説明

ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置

【課題】ガイドローラーを介して移送される超伝導テープの損傷を少なく、長尺のテープを変形なく蒸着する、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置を提供する。
【解決手段】真空チャンバーの内部からテープを引き出す供給リール10と、供給リール10から離隔して位置しテープを移送しながら超伝導層を真空蒸着する移送蒸着部100と、前記移送装置部から離隔して位置し真空蒸着されたテープを収去するように回転する収去リール20とからなり、移送蒸着部100は、テープを外周面の一側に多数回巻きながらテープを移送するドラム30と、ドラム30から離隔して設けられ外周面に一定の間隔で設けられた溝と突部を有する多数のローラーからなり、多数のローラーは、テープ及び突部の幅の分だけはずれて形成されるようにドラム30の回転軸に対して一定の角度傾いており、外周面にテープが巻かれるように設けられたガイドローラー110とを含んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置に係り、特に、ガイドローラーを介して移送される超伝導テープの損傷を少なくし、長尺のテープを変形なく蒸着することができる、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、超伝導物質は、電力応用機器分野の送電線、モーター、多用途パンケーキコイル、発電機、磁石などに用いるためのものであり、このためには超伝導物質の交流損失を最小化するように超伝導テープを柔軟性のある数百メートル以上の超伝導テープの形にして使用した方がより優れた効果を持つと知られている。
【0003】
2007年8月13日に登録された特許文献1には、長尺テープ蒸着装置が開示されている。
【0004】
図1は従来の技術に係る長尺テープ蒸着装置の要部を示す斜視図である。
【0005】
図1に示すように、長尺テープ蒸着装置は、真空チャンバー10の内部に外周面に沿って螺旋状のガイド溝が設けられ、前記ガイド溝に沿ってテープ20が巻かれているドラム30と、前記ドラム30の長手方向に対して垂直な方向に離隔してドラム30の長手方向の中心に設けられた蒸着ソース40と、前記ドラム30の一側に位置し、テープ20を持続的に供給する供給リール50と、蒸着されたテープを反対側で収去する収去リール60と、前記ドラム30の円周面に沿って円筒状に多数設けられ、ドラム30のガイド溝に沿ってテープ20を移送するように前記ドラムの円周面の表面から若干突出しているスリップローラー100とから構成される。
【0006】
このような構成によって、長尺テープ蒸着装置は、テープ20が前記スリップローラー100の近くでやや離れるようにして、テープ20がガイド溝に接触して移送されるのではなく、離隔して滑るかの如く移送されるようにすることにより、接触抵抗を減らすことができるという利点がある。
【0007】
ところが、既存のドラムを用いた長尺テープ蒸着装置は、前記スリップローラーを用いても、ドラムとスリップローラーの形状および接触角によってテープがそれぞれ異なる張力を受けるので、相異なる割合でテープが伸びたり変形したりし、蒸着の際にそれぞれ受ける張力によって異なる熱膨張収縮の差異によりテープが伸びたり変形したりするという問題点がある。
【0008】
また、既存の長尺テープ装着装置は、移送される超伝導テープの長さがドラムの直径に依存するため、蒸着する超伝導テープの長さが長くなると、直径の大きいドラムで交替しなければならず、テープが多く巻かれるほどベアリングの摩擦によってテープへの張力が増加してテープが変形するおそれがあるという問題点がある。
【0009】
【特許文献1】韓国特許第0750654号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的とするところは、熱を加えて蒸着する際に、一定の張力を維持しながら超伝導層を蒸着することにより、テープの熱膨張及び収縮の差異からのテープの張力不均一によるテープの変形を防止する、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、テープが前記ドラムおよびガイドローラーに多く巻かれても張力が増加しないため、長尺のテープを破損なく蒸着することができ、テープの長さが増加してもドラムの交替なしで蒸着することができる、ガイドローラーを備えた長尺テープ用
蒸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、真空チャンバーの内部からテープを引き出して供給するように回転する供給リールと、前記供給リールから離隔して位置し、テープを移送しながら超伝導層を真空蒸着する移送蒸着部と、前記移送装置部から離隔して位置し、真空蒸着されたテープを収去するように回転する収去リールとからなり、テープを真空蒸着する蒸着装置において、前記移送蒸着部は、回転してテープを外周面の一側に多数回巻きながらテープを移送するドラムと、前記ドラムから離隔して設けられ、外周面に一定の間隔で設けられた溝と突部を有する多数のローラーからなり、前記多数のローラーは、テープ及び突部の幅の分だけはずれて形成されるように、前記ドラムの回転軸に対して一定の角度傾いており、外周面にテープが巻かれるように設けられたガイドローラーとを含んでなる、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置を提供する。
【0013】
ここで、前記供給リールおよび前記収去リールは、前記ガイドローラーの傾斜角度と同じ角度で傾き、テープの巻き取りまたは巻き出しが平行に行われるように設けられることが好ましい。
【0014】
ここで、前記ガイドローラーは、外周面に前記収容溝と突部が一定の間隔で設けられ、前記収容溝にテープを巻いて平行に移送するように前記ドラムの回転軸に対して一定の角度で傾いて回転する第1ガイドローラーと、外周面に前記収容溝と突部が一定の間隔で設けられ、前記収容溝は、前記第1ガイドローラーの収容溝に対し、テープおよび突部の幅の分だけはずれて形成され、前記第1ガイドローラーに対して平行な第2ガイドローラーとからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
上述したように、本発明は、熱を加えて蒸着するとき、ガイドローラーを介して一定の張力を維持しながら超伝導層を蒸着するので、テープの熱膨張収縮差異からのテープの張力不均一によるテープの変形および破損を防止するという効果がある。
【0016】
また、本発明は、ガイドローラーと移送リールと収去リールがドラムの回転軸に比べて傾いて設けられ、線材が移送の際に破損することを防止し、テープが前記ドラムおよびガイドローラーに多く巻かれても、ドラムとガイドローラーが共に回転するので張力が増加しないため、長尺のテープを破損なしで蒸着することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図2は本発明に係るガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置の概略図、図3は本発明に係るガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置の正面図である。
【0018】
図2および図3に示すように、本発明は、テープを供給する供給リール10と、供給されたテープを移送し蒸着し得るようにする、回転してテープを巻く移送蒸着部100と、前記移送蒸着部100を介して蒸着された超伝導テープを巻いて収去する収去リール20とからなっている。
【0019】
まず、供給リール10は、真空チャンバーの内部に位置し、円形のリール形状を有し、後述する移送蒸着部100と一定の間隔をおいて配置される。
【0020】
前記供給リール10の外周面にはテープが多数回巻かれており、テープを固定するために供給リール10の上部および下部には円板がそれぞれ付着している。
【0021】
また、前記供給リール10は、内部または外部のモーターと連結され、その場で一定の速度にて回転してテープを移送蒸着部100に移送するが、後述する移送蒸着部100のテープ移送速度に応じて一定の張力を維持しながらテープを巻き出して移送蒸着部100に供給する。
【0022】
次に、移送蒸着部100は、直径の大きい大型ドラム30、およびガイドローラー110からなっている。
【0023】
前記ドラム30は、断面円形の形状をしており、様々な直径を持つことができるが、約250〜500mmの直径を持ち、中央の回転軸の方向に長く設けられ、内部または外部に連結されたモーターによって、その場で蒸着される条件に応じて一定の速度で回転する。
【0024】
前記ドラム30は、前記供給リール10から離隔して配置され、移送されるテープが外周面の一面に接触して移送され、好ましくは前記ドラム30の外周面には移送されるテープを収容することが可能な溝が設けられ、前記溝同士の間には突部が設けられる。この突部は移送の際に超伝導テープが重なり合わないようにする。
【0025】
次いで、ガイドローラー110は、前記ドラム30の直径よりは小さい直径を持つように設けられ、好ましくは50〜10mm程度の直径を持つように設けられる。
【0026】
前記ガイドローラー110は、多数の長いローラーからなり、前記ドラム30と共にテープを移送しながら、一側で超伝導物質を蒸着するようにする。
【0027】
前記ガイドローラー110は、互いに並んで配置され、外周面には溝、および前記溝同士の間に一定の間隔で設けられた突部を有し、移送されるテープが多数回巻かれるときに重なり合わないようにする。
【0028】
また、前記ガイドローラー110は、前記ドラム30の回転軸を基準として一定の角度で傾いて設けられるが、この際、傾いたガイドローラー110は、外周面の収容溝に巻かれるテープの幅と前記収容溝間の突部の幅の分だけ外れるように傾いて設けられる。これについての詳細な説明は後述する。
【0029】
このようにガイドローラー110が傾いているから、前記ガイドローラー110およびドラム30の外周面にテープが一周巻かれ、次回に巻かれるとき、テープがずれて巻かれることを防止する。
【0030】
また、前記ドラム30の接触角の全体に沿ってテープが巻かれて蒸着されるときは、テープが前記ドラム30の形状に沿ってそれぞれ異なる張力を受けて変形が生じ易いが、前記ガイドローラー110を介してテープが前記ドラム30に接触する接触角を少なくしてテープへの張力を減らすことにより、テープの変形を減らすようにする。
【0031】
すなわち、前記ドラム30を介してのみテープを巻いて移送するときには、ドラム30との接触角が180°であり、これによりテープがドラム30の下部から上部へ、或いは上部から下部に移送方向を変えながらドラム30に巻かれると、前記ドラム30の形状に沿ってそれぞれ異なる張力を受け、移送される超伝導テープに変形が生ずる。
【0032】
ところが、前記ガイドローラー110を用いると、移送されるテープと前記ドラム30との接触角が90°程度であって、テープへの張力が減少し、移送されるテープの変形が防止される。
【0033】
このような前記ガイドローラー110は、第1ガイドローラー111と第2ガイドローラー112の一対からなることが好ましく、前記ドラム30の上側または下側に離隔して設けられ、両側には供給リール10と収去リール20が離隔して設けられる。
【0034】
このように離隔した第1ガイドローラー111と第2ガイドローラー112を介して移送されるテープを蒸着するために、前記第1ガイドローラー110および第2ガイドローラーから離隔して設けられた蒸着装置を介して、移送されるテープに超伝導物質を蒸着する。このように一定の張力を維持するので、テープの熱膨張収縮差異が殆どないため、各位置によって異なる張力でテープがドラムの外周面に巻かれるから、蒸着時より超伝導物質を安定的に蒸着することができる。
【0035】
前記第1ガイドローラー111は、前記供給リール10の回転に合わせて一定の張力を維持しながら内部または外部のモーターによって回転し、最初にテープを巻くときは前記供給リール10から移送されるテープを第2ガイドローラー112に移送し、その次にテープを巻くときからは前記ドラム30から移送されるテープを後述の第2ガイドローラー112に移送する。
【0036】
前記第2ガイドローラー112は、前記第1ガイドローラー111に対して水平に離隔して設けられ、蒸着される条件に応じて前記第1ガイドローラー111に合わせて内部または外部のモーターを介して回転するようにする。
【0037】
この際、前記第1ガイドローラー111と前記第2ガイドローラー112は、前記ドラム30を介して移送される線材の変形を最小化するように、前記ドラム30の直径の最外側の地点を延長した線に位置し、テープが直角で前記第1ガイドローラー111および前記第2ガイドローラー112を介して移送されるように設けられる。
【0038】
ここで、第2ガイドローラー112に巻かれる収容溝130は、第1ガイドローラー111に巻かれる超伝導テープの収容溝130よりさらに1回転、以前の収容溝130に超伝導テープが巻かれて移送されるように設けられる。
次に、図3を参照してこれについてさらに詳しく考察する。第1ガイドローラー111の3番目の収容溝Aに収容されて移送される超伝導テープが、前記第2ガイドローラー112の2番目の収容溝Bに収容されて一つの収容溝130の幅および収容溝130間の突部の幅の分だけ外れるように、前記ガイドローラー110が傾く。前記ガイドローラー110は、互いに平行に設けられ、移送の際にテープに生ずる変形を最小化することができる。
【0039】
一般に、巻かれる回数が増加するほど、ベアリングの摩擦によってテープへの張力が増加してテープが変形するおそれがあるので、超伝導テープを巻くことが可能な回数が制限されていたが、ガイドローラー110が前記ドラム30と共に回転するので、超伝導テープの巻かれる回数が増加するほど、増加する張力が殆どないため、多数のローラーを用いて大面積への薄膜蒸着が可能である。
【0040】
次いで、収去リール20は、前記ガイドローラー110に沿って移送されるテープを一定の張力に維持しながらその場で回転してテープを収去するようにし、テープが変形せず一定の張力で収去され得るように前記移送蒸着部110の傾斜角度と同じ角度で傾くことが好ましい。
【0041】
ここで、前記収去リール20は、外部から任意に取り替えることが可能なので、移送されるテープの長さに拘ることなくテープを収去した後、固定して長尺のテープを連続的に蒸着することができる。
【0042】
前述した内容は、特許請求の範囲がさらに理解できるように本発明の特徴と技術的利点を多少幅広く開示した。開示された本発明の概念と特定の実施例は、本発明と類似の目的を行うための他の構造の設計または修正の基本として直ちに使用できることが、当該技術分野における熟練者によって認識されなければならない。
【0043】
また、本発明で開示された発明の概念と実施例は、本発明の同一目的を行うために他の構造に修正または設計するための基礎であって、当該技術分野における熟練者によるそのような修正または変更された等価構造は、特許請求の範囲で記述した発明の思想または範囲を逸脱しない範疇内において多様な変化、置換および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】従来の技術に係る長尺テープ蒸着装置の要部を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置を示す図である。
【図3】本発明に係るガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 供給リール
20 収去リール
30 ドラム
100 移送蒸着部
111 第1ガイドローラー
112 第2ガイドローラー
130 収容溝
A 第1ガイドローラーの3番目の収容溝
B 第2ガイドローラーの2番目の収容溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバーの内部からテープを引き出して供給するように回転する供給リールと、前記供給リールから離隔して位置し、テープを移送しながら超伝導層を真空蒸着する移送蒸着部と、前記移送装置部から離隔して位置し、真空蒸着されたテープを収去するように回転する収去リールとからなり、テープを真空蒸着する蒸着装置において、
前記移送蒸着部は、
回転してテープを外周面の一側に多数回巻きながらテープを移送するドラムと、
前記ドラムから離隔して設けられ、外周面に一定の間隔で設けられた溝と突部を有する多数のローラーからなり、前記多数のローラーは、テープ及び突部の幅の分だけはずれて形成されるように、前記ドラムの回転軸に対して一定の角度傾いており、外周面にテープが巻かれるように設けられたガイドローラーとを含んでなることを特徴とする、ガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置。
【請求項2】
前記供給リールおよび前記収去リールは、
前記ガイドローラーの傾斜角度と同じ角度で傾き、テープの巻き取りまたは巻き出しが平行に行われるように設けられることを特徴とする、請求項1に記載のガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置。
【請求項3】
前記ガイドローラーは、
外周面に前記収容溝と突部が一定の間隔で設けられ、前記収容溝にテープを巻いて平行に移送するように前記ドラムの回転軸に対して一定の角度で傾いて回転する第1ガイドローラーと、
外周面に前記収容溝と突部が一定の間隔で設けられ、前記収容溝は、前記第1ガイドローラーの収容溝に対し、テープおよび突部の幅の分だけはずれて形成され、前記第1ガイドローラーに対して平行な第2ガイドローラーとからなることを特徴とする、請求項1または2に記載のガイドローラーを備えた長尺テープ用蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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