説明

ガスセンサ

【課題】結露に起因する不具合の発生を防止する。
【解決手段】ガスセンサ1を、内部をガス検出室26として軸方向に伸びる筒状部25と、筒状部25の軸方向の一端の開口部25aを閉塞するベース部35と、ベース部35の略中央部に配置されてガス検出室26内の少なくとも温度または湿度を検出する状態センサ36と、ベース部35の状態センサ36の周辺部に配置された検出素子31および温度補償素子32と、筒状部25の軸方向の他端の開口部25bを覆う蓋状部材27と、軸方向から見て状態センサ36および検出素子31および温度補償素子32と重なり合わないようにしてずれた位置で蓋状部材27を貫通してガス検出室26内に外部から検査対象ガスを導入可能なガス導入口28とを備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガスセンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば内部にガス検出素子が配置されるガス検出室を形成するケースに、ガス検出室内に検査対象ガスを導入するためのガス導入口を備えるガスセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第4024210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来技術に係るガスセンサにおいて、ガス検出室内に配置されるガス検出素子およびガス検出室内の温度などを検出する各センサの位置と、ケースのガス導入口の位置との相対関係については、何等明確に記載されていない。このため、例えば高温かつ多湿の環境下の検査対象ガスに含まれる所定のガスを検出する際に、ケースのガス導入口からガス検出室内に導入される検査対象ガスの流通方向にガス検出素子または各センサが配置されている場合などにおいて、多湿度で水分量の多い検査対象ガスがガス検出素子または各センサに直接的に接触して結露が発生し易くなる虞があり、例えばガス検出素子または各センサに結露水が接触した状態で通電が行われると、素子破壊や感度低下などの不具合が発生してしまうという問題が発生する。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、結露に起因する不具合の発生を防止することが可能なガスセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係るガスセンサは、内部をガス検出室(例えば、実施の形態でのガス検出室26)として軸方向に伸びる筒状部材(例えば、実施の形態での筒状部25)と、前記筒状部材の前記軸方向の一端の開口部(例えば、実施の形態での開口部25a)を閉塞するベース部(例えば、実施の形態でのベース部35)と、前記ベース部の略中央部に配置されて前記ガス検出室内の少なくとも温度または湿度を検出する状態センサ(例えば、実施の形態での状態センサ36)と、前記ベース部の前記状態センサの周辺部に配置されたガス検出用素子(例えば、実施の形態での検出素子31および温度補償素子32)と、前記筒状部材の前記軸方向の他端の開口部(例えば、実施の形態での開口部25b)を覆う蓋状部材(例えば、実施の形態での蓋状部材27)と、前記軸方向から見て前記状態センサおよび前記ガス検出用素子と重なり合わないようにしてずれた位置で前記蓋状部材を貫通して前記ガス検出室内に外部から検査対象ガスを導入可能なガス導入口(例えば、実施の形態でのガス導入口28)とを備える。
【0005】
さらに、本発明の第2態様に係るガスセンサでは、複数の前記ガス検出用素子は第1円周上に配置され、複数の前記ガス導入口は前記第1円周よりも大きな径の第2円周上に配置される。
【0006】
さらに、本発明の第3態様に係るガスセンサは、前記第2円周上に配置された前記複数の前記ガス導入口の全てを覆う円環状の撥水フィルタ(例えば、実施の形態での撥水フィルタ42)を備える。
【0007】
さらに、本発明の第4態様に係るガスセンサは、前記筒状部材の壁部(例えば、実施の形態での筒状部25が兼ねる)または前記蓋状部材に配置されて前記ガス検出室内を加熱するヒータ(例えば、実施の形態での内部筒状ヒータ43、外部筒状ヒータ44、板状ヒータ46)と、前記複数の前記ガス導入口を覆う金属からなる防爆フィルタ(例えば、実施の形態での防爆フィルタ41)とを備え、前記ヒータから発生する熱を前記防爆フィルタに伝熱する伝熱構造(例えば、実施の形態での伝熱部材45)を有する。
【0008】
さらに、本発明の第5態様に係るガスセンサは、前記ヒータは前記筒状部材の前記壁部に配置され、前記防爆フィルタは前記第2円周上に配置された前記複数の前記ガス導入口の全てを覆う円環状に形成され、前記伝熱構造は前記ヒータから発生する熱を前記防爆フィルタの径方向外方側から径方向内方側へ伝熱させる。
【0009】
さらに、本発明の第6態様に係るガスセンサでは、複数の前記ガス検出用素子は第1円周上に配置され、複数の前記ガス導入口は前記第1円周上または前記第1円周とは異なる径の所定円周上に配置され、前記第1円周上での前記複数の前記ガス検出用素子の配置位相と、前記第1円周上または前記所定円周上での前記複数の前記ガス導入口の配置位相とは異なる。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の第1態様に係るガスセンサによれば、軸方向から見て、ガス検出室内に外部から検査対象ガスを導入可能なガス導入口は、ガス検出室内の状態センサおよびガス検出用素子と重なり合わないようにしてずれた位置に配置されていることから、検査対象ガスの流通方向からずれた位置に状態センサおよびガス検出用素子が配置されることになり、検査対象ガスが状態センサおよびガス検出用素子に直接的に吹き付けられるようにして接触することを防止し、たとえ検査対象ガスが多湿度で水分量の多い状態であっても、状態センサおよびガス検出用素子に結露が発生してしまうことを抑制することができる。しかも、状態センサをベース部の略中央部に配置することにより、ガス検出室内の少なくとも温度または湿度の検出精度および検出信頼性を向上させることができる。
【0011】
さらに、本発明の第2態様に係るガスセンサによれば、複数のガス検出用素子を軸方向から見てガス導入口と重なり合わないようにしてずれた位置に配置する場合であっても、複数のガス検出用素子の配置密度を増大させることができ、ガスセンサを小型化することができる。
【0012】
さらに、本発明の第3態様に係るガスセンサによれば、円環状の撥水フィルタによって第2円周上に配置された複数のガス導入口の全てを覆うことができ、撥水フィルタの形状が複雑化あるいは大型化したり、撥水フィルタの点数が増大することを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明の第4態様に係るガスセンサによれば、ヒータから発生する熱を防爆フィルタに伝熱する伝熱構造として、例えばヒータと防爆フィルタとを直接接触させたり、例えばヒータと防爆フィルタとを接続する熱伝導性が高い伝熱部材を備えることによって、ヒータからの伝熱によって防爆フィルタを効率よく加熱することができ、結露水の液滴による防爆フィルタの目詰まりを防止することができる。
【0014】
さらに、本発明の第5態様に係るガスセンサによれば、円環状の防爆フィルタによって第2円周上に配置された複数のガス導入口の全てを覆うことができ、防爆フィルタの形状が複雑化あるいは大型化したり、防爆フィルタの点数が増大することを防止することができる。しかも、例えばヒータと防爆フィルタの径方向外方側の位置とを直接接触させたり、例えばヒータと防爆フィルタの径方向外方側の位置とを接続する熱伝導性が高い伝熱部材を備えることによって、ヒータから発生する熱を円環状の防爆フィルタにおいて、相対的に放熱面積が大きい径方向外方側から相対的に放熱面積が小さい径方向内方側へ伝熱させることにより、効率よく防爆フィルタを加熱することができる。
【0015】
さらに、本発明の第6態様に係るガスセンサによれば、第1円周上での複数のガス検出用素子の配置位相と、第1円周上または所定円周上での複数のガス導入口の配置位相とは異なることから、複数のガス検出用素子と複数のガス導入口との配置密度を増大させることができ、ガスセンサを小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るガスセンサについて添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態に係るガスセンサ1は、例えば図1に示すように、燃料電池システム10aに備えられている。この燃料電池システム10aは、燃料電池2と、電流制御器3と、蓄電装置4と、負荷5と、S/C出力制御器6と、過給器(S/C)7と、燃料供給装置8と、出力電流センサ9と、制御器10とを備えて構成され、ガスセンサ1は、燃料電池2に接続された各配管11,12,13,14のうち、酸素極側の出口側配管14に設けられている。
【0017】
燃料電池2は、例えば電気自動車等の動力源として車両に搭載されており、固体高分子電解質膜を水素極と酸素極で挟持した電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セル(図示略)を多数組積層して構成されている。
燃料電池2の水素極に接続された入口側配管11には、例えば高圧の水素タンク等を具備する燃料供給装置8から水素ガスを含む燃料ガスが供給され、水素極の触媒電極上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介して酸素極へと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。
酸素極に接続された入口側配管12には、例えば、酸素などの酸化剤ガスあるいは空気が過給器(S/C)7から供給され、この酸素極において、水素イオンと電子と酸素とが反応して水が生成される。そして、水素極側および酸素極側共に出口側配管13、14から反応済みのいわゆるオフガスが系外に排出される。特に、固体高分子電解質型の燃料電池は通常作動温度が水の蒸気化温度よりも低く、オフガスは多湿度で水分量の多いガスとなって排出される。
【0018】
そして、酸素極側の出口側配管14には、鉛直方向の上部に、例えばガス接触燃焼式のガスセンサ1が取り付けられ、このガスセンサ1により酸素極側の出口側配管14から水素ガスが排出されていないことを確認できるようになっている。
【0019】
また、過給器(S/C)7は、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池2の酸素極に供給する。
この過給器(S/C)7を駆動するモータ(図示略)の回転数は、制御器10から入力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータを具備するS/C出力制御器6によって制御されている。
【0020】
燃料電池2から取り出される発電電流(出力電流)は電流制御器3に入力されており、この電流制御器3には、例えば電気二重層コンデンサや電解コンデンサ等からなる複数のキャパシタセルが互いに直列に接続されて構成されたキャパシタ等からなる蓄電装置4が接続されている。
そして、燃料電池2および電流制御器3と蓄電装置4とは、例えば走行用モータ(図示略)と、例えば燃料電池2や蓄電装置4の冷却装置(図示略)や空調装置(図示略)等の各種補機類からなる負荷5と、S/C出力制御器6とに対して並列に接続されている。
【0021】
この燃料電池システム10aにおいて制御器10は、例えば車両の運転状態や、燃料電池2の水素極に供給される燃料ガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池2の水素極から排出されるオフガスに含まれる水素の濃度や、燃料電池2の発電状態、例えば各複数の燃料電池セルの端子間電圧や、燃料電池2から取り出される出力電流等に基づき、過給器(S/C)7から燃料電池2へ供給される空気の流量に対する指令値および燃料供給装置8から燃料電池2へ供給される燃料ガスの流量に対する指令値を出力し、燃料電池2の発電状態を制御する。
このため、制御器10には、燃料電池2から取り出される出力電流の電流値を検出する出力電流センサ9から出力される検出信号が入力されている。
さらに、制御器10は、燃料電池2に対する発電指令(FC出力指令値)に基づき、電流制御器3により燃料電池2から取り出される出力電流の電流値を制御する。
【0022】
ガスセンサ1は、例えば図2に示すように、出口側配管14の長手方向に沿って長い直方形状のケース21を備えている。ケース21は、例えばポリフェニレンサルファイド製であって、長手方向両端部にフランジ部22を備えている。フランジ部22にはカラー23が設けられ、このカラー23内にボルト24が挿入されて、出口側配管14の取付座14aに締め付け固定されるようになっている。
【0023】
ケース21の厚さ方向の端面(例えば、下面)には、ベース部35を介して、セラミックスにより形成された筒状部25が設けられ、この筒状部25は出口側配管14の貫通孔14bに外周側から挿入されている。
筒状部25の内部はガス検出室26として形成され、筒状部25の軸方向(例えば、上下方向)の一端(例えば、上端)の開口部25aはベース部35により閉塞されている。
筒状部25の軸方向の他端(例えば、下端)の開口部25bは、例えばセラミックスからなる蓋状部材27によって覆われている。そして、蓋状部材27には、軸方向に蓋状部材27を貫通する複数(例えば、4つ)のガス導入口28が設けられている。
複数(例えば、4つ)のガス導入口28は、例えば図3に示すように、蓋状部材27の中心に対して所定の第2直径Rbを有する第2円周上において所定周方向間隔毎に配置されている。
また、例えば図2に示すように、筒状部25の外周面25Aにはシール材29が装着され、出口側配管14の貫通孔14bの内周壁に密接して気密性を確保している。
【0024】
ケース21内には樹脂で封止された回路基板30が設けられ、ガス検出室26内に配置された、例えば2対の検出素子31および温度補償素子32は、回路基板30に接続された通電用の複数のステー33(支持部材)およびリード線34により回路基板30に接続されている。
通電用のステー33は、例えば銅合金、鉄合金、ニッケル合金等の複合合金材から形成され、ケース21と筒状部25との間に配置された略円板状のベース部35を貫通し、基端部がケース21内の回路基板30に接続されると共に、先端部がガス検出室26内に突出した状態で、例えばアルミナあるいはガラスエポキシ等の絶縁性材料から平板状に形成されたベース部35により固定されている。
また、ベース部35の略中央部には、ガス検出室26内での各素子31,32周辺の温度および湿度を検出する状態センサ36が配置され、状態センサ36はケース21内の回路基板30に接続された状態でベース部35により固定されている。
なお、絶縁性のベース部35の表面上に、例えば印刷あるいはエッチング等によって電気回路が形成されている場合に、この電気回路とステー33とが半田付けあるいは溶接等によって接合されてもよい。
【0025】
2対の検出素子31および温度補償素子32は、例えば図3に示すように、蓋状部材27の中心と同等のベース部35の中心に対して所定の第1直径Raを有する第1円周上において所定周方向間隔毎に配置されている。
この第1直径Raは第2直径Rbよりも小さい値とされ、軸方向から見て、2対の検出素子31および温度補償素子32と状態センサ36とは、蓋状部材27の複数(例えば、4つ)のガス導入口28に重なり合わないようにしてずれた位置に配置されるように設定されている。
【0026】
なお、検出素子31は周知の素子であって、電気抵抗に対する温度係数が高い白金等を含む金属線のコイルの表面が、被検出ガスとされる水素に対して活性な貴金属等からなる触媒を坦持するアルミナ等の坦体で略球形に被覆されて形成されている。
温度補償素子32は、被検出ガスに対して不活性とされ、例えば検出素子31と同等のコイルの表面がアルミナ等の坦体で略球形に被覆されて形成されている。
そして、被検出ガスである水素ガスが検出素子31の触媒に接触した際に生じる燃焼反応の発熱により高温となった検出素子31と、被検出ガスによる燃焼反応が発生せず検出素子31よりも低温の温度補償素子32との間に電気抵抗値の差が生ずることを利用し、雰囲気温度による電気抵抗値の変化分を相殺して水素濃度を検出することができるようになっている。
【0027】
そして、例えば図2に示すように、複数のガス導入口28の全てを覆うようにして、ガスセンサ1の厚さ方向に沿って基端部から先端部に向かい順次、例えば金属またはセラミックからなる網状または多孔質状の焼結フィルタからなる円環状の防爆フィルタ41と、例えば樹脂からなる円環状の撥水フィルタ42とが配置されている。
また、筒状部25の内周面25Bを覆うようにして、例えばチタン酸バリウム等からなるPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ等の内部筒状ヒータ43が設けられ、この内部筒状ヒータ43は防爆フィルタ41の径方向外方側の位置(例えば、防爆フィルタ41の外周側端部)に接触し、直接的に防爆フィルタ41に伝熱するようになっている。
【0028】
なお、この内部筒状ヒータ43を、例えばPTCサーミスタとすることにより、このPTCサーミスタを構成するチタン酸バリウムを主成分とする半導体セラミックの材料組成により、任意にキュリー温度を設定することができ、このキュリー温度から電気抵抗が急減に増大するという性質を利用して、内部筒状ヒータ43を定温発熱体とすることができる。
つまりPTCサーミスタは、PTC素子に電圧が印加されるとジュール熱により自己発熱し、PTC素子の温度がキュリー温度を超えると、PTC素子の抵抗値は対数的に増大する。これにより、PTC素子に通電される電流が減少し、電力の増大が抑制されることから、発熱温度が低下する。そして、PTC素子の抵抗値が低下すると、PTC素子に通電される電流が増大し、再度、電力が増大することから、発熱温度が増大する。この一連の動作が繰り返されることで、PTCサーミスタは、自己制御機能を有する定温発熱体として機能する。
【0029】
これにより、検査対象ガスは、外部から順次、撥水フィルタ42と、防爆フィルタ41とを通過してガス検出室26内に導入され、防爆フィルタ41は内部筒状ヒータ43からの直接的な伝熱によって、例えば径方向外方側から径方向内方側へ向かい、加熱されることから、検査対象ガスの温度は露点よりも高い温度に保持される。また、検査対象ガスが接触する防爆フィルタ41で結露が発生することが防止されると共に、防爆フィルタ41に水分が付着した場合であっても、この水分が蒸発するようになっている。
【0030】
制御器10は、例えば燃料電池2の運転状態等に応じて、ガスセンサ1および内部筒状ヒータ43の作動状態、例えば作動開始および作動停止の各タイミングや、例えば検出素子31および温度補償素子32と内部筒状ヒータ43とに対する通電状態等を制御する。
【0031】
例えば、制御器10は、状態センサ36の検出温度に基づいて内部筒状ヒータ43への通電を制御し、例えば燃料電池2の運転時等においては、状態センサ36により検出されるガス検出室26内の温度および湿度が、結露の発生が抑制される所定範囲の値となるよう制御する。
このとき、制御器10は、例えば内部筒状ヒータ43へ通電される電流値に対するフィードバック制御や、例えばスイッチング素子のオン/オフ動作等に基づくチョッパ制御(つまり、通電のオン/オフの切替制御)等によって内部筒状ヒータ43への通電量を制御する。
【0032】
また、制御器10は、2対の検出素子31および温度補償素子32の各1対毎に独立に検出制御をおこない、各1対毎に得られる検出値を相対的に比較する相対診断、あるいは、各1対毎に得られる検出値を互いに独立に所定基準値と比較する絶対診断によって、各対の検出素子31および温度補償素子32の劣化診断をおこなう。そして、劣化診断の診断結果に応じて、2対の検出素子31および温度補償素子32の何れか一方の対から得られる検出値に応じて、予め設定された水素濃度のマップ等を参照して、被検出ガスである水素ガスの濃度を算出する。
【0033】
上述したように、本実施の形態によるガスセンサ1によれば、軸方向から見て、ガス検出室26内に外部から検査対象ガスを導入可能なガス導入口28は、ガス検出室26内の状態センサ36と複数の検出素子31および温度補償素子32と重なり合わないようにしてずれた位置に配置されていることから、検査対象ガスの流通方向からずれた位置に状態センサ36と複数の検出素子31および温度補償素子32とが配置されることになり、検査対象ガスが状態センサ36と複数の検出素子31および温度補償素子32とに直接的に吹き付けられるようにして接触することを防止し、たとえ検査対象ガスが多湿度で水分量の多い状態であっても、状態センサ36と複数の検出素子31および温度補償素子32とに結露が発生してしまうことを抑制することができる。
【0034】
しかも、状態センサ36をベース部35の略中央部に配置することにより、ガス検出室26内の温度および湿度の検出精度および検出信頼性を向上させることができる。
さらに、2対の検出素子31および温度補償素子32は、複数(例えば、4つ)のガス導入口28が配置される第2円周の第2直径Rbよりも小さな第1直径Raを有する第1円周上において所定周方向間隔毎に配置されていることから、複数の検出素子31および温度補償素子32の配置密度を増大させることができ、ガスセンサ1を小型化することができる。
【0035】
さらに、円環状の撥水フィルタ42によって第2円周上に配置された複数のガス導入口28の全てを覆うことができ、撥水フィルタ42の形状が複雑化あるいは大型化したり、撥水フィルタ42の点数が増大することを防止することができる。
さらに、内部筒状ヒータ43から発生する熱を防爆フィルタ41に伝熱する伝熱構造として、内部筒状ヒータ43と防爆フィルタ41とを直接接触させることによって、内部筒状ヒータ43からの伝熱によって防爆フィルタ41を効率よく加熱することができ、結露水の液滴による防爆フィルタ41の目詰まりを防止することができる。
【0036】
さらに、円環状の防爆フィルタ41によって第2円周上に配置された複数のガス導入口28の全てを覆うことができ、防爆フィルタ41の形状が複雑化あるいは大型化したり、防爆フィルタ41の点数が増大することを防止することができる。しかも、内部筒状ヒータ43と防爆フィルタ41の径方向外方側の位置とを直接接触させることによって、内部筒状ヒータ43から発生する熱を円環状の防爆フィルタ41において、相対的に放熱面積が大きい径方向外方側から相対的に放熱面積が小さい径方向内方側へ伝熱させることにより、効率よく防爆フィルタ41を加熱することができ、この防爆フィルタ41を通過する検査対象ガスの温度を露点よりも高い温度に保持することができると共に、検査対象ガスが接触する防爆フィルタ41で結露が発生することを防止すると共に、防爆フィルタ41に水分が付着した場合であっても、この水分を容易に蒸発させることができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態においては、ガスセンサ1を接触燃焼式のセンサとしたが、これに限定されず、例えば被検出ガスが検出素子表面の酸素と接触離脱した際に生じる素子抵抗値に応じてガス濃度を検出する半導体式等の他の方式によるガスセンサであってもよい。
【0038】
なお、上述した実施の形態においては、筒状部25および蓋状部材27はセラミックスにより形成されるとしたが、これに限定されず、例えば金属または樹脂により形成されてもよい。
【0039】
なお、上述した実施の形態においては、内部筒状ヒータ43をPTCサーミスタとしたが、これに限定されず、例えば焼結体ヒータ等の他のヒータであってもよいし、例えば筒状部25の内周面25B上での導電性の抵抗体の印刷および焼成により形成され、電気回路の一部の導体パターンをなすヒータであってもよい。
【0040】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図4に示すように、第1円周上での複数の検出素子31および温度補償素子32の配置位相と、第2円周上での複数のガス導入口28の配置位相とが異なるように設定してもよい。この場合には、例えば図5に示すように、複数の検出素子31および温度補償素子32と、複数のガス導入口28とを、同一円周上(例えば、第1円周上など)に配置することができ、複数の検出素子31および温度補償素子32と複数のガス導入口28との配置密度を増大させることができ、ガスセンサ1を、より一層、小型化することができる。
【0041】
なお、上述した実施の形態においては、内部筒状ヒータ43を備えるとしたが、これに限定されず、例えば内部筒状ヒータ43の代わりに、筒状部25の外周面25Aを覆うようにして、例えばチタン酸バリウム等からなるPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ等の外部筒状ヒータ44を設けてもよい。この場合には、例えば図6に示すように、筒状部25を貫通する熱伝導性が高い材料からなる伝熱部材45によって、外部筒状ヒータ44と防爆フィルタ41の径方向外方側の位置(例えば、防爆フィルタ41の外周側端部)とを接続することによって、外部筒状ヒータ44から発生する熱を間接的に防爆フィルタ41に伝熱させることができる。
また、例えば図7に示すように、内部筒状ヒータ43の代わりに、防爆フィルタ41の径方向内方側の位置に接触するようにして、例えばチタン酸バリウム等からなるPTC(positive temperature coefficient)サーミスタ等の板状ヒータ46を設けてもよい。
【0042】
なお、上述した実施の形態においては、防爆フィルタ41および撥水フィルタ42を円環状としたが、これに限定されず、例えば防爆フィルタ41および撥水フィルタ42の少なくとも何れかを円板状としてもよい。
また、上述した実施の形態においては、ガス導入口28を覆う防爆フィルタ41と撥水フィルタ42を備えるとしたが、これに限定されず、例えば防爆フィルタ41および撥水フィルタ42の少なくとも何れかを省略してもよい。
また、上述した実施の形態においては、内部筒状ヒータ43を備えるとしたが、これに限定されず、単に、内部筒状ヒータ43を省略してもよい。
例えば図8に示す上述した実施の形態の変形例に係るガスセンサ1では、内部筒状ヒータ43および防爆フィルタ41を省略している。
【0043】
また、上述した実施の形態においては、ガスセンサ1の厚さ方向に沿って基端部から先端部に向かい順次、防爆フィルタ41と、撥水フィルタ42とを備えるとしたが、これに限定されず、防爆フィルタ41と撥水フィルタ42との相対位置が入れ替わってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスセンサを具備する燃料電池システムの構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係るガスセンサの軸方向断面図である。
【図3】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの軸方向断面図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの軸方向断面図である。
【図5】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの側断面図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの側断面図である。
【図7】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの側断面図である。
【図8】本発明の実施形態の変形例に係るガスセンサの側断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスセンサ
25 筒状部(筒状部材)
25a,25b 開口部
26 ガス検出室
27 蓋状部材
28 ガス導入口
31 検出素子(ガス検出用素子)
32 温度補償素子(ガス検出用素子)
35 ベース部
36 状態センサ
41 防爆フィルタ
42 撥水フィルタ
43 内部筒状ヒータ(ヒータ)
44 外部筒状ヒータ(ヒータ)
45 伝熱部材(伝熱構造)
46 板状ヒータ(ヒータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部をガス検出室として軸方向に伸びる筒状部材と、
前記筒状部材の前記軸方向の一端の開口部を閉塞するベース部と、
前記ベース部の略中央部に配置されて前記ガス検出室内の少なくとも温度または湿度を検出する状態センサと、
前記ベース部の前記状態センサの周辺部に配置されたガス検出用素子と、
前記筒状部材の前記軸方向の他端の開口部を覆う蓋状部材と、
前記軸方向から見て前記状態センサおよび前記ガス検出用素子と重なり合わないようにしてずれた位置で前記蓋状部材を貫通して前記ガス検出室内に外部から検査対象ガスを導入可能なガス導入口と
を備えることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
複数の前記ガス検出用素子は第1円周上に配置され、
複数の前記ガス導入口は前記第1円周よりも大きな径の第2円周上に配置されることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記第2円周上に配置された前記複数の前記ガス導入口の全てを覆う円環状の撥水フィルタを備えることを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項4】
前記筒状部材の壁部または前記蓋状部材に配置されて前記ガス検出室内を加熱するヒータと、
前記複数の前記ガス導入口を覆う金属からなる防爆フィルタとを備え、
前記ヒータから発生する熱を前記防爆フィルタに伝熱する伝熱構造を有することを特徴とする請求項2に記載のガスセンサ。
【請求項5】
前記ヒータは前記筒状部材の前記壁部に配置され、
前記防爆フィルタは前記第2円周上に配置された前記複数の前記ガス導入口の全てを覆う円環状に形成され、
前記伝熱構造は前記ヒータから発生する熱を前記防爆フィルタの径方向外方側から径方向内方側へ伝熱させることを特徴とする請求項4に記載のガスセンサ。
【請求項6】
複数の前記ガス検出用素子は第1円周上に配置され、
複数の前記ガス導入口は前記第1円周上または前記第1円周とは異なる径の所定円周上に配置され、
前記第1円周上での前記複数の前記ガス検出用素子の配置位相と、前記第1円周上または前記所定円周上での前記複数の前記ガス導入口の配置位相とは異なることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−257876(P2009−257876A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−105780(P2008−105780)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】