカーボンブラックBが破砕DBP98.4cc/100gを有することができ、したがって、84.2cc/100gの90/10質量パーセント混合物に基づく予測値に結び付き、そしてさらに、本発明に基づいて密接な混合物を調製することにより、実際に測定される混合物は、繰り返すが予測値よりも低く、また存在する各カーボンブラックに対する各々個別の破砕DBP値よりも低い破砕DBP78.2cc/100gを有する。本発明の混合物のDBPおよび/または破砕DBPは、DBPおよび/または破砕DBPに対する予測値よりも、1%,2%,3%,4%,5%,6%,7%,8%,9%,10%以上異なることができる。この予期しない結果は、さらにフィラーに対する他の分析特性に該当し得る。
【0027】
本発明の他の態様において、カーボンブラック(またはフィラー)の混合物は十分に混合され、ストークス径(ミクロン単位)が、単峰型分布および/または広範なショルダーを有する単峰型ストークス径分布を与える。各々の場合において、混合されたカーボンブラック(またはフィラー)に対するストークス径分布に対して1つのピークのみが好ましく形成される。例えば、ストークス径は、広範なショルダーを有するかまたは有さないピークに対して約0.1から約0.3ミクロンであることができる。該ストークス径は、0.3ミクロン超等、より大きいことができる。
【0028】
本発明の目的に対しては、カーボンブラックまたはフィラーの混合物は任意の比であることができる。例えば、異なる2種のカーボンブラックの混合物は、混合されたカーボンブラック(またはフィラー)の質量パーセントを基にして、50/50質量比であることができ、または、90/10から10/90または1/99から99/1等の任意の他の質量比であることができる。異なる3種以上のカーボンブラック(またはフィラー)が存在する場合には、混合物を形成する各成分に対する質量比は任意の量であることができる。混合物を形成する各成分の質量パーセンテージのバリエーションは、最終製品中での望ましい補強特性またはフィラー特性を基にすることができる。
【0029】
工業的および実験的なカーボンブラックの組み合わせを用い、JanzenおよびKraus(Janzen,J.,およびG.Kraus,”Effects of Particle Size and Structure Aggregate Size Distributions in Carbon Black Reinforcement of Elastomers,”International Rubber Conference, Brighton,May 1972,参照によりその全部がここに組み入れられる)は、2シリーズのカーボンブラック混合物を調製した。第1のシリーズでは、異なる比表面積を有するカーボンブラックが混合された。第2のシリーズでは、DBP吸収によって測定されるように同じ比表面積であるが異なる構造のカーボンブラックが混合された。彼らは、混合物が単一グレードのカーボンブラックと比べて若干低い耐摩耗性と若干低いヒステリシスとを有すると結論付けた。実験誤差の範囲内で、該混合物は異なる耐摩耗性/ヒステリシスのトレードオフを有さなかった。
【0030】
図1は、狭ASDの典型的なファーネスカーボンブラックを、大体同じ比表面積であるがより広ASDである他のファーネスカーボンブラックとの比較で示す。電子顕微鏡写真およびASD測定により、広ASDカーボンブラックは、凝集体の2つの別個の母集団から構成されていることが示される。一方のASDピークは小さい1次粒子および小さい凝集体から構成されるが、他方のピークはより大きい1次粒子およびより大きい凝集体から構成されている。本発明においては、適切な表面積および構造を有する2種の狭ASDカーボンブラックを混合することによって広ASDカーボンブラックの性能を再現することが可能である。
【0031】

本発明の例示であることが意図される以下の例によって本発明がさらに明確にされよう。以下の例で利用されるカーボンブラックの分析特性の測定および評価において、以下の試験手順を利用した。カーボンブラックのDBP(ジブチルフタレート吸着値)は、ASTM D2414に記載される手順に従って評価した。カーボンブラックのI2数(ヨウ素吸着数)は、ASTM D1510に従って評価した。カーボンブラックのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)吸収値は、ASTM試験手順D3765−85に従って評価した。カーボンブラックの着色強さ(色合い)は、ASTM試験手順D3265−85aに従って評価した。破砕カーボンブラックのCDBP(ジブチルフタレート吸着値)は、ASTM D3493−86に記載される手順に従って評価した。窒素表面積および統計的厚さ表面積(STSA)に関しては、これらの測定を以下のASTM D6556に準拠して行った。第1の実験において、カーボンブラックの混合物は工業スケールで製造してEPDM押出形材に対するUHF感受性を改善した。第2の実験では、カーボンブラックの実験室スケール混合物を製造して耐摩耗性/ヒステリシスのトレードオフを調べた。
【0032】
実験に使用されるすべてのカーボンブラックはキャボットコーポレーションが製造したものであり、Vulcan(登録商標)7Hは工業規格N234;Vulcan(登録商標)1436はヒステリシスを改善するために使用される広ASDカーボンブラック;Vulcan(登録商標)1391は高性能タイヤに対して使用される超高表面積カーボンブラック;Spheron(登録商標)5000Aは押出形材に対して使用されるウルトラクリーン低表面積カーボンブラック;Sterling(登録商標)SOは工業規格N550;M−XXXXはキャボットのテキサス州パンパのパイロット設備で製造された実験用カーボンブラックを指す(カーボンブラック商標名は、すべてキャボットコーポレーションの登録商標である)。カーボンブラックおよび混合物の分析特性は、ASTM法を用いて測定した。
【0033】
EPDMゴム中で試験される工業スケール混合物に対しては、低表面積カーボンブラックの加工中に高表面積カーボンブラックを製造ラインに添加することによって、混合カーボンブラックを製造した。EPDM試験配合を表1に示す。標準の実験室スケールゴム混合設備を用いた。UHF加熱時間は、業務用電子レンジ中で測定した。非分散領域は、Kontron Electronik GmbH(ミュンヘン,ドイツ)から入手可能なIBASコンパクトモデルイメージアナライザに基づいて独自システムを用いて測定した。
【0034】
SBRゴム中で試験される実験室スケール混合物に対しては、原料グレードを同時に転がして良好な混合を確保することによって、混合カーボンブラックを製造した。SBR試験配合を表2に示す。標準の実験室スケールゴム混合設備を用いた。動力学的特性は、アルファテクノロジーズのRPA機器によって測定した。耐摩耗性は、参照によりその全部がここに組み入れられる米国特許番号6,050,876に記載されるような独自の「キャボットアブレーダー」を用いて測定した。
【0035】
EPDM中の混合物−低面積カーボンブラックは、自動車押出形材に対してEPDMゴム中で一般的に使用される。低面積により、高いカーボンブラック挿入が可能になり、そして押出物に対する平滑な表面外観も与えられる。しかし、低面積カーボンブラックは通常UHFエネルギーに対する感受性が小さい。押出形材は、適切に硬化させるためにより多くの時間電子レンジ中に置くことを必要とするため、押出物を硬化させるために電子レンジを使用する製造者に対して、このより低い感受性によって、より低いラインスピードおよびより低い生産性がもたらされる。よって、より高面積のカーボンブラックはより大きい生産性を与えるが押出形材の表面外観が劣り、そして低面積カーボンブラックはより良好な品質の製品を与えるが生産性がより低いという性能のトレードオフがある。
【0036】
UHF感受性を改善するために少量の高表面積カーボンブラックをポリマー中で低面積ブラックと混合できるコンパウンダーもある。カーボンブラックがポリマー中に均一に分散されていない場合、このことにより高面積ブラックに富むゴムドメインおよび電子レンジ内の「ホットスポット」が生じる。カーボンブラックをゴムミキサーで別個に添加することに代えて、まずカーボンブラックを互いに混合することは1つの選択肢である。ホットスポットの回避に加えて、予めカーボンブラックを混合することによって、低面積ブラックが高面積ブラックに対する分散助剤として作用し、より良好な全体的な表面外観を与えるこことが可能になる。
【0037】
ある実験では、EPDM押出物に普通用いられるブラック中に少量の高面積カーボンブラックを混合した。混合物は、普通に90%のSpheron(登録商標)5000Aカーボンブラックおよび10%のVulcan(登録商標)1391カーボンブラックで形成された。表3は、出発ブラックの分析特性、90/10混合物の予想される特性、および試験中の混合物で測定された実際の特性を示す。混合物のDBPおよびCDBPの両者が出発カーボンブラックの特性から予想されるよりも大幅に低いことは興味深い。これは、より高表面積のカーボンブラックの凝集体が、より低表面積のカーボンブラックのボイド内に入り込むためである可能性がある。
【0038】
図2は、混合物の性能を、「元の」カーボンブラックSpheron(登録商標)5000Aカーボンブラックと比較して、および、押出物に使用される典型的なより高面積のカーボンブラックグレードSterling(登録商標)SO(N550)カーボンブラックとも比較して示す。該図は、Spheron(登録商標)5000Aカーボンブラックが、低非分散領域として示されるように優れた分散/表面外観を与えるが、より長い加熱時間という犠牲があることを示す。逆に、Sterling(登録商標)SOカーボンブラックは迅速な加熱を与えるが非分散領域が比較的多い。Sterling(登録商標)SOカーボンブラックで製造したEPDM形材に対する表面欠陥カウントもまた、Spheron(登録商標)5000Aカーボンブラックで製造したものよりも高い。
【0039】
混合物の結果は、加熱時間と分散との間のトレードオフは線形ではないことを示す。事実、分散品質への影響が殆どまたは全くなく加熱時間を顕著に低減させることが可能である。良好な混合物では、Spheron(登録商標)5000Aカーボンブラックが、少量の高表面積グレードに対する分散助剤として作用し、非分散領域および表面欠陥を防ぐことができる。同時に、カーボンブラックの良好な混合物は、EPDMゴム中での良好な混合を確保し、これにより硬化オーブン内のホットスポットが防止されることになる。
【0040】
この単純な例から、カーボンブラック混合物が、単一のカーボンブラックよりも良好な性能特性の組み合わせを提供できる用途があることが示される。
【0041】
タイヤトレッド配合物中の混合物−より複雑な問題は、タイヤコンパウンド中でのトレッドウエアとヒステリシスとのトレードオフである。この問題を調べるための第1ステップとして、カーボンブラックの一連の2元および3元の混合物を製造した。目的は、これらの混合物の性能を2つの基準カーボンブラックと比較することであった。第1のブラックVulcan(登録商標)7H(N234)カーボンブラックは、狭い凝集サイズ分布を有する典型的なカーボンブラックである。第2のブラックVulcan(登録商標)1436カーボンブラックは、より広い凝集サイズ分布を有し、そしてトレッドウエアとヒステリシスとのより良好なバランスを示す。混合によってASDを広げることが通常のファーネスカーボンブラックプロセスで製造される広ASDブラックと同じトレッドウエア/ヒステリシスの利点を与えるかを見出すために実験を設計した。
【0042】
表4は、トレッドウエア/ヒステリシス実験に使用される「原料グレード」の分析特性を示す。各混合物は、Vulcan(登録商標)7HカーボンブラックまたはVulcan(登録商標)1436カーボンブラックのいずれかのSTSAおよびCDBPと一致するように設計した。混合で生じる、CDBPの下降および色合いの程度の低下に起因して、すべての混合物が望ましい狙いの分析特性を有したわけではなかった。表5は、混合物のCDBPがその原料グレードのCDBPと比較して極めて低かった典型的な例を示す。表6は、すべてのカーボンブラック混合物の混合比および測定された分析特性を示す。
【0043】
図3は、これらの混合物のトレッドウエア/ヒステリシス性能を示す。純粋な原料グレードは、トレッドウエアとヒステリシスとの間に典型的なトレードオフを示す。興味深いことに、該混合物は、典型的なトレードオフラインの両側に位置する。すなわち、より良好な性能を有する混合物もあるがより悪い性能を有する混合物もある。相違は小さいが、これらは測定誤差を超えている。混合物は異なるトレッドウエア/ヒステリシス関係を真に有する。しかし、混合物のいずれも、基準グレードVulcan(登録商標)1436カーボンブラックと同じ低ヒステリシスを有さない。単一ファーネス反応器内で製造される広ASDカーボンブラックの凝集サイズ分布を再現する混合物を適切な混合で実現できる。
【0044】
性能が劣る混合物に対しては、測定CDBPと予測CDBPとの相違が大きい。性能が良好な混合物に対して、その逆が当てはまる。図4は、混合物に対して測定されたCDBPを、原料グレードの線形添加から予測したCDBPと比較して示す。混合物のうち幾つかは、原料グレードから予測されたよりも大幅に低いCDBPを有する。図5は、トレッドウエア/ヒステリシス性能が混合物の測定CDBPと良く相関していることを示す(混合物はすべて2つの特定の目標グレードを目的としたため、予測したものからのCDBPの逸脱は混合物の測定CDBPと極めて良く相関する)。
【0045】
カーボンブラックを混合する際、混合物の分析特性、特にDBPおよびCDBP、ならびに色合いの程度の低下、は線形の混合法則には従わないと思われる。
【0046】
混合カーボンブラックで製造されたコンパウンドのゴム特性は、原料グレードの分析特性からではなくカーボンブラック混合物の分析特性から予測できる。
【0047】
特定の用途では、カーボンブラックの混合物は、単一グレードと比較して改善された性能を与えることができる。これは、性能特性がカーボンブラック分散品質とトレードオフを有する場合に特に当てはまる。表中、ヨウ素数はmg/g単位、色合いは%単位、DBPおよびCDBPはcc/100g単位、BET(N2)表面積はm2/g単位、STSAはm2/g単位である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

【0053】
【表6】

【0054】
出願人は特にこの開示におけるすべての引用文献の全記載を組み入れる。さらに、量、濃度もしくは他の値またはパラメータが範囲、好ましい範囲、または上端の好ましい値および下端の好ましい値の列挙のいずれかとして与えられる場合、このことは、範囲が別個に開示されているか否かにかかわらず、任意の範囲上限または好ましい値および任意の範囲下限または好ましい値の任意の対から形成されるすべての範囲を具体的に開示すると理解されるべきである。ここで数値範囲が列挙されている箇所では、特記がない限り該範囲はそれらの端点および該範囲内のすべての整数および端数を含むことが意図される。本発明の範囲は、数値を規定する際に列挙される具体的な値に限定されることは意図されない。
【0055】
本発明の他の態様はここに開示される本明細書および本発明の実施を考慮して当業者に明らかとなろう。本明細書および例は例示のみと解釈され本発明の真の範囲および理念は特許請求の範囲およびその均等のものにより示されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、典型的な狭ASDカーボンブラック、および典型的な広ASDカーボンブラックに対するTEM写真および凝集サイズ分布である。
【図2】図2は、Spheron(登録商標)5000AカーボンブラックおよびVulvan(登録商標)1391カーボンブラックの工業用混合物に対する感受性および分散品質を示すグラフである。
【図3】図3は、混合カーボンブラックと原料グレードおよび基準に対するトレッドウエア対ヒステリシス(Treadwear versus Hysterisis)を示すグラフである。
【図4】図4は、混合カーボンブラックの測定CDBPを、原料グレードから予測されるCDBPと比較して示す(表5における値)グラフである。
【図5】図5は、混合カーボンブラックのトレッドウエア/ヒステリシス性能 対 混合物の測定CDBPを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる2種以上のフィラーの混合物であって、単峰型細孔サイズ分布および/または単峰型凝集サイズ分布を有する、混合物。
【請求項2】
異なる2種以上のカーボンブラックを含むカーボンブラックの混合物であって、単峰型細孔サイズ分布および/または単峰型凝集サイズ分布および/または単峰型ストークス径分布である混合物。
【請求項3】
該混合物が単峰型細孔サイズ分布を有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項4】
該混合物が単峰型凝集サイズ分布を有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項5】
該混合物が単峰型ストークス径分布を有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項6】
該混合物は、ストークス径が約0.1から約0.3ミクロンである単峰型ストークス径分布を有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項7】
該異なる2種以上のカーボンブラックが各々異なるDBPを有し、かつ該混合物が、各々個別のDBPおよび存在する各カーボンブラックの量を基にした存在する各カーボンブラックの平均DBPよりも低いDBPを有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項8】
該異なる2種以上のカーボンブラックが、各々異なるDBPを有し、かつ該混合物が、存在する各々個別のカーボンブラックのいずれのDBPよりも低いDBPを有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項9】
該異なる2種以上のカーボンブラックが各々異なる破砕DBPを有し、かつ該混合物が、各々個別の破砕DBPおよび存在する各カーボンブラックの量を基にした存在する各カーボンブラックの平均破砕DBPよりも低い破砕DBPを有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項10】
該異なる2種以上のカーボンブラックが各々異なる破砕DBPを有し、かつ該混合物が、存在する各々個別のカーボンブラックのいずれの破砕DBPよりも低い破砕DBPを有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項11】
該単峰型細孔サイズ分布および/または単峰型凝集サイズ分布が広範なショルダーを有する、請求項1に記載の混合物。
【請求項12】
該単峰型細孔サイズ分布および/または単峰型凝集サイズ分布が広範なショルダーを有する、請求項2に記載の混合物。
【請求項13】
本質的に異なる2種以上のカーボンブラックからなる、請求項2に記載の混合物。
【請求項14】
異なる2種以上のカーボンブラックからなる、請求項2に記載の混合物。
【請求項15】
請求項1に記載の混合物を製造する方法であって、2種以上のフィラーを粉砕によって共に混合することを含む方法。
【請求項16】
該混合が高エネルギー粉砕によって実現される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
該混合が、湿式粉砕によって実現される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
該粉砕が乾式粉砕によって実現される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
2種以上のカーボンブラックを含む製品を製造する方法であって、異なる該2種以上のカーボンブラックの混合物を調製することと、次いで製品を形成する残りの成分の1種以上に該混合物を導入することと、を含む方法。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかに記載の混合物を含む配合物。
【請求項21】
少なくとも1種のポリマーと、請求項1〜14のいずれかに記載の混合物とを含むポリマー製品。
【請求項22】
少なくとも1種のエラストマーと、請求項1〜14のいずれかに記載の混合物とを含むエラストマー製品。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれかに記載の混合物を少なくとも含むタイヤまたはその部品を含むタイヤまたはその部品。
【請求項24】
水性または非水性の溶媒と、請求項1〜14のいずれかに記載の混合物とを含むコーティングまたはインク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−545823(P2008−545823A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512401(P2008−512401)
【出願日】平成18年5月16日(2006.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2006/018724
【国際公開番号】WO2006/124774
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】