説明

ガスセンサ

【課題】高信頼性で生産性良いガスセンサを提供する。
【解決手段】マウントベース2には、電極ピン5、5が埋設されたピンステイ3と、電極ピン6、6が埋設されたピンステイ4が嵌合固定されている。一対の電極ピン5には検知素子7が接続固定されている。また、一対の電極ピン6には補償素子8が接続固定されている。1はキャップで、検知素子7と補償素子8の間に配置され断熱作用を奏する熱遮蔽板1aを有するものである。前記キャップ1は、ほぼ円筒状に形成されているが、その外周部の一部には平坦面1bが形成されている。この平坦面1bはキャップ1の外周部に対向する位置関係で2箇所に設けられている。このように、キャップ1外周部の一部に平坦面1bを形成したことにより、外形形状として現れるこの平坦面1bを位置基準として用いることができるため、マウントベース2とキャップ1の正確な位置決めが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサの構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス漏れ等を検知するガスセンサとして、マウントベースに植立した電極ピンに検知素子と補償素子を固定し、各々の素子間に熱遮蔽板を配置しその上方にキャップを覆い被せた構造が知られている。(例えば、特許文献1、2、3、4参照)
【0003】
図6は従来技術によるガスセンサを示す図で、(a)は正面断面図、(b)は内部を透視した上面図である。マウントベース2には一対の電極ピン5と、一対の電極ピン6がピンステイ3、4を介して植立固定されいる。電極ピン5には検知素子7が固定され、電極ピン6には補償素子8が固定され、その中央に検知素子7と補償素子8を遮るようにして熱遮蔽板20が固定されている。熱遮蔽板20はマウントベース2に埋め込み固定されたものである。そして、その上方に円形のキャップ21を被せるように配置して接合し、ガスセンサを構成したものである。
【0004】
また、マウントベース2には検知素子7と補償素子8の2極のみが固定され、熱遮蔽板20が付いた円形のキャップ21をマウントベース2に接合する構造も考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−177975号公報
【特許文献2】特開2001−349862号公報
【特許文献3】特開平8−110316号公報
【特許文献4】特開2009−236827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の従来構成のガスセンサでは、マウントベース2に熱遮蔽板20を位置決め固定した後、キャップ21を上方より被せて接合しているので、熱遮蔽板20と検知素子7、補償素子8は平行に固定されており、このような配置関係になるよう製造することは比較的容易である。
【0007】
しかしながら、熱遮蔽板20があらかじめキャップ21に接合されているものの場合には、図7に示すように、接合時に熱遮蔽板20が、マウントベース2に設けられた検知素子7と補償素子8の間に平行に接合されず、斜めにn配置され、各々の素子に気体kが均一にあたらず、素子温度が不均一に変化し、ゼロ点バラツキの原因となる問題があった。また製造上の歩留りも悪く、生産性低下の問題が危惧される。
【0008】
本発明は、このような技術背景に基づく課題を解決した高信頼性で生産性良いガスセンサの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガスセンサは、上記問題点に鑑み、感ガス素子と補償素子を支持する電極ピンと、当該電極ピンを支持固定するマウントベースと、前記感ガス素子と前記補償素子を断熱するための熱遮蔽板と、前記感ガス素子と補償素子を覆って前記マウントベースに固定されるキャップとを有するガスセンサにおいて、前記キャップの外周部には、平坦面が形成されていることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、キャップ外周部の一部に平坦面形成したので、この平坦面を利用してマウントベースとキャップの正確な位置決めが可能になる。
【0011】
また、前記キャップの外周部に形成された平坦面は、前記熱遮蔽板と平行な面であることを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、キャップ外周部の一部に形成した平坦面を利用してマウントベースとキャップの正確な位置決めが可能になると共に、検知対象となる気体が検知素子と補償素子13に均一にあたるようになるので素子温度が均一に変化し、これによって検知素子と補償素子の間の素子温度差が変化しないため、ゼロ点バラツキを少なくすることができる。
【0013】
さらに、前記キャップの外周部肉厚は均一の厚みであることを特徴とする。
【0014】
このような構成によれば、キャップの外周部肉厚は均一の厚みであることにより、肉厚差によるガスの透過性にバラツキを生じることなく、気体が検知素子と補償素子に均一にあたるので、ゼロ点バラツキを抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガスセンサによれば、キャップ外周部の一部に平坦面を形成したので、この平坦面を利用してマウントベースとキャップの正確な位置決めが可能になる。また、検知対象となる気体が検知素子と補償素子に均一にあたるように配置できるので、素子温度が均一に変化し、これによって検知素子と補償素子の間の素子温度差が変化しないため、ゼロ点バラツキを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例のガスセンサを示す図で、(a)は正面断面図、(b)は内部を透視した上面図。
【図2】キャップを形成するための金型を示す図。
【図3】本発明の一実施例のガスセンサに係るマウントベースを示す図。
【図4】キャップとマウントベースとの接合に用いる治具の正面断面図。
【図5】キャップとマウントベースとの接合に用いる治具を構成する下板、ベースガイド板、キャップガイド板の平面図。
【図6】従来技術によるガスセンサを示す図で、(a)は正面断面図、(b)は内部を透視した上面図。
【図7】従来技術によるガスセンサを示す図で熱遮蔽板がマウントベースに設けられた検知素子と補償素子の間に平行に接合されず、斜めに配置された状態図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施例のガスセンサを示す図で、(a)は正面断面図、(b)は内部を透視した上面図である。マウントベース2には、電極ピン5、5が埋設されたピンステイ3と、電極ピン6、6が埋設されたピンステイ4が嵌合固定されている。一対の電極ピン5には検知素子7が接続固定されている。また、一対の電極ピン6には補償素子8が接続固定されている。
【0018】
1はキャップで、検知素子(感ガス素子)7と補償素子8の間に配置され断熱作用を奏する熱遮蔽板1aを有するものである。本実施例において、熱遮蔽板1aはキャップ1の内側に一体的に形成されたものである。尚、この熱遮蔽板1aは別部材として構成することも可能である。
【0019】
前記キャップ1は、ほぼ円筒状に形成されているが、その外周部の一部には平坦面1bが形成されている。本実施例においてキャップ1の外周部に形成される平坦面1bはキャップ1の外周部に対向する位置関係で2箇所に設けられている。
【0020】
このように、キャップ1外周部の一部に平坦面1bを形成したことにより、外形形状として現れるこの平坦面1bを位置基準として用いることができるため、マウントベース2とキャップ1の正確な位置決めが可能になる。
【0021】
さらに、前記平坦面1bは、前記熱遮蔽板1aと平行になるよう形成することができる。このような構成によれば、平坦面1bは熱遮蔽板1aと平行な面となっているので、平坦面1bをマウントベース2に固定された検知素子7、補償素子8と平行になるように接合を行えば、必然的に熱遮蔽板1aと検知素子7と補償素子8を平行な位置関係に配置することができる。よって、外形形状として現れるこの平坦面1bを基準として、検知対象気体の流れに応じた設置(例えば、ボイラー等への設置)ができるため、キャップ内に均一に気体を通す構成が得られる。(直接あたる面に角があると気体が攪拌するが、攪拌せずにキャップ内に気体を通すことができる。)この結果、気体が検知素子7と補償素子8に不均一にあたることを防ぐことができ、ゼロ点バラツキを抑えることができる。よって良好な品質のガスセンサが得られる。
【0022】
また、平坦面1bを熱遮蔽板1aに平行な面にすることにより、一目で検知素子7と補償素子8の平行位置がわかる。この結果、他構造で平行関係がわかるような構造を用いずとも方向性を指示することができる。
【0023】
さらに、前記キャップ1の外周部肉厚は均一の厚みで構成すると良い。このような構成によれば、キャップ1の外周部肉厚が均一の厚みであることにより、肉厚が厚いとガスの透過率が悪くなる、肉厚が薄い5とガスの透過率は良くなるといった、肉厚差によるガス透過のバラツキを防ぐことができる。この結果、気体が検知素子7と補償素子8に不均一にあたることを防ぐことができ、ゼロ点バラツキを抑えることができる。よって良好な品質のガスセンサが得られる。
【0024】
次に、図1に示す本実施例のガスセンサのキャップの製造方法について説明する。
図2はキャップを形成するための金型を示す図である。
熱遮蔽板部とキャップ外郭部を別途製作して接合する方法もあるが、本実施例では粉末成形を用いて一体型で製作を行った。使用する材料は粒子径0.1〜1mmの範囲、望ましくは0.35〜0.7mmのセラミックス粉砕粉を使用する。使用する金型は2面に平坦面を形成したダイス11、キャップ外周部および熱遮蔽部を形成するアウターパンチ12、インナーパンチ13、上パンチ14を用いて図1に示す熱遮蔽板一体型のキャップ1が形成される。
【0025】
図2に示すようなキャップ外周平坦部と熱遮蔽板部が平行な金型(ダイス11、アウターパンチ12)を用いればキャップ外周平坦部と熱遮蔽部が平行な形状は容易に作成することができる。これを大気雰囲気で、1200℃〜1600℃で焼成を行えばキャップ1は完成する。製作実施したキャップの形状寸法は外径12mm、高さ10mm、厚み1mmである。多孔質セラミックスのキャップが得られる。
【0026】
次に、上記製造工程にて製作されたキャップとマウントベースの接合方法について説明する。図3は本発明の一実施例のガスセンサに係るマウントベースを示す図である。図4はキャップとマウントベースとの接合に用いる治具の正面断面図である。図5はキャップとマウントベースとの接合に用いる治具を構成する下板、ベースガイド板、キャップガイド板の平面図である。
【0027】
図3に示すように、マウントベース2の外周部の一部には、切り欠き部2aが設けられている。前記キャップ1とマウントベース2の接合は、キャップ1の平坦面1bとマウントベース2の切り欠き部2aで位置決め支持可能な治具を用いて行う。図4に示す治具15は、マウントベース2の切り欠き部2aで方向性正しく支持する下板15aと、マウントベース2の位置を方向性正しく支持するベースガイド板15bと、キャップ1の外周部平坦面1bを支持するキャップガイド板15cの3体構造となっている。これを両側の治具支持穴16に治具支持ピン17にて3体の部品の位置出しを行う。そこにマウントベース2の切り欠き部2aの方向を支持する下板15aに支持ピン18をセットする。そしてこの治具15に上方よりマウントベース2、キャップ1をマウントベース2を接合するリングガラス19、キャップ1をセットして窒素雰囲気で900℃〜1200℃の焼成を行う。このような構成の治具を用いることによって、キャップ1の熱遮蔽板部1aと、検知素子7、補償素子8が平行になるように配置されたガスセンサが完成する。
【符号の説明】
【0028】
1 キャップ
1a 熱遮蔽板
1b 平坦面
2 マウントベース
2a 切り欠き部
3 ピンステイ
4 ピンステイ
5 電極ピン
6 電極ピン
7 検知素子
8 補償素子
11 ダイス
12 アウターパンチ
13 インナーパンチ
14 上パンチ
15 治具
15a 下板
15b ベースガイド板
15c キャップガイド板
16 治具支持穴
17 治具支持ピン
18 支持ピン
19 リングガラス
20 熱遮蔽板
21 キャップ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
感ガス素子と補償素子を支持する電極ピンと、当該電極ピンを支持固定するマウントベースと、前記感ガス素子と前記補償素子を断熱するための熱遮蔽板と、前記感ガス素子と補償素子を覆って前記マウントベースに固定されるキャップとを有するガスセンサにおいて、
前記キャップの外周部には、平坦面が形成されていることを特徴とするガスセンサ。
【請求項2】
前記キャップの外周部に形成された平坦面は、前記熱遮蔽板と平行な面であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサ。
【請求項3】
前記キャップの外周部肉厚は均一の厚みであることを特徴とする請求項1又は2に記載のガスセンサ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−47477(P2012−47477A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187210(P2010−187210)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】