ガスセンサ
【課題】生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供すること。
【解決手段】センサ素子10と、ハウジング11と、大気側カバー2と、リード線12と、弾性部材3とを有するガスセンサ1。弾性部材3は、軸方向に貫通してなる縦穴30と、リード線12を挿嵌するリード挿通穴32とを設けてなる。縦穴30には、支持体41と、少なくとも該支持体41の基端側開口部414及び該基端側開口部414に連続する外側面415の一部を覆うように支持体41に取り付けられた通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。大気側カバー2は、弾性部材3を加締める加締め部20を有する。通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、弾性部材3と支持体41との間に挟圧されている。通気フィルタ42は、その一部が支持体41の内側に配置されている。
【解決手段】センサ素子10と、ハウジング11と、大気側カバー2と、リード線12と、弾性部材3とを有するガスセンサ1。弾性部材3は、軸方向に貫通してなる縦穴30と、リード線12を挿嵌するリード挿通穴32とを設けてなる。縦穴30には、支持体41と、少なくとも該支持体41の基端側開口部414及び該基端側開口部414に連続する外側面415の一部を覆うように支持体41に取り付けられた通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。大気側カバー2は、弾性部材3を加締める加締め部20を有する。通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、弾性部材3と支持体41との間に挟圧されている。通気フィルタ42は、その一部が支持体41の内側に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車エンジン等の内燃機関の排気系に設置され、排気ガス中の酸素濃度等を検知するガスセンサがある。
該ガスセンサ9は、図13に示すごとく、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子910を内蔵している。そして、該センサ素子910は絶縁碍子913を介してハウジング911に挿嵌保持され、該ハウジング911の基端側には、大気側カバー92が固定されている。
【0003】
また、大気側カバー92の基端部には、図13に示すごとく、該基端部を密閉する弾性部材93が配設されている。また、該弾性部材93は、センサ素子910と電気的に接続されたリード線912を挿通させている。
また、大気側カバー92の基端側には、外周カバー94が固定されており、該外周カバー94は、軸方向三箇所の加締め部940において径方向内側に加締められている。
【0004】
さらに、防水機能を有する通気フィルタ95が、大気側カバー92と外周カバー94との間に挟持されており、軸方向二箇所の加締め部940により加締め固定されている。そして、基準ガスとしての大気は、外周カバー94に設けられた貫通穴941から通気フィルタ95を介して大気側カバー92に設けられた空気導入口921へと導入され、その後、ガスセンサ9内部へと導入される。
【0005】
ところが、かかるガスセンサ9においては、以下のような問題点がある。すなわち、通気フィルタ95は、上記のごとく、大気側カバー92と外周カバー94との間に配設されているため、大気側カバー92又は外周カバー94を介して通気フィルタ95に熱が加わりやすい。そのため、内燃機関の排気系においてガスセンサ9の使用を重ねることにより、通気フィルタ95は熱劣化していき、通気フィルタ95を加締める加締め部940の防水性が低下してしまうおそれがある。その結果、空気導入口941からガスセンサ9の内部に外部の水分が浸入してしまうおそれがある。
【0006】
これに対して、図14に示すごとく、弾性部材83に設けた縦穴830に、シート状の通気フィルタ85により基端部が覆われた支持体84を配設したガスセンサ8がある(特許文献1参照)。かかるガスセンサ8においては、通気フィルタ85が弾性部材83に挟持されているため、通気フィルタ85に熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、通気フィルタ85と弾性部材83との密着性を確保することができる。
【0007】
しかしながら、上記ガスセンサ8においては、以下のような問題がある。すなわち、ガスセンサ8内に大気を導入するための通気部を形成するに当たっては、別々の部材であるシート状の通気フィルタ85と環状挿入部材84とを弾性部材83の縦穴830に位置合わせをしながら挿入配置する必要がある。そのため、通気フィルタ85の組付けを容易に行うことができず、ガスセンサ8の生産性を向上させることが困難となるおそれがある。
また、上記通気フィルタ85は、上述のごとくシート状体であるため、通気フィルタ85自体の強度が小さく、ガスセンサの耐久性が充分に確保できないという問題もある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−249678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を挿嵌保持するハウジングと、該ハウジングの基端側に配設された大気側カバーと、上記センサ素子と電気的に接続されたリード線と、該リード線を挿通させるとともに上記大気側カバーの基端部を密閉する弾性部材とを有するガスセンサにおいて、
上記弾性部材は、軸方向に貫通してなる縦穴と、上記リード線を挿嵌するリード挿通穴とを設けてなり、
上記縦穴には、筒状の支持体と、少なくとも該支持体の基端側開口部及び該基端側開口部に連続する外側面の一部を覆うように上記支持体に取り付けられた通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されており、
上記大気側カバーは、上記弾性部材を径方向内側に加締める加締め部を有し、
上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧されており、
上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されていることを特徴とするガスセンサにある(請求項1)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記縦穴には、上記支持体と上記通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されている。すなわち、上記支持体と上記通気フィルタとは一体化された状態で配設される。それゆえ、上記支持体及び上記通気フィルタをガスセンサへ容易に組付けることができる。
その結果、生産性に優れるガスセンサを提供することができる。
【0012】
また、上記構成を採用することにより、通気フィルタを、シート状のものとは異なり、ある程度の厚みを有する状態で形成することもできる。そして、このように、ある程度の厚みを有する通気フィルタを形成した場合には、通気フィルタの強度を容易に確保することができる。
その結果、耐久性に優れるガスセンサを提供することができる。
【0013】
また、上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されている。そして、通気フィルタにおける支持体の内側に配設されている部分は、弾性部材によって直接押圧されることがない。それゆえ、かかる部分の通気フィルタが変形してその気孔が潰されることがなく、通気フィルタにおける通気性を容易に確保することができる。
また、支持体の内側に配設される分だけ通気フィルタの厚みを厚くすることができ、該通気フィルタの強度を向上させることができる。
【0014】
さらに、上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧された状態で保持されている。そのため、上記ガスセンサの使用により上記通気フィルタに熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、上記通気フィルタと上記弾性部材との密着性を確保することができる。
【0015】
すなわち、上記通気フィルタの熱劣化が生じても、上記支持体に向かって付勢された上記弾性部材の弾性力により、上記通気フィルタの収縮等の変形分に追従して上記通気フィルタと上記弾性部材との界面の密着を保つことができる。その結果、外気の導入経路である通気部の防水機能の経時劣化を防ぐことができる。このように、上記弾性部材の弾性力によって、上記通気フィルタの熱劣化を補うことができる。
【0016】
また、上記通気フィルタは、上記弾性部材の縦穴内に配設されている。すなわち、上記通気フィルタは、熱伝導率の小さい上記弾性部材の内側に保持されることとなる。それゆえ、上記ガスセンサの外部の熱が、上記大気側カバーから上記通気フィルタへと伝わることを抑制することができ、上記通気フィルタの熱劣化自体を抑制することもできる。
【0017】
以上のごとく、本発明によれば、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明(請求項1)のガスセンサは、例えば、A/Fセンサ、NOxセンサ、酸素センサ等とすることができる。
なお、本明細書において、自動車エンジンの排気管等の内側に設置する側を先端側、その反対側を基端側として説明する。
【0019】
本発明において、上記通気フィルタは、上記支持体の基端側に嵌合されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記通気フィルタと上記支持体とを容易に一体化することができるため、上記フィルタアッシーをガスセンサへ一層容易に組付けることができる。
【0020】
また、上記通気フィルタは、上記支持体と一体成形されてなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記フィルタアッシーを容易に形成することができるため、生産性に充分に優れたガスセンサを容易に提供することができる。
【0021】
また、上記支持体は、少なくとも基端側が上記通気フィルタ内に埋設されてなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記フィルタアッシーを一層容易に形成することができるため、生産性に一層優れたガスセンサを提供することができる。
【0022】
また、上記通気フィルタは、上記支持体の内側に配置された部分に中空部を有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記中空部の大きさや形状を調整して通気フィルタにおける支持体の内側に配設される部分の厚みを調節することにより、通気フィルタにおける通気性と通気フィルタの強度とのバランスを容易に調整することができる。
【0023】
また、上記支持体は、上記通気フィルタ内に埋設されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記フィルタアッシーをより一層容易に形成することができるため、生産性に優れたガスセンサを容易に得ることができる。
【0024】
また、上記通気フィルタは、多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなることが好ましい(請求項7)。
この場合には、防水性、耐熱性及び耐薬品性に優れるとともに、大気の導通を阻害することのない通気フィルタとすることができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例に係るガスセンサにつき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のガスセンサ1は、図1に示すごとく、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子10と、該センサ素子10を挿嵌保持するハウジング11と、該ハウジング11の基端側に配設された大気側カバー2と、センサ素子10と電気的に接続されたリード線12と、該リード線12を挿通させるとともに大気側カバー2の基端部を密閉する弾性部材3とを有する。
【0026】
弾性部材3は、図1に示すごとく、軸方向に貫通してなる縦穴30と、リード線12を挿嵌するリード挿通穴32とを設けてなる。
縦穴30には、図1〜図3に示すような筒状の支持体41と、少なくとも該支持体41の基端側開口部414及び該基端側開口部414に連続する外側面415の一部を覆うように支持体41に取り付けられた通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。
【0027】
大気側カバー2は、図1に示すごとく、弾性部材3を径方向内側に加締める加締め部20を有する。本例の弾性部材3は、軸方向の二箇所において加締められている。
通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、弾性部材3と支持体41との間に挟圧されている。
【0028】
以下に、本例のガスセンサ1につき詳細に説明する。
センサ素子10は、図1に示すごとく、ハウジング11に保持された被測定ガス側絶縁碍子131に挿嵌保持されている。そして、センサ素子10の基端部を覆うように大気側絶縁碍子132がハウジング11の基端側に配されている。一方、ハウジング11の先端側には、センサ素子10の先端部を保護する素子側カバー15が設けられている。
【0029】
センサ素子10には、特定ガス濃度を検知する検出部と、該検出部を加熱するためのヒータと、これらに電気的に接続された端子とが設けてある(図示略)。
上記各端子は、大気側絶縁碍子132の内部に配された接続端子120を介して4本のリード線12とそれぞれ接続されている。
該リード線12は、大気側カバー2の内側を経由して、大気側カバー2の基端側に設けられた弾性部材3のリード挿通穴32に挿通され、ガスセンサ1の外部へと延設されている。
【0030】
大気側カバー2は、ステンレス鋼からなり、上記のごとく、軸方向の二箇所において弾性部材3を径方向内側に加締める加締め部20を有する。すなわち、弾性部材3は、大気側カバー2の加締め部20によって径方向内側に加締められている。そして、加締め部20により、弾性部材3のリード挿通穴32とリード線12とを密着させている。
【0031】
弾性部材3は、図1に示すごとく、縦穴30が軸方向に貫通するように形成されている。該縦穴30には、支持体41と通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。
【0032】
支持体41は、図1〜図3に示すごとく、先端側に配設される大径部411と、該大径部411よりも基端側に配設されるとともに径の小さい小径部412とを有する。また、大径部411と小径部412との間にはテーパ部413が形成されている。
【0033】
通気フィルタ42は、図1〜図3に示すごとく、支持体41の小径部412に嵌合されている。また、通気フィルタ42は、支持体41の小径部412の内側全体にわたって配設されている。すなわち、図3に示すごとく、厚みD2分の通気フィルタ42が、小径部412内に配設されている。このように本例のガスセンサ1における通気フィルタ42は、シート状体(図14における符号85参照)ではなく、塊状のブロック状体からなる。なお、以下では、通気フィルタ42における支持体41の内側に配設されている部分を内側フィルタ部421という。
【0034】
また、通気フィルタ42は、多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるとともに、支持体41と一体成形されてなる。
また、この通気フィルタ42の外周面420と、大径部411の外周面410とは略面一となるように形成されている。かかる構成により、弾性部材3の縦穴30をストレート形状の穴としても、支持体41と通気フィルタ42とを確実に保持することができる。
【0035】
次に、本例のガスセンサ1における大気の導入経路につき、図1を用いて説明する。
大気は、ガスセンサ1の基端部、すなわち、通気フィルタ42の基端部427から取り込まれる。該通気フィルタ42は多孔質のPTFEからなるため、大気の導通が阻害されることがない。次いで、大気は通気フィルタ42を通過して支持体41内に取り込まれる。該支持体41は筒状に形成されており、かかる支持体41の内部を通過して大気側カバー2内に大気が取り込まれる。その後、大気は、さらにセンサ素子10の方へと導入され、最終的にセンサ素子10内部に設けられた基準ガス空間へと導入される。
【0036】
本例の作用効果につき説明する。
縦穴30には、図1に示すごとく、支持体41と通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。すなわち、支持体41と通気フィルタ42とは一体化された状態で配設されている。それゆえ、支持体41及び通気フィルタ42をガスセンサ1へ容易に組付けることができる。
その結果、生産性に優れるガスセンサ1を提供することができる。
【0037】
また、通気フィルタ42は、シート状のものとは異なり、ある程度の厚み(図3における符号D1参照)を有する。そのため、通気フィルタ42の強度を容易に確保することができる。
その結果、耐久性に優れるガスセンサ1を提供することができる。
【0038】
また、通気フィルタ42は、その一部が支持体41の内側に配置されている。そして、このように支持体41の内側に配置された通気フィルタ42の一部である内側フィルタ部421は、弾性部材3によって直接押圧されることがない。それゆえ、内側フィルタ部421が変形してその気孔が潰されることがなく、通気フィルタ42における通気性を容易に確保することができる。
【0039】
さらに、通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、図1に示すごとく、弾性部材3と支持体41との間に挟圧された状態で保持されている。そのため、ガスセンサ1の使用により通気フィルタ42に熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、通気フィルタ42と弾性部材3との密着性を確保することができる。
【0040】
すなわち、通気フィルタ42の熱劣化が生じても、支持体41に向かって付勢された弾性部材3の弾性力により、通気フィルタ42の収縮等の変形分に追従して通気フィルタ42と弾性部材3との界面の密着を保つことができる。その結果、外気の導入経路である通気部の防水機能の経時劣化を防ぐことができる。このように、弾性部材3の弾性力によって、通気フィルタ42の熱劣化を補うことができる。
【0041】
また、通気フィルタ42は、図1に示すごとく、弾性部材3の縦穴内30に保持されている。すなわち、通気フィルタ42は、熱伝導率の小さい弾性部材3の内側に保持されることとなる。それゆえ、ガスセンサ1の外部の熱が、大気側カバー2から通気フィルタ42へと伝わることを抑制することができ、通気フィルタ42の熱劣化自体を抑制することもできる。
【0042】
また、通気フィルタ42は、支持体41の基端側に嵌合されている。これにより、通気フィルタ42と支持体41とを容易に一体化することができるため、フィルタアッシー4をガスセンサ1へ一層容易に組付けることができる。
また、通気フィルタ42は、支持体41と一体成形されてなる。これにより、フィルタアッシー4を容易に形成することができるため、生産性に充分に優れたガスセンサ1を容易に提供することができる。
【0043】
また、支持体41は、小径部412が通気フィルタ42内に埋設されてなる。これにより、フィルタアッシー4を一層容易に形成することができるため、生産性に一層優れたガスセンサ1を提供することができる。
また、支持体41の内側に配設される分だけ通気フィルタ42の厚みを厚くすることができ、該通気フィルタ42の強度を向上させることができる。
【0044】
また、通気フィルタ42は、多孔質のPTFEからなるため、防水性、耐熱性及び耐薬品性に優れるとともに、大気の導通を阻害することのない通気フィルタ42とすることができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供することができる。
【0046】
なお、上記実施例1のガスセンサは、積層型のセンサ素子を有するガスセンサとしたが、図4に示すようなコップ型のセンサ素子10を有するガスセンサ1とすることもできる。図4において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずるものとする。
【0047】
(実施例2)
本例は、図5〜図7に示すごとく、支持体41に対する通気フィルタ42の取付け状態及び形状を種々変更してフィルタアッシー4を作製した例である。
すなわち、図5に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、実施例1のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも、内側フィルタ部421の厚みd1が小さくなるよう形成されている(図3におけるD1参照)。
【0048】
次に、図6に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、内側フィルタ部421において中空部424を有している。また、図7に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、図6に示すフィルタアッシー4の内側フィルタ部421よりも、中空部424の体積が小さくなるよう形成されている。
【0049】
このように、フィルタアッシー4は種々の形状で形成することができる。そして、図5〜図7に示すフィルタアッシー4のごとく、内側フィルタ部421の形状を種々変更することによって、ガスセンサ1に取り込む大気の量と通気フィルタ42の強度とを変化させることができる。それゆえ、通気フィルタ42における通気量と通気フィルタ42の強度のバランスを容易に調整することができる。
【0050】
例えば、図5において示される通気フィルタ42は、図3において示される通気フィルタ42よりも通気性に優れ、図3において示される通気フィルタ42は、図5において示される通気フィルタ42よりも強度が高い。
また、図6において示される通気フィルタ42は、図7において示される通気フィルタ42よりも通気性に優れ、図7において示される通気フィルタ42は、図6において示される通気フィルタ42よりも強度が高い。
したがって、内側フィルタ部421の形状を種々変更することにより、通気フィルタ42における通気性を確保することと、通気フィルタ42の強度を大きくすることとのバランスを容易にとることができる。
【0051】
(実施例3)
本例は、図8〜図10に示すごとく、支持体41が通気フィルタ42内に埋設されているフィルタアッシー4の例である。
本例の支持体41はストレート形状の筒状体であり、その周囲を通気フィルタ42が覆っている。
【0052】
図8における支持体41の先端部416は、通気フィルタ42の先端部426と軸方向において同一位置に配置されている。また、図9に示すフィルタアッシー4は、図8に示すフィルタアッシー4とほぼ同じ形状であるが、その通気フィルタ42には、内側フィルタ部421において中空部424が形成されている。また、図10に示すフィルタアッシー4においては、支持体41が部分的に露出することもなく、その全体が通気フィルタ42に完全に埋設されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0053】
本例のフィルタアッシー4は、支持体41を通気フィルタ42内に埋設してなるため、フィルタアッシー4をより一層容易に形成することができる。それゆえ、生産性に優れたガスセンサ1を容易に提供することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(比較例)
本例は、本発明のガスセンサ1におけるフィルタアッシー4とは異なり、図11、図12に示すように内側フィルタ部(例えば、図5における符号421参照)を有していないフィルタアッシー7の例である。
なお、本発明のガスセンサ1を説明するに当たって使用した符号は、実施例1において使用した符号に準ずる。
【0055】
図11に示すフィルタアッシー7の通気フィルタ72は、本発明のガスセンサ1におけるフィルタアッシー4の通気フィルタ42とは異なり内側フィルタ部を有していない。すなわち、図11における通気フィルタ72は、内側フィルタ部を有していない分、本発明のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも厚みが小さい。それゆえ、図11における通気フィルタ72は、本発明のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも強度が小さいものとなる。
【0056】
図12に示すフィルタアッシー7の通気フィルタ72も、図11における通気フィルタ72と同様に内側フィルタ部を有していない。一方で、図12に示すフィルタアッシー7は、図11における通気フィルタ72よりも、支持体71よりも基端側の通気フィルタ72の厚みが大きくなるよう形成されている。そのため、図12における通気フィルタ72は、図11における通気フィルタ72よりも強度は大きい。
【0057】
しかしながら、図12におけるフィルタアッシー7においては、小径部712よりも基端側の通気フィルタ72には、弾性部材(図示略)からの押圧力が直接作用するため、かかる部分の通気フィルタ72の気孔は潰されやすい。それゆえ、図12におけるフィルタアッシー7においては、所望の通気量を確保できない場合がある。
【0058】
これに対して、本発明のガスセンサ1においては、例えば図5に示すように支持体4内に内側フィルタ部421を有しているため、通気フィルタ42における通気量及び通気フィルタ42の強度を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1における、積層型センサ素子を有するガスセンサの断面説明図。
【図2】実施例1における、フィルタアッシーの斜視図。
【図3】実施例1における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図4】実施例1における、コップ型センサ素子を有するガスセンサの断面説明図。
【図5】実施例2における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図6】実施例2における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図7】実施例2における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図8】実施例3における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図9】実施例3における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図10】実施例3における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図11】比較例における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図12】比較例における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図13】従来例における、ガスセンサの断面説明図。
【図14】従来例における、ガスセンサの基端部の断面説明図。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスセンサ
10 センサ素子
11 ハウジング
12 リード線
2 大気側カバー
20 加締め部
3 弾性部材
30 縦穴
32 リード挿通穴
4 フィルタアッシー
41 支持体
414 基端側開口部
415 外側面
42 通気フィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車エンジン等の内燃機関の排気系に設置され、排気ガス中の酸素濃度等を検知するガスセンサがある。
該ガスセンサ9は、図13に示すごとく、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子910を内蔵している。そして、該センサ素子910は絶縁碍子913を介してハウジング911に挿嵌保持され、該ハウジング911の基端側には、大気側カバー92が固定されている。
【0003】
また、大気側カバー92の基端部には、図13に示すごとく、該基端部を密閉する弾性部材93が配設されている。また、該弾性部材93は、センサ素子910と電気的に接続されたリード線912を挿通させている。
また、大気側カバー92の基端側には、外周カバー94が固定されており、該外周カバー94は、軸方向三箇所の加締め部940において径方向内側に加締められている。
【0004】
さらに、防水機能を有する通気フィルタ95が、大気側カバー92と外周カバー94との間に挟持されており、軸方向二箇所の加締め部940により加締め固定されている。そして、基準ガスとしての大気は、外周カバー94に設けられた貫通穴941から通気フィルタ95を介して大気側カバー92に設けられた空気導入口921へと導入され、その後、ガスセンサ9内部へと導入される。
【0005】
ところが、かかるガスセンサ9においては、以下のような問題点がある。すなわち、通気フィルタ95は、上記のごとく、大気側カバー92と外周カバー94との間に配設されているため、大気側カバー92又は外周カバー94を介して通気フィルタ95に熱が加わりやすい。そのため、内燃機関の排気系においてガスセンサ9の使用を重ねることにより、通気フィルタ95は熱劣化していき、通気フィルタ95を加締める加締め部940の防水性が低下してしまうおそれがある。その結果、空気導入口941からガスセンサ9の内部に外部の水分が浸入してしまうおそれがある。
【0006】
これに対して、図14に示すごとく、弾性部材83に設けた縦穴830に、シート状の通気フィルタ85により基端部が覆われた支持体84を配設したガスセンサ8がある(特許文献1参照)。かかるガスセンサ8においては、通気フィルタ85が弾性部材83に挟持されているため、通気フィルタ85に熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、通気フィルタ85と弾性部材83との密着性を確保することができる。
【0007】
しかしながら、上記ガスセンサ8においては、以下のような問題がある。すなわち、ガスセンサ8内に大気を導入するための通気部を形成するに当たっては、別々の部材であるシート状の通気フィルタ85と環状挿入部材84とを弾性部材83の縦穴830に位置合わせをしながら挿入配置する必要がある。そのため、通気フィルタ85の組付けを容易に行うことができず、ガスセンサ8の生産性を向上させることが困難となるおそれがある。
また、上記通気フィルタ85は、上述のごとくシート状体であるため、通気フィルタ85自体の強度が小さく、ガスセンサの耐久性が充分に確保できないという問題もある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−249678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を挿嵌保持するハウジングと、該ハウジングの基端側に配設された大気側カバーと、上記センサ素子と電気的に接続されたリード線と、該リード線を挿通させるとともに上記大気側カバーの基端部を密閉する弾性部材とを有するガスセンサにおいて、
上記弾性部材は、軸方向に貫通してなる縦穴と、上記リード線を挿嵌するリード挿通穴とを設けてなり、
上記縦穴には、筒状の支持体と、少なくとも該支持体の基端側開口部及び該基端側開口部に連続する外側面の一部を覆うように上記支持体に取り付けられた通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されており、
上記大気側カバーは、上記弾性部材を径方向内側に加締める加締め部を有し、
上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧されており、
上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されていることを特徴とするガスセンサにある(請求項1)。
【0011】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記縦穴には、上記支持体と上記通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されている。すなわち、上記支持体と上記通気フィルタとは一体化された状態で配設される。それゆえ、上記支持体及び上記通気フィルタをガスセンサへ容易に組付けることができる。
その結果、生産性に優れるガスセンサを提供することができる。
【0012】
また、上記構成を採用することにより、通気フィルタを、シート状のものとは異なり、ある程度の厚みを有する状態で形成することもできる。そして、このように、ある程度の厚みを有する通気フィルタを形成した場合には、通気フィルタの強度を容易に確保することができる。
その結果、耐久性に優れるガスセンサを提供することができる。
【0013】
また、上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されている。そして、通気フィルタにおける支持体の内側に配設されている部分は、弾性部材によって直接押圧されることがない。それゆえ、かかる部分の通気フィルタが変形してその気孔が潰されることがなく、通気フィルタにおける通気性を容易に確保することができる。
また、支持体の内側に配設される分だけ通気フィルタの厚みを厚くすることができ、該通気フィルタの強度を向上させることができる。
【0014】
さらに、上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧された状態で保持されている。そのため、上記ガスセンサの使用により上記通気フィルタに熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、上記通気フィルタと上記弾性部材との密着性を確保することができる。
【0015】
すなわち、上記通気フィルタの熱劣化が生じても、上記支持体に向かって付勢された上記弾性部材の弾性力により、上記通気フィルタの収縮等の変形分に追従して上記通気フィルタと上記弾性部材との界面の密着を保つことができる。その結果、外気の導入経路である通気部の防水機能の経時劣化を防ぐことができる。このように、上記弾性部材の弾性力によって、上記通気フィルタの熱劣化を補うことができる。
【0016】
また、上記通気フィルタは、上記弾性部材の縦穴内に配設されている。すなわち、上記通気フィルタは、熱伝導率の小さい上記弾性部材の内側に保持されることとなる。それゆえ、上記ガスセンサの外部の熱が、上記大気側カバーから上記通気フィルタへと伝わることを抑制することができ、上記通気フィルタの熱劣化自体を抑制することもできる。
【0017】
以上のごとく、本発明によれば、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明(請求項1)のガスセンサは、例えば、A/Fセンサ、NOxセンサ、酸素センサ等とすることができる。
なお、本明細書において、自動車エンジンの排気管等の内側に設置する側を先端側、その反対側を基端側として説明する。
【0019】
本発明において、上記通気フィルタは、上記支持体の基端側に嵌合されていることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記通気フィルタと上記支持体とを容易に一体化することができるため、上記フィルタアッシーをガスセンサへ一層容易に組付けることができる。
【0020】
また、上記通気フィルタは、上記支持体と一体成形されてなることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記フィルタアッシーを容易に形成することができるため、生産性に充分に優れたガスセンサを容易に提供することができる。
【0021】
また、上記支持体は、少なくとも基端側が上記通気フィルタ内に埋設されてなることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記フィルタアッシーを一層容易に形成することができるため、生産性に一層優れたガスセンサを提供することができる。
【0022】
また、上記通気フィルタは、上記支持体の内側に配置された部分に中空部を有することが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記中空部の大きさや形状を調整して通気フィルタにおける支持体の内側に配設される部分の厚みを調節することにより、通気フィルタにおける通気性と通気フィルタの強度とのバランスを容易に調整することができる。
【0023】
また、上記支持体は、上記通気フィルタ内に埋設されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記フィルタアッシーをより一層容易に形成することができるため、生産性に優れたガスセンサを容易に得ることができる。
【0024】
また、上記通気フィルタは、多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなることが好ましい(請求項7)。
この場合には、防水性、耐熱性及び耐薬品性に優れるとともに、大気の導通を阻害することのない通気フィルタとすることができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例に係るガスセンサにつき、図1〜図3を用いて説明する。
本例のガスセンサ1は、図1に示すごとく、被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子10と、該センサ素子10を挿嵌保持するハウジング11と、該ハウジング11の基端側に配設された大気側カバー2と、センサ素子10と電気的に接続されたリード線12と、該リード線12を挿通させるとともに大気側カバー2の基端部を密閉する弾性部材3とを有する。
【0026】
弾性部材3は、図1に示すごとく、軸方向に貫通してなる縦穴30と、リード線12を挿嵌するリード挿通穴32とを設けてなる。
縦穴30には、図1〜図3に示すような筒状の支持体41と、少なくとも該支持体41の基端側開口部414及び該基端側開口部414に連続する外側面415の一部を覆うように支持体41に取り付けられた通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。
【0027】
大気側カバー2は、図1に示すごとく、弾性部材3を径方向内側に加締める加締め部20を有する。本例の弾性部材3は、軸方向の二箇所において加締められている。
通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、弾性部材3と支持体41との間に挟圧されている。
【0028】
以下に、本例のガスセンサ1につき詳細に説明する。
センサ素子10は、図1に示すごとく、ハウジング11に保持された被測定ガス側絶縁碍子131に挿嵌保持されている。そして、センサ素子10の基端部を覆うように大気側絶縁碍子132がハウジング11の基端側に配されている。一方、ハウジング11の先端側には、センサ素子10の先端部を保護する素子側カバー15が設けられている。
【0029】
センサ素子10には、特定ガス濃度を検知する検出部と、該検出部を加熱するためのヒータと、これらに電気的に接続された端子とが設けてある(図示略)。
上記各端子は、大気側絶縁碍子132の内部に配された接続端子120を介して4本のリード線12とそれぞれ接続されている。
該リード線12は、大気側カバー2の内側を経由して、大気側カバー2の基端側に設けられた弾性部材3のリード挿通穴32に挿通され、ガスセンサ1の外部へと延設されている。
【0030】
大気側カバー2は、ステンレス鋼からなり、上記のごとく、軸方向の二箇所において弾性部材3を径方向内側に加締める加締め部20を有する。すなわち、弾性部材3は、大気側カバー2の加締め部20によって径方向内側に加締められている。そして、加締め部20により、弾性部材3のリード挿通穴32とリード線12とを密着させている。
【0031】
弾性部材3は、図1に示すごとく、縦穴30が軸方向に貫通するように形成されている。該縦穴30には、支持体41と通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。
【0032】
支持体41は、図1〜図3に示すごとく、先端側に配設される大径部411と、該大径部411よりも基端側に配設されるとともに径の小さい小径部412とを有する。また、大径部411と小径部412との間にはテーパ部413が形成されている。
【0033】
通気フィルタ42は、図1〜図3に示すごとく、支持体41の小径部412に嵌合されている。また、通気フィルタ42は、支持体41の小径部412の内側全体にわたって配設されている。すなわち、図3に示すごとく、厚みD2分の通気フィルタ42が、小径部412内に配設されている。このように本例のガスセンサ1における通気フィルタ42は、シート状体(図14における符号85参照)ではなく、塊状のブロック状体からなる。なお、以下では、通気フィルタ42における支持体41の内側に配設されている部分を内側フィルタ部421という。
【0034】
また、通気フィルタ42は、多孔質のPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)からなるとともに、支持体41と一体成形されてなる。
また、この通気フィルタ42の外周面420と、大径部411の外周面410とは略面一となるように形成されている。かかる構成により、弾性部材3の縦穴30をストレート形状の穴としても、支持体41と通気フィルタ42とを確実に保持することができる。
【0035】
次に、本例のガスセンサ1における大気の導入経路につき、図1を用いて説明する。
大気は、ガスセンサ1の基端部、すなわち、通気フィルタ42の基端部427から取り込まれる。該通気フィルタ42は多孔質のPTFEからなるため、大気の導通が阻害されることがない。次いで、大気は通気フィルタ42を通過して支持体41内に取り込まれる。該支持体41は筒状に形成されており、かかる支持体41の内部を通過して大気側カバー2内に大気が取り込まれる。その後、大気は、さらにセンサ素子10の方へと導入され、最終的にセンサ素子10内部に設けられた基準ガス空間へと導入される。
【0036】
本例の作用効果につき説明する。
縦穴30には、図1に示すごとく、支持体41と通気フィルタ42とからなるフィルタアッシー4が挿入保持されている。すなわち、支持体41と通気フィルタ42とは一体化された状態で配設されている。それゆえ、支持体41及び通気フィルタ42をガスセンサ1へ容易に組付けることができる。
その結果、生産性に優れるガスセンサ1を提供することができる。
【0037】
また、通気フィルタ42は、シート状のものとは異なり、ある程度の厚み(図3における符号D1参照)を有する。そのため、通気フィルタ42の強度を容易に確保することができる。
その結果、耐久性に優れるガスセンサ1を提供することができる。
【0038】
また、通気フィルタ42は、その一部が支持体41の内側に配置されている。そして、このように支持体41の内側に配置された通気フィルタ42の一部である内側フィルタ部421は、弾性部材3によって直接押圧されることがない。それゆえ、内側フィルタ部421が変形してその気孔が潰されることがなく、通気フィルタ42における通気性を容易に確保することができる。
【0039】
さらに、通気フィルタ42における支持体41の外側面415を覆う部分425は、図1に示すごとく、弾性部材3と支持体41との間に挟圧された状態で保持されている。そのため、ガスセンサ1の使用により通気フィルタ42に熱が加わって収縮等の熱劣化が生じても、通気フィルタ42と弾性部材3との密着性を確保することができる。
【0040】
すなわち、通気フィルタ42の熱劣化が生じても、支持体41に向かって付勢された弾性部材3の弾性力により、通気フィルタ42の収縮等の変形分に追従して通気フィルタ42と弾性部材3との界面の密着を保つことができる。その結果、外気の導入経路である通気部の防水機能の経時劣化を防ぐことができる。このように、弾性部材3の弾性力によって、通気フィルタ42の熱劣化を補うことができる。
【0041】
また、通気フィルタ42は、図1に示すごとく、弾性部材3の縦穴内30に保持されている。すなわち、通気フィルタ42は、熱伝導率の小さい弾性部材3の内側に保持されることとなる。それゆえ、ガスセンサ1の外部の熱が、大気側カバー2から通気フィルタ42へと伝わることを抑制することができ、通気フィルタ42の熱劣化自体を抑制することもできる。
【0042】
また、通気フィルタ42は、支持体41の基端側に嵌合されている。これにより、通気フィルタ42と支持体41とを容易に一体化することができるため、フィルタアッシー4をガスセンサ1へ一層容易に組付けることができる。
また、通気フィルタ42は、支持体41と一体成形されてなる。これにより、フィルタアッシー4を容易に形成することができるため、生産性に充分に優れたガスセンサ1を容易に提供することができる。
【0043】
また、支持体41は、小径部412が通気フィルタ42内に埋設されてなる。これにより、フィルタアッシー4を一層容易に形成することができるため、生産性に一層優れたガスセンサ1を提供することができる。
また、支持体41の内側に配設される分だけ通気フィルタ42の厚みを厚くすることができ、該通気フィルタ42の強度を向上させることができる。
【0044】
また、通気フィルタ42は、多孔質のPTFEからなるため、防水性、耐熱性及び耐薬品性に優れるとともに、大気の導通を阻害することのない通気フィルタ42とすることができる。
【0045】
以上のごとく、本例によれば、生産性及び耐久性に優れるとともに、通気部の防水機能の経時劣化を防止することができるガスセンサを提供することができる。
【0046】
なお、上記実施例1のガスセンサは、積層型のセンサ素子を有するガスセンサとしたが、図4に示すようなコップ型のセンサ素子10を有するガスセンサ1とすることもできる。図4において使用した符号は、図1において使用した符号に準ずるものとする。
【0047】
(実施例2)
本例は、図5〜図7に示すごとく、支持体41に対する通気フィルタ42の取付け状態及び形状を種々変更してフィルタアッシー4を作製した例である。
すなわち、図5に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、実施例1のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも、内側フィルタ部421の厚みd1が小さくなるよう形成されている(図3におけるD1参照)。
【0048】
次に、図6に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、内側フィルタ部421において中空部424を有している。また、図7に示すフィルタアッシー4の通気フィルタ42は、図6に示すフィルタアッシー4の内側フィルタ部421よりも、中空部424の体積が小さくなるよう形成されている。
【0049】
このように、フィルタアッシー4は種々の形状で形成することができる。そして、図5〜図7に示すフィルタアッシー4のごとく、内側フィルタ部421の形状を種々変更することによって、ガスセンサ1に取り込む大気の量と通気フィルタ42の強度とを変化させることができる。それゆえ、通気フィルタ42における通気量と通気フィルタ42の強度のバランスを容易に調整することができる。
【0050】
例えば、図5において示される通気フィルタ42は、図3において示される通気フィルタ42よりも通気性に優れ、図3において示される通気フィルタ42は、図5において示される通気フィルタ42よりも強度が高い。
また、図6において示される通気フィルタ42は、図7において示される通気フィルタ42よりも通気性に優れ、図7において示される通気フィルタ42は、図6において示される通気フィルタ42よりも強度が高い。
したがって、内側フィルタ部421の形状を種々変更することにより、通気フィルタ42における通気性を確保することと、通気フィルタ42の強度を大きくすることとのバランスを容易にとることができる。
【0051】
(実施例3)
本例は、図8〜図10に示すごとく、支持体41が通気フィルタ42内に埋設されているフィルタアッシー4の例である。
本例の支持体41はストレート形状の筒状体であり、その周囲を通気フィルタ42が覆っている。
【0052】
図8における支持体41の先端部416は、通気フィルタ42の先端部426と軸方向において同一位置に配置されている。また、図9に示すフィルタアッシー4は、図8に示すフィルタアッシー4とほぼ同じ形状であるが、その通気フィルタ42には、内側フィルタ部421において中空部424が形成されている。また、図10に示すフィルタアッシー4においては、支持体41が部分的に露出することもなく、その全体が通気フィルタ42に完全に埋設されている。
その他は、実施例1と同様である。
【0053】
本例のフィルタアッシー4は、支持体41を通気フィルタ42内に埋設してなるため、フィルタアッシー4をより一層容易に形成することができる。それゆえ、生産性に優れたガスセンサ1を容易に提供することができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0054】
(比較例)
本例は、本発明のガスセンサ1におけるフィルタアッシー4とは異なり、図11、図12に示すように内側フィルタ部(例えば、図5における符号421参照)を有していないフィルタアッシー7の例である。
なお、本発明のガスセンサ1を説明するに当たって使用した符号は、実施例1において使用した符号に準ずる。
【0055】
図11に示すフィルタアッシー7の通気フィルタ72は、本発明のガスセンサ1におけるフィルタアッシー4の通気フィルタ42とは異なり内側フィルタ部を有していない。すなわち、図11における通気フィルタ72は、内側フィルタ部を有していない分、本発明のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも厚みが小さい。それゆえ、図11における通気フィルタ72は、本発明のガスセンサ1における通気フィルタ42よりも強度が小さいものとなる。
【0056】
図12に示すフィルタアッシー7の通気フィルタ72も、図11における通気フィルタ72と同様に内側フィルタ部を有していない。一方で、図12に示すフィルタアッシー7は、図11における通気フィルタ72よりも、支持体71よりも基端側の通気フィルタ72の厚みが大きくなるよう形成されている。そのため、図12における通気フィルタ72は、図11における通気フィルタ72よりも強度は大きい。
【0057】
しかしながら、図12におけるフィルタアッシー7においては、小径部712よりも基端側の通気フィルタ72には、弾性部材(図示略)からの押圧力が直接作用するため、かかる部分の通気フィルタ72の気孔は潰されやすい。それゆえ、図12におけるフィルタアッシー7においては、所望の通気量を確保できない場合がある。
【0058】
これに対して、本発明のガスセンサ1においては、例えば図5に示すように支持体4内に内側フィルタ部421を有しているため、通気フィルタ42における通気量及び通気フィルタ42の強度を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1における、積層型センサ素子を有するガスセンサの断面説明図。
【図2】実施例1における、フィルタアッシーの斜視図。
【図3】実施例1における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図4】実施例1における、コップ型センサ素子を有するガスセンサの断面説明図。
【図5】実施例2における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図6】実施例2における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図7】実施例2における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図8】実施例3における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図9】実施例3における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図10】実施例3における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図11】比較例における、フィルタアッシーの断面説明図。
【図12】比較例における、フィルタアッシーの別形態の断面説明図。
【図13】従来例における、ガスセンサの断面説明図。
【図14】従来例における、ガスセンサの基端部の断面説明図。
【符号の説明】
【0060】
1 ガスセンサ
10 センサ素子
11 ハウジング
12 リード線
2 大気側カバー
20 加締め部
3 弾性部材
30 縦穴
32 リード挿通穴
4 フィルタアッシー
41 支持体
414 基端側開口部
415 外側面
42 通気フィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を挿嵌保持するハウジングと、該ハウジングの基端側に配設された大気側カバーと、上記センサ素子と電気的に接続されたリード線と、該リード線を挿通させるとともに上記大気側カバーの基端部を密閉する弾性部材とを有するガスセンサにおいて、
上記弾性部材は、軸方向に貫通してなる縦穴と、上記リード線を挿嵌するリード挿通穴とを設けてなり、
上記縦穴には、筒状の支持体と、少なくとも該支持体の基端側開口部及び該基端側開口部に連続する外側面の一部を覆うように上記支持体に取り付けられた通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されており、
上記大気側カバーは、上記弾性部材を径方向内側に加締める加締め部を有し、
上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧されており、
上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記通気フィルタは、上記支持体の基端側に嵌合されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記通気フィルタは、上記支持体と一体成形されてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記支持体は、少なくとも基端側が上記通気フィルタ内に埋設されてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記通気フィルタは、上記支持体の内側に配置された部分に中空部を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記支持体は、上記通気フィルタ内に埋設されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記通気フィルタは、多孔質のPTFEからなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項1】
被測定ガス中の特定ガス濃度を検出するセンサ素子と、該センサ素子を挿嵌保持するハウジングと、該ハウジングの基端側に配設された大気側カバーと、上記センサ素子と電気的に接続されたリード線と、該リード線を挿通させるとともに上記大気側カバーの基端部を密閉する弾性部材とを有するガスセンサにおいて、
上記弾性部材は、軸方向に貫通してなる縦穴と、上記リード線を挿嵌するリード挿通穴とを設けてなり、
上記縦穴には、筒状の支持体と、少なくとも該支持体の基端側開口部及び該基端側開口部に連続する外側面の一部を覆うように上記支持体に取り付けられた通気フィルタとからなるフィルタアッシーが挿入保持されており、
上記大気側カバーは、上記弾性部材を径方向内側に加締める加締め部を有し、
上記通気フィルタにおける上記支持体の外側面を覆う部分は、上記弾性部材と上記支持体との間に挟圧されており、
上記通気フィルタは、その一部が上記支持体の内側に配置されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
請求項1において、上記通気フィルタは、上記支持体の基端側に嵌合されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記通気フィルタは、上記支持体と一体成形されてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記支持体は、少なくとも基端側が上記通気フィルタ内に埋設されてなることを特徴とするガスセンサ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記通気フィルタは、上記支持体の内側に配置された部分に中空部を有することを特徴とするガスセンサ。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記支持体は、上記通気フィルタ内に埋設されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記通気フィルタは、多孔質のPTFEからなることを特徴とするガスセンサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−232864(P2008−232864A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−73776(P2007−73776)
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月21日(2007.3.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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