説明

ガイド機構、定着装置及び画像形成装置

【課題】記録媒体が分離爪やガイド部材に案内され接触しながら排出される過程で、その画像に分離爪やガイド部のコスレ跡又は光沢スジなどの画像不良が発生するのを防止する。また記録媒体の先端がカールしても記録媒体の先端が定着出口ガイドのコロに衝突したり、コロ周囲の切欠き孔の隙間に入り込んだりするのを防止する。
【解決手段】定着出口ガイド41に、記録媒体を定着ローラ21から分離させる爪部23aを有する複数の分離部材23と、各分離部材23に回転可能に保持されて爪部23aで分離された記録媒体を排出方向に案内する爪部コロ40と、爪部コロ40の下流側のガイドコロ43を設ける。定着出口ガイド41の傾斜ガイド面41bにガイドリブ44を設け、このガイドリブ44の下流端44aを、ガイドコロ43を側方から見たときのその外周より内側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイド機構、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置において、記録媒体上に担持されたトナー像を定着させる定着装置として、加熱加圧方式の定着装置が多く採用されている。この種の定着装置は、一般的に、ハロゲンヒータ等の加熱源によって加熱される定着回転体と、これに接触して定着ニップを形成する加圧回転体とを備える。画像の定着処理を行う場合、定着ニップに記録媒体を通すことで記録媒体を加熱及び加圧し、この記録媒体に担持されたトナー像を加熱溶融させて記録媒体に定着させる。この際、溶融したトナー自体の粘着力を媒介として記録媒体が定着回転体の表面に貼り付くことがあり、そうすると記録媒体が定着ニップから良好に排出されなくなる不具合が生じることがある。
【0003】
前記不具合を解決するため、例えば特許文献1(特開平7−140831号公報)では、記録媒体を定着回転体から剥離(分離)させるために、ブレード形状ないし楔形状の分離爪等を先端に有する分離部材を定着ニップの出口側に設けることが提案されている。この分離部材の爪部等を定着回転体に対してカウンタ方向に接触させることで、定着ニップの出口側で定着回転体から記録媒体を分離する。
【0004】
特許文献1の分離爪は、定着ローラから分離した記録媒体を搬送経路の下流側へ案内する機能も有するが、この案内機能があるために却って記録媒体に形成された画像に分離爪による引っかき傷が付きやすいという問題がある。
【0005】
そこで、特許文献2(特開2004−061854)では、分離爪先端から比較的近い位置にガイド部材を別途配置し、分離爪によって定着ローラから分離された記録媒体を、当該分離爪からガイド部材へ受け渡して搬送経路下流側へ案内するようにしている。また、ジャム時における分離爪や定着ローラの破損防止のために分離爪の両側に分離爪保護部材を設け、さらにこの分離爪保護部材に搬送経路側に突き出した回転自在のコロを設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、定着ニップ通過直後の記録媒体はまだ高温のため画像のトナーが柔らかい。このため、特許文献2の装置で記録媒体が分離爪先端からガイド部材に受け渡されて移動する途中に柔らかいトナーが分離爪やガイド部材と接触し、この接触によって記録媒体の画像にコスレ跡又は光沢スジが発生するという問題がある。また、回転自在のコロは記録媒体のコスレ跡又は光沢スジの発生防止に一定の効果が期待できるが、コシの強い記録媒体を使用した場合、これをコロで案内する途中に記録媒体の画像が前記コロに強く押し付けられながら排出される結果となるため、コロとの接触によるコスレ跡が発生する事象が見受けられる。
【0007】
また、記録媒体や印刷画像によっては定着ニップ通過直後に記録媒体の先端がカールし、このカールした先端が出口側の定着出口ガイドに強く接触しながら排出される場合がある。このように記録媒体が定着出口ガイドに強く接触しながら排出されると、定着出口ガイドにガイド用のコロを配置した構成であっても当該コロに記録媒体の先端が衝突しやすい。このような衝突が起こると記録媒体の先端が定着出口ガイド側に大きく屈曲するいわゆる先端折れ等の用紙ダメージが発生する。また、定着出口ガイドに形成したガイドコロ突出用の切欠き孔の隙間に記録媒体の先端が入り込むと、ガイドコロが逆回転していっそう大きな用紙ダメージが発生する。
【0008】
本発明は、記録媒体が分離爪やガイド部材に案内され接触しながら排出される過程で、その画像に分離爪やガイド部のコスレ跡又は光沢スジなどの画像不良が発生するのを防止すると共に、記録媒体の先端がカールしても記録媒体の先端が定着出口ガイドのコロに衝突したり、コロ周囲の切欠き孔の隙間に入り込んだりするのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明のガイド機構は、定着回転体と加圧回転体の間の定着ニップに通すことで画像が転写された記録媒体を、下流側出口に向かって案内するガイド機構において、前記定着ニップの下流側で前記定着回転体から記録媒体を分離させる分離部材と、前記分離部材に隣接して配置され、前記定着回転体から分離された記録媒体の記録面側を支持する第1回転部材と、前記第1回転部材で支持された記録媒体の記録面側と向き合うガイド面を有し、記録媒体を下流側に案内する定着出口ガイドと、前記定着出口ガイドのガイド面から外周の一部を突出させた状態で記録媒体の記録面側を支持する第2回転部材と、前記定着出口ガイドのガイド面に上流側から下流側に向けて形成され、記録媒体の記録面側に接する接触部を有するガイドリブであって、当該ガイドリブの下流端の位置を、前記第2回転部材とガイドリブを側方から見たときの前記第2回転部材の外周より内側にしたガイドリブと、を設けたことを特徴とする。
【0010】
このようにガイドリブを形成することにより、分離部材と第1回転部材を通過した記録媒体の先端部は、ガイドリブの接触部によって案内されながら第2回転部材の外周に受け渡される。このため、記録媒体の先端部が定着出口ガイドのガイド面に近い位置で第2回転部材の外周に対して大きな角度で衝突するのを防止することができる。また、記録媒体が分離部材、第1回転部材、ガイドリブ及び第2回転部材など複数の部材によって分担して支持されるため、これら部材との接触圧が軽減されて当該接触によるコスレ跡又は光沢スジなどの画像不良が発生するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、定着出口ガイドのガイド面に上流側から下流側に向けて記録媒体の記録面側に接する接触部を有するガイドリブを形成し、このガイドリブの下流端の位置を、定着出口ガイドのガイド面から外周の一部を突出させた第2回転部材の外周より内側に配置したので、記録媒体の先端部が定着出口ガイドのガイド面に近い位置で第2回転部材の外周に大きな角度で衝突したり、また第2回転部材の周りの切欠き孔に入り込んだりするのを防止することができ、これにより用紙の先端折れや耳折れ等の用紙ダメージを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るカラー画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガイド機構を備えた定着出口ガイドの斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るガイド機構を備えた定着出口ガイドの正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るガイド機構の要部側面図である。
【図5】(A)(B)は定着出口ガイドの正面拡大図である。
【図6】本発明の実施形態に係るガイド機構の作動を示す図である。
【図7】比較例に係るガイド機構の作動を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る定着装置の非通紙時の概略構成図である。
【図9】本発明の実施形態に係る定着装置の通紙時の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、本発明を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
【0014】
(画像形成装置)
まず、図1に基づいて、本発明のガイド機構乃至定着装置を適用する画像形成装置の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るカラー画像形成装置の概略構成図である。図1に示す画像形成装置本体100には、画像形成ユニットとしての4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkが着脱可能に装着されている。各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の異なる色のトナーを収容している以外は同様の構成となっている。
【0015】
具体的には、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkは、像担持体(潜像担持体)としてのドラム状の感光体2と、感光体2の表面を帯電させる帯電手段としての帯電ローラ3と、感光体2の表面にトナー(現像剤)を供給する現像手段としての現像装置4と、感光体2の表面をクリーニングするクリーニング手段としてのクリーニングブレード5を備えている。なお、図1では、イエローのプロセスユニット1Yの感光体2、帯電ローラ3、現像装置4、クリーニングブレード5のみに符号を付しており、その他のプロセスユニット1C,1M,1Bkにおいては符号を省略している。
【0016】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの上方には、感光体2の表面を露光する露光手段(静電潜像形成手段)としての露光装置6が設けられている。露光装置6は、光源、ポリゴンミラー、f−θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体2の表面へレーザ光を照射するようになっている。
【0017】
各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの下方には、転写装置7が設けられている。転写装置7は、転写体としての無端状のベルトから構成される中間転写ベルト8を有する。中間転写ベルト8は、支持部材としての駆動ローラ9と従動ローラ10に張架されており、駆動ローラ9が図の反時計回りに回転することによって、中間転写ベルト8は図の矢印に示す方向に周回走行(回転)するように構成されている。
【0018】
4つの感光体2に対向した位置に、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ11が設けられている。各一次転写ローラ11はそれぞれの位置で中間転写ベルト8の内周面を押圧しており、中間転写ベルト8の押圧された部分と各感光体2とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。各一次転写ローラ11は、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が一次転写ローラ11に印加されるようになっている。
【0019】
また、駆動ローラ9に対向した位置に、二次転写手段としての二次転写ローラ12が設けられている。この二次転写ローラ12は中間転写ベルト8の外周面を押圧しており、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。二次転写ローラ12は、一次転写ローラ11と同様に、図示しない電源に接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ12に印加されるようになっている。
【0020】
中間転写ベルト8の図の右端側の外周面には、中間転写ベルト8の表面をクリーニングするベルトクリーニング装置13が設けられている。このベルトクリーニング装置13から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、転写装置7の下方に配設された廃トナー収容器14の入り口部に接続されている。
【0021】
画像形成装置本体100の下部には、記録媒体としての紙やOHP等のシートP(以下、「用紙P」と呼称する)を収容した給紙カセット15が設けられている。給紙カセット15には、収容されている用紙Pを送り出す給紙ローラ16が設けてある。一方、画像形成装置本体100の上部には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ17と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ18が設けられている。
【0022】
また、画像形成装置本体100内には、用紙Pを給紙カセット15から二次転写ニップを通って排紙トレイ18へ搬送するための搬送路Rが設けられている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ12の位置よりも用紙移動方向上流側に一対のレジストローラ19が設けられている。また、二次転写ローラ12の位置よりも用紙移動方向下流側に定着装置20が設けられている。
【0023】
定着装置20は、加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ21と、その定着ローラ21に当接して定着ニップNを形成する対向部材としての加圧ローラ22と、定着ローラ21から用紙Pを分離させる分離部材23、定着出口ガイド41等を有する。本実施形態では、定着ローラ21と加圧ローラ22が図示しない加圧手段によって互いに圧接されることにより、圧接箇所において定着ニップNが形成されているが、この構成に限定されるものではない。例えば、定着部材と対向部材の少なくとも一方を無端状ベルトとし、そのベルトをローラ又はパッド等によって相手側に圧接させる構成としてもよい。また、定着部材と対向部材は、互いに圧接する場合に限らず、加圧を行わす単に接触させるだけの構成とすることも可能である。なお、前記加熱源としてハロゲンランプや抵抗加熱ヒータなどを使用することができる。この加熱源は通常定着ローラ21に内蔵するが、加圧ローラ22に内蔵することも可能である。また、加熱源を定着ローラ21と加圧ローラ22の両方に内蔵することも可能である。なお、本発明のガイド機構の実施形態を備えた定着出口ガイド41については後述する。
【0024】
以下、図1を参照して前記画像形成装置の基本的動作について説明する。
作像動作が開始されると、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2が図示しない駆動装置によって図の時計回りに回転駆動され、各感光体2の表面が帯電ローラ3によって所定の極性に一様に帯電される。帯電された各感光体2の表面には、露光装置6からレーザ光がそれぞれ照射されて、それぞれの感光体2の表面に静電潜像が形成される。このとき、各感光体2に露光する画像情報は所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。このように感光体2上に形成された静電潜像に、各現像装置4によってトナーが供給されることにより、静電潜像はトナー像(現像剤像)として可視像化される。
【0025】
駆動ローラ9が図の反時計回りに回転駆動されることにより、中間転写ベルト8が図の矢印で示す方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ11に、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、各一次転写ローラ11と各感光体2との間の一次転写ニップにおいて転写電界が形成される。そして、各プロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkの感光体2に形成された各色のトナー像が、前記一次転写ニップにおいて形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上に順次重ね合わせて転写される。かくして中間転写ベルト8はその表面にフルカラーのトナー像を担持する。また、中間転写ベルト8に転写しきれなかった各感光体2上のトナーは、クリーニングブレード5によって除去される。そして、図示しない除電手段によって、感光体2の表面が除電され、その表面電位が初期化されて次の画像形成に備えられる。
【0026】
また、作像動作が開始されると、給紙ローラ16が回転して、給紙カセット15から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ19によってタイミングを計られて、二次転写ローラ12と中間転写ベルト8との間の二次転写ニップに送られる。このとき二次転写ローラ12には、中間転写ベルト8上のトナー像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、これにより、二次転写ニップに転写電界が形成されている。そして、二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト8上のトナー像が用紙P上に一括して転写される。その後、用紙Pは定着装置20へ搬送され、定着ローラ21と加圧ローラ22によって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー像が定着される。トナー像が定着された用紙Pは、分離部材23によって定着ローラ21から分離され、排紙ローラ17によって排紙トレイ18へ排出される。また、転写後の中間転写ベルト8上に残留するトナーは、ベルトクリーニング装置13によって除去され、除去されたトナーは、廃トナー収容器14へ搬送され回収される。
【0027】
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット1Y,1C,1M,1Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニットを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0028】
(定着出口ガイド)
定着装置20の定着ローラ21の上方には、図2〜図4に示すように本発明のガイド機構の実施形態を備えた定着出口ガイド41が設けられている。この定着出口ガイド41は、定着ローラ21からの放射熱に耐えられる十分な耐熱性があって軽量であり、しかも複雑形状を容易成形可能な例えばガラス繊維入りPETで形成することができる。定着出口ガイド41の前面は、ほぼ垂直な垂直ガイド面41aと、この垂直ガイド面41aの下側に接続し定着出口ガイド41の内側に傾斜した傾斜ガイド面41bを構成している。そして傾斜ガイド面41bに、後述する第2回転部材としてのガイドコロ43−1〜43−3への用紙Pの受け渡しをスムーズに行うための複数のガイドリブ44−1〜44−6が形成されている。定着出口ガイド41の傾斜ガイド面41bの下端部41cは、後述の第1回転部材としての爪部コロ40−1〜40−4の側方に位置し、かつ定着ローラ21と接触して定着ローラ21を破損させないように、定着ローラ21との間に所定の隙間を明けている。なお、図2、図3のように定着出口ガイド41の幅方向に複数で配置された部材を参照するときは、ハイフン付きの数字(−1、−2…)を適宜使用することとする。
【0029】
定着出口ガイド41に、その垂直ガイド面41aから傾斜ガイド面41bに跨るようにして、幅方向等間隔に3つの切欠き孔45−1〜45−3が形成されている。そしてこれら切欠き孔45−1〜45−3の中にガイドコロ43−1〜43−3が回転自在に配置されている。各ガイドコロ43−1〜43−3の外周の一部は、切欠き孔45−1〜45−3から手前側に突出している。ガイドコロ43−1〜43−3はPBT等の耐熱性の良い材料で構成され、図3のように3つのガイドコロ軸42−1、42−2、42−3に対して左右1対で取り付けられている。このガイドコロ軸42−1、42−2、42−3は図5(A)、(B)の定着出口ガイド41の軸受け部46に対してワンタッチで装着可能とされている。従って、ガイドコロ43の個数は合計6個であるが、この個数は必要に応じて増減変更することができる。中央のガイドコロ43−2は定着ローラ21の幅方向中央に配置され、この中央のガイドコロ43−2に対して両端のガイドコロ43−1、43−3が左右対称に配置されている。これにより、ガイドコロ43−1〜43−3は用紙通過領域の幅方向中央に関して左右対称に配置された状態になっている。
【0030】
前記ガイドコロ43−1〜43−3の下方に、後述する4つの分離部材23−1〜23−4と回転自在な爪部コロ40−1〜40−4が設けられている。各分離部材23−1〜23−4は、図8、図9の概略構成図に示すように、支軸25によって回転可能に支持されている。支軸25は定着出口ガイド41の内側に配置され、その両端は定着ローラ21や加圧ローラ22の両端を回転自在に支持する側板に支持されている。爪部コロ40−1〜40−4は、用紙Pを定着ローラ21から分離する4つの分離部材23−1〜23−4の爪部23aを挟むようにして、左右一対で回転自在に設けられている。従って、爪部コロ40の個数は合計8個であるが、この爪部コロ40の個数は必要に応じて増減変更することができる。爪部コロ40−1〜40−4の基材も、PBT等の耐熱性の良い材料で構成することができる。
【0031】
4つの分離部材23−1〜23−4は、図3のように用紙通過領域の幅方向中央に関して左右対称かつ互いに等間隔又はほぼ等間隔で配置され、また上側の3箇所のガイドコロ43−1〜43−3と互い違いになる位置関係となっている。このようにガイドコロ43−1〜43−3と分離部材23−1〜23−4を互い違いに配置することで定着出口ガイド41をコンパクトに構成することができる。また、互い違いに配置することで用紙Pとの接触圧を均等分散することができ、分離部材23−1〜23−4の爪部23a、爪部コロ40及びガイドコロ43−1〜43−3のコスレ跡又は光沢スジの発生を防止することができる。
【0032】
仮に、前述した互い違いの配置ではなく、爪部23aの用紙移動方向下流側にガイドコロ43−1〜43−3を配置しようとすると、ガイドコロ43−1〜43−3と干渉しないように分離部材23と爪部コロ40−1〜40−4を配置する必要がある。そうすると、ガイドコロ43−1〜43−3と爪部コロ40−1〜40−4の直径が大きければ大きい程、両者を離して配置しなければならなくなり、定着出口ガイド41を小型化するのが難しくなる。ガイドコロ43−1〜43−3と爪部コロ40−1〜40−4を互い違いに配置することで、このような不都合が解消される。
【0033】
以上のように、3箇所のガイドコロ43−1〜43−3と、4箇所の分離部材23−1〜23−4および爪部コロ40−1〜40−4を左右対称配置とすることで、定着ニップN通過後の用紙Pの左右変形態様を等しくし、用紙Pの耳折れやジャムなどを防ぎ、良好な用紙搬送性を確保することができる。また、4つの分離部材23−1〜23−4の間隔を等間隔又は略等間隔にすることで、定着ローラ21から用紙Pを分離する時に各爪部23aに均等な力が作用するようにし、これにより特定の爪部23aだけに負荷が集中して定着ローラ21を破損するなどの不具合を防止することができる。
【0034】
(定着装置)
図8、図9の概略構成図に示すように、定着装置20の定着ローラ21は、内蔵の加熱源24によって加熱されるようになっている。そして、この加熱源24によって定着ローラ21が所定の目標温度まで加熱された状態で、未定着画像を担持した用紙Pが、図の矢印の方向に回転する定着ローラ21と加圧ローラ22との間の定着ニップNに進入することにより、用紙P上のトナーが溶融され、画像が定着される。定着ローラ21の周囲には、図示しない温度検知手段としてのサーミスタや、異常温度防止用のサーモスタット等が配設され、サーミスタからの検出信号により、定着ローラ21の表面温度は所定の温度域内に維持されるように制御されている。
【0035】
定着ローラ21は、熱伝導性基体の周囲に弾性層を形成し、さらに被覆層で被覆された円筒状部材である。熱伝導性基体として、所要の機械的強度を有し、熱伝導性の良好な炭素鋼材やアルミニウム材が主として用いられる。また、弾性層は、例えばシリコーンゴムやフッ素ゴム等の合成ゴムで形成される。さらに、弾性層の外側(外周面)の被覆層は、トナーとの離型性を良好にすると共に、弾性層の耐久性を高めるためのもので、熱伝導率が高く耐熱性に富む材料で形成される。例えば、フッ素樹脂(PFA)チューブで被覆したもの、フッ素樹脂(PFA又はPTFE)塗料を塗布したもの、あるいはシリコーンゴム層やフッ素ゴム層を形成したもの等が被覆層として用いられる。
【0036】
加圧ローラ22は、芯金、その芯金の外側(外周)に形成された弾性層、及び弾性層を被覆する被覆層から成る円筒状部材である。加圧ローラ22の芯金として、例えばSTKM等が用いられ、弾性層として、シリコーンゴムやフッ素ゴム、あるいはこれらの発泡体が用いられる。加圧ローラ22の被覆層は、例えば離型性に富むPFA,PTFA等の耐熱性フッ素樹脂のチューブで形成される。
【0037】
(分離部材)
定着ニップNよりも用紙移動方向の下流側に、前述した分離部材23が定着ローラ21に対向して設けられている。本実施形態では、図2、図3に示すように、分離部材23(23−1〜23−4)は定着ローラ21の軸方向に沿って4個設けられ、その先端が、傾斜ガイド面41bに形成した切欠き孔47−1、47−2、47−3、47−4から定着ローラ21の上方に突出している。各分離部材23は、定着ローラ21や加圧ローラ22の両端を支持する側板によって両端が支持された支軸25を中心に、互いに独立して回転可能に構成されている。そして分離部材23が支軸25を中心に図の時計回り又は反時計回りに回転することにより、各分離部材23の爪部23aが定着ローラ21に対して接触したり離間したりするようになっている。
【0038】
分離部材23の先端に、図4に示すように定着ローラ21の外周面と接触したり離間したりする爪部23aが形成されている。この爪部23aの先端は定着ローラ21を損傷しないように所定の丸味を付けて形成され、定着ローラ21の回転方向に対してカウンタ方向で接触可能とされている。分離部材23の素材として、主にPFAやPEK、PEEK等の離型性や摺動性の良い材料が用いられる。また、分離部材23の表面をPFAやテフロン(登録商標)などの離型性や摺動性の良い材料でコーティングしてもよい。
【0039】
分離部材23には、その爪部23aに近接した位置に前述したガイドコロ43よりも小径の爪部コロ40が支軸40aを中心に回転自在に設けられている。爪部コロ40の支軸40aは図4のように傾斜ガイド面41bの前側に位置し、爪部コロ40の大半が傾斜ガイド面41bの前側に出ている。支軸40aは上側のガイドコロ43のガイドコロ軸42のほぼ真下に配置されており、径の大きいガイドコロ43の方が爪部コロ40よりも傾斜ガイド面41bの前側に大きく突出している。
【0040】
(ガイドリブ)
各爪部コロ40の側方に位置する傾斜ガイド面41bに、傾斜ガイド面41bから所定高さで突出した複数のガイドリブ44が一体形成されている。これらガイドリブ44は、図3のように定着出口ガイド41の幅方向中央(用紙通過領域の幅方向中央)から左右両側に距離α、β、γで6箇所に形成されている(ガイドリブ44−1〜44−6)。このように6つのガイドリブ44−1〜44−6を左右対称配置とすることにより、用紙Pに作用するガイドリブ44−1〜44−6の接触力と用紙の変形態様を左右対称にすることができ、スキューを抑制することができる。
【0041】
ガイドリブ44−1〜44−6は傾斜ガイド面41bの上流側から下流側に向けて直線状に形成され、その向きは、両端の2つのガイドリブ44−1、44−6と中央の2つのガイドリブ44−3、44−4が用紙移動方向に平行に形成され、残り2つのガイドリブ44−2、44−5がその下流端44aが隣接するガイドコロ43−1、43−3に近付くように約30°で傾斜して形成されている。図5(A)は中央の2つのガイドリブ44−3、44−4を拡大して示している。
【0042】
但し、ガイドリブ44−2、44−5は必ずしも傾斜させる必要はなく、他のガイドリブと同様に用紙移動方向と平行に形成してもよい。このようにすべてのガイドリブ44−1〜44−6を平行に形成した場合でも、ガイドコロ43に対する用紙Pの円滑な受け渡し案内を行うことができる。また、図5(B)のように、ガイドコロ43−1(43−3)に対して、その両側に位置するガイドリブ44−1(44−5)、44−2(44−6)の下流端44aを水平方向に接近するように傾斜して形成してもよい。このようにガイドリブ44を傾斜配置することにより、用紙Pとガイドリブ44との接触時間を短縮すると共に、ガイドリブ44の下流端44aとガイドコロ43の水平距離が短くなるので、ガイドコロ43に対して用紙Pをより円滑に受け渡しすることができる。また、図3で用紙移動方向と平行にした4つのガイドリブ44−1、44−3、44−4、44−6を左右いずれかの方向に傾斜させてもよい。
【0043】
ガイドリブ44の上流端44bは、図4のように爪部コロ40の側方まで延びている。爪部コロ40をその軸線方向から見た場合、ガイドリブ44の上流端が爪部コロ40の外周よりも内側であって、定着ローラ21に近い部分まで延び、最後は傾斜ガイド面41bに滑らかに接続している。すなわち、ガイドリブ44の上流端44bは定着出口ガイド41の下端部41cの近くまで延びていて、ガイドコロ43がある切欠き孔45よりも上流側に位置している。
【0044】
ガイドリブ44の下流端44aはガイドコロ43の左右両側付近まで延び、最後は傾斜ガイド面41bのガイドコロ軸42の近くに接続している。ガイドリブ44の下流端44aは、ガイドコロ43の外周から少し内側に入り込んだ所に位置している。そしてガイドリブ44の上流端44bから下流端44aに至る接触部44cは、その傾斜ガイド面41bからの高さが上流端44bから下流端44aにいくに従って次第に高くなるように、側面視で直線状又はほぼ直線状に形成されている。この接触部44cの表面は、所定幅の平面で構成してもよいし、断面円弧状等の曲面で構成してもよい。
【0045】
(分離部材の移動機構の構成)
図8、図9は、本発明の実施形態に係る定着装置の分離部材23を移動させる移動機構の一例を示す概略構成図である。図8又は図9に示すように、各分離部材23の爪部23aとは反対側の基端23b側には、当接方向付勢手段26が設けられている。本実施形態では、当接方向付勢手段26として引張コイルバネを用いているが、設置スペースや製造コストなどの諸条件に応じて、その他の付勢手段を当接方向付勢手段26として用いることも可能である。この当接方向付勢手段26によって、各分離部材23は定着ローラ21に対して当接させる方向に付勢されている。
【0046】
また、各分離部材23の基端23b側には、分離部材23の定着ローラ21への当接を解除可能な当接解除部材27が設けられている。当接解除部材27は、支点28を中心に回転可能に支持されている。当接解除部材27が支点28を中心に図の時計回り又は反時計回りに回転することにより、当接解除部材27の分離部材23側の先端27aは分離部材23の基端23bに対して接近したり離間したりするようになっている。当接解除部材27は、定着ローラ21の軸方向と平行な方向に渡って延在しており、複数の分離部材23の全てに対して当接可能に構成されている。
【0047】
当接解除部材27の素材は、軽量でかつ所要の機械的強度を有するPPSやPEK等の耐熱や耐摩耗性に優れた樹脂材量を用いることができる。本実施形態では、当接解除部材27の軸方向(長手方向)に渡る撓み防止の観点から、特に支点28となる回転軸部分をSUS材にて別体で形成しているが、装置の大きさや分離部材23への付勢力に応じて材料選定を行うことが望ましい。
【0048】
当接解除部材27に駆動連結された図示しないリンク部材には、分離部材23を定着ローラ21に対して離間させるように当接解除部材27を付勢する当接解除方向付勢手段29が設けられている。なお、図8、図9においては、模式的に当接解除部材27の基端27bに当接解除方向付勢手段29を配設している。当接解除方向付勢手段29により当接解除部材27の基端27bが引っ張られることによって、当接解除部材27の先端27aは分離部材23の基端23bに当接する方向に付勢されている。なお、設置スペースや製造コストなどの諸条件に応じて、その他の付勢手段を当接解除方向付勢手段29として用いることも可能である。前記当接方向付勢手段26と当接解除方向付勢手段29の力関係は、後者の付勢力によって分離部材23が当接解除位置に移動するように設定されている。
【0049】
また、当接解除部材27を駆動させる駆動手段としてソレノイド30が設けられている。ソレノイド30は、コイルを内蔵するソレノイド本体31と、前記コイル内で進退可能に装着されたプランジャ32を有する。進退可能なプランジャ32は、当接解除部材27に駆動連結された図示しないリンク部材に連結されている。なお、図8、図9においては、模式的に当接解除部材27の基端27bにプランジャ32を連結させている。そして、ソレノイド本体31内のコイルが励磁され、プランジャ32がソレノイド本体31内へ吸引されて後退することにより、当接解除部材27が駆動(回転)されるようになっている。
【0050】
各分離部材23の図の上側には、各分離部材23を所定の離間位置に位置決めする離間位置決め手段33が設けてある。このように、離間位置決め手段33を設けることにより、部品寸法のばらつきや部品組付けのばらつきがあっても、各分離部材23を定着ローラ21の表面に対して適切な離間量をもって保持可能となっている。
【0051】
定着ニップNよりも用紙移動方向の上流側(図8、図9の下側)には、用紙Pを検知する用紙検知手段34が設けられている。用紙検知手段34は、支点35を中心に揺動(又は回転)可能に支持された検知部36を有する。通常、検知部36は用紙Pの搬送路Rに交差した位置に配設されており(図10参照)、搬送される用紙Pが検知部36に接触することで検知部36が揺動し(図9参照)、用紙Pを検知する仕組みとなっている。また、用紙Pの通過後、検知部36は、自重又は図示しない捩りコイルバネ等の付勢手段によって元の位置に戻り、図示しない位置決め部に当接して図8に示す所定の位置に保持されるようになっている。
【0052】
用紙Pが検知部36と接触することによって用紙Pの搬送姿勢に傾き(スキュー)が生じないように、検知部36は搬送路Rの幅方向中央近傍に配設することが好ましい。このように検知部36を配設することで、用紙Pを正しい姿勢で搬送することができ、画像の歪みや紙シワの発生などを防止して搬送信頼性を確保できる。
【0053】
また、用紙検知手段34を、前記のような用紙Pに接触することによって用紙Pを検知する接触式検知手段でなく、用紙Pに接触せずに用紙Pを検知する非接触式検知手段とすることも可能である。非接触式検知手段として、例えば、反射型や透過型の光センサを用いることができる。非接触式検知手段を用いた場合は、用紙Pの搬送姿勢に検知に伴う傾き(スキュー)が生じる虞はない。
【0054】
また、定着ニップNの用紙移動方向の上流側で用紙Pの詰まりの発生を検知する詰まり検知手段を設けている場合は、これを用紙検知手段34として兼用してもよい。この場合は、用紙Pを検知するための専用の検知手段を設ける必要がなくなるので、装置の小型化や低コスト化を図れる。
【0055】
前記ソレノイド30は、用紙検知手段34の検知信号に基づいて駆動されるように構成されている。詳しくは、ソレノイド30と用紙検知手段34とが、制御部37及び駆動回路38を介して電気的に接続されている。前記制御部37は、内部にI/Oポートを有するCPUである。搬送される用紙Pが用紙検知手段34によって検知されると、その検知信号に基づいて制御部37は駆動回路38を介してソレノイド30を駆動させるように構成されている。
【0056】
(分離部材の移動機構の動作)
以下、分離部材の移動機構の動作について説明する。
図8に示す状態で、用紙Pはまだ用紙検知手段34によって検知されていない。従って、ソレノイド30に駆動力は生じておらず、当接解除部材27はソレノイド30からの力を受けていない。一方、当接解除方向付勢手段29からの付勢力が当接解除部材27の基端27bに対して図の上方に作用しているので、当接解除部材27に図の時計回り方向の力(回転モーメントM3)が作用している。この回転モーメントM3が作用することによって、当接解除部材27の先端27aが各分離部材23の基端23bを図の下方に押圧している。
【0057】
当接解除部材27は各分離部材23の基端23bを図の下方に押圧している。これにより、各分離部材23には図の反時計回り方向の力(回転モーメントM2)が作用している。一方、当接方向付勢手段26からの付勢力が各分離部材23の基端23bに対して図の上方に作用しているので、各分離部材23に時計回り方向の力(回転モーメントM1)が作用している。このように、各分離部材23には互いに逆向きの力(回転モーメントM1と回転モーメントM2)が作用しているが、前述の2つの付勢手段26と29の力関係から、前記反時計回り方向の力(回転モーメントM2)の方が時計回方向の力(回転モーメントM1)よりも大きい。このため、各分離部材23の爪部23aは定着ローラ21から離間した状態となっている。このように分離部材23を離間させておくことで、分離部材23の当接による定着ローラ21の摩耗を抑制することができ、良好な画像形成を長期に亘って維持することが可能である。また、各分離部材23は、離間位置決め手段33に当接しており、それぞれ所定の離間位置に保持されている。
【0058】
次に、図9に示すように用紙Pが搬送されて用紙検知手段34の検知部36に接触すると、用紙検知手段34からの信号によって制御部37が駆動回路38を介してソレノイド30を駆動させる。詳しくは、ソレノイド30に所定の電流が印加されることにより、プランジャ32が吸引され当接解除方向付勢手段29に抗してソレノイド本体31内へ後退する。これにより、当接解除部材27の基端27bは図の下方に引っ張られ、当接解除部材27は図の反時計回りに回転する。その結果、当接解除部材27の先端27aが各分離部材23の基端23bから離間し、当接解除部材27による各分離部材23の押圧が解除される。
【0059】
当接解除部材27による各分離部材23の押圧が解除されると、各分離部材23には当接方向付勢手段26による前記時計回り方向の力(回転モーメントM1)のみが作用することになるため、各分離部材23は図の時計回り方向に回転して、それぞれの爪部23aが定着ローラ21に当接する。
【0060】
(爪部、爪部コロ、ガイドリブ、ガイドコロの作用)
爪部23aが定着ローラ21に当接すると、定着ニップNを通過した用紙Pがそのまま定着ローラ21に貼りついていても、図6(a)のように爪部23aによって定着ローラ21から分離される。すなわち、用紙先端が爪部23aのスクイ面に乗り上げると、そのままスクイ面に沿って爪部コロ40の外周に向かって移動する。用紙先端が爪部コロ40に乗り上げる際の角度は爪部コロ40の接線方向に近いので、用紙先端が爪部コロ40に衝突することがなく、図6(b)のように爪部コロ40にスムーズに乗り上げて上方すなわち下流側に移動する。これにより、用紙Pと爪部23aとの接触圧が軽減され、用紙Pに熱が残っていても、柔らかいトナー像にコスレ跡又は光沢スジが発生するのを防止することができる。また、ガイドリブ44の上流端44bが爪部コロ40の外周の内側まで延びているので、隣り合う爪部コロ40と爪部コロ40の間の用紙Pがガイドリブ44によって傾斜ガイド面41bから手前側に浮かせた位置で下流側に案内されるので、用紙Pの幅方向での曲がり方が少なく用紙搬送負荷を低減することができる。
【0061】
次に、用紙先端がガイドコロ43の外周下部に向かって進むと、その途中にガイドリブ44の接触部44cがあるため用紙先端が直接ガイドコロ43の外周下部に当接することがない。用紙先端は図6(c)のようにまず切欠き孔45の手前でガイドリブ44の接触部44cに当接し、当該接触部44cに沿って下流端44a乃至ガイドコロ43のほぼ接線方向に向かって案内される。この際、傾斜ガイド面41bからの接触部44cまでの高さがガイドリブ44の上流端44bから下流端44aにかけて漸増しているので、用紙先端がガイドコロ43に向かって安定して案内される。従来のガイド機構では、爪部コロ40−1〜40−4の相互間隔が大きいと、この爪部コロがない範囲で用紙Pの先端が切欠き孔45に入り込むおそれがあった。本発明の実施形態では爪部コロがない範囲にガイドリブ44−1〜44−6があり、しかもガイドリブ44−1〜44−6の上流端44bが図4のように切欠き孔45よりも上流側にあるので、ガイドリブ44−1〜44−6によって用紙Pが切欠き孔45−1〜45−3に入り込むのが防止される。
【0062】
ガイドリブの下流端44aはガイドコロ43の外周の内側まで延びているので、用紙P先端がガイドコロ43の外周に向かって進行すると、ガイドリブ44の接触部44cとガイドコロ43の外周とが交差する部分を境として、用紙Pがガイドリブ44からガイドコロ43の外周に受け渡される。そして最後は図6(d)のように用紙Pがガイドリブ44から離れ、用紙Pが爪部コロ40から直接ガイドコロ43へ受け渡されるようになる。このように、最初は用紙先端が定着ローラ21→爪部23a→爪部コロ40→ガイドリブ44→ガイドコロ43の順番でスムーズに案内され、最後は定着ローラ21→爪部コロ40→ガイドコロ43の順で用紙が無理なく搬送されるため、用紙Pに熱が残っていても、柔らかいトナー像にコスレ跡又は光沢スジが発生するのを防止することができる。
【0063】
また、図5(B)のように、ガイドコロ43−1(43−3)に対して、その両側に位置するガイドリブ44−1(44−5)、44−2(44−6)の下流端44aを水平方向に接近するように傾斜させた場合は、用紙Pとガイドリブ44との接触時間を短縮すると共に、ガイドリブ44の下流端44aとガイドコロ43との水平距離を短くすることができ、ガイドコロ43に対してその両側から用紙Pをより円滑に受け渡しすることができる。このような傾斜したガイドリブ44−1(44−5)、44−2(44−6)とすることにより、用紙Pが切欠き孔45−1〜45−3に入り込むのがいっそう確実に防止される。
【0064】
これに対してガイドリブ44がない場合の用紙の搬送状態を図7により説明する。図7(a)、(b)までは用紙Pの搬送状態は図6と変わらないが、図7(c)のように用紙先端が傾斜ガイド面41bに近づいた時、用紙先端が元々のカールと爪部23aのスクイ面の曲率による影響を受けてガイドコロ43の下側に潜り込むことがある。そうすると、用紙先端がガイドコロ43に対して同コロ43を時計方向に回転させる方向で接触し、用紙先端が切欠き孔45に入り込む。そして図7(d)のように後続の用紙Pが鋭角に折れ曲がり、用紙Pのジャムが発生したり、用紙Pの先端折れ、耳折れ等の用紙ダメージが生じたりする。このようにガイドリブがないと用紙先端が爪部コロ40からガイドコロ43にスムーズに案内することができず、切欠き孔45に食い込むなどして用紙Pのジャムや用紙ダメージが発生する可能性が高まる。特にコシの弱い用紙の場合はこのような不具合が発生する可能性がいっそう高い。
【0065】
用紙Pは以上のようにして分離部材23の爪部23a→爪部コロ40→(ガイドリブ44→)ガイドコロ43の順に搬送され、用紙Pの後端が定着ニップNから抜け出して爪部23aを通過すると、爪部23aが定着ローラ21から離間する。すなわち、用紙Pの後端が定着ニップNを通過すると、ソレノイド30に印加されていた電流が遮断され、これによりプランジャ32の吸引が解除される。プランジャ32の吸引が解除されると、当接解除部材27が当接解除方向付勢手段29からの力(回転モーメントM3)によって各分離部材23を押圧する。そして、その押圧力によって、各分離部材23に再び図の反時計回り方向の力(回転モーメントM2)が作用する。
【0066】
上述したように、分離部材23に作用する反時計回り方向の力(回転モーメントM2)は、当接方向付勢手段26によって各分離部材23に作用する前記時計回り方向の力(回転モーメントM1)よりも大きいので、各分離部材23は図の反時計回りに回転し、それぞれの爪部23aが定着ローラ21から離間する。以降、用紙Pが定着ニップNに供給される度に、前記分離部材23の接触動作と離間動作が繰り返し行われる。
【符号の説明】
【0067】
1Bk、1M、1C、1Y プロセスユニット
2 感光体
3 帯電ローラ
4 現像装置
20 定着装置
21 定着ローラ(定着回転体)
22 加圧ローラ(加圧回転体)
23 分離部材
23a 爪部
24 加熱源
40 爪部コロ(第1回転部材)
41 定着出口ガイド
41a 垂直ガイド面
41b 傾斜ガイド面
41c 下端部
43 ガイドコロ(第2回転部材)
44 ガイドリブ
44a ガイドリブの下流端
44b ガイドリブの上流端
44c ガイドリブの接触部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0068】
【特許文献1】特開平7−140831号公報
【特許文献2】特開2004−061854号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着回転体と加圧回転体の間の定着ニップに通すことで画像が転写された記録媒体を、下流側出口に向かって案内するガイド機構において、
前記定着ニップの下流側で前記定着回転体から記録媒体を分離させる分離部材と、
前記分離部材に隣接して配置され、前記定着回転体から分離された記録媒体の記録面側を支持する第1回転部材と、
前記第1回転部材で支持された記録媒体の記録面側と向き合うガイド面を有し、記録媒体を下流側に案内する定着出口ガイドと、
前記定着出口ガイドのガイド面から外周の一部を突出させた状態で記録媒体の記録面側を支持する第2回転部材と、
前記定着出口ガイドのガイド面に上流側から下流側に向けて形成され、記録媒体の記録面側に接する接触部を有するガイドリブであって、当該ガイドリブの下流端の位置を、前記第2回転部材とガイドリブを側方から見たときの前記第2回転部材の外周より内側にしたガイドリブと、
を設けたことを特徴とするガイド機構。
【請求項2】
前記ガイドリブの上流端の位置を、前記第1回転部材とガイドリブを側方から見たときの前記第1回転部材の外周より内側にしたことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項3】
前記定着出口ガイドのガイド面に形成した切欠き孔から前記第2回転部材を突出させると共に、前記ガイドリブの上流端を前記切欠き孔の上流側に位置させたことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項4】
前記定着出口ガイドのガイド面から前記ガイドリブの接触部までの高さを、前記ガイドリブの上流端から下流端にかけて漸増させたことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項5】
前記ガイドリブを、前記定着出口ガイドのガイド面の幅方向に傾斜させて形成したことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項6】
前記ガイドリブを、記録媒体の移動方向と平行に形成したことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項7】
前記第2回転部材の両側に位置するように前記ガイドリブを形成したことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項8】
前記ガイドリブを、前記定着出口ガイドのガイド面の幅方向中央に関して左右対称に複数配置したことを特徴とする請求項1に記載のガイド機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1に記載のガイド機構を有することを特徴とする定着装置。
【請求項10】
請求項9の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15550(P2013−15550A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146132(P2011−146132)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】