説明

ガスセンサ

【課題】起動直後から出力が安定するガスセンサを提供する。
【解決手段】ガス検出素子11及び補償素子12を有する第1直列辺10と、第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22を有する第2直列辺20と、を含み、第1直列辺10の両端と第2直列辺20の両端とがそれぞれ接続され入力端子T1、T2が構成され、ガス検出素子11及び補償素子12の間の第1中間点と第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22の間の第2中間点とがそれぞれ出力端子T3、T4である、ガス検出用のブリッジ回路Bと、ブリッジ回路Bから出力されるブリッジ回路Bの電圧VOUTを補正する補正手段と、を備える接触燃焼式の水素センサ1であって、ガス検出素子11は、ガスを燃焼させる酸化触媒11cを含む触媒抵抗体で構成され、補正手段は、ブリッジ回路Bへの通電開始から所定時間が経過するまで、触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、前記ブリッジ回路Bの電圧VOUTを補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触燃焼式のガスセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
固体高分子型の燃料電池スタックは、固体高分子膜の両側をアノード(燃料極)とカソード(酸素極)で挟み込んでMEA(Membrane Electrode Assembly:膜電極接合体)を形成し、このMEAを一対のセパレータで挟んでなる単セルを複数積層することで構成される。そして、アノードには水素(燃料ガス)が供給され、カソードには空気(酸化剤ガス)が供給され、アノード及びカソードで電極反応が起こり、燃料電池スタックが発電する。
【0003】
ところが、燃料電池スタックからは未消費の水素が排出されるので、この未消費の水素を含むオフガスの流路に、接触燃焼式の水素センサ(特許文献1参照)を設け、この水素センサにより、オフガス中の水素濃度が監視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−59949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、接触燃焼式の水素センサは、その起動直後は触媒特性が過渡状態にあるため、触媒が活性化し、出力が安定するまでに時間を要してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、起動直後から出力が安定するガスセンサを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、直列に接続されたガス検出素子及び補償素子を有する第1直列辺と、直列に接続された第1抵抗素子及び第2抵抗素子を有する第2直列辺と、を含み、前記第1直列辺の両端と前記第2直列辺の両端とがそれぞれ接続され入力端子が構成され、前記ガス検出素子及び前記補償素子の間の第1中間点と前記第1抵抗素子及び前記第2抵抗素子の間の第2中間点とがそれぞれ出力端子である、ガス検出用のブリッジ回路と、前記ブリッジ回路から出力される当該ブリッジ回路の出力を補正する補正手段と、を備える接触燃焼式のガスセンサであって、前記ガス検出素子は、ガスを燃焼させる酸化触媒を含む触媒抵抗体で構成され、前記補正手段は、前記ブリッジ回路への通電開始から所定時間が経過するまで、前記触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、前記ブリッジ回路の出力を補正することを特徴とするガスセンサである。
【0008】
このようなガスセンサによれば、補正手段が、ブリッジ回路への通電開始から所定時間が経過するまで、触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、ブリッジ回路の出力を補正するので、ブリッジ回路(ガスセンサ)の出力を、ブリッジ回路への通電開始直後(ガスセンサの起動直後)から安定させ、ガスセンサの信頼性を高めることができる。
【0009】
また、直列に接続されたガス検出素子及び補償素子を有する第1直列辺と、直列に接続された第1抵抗素子及び第2抵抗素子を有する第2直列辺と、を含み、前記第1直列辺の両端と前記第2直列辺の両端とがそれぞれ接続され入力端子が構成され、前記ガス検出素子及び前記補償素子の間の第1中間点と前記第1抵抗素子及び前記第2抵抗素子の間の第2中間点とが出力端子である、ガス検出用のブリッジ回路と、前記ブリッジ回路から出力される当該ブリッジ回路の出力を補正する補正手段と、を備える接触燃焼式のガスセンサであって、前記ガス検出素子は、ガスを燃焼させる酸化触媒を含む触媒抵抗体で構成され、前記補正手段は、前記ブリッジ回路への通電開始から前記触媒抵抗体の抵抗値が所定値以上になるまで、前記触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、前記ブリッジ回路の出力を補正することを特徴とするガスセンサである。
【0010】
このようなガスセンサによれば、補正手段が、ブリッジ回路への通電開始から触媒抵抗体の抵抗値が所定値以上になるまで、触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、ブリッジ回路の出力を補正するので、ブリッジ回路(ガスセンサ)の出力を、ブリッジ回路への通電開始直後(起動直後)から安定させ、信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、起動直後から出力が安定するガスセンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る水素センサの側断面図である。
【図3】本実施形態に係る水素センサの回路図である。
【図4】ガス検出素子の温度と抵抗値R11との関係を示すマップ(グラフ)である。
【図5】補償素子の温度と抵抗値R12との関係を示すマップ(グラフ)である。
【図6】本実施形態に係る水素センサの動作を示すフローチャートである。
【図7】ガス検出素子の抵抗値R11(触媒抵抗値)と補正係数との関係を示すマップ(グラフ)である。
【図8】ブリッジ回路(水素センサ)への通電時間と補正係数との関係を示すマップ(グラフ)である。
【図9】本実施形態に係る水素センサの一動作例を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図1〜図9を参照して説明する。
【0014】
まず、図1を参照して、本実施形態に係る水素センサ1が組み込まれた燃料電池システム100を説明する。燃料電池システム100は、燃料電池車(移動体)に搭載されており、燃料電池スタック110と、希釈器120と、水素センサ1と、ECU130(Electronic Control Unit、電子制御装置)と、を備えている。
【0015】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック110は、固体高分子型燃料電池(Polymer Electrolyte Fuel Cell:PEFC)であり、MEA(Membrane Electrode Assembly、膜電極接合体)をセパレータ(図示しない)で挟持してなる単セルが複数積層されて構成されている。MEAは、電解質膜(固体高分子膜)と、これを挟持するカソード及びアノードとを備えている。各セパレータには、溝や貫通孔からなるアノード流路111及びカソード流路112が形成されている。
【0016】
そして、水素が、水素タンク(図示しない)から、アノード流路111を介してアノードに供給され、酸素を含む空気が、外気を吸気するコンプレッサ(図示しない)から、カソード流路112を介してカソードに供給されると、アノード及びカソードに含まれる触媒(Pt等)上で電極反応が起こり、燃料電池スタック110が発電可能な状態となる。このように発電可能な状態の燃料電池スタック110と外部負荷(例えば走行用のモータ)とが電気的に接続され、電流が取り出されると、燃料電池スタック110が発電するようになっている。
【0017】
また、アノード流路111から排出された未消費の水素を含むアノードオフガスは、配管111aを通って希釈器120に向かうようになっている。一方、カソード流路112から排出されたカソードオフガス(希釈用ガス)は、配管112aを通って希釈器120に向かうようになっている。
【0018】
<希釈器>
希釈器120は、アノードオフガス中の水素を、カソードオフガス等で希釈する容器であり、その内部に希釈空間を有している。そして、水素を含む希釈後のガスは、配管120aを通って車外(外部)に排出されるようになっている。
【0019】
<ECU>
ECU130は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成されている。そして、ECU130は、IG131のON信号を検知した場合、水素センサ1の後記する制御回路41(図3参照)に起動指令を出力するようになっている。なお、IG131は、燃料電池システム100(燃料電池車)の起動スイッチであり、運転席周りに配置されている。
【0020】
≪水素センサの構成≫
水素センサ1は、図2及び図3に示すように、配管120aを通流するガス中の水素濃度を検出する接触燃焼式のセンサであり、ブリッジ回路Bと、温度センサ31と、制御回路41(補正手段)と、基準電圧発生回路42とを備えている。ブリッジ回路Bの一部、制御回路41、及び、基準電圧発生回路42は、後記する基板51上に形成された回路パターン及びこれに設けられた電子部品によって構成されている。
【0021】
また、水素センサ1は、基板51と、基板51を収容する薄箱状のケース52と、ケース52の底壁部から鉛直下向きに延びるように形成された円筒状のハウジング53と、を備えている。
【0022】
ケース52は、配管120aの天壁部120bにボルトによって取り付けられている。
ハウジング53は、配管120aの天壁部120bに形成された貫通孔120cに差し込まれている。そして、ハウジング53の下端開口で構成されるガス出入口53aを介して、水素を含むガスが、配管120aと、ハウジング53内のガス検出室53bとの間で、出入するようになっている。
【0023】
なお、ガス出入口53aに蓋をするように、防爆フィルタ及び撥水フィルタ(いずれも図示しない)が設けられている。防爆フィルタは、防爆性を確保するためのフィルタであり、例えば、金属製のメッシュや多孔質体から構成される。撥水フィルタは、ガス(水素)の通過を許容するが、液体(水滴)の通過を許容しないフィルタであり、例えば、テトラフルオロエチレン膜から構成される。
【0024】
<温度センサ>
温度センサ31は、ガス検出室53bに配置されており(図2参照)、ガス検出室53bの温度を検出し、制御回路41に出力するようになっている。
【0025】
<ブリッジ回路>
ブリッジ回路Bは、図3に示すように、第1直列辺10と、第2直列辺20とを備えている。
【0026】
<第1直列辺>
第1直列辺10は、ガス検出素子11と補償素子12(温度補償素子)とを備え、ガス検出素子11と補償素子12とが直列に接続されることで構成されている。ガス検出素子11は、基板51から鉛直下方に延びると共に第1直列辺10の一部を構成する金属製のステー11d、11dに固定されており、ハウジング53内のガス検出室53b配置されている(図2参照)。これと同様に、補償素子12は、ステー12d、12dに固定され、ガス検出室53bに配置されている。
したがって、ガス検出素子11の抵抗値R11、補償素子12の抵抗値R12は、ガス検出室53bの温度(環境温度、雰囲気温度)に対応して変化することになる。
【0027】
ガス検出素子11は、水素(被検出ガス)に対して活性である公知の素子であって、コイル11aと、コイル11aを被覆し、酸化触媒11cが担持された担体11bとを備える触媒抵抗体から構成されている。
コイル11aは、その温度に対応して、その電気抵抗が大きく変化する材料(例えば白金)から形成されている。担体11bは、アルミナ等から形成された多孔質体である。酸化触媒11cは、水素に対して活性が高く、水素を酸化(燃焼)させる貴金属(例えば白金)から形成されている。
【0028】
そして、ガス検出素子11(コイル11a)の抵抗値R11は、ガス検出素子11の温度に対応して変化し、具体的には、図4に示すように、ガス検出素子11の温度が高くなると、大きくなる関係となっている。
【0029】
ここで、ガス検出素子11の抵抗値R11は、(1)ガス検出室53bの温度(環境温度)、(2)水素が酸化触媒11cに接触し、燃焼(酸化)したことによる燃焼熱、に対応して変化することになるが、(1)ガス検出室53bの温度に基づいての抵抗値R11の変化は、後記する補償素子12を利用することで、相殺されるようになっている。
【0030】
すなわち、水素が、ガス検出素子11の酸化触媒11cに接触し、燃焼すると、ガス検出素子11の抵抗値R11が変化し、その結果、ガス検出素子11の抵抗値R11と、補償素子12の抵抗値R12とに差が生じ、この抵抗値の差に基づいて、水素濃度が検出されるようになっている。
【0031】
補償素子12は、水素に対して不活性である公知の素子であって、コイル11aと同等のコイル12aと、コイル12aを被覆し、アルミナ等から形成された担体12bとを備えている。
そして、補償素子12(コイル12a)の抵抗値R12は、補償素子12の温度に対応して変化し、具体的には、図5に示すように、補償素子12の温度が高くなると、大きくなる関係となっている。
なお、ここでは、補償素子12の温度は、温度センサ31が検出するガス検出室53bの温度と略等しいものとする。よって、補償素子12の抵抗値R12は、ガス検出室53bの温度と、図5のマップとに基づいて算出可能である。
【0032】
<第2直列辺>
第2直列辺20は、第1抵抗素子21(抵抗値R21)と第2抵抗素子22(抵抗値R22)とを備え、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22とが直列に接続されることで構成されている(図2参照)。第1抵抗素子21及び第2抵抗素子22は、ケース52内の基板51上に設けられている。なお、第1抵抗素子21の抵抗値R21、第2抵抗素子22の抵抗値R22は、既知であり、固定値である。
【0033】
<第1直列辺、第2直列辺の接続状態>
第1直列辺10の両端と、第2直列辺20の両端とは、それぞれ接続されて入力端子T1、入力端子T2を構成している。
入力端子T1、入力端子T2は、基準電圧発生回路42に接続されており、基準電圧発生回路42で発生した電圧VINが入力端子T1、T2に印加し、ブリッジ回路Bに通電するようになっている。
【0034】
第1直列辺10において、ガス検出素子11と補償素子12との間の第1中間点は、出力端子T3を構成し、第2直列辺20において、第1抵抗素子21と第2抵抗素子22との間の第2中間点は出力端子T4を構成している。
そして、出力端子T3、出力端子T4は、制御回路41に接続されており、ブリッジ回路Bの電圧VOUT(出力)が、出力端子T3、T4を介して、制御回路41に出力されるようになっている。
【0035】
ここで、ブリッジ回路Bに入力される電圧VINと、ブリッジ回路Bから出力される電圧VOUTとの間には、式(1)が成立している。式(1)は、式(2)〜式(4)に変形され、さらに、式(4)は式(5)に変形される。
【数1】

【0036】
そして、第1抵抗素子21の抵抗値R21、第2抵抗素子22の抵抗値R22は、固定値であり、補償素子12の抵抗値R12は、補償素子12の温度(≒ガス検出室53bの温度)と図5のマップとに基づいて算出されるから、式(5)に従って、ガス検出素子11の抵抗値R11が算出されることになる。
【0037】
<制御回路>
制御回路41は、CPU、ROM、RAM、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成され、その内部に記憶されたプログラムに従って、各種機能を発揮し、水素センサ1を適宜に制御するようになっている。
【0038】
<制御回路−安定性判定機能>
制御回路41は、ガス検出素子11(触媒抵抗体)が安定しているか否か判定機能を備えている。
本実施形態では、(1)ブリッジ回路Bへの通電開始後、ガス検出素子11(触媒抵抗体)の抵抗値R11が所定抵抗値(例えば3Ω)以上になるまで、又は、(2)ブリッジ回路Bへの通電開始から所定時間(例えば5秒)経過するまで、ガス検出素子11が安定していないと判断される。
所定抵抗値及び所定時間は、事前試験等によって求められ、ガス検出素子11(触媒抵抗体)の抵抗値R11が適切に上昇し、ブリッジ回路Bの電圧VOUT(水素センサ1の出力)が安定したと判断される抵抗値、時間に設定される。
【0039】
<制御回路−補正機能>
制御回路41(補正手段)は、ガス検出素子11(触媒抵抗体)が安定するまで、ブリッジ回路Bの電圧VOUT(出力)を、ガス検出素子11の抵抗値R11、ガス検出室53bに基づいて補正し、補正後のVOUT(出力)を、ECU130に出力するようになっている。
【0040】
具体的には、制御回路41は、式(5)に従って算出されたガス検出素子11の抵抗値R11と、図6のマップと、ガス検出室53bの温度とに基づいて、補正係数を算出し、算出した補正係数でブリッジ回路Bから出力される電圧VOUTを補正するようなっている。
【0041】
なお、図6及び後記する図7のマップは、事前試験等により求められ、制御回路41に記憶されている。また、図6、図7に示すように、触媒抵抗値(ガス検出素子11の抵抗値R11)が小さく、通電時間が短くなるほど、補正係数が大きくなる関係となっている。さらに、ガス検出室51bの温度が低くなるほど、補正係数が大きくなる関係となっている。
【0042】
この他、制御回路41が、内部クロックを利用して求められる通電開始からの通電時間と、図7のマップと、ガス検出室53bの温度とに基づいて、補正係数を算出し、算出した補正係数で電圧VOUTを補正する構成としてもよい。
【0043】
<基準電圧発生回路>
基準電圧発生回路42は、DC−DCコンバータ等を備えて構成され、外部電源60(例えば12Vバッテリ)と接続されている。そして、基準電圧発生回路42は、制御回路41からの指令に従って作動し、ブリッジ回路Bに所定電圧を印加するようになっている。
【0044】
≪水素センサの動作≫
次に、水素センサ1の動作について、図8を参照して説明する。なお、図8のフローチャートに示す処理は、IG131がONされるとスタートする。すなわち、IG131のON信号を検知したECU130は、水素センサ1の制御回路41に通電指令を出力し、通電指令が入力された制御回路41は、図8の各処理を開始する。
【0045】
ステップS101において、制御回路41は、基準電圧発生回路42を制御し、入力端子T1、T2に所定の電圧VIN(指令値)を印加させる。これにより、ブリッジ回路B(水素センサ1)への通電が開始される。
【0046】
ステップS102において、制御回路41は、触媒抵抗体(ガス検出素子11)が安定しているか否か判定する。
触媒抵抗体(ガス検出素子11)は安定していると判定した場合(S102・Yes)、制御回路41の処理はステップS108に進む。一方、触媒抵抗体(ガス検出素子11)は安定していないと判定した場合(S102・No)、制御回路41の処理はステップS103に進む。
【0047】
ステップS103において、制御回路41は、ガス検出室53bの温度(環境温度)を検出(測定)する。
【0048】
ステップS104において、制御回路41は、出力端子T3、T4から出力されるブリッジ回路Bの電圧VOUTを検出する。
【0049】
ステップS105において、制御回路41は、ブリッジ回路Bに入力される電圧VIN(基準電圧発生回路42への指令値)と、ブリッジ回路Bから出力される電圧VOUTと、前記した式(5)等とに基づいて、ガス検出素子11の抵抗値R11(触媒抵抗値)を算出する。
【0050】
ステップS106において、制御回路41は、ガス検出素子11の抵抗値R11と、ガス検出室53bの温度と、図6のマップとに基づいて、補正係数を算出する。
次いで、制御回路41は、算出した補正係数と、ブリッジ回路Bの電圧VOUTとを積算することで、補正後の電圧VOUTを算出する。
【0051】
ステップS107において、制御回路41は、補正後の電圧VOUTを水素センサ1の出力としてECU130に出力する。
その後、制御回路41の処理は、ステップS102に進む。
【0052】
次に、ステップS102の判定結果がYesとなって進むステップS108を説明する。
ステップS108において、制御回路41は、ステップS103と同様に、ガス検出室53bの温度を検出する。
【0053】
ステップS109において、制御回路41は、ステップS104と同様に、出力端子T3、T4から出力されるブリッジ回路Bの電圧VOUTを検出する。
【0054】
ステップS110において、制御回路41は、ガス検出室53bの温度に基づいて、ブリッジ回路Bの電圧VOUTを補正する。すなわち、ガス検出室53bの温度が低くなるほど、ブリッジ回路Bの電圧VOUTが大きくなるように補正する。
【0055】
ステップS111において、制御回路41は、補正後の電圧VOUTを、水素センサ1の出力として、ECU130に出力する。
その後、制御回路41の処理はステップS108に進む。
【0056】
≪水素センサの効果≫
このような水素センサ1によれば次の効果を得る。
ガス検出素子11(触媒抵抗体)が安定するまで、(1)ガス検出素子11の抵抗値R11、又は、(2)通電時間に基づいて、ブリッジ回路Bの電圧VOUTを補正し(S106)、補正後の電圧VOUTを、水素センサ1の出力としてECU130に出力するので(S107)、水素センサ1の起動後から水素センサ1の出力を安定させることができる(図9参照)。これにより、水素センサ1の信頼性を高めることができる。
なお、図9は、検出対象である水素濃度が一定の場合を例示している。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば次のように変更できる。
前記した実施形態では、被検出ガスが水素である場合を例示したが、その他のガスでもよい。
【0058】
前記した実施形態では、燃料電池システム100が燃料電池車に搭載された場合を例示したが、その他の移動体、例えば自動二輪車、列車、船舶に搭載された燃料電池システムでもよい。また、定置型の燃料電池システムに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 水素センサ(ガスセンサ)
10 第1直列辺
11 ガス検出素子(触媒抵抗体)
11c 酸化触媒
12 補償素子
12a コイル
20 第2直列辺
21 第1抵抗素子
22 第2抵抗素子
31 温度センサ
41 制御回路(補正手段)
B ブリッジ回路
T1、T2 入力端子
T3 出力端子(第1中間点)
T4 出力端子(第2中間点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に接続されたガス検出素子及び補償素子を有する第1直列辺と、直列に接続された第1抵抗素子及び第2抵抗素子を有する第2直列辺と、を含み、前記第1直列辺の両端と前記第2直列辺の両端とがそれぞれ接続され入力端子が構成され、前記ガス検出素子及び前記補償素子の間の第1中間点と前記第1抵抗素子及び前記第2抵抗素子の間の第2中間点とがそれぞれ出力端子である、ガス検出用のブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される当該ブリッジ回路の出力を補正する補正手段と、
を備える接触燃焼式のガスセンサであって、
前記ガス検出素子は、ガスを燃焼させる酸化触媒を含む触媒抵抗体で構成され、
前記補正手段は、前記ブリッジ回路への通電開始から所定時間が経過するまで、前記触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、前記ブリッジ回路の出力を補正する
ことを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
直列に接続されたガス検出素子及び補償素子を有する第1直列辺と、直列に接続された第1抵抗素子及び第2抵抗素子を有する第2直列辺と、を含み、前記第1直列辺の両端と前記第2直列辺の両端とがそれぞれ接続され入力端子が構成され、前記ガス検出素子及び前記補償素子の間の第1中間点と前記第1抵抗素子及び前記第2抵抗素子の間の第2中間点とが出力端子である、ガス検出用のブリッジ回路と、
前記ブリッジ回路から出力される当該ブリッジ回路の出力を補正する補正手段と、
を備える接触燃焼式のガスセンサであって、
前記ガス検出素子は、ガスを燃焼させる酸化触媒を含む触媒抵抗体で構成され、
前記補正手段は、前記ブリッジ回路への通電開始から前記触媒抵抗体の抵抗値が所定値以上になるまで、前記触媒抵抗体の抵抗値に基づいて、前記ブリッジ回路の出力を補正する
ことを特徴とするガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−106872(P2011−106872A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260081(P2009−260081)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】