説明

ガスセンサのセンサ素子及びその作動方法

本発明は、ガス混合気中のガス成分を検出するためのガスセンサのセンサ素子に関している。ここでは電界効果トランジスタ及び/又はダイオードが含まれており、検出すべきガスと接触した場合に電流通流に変化を生じ、さらに保護キャップによってガス混合気の直接の進入から保護されるように固定されている。さらに前記保護キャップ(18)は、加熱手段(24)と、ガラス形成剤(34)及び/又は酸化触媒コンバータ(32)を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガス混合気中のガス成分を検出するためのガスセンサのセンサ素子及びその作動方法並びにそれらの適用方法に関している。
【背景技術】
【0002】
媒体流中に含まれる物質、特にガス流中のガス成分の検出には、半導体基板上に設けられる感ガス性の電界効果トランジスタが用いられる。一般的にこの原理によれば、検出すべき物質の吸着、例えば気体、液体ないしはそれらの混合物の吸着がチャネルインピーダンスの変化を引き起こし、それに伴って、電界効果トランジスタのソース電極からドレイン電極へ流れる電流、いわゆるチャネル電流が変化する。バンドギャップの大きな半導体材料、すなわち3eVよりも大きなバンドギャップの半導体材料、例えば窒化ガリウムや炭化珪素などを用いるならば、このことは基本的に、800℃までの温度環境でのセンシング技術に適用可能な感ガス性電界効果トランジスタが提供できることを意味する。
【0003】
感ガス性の電界効果トランジスタの選択された作動点においては、被測定物質の吸着なしでのチャネル電流(これはいわゆるゼロ信号ないしオフセットに相当する)は、被測定物質の吸着によって生じるチャネル電流変化よりも一般に103分の規模だけ高くなる。このことは、不十分な信号とオフセット比との比較によっては、電流測定への要求を殊更に高くする。さらにオフセットが外的影響を受けやすいという問題も生じる。この外的影響とは、例えば温度変化や被測定物質の存在に起因しないセンサの性能低下などである。与えられた信号オフセット比によっては、障害によるチャネル電流の変化が、被測定物質の存在によって生じる変化と同じような規模になり得るか、最悪の場合、それよりも大きくなる。そのような障害を完全に排除することは不可能なので、それに伴う測定信号のエラーも大きくなり、最悪のケースでは、被測定物質の十分な精度の検出が損なわれてしまう。
【0004】
米国特許出願 US 6,883,364号明細書からは、ガスを検出するためのセンサとして電界効果トランジスタが用いた携帯型のガス検知器が公知である。ここでは感ガス性の抵抗、いわゆる化学抵抗が用いられている。しかしながらここで使用されているセンサは、化学抵抗のオフセット補償やドリフト補償には向いていない。
【0005】
さらに米国特許出願 US 6,165,336号明細書からは、有害ガスの進入を沮止するためのガス選択透過膜として多孔性のセラミック層を有している、半導体ガスセンサが開示されている。
【0006】
発明の開示
本発明の課題は、ガスセンサのセンサ素子への有害物質の進入を阻止するだけでなく、さらにこの有害物質を無害にさせる、ガスセンサのための保護素子を提供することである。
【0007】
発明の利点
本発明の基礎となっている前記課題は、独立請求項の特徴部分に記載されているセンサ素子ないしその作動方法によって解決される。
【0008】
それに対してガスセンサのセンサ素子は例えば保護キャップを有しており、該保護キャップはセンサ素子表面への被検ガス混合気の直接的な進入を回避させ、加熱手段、ガラス形成剤及び/又は酸化触媒コンバータを有している。
【0009】
この実施形態の大きな利点は、加熱手段の作動によって、ないしは酸化触媒コンバータの存在によって、例えば保護キャップに堆積した煤ないし粒子状物質などが効果的に除去できる点である。保護キャップの領域内のガラス形成剤の代替的若しくは付加的な存在は、検出すべきガス混合気中に含まれる障害的な有害成分、例えば捲き塩から生じるか、内燃機関のエンジンブロックないしは相応するピストンの摩耗現象の結果から生じたアルカリ化合物やアルカリ土類化合物の付着につながりかねない。そしてこのような付着物は、保護手段なしではセンサ素子の領域に堆積または蓄積し続け、その結果としていわゆる電子トラップの形成に結び付く。この電子トラップは、電気的な過渡的作用を引き起こし、不安定なチャネル流ないし信号流の形態で現われ、センサ素子の不安定なオフセット電流を引き起こす。このオフセット電流の安定性が損なわれると、センサ信号の制度に大きく影響を及ぼす。
【0010】
前述したセンサ素子を、内燃機関の排気ガスの検出に用いるならば、この種の排気ガス中からは、さらに高濃度のケイ素化合物が検出される。このことは、極端なケースでは、センサ素子の電極のガラス化を引き起こし、それによって、検出すべきガス成分に対する十分な感度を示せなくなる。それに対して、センサ素子の保護キャップが例えばそのコーティング材若しくは材料成分として、ガラス形成剤を有していれば、前述したような障害的な物質は、当該ガラス形成剤のゲッター特性に基づいて物理的な作用により、ないしは相応の化学反応により保護キャップ領域に永続的に拘束される。
【0011】
本発明のさらに別の有利な実施形態は、従属請求項の対象でもある。
【0012】
有利には、前記保護キャップは、多孔性のセラミックからなり、蝋付けガラスを用いてセンサ素子に固定される。この本発明によるセンサ素子の実施形態によれば、高い耐熱性が保証され、それによって、例えば内燃機関で燃焼された排気ガスの組成に関する検査が可能になる。
【0013】
さらに有利には、ガラス形成剤としてチタン酸塩、シリカ、ホウ酸塩、又はリン酸塩が用いられる。これらの物質を用いる利点は、これらが技術的に容易に得られ、さらに相応の浸透/注入プロセスによって保護キャップに容易に取り入れることが可能なことである。
【0014】
さらに有利には、センサ素子の保護キャップが多層構造を有しており、この場合保護キャップに上に塗布されている第1の層は、ガラス形成剤によって形成されており、このガラス形成剤を含んだ第1の層の上にはさらなる層が設けられており、このさらなる層は、酸化触媒コンバータを有している。このようにして燃焼排気ガス中に含まれる煤も、イオン化された汚染物質も効果的に捉えることができるようになる。
【0015】
さらに酸化触媒コンバータを設けることによって当該センサ素子を窒素酸化物に対しても感応させることが可能になる。なぜなら、ガス混合気中に存在する酸化可能なガス成分、例えば炭化水素、水素または一酸化窒素、一酸化二窒素などが二酸化炭素、水ないし窒素酸化物に酸化されるからである。このようにして、窒素酸化物だけが検出すべきガス成分として、ガスセンサの反応領域に達するガス混合気中に存在するようになる。この場合に形成された水と二酸化炭素は当該検出を損なわせない。
【0016】
さらに有利には、本発明によるセンサ素子の保護キャップは、所定量の汚染物質、例えば煤やその他の燃焼可能な粒子が存在する場合には、加熱され得る。このことは、有利には、例えばガス混合気中のガス成分の濃度変化の出現時点とセンサ素子を用いたその検出時点との間に生じた時間遅延を、所定の時間遅延最大値と比較することによって検出可能である。そしてこの時間遅延最大値を上回った場合には、自動的にセンサ素子の保護キャップの加熱が開始され、このようにして保護キャップへ付着した燃焼可能な粒子が除去される。
【0017】
本発明によるガス混合気中のガス成分を検出するためのガスセンサのセンサ素子及びその作動方法は、有利には、加熱装置、内燃機関、発電所等から排出される排気ガス中のガス成分の検出に特に適している。さらに排ガス後処理装置の分野では、NOX蓄積触媒コンバータ又はSCR排ガス後処理システムなどの機能性の監視にも利用することが可能である。
【0018】
本発明の有利な実施形態は図面に記載されており、以下の明細書ではこれらの図面に基づいてそれらの実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるセンサ素子の製造中の経過を概略的に示した図
【図2】製造過程中のセンサ素子の平面図
【図3】完成後のセンサ素子の平面図
【図4】第1実施形態によるセンサ素子の保護キャップ材料の概略的な断面図
【図5】第2実施形態によるセンサ素子の保護キャップ材料の概略的な断面図
【図6】第3実施形態によるセンサ素子の保護キャップ材料の概略的な断面図
【図7】本発明によるセンサ素子の概略的な断面図
【0020】
実施例の説明
図1及び図2には、製造過程中の本発明の基礎となるセンサ素子が描写されている。
【0021】
本発明によるセンサ素子10は、基板12を含んでいる。この基板12上には、例えば少なくとも1つの、ないし有利には複数の感ガス性の検出ユニット28が設けられている。この感ガス性検出ユニット28は、有利には、半導体構造をベースにして構成されており、その限りでは、例えばMOSFET若しくはCHEMFETの形態の電界効果トランジスタとして構成可能である。基板12上に設けられている感ガス性検出ユニットは、例えば複数のコンタクト14、並びに導体線路構造部16を介して、相応の信号評価構造部(これは図示していない)に接続されている。
【0022】
前記複数のコンタクト14は例えば、個々の電界効果トランジスタのソースないしドレイン電極の電気的なコンタクト形成と、各ゲート電極の駆動制御に用いられる。前記基板12上には有利には複数の感ガス性検出ユニットが設けられているので、これらは、高感度ガスセンサ、いわゆる"電子鼻(electronic nose)"に対して相互接続可能である。その際有利には、基板12上に配設されている複数の感ガス性検出ユニットのそれぞれが、検出すべきガス混合気のその他のガス成分、ないしはガス混合気中に存在している別のガス成分のグループを検出する。
【0023】
例えば内燃機関からの排気ガスを継続的に検査する場合に、センサ素子10の長寿命を担保できるようにするために、基板12が例えばセラミック性の保護キャップ18によって有利には、被検ガス混合気の直接の進入から完全に保護されるとよい。前記セラミック製保護キャップ18と、基板12を支持している支持体要素20との継続的な接合を保証するために、支持体要素20に例えばろう付けガラス22が設けられ、セラミック製保護キャップ18が基板12上方の開口部側を覆い、蝋付けガラス22と保護キャップ18が支持体要素20と気密に接合されて固定され、支持体要素20が密封される。そして最終的な加熱処理プロセスによって、センサ素子10の支持体要素20と保護キャップとの間の永続的な接合が生じる。
【0024】
このようにして完成されたセンサ素子10の例が図3には示されている。ここでは図1及び図2のものと同じ構成要素には同じ参照番号が用いられている。
【0025】
被検ガス混合気の検出すべきガス成分が、センサ素子10のそれぞれの感ガス性検出ユニットへ進入するのを保証するために、例えば開放された多孔性材料からなるセラミック製保護キャップ18が用いられる。このようにして、ガス混合気中に混在する粒子又は霧状粒子の進入が回避され、それに対して検査すべきガス成分の、センサ素子10の感ガス性検出ユニットへの進入は、保証される。
【0026】
さらに、基板12が可及的に完全に保護キャップ18によって包み込まれ、さらに基板12と保護キャップ18の間の密閉された容積空間ができるだけ少なく保たれるように、保護キャップ18が構成されることによって、特にセンサ素子10の高い信号品質が保証される。それにより、例えば保護キャップ18と基板12の間で密閉されるガス体積ないし容積は、0.0001μl〜1ml、有利には0.0005〜10μl、特に有利には0.001〜0.003μlとなる。セラミック製保護キャップ18の壁厚は、検出すべきガス成分がその拡散特性においてなるべく顕著に阻害されないように構成される。それに対してセラミック製保護キャップ18の壁厚は、例えば2μm〜5mm、有利には10〜200μm、特に有利には20〜80μmである。
【0027】
さらに保護キャップ18は、例えばその上に基板12が配置されている支持体要素20と同じセラミック性材料から形成されてもよい。そのようにすれば、温度変更の要求があった場合でもセラミック製保護キャップ18と支持体要素20の十分に比較可能な熱的膨張特性が観察できる。このことは、さらにセラミック製保護キャップ18と支持体要素20の接続に対してその他のセラミック接着剤ないし蝋付けガラスの使用を可能にする。しかしながら基本的には、支持体要素20のセラミック材料と比較可能な熱膨張特性ないし熱膨張係数を有している限り、組成のずれているセラミック材料も投入可能である。そのため、保護キャップ18ないしは支持体要素20に対するセラミック材料として例えば酸化ジルコニアが適する。これは部分的な安定性若しくは完全な安定性のために用いられ得る。さらに前記保護キャップ18の代替的セラミック材料として、低温型Co−Fireセラミック(LTCC)、並びにグラスファイバー焼結型の酸化アルミニウムセラミック又はコージエライトなどが適している。
【0028】
保護キャップ18の製造は、例えば、未処理のフィルム状のセラミック材料を複数の層に積層し、引き続き所望のウエル形状の幾何学形態に研磨して所定のセラミック圧粉体(セラミックグリーンボディ)に処理することで行われてもよい。焼結された状態において自由なセラミックの高い多孔性を達成するために、セラミック圧粉体のセラミックを高密度な焼結温度のもとで、比較的長い期間、例えば1時間の間、焼結処理し、これによって例えば30〜38容量%、特に34容量%の開放的多孔性が得られる。
【0029】
セラミック材料として例えば酸化ジルコニウムが使用されるならば、熱処理の間の温度は、1150℃〜1200℃の範囲内で選択される。それに対して高密度焼結の場合には、温度が1380℃〜1400℃に到達するまで待機される。さらに焼結されたセラミックの開放された多孔性構造を保証するために、セラミック圧粉体材料中に付加的に粉末状の有機材料が添加される。この有機材料は熱処理の間に燃焼して多孔性構造を導く。
【0030】
保護キャップ18を形成するセラミック圧粉体の形成のための代替的方法によれば、微細構造のための射出成形体が適用され、押出し加工及び打抜き加工処理の後に乾燥プレス行程がなされる。
【0031】
センサ素子10の製造に対しては、最初に、相応の感ガス性検出ユニットが、化学抵抗型の電界効果トランジスタの形態で、ないしは半導体構造のはめ込み形態で、基板12(これは例えば酸化ジルコニウムから形成されていてもよい)上に取付けられる。続いて、位置固定された感ガス性検出ユニットが例えば、フリップチップ技法の適用によって、又はボンディングワイヤによる接続を介してコンタクト形成され、その後で保護キャップ18が事前に支持体要素20に設けられている環状の蝋付けガラスの上に載置される。続いてガラスペーストの乾燥と有利には加熱処理が行われる。これは蝋付けガラスを溶融してセラミック保護キャップ18をセラミック支持体要素20へ確実に接合させることを保証するためのものである。この場合有利には、前記蝋付けガラスとして、加熱処理中に少なくともその一部が結晶化するようなガラスが用いられる。なぜなら、そのようにすることで、センサ素子10の被る作動温度が非常に高い環境のもとでも、より良好な耐久性を保証することができるからである。
【0032】
特に内燃機関の排気ガスを検査するセンサ素子10の連続運転の際中には、時間の経過に伴って煤や煙霧状物質がセンサ素子10の表面、ないしはセラミック製保護キャップ18の表面に堆積してしまうので、本願の第1実施例によれば、例えば電気的な抵抗構造部が設けられている。この抵抗構造部は、例えば蛇行状の抵抗性導体線路を含み、それが相応の加熱電圧の印加のもとで保護キャップを加熱するようなものであってもよい。この場合の蛇行状の抵抗性導体線路24は、セラミック製保護キャップ18の表面を少なくとも部分的に覆ったものであってもよいし、あるいはそれを完全に覆ったものであってもよい。
【0033】
抵抗性導体線路24のコンタクト形成は、例えば前記導体線路構造部16を用いて行われる。セラミック製保護キャップ18の表面が、相当な量の煤や煙霧状物質によって覆われていることが検知されると、抵抗性導体線路24に少なくとも短時間だけ加熱電圧が印加され、それによってセラミック製保護キャップ18が例えば600℃以上の温度に加熱される。この温度のもとでは、セラミック製保護キャップ18の表面に堆積している燃焼可能な煤成分が燃焼されるか、ないしは相応に堆積している煙霧状物質が蒸発する。
【0034】
セラミック製保護キャップ18の加熱を例えば定期的に、予め定めた期間の間実施させることも可能である。但し、セラミック製保護キャップ18の加熱に対する不要なエネルギー消費を避けるために、セラミック保護キャップ18にガス混合気の不所望な成分が相当量付着していることが検知された場合にのみ、抵抗性導体線路24の加熱を行うようにしてもよい。この目的のために、例えば検出すべきガス成分の濃度変化の出現時点と、当該濃度変化の検出時点との間の時間的な遅れが考慮される。
【0035】
セラミック製保護キャップ18への不所望な成分の付着によって、前述したような時間遅延は拡大する。そしてこの拡大は、検出すべきガス成分がセンサ素子10内部へ拡散するのを阻害する相応の成分がセラミック製保護キャップ18表面に堆積すればするほど大きくなる。ガス成分の濃度変化の出現時点と、センサ素子10によるその検出時点との間の時間遅延が、例えば相応する制御機器にファイルされている予め定められた閾値を超えた場合には、この閾値の上回りによって、例えば多孔性のセラミック製保護キャップ18の加熱が開始される。
【0036】
例えば内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物を低減するための手段が設けられている排ガスシステムにおいては、セラミック製保護キャップ18における不所望な成分の付着状態を監視するために、検出すべきガス混合気内でのアンモニア出現時点と、センサ素子10によるアンモニア検出時点との間の時間差が検出され、それに対しては、被検ガス混合気内で人為的に高められたアンモニア成分が考慮される。例えば窒素酸化物蓄積型触媒NSCを含んでいる排ガスシステムでは、例えば、相応する内燃機関の燃料の過度な調量を求め、検出すべきガス混合気中のガス状の燃料残留成分の出現時点ないしは、内燃機関排ガス中の酸素不足出現時点と、その検出時点との間の時間差が、セラミック製保護キャップ18の堆積状態を検出するための特性量として用いられる。
【0037】
しかしながらセンサ素子10の非常に高い測定精度は、セラミック製保護キャップ18の加熱が、少なくとも十分継続的に行われる場合に観察されるべきである。なぜなら、特に高温の表面においては熱伝導の理由から、ほとんどの煤粒子は堆積せず、場合によって堆積した煤も速やかに酸化燃焼されるため、センサ素子10内部への検出すべきガス成分の継続的に安定した拡散特性が、センサ素子10の感ガス性検出ユニットに対して得られる。
【0038】
本発明の第2の実施形態によれば、セラミック製保護キャップ18が、付加的に若しくは代替的に、化学的酸化機能を備えていてもよい。そのためにセラミック製保護キャップ18の材料には、例えば1つ若しくは複数の、酸化触媒として機能する1つ又は複数の物質が注入されてもよい。相応の実施形態は、例えば図4に示されている。この場合セラミック粒子30から形成されたセラミック製保護キャップ18の多孔性セラミック構造部が、例えば触媒材料を含んだ溶液、懸濁液、散布液などの相応の塗布、塗り延ばし、染み込み、混入、噴霧、浸漬、吸引、通流などによって塗布される。
【0039】
さらに相応の含浸プロセスが、例えば相応するpH値の溶媒による初期湿潤、浸透、化学的吸収などや、例えば溶融しにくいアルカリ金属水酸化物や、硝酸塩、ハロゲン化物、炭酸塩、酢酸塩のような金属塩の金属カーボネートの析出によって行われてもよい。
【0040】
さらにその他の実施形態によれば、多孔性の保護キャップ18に対するウォッシュコートサスペンション(薄め塗膜懸濁液)の形態、ないしは塗布、浸透、吸引などによって、付加的な層の形態で酸化触媒コンバータとして機能する物質が塗布されてもよい。その際には、この層の厚みが例えば1μm〜5mm、有利には10μm〜1000μmの範囲で選択される。
【0041】
引き続き例えば乾燥ステップが、例えば50℃〜500℃の間の温度で行われ、それに続いて熱処理過程が例えば350℃〜700℃の間の温度で行われる。このことは、場合により、相応に選択されたか焼雰囲気の中で、例えば水素/窒素雰囲気中で行われ得る。その際には触媒前駆体化合物が触媒活性化された例えば元素の形態に移行する。触媒活性化された物質がウォッシュコートの形態で塗布されるならば、そのような行程において多孔性保護キャップ18の材料におけるセラミック粒子の焼結が保証される。
【0042】
セラミック製保護キャップ18のセラミック材料に触媒活性された材料を十分に堆積させるためには、浸透、乾燥、か焼からなる一連のプロセスが行われ得る。それらは例えば保護キャップ18のセラミック材料の堆積が例えば0.1〜50重量パーセント、有利には2〜20重量パーセントに達するまで相前後して複数回実施されてもよい。触媒活性化され酸化触媒コンバータとして機能する物質として、有利には例えばプラチナ、パラジウム、ロジウムなどの貴金属やそれらの混合物が用いられてもよい。
【0043】
保護キャップ18の加熱、ないしは酸化触媒コンバータの設置を介しただけでは材料内において保護キャップ18の燃焼可能な汚染物質だけは除去できるが、無機質の汚染物資については十分に不動化できない。そのため、セラミック製保護キャップ18の材料には代替的若しくは付加的にいわゆるゲッター材料が含有される。この材料は、不所望な物質(これは被検ガス混合気の成分でもあり得るが、センサ素子10の感ガス検出ユニットの非活性化の原因にもなり得る)の不動化の一般的な形態で用いられる。それらは例えば凍結防止用の捲き塩から生じたアルカリ化合物ないしアルカリ土類化合物であったり、相応の内燃機関のエンジンブロックから生じた、マグネシウム又は鉄を含んだ化合物であり得る。さらに前述したような無機質の汚染物質は、例えばエンジンオイルに伴う汚染物質から生じたアルミニウムやケイ素を含んだ化合物でもあり得る。
【0044】
ゲッター材料としては、本発明の枠内では、例えばガラス形成剤が用いられる。このガラス形成剤は、例えばセラミック製保護キャップ18の製造中に用いられる圧粉体の材料に対するドープ剤として混合してもよい。さらなる可能性は、(既に酸化触媒コンバータとして機能する触媒活性型物質の注入プロセスで説明したように)相応するガラス形成剤を保護キャップ18の完成後に注入プロセスを介して導入させることからなる。ゲッター材料ないしガラス形成剤として例えば酸化アルミニウムないしは酸化アルミニウム水和物、例えばベーマイト、チタン酸塩、ケイ酸塩、アルモシリケートや、マグネシウムアルモシリケート、例えばコージエライト、ボラート、ホスフェート、特にモナザイト(組成[Ce,La,Nb]PO4)などの希土類ホスフェートないしはそれらの混合物などが適している。
【0045】
ここでの保護キャップ18の多孔性セラミック構造部の構成は、検出すべき混合気のための相応する拡散チャネル(図4〜6中に矢印で示されている)が常に中断されることがないように行われる。相応のガラス形成材料が注入プロセスを介して保護キャップ18の多孔性構造部に注入されると、これは例えば図5に示されているような層構造部を形成する。その際セラミック粒子30は、例えばガラス形成剤のコーティング34を施されている。
【0046】
センサ素子10のさらに有利な実施形態によれば、図4と図5に示されているセラミック製保護キャップ18の材料の実施形態が組合わされる。そのような実施形態は図6に示されている。ここではセラミック粒子30とガラス形成剤からなる層34に対して、さらに、酸化触媒コンバータとして機能する触媒活性型物質の粒子32が注入されている。このような二層構造は、一方では、無機質の汚染物質の不動化を保証し、他方では、検出すべき混合気を介してセラミック製保護キャップ18の領域に到達した燃焼可能な成分の酸化的除去を保証する。
【0047】
図7は、本発明によるセンサ素子の完成後の形態を断面図で示したものである。ここでは図1〜図6に示した構成要素と同じものには同じ参照番号が付されている。
【0048】
このセンサ素子10は、多孔性の保護キャップ18を有しており、この多孔性保護キャップ18はさらに酸化触媒コンバータを含んだ付加的な層26を有している。この付加的な層26は、セラミック粒子、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素ないしはそれらの混合物からなり、表面を酸化触媒コンバータとして機能する物質でコーティングしている。この付加的な層26は、実質的に亀裂のない多孔性の層として存在している。
【0049】
代替的にセンサ素子10全体を、酸化触媒コンバータとして機能する物質のウォッシュコート溶媒内に浸漬させて保護キャップ18も支持体要素20も当該付加的な層26でコートすることも可能である。
【0050】
またセラミック製保護キャップ18のさらに別の実施形態として、化学元素群の第4、第5、第6亜群の酸化物、例えば酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ニオブをベースとしたさらなる保護層が含まれていてもよい。その他にもセロキシドまたは酸化ランタンをベースにした保護層、ないしは、ベロフスカイトをベースにした保護層を設けることも可能である。前述した化合物は、酸素を蓄積する化合物として適しており、また燃焼可能な汚染物質の酸化除去に作用し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス混合気中のガス成分を検出するためのガスセンサのセンサ素子であって、
電界効果トランジスタ及び/又はダイオードを含んでおり、
検出すべきガスと接触した場合に電流通流に変化を生じ、さらに保護キャップによってガス混合気の直接の進入から保護されるように固定される、センサ素子において、
前記保護キャップ(18)が加熱手段(24)と、ガラス形成剤(34)及び/又は酸化触媒コンバータ(32)を有していることを特徴とするセンサ素子。
【請求項2】
前記保護キャップ(18)は、多孔性のセラミックから形成されている、請求項1記載のセンサ素子。
【請求項3】
前記保護キャップ(18)は、蝋付けガラス(22)を用いてセンサ素子(10)に固定されている、請求項1または2記載のセンサ素子。
【請求項4】
前記加熱手段(24)として抵抗性の加熱素子を有している、請求項1から3いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項5】
前記ガラス形成剤(34)として、チタン酸塩、シリカ、ホウ酸塩、又はリン酸塩を有している、請求項1から4いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項6】
前記ガラス形成剤(34)は、保護キャップ(18)の材料における5〜25重量パーセント濃度を有している、請求項1から5いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項7】
前記酸化触媒コンバータ(32)として、白金、ロジウム、パラジウム、ベロフスカイト、セロキシド、又は酸化ランタンを含んでいる、請求項1から6いずれ1項記載のセンサ素子。
【請求項8】
前記酸化触媒コンバータ(32)は、保護キャップ(18)の材料において0.1〜50重量パーセント濃度の重量成分を有している、請求項1から7いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項9】
前記酸化触媒コンバータ(32)は、ガラス形成剤を含んだコーティング層(34)に設けられている、請求項1から8いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項10】
前記酸化触媒コンバータ(32)は、保護キャップ(18)を部分的に覆う付加的な層(26)内に含まれている、請求項1から9いずれか1項記載のセンサ素子。
【請求項11】
請求項1から10いずれか1項記載のセンサ素子の作動方法において、ガス混合気中のガス成分の出現時点若しくはその濃度変化発生時点と、センサ素子(10)を用いた検出時点との間の時間遅延を検出して、所定の時間遅延最大値と比較を行い、所定の時間遅延最大値を上回った場合に、センサ素子(10)の保護キャップ(18)の加熱を実施するようにしたことを特徴とする方法。
【請求項12】
センサ素子(10)の使用下で、ガス混合気の炭化水素基に対する燃料の添加及び/又は増量されたアンモニアの添加を介して時間遅延の検出を行う、請求項11記載の方法。
【請求項13】
加熱装置、内燃機関、または発電所からの排気ガス中のガス成分を検出するために、請求項11又は12に記載の方法を、請求項1から10いずれか1項記載のセンサ素子に適用する方法。
【請求項14】
NOX蓄積触媒コンバータ又はSCR排ガス後処理システムの機能性の監視のために請求項11又は12に記載の方法を、請求項1から10いずれか1項記載のセンサ素子に適用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−517600(P2012−517600A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549452(P2011−549452)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067160
【国際公開番号】WO2010/091761
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】