説明

ガスケット及びその製造方法

【課題】シール性能がよく、歩留まりのよいガスケット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールするガスケット1であって、透孔2aを備えた平板状芯金2と、該芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部に沿ってゴム材の加硫接着により固着一体に形成されたシール部3とよりなり、上記芯金の表面には、上記シール部が形成される部位からその面域方向に延びる溝2bが形成され、該溝は上記ゴム材の加硫接着時において未加硫ゴムの逃げ代となるものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールするガスケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のような2部材間をシールするガスケットとしては、下記特許文献1に挙げられるような透孔を備えた平板状芯金と、該芯金の透孔の周縁部に沿って固着一体に形成されたゴム材製シール部とよりなるガスケットが知られている。
該ガスケットは、成型型内に芯金を配置し、未加硫ゴムを装填して加硫成型することにより、芯金とシール部とを固着一体にして形成されてなるものであるが、このようなガスケットの成型時において、シール部を形成するキャビティ内に未加硫ゴムが十分に行き亘るよう余分に装填すると、この余分な未加硫ゴムは、キャビティ内から溢れ出て、逃げ場がなくなり、芯金の表面にゴムの薄膜が形成されてしまうという問題があった。
そこで、下記特許文献1には、シール部から芯金側に僅かに離間させた位置に環状溝が形成されたガスケットが開示されている。
【特許文献1】特開2000−320678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これによれば、上記環状溝が、成型時に余分に装填された未加硫ゴムの溢れ吸収空間となるので、芯金の表面に薄膜が形成されることを阻止することができる。
しかしながら、上記環状溝は、シール部が形成される位置から僅かながらも離間させた位置に形成されているので、シール部から環状溝或いは、シール部及び環状溝から芯金の表面への未加硫ゴムの漏れが生じ易く、また未加硫ゴムをキャビティ内に流し込む際に生じるエアや加硫時に発生するガス等の巻き込みを防止することができないものであった。
このようにエアやガス等を巻き込んで未加硫ゴムが加硫成型されると、そこが疵となり、ガスケットとして、シール性能が低下する要因となる。また締付ボルト部にこのようなガスケットが介装されると、軸力を保持できず、トルク低下の要因となり問題であった。
【0004】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、シール性能がよく、歩留まりのよいガスケット及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るガスケットは、相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールするものであって、透孔を備えた平板状芯金と、該芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部に沿ってゴム材の加硫接着により固着一体に形成されたシール部とよりなり、上記芯金の表面には、上記シール部が形成される部位からその面域方向に延びる溝が形成され、該溝は上記ゴム材の加硫接着時において未加硫ゴムの逃げ代となるものであることを特徴とする。
【0006】
また本発明に係るガスケットの溝は、芯金の両面或いは片面に形成されているものとすることができ、更に本発明に係るガスケットのシール部は、前記芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部の周縁端面を表裏に亘り覆い且つ芯金の厚みより厚く形成されているものとすることができる。
【0007】
そして本発明に係るガスケットの製造方法は、芯金の受容部及びシール部形成キャビティを備えた成型型の該受容部内に前記透孔及び溝を備えた前記芯金を配置し、次いで該キャビティ内に未加硫ゴムを装填して未加硫ゴムを加硫成型し、芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部に沿ってゴム材の加硫接着によりシール部が固着一体に形成されたガスケットを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明に係るガスケットによれば、芯金の表面には、シール部が形成される部位からその面域方向に延びる溝が形成されているので、該溝はゴム材の加硫成型時において未加硫ゴムの逃げ代とすることができる。よって、成型時の余剰のゴム材によって、芯金の表面にゴムの薄膜が形成されることなく、シール性能のよいガスケットとすることができる。また上記溝は、シール部において加硫時に発生するエアやガス等の逃げ道ともなり、エアやガス等を巻き込んだ状態で未加硫ゴムが加硫成型されることがないので、シール部にへこみ等の疵が生じにくく、歩留まりのよいガスケットとすることができる。更にシール部が形成される部位からその面域方向に溝が形成されているので、この溝そのものをバリ溝とし、或いはこの溝に通じるバリ溝を形成することにより、バリ溝をシール部に影響のない部位に形成することもできる。
【0009】
請求項2の発明に係るガスケットによれば、上記溝は、芯金の両面或いは片面に形成されているものとすることができる。よって、シール部の形成態様に応じて、任意に溝を形成することができる。
【0010】
請求項3の発明に係るガスケットによれば、ガスケットのシール部は、前記芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部の周縁端面を表裏に亘り覆い且つ芯金の厚みより厚く形成されているものとすることができる。よって、2部材の締結一体時には、シール部が弾性変形し、シール性のよいガスケットとすることができる。
【0011】
請求項4の発明に係るガスケットの製造方法によれば、芯金に溝が形成されているので、シール部形成キャビティ内に十分に未加硫ゴムを行き亘らせることができ、キャビティから溢れ出た未加硫ゴムは溝へと流れ込むので、芯金の表面にゴムの薄膜が形成されることなく、シール性能のよいガスケットを製造することができる。また芯金の溝が逃げ代となり、シール部においてエアやガス等を含んだ未加硫ゴムが加硫成型されることがないので、シール部にへこみ等の疵が生じにくく、歩留まりのよいガスケットを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の最良の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本発明のガスケットの一例を示す断面図、図2は、図1におけるガスケットの一部断面図、図3(a)(b)、図4(a)(b)は本発明のガスケット係る芯金の例を示す平面図、図5(a)乃至(c)は本発明のガスケットに係る芯金の溝の断面形状を示す一部断面図、図6(a)(b)は、本発明の製造方法に基づく成型過程を示す図である。
【実施例】
【0013】
本発明のガスケットは、相互に締結一体とされる2部材間に介装され、2部材間をシールするものであり、シールワッシャーやシリンダヘッドガスケット等に適用可能とするものである。
図1、図2には透孔2aを備えた平円環状でなる芯金2と、該芯金2の透孔内周縁部に固着一体とされたシール部3とからなるガスケット1を示している。
図1は、芯金2に溝2bが形成されている部分の断面図を示しており、図2は、該溝2bが形成されていない部分の一部断面図を示している。
ガスケット1の芯金2の表面には、シール部3が形成される部位からその面域方向に延びる溝2bが形成されており、該溝2bは、シール部3を形成するゴム材の加硫接着時において、未加硫ゴムの逃げ代となるものである。
【0014】
ガスケット1のシール部3は、シリコーンゴム、パーフルオロエラストマー、ブチルゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、ブタジエンゴム、ポリイソブチレン、フッ素ゴム、エチレン−プロピレンゴム等のゴム材でなり、ガスケット1のシール部3の形状は特に限定するものではないが、図例のように芯金2の内周縁端面を表裏に亘り覆い、芯金2の厚みより厚く形成され、上下にビード部3bを有したものとすれば、2部材間に介在させ相互に締結一体とさせた場合、上記ビード部3bが圧縮変形し、その復元弾力によってシール性が維持される。
芯金2は、鋼板により打抜き成形されたものが適宜採用される。
【0015】
図3(a)(b)及び図4(a)(b)は、溝2bが両面に形成された芯金2の例を種々示したものである。
図3(a)は図1、図2に示す芯金2の平面図であり、シール部3が形成される内周縁部から外周縁部に向かって放射状、且つ直線的に4箇所の溝2bが掘削形成されている。
図3(b)は図3(a)の変形例であり、シール部3が形成される内周縁部から外周縁部に向かって放射状に4箇所の溝2bが形成されている点は共通するが、溝2bが曲線的に形成されている点が異なるものである。
なお、溝2bの形成態様はこれに限定されず、溝2bを内周縁部から外周縁部に向かって蛇行させて形成したものであってもよい。
【0016】
図3(a)(b)に示すような溝2bが掘削された芯金2を用いれば、芯金2にシール部3を加硫成型する際において、溝2bが未加硫ゴムの逃げ代となるから、余剰のゴム材によって、芯金2の表面に薄膜が形成されることなく、シール性能のよいガスケット1を得ることができる。また溝2bが形成されていることにより、シール部3において加硫時に発生するエアやガス等を含んだ状態で未加硫ゴムが加硫成型されることがなく、歩留まりのよいガスケット1を得ることができる。更にこのようにゴム材の溝2bが内周縁部から外周縁部へ形成されたものとすれば、シール部3以外の部位にゴム材のバリ溝を形成することもできる。そして、本発明によるガスケット1を締付ボルトのシールワッシャーとして用いる場合は、上述のようにシール性能がよいので、軸の保持力が増し、トルク低下の要因を防ぐことができる。
【0017】
図4(a)は図3(a)の更なる変形例であり、シール部3が形成される内周縁部から外周縁部に向かって放射状、且つ直線的に4箇所の溝2bが掘削形成されている点は共通するが、芯金2の内周縁部から溝2bへの角部が面取りされた面取角部2cとされている点が異なるものである。
これによれば、上述の効果に加えて、芯金2にシール部3を加硫成型する際に、溝2bへの未加硫ゴムの流入を促すことができ、一層効果的に芯金2の表面に薄膜が形成されることやエアやガス等を含んだ未加硫ゴムが加硫成型されることを阻止することができる。
尚、図3(a)(b)、図4(a)の例では、内周縁部から外周縁部に向かって溝2bが突き抜けて形成された例を示しているが、これに限定されずシール部3が形成される内周縁部から外周縁部へ向かう途中まで形成されたものとしてもよい。また図例のものは、溝2bを芯金2の両面に形成したものを示しているが、これに限定されず、片面にのみ形成されたものとしてもよい。更に溝2bが形成される箇所は図例のように4箇所に限定されるものではなく、ガスケット1の大きさ等に応じて適宜形成可能である。
【0018】
図4(b)は芯金2に溝2bが形成された点は共通するが、この例では、溝2bは芯金2の両面に形成され、シール部3が形成される芯金2の内周縁部にも内周溝2dが形成されている点で異なるものである。芯金2にシール部3を加硫成型する際には、未加硫ゴムが芯金2の内周溝2d、溝2b、そして芯金2の外周縁部の切欠部2eから反対面まで回りこみ、これら溝の形成部分の表裏に亘ってゴム材で覆われる。
これによれば、上述の効果に加えて、芯金2とシール部3との一体性が向上するので、これらが強固に一体とされたガスケット1を得ることができる。
尚、溝2bが形成される箇所は図例のように4箇所に限定されるものではなく、ガスケット1の大きさ等に応じて適宜形成可能である点は上述の例と同様である。また図4(a)の例のように、芯金2の内周縁部から溝2bへの角部を面取りしたものとすれば、スムーズに溝2bへの未加硫ゴムの流入を促すことができる。
【0019】
図5(a)乃至(c)は芯金に形成される溝の断面形状の例を示した一部断面図である。
図5(a)は溝2bの断面が方形に掘削されたものである。図5(b)は溝2bの断面が先細の三角形状に掘削されたものである。図5(c)は溝2bの断面が半円形状に掘削されたものである。
このように溝2bの断面形状は特に限定されるものではなく、加工するにおいて、掘削のしやすさや、芯金2の材質、装填されるゴム材の粘度等を考慮して採択可能である。
【0020】
次いで、本発明のガスケット1を製造する方法について説明する。
図6(a)(b)は、本発明の製造方法に基づく成型過程を示す図であり、図6(a)は芯金を配置し、上型と下型とを組み付けた状態を示しており、図6(b)は未加硫ゴムがキャビティ内に装填され、加硫成型された状態を示している。
ここでは、芯金2の両面に溝2aが形成されている図1に示すガスケット1の製造方法を示している。
【0021】
上型4と下型5とでなる成型型は、芯金2の受容部及びシール部形成キャビティCを備えており、まず、下型5の芯金受容部に透孔2aと溝2bを備えた芯金2を配置し、上型4を組み付ける(図6(a)参照)。
そして、注入口(不図示)から未加硫のゴム材を射出装填していく。
このとき未加硫ゴムは、シール部形成キャビティC内に装填され、そして該キャビティC内から溢れ出た未加硫ゴムは、芯金2の表面ではなく、芯金2の内周縁部から溝2bへと流入するので、該キャビティC内のエアや加硫によって発生するガス等は未加硫ゴムと一緒に溝2b側へと流入が促され、シール部3が形成される部位へへこみ等の疵を残すことがない。またここでは図示していないが、溝2bが形成されている部位にバリ溝を形成すれば、シール部3に影響のない箇所にバリが形成され、一層シール性の高いガスケット1を得ることができる。
こうして、未加硫ゴムをシール部形成キャビティC及び溝2b内に注入装填した後、加硫成型をし、芯金2とシール部3とが固着一体とされたガスケット1を得ることができる(図6(b)及び図1参照)。
尚、ここでは芯金2の両面に溝2bが形成された例を示しているが、片面に形成されたものでも同様に製造可能であることは言うまでもない。
【0022】
上記実施例では、透孔2aを円形に形成されたものについて説明したが、透孔2aの形状はこれに限定されず方形等であってもよい。この他、芯金2、シール部3の形状等もこれに限定されず、その形状は介装される箇所によって適宜選択されるものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のガスケットの一例を示す断面図である。
【図2】図1におけるガスケットの一部断面図である。
【図3】(a)(b)は本発明のガスケット係る芯金の例を示す平面図である。
【図4】(a)(b)は本発明のガスケット係る芯金の例を示す平面図である。
【図5】(a)乃至(c)は本発明のガスケットに係る芯金の溝の断面形状の例を示す一部断面図である。
【図6】(a)(b)は、本発明の製造方法に基づく成型過程を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ガスケット
2 芯金
2a 透孔
2b 溝
3 シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールするガスケットであって、
透孔を備えた平板状芯金と、該芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部に沿ってゴム材の加硫接着により固着一体に形成されたシール部とよりなり、上記芯金の表面には、上記シール部が形成される部位からその面域方向に延びる溝が形成され、該溝は上記ゴム材の加硫接着時において未加硫ゴムの逃げ代となるものであることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記溝は、前記芯金の両面或いは片面に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の密封装置において、
前記シール部は、前記芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部の周縁端面を表裏に亘り覆い且つ芯金の厚みより厚く形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のガスケットの製造方法であって、
前記芯金の受容部及びシール部形成キャビティを備えた成型型の該受容部内に前記透孔及び溝を備えた前記芯金を配置し、次いで該キャビティ内に未加硫ゴムを装填して未加硫ゴムを加硫成型し、芯金の透孔内周縁部及び/又は外周縁部に沿ってゴム材の加硫接着によりシール部が固着一体に形成されたガスケットを得ることを特徴とするガスケットの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−57730(P2008−57730A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−237972(P2006−237972)
【出願日】平成18年9月1日(2006.9.1)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】