説明

ガスケットアセンブリ

ガスケットアセンブリは、ガスケット層と、別個に形成されるシム層とを含む。シム層およびガスケット層は、ともにクランプされ、部材の間の継目でガスケットによりシールされるべき第1および第2の部材の間を連通する媒体搬送通路に対応する少なくとも1つの媒体搬送開口部とともに形成される。シム層は自身の後表面36に塗布される接着層を有し、これによりシム層14は第1または第2の部材のうちの1つの元のクランプ面に接着されることが可能になり、表面を築き上げ、またはガスケットとの適切なシーリングを損ない得るクランピング面上における損傷を覆い隠す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1. 技術分野
この発明は概して、マニフォルドおよびシリンダヘッドのようなともにクランプされるべき2つの部材の間に流体密封シールを確立するよう用いられるタイプの固定ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
2. 関連技術
ガスケットは典型的には、冷却液通路と吸気通路とを含むさまざまな媒体搬送開口部に対して流体タイプのシールを提供するよう内燃機関の吸込マニフォルドとシリンダヘッドとの間に配置される。いくつかのエンジン、特にしばらくの間使われた新しい型のエンジンは、シリンダヘッドおよび吸込マニフォルド上の冷却液通路の周りに、エンジン冷却液の存在下でマニフォルドとシリンダヘッドとの間に引起される意図しない電気ガルヴァーニ電池から生じると考えられる重度の腐食を示す。時間とともに、マニフォルドおよび/またはシリンダヘッドのシーリング表面は腐食および点腐食され得、これにより流体タイプのシールを維持するというガスケットの能力を損ない、しばしばこの継目でのエンジン冷却液のリークへと繋がる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
発明の概要および利点
ガスケットアセンブリは、少なくとも1つの媒体搬送開口部を有する固定ガスケットを含み、それと組み合わせて、固定ガスケットとは別個に形成され、固定ガスケットに係合する第1のクランピング表面およびガスケットから離れたほうを向く第2の対向する表面を有するシム層を含む。このシムは、ガスケットの媒体搬送開口部と整列する少なくとも1つの媒体搬送開口部を含む。接着層がシムにおける対向する部分に塗布され、シムが、ともにクランプされるべき2つの部材の一方または両方の表面に接着されることが可能になる。したがって、両方の表面がシムによって覆われるべきである場合、2つのシムを用いてもよい。事実上シムは、ともにクランプされるべき2つの部材の表面または両表面のすべてもしくは一部の上にあり、それに抗してガスケットがシールし得る新しいシーリング表面を提供する。
【0004】
この発明は、吸込マニフォルドおよび/またはシリンダヘッドのクランピング表面が腐食により点腐食された吸込ガスケット適用例に関連して特に利点を有する。損傷を受けたクランピング表面は、シムを適用することにより覆われ得、これによりガスケットのための新しいシーリング表面を提供する。したがって、シリンダヘッドおよびマニフォルドガスケットの1つまたは両方の損傷を受けた表面は、シム層をこの損傷を受けた表面の上に適用することで修理され得る。
【0005】
この発明の1つの利点は、損傷を受けたシーリング表面を修理することに対し、クランプされるべき部品を取替える必要なしに簡素でローコストの解決策を提供することであり、これにより、特にアフターマーケットにおいて修理のコストを大いに低減する。
【0006】
さらなる利点には、シールされるべきギャップが利用されるべきガスケットの実質的な使用可能幅よりも大きい適用例におけるその便利さが含まれる。このような場合、シムは、クランプされるべき部材の1つまたは両方の表面に加えられ、ギャップの有効な大きさ
を低下させ、そうでなければ可能であるようなより薄いガスケットを利用できるようにし得る。このようにして、他の態様では異なる厚みの複数のガスケットを要求するであろうたくさんの異なるシーリング適用例において同じガスケットが用いられ得るように1つのガスケットが1つ以上のシムとともに用いられ得る。
【0007】
この発明の別の局面に従えば、シムは上および下クランピング表面を有する中間層とこの層を通る少なくとも1つの開口部とからなるものであってもよく、0.005インチ以下の厚みを有し、上および下表面の一方にのみ接着剤が塗布されてもよい。シム層は、ともにクランプされるべき2つの部品をシールする際に用いられるべき標準のガスケットのすべてまたはその一部のみの形を有してもよい。
【0008】
この発明のこれらおよびその他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および添付の図面について考慮されると、より簡単に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
詳細な説明
この発明の実施例に従ったガスケットアセンブリは、図面において概して10で示され、少なくとも1つのガスケット層12および少なくとも1つの付随するシム層14を含む。
【0010】
ガスケット層12は、ブロックにおけるシリンダヘッドまたはマニフォルドのような、ともにクランプされるべき第1および第2の部材16、18の間に固定シールを提供する際に用いられる、シーリング技術では公知である多くのタイプのガスケットのいずれであってもよい。ガスケット層12は、第1および第2の部材16、18の流体搬送通路22、24と整列する少なくとも1つの流体搬送開口部20とともに形成されてもよい。ガスケット12はこの流体搬送通路22、24を取囲むよう機能し、これにより第1および第2の部材16、18における組をなすクランピング面26、28にわたって組をなす流体タイプのシールを提供する。
【0011】
ガスケット層12は、鋼からなる1つ以上の層のような、特定の用途に好適な多くの材料のうちの任意のものから製作されてもよい。ガスケットは、開口部20を取囲み、ガスケットが部材14、16の間にクランプされる際に弾性的に変形する1つ以上の弾性的に圧縮可能なシーリングビーズ30を有してもよい。単一層の金属ガスケット層12が図示されているが、複数層の金属ガスケットはガスケット産業においては周知のタイプであり、その一方または両方の側に弾性シーリングビーズが成形されてもよい金属またはプラスチックの担持体を有するもののような他のタイプのガスケットも同様であり、それらを用いてもよく、これらはこの発明により意図されるものである。このように、「ガスケット層」という用語は非常に一般的な意味において解釈されるべきであり、継目にわたってかつガスケットを通って連通する1つ以上の媒体搬送通路の継目にシールを提供するよう2つの部材の間にクランプされるように設計されるいかなるガスケットをもその意味に含むということが理解されるであろう。
【0012】
図1は、部材の一方、この場合は第1の部材16、が何らかの損傷を受けたクランピング面26を有し、これにより、ガスケット層12がこの損傷を受けたクランピング面26に抗してクランプされる際に、ガスケット層12のみによって流体タイプのシールを形成する能力が損なわれる可能性がある。この損傷は、クランピング面26における点腐食として32で模式的に図示され、たとえば通路22を通って運ばれる流体が、それ自体またはガスケット層12の存在下において第1および/または第2の部材16、18の材料に対して腐食性または反応性があるという環境下では進行し得る。たとえば、エンジン冷却液のような流体は継目にわたって反応し得、これにより、継目で電気化学的腐食を作り出
し得る所望でない腐食セルを引起し、図示するように点腐食などの形でクランピング面26、28の一方または両方に対する損傷へと繋がる。
【0013】
シム層14は、クランピング面の一方または両方の面26、28のすべてもしくは一部のみの上に適用され得る。シム層14は損傷32を事実上覆い隠し、第1および第2の部材16、18の間にクランプされる際にガスケット層12が抗してシールし得る、シム層14の新しくかつ損傷を受けてないクランピング面34を提供する。シム層14はガスケット層12とは別個に形成され、好ましくは鋼などの薄い金属のシートから形成される。たとえば、シム層14はステンレス鋼または特定の用途に望ましいものであり得る任意の他の等級の鋼から製作されされてもよい。
【0014】
クランピング面34のそれとは反対側であるシム層14の後表面36には接着層38が設けられ、これによりシム層14が前記第1または第2の部材26、18の選択されたクランピング面26、28に接着されることが可能になる。シム層14はガスケット層12の少なくとも1つの開口部20に対応する少なくとも1つの通路開口部40とともに形成される。
【0015】
図2は、開口部20が第1の部材の通路22と整列した状態で、第1の部材16のクランピング面26に接着され、クランピング面26の損傷領域32を覆うシム層14を示す。ガスケット層12はシム層14と第2の部材18のクランピング面28との間に配され、その後第1および第2の部材16、18はともにクランプされる。クランピング面26上に損傷32が存在するにもかかわらず、それでもなお、ガスケット層12は、抗してシールする損傷のないクランピング面34をシム層14において有し、これにより第1の部材16を取替えるまたはそれに新しい表面を付ける必要なしに第1および第2の部材の間に効果的なシールを提供する能力を回復させるということが分かるであろう。
【0016】
図3は図1および図2の構成に似た構成を示すが、そこでは2つのシム層14が用いられる。第1および第2の部材16、18のクランピング面26、28に損傷32があるのがわかるであろう。これらシム層14が第1および第2の部材16、18に適用されると、損傷32は図2に示される態様で覆われ、これによりガスケット層12に、それに抗してシールするシム層14の新しくかつ損傷を受けていないクランピング面34を提供する。
【0017】
シム層14が損傷を受けたクランピング面の修理(たとえば、シリンダヘッドまたはマニフォルド表面のアフターマーケット修理において)に用いられ、その修理の後に標準サイズのガスケット層が再設置されることになっている場合、修理の前と後とで、ガスケット層がクランプされるべきギャップの違いを最小限にするよう、可能な限りシム層14を薄くすることが望ましいかもしれない。言い換えれば、シム層12は、組立てられた状態において、第1および第2の部材16、18のクランピング面26の間の距離を大幅に変えることなくクランピング面の損傷領域を覆い隠す非常に薄い外板として機能すべきである。この目的のために、シム層14は、好ましくは約0.005インチ以下の厚みを有し、接着層においてはシム層の厚みよりも薄いのが好ましい。
【0018】
この発明は、シム層14が、第1および第2の部材のクランピング面26、28の間のギャップを所望の程度まで効果的に変化させることにも用いられ得るということを考慮に入れる。たとえば、5つの異なるエンジンが、似ているが、組立てられる際に結合されるべき部材の間のギャップにおけるばらつきの原因となる異なる厚みまたは複数の層を有するガスケットを必要とする場合がある。この発明に従ったシム層14を用いることにより、同じガスケットをすべての用途に用い、用途間でのギャップの違いを埋め合わせるよう選択されるシム層の厚みのみを変動させることが実現可能となる。これは、ガスケットの
販売代理業者および小売業者が異なるガスケット部品番号の在庫を減らし、各用途ごとにガスケットに適合し得る適切な厚みのシム層を手元においておくことが可能となるので、アフターマーケット環境において非常に有益であり得る。別の利点は、シム層は、さまざまな異なるガスケットよりも作るのにはるかに費用がかからないであろうということである。したがって、選択されたガスケットと各特定の用途に好適な1つ以上のシム層とを含むガスケットキットまたはアセンブリが提供され得る。
【0019】
図4および図5は、用いられ得る2つの異なるシム層14の実施例を示す。これらはただ2つの例であり、シム層は、クランピング面の損傷領域を覆い、および/またはともにクランプされるべき2つの部材の間の有効なギャップを制御する目的をガスケット層とともに達成するのに必要とされるいかなる構成にも耐え得るということは理解されるであろう。
【0020】
図4のシム層は、1つの媒体搬送開口部40およびファスナーに対応する2つの隣接する穴部42を含む。図5のシム層14は、多くの媒体搬送開口部40を含み、そのいくつかは吸込マニフォルドとシリンダヘッドとの間の吸気通路に対応し得、その他はエンジン冷却液通路および隣接するボルト穴部に対応する。
【0021】
この発明の多くの修正例および変形例が上記教示に照らし合わせて可能であることは明らかである。したがって、特許請求の範囲において、この発明は具体的に記載されたものとは違った形で実施されてもよいということは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の現在の好ましい実施例に従って製造されるガスケットアセンブリの部分分解断面図である。
【図2】図1のような図であるが、完全に設置された状態にあることを示す。
【図3】図1のような図であるが、付加的なシム層を組込んだものである。
【図4】代表的なシム層の構成の平面図である。
【図5】代表的なシム層の構成の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ガスケットとともに用いるためのガスケットシムであって、
対向する上および下クランピング表面ならびに自身の中を通る少なくとも1つの開口部を有する金属層を含み、
前記層は約0.005インチ以下の厚みを有し、前記ガスケットシムはさらに、
前記上および下表面の1つに対して塗布される接着剤を含む、ガスケットシム。
【請求項2】
前記層は複数の開口部を含み、その少なくとも1つは媒体搬送開口部である、請求項1に記載のシム。
【請求項3】
前記接着剤は前記金属層よりも薄い、請求項1に記載のシム。
【請求項4】
前記金属層は、それが用いられるべき固定ガスケットの形状に対応する一般的なガスケット形状を有する、請求項1に記載のシム。
【請求項5】
少なくとも1つの媒体搬送開口部を有する固定ガスケットと、
前記固定ガスケットとは別個に形成され、前記固定ガスケットに係合する第1のクランピング表面と、第2の対向する表面と、前記固定ガスケットの前記少なくとも1つの媒体搬送開口部と整列する少なくとも1つの媒体搬送開口部とを有する少なくとも1つのシム層と、
前記対向する表面に塗布される接着層とを含む、ガスケットアセンブリ。
【請求項6】
前記シム層は複数の開口部を含む、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記接着は前記固定ガスケットから間隔をおいている、請求項5に記載のアセンブリ。
【請求項8】
シールされるべき2つの部材の対向するクランピング表面の間のギャップをシールする方法であって、
シム層をクランピング表面の少なくとも1つに接着するステップと、
ガスケットを少なくとも1つのシム層の上に位置決めし、部材をともにクランプするステップとを含む、方法。
【請求項9】
シム層の厚みを0.005インチ以下に制限するステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
シム層およびガスケットの媒体搬送開口部を、シールされるべき部材の関連付けられる開口部と整列させるステップを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
さらなるシム層を他方のクランピング表面に対して、シールされるべき2つの部材のクランピング表面に接着されるこれら2つのシム層の間にガスケット層が位置決めおよびクランプされるように、接着するステップを含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−503404(P2009−503404A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524132(P2008−524132)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029115
【国際公開番号】WO2007/016205
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】