説明

ガスセンサおよびそれを備えた空燃比制御装置ならびに輸送機器

【課題】外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適したガスセンサを提供する。
【解決手段】本発明によるガスセンサは、所定のガスを検出するためのガス検出部11を先端部に有するセンサ素子10と、その下端側にガス検出部11が突出するようにセンサ素子10が挿通配置されるハウジング20と、センサ素子10の後端部に接続された端子40と、ハウジング20の上端側に設けられ、端子40を収容するカバー60と、センサ素子10および端子40の両方が挿入される孔70aを有し、端子40をセンサ素子10に固定する端子固定部材70とを備える。センサ素子10は、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置するように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスセンサに関する。また、本発明は、ガスセンサを備えた空燃比制御装置や輸送機器にも関する。
【背景技術】
【0002】
環境問題やエネルギー問題の観点から、内燃機関の燃費を向上させたり、内燃機関の排気ガス中に含まれる規制物質(NOxなど)の排出量を低減したりすることが求められている。このためには、常に最適な条件で燃料の燃焼が行えるよう、燃焼状態に応じて燃料と空気との比率を適切に制御する必要がある。空気と燃料との比率は空燃比(A/F)と呼ばれ、三元触媒を用いる場合、最適な空燃比は理論空燃比である。理論空燃比とは、空気と燃料とが過不足なく燃焼する空燃比である。
【0003】
理論空燃比で燃料が燃焼している場合、排気ガス中には一定の酸素が含まれる。空燃比が理論空燃比よりも小さい(つまり燃料の濃度が相対的に高い)場合には、排気ガス中の酸素濃度が、理論空燃比の場合の酸素濃度に比べて減少する。一方、空燃比が理論空燃比よりも大きい(つまり燃料の濃度が相対的に低い)場合には、排気ガス中の酸素濃度は増加する。このため、排気ガス中の酸素濃度を計測することによって、空燃比が理論空燃比からどの程度ずれているかを推定し、空燃比を調節して最適な条件で燃料が燃焼するように制御することが可能となる。
【0004】
排気ガス中の酸素濃度を計測するための酸素センサとしては、特許文献1に開示されているような起電力型の酸素センサや、特許文献2に開示されているような抵抗型の酸素センサが知られている。起電力型の酸素センサは、固体電解質層の表面に設けられた基準電極および測定電極(それぞれ空気および排気ガスに晒される)間での酸素分圧の違いを起電力として検出することによって酸素濃度を測定する。これに対し、抵抗型の酸素センサは、排気ガスに晒される酸化物半導体層の抵抗率の変化を検出することによって酸素濃度を測定する。
【0005】
酸素センサは、排気管に設けられるため、外部からの衝撃に対する耐性に優れていることが要求される。排気管の周辺には、走行中に石が飛来することがあり、そのような飛石が酸素センサに衝突すると(「チッピング」と呼ばれる)、その衝撃によって酸素センサの内部が破損することがあるからである。
【0006】
特許文献3には、外部からの衝撃に対する耐性に優れた酸素センサが開示されている。図14に、特許文献3に開示されている酸素センサ800を示す。酸素センサ800は、図14に示すように、酸素を検出するためのガス検出部811を先端部に有するセンサ素子810と、センサ素子810が挿通配置されるハウジング820とを備えている。
【0007】
センサ素子810は、ハウジング820の下端側にガス検出部811が露出するように配置されている。このセンサ素子810は、図15に示すように、ジルコニアを主成分として含む材料から形成された固体電解質基板812と、固体電解質基板812を所定の活性化温度に昇温させるためのヒータ815を有するヒータ基板816とが積層された構成を有している。
【0008】
センサ素子810のガス検出部811は、固体電解質基板812の主面上に設けられた測定電極813と、固体電解質基板812の裏面上に設けられた基準電極814と、これらの間に位置する固体電解質基板812とから構成される。固体電解質基板812の後端部には、測定電極813に電気的に接続された端子接続用電極813aと、基準電極814に電気的に接続された端子接続用電極814aが設けられている。
【0009】
ヒータ基板816は、セラミックス材料から形成されており、その内部にヒータ815が埋設されている。ヒータ基板816の後端部には、ヒータ815に電気的に接続された端子接続用電極815aが設けられている。
【0010】
ハウジング820は、図14に示すように、筒状であり、その外側面に、ねじ山が形成されたねじ部820aおよび径方向外側に突出した鍔部820bを有している。ねじ部820aを排気管に形成されたねじ孔に螺合させることにより、酸素センサ800を排気管に固定することができる。
【0011】
ハウジング820の下端側には、センサ素子810のガス検出部811を覆うように内側プロテクタ831および外側プロテクタ832が設けられている。内側プロテクタ831および外側プロテクタ832のそれぞれには、排気ガスを内部に導入するための通気孔833が形成されている。
【0012】
酸素センサ800は、さらに、センサ素子810の後端部に接続された端子840、端子840を介してセンサ素子810に電気的に接続されたリード線850、ハウジング820の上端側に設けられたカバー860および端子840をセンサ素子810に固定する端子固定部材870を備えている。
【0013】
カバー860は、金属材料から形成されており、センサ素子810の後端部や、端子固定部材870、端子840、リード線850などを収容する。カバー860の上端部付近には、カバー860を封口するゴム部材862が配置されており、ゴム部材862は、カバー860の上端部近傍860aをかしめることによって固定されている。
【0014】
端子840は、金属材料から形成されている。端子840の先端部が、センサ素子810の後端部において端子接続用電極813a、814aおよび815aに接続されることにより、センサ素子810とリード線850とが電気的に接続されている。
【0015】
リード線850は、ゴム部材862に形成された貫通孔に挿通されている。ゴム部材862の下側には、カバー860の縮径部860bによって係止されたセラミックスセパレータ864が設けられており、リード線850と端子840とは、セラミックスセパレータ864に形成された貫通孔864a内で接続されている。
【0016】
端子固定部材870は、セラミックス材料から形成されており、センサ素子810および端子840の両方が挿入される孔を有している。端子固定部材870のこの孔内でセンサ素子810と端子840とが接続されている。
【0017】
酸素センサ800では、センサ素子810とハウジング820との間は、セラミックス粉末821によって気密封止されている。セラミックス粉末821は、例えば滑石(タルク)であり、第1セラミックスホルダ822および第2セラミックスホルダ823によって挟持されている。第1セラミックスホルダ822は、セラミックス粉末821を支持するために設けられている。また、第2セラミックスホルダ823は、セラミックス粉末821を押すことによって圧縮するために設けられている。第2セラミックスホルダ823は、ハウジング820の上端部に形成されたかしめ部820cによって固定されている。かしめ部820cと第2セラミックスホルダ823との間には、環状パッキン824が配置されている。
【0018】
図14に示した酸素センサ800では、カバー860の内周面と端子固定部材870との間に所定の空隙が設けられている。そのため、カバー860に外部から衝撃が加えられても、その衝撃を吸収することができるので、センサ素子810を保護することができる。
【特許文献1】特開平8−114571号公報
【特許文献2】特開平5−18921号公報
【特許文献3】特開2003−294682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、特許文献3に開示されている酸素センサ800のように、カバー860の内周面と端子固定部材870との間に空隙を設けると、空隙の分だけカバー860の外径が大きくなってしまう。そのため、カバー860の総断面積が増加し、排気管からの熱が酸素センサ800の上部まで伝わり易くなるので、その対策として酸素センサ800の全長を長くしなければならなくなり、酸素センサ800が大型になってしまう。自動二輪車のように排気管の周囲に空間的な余裕が乏しくその配置が難しい輸送機器では、酸素センサの大型化は由々しき問題である。
【0020】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適したガスセンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明によるガスセンサは、所定のガスを検出するためのガス検出部を先端部に有するセンサ素子と、その下端側に前記ガス検出部が突出するように前記センサ素子が挿通配置されるハウジングと、前記センサ素子の後端部に接続された端子と、前記ハウジングの上端側に設けられ、前記端子を収容するカバーと、前記センサ素子および前記端子の両方が挿入される孔を有し、前記端子を前記センサ素子に固定する端子固定部材と、を備え、前記センサ素子は、前記センサ素子の後端が前記ハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されている。
【0022】
ある好適な実施形態において、前記ハウジングは、径方向外側に突出する鍔部を有し、前記センサ素子は、前記センサ素子の後端が前記鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されている。
【0023】
ある好適な実施形態において、前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記センサ素子の後端以上の高さに位置するように配置されている。
【0024】
ある好適な実施形態において、前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記ハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されている。
【0025】
ある好適な実施形態において、前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記センサ素子の後端以上で前記鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されている。
【0026】
ある好適な実施形態において、本発明によるガスセンサは、ガラス材料から形成され、前記センサ素子を前記ハウジングに対して固定するガラスシール部をさらに備える。
【0027】
ある好適な実施形態において、前記センサ素子は、前記ガス検出部を支持する基板をさらに有し、前記基板は、アルミナから形成されている。
【0028】
ある好適な実施形態において、前記端子は、ニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金から形成されている。
【0029】
ある好適な実施形態において、前記カバーは、0.7mm以下の厚さを有する。
【0030】
ある好適な実施形態において、本発明によるガスセンサは、酸素センサである。
【0031】
本発明による空燃比制御装置は、上記構成を有するガスセンサを備える。
【0032】
本発明による輸送機器は、上記構成を有する空燃比制御装置を備える。
【0033】
本発明によるガスセンサでは、センサ素子は、その後端がハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されている。つまり、センサ素子は、カバーに比べて剛性が高く変形しにくいハウジングの上端から突出していない。そのため、外部からの衝撃によってカバーが変形しても、センサ素子には衝撃応力が及びにくく、センサ素子の破損(例えば基板の折れ)の発生が抑制される。また、本発明によるガスセンサでは、従来のガスセンサのように外部からの衝撃を吸収するための大きな空隙をカバーの内側に設ける必要がないので、カバーの外径を小さくすることができる。カバーの外径が小さいと、高温に晒されるガス検出部側からの熱がガスセンサの上部に伝わりにくいので、ガスセンサの全長を短くしてガスセンサの小型化を図ることができる。このように、本発明によるガスセンサは、外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適している。
【0034】
ハウジングが径方向外側に突出する鍔部を有している場合には、センサ素子は、その後端が鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されていることが好ましい。鍔部は、ハウジングの上端近傍(鍔部よりも上側の部分)に比べ、径方向の厚さが大きいのでさらに剛性が高く変形しにくい。そのため、センサ素子の後端が鍔部の上面以下の高さに位置していることによって、センサ素子の破損をより確実に抑制することができる。
【0035】
また、衝撃からセンサ素子を十分に保護するためには、横方向(ハウジングやカバーの径方向)から見たときに、センサ素子が後端まで端子固定部材によって覆われていることが好ましい。つまり、端子固定部材は、その上端がセンサ素子の後端以上の高さに位置するように配置されていることが好ましい。
【0036】
ただし、端子固定部材の上端がハウジングの上端から突出しすぎていると、外部からの衝撃によって変形したカバーが端子固定部材に接触してしまう可能性があり、そのことによってセンサ素子に衝撃応力が及ぶことがある。そのため、端子固定部材は、その上端がハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されていることが好ましく、その上端がセンサ素子の後端以上で鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されていることがさらに好ましい。
【0037】
本発明によるガスセンサは、ガラス材料から形成され、センサ素子をハウジングに対して固定するガラスシール部をさらに備えることが好ましい。ガラスシール部を含む気密封止構造は、滑石のようなセラミックス粉末を含む気密封止構造に比べて必要な部材の数が少ないので、センサ素子の全長を短くすることができる。そのため、センサ素子の後端をハウジングの上端以下の高さに位置させることが容易となる。
【0038】
また、センサ素子の全長を短くするためには、センサ素子の基板がアルミナから形成されていることが好ましい。アルミナ基板はジルコニア基板に比べると熱衝撃に強いので、センサ素子の基板としてアルミナ基板を用いると、ジルコニア基板を用いる場合のように熱衝撃を緩和するための付加的な構成を設ける必要がない。そのため、センサ素子の全長を短くすることができ、センサ素子の後端をハウジングの上端以下の高さに位置させることが容易となる。
【0039】
また、センサ素子の全長を短くするためには、端子がニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金から形成されていることも好ましい。端子がこのような材料から形成されていると、端子の耐熱性を十分に高くすることができるので、高温に晒されるガス検出部からセンサ素子と端子との接続箇所までの距離を短くすることができる。つまり、センサ素子の全長を短くすることができる。そのため、センサ素子の後端をハウジングの上端以下の高さに位置させることが容易となる。
【0040】
高温に晒されるガス検出部側からガスセンサ上部への熱の伝達を抑制するためには、カバーの厚さは、0.7mm以下であることが好ましい。0.7mm以下の厚さを有するカバーは、剛性が十分ではなく、飛石が衝突したときに変形しやすいことがあるが、本発明によれば、そのような薄いカバーを用いる場合であっても、外部からの衝撃に対する耐性を十分に高くすることができる。
【0041】
本発明は、ガスセンサ全般に広く用いることができ、例えば、酸素を検出する酸素センサに好適に用いることができる。本発明による酸素センサは、内燃機関の空燃比を制御する空燃比制御装置に好適に用いられ、本発明による酸素センサを備えた空燃比制御装置は、各種の輸送機器に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によると、外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適したガスセンサが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、以下では酸素を検出するための酸素センサを例示するが、本発明は酸素センサに限定されず、ガスセンサ全般に好適に用いられる。
【0044】
図1に、本実施形態における酸素センサ100を示す。酸素センサ100は、図1に示すように、センサ素子10と、センサ素子10が挿通配置されるハウジング20とを備えている。
【0045】
センサ素子10は、所定のガス(ここでは酸素)を検出するためのガス検出部11と、ガス検出部11を支持する基板12とを有している。ガス検出部11は、センサ素子10の先端部に設けられており、センサ素子10は、ハウジング20の下端側にガス検出部11が突出する(露出する)ように配置されている。
【0046】
本実施形態におけるセンサ素子10は、抵抗型のセンサ素子である。図2に、抵抗型のセンサ素子10の具体的な構造の一例を示す。抵抗型のセンサ素子10のガス検出部11は、酸化物半導体から形成された酸化物半導体層13と、酸化物半導体層13の抵抗率を検出する検出電極14とを含んでいる。
【0047】
酸化物半導体層13は、微小な酸化物半導体粒子を含む多孔質構造を有し、雰囲気(つまり排気ガス)中の酸素分圧に応じて酸素を放出あるいは吸収する。これにより、酸化物半導体層13中の酸素空孔濃度が変化するので、酸化物半導体層13の抵抗率が変化する。酸化物半導体層13の材料としては、例えばチタニア(二酸化チタン)やセリア(ニ酸化セリウム)を用いることができる。
【0048】
検出電極14は、導電性を有する材料から形成されており、典型的には、白金や白金ロジウム合金、金などの金属材料から形成されている。酸化物半導体層13の抵抗率の変化を効率よく計測するためには、検出電極14の酸化物半導体層13に重なる部分は、図2に示されているように、櫛歯状に形成されていることが好ましい。また、検出電極14は、後述する端子40との接続のために、センサ素子10の後端部まで引き延ばされている。
【0049】
基板12は、絶縁性を有する材料から形成されており、典型的には、アルミナなどのセラミックス材料から形成されている。基板12の互いに対向する2つの主面12aおよび12bのうちの一方の主面12a上に、上述した酸化物半導体層13および検出電極14が設けられている。他方の主面12b上には、ガス検出部11を昇温させるためのヒータ15が設けられている。
【0050】
ヒータ15は、抵抗損失を利用して加熱を行う抵抗加熱型の発熱素子である。ヒータ15の材料としては、白金やタングステンなどの金属材料を用いることができる。また、非金属材料を用いることもでき、例えば、酸化レニウムなどの良導体酸化物を用いることができる。ヒータ15からセンサ素子10の後端部まで引き延ばされたヒータ電極15aに電圧を印加することにより、加熱が行われる。ヒータ15によってガス検出部11を(より具体的には酸化物半導体層13を)昇温させて速やかに活性化させることにより、内燃機関の始動時における検出精度を向上させることができる。
【0051】
なお、ここでは図示していないが、酸化物半導体層13上には、触媒層が設けられていることが好ましい。触媒層は、触媒金属を含んでおり、触媒金属の触媒作用によって、検出すべきガス(つまり酸素)以外の少なくとも1種の物質を分解する。具体的には、ガス検出部11による酸素の検出に悪影響を及ぼすガスや微粒子(例えば完全には燃焼しなかった炭化水素や炭素、窒素酸化物など)を分解し、そのようなガスや微粒子が酸化物半導体層13の表面に付着するのを防止する。触媒金属としては、例えば白金が用いられる。また、センサ素子10としては、ここで例示した抵抗型のセンサ素子に限定されず、公知の種々の方式のセンサ素子を用いることができる。
【0052】
ハウジング20は、図1に示しているように、筒状である。ただし、ハウジング20の内径は、軸方向において一定ではない。具体的には、ハウジング20の内径は、ハウジング20の下端側で小さく、上端側で大きい。つまり、ハウジング20の内側をセンサ素子10の挿通孔と考えたとき、このセンサ素子挿通孔は、ハウジング20の下端側に小径部を有し、上端側に大径部を有している。
【0053】
また、ハウジング20の外径も軸方向において一定ではない。ハウジング20は、その外側面に、ねじ山が形成されたねじ部20aおよび径方向外側に突出した鍔部20bを有している。ねじ部20aを排気管に形成されたねじ孔に螺合させることにより、酸素センサ100を排気管に固定することができる。ハウジング20は、典型的には、金属材料(例えばステンレス鋼)から形成されている。
【0054】
ハウジング20の下端側には、センサ素子10のガス検出部11を覆うようにプロテクタ30が設けられている。プロテクタ30は、内側プロテクタ31および外側プロテクタ32から構成された二重構造を有している。内側プロテクタ31および外側プロテクタ32のそれぞれには、排気ガスを内部に導入するための開口部(通気孔)33が形成されている。排気管内を流れる排気ガスがガス検出部11に直接当たらないように、内側プロテクタ31の開口部33と外側プロテクタ32の開口部33とは、径方向から見たときに互いに重ならないように配置されていることが好ましい。内側プロテクタ31および外側プロテクタ32は、ステンレス鋼などの金属材料から形成されており、ハウジング20に例えば溶接によって接合されている。
【0055】
本実施形態における酸素センサ100は、さらに、センサ素子10の後端部に接続された端子40、端子40を介してセンサ素子10に電気的に接続されたリード線50、ハウジング20の上端側に設けられたカバー60、端子40をセンサ素子10に固定する端子固定部材70およびセンサ素子10をハウジング20に対して固定するガラスシール部80を備えている。
【0056】
端子40は、ステンレス鋼やニッケル合金などの金属材料から形成されている。端子40の先端部が、センサ素子10の後端部において検出電極14やヒータ電極15aに接続されることにより、センサ素子10とリード線50とが電気的に接続されている。
【0057】
リード線50は、金属材料(例えば銅)から形成されており、絶縁材料(PTFEなどの樹脂)によって被覆されている。また、リード線50は、樹脂材料(例えばPTFE)から形成された防水キャップによってさらに被覆されている。リード線50は、外部(例えば空燃比制御装置のコンピュータ)に接続されており、センサ素子10と外部との間での電気的な入出力(例えばセンサ素子10からの検出信号の出力や、センサ素子10への電力の供給)は、リード線50を介して行われる。
【0058】
カバー60は、筒状(例えば円筒状)であり、端子40およびリード線50を収容する。カバー60は、ステンレス鋼などの金属材料から形成されており、ハウジング20に例えば溶接によって接合されている。カバー60の上端部付近には、カバー60を封口する封口部材62が配置されている。
【0059】
封口部材62は、ゴム材料(例えばフッ素ゴム)から形成されており、リード線50が挿通される貫通孔を有している。カバー60の上端部近傍60aを内側にかしめることによって、リード線50が固定されるとともに、カバー60が封口されている。
【0060】
端子固定部材70は、センサ素子10および端子40の両方が挿入される孔70aを有しており、この孔70a内でセンサ素子10と端子40とが接続されている。図3に、端子固定部材70周辺を拡大して示す。図3(a)は、図1中の3A−3A’に沿った断面図であり、図3(b)は、図3(a)において端子固定部材70以外の構成要素を省略した図である。
【0061】
端子固定部材70の孔70aは、図3(b)に示すように、センサ素子10が挿入されるセンサ素子挿入部70a1と、端子40が挿入される端子挿入部70a2とを含んでいる。本実施形態では、端子40の先端部が、ばね性を有する板材を折り返すことによって構成されており、このような端子40の先端部が、図1および図3(a)に示すように、孔70a内において、センサ素子10の検出電極14やヒータ電極15aに弾性的に当接している。
【0062】
ガラスシール部80は、ガラス材料から形成されている。より具体的には、ガラスシール部80は、ガラス材料を熱処理によって溶融させ、その後固化させることによって形成されている。ガラス材料としては、封止材として公知の種々の材料(例えば亜鉛シリカホウ酸系結晶化ガラス)を用いることができる。ガラスシール部80によってセンサ素子10とハウジング20との間が気密封止されていることにより、ハウジング20の上端側、すなわち、封口部材62や端子40、リード線50の設けられている空間への排気ガスの侵入が防止される。ガラスシール部80および端子固定部材70は、ハウジング20の内径が大きい部分、つまり、ハウジング20のセンサ素子挿通孔の大径部内に配置されている。
【0063】
本実施形態における酸素センサ100では、センサ素子10は、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置するように配置されている。図1には、ハウジング20の上端20Eによって規定される仮想平面Pを破線で示している。なお、図1には、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eと同じ高さに位置している場合を例示しているが、後述するように、センサ素子10の後端10Eはハウジング20の上端20Eよりも下側(ガス検出部11側)に位置していてもよい。
【0064】
本実施形態のように、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置していることにより、外部からの衝撃に対する耐性を向上させることができる。以下、この理由を、図4および図5も参照しながら説明する。図4は、比較例の酸素センサ900を示す図であり、図5は、比較例の酸素センサ900に石1が衝突した様子を示す図である。
【0065】
図4に示す酸素センサ900は、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eよりも上側に位置している点において、図1に示した酸素センサ100と異なっている。この酸素センサ900のカバー60に石1が衝突すると、図5に示すように、カバー60が変形してカバー内部60の部材(具体的にはリード線50や端子40)が歪んでしまう。そのため、ハウジング20の上端20Eよりも上側に位置しているセンサ素子10の後端10Eにも衝撃応力が及び、センサ素子10の破損(例えば基板12の折れ)が発生してしまう。センサ素子10が破損すると、酸素濃度の検出を正常に行うことができなくなる。
【0066】
これに対し、本実施形態の酸素センサ100では、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置している。つまり、センサ素子10は、カバー60に比べて剛性が高く変形しにくいハウジング20の上端20Eから突出していない。そのため、外部からの衝撃によってカバー60が変形しても、センサ素子10には衝撃応力が及びにくく、センサ素子10の破損の発生が抑制される。また、本実施形態の酸素センサ100では、図14に示した従来の酸素センサ800のように外部からの衝撃を吸収するための大きな空隙を設ける必要がないので、カバー60の外径を小さくすることができる。カバー60の外径が小さいと、排気管からの熱が酸素センサ100の上部に伝わりにくいので、酸素センサ100の全長を短くすることができる。そのため、酸素センサ100全体の小型化を図ることができる。このように、本実施形態における酸素センサ100は、外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適している。
【0067】
なお、図1には、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eと同じ高さに位置している場合を例示したが、センサ素子10の破損をより確実に抑制するためには、図6に示すように、センサ素子10の後端10Eはハウジング20の上端20Eよりも下側に位置していることが好ましい。
【0068】
また、ハウジング20の鍔部20bは、ハウジング20の上端20E近傍(鍔部20bよりも上側の部分)に比べ、径方向の厚さが大きいので、さらに剛性が高く変形しにくい。そのため、センサ素子10の破損をより確実に抑制するためには、図7および図8に示すように、センサ素子10は、その後端10Eが鍔部20bの上面20b1以下の高さに位置するように配置されていることがさらに好ましい。図7および図8には、鍔部20bの上面20b1によって規定される仮想平面P’を破線で示している。なお、図7に示すようにセンサ素子10の後端10Eが鍔部20bの上面20b1と同じ高さに位置している場合よりも、図8に示すようにセンサ素子10の後端10Eが鍔部20bの上面20b1よりも下側に位置している場合の方が、センサ素子10の破損を抑制する効果が高い。
【0069】
また、図1および図6〜図8には、端子固定部材70の上端70Eがセンサ素子10の後端10Eと同じ高さに位置している場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。端子固定部材70の上端70Eは、図9に示すように、センサ素子10の後端10Eよりも上側に位置していてもよいし、図10に示すように、センサ素子10の後端10Eよりも下側に位置していてもよい。
【0070】
ただし、衝撃からセンサ素子10を十分に保護するためには、横方向(ハウジング20やカバー60の径方向)から見たときに、センサ素子10が後端10Eまで端子固定部材70によって覆われていることが好ましい。つまり、図1や図9に示しているように、端子固定部材70は、その上端70Eがセンサ素子10の後端10E以上の高さに位置するように配置されていることが好ましい。
【0071】
なお、端子固定部材70の上端70Eがハウジング20の上端20Eから突出しすぎていると、外部からの衝撃によって変形したカバー60が端子固定部材70に接触してしまう可能性があり、そのことによってセンサ素子10に衝撃応力が及び最終的に破損につながることがある。そのため、端子固定部材70の上端70Eは、図1に示したようにハウジング20の上端20Eと同じ高さに位置しているか、あるいは、図6に示したようにハウジング20の上端20Eよりも下側に位置していることが好ましい。つまり、端子固定部材70は、その上端70Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置するように配置されていることが好ましい。また、端子固定部材70の上端70Eは、図7に示したように鍔部20bの上面20b1と同じ高さに位置しているか、あるいは、図8に示したように鍔部20bの上面20b1よりも下側に位置していることがさらに好ましい。つまり、端子固定部材70は、その上端70Eがセンサ素子10の後端10E以上で鍔部20bの上面20b1以下の高さに位置するように配置されていることがさらに好ましい。
【0072】
続いて、図1などに示した本実施形態における酸素センサ100と、図4に示した比較例の酸素センサ900とを実際に試作し、チッピング試験を行ってセンサ素子10の破損の発生を評価した結果を説明する。
【0073】
チッピング試験は、図11に示すようにコップ形のホルダ2によって酸素センサ100を保持した状態(つまり酸素センサ100の鍔部20bよりも下側の部分がホルダ2の孔2aに嵌挿された状態)で、表1に示すように直径16mm、重さ16gの剛球3を2mの高さから120回落下させてカバー60に衝突させることによって行った。
【0074】
【表1】

【0075】
評価結果を表2に示す。表2には、ハウジング20の上端20Eからのセンサ素子10の後端10Eの突出量(mm)と、センサ素子10の破損(具体的には基板12の折れ)の有無との関係が示されている。
【0076】
なお、表2の突出量の欄には、センサ素子10の後端10Eが、ハウジング20の上端20Eよりも上側に位置している場合は正の数値、ハウジング20の上端20Eと同じ高さに位置している場合は0、ハウジング20の上端20Eよりも下側に位置している場合は負の数値が記載されている。また、鍔部20bの上面20b1とハウジング20の上端20Eとの高さの差は、いずれの例についても2mmである。
【0077】
従って、表2中の比較例1〜6は、図4に示すようにセンサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eよりも上側に位置している場合に相当する。また、実施例1〜3は、図1に示すようにセンサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eと同じ高さに位置している場合に相当し、実施例4〜6は、図6に示すようにセンサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eよりも下側(ただし鍔部20bの上面20b1よりは上側)に位置している場合に相当する。さらに、実施例7〜9は、図7に示すようにセンサ素子10の後端10Eが鍔部20bの上面20b1と同じ高さに位置している場合に相当し、実施例10〜12は、図8に示すようにセンサ素子10の後端10Eが鍔部20bの上面20b1よりも下側に位置している場合に相当する。
【0078】
また、表2のセンサ素子10の破損の欄における「×」は、基板12の折れが発生したことを意味し、「○」および「◎」は、基板12の折れが発生しなかったことを意味している。ただし、「○」が、基板12の折れは発生していないものの基板12内に発生した微小なクラックによりわずかな強度低下が発生していることを意味しているのに対し、「◎」は、そのような強度低下もないことを示している。
【0079】
【表2】

【0080】
表2に示されているように、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20Eよりも上側に位置している比較例1〜6では、センサ素子10の破損が発生した。これに対し、センサ素子10の後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置する実施例1〜12では、センサ素子10の破損が発生しなかった。このことから、本実施形態における酸素センサ100のように、センサ素子10を、その後端10Eがハウジング20の上端20E以下の高さに位置するように配置することにより、センサ素子10の破損の発生を好適に抑制できることがわかる。
【0081】
また、表2では、実施例1〜6よりも実施例7〜12の方がいっそう好ましい結果が得られている。このことから、センサ素子10の破損の発生をより確実に抑制するためには、センサ素子10を、その後端10Eが鍔部20bの上面20b1以下の高さに位置するように配置することが好ましいことがわかる。
【0082】
既に述べたように、本実施形態における酸素センサ100では、センサ素子10の後端10Eが、ハウジング20の上端20E以下の高さに位置している。そのため、図14に示したような従来の酸素センサ800に比べて、センサ素子10の全長(先端から後端10Eまでの距離)が短い。以下、センサ素子10の全長を短くするための好ましい構成を説明する。
【0083】
センサ素子10の全長を短くするためには、本実施形態のように、ガラスシール部80を設けることが好ましい。従来、ガスセンサにおいて気密封止を行うための構造としては、図14に示したようなセラミックス粉末(典型的には滑石)を含む気密封止構造が、製造コストの低廉さから多く用いられてきた。しかしながら、このような構造を採用すると、セラミックス粉末を支持するための部材や、セラミックス粉末を押して圧縮するための部材、かしめ部(図14に示した構造における第1セラミックスホルダ822、第2セラミックスホルダ823、かしめ部820c)などが必要となるので、酸素センサの軸方向に長い空間が必要となる。そのため、どうしてもセンサ素子の後端がハウジングの上端よりも上側に大きく突出してしまう。これに対し、本実施形態のようにガラスシール部80を設けると、ガラスシール部80自体の他には余分な部材が不要であるので、センサ素子10の全長を短くすることができる。そのため、センサ素子10の後端10Eをハウジング20の上端20E以下の高さに位置させることが容易となる。
【0084】
また、センサ素子10の全長を短くするためには、センサ素子10の基板12がアルミナから形成されていることも好ましい。以下、この理由を説明する。
【0085】
一般に、起電力型のセンサ素子では、酸素イオン伝導体として高温安定性に優れるジルコニア基板が用いられる。しかしながら、ジルコニア基板は熱衝撃に弱いので、ジルコニア基板を含むセンサ素子をガラスシール部によってハウジングに固定した場合、ジルコニア基板のガラスシール部によって接合されている部分と、そうでない部分との境界付近に応力が集中し、ジルコニア基板が折れやすいという問題がある。
【0086】
この問題を解決するために、特許第3786330号公報には、熱衝撃による応力集中を緩和するための緩衝層をガラスシール部の下端面と上端面とに接するように設ける手法が開示されている。しかしながら、このようにガラスシール部を挟むように2つの緩衝層を設けるためには、酸素センサの軸方向に長い空間を必要とする。そのため、どうしてもセンサ素子の後端がハウジングの上端よりも上側に大きく突出してしまう。
【0087】
これに対し、基板12がアルミナから形成されていると、アルミナから形成された基板12はジルコニア基板に比べて熱衝撃に強いため、上述したような緩衝層は不要である。そのため、センサ素子10の全長を短くすることができ、センサ素子10の後端10Eをハウジング20の上端20E以下の高さに位置させることが容易となる。アルミナから形成された基板12は、高温での絶縁性に優れているため、図2に示したような抵抗型のセンサ素子10に好適に用いられる。
【0088】
また、センサ素子10の全長を短くするためには、端子40がニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金から形成されていることも好ましい。端子40がこのような材料から形成されていると、端子40の耐熱性を十分に高くすることができる。従って、高温に晒されるガス検出部11からセンサ素子10と端子40との接続箇所までの距離を短くすることができる。つまり、センサ素子10の全長を短くすることができる。そのため、センサ素子10の後端10Eをハウジング20の上端20E以下の高さに位置させることが容易となる。ニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金としては、例えば、19Cr−53Ni−3Mo−5Nbの組成を有するインコネル718や、15Cr−78Ni−1Nbの組成を有するインコネル750を用いることができる。
【0089】
上述したように、本実施形態における酸素センサ100は、(1)ガラスシール部80を備える、(2)基板12がアルミナから形成されている、(3)端子40がニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金から形成されている、という3つの構成のうちの少なくとも1つの構成を有することが好ましい。勿論、上記3つの構成のうちの2つの構成を有することがより好ましく、3つの構成すべてを有することがもっとも好ましい。
【0090】
なお、カバー60を肉厚に形成すると、カバー60の剛性が向上して変形しにくくなるので、外部からの衝撃に対する耐性は高くなるが、その場合には、排気管からの熱が酸素センサ100の上部に伝わりやすくなってしまうので、酸素センサ100の全長を長くしなければならないことがある。排気管から酸素センサ100の上部への熱の伝達を十分に抑制するためには、カバー60は、0.7mm以下の厚さを有することが好ましい。本発明によれば、そのような薄いカバー60を用いる場合であっても、外部からの衝撃に対する耐性を十分に高くすることができる。そのため、本発明は、カバー60の厚さが0.7mm以下である場合に、用いる意義が特に大きいといえる。
【0091】
本実施形態における酸素センサ100は、各種輸送機器の内燃機関から排出される排気ガス中の酸素の検出に好適に用いられる。本実施形態における酸素センサ100は、小型化に適しているので、自動二輪車のように、排気管の周囲に空間的な余裕が乏しい輸送機器に特に好適に用いられる。
【0092】
図12に、本実施形態における酸素センサ100を備えた自動二輪車500を模式的に示す。自動二輪車500は、本体フレーム501と内燃機関600とを備える。本体フレーム501の前端にヘッドパイプ502が設けられている。ヘッドパイプ502にはフロントフォーク503が左右方向に揺動可能に設けられている。また、フロントフォーク503の下端に前輪504が回転可能に支持されている。ヘッドパイプ502の上端にはハンドル505が取り付けられている。
【0093】
本体フレーム501の後端上部から後方に伸びるようにシートレール506が取り付けられている。本体フレーム501の上部には燃料タンク507が設けられ、シートレール506上にメインシート508aおよびタンデムシート508bが設けられている。また、本体フレーム501の後端に後方へ伸びるリアアーム509が取り付けられている。リアアーム509の後端に後輪510が回転可能に支持されている。
【0094】
本体フレーム501の中央部には内燃機関600が保持されている。内燃機関600の前部にはラジエター511が取り付けられている。内燃機関600の排気ポートには排気管630が接続されている。排気管630には、酸素センサ100、三元系触媒604および消音器606が設けられている。酸素センサ100は、排気管630内を流れる排気ガス中の酸素を検出する。
【0095】
内燃機関600には、変速機515が連結されており、変速機515の出力軸516は駆動スプロケット517に取り付けられている。駆動スプロケット517はチェーン518を介して後輪510の後輪スプロケット519に連結されている。
【0096】
図13は、内燃機関600の制御系の主要な構成を示している。内燃機関600のシリンダ601には吸気弁610、排気弁606および点火プラグ608が設けられている。またエンジンを冷却する冷却水の水温を計測する水温センサ616が設けられている。吸気弁610は、空気吸入口をもつ吸気管622に接続されている。吸気管622にはエアーフローメータ612、スロットルセンサ614および燃料噴射装置611が設けられている。
【0097】
エアーフローメータ612、スロットルセンサ614、燃料噴射装置611、水温センサ616、点火プラグ608および酸素センサ100は、制御部であるコンピュータ618に接続されている。コンピュータ618には自動二輪車500の速度を示す車速信号620も入力される。
【0098】
図示しないセルモータによって、ライダーが内燃機関600を始動させると、コンピュータ618はエアーフローメータ612、スロットルセンサ614および水温センサ616から得られる検出信号および車速信号620に基づき、最適な燃料量を計算し、計算結果に基づいて、燃料噴射装置611へ制御信号を出力する。燃料噴射装置611から噴射される燃料は、吸気管622から供給される空気と混合され、適切なタイミングで開閉される吸気バルブ610を介してシリンダ601へ噴出される。シリンダ601において噴出された燃料は燃焼し、排気ガスとなって排気弁606を介して排気管630へ導かれる。
【0099】
酸素センサ100は排気ガス中の酸素を検出し、検出信号をコンピュータ618へ出力する。コンピュータ618は、酸素センサ100からの信号に基づき、空燃比が理想空燃比からどの程度ずれているかを判断する。そして、エアーフローメータ612およびスロットルセンサ614から得られる信号によって定まる空気量に対して、理想空燃比となるように燃料噴射装置611から噴出する燃料量を制御する。このように、酸素センサ100と、酸素センサ100に接続されたコンピュータ(制御部)618とを含む空燃比制御装置によって、内燃機関の空燃比が適切に制御される。
【0100】
なお、ここでは、自動二輪車を例示したが、本実施形態における酸素センサ100は、四輪自動車などの他の自動車両にも好適に用いられる。内燃機関は、ガソリンエンジンに限られず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0101】
また、本実施形態では、酸素センサを例として本発明を説明したが、本発明は、酸素センサに限定されず、種々のガスを検出するためのセンサに好適に用いられる。例えば、本発明は、NOx濃度を検出するためのNOxセンサや、CO濃度を検出するためのCOセンサ、HC濃度を検出するためのHCセンサなどにも好適に用いられる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によると、外部からの衝撃に対する耐性に優れ、且つ、小型化に適したガスセンサが提供される。本発明は、酸素センサをはじめとする種々のガスセンサに好適に用いられる。
【0103】
本発明によるガスセンサは、乗用車、バス、トラック、オートバイ、トラクター、飛行機、モーターボート、土木車両などの種々の輸送機器用の空燃比制御装置に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図2】抵抗型のセンサ素子の一例を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】(a)は、図1中の3A−3A’線に沿った断面図であり、(b)は、(a)における端子固定部材以外の構成要素を省略した図である。
【図4】比較例の酸素センサ900を模式的に示す断面図である。
【図5】比較例の酸素センサ900に石が衝突したときの様子を示す図である。
【図6】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図7】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図8】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図9】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図10】本発明の好適な実施形態における酸素センサ100を模式的に示す断面図である。
【図11】チッピング試験の方法を説明するための図である。
【図12】酸素センサ100を備えた自動二輪車500を模式的に示す側面図である。
【図13】図12に示す自動二輪車500における内燃機関の制御系を模式的に示す図である。
【図14】従来の酸素センサ800を模式的に示す断面図である。
【図15】酸素センサ800が備えるセンサ素子を模式的に示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0105】
10 センサ素子
10E センサ素子の後端
11 ガス検出部
12 基板
13 酸化物半導体層
14 検出電極
15 ヒータ
15a ヒータ電極
20 ハウジング
20E ハウジングの上端
20a ねじ部
20b 鍔部
20b1 鍔部の上面
30 プロテクタ
40 端子
50 リード線
60 カバー
62 封口部材
70 端子固定部材
70a 端子固定部材の孔
70E 端子固定部材の上端
80 ガラスシール部
100 酸素センサ
500 自動二輪車
600 内燃機関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のガスを検出するためのガス検出部を先端部に有するセンサ素子と、
その下端側に前記ガス検出部が突出するように前記センサ素子が挿通配置されるハウジングと、
前記センサ素子の後端部に接続された端子と、
前記ハウジングの上端側に設けられ、前記端子を収容するカバーと、
前記センサ素子および前記端子の両方が挿入される孔を有し、前記端子を前記センサ素子に固定する端子固定部材と、を備え、
前記センサ素子は、前記センサ素子の後端が前記ハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されているガスセンサ。
【請求項2】
前記ハウジングは、径方向外側に突出する鍔部を有し、
前記センサ素子は、前記センサ素子の後端が前記鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されている請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記センサ素子の後端以上の高さに位置するように配置されている請求項1または2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記ハウジングの上端以下の高さに位置するように配置されている請求項3に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記端子固定部材は、前記端子固定部材の上端が前記センサ素子の後端以上で前記鍔部の上面以下の高さに位置するように配置されている請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項6】
ガラス材料から形成され、前記センサ素子を前記ハウジングに対して固定するガラスシール部をさらに備える請求項1から5のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項7】
前記センサ素子は、前記ガス検出部を支持する基板をさらに有し、
前記基板は、アルミナから形成されている請求項1から6のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項8】
前記端子は、ニッケルを50wt%以上含むニッケル−クロム合金から形成されている請求項1から7のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項9】
前記カバーは、0.7mm以下の厚さを有する請求項1から8のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項10】
酸素センサである請求項1から9のいずれかに記載のガスセンサ。
【請求項11】
請求項10に記載のガスセンサを備えた空燃比制御装置。
【請求項12】
請求項11に記載の空燃比制御装置を備えた輸送機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−156756(P2009−156756A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−336528(P2007−336528)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】