説明

カーボン材料の分散方法及びカーボン材料製造装置

【課題】分散性が向上したカーボン材料はその適用の幅が広がるので、大量にしかも繊維の凝集が少ないカーボン材料を効率よく製造することができるカーボン材料の製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明に係るカーボン材料の分散方法は、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕方法により高分散化するものであり、これにより流体の乱流エネルギーを用いることで、カーボン材料を構成するグラフェンシート構造までを破壊することなく、凝集した繊維をバラバラにとき解くことになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノカーボン材料の分散性を向上させたカーボン材料の分散方法及びカーボン材料製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。このカーボンナノチューブには、黒鉛シートが円筒状に閉じた多層構造を有する多層ナノチューブと、黒鉛シートが円筒状に閉じた単層構造を有する単層ナノチューブとがある。
【0003】
一方の多層ナノチューブは、1991年に飯島により発見された。すなわち、アーク放電法の陰極に堆積した炭素の塊の中に、多層ナノチューブが存在することが発見された(非特許文献1)。その後、多層ナノチューブの研究が積極的になされ、近年は多層ナノチューブを多量に合成できるまでにもなった。
【0004】
これに対して、単層ナノチューブは概ね0.4〜10ナノメータ(nm)程度の内径を有しており、その合成は、1993年に飯島とIBMのグループにより同時に報告された。単層ナノチューブの電子状態は理論的に予測されており、ラセンの巻き方により電子物性が金属的性質から半導体的性質まで変化すると考えられている。従って、このような単層ナノチューブは、未来の電子材料として有望視されている。
【0005】
単層ナノチューブのその他の用途としては、ナノエレクトロニクス材料、電界電子放出エミッタ、高指向性放射源、軟X線源、一次元伝導材、高熱伝導材、水素貯蔵材等が考えられている。また、表面の官能基化、金属被覆、異物質内包により、単層ナノチューブの用途はさらに広がると考えられている。
【0006】
従来、上述した単層ナノチューブは、鉄、コバルト、ニッケル、ランタン等の金属を陽極の炭素棒に混入し、アーク放電を行うことにより製造されている(特許文献1)。
しかし、この製造方法では、生成物中に、単層ナノチューブの他、多層ナノチューブ、黒鉛、アモルファスカーボンが混在し、収率が低いだけでなく、単層ナノチューブの糸径・糸長にもばらつきがあり、糸径・糸長の比較的揃った単層ナノチューブを高収率で製造することは困難であった。
【0007】
なお、カーボンナノチューブの製造方法としては、上述したアーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などが提案されている(特許文献2乃至4)。
【0008】
しかしながら、これらの文献等に開示する製造方法はいずれも実験室又は小規模レベルの製造方法であり、特に炭素材料の収率が低く、しかも純度が低い、という問題がある。
【0009】
そこで、本出願人は流動層反応方法を用いて連続的に大量生産することができるナノ単位の炭素材料であるカーボンナノファイバの製造装置及び方法を先に提案した(特許文献5)。
【0010】
【非特許文献1】S,Iijima,Nature,354,56(1991)
【特許文献1】特開平06−280116号公報
【特許文献2】特許第3100962号公報
【特許文献3】特公表2001−520615号公報
【特許文献4】特開2001−139317号公報
【特許文献5】特開2004−76197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
先に提案した流動層反応方法によるナノ単位のカーボン材料の製造においては、流動材と触媒とを兼用してなる流動触媒は一次粒子を造粒して粗粒化した二次粒子を用いることで、気泡上昇型の流動層反応機を形成し、触媒粒子の反応時間を十分に取るようにしているが、一次粒子の造粒帯である二次粒子内部にカーボン材料が生成するため、生成の進行と共に繊維の凝集が進み分散性が低下するという問題がある。
【0012】
近年炭素材料の種々の用途が拡大しているが、分散性が向上したカーボン材料はその適用の幅が広がるので、大量にしかも繊維の凝集が少ないカーボン材料を効率よく製造することができる製造方法及び装置の出現が望まれている。
【0013】
本発明は、上記の事情に鑑み、分散性が向上したカーボン材料はその適用の幅が広がるので、大量にしかも繊維の凝集が少ないカーボン材料を効率よく製造することができるカーボン材料の分散方法及びカーボン材料製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕方法により高分散化することを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、前記物理的解砕方法が粒子と粒子、粒子とその他の物質のいずれかあるいは両方の衝突を利用することを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0016】
第3の発明は、第1の発明において、前記物理的解砕方法が流体の乱流エネルギーにより発生する衝突を利用することを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0017】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記物理的解砕方法が湿式法又は乾式法であることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0018】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記物理的解砕方法を凝集してなるカーボン材料の精製の前後のいずれかにおいて行なうことを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0019】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、凝集してなるカーボン材料が、活性成分を含む二次粒子からなる触媒により成長されてなることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0020】
第7の発明は、第6の発明において、前記二次粒子からなる触媒が、活性成分を担持してなる担体からなる一次粒子が集合又は凝集されたものであると共に、その二次粒子の粒子径が200μm〜5mmであることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0021】
第8の発明は、第7の発明において、前記二次粒子からなる触媒の比表面積が、100m2以上であることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0022】
第9の発明は、第7又は8の発明において、前記担体の(小さい細孔径)/(大きい細孔径)比が、20以下であることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0023】
第10の発明は、第9の発明において、前記小さい細孔径が30nm以下であると共に、大きい細孔径が30以上であることを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0024】
第11の発明は、第7の発明において、前記活性金属触媒が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、W、Moのいずれか一種又はこれらの組合せであると共に、前記担体が、アルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種又は二種以上を含むことを特徴とするカーボン材料の分散方法にある。
【0025】
第12の発明は、カーボン材料を製造する流動槽と、前記流動槽から抜き出されたカーボン材料と流動材からなる凝集体を精製する精製装置と、前記精製装置から精製された凝集体を乾燥する乾燥装置と、前記乾燥した凝集体を粉砕する解砕装置とを具備することを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置にある。
【0026】
第13の発明は、第12の発明において、前記解砕装置がジェットミル又はボールミルであることを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置にある。
【0027】
第14の発明は、第12又は13の発明において、前記流動槽に供給する流動触媒を供給する流動触媒供給装置を具備することを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置にある。
【0028】
第15の発明は、第14の発明において、前記流動触媒の粒子径が200μm〜5mmであることを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置にある。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕により高分散化することにより分散性の良好なカーボン材料を提供することができる。特に、物理的解砕手段として流体の乱流エネルギーにより発生する衝突を利用することで解砕を効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態及び実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下実施形態及び記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
[発明の実施形態]
【0031】
以下、高い分散化を図ることができる本発明に係るカーボン材料の分散方法について説明する。
本発明に係るカーボン材料の分散方法は、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕方法により高分散化するものである。
【0032】
ここで、本発明で物理的解砕方法としては、流体の乱流エネルギーにより発生する衝突を利用するものであることが特に好ましい。これは、例えば分散性を向上する一般的な超音波分散方法によると、カーボン材料を構成するグラフェンシートが壊れ、カーボン材料として損傷を受けることになるからである。よって、流体の乱流エネルギーを用いることで、カーボン材料を構成するグラフェンシート構造までを破壊することなく、凝集した繊維をバラバラにとき解くようにしている。
【0033】
また、物理的解砕手段としては、カーボン材料を溶媒に分散させた状態で解砕する湿式解砕法又は乾式解砕法のいずれを用いるようにしてもよい。
【0034】
ここで、湿式解砕法としては、ボールミル法、ナノマイザ法を挙げることができる。
また、乾式解砕法としては、ジェットミル法、ボールミル法を挙げることができる。
【0035】
前記解砕方法は、凝集してなるカーボン材料を精製する前後のいずれかにおいて行なうようにしてもよい。
本発明で精製とは、担体に担持された活性成分及び担体からカーボン材料を分離することをいう。前記精製法としては、例えば酸処理を例示することができる。
【0036】
ここで、凝集してなるカーボン材料は、活性成分を含む二次粒子からなる触媒により成長されてなるものである。また、前記二次粒子からなる触媒としては、活性成分を担持してなる担体からなる一次粒子が集合又は凝集されたものであると共に、その二次粒子の粒子径が200μm〜5mmである。
【0037】
ここで、一次粒子が集合又は凝集されたものを得るには一次粒子をバインダーで造粒したものや、一次粒子を加圧装置で加圧して成形体を得た後、所定粒径となるように整粒して得られるものをいう。より好適には400μm〜2.0mmが好ましい。
【0038】
また、前記二次粒子からなる触媒の比表面積としては、カーボン材料の収率を向上させる点から100m2以上であることが収率の向上から望ましい。
【0039】
また、担体は無数の細孔が存在するので、それらの細孔の大きさにおいて、特に前記担体の(小さい細孔径)/(大きい細孔径)比が、20以下、好ましくは10以下とするのがよい。これは、前記比率が20を超えると、当該担体上に成長するカーボン材料がより強く絡み合い分散性が低下するからである。
この結果、前記比率が20を超える場合には、例えば図8−2に示すように、担体10の狭い径(φ)の細孔11内において活性金属12が分散し、該活性金属12からナノカーボン材料13が生長する結果、ナノカーボン材料13がその生長の際に絡まったものとなる。このような絡まったナノカーボン材料13は、例えば溶液、樹脂等における分散性が良好とはならないものとなる。
【0040】
これに対し、前記比率が20以下、好ましくは10以下の場合には、図8−1に示すように、担体10の平坦なところにおいて活性金属12が分散し、該活性金属12からナノカーボン材料13が生長する結果、ナノカーボン材料13が全て真っ直ぐに生長したものとなる。この結果、例えば溶液、樹脂等における分散性においても良好なものとなる。
【0041】
一例として前記小さい細孔径の代表径が5nmであり、大きい細孔径の代表径が50nmの場合においては、図9−1に示すように、その比率が5以下、好ましくは3以下、より好ましくは1以下とするのがよい。
【0042】
また他の一例として前記小さい細孔径の代表径が5nmであり、大きい細孔径の代表径が100nmの場合においては、図9−2に示すように、その比率が10以下、好ましくは8以下、より好ましくは3以下とするのがよい。
これは、5nmの細孔に対して、相対的に50nm、100nmと細孔が大きくなるのど分散性が高くなり、好ましい。
なお、試験は樹脂(水溶性高分子樹脂)1に対し、ナノカーボン材料を0.4の割合で混入し、四探針法により抵抗計測した。
【0043】
ここで、前記小さい細孔径が30nm以下、好適には0.1〜30nmの範囲であり、大きい細孔径が30nm以上、好適には30〜200nmの場合とする場合には、図9−1又は9−2に示すように、その比率が20以下、好ましくは10以下とするのがよいことが判明する。
なお、細孔径分布が小さい場合には、30nmを境として大小を決定するものではなく、例えば20nm又は15nm又は10nmを境として大小を決定するようにしてもよい。
【0044】
また、本発明にかかるナノカーボン材料は、ナノカーボン材料が孤立しないで、複数束ねた状態で存在するバンドルカーボン材料の割合は、1〜95%、より好適には1〜80%であることが望ましい。なお、本発明でバンドルカーボン材料とは2本以上のカーボン材料が集合したものであり、集合本数が少ないものから多いものまで含まれる。
【0045】
本発明のカーボン材料の構造は、繊維状、粒状、チューブ状構造のいずれかであることが好ましい。
ここで、粒状は炭素六角網面一枚から形成されたものからなる黒鉛層からなる結晶子の集合によって形成したものである。
前記繊維状構造は、炭素六角網面が積層して、その積層方法が繊維軸であるもの、所謂プレートリット(Platelet)積層の斜め方向(1〜89°)が繊維軸であるもの、所謂ヘリングボーン(Herringbone)又はフィシュボーン(Fishbone)構造、積層方向に対して垂直に繊維軸があるもの、所謂のチューブラ(Tubular)、リボン(Ribbon)またはパラレール(Parallel)のいずれかの構造である。なお、ヘリングボーン(Herringbone)構造は、その斜めが対になっており、その双方の傾きは等しくなくともよい。
【0046】
本発明のカーボン材料は、単層又は二層構造であることが望ましい。
ここで、単層の場合にはその濃度は、20〜99%、より好ましくは85〜99%である。また、単層と二層とを併せた濃度は、20〜99%、より好ましくは75〜99%である。
【0047】
さらには、三層以上の多層構造の炭素六角網面の割合が1.3〜30%、より好ましくは1.3〜15%からなるチューブ状であることが好ましい。
【0048】
ナノカーボン材料の径は0.4nm以上とするのが好ましいが、好適には0.4〜3.5nm、より好適には1.5〜3.5nmの直径を有するものが好ましい。また、1.5〜3.5nmの直径を有するものの割合は85%とするのがよい。
【0049】
熱特性を有するカーボン材料の生成法は、特に制限はなく、目的に応じて公知の方法の中から適宜選択することができる。例えば、CVD法(化学的気相成長法)、等が好適に挙げられる。
CVD法としては、例えば、熱CVD、hot filament CVD、plasma enhanced CVD(plasma assisted CVD、 plasma CVDとも呼ばれる)、 plasma enhanced hotfilament CVD、laser enhanced CVD(laser CVDとも呼ばれる)が挙げられる。
【0050】
前記活性金属触媒が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、W、Moのいずれか一種又はこれらの組合せであるものを例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
前記酸化物担体は、例えばアルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム等のアルミニウム化合物、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等のカルシウム化合物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム等のアパタイト系を例示することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらを二種以上含むものであってもよい。
ここで、アパタイトとは、M102+(Z5-4)62-の組成をもつ鉱物でM、ZO4、Xに対して次のような各元素が単独あるいは2種類以上の固溶状態で入るものをいう。
M:Ca、Pb、Ba、Sr、Cd、Zn、Ni、Mg、Na、K、Fe、Alその他
ZO4:PO4、AsO4、VO4、SO4、SiO4、CO3
X:F、OH、Cl、Br、O、I
【0052】
また、担体としては、タルク(MgAl23)、その他鉱物類、ゼオライト、メソポーラスシリケート等のメソポーラス材料を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、前記活性金属と前記担体との相互作用により、担体の表面に両者の拡散層を形成し、該拡散層によって前記活性金属触媒の一部を覆い、前記活性金属触媒の露出部分を微細化したものとしてもよい。
この場合には、微細化された活性金属部分からのみナノカーボン材料が生長することになるので、単層のナノカーボン材料のみを良好に製造することもできる。
【0054】
次に、反応器として流動層反応器を用いた場合の一例について図1を参照しつつ説明する。
本実施形態では、活性成分(鉄)を担持した担体(酸化マグネシウム)からなる一次粒子を圧密した所定粒径の二次粒子のナノカーボン材料製造用触媒を、触媒作用と流動作用とを兼用とする流動触媒を用いている。
図1に示すように、本実施形態にかかるナノカーボン材料の製造システム10は、ナノカーボン材料の製造装置50と、前記ナノカーボン材料を製造装置から回収する回収装置52と、該回収されたナノカーボン材料から触媒を分離する精製装置55と、精製されたカーボン材料純品56を乾燥する乾燥装置61と、乾燥後の凝集体62を解砕して解砕品63する解砕装置64とを具備するものである。
【0055】
具体的には、ナノカーボン材料の製造システムは、内部に流動材である流動触媒21を充填した流動層反応部23−1と、炭素源14を前記流動層反応部23−1内に供給する原料供給装置41と、流動触媒21を前記流動層反応部23−1内に供給する流動触媒供給装置42と、前記流動層反応部23−1内の流動材である流動触媒21が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部23−2と、前記流動層反応部23−1に導入し、内部の流動触媒21を流動させる流動ガス22を供給する流動ガス供給装置43と、流動層反応部23−1を加熱する加熱部23−3と、該フリーボード部23−2から排出される排ガスを処理する排ガス処理装置58と、前記流動層反応部23−1からカーボン材料生成物24を回収ライン51により抜出して回収する回収装置53と、前記回収装置53で回収されたナノカーボン材料生成物24に付着している触媒を除去し、カーボン材料純品56とする精製装置55と、精製されたカーボン材料純品56を乾燥する乾燥装置61と、乾燥後の凝集体62を解砕して解砕品63する解砕装置64とを具備するものである。
【0056】
前記流動層反応部23−1の流動層反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
本実施形態では、流動層反応部23−1とフリーボード部23−2と加熱部23−3とから流動層反応器23を構成している。また、フリーボード部23−2は、流動層反応部23−1よりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0057】
前記原料供給装置41より供給される原料ガスである炭素源14は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2の他、メタン、エタン、プロパン及びヘキサン等のアルカン類、エチレン、プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等の含酸素官能基を有する有機化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸素濃度制御のため、含酸素炭素源CO、CO2、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等と、酸素を含まない炭素源とを2つ以上組合わせて供給することもできる。
【0058】
この炭素源14は、流動層反応部23−1内にガス状態で供給し、流動材である流動触媒21による攪拌により均一な反応が行われ、ナノカーボン材料を成長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガス22として流動ガス供給装置43により不活性ガスを流動層反応部23−1内に導入している。
【0059】
そして、300℃〜1300℃の温度範囲、より好ましくは400℃〜1200℃の温度範囲とし、メタン等の炭素原料を不純物炭素分解物の共存環境下で一定時間触媒に接触することによってナノカーボン材料を合成している。
【0060】
前記回収装置52としてサイクロン以外には、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0061】
また、前記回収装置52で分離されたナノカーボン材料生成物(微粒)24−1は、付着した触媒を分離する例えば酸処理による精製装置55により、ナノ単位のナノカーボン材料(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等)純品56として回収するようにしている。
【0062】
また、前記精製装置55で精製されたカーボン材料純品56は、乾燥装置61で乾燥した後解砕装置で凝集した繊維を分離し、カーボン材料解砕品63を得るようにしている。
【0063】
図2に解砕装置64の一例を示す。図2に示すように、解砕装置64は、凝集体62を投入する投入口70を有し、圧縮空気71を装置本体72内に供給する圧縮空気供給部73と、圧縮空気71をジェット気流74とするベンチュリーノズル75と、装置本体72の周囲に設けられ、内部に粉砕流を供給する粉砕ノズル76とを具備するものである。装置本体72内では、ジェット気流74に同伴される凝集体62を粉砕ノズル76からの粉砕流により粉砕される粉砕ゾーン77及び分級ゾーン78が形成され、中心の出口部79から分級されたカーボン材料解砕品排出されるようになっている。
【0064】
前記装置本体72内では、ジェット気流により搬送される凝集体62が相互の衝突による解砕がなされることになる
【0065】
図3は凝集体の粒径分布を示す。図4は図2の装置により解砕された解砕品の粒径分布を示す。
解砕条件は、圧縮空気供給部73からの押し込み圧力(ドライエアー)を0.8Mpa、粉砕ノズル76からの粉砕圧力(ドライエアー)を0.7Mpa、凝集体62の供給速度を10〜20g/時間とした。
この解砕により、供給された100μmが中心とした凝集体を4.5μm以下の解砕品とすることができることが確認された。
【0066】
図5はその解砕品のTG曲線及びDTG曲線を示す。
【0067】
また、比較として、超音波ホモジナイザ(3W、60分)による凝集体の解砕をおこなった。図6は超音波ホモジナイザにより解砕された解砕品の粒径分布を示す。また、その解砕品のTG曲線及びDTG曲線を図7に示す。
【0068】
図5に示すように、本発明品のTG曲線は約400〜500℃付近において一気に降下しており、燃焼がスムースに進行しているのを示す。
この結果を裏付けるように、DTG曲線においては、約500℃近傍に鋭い幅の狭いピークを有するDTG曲線を持っている。
【0069】
一方、図7の比較品のTG曲線は約300〜500℃の間においてなだらかに降下しており、徐々に燃焼が進行しているのを示す。この結果を裏付けるように、DTG曲線においては、DTG曲線が幅の広いピークであると共に、そのピークはその2つ山を有しており、二段階の燃焼が進行しているのが確認される。ここで400℃近傍の部分は、グラファイトカーボンの分解物であり、その右肩部分がナノカーボン材料である。
【0070】
このように、圧密された二次粒子を流動触媒とした場合において、二次粒子を形成する一次粒子の活性成分から成長するナノカーボン材料が成長して無数に絡み合っているが、本発明の解砕装置により、絡み合いがほどかれることになる。
【0071】
本発明によれば、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕により高分散化することにより分散性の良好なカーボン材料を提供することができることになる。特に、図2に示すような物理的解砕手段であるジェットミルを用いて流体の乱流エネルギーにより発生する衝突を利用することで凝集体の解砕を効率よく行うことができる。
【0072】
この結果製品として、分散性が向上すると共に純度が極めて高いナノカーボン材料の大量生産化を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明に係るカーボン材料の分散方法は、凝集してなるカーボン材料を物理的解砕により高分散化することにより分散性が良好なものとなり、分散性の向上したナノカーボン材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】ナノカーボン材料の製造システムの概略図である。
【図2】解砕装置の概略図である。
【図3】凝集体の粒径分布図である。
【図4】本発明品の解砕品の粒径分布図である。
【図5】本発明品のTG/DTG曲線図である。
【図6】比較品の解砕品の粒径分布図である。
【図7】比較品のTG/DTG曲線図である。
【図8−1】結晶性が高い担体を用いた場合のナノカーボンの生長結果を示す図である。
【図8−2】結晶性が良好ではない担体を用いた場合のナノカーボンの生長結果を示す図である。
【図9−1】(小さい細孔径:5nm)/(大きい細孔径:50nm)比と体積抵抗率との関係を示す図である。
【図9−2】(小さい細孔径:5nm)/(大きい細孔径:100nm)比と体積抵抗率との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 ナノカーボン材料の製造システム
50 ナノカーボン材料の製造装置
52 回収装置
55 精製装置
56 カーボン材料純品
61 乾燥装置
62 凝集体
63 解砕品
64 解砕装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集してなるカーボン材料を物理的解砕方法により高分散化することを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記物理的解砕方法が粒子と粒子、粒子とその他の物質のいずれかあるいは両方の衝突を利用することを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項3】
請求項1において、
前記物理的解砕方法が流体の乱流エネルギーにより発生する衝突を利用することを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記物理的解砕方法が湿式法又は乾式法であることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記物理的解砕方法を凝集してなるカーボン材料の精製の前後のいずれかにおいて行なうことを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
凝集してなるカーボン材料が、活性成分を含む二次粒子からなる触媒により成長されてなることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記二次粒子からなる触媒が、活性成分を担持してなる担体からなる一次粒子が集合又は凝集されたものであると共に、その二次粒子の粒子径が200μm〜5mmであることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項8】
請求項7において、
前記二次粒子からなる触媒の比表面積が、100m2以上であることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項9】
請求項7又は8において、
前記担体の(小さい細孔径)/(大きい細孔径)比が、20以下であることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記小さい細孔径が30nm以下であると共に、大きい細孔径が30以上であることを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項11】
請求項7において、
前記活性金属触媒が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、W、Moのいずれか一種又はこれらの組合せであると共に、
前記担体が、アルミナ、シリカ、アルミン酸ナトリウム、ミョウバン、リン酸アルミニウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムのいずれか一種又は二種以上を含むことを特徴とするカーボン材料の分散方法。
【請求項12】
カーボン材料を製造する流動槽と、
前記流動槽から抜き出されたカーボン材料と流動材からなる凝集体を精製する精製装置と、前記精製装置から精製された凝集体を乾燥する乾燥装置と、前記乾燥した凝集体を粉砕する解砕装置とを具備することを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置。
【請求項13】
請求項12において、
前記解砕装置がジェットミル又はボールミルであることを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置。
【請求項14】
請求項12又は13において、
前記流動槽に供給する流動触媒を供給する流動触媒供給装置を具備することを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記流動触媒の粒子径が200μm〜5mmであることを特徴とする流動槽によるカーボン材料製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【公開番号】特開2007−230816(P2007−230816A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53630(P2006−53630)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】