説明

ガスタービンおよびその改造方法

【課題】キャビティへ供給される圧縮空気の量を簡単に調整できるガスタービンおよびその改造方法を提供すること。
【解決手段】内部を気体が流れるタービン車室空間35を有する静止部と、静止部に対して回転するロータ7に接続され、ロータ7と共に回転し、静止部との間に、タービン車室空間35の内部を流れる気体より低圧の気体が流れるキャビティ51が形成される回転部と、タービン車室空間35とキャビティ51とを連通するように静止部を貫通して形成された複数の貫通孔にそれぞれ着脱可能に取り付けられた複数のパージボルト55とを備え、パージボルト55には、タービン車室空間35側からキャビティ51側へ貫通するパージ孔56が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンおよびその改造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、圧縮機と燃焼器とタービンにより構成されており、空気取入口から取り込まれた空気が圧縮機によって圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となり、燃焼器にて、この圧縮空気に対して燃料を供給して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスがタービンを駆動し、このタービンに連結された発電機を駆動する。この場合、タービンは、車室内に複数の静翼及び動翼が交互に配設されて構成されており、燃焼ガスにより動翼を駆動することで発電機の連結される出力軸を回転駆動している。そして、タービンを駆動した燃焼ガスは、排気車室のディフューザを通って大気に放出される。
【0003】
このように構成されるガスタービンでは、高温・高圧の燃焼ガスをタービンのタービン流路に供給することで、複数のタービン動翼を介してタービン軸を駆動回転している。この場合、複数のタービン動翼に作用する燃焼ガスは1500℃にも達し、このタービン動翼を加熱して破損させてしまうおそれがあることから、冷却空気を各タービン動翼に供給して冷却している。
【0004】
図5は、従来のガスタービンの要部を表す概略断面図である。従来のガスタービンにおいて、図5に示すように、タービン軸としてのロータ001は、中間軸002に複数のタービンディスク003などが連結ボルト004により一体に連結されてなり、図示しない軸受によりケーシングに回転自在に支持されている。そして、タービンディスク003の外周部に複数のタービン動翼005が周方向に均等間隔で取付けられている。
【0005】
ロータ001の外周辺には、リング形状をなす中間軸カバー006が装着され、リング形状に沿って並設された複数の燃焼器007との間にタービン車室008を区画している。燃焼器008はタービン流路009に連通しており、このタービン流路009に複数のタービン静翼010と複数のタービン動翼005が長手方向に沿って交互に配設されている。
【0006】
また、ロータ001には、冷却空気を各タービン動翼005に供給して冷却する冷却空気供給孔011が形成され、この冷却空気供給孔011の入口部の周辺には、リング形状をなすシールリング保持環012が中間軸カバー006の内周部に密着して装着されている。このシールリング保持環012には、複数のラビリンスシール014が装着され、他端部に複数のラビリンスシール014が装着されており、各シール014は中間軸002の外周面に密着している。そして、中間軸カバー006とシールリング保持環012との間に空間部015が区画され、この空間部015はシールリング保持環012の貫通孔016を介して冷却空気供給孔011に連通している。
【0007】
そして、タービン車室008から外部に設けられたTCAクーラ017に至る排出配管018が設けられると共に、このTCAクーラ017から空間部015に至る供給配管019が設けられている。
【0008】
従って、圧縮機で圧縮された圧縮空気がタービン車室008に供給されると、その一部が排出配管018を通してTCAクーラ017に送られ、所定温度まで冷却されてから供給配管019を通して空間部015に送られる。すると、空間部015に送られた冷却空気は、貫通孔016を通して冷却空気供給孔011に供給され、各タービン動翼005に循環して冷却することができる。
【0009】
上述した従来のガスタービンでは、TCAクーラ017で冷却した冷却空気を供給配管019により空間部015に送り、この空間部015から貫通孔016を通して冷却空気供給孔011に供給することで、各タービン動翼005に循環して冷却している。このとき、空間部015に送られた冷却空気の一部をシールリング保持環012の他端部に設けられたラビリンスシール014を通してタービン動翼015における上流側のキャビティに供給し、タービン流路009に排出することで、タービン流路009からこのキャビティへの圧縮空気の逆流を阻止している。
【0010】
また、このようなガスタービンの例として、特許文献1には、圧縮機で圧縮された圧縮空気が送られるタービン車室と、第一段タービン動翼における上流側のキャビティとが形成され、タービン車室とキャビティとを連通するパージ孔が設けられたガスタービンが記載されている。特許文献1に記載のガスタービンによれば、圧縮機によって圧縮された圧縮空気の一部をパージ孔を通じてキャビティへ供給することができる。これにより、キャビティに高温ガスが進入することを防ぎ、キャビティ近傍の部品が高温に晒されることを防ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2007−146787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、特許文献1に記載のガスタービンにおけるパージ孔は、タービン軸の外周を被覆する軸カバーに形成された貫通孔である。このため、タービン動翼の仕様変更などによりキャビティへ供給される圧縮空気の量を調整するためガスタービンを改造する必要が生じた場合に、ガスタービンを長期間停止させてパージ孔を再加工したりタービン軸カバーを付け替えたりする必要があり、作業が大掛かりになるという問題があった。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、キャビティへ供給される圧縮空気の量を簡単に調整できるガスタービンおよびその改造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のガスタービンは、内部を気体が流れる静止部空間を有する静止部と、前記静止部に対して回転し、前記静止部との間に、前記静止部空間の内部を流れる気体より低圧の気体が流れるキャビティが形成される回転部と、前記静止部空間と前記キャビティとを連通するように前記静止部を貫通して形成された複数の貫通孔にそれぞれ着脱可能に取り付けられた複数の軸状体と、を備え、前記複数の軸状体のうち少なくとも1つの軸状体には、前記静止部空間側から前記キャビティ側へ貫通するパージ孔が形成されていることを特徴とする。
【0015】
また、前記複数の軸状体は、前記静止部を構成する静止部品同士を固定するための固定部材であることが好ましい。
【0016】
また、前記静止部空間には、前記静止部空間の内部を流れる気体が流れ込むとともに流れ込んだ気体に燃料を供給する燃焼器が配置されていることが好ましい。
【0017】
また、前記キャビティは、前記静止部を構成する部品の一つであるタービン静翼段と、回転部を構成する部品の一つであって前記軸体の径方向外側へ向かって前記軸体から延びるタービン動翼段との間に設けられていることが好ましい。
【0018】
また、前記タービン静翼段および前記タービン動翼段はそれぞれ第一段目であることを特徴とする請求項4に記載のガスタービン。
【0019】
また、前記複数の軸状体は、前記パージ孔が形成された筒状軸状体と、中実の中実軸状体と、で構成されていることが好ましい。
【0020】
本発明の改造方法は、内部を気体が流れる静止部空間を有する静止部と、前記静止部に対して回転し、前記静止部との間に、前記静止部空間の内部を流れる気体より低圧の気体が流れるキャビティが形成される回転部と、前記静止部空間と前記キャビティとを連通するように前記静止部を貫通して形成された複数の貫通孔にそれぞれ着脱可能に取り付けられ前記静止部を構成する静止部品同士を固定するための固定部材と、を備えるガスタービンを改造する改造方法であって、前記複数の固定部材のうち少なくとも1つ以上の前記固定部材を前記静止部から取り外し、前記固定部材が取り外されて生じた孔に、前記孔に固定されたときに前記静止部空間と前記キャビティとを連通するパージ孔を構成する孔を有する筒状固定部材を挿入して前記静止部に固定する交換工程を備えることを特徴とする。
【0021】
また、前記交換工程の前に、タービン静翼段およびタービン動翼段の形状によって定まる前記キャビティの内部における前記気体の流れに基づいて交換すべき前記筒状固定部材の数量と前記パージ孔の内径とを設定する準備工程をさらに備え、前記交換工程では、前記準備工程において設定された前記数量および前記内径にしたがって前記固定部材を交換することが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明のガスタービンおよびガスタービンの改造方法によれば、パージ孔を有する軸状体を備え、静止部品に形成された貫通孔にこの軸状体が着脱可能に設けられているので、静止部品に取り付けられた軸状体を他の軸状体と容易に交換できる。その結果、キャビティへ供給される圧縮空気の量を簡単に調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態のガスタービンを示す半断面図である。
【図2】同ガスタービンの一部の構成を示す概略断面図である。
【図3】図2における一部の構成を拡大して示す拡大断面図である。
【図4】同ガスタービンにおけるサポートリングの一部の構成を示す正面図である。
【図5】従来のガスタービンの一部の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態のガスタービンについて説明する。
図1は、本実施形態のガスタービン1を示す半断面図である。また、図2はガスタービン1の一部の構成を示す概略断面図である。図3は、図2における一部の構成を拡大して示す拡大断面図である。また、図4は、ガスタービン1におけるサポートリング53の一部の構成を示す正面図である。
【0025】
図1に示すように、ガスタービン1は、圧縮空気を生成する圧縮機2と、圧縮機2から供給される圧縮空気に燃料を供給して作動流体である燃焼ガスを生成する複数の燃焼器3と、燃焼器3から供給される燃焼ガスにより回転動力を発生させるタービン4と、を備えている。
【0026】
また、ガスタービン1には、ガスタービン1の設置面と略平行な一方向(図1においては軸線方向D)に延びるロータ(軸体)7が、圧縮機2からタービン4まで一体的に取り付けられている。ロータ7の一端は、圧縮機2内に設けられた軸受部7aによって、軸線O回りであるタービン4の周方向Rに回転可能に支持される。ロータ7の他端は、タービン4に設けられた軸受部7bによってタービン4の周方向Rに回転可能に支持される。
以下、ロータ7の軸線方向Dに沿って圧縮機2側を前側とし、タービン4側を後側とする。
【0027】
圧縮機2は、空気を取り込む空気取入口2aを前側に向けて配設された圧縮機ケーシング2bと、この圧縮機ケーシング2b内に配設された複数の圧縮機静翼2cおよび複数の圧縮機動翼2dとを備えている。
圧縮機静翼2cは、それぞれ圧縮機ケーシング2bの内周面に固定されると共にロータ7側に向けて延設され、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列されている。
圧縮機動翼2dは、ロータ7の外周面に固定されている。また、圧縮機動翼2dは、圧縮機ケーシング2bの内周面へ向けて延設されている。さらに、圧縮機動翼2dは、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列されている。
圧縮機静翼2cと圧縮機動翼2dとは、軸線方向Dに沿って交互になるように多段配置されている。
【0028】
燃焼器3は、内部に図示しないバーナを有する内筒3aと、圧縮機2から供給される圧縮空気を内筒3aに導く外筒3bと、内筒3aに燃料を供給する図示しない燃料噴射器と、内筒3aからの燃焼ガスをタービン4に導く尾筒3cとを備えている。このように構成された燃焼器3によれば、内筒3a内において、外筒3bから導かれる圧縮空気と燃料噴射機から供給される燃料とを混合し、混合された流体をバーナにより燃焼させることで燃焼ガスを生成することが可能となり、この燃焼ガスを尾筒3cを通してタービン4に導くことができる。複数の燃焼器3は、タービン4の周方向Rに並べて配置されると共に、前端部が圧縮機ケーシング2bの後端部に連結された燃焼器ケーシング3dの内部に配設されている。
【0029】
タービン4は、前端部が燃焼器ケーシング3dの後端部に連結されたタービンケーシング5と、このタービンケーシング5内に軸方向に交互に多段に配設されたタービン静翼10およびタービン動翼6とを備えている。各段のタービン静翼10は、周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、それぞれタービンケーシング5側に固定されると共にロータ7側に向けて放射状に複数延設されている。各段のタービン動翼6は、タービン静翼10と同様に周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、ロータ7側に固定されると共にタービンケーシング5側に向けて放射状に延設されている。このため、タービン動翼6は、ロータ7と共に回転する。
【0030】
図2に示すように、タービン4には、燃焼器3から流れ込む燃焼ガスが流れるタービン流路36が設けられている。タービン流路36は、タービン静翼10およびタービン動翼6に対して燃焼ガスを吹き付けるための通路である。
また、タービン4には、圧縮機2(図1参照)から送られた空気の一部が流れる抽気配管46と、抽気配管46の内部に連通されたTCAクーラ45と、TCAクーラ45の内部とタービン4の内部とを連通する供給管路47とが設けられている。
【0031】
TCAクーラ45は、図1に示す圧縮機2によって圧縮されることによって温度上昇した空気を冷却するものである。TCAクーラ45によって冷却された空気は供給管路47の内部を通じてTCAクーラ45からタービン4へ流れてタービン4に供給される。TCAクーラ45によって冷却されタービン4に供給された空気は、冷却用流体である冷却ガスとしてタービン動翼6それぞれの内部を流通するようになっている。
【0032】
図1に示すように、タービンケーシング5の後端部には、後側に向けて開口した排気室8が連結されている。この排気室8には、タービン静翼10およびタービン動翼6を通過した燃焼ガスの動圧を静圧に変換する排気ディフューザ8aが備えられている。
【0033】
次に、本実施形態のガスタービン1の構成の詳細について説明する。
図2に示すように、燃焼器3とロータ7との間には、ロータ7の外周辺をすき間を有して囲むリング形状の軸カバー34が設けられている。このため、軸カバー34に対してロータ7は軸回りに相対回転自在である。また、軸カバー34とロータ7との間には、シール部材38が設けられている。シール部材38は、例えば、曲折された流路を有するラビリンスシールであり、シール部38は上流側から下流側への気体の流通を規制するとともに、一定以下の圧力を与えることで、上述のTCAクーラ45から送られた空気を後述するキャビティ51へ送ることができるようになっている。TCAクーラ45から送られた空気は、シール部38で圧力損失を生じ、上流側よりも低い圧力でキャビティ51へ送られる。
軸カバー34のフランジ部34aには、雌ねじ部52が複数形成されている。複数の雌ねじ部52は、軸カバー34の外周に沿って所定間隔おきに配置されている。本実施形態では、雌ねじ部52は72箇所に形成されている。
【0034】
図2及び図4に示すように、サポートリング53は、環状の部材であり、その内径はフランジ部34aの外径と略等しい。サポートリング53には、ガスタービン1を前側から後側へ軸線方向Dに沿って見たときに雌ねじ部52と重なる位置に貫通孔54が形成されている。
貫通孔54は、サポートリング53を貫通して形成されている。具体的には、本実施形態では、貫通孔54は、その中心軸線が軸線方向Dと平行である。
貫通孔54および雌ねじ部54には、パージボルト(筒状軸状体、筒状固定部材)55が挿入され、軸カバー34とサポートリング53とはパージボルト55によって締め付け固定されている。
【0035】
図3に示すように、パージボルト55は、ねじ山が形成された軸状の部材であり、その中心軸と略同軸をなすパージ孔56となる孔が形成されたものである。パージ孔56は、パージボルト55の両端に開口されている。また、パージボルト55の軸方向の一端は中間部よりも大径に形成されている。本実施形態では、パージボルト55はガスタービン1の前側から後側へ向けて、貫通孔54を貫通すると共に雌ねじ部52にねじ込まれている。
また、パージボルト55は、雌ねじ部54に対して着脱可能であり、例えばガスタービン1の点検や修理などの理由で燃焼器3(図2参照)をガスタービン1から取り外したときに、作業者の手や工具が届く位置に設けられている。このため、軸カバー34およびサポートリング53に対してパージボルト55を容易に着脱できるようになっている。
【0036】
本実施形態では、タービン静翼10と軸カバー34との間にサポートリング53が設けられており、タービン動翼6へ向けて延びタービン動翼6との間にわずかな隙間を開けて設けられた流通規制部材57と、タービン静翼10の一段目を固定するための固定ねじ58とが設けられている。
【0037】
流通規制部材57によって、サポートリング53とタービン動翼6との間には、屈曲された流路が形成されている。このため、流通規制部材57によって、サポートリング53とタービン動翼6との間を通過する空気の量が制限されている。
【0038】
図1及び図2に示すように、圧縮機2によって圧縮された空気は、軸カバー34と、タービン静翼10と、圧縮機ケーシング2bと、燃焼器3および燃焼器ケーシング3dによって区画分けされて設けられたタービン車室空間(静止部空間)35の内部を流れるようになっている。
【0039】
軸カバー34と、タービン静翼10と、圧縮機ケーシング2bと、燃焼器3とは、いずれもロータ7の軸線O回りにロータ7が相対回転する静止部品であり、このような静止部品によって、ガスタービン1において相対的に回転するロータ7に対して静止する静止部が構成されている。
【0040】
また、上述した静止部に対して軸線O回りに回転するロータ7に接続されたタービン動翼6は、本実施形態における回転部品であり、このような回転部品によって、ガスタービン1においてロータ7とともに回転する回転部が構成されている。軸カバー34とタービン動翼6との間には、キャビティ51が形成されている。
【0041】
キャビティ51は、タービン車室空間35に流れ込んだ圧縮空気が、TCAクーラ45を通じて、及びパージボルト55のパージ孔56を通じて内部に送り込まれる空間である。TCAクーラ45を通じてキャビティ51に送り込まれる空気は、シール部材38とロータ7の外面との隙間に設けられたラビリンスシール内を通じてキャビティ51の内部へ送り込まれる。したがって、キャビティ51の内部の圧力はタービン車室空間35の内部の圧力よりも低い。
【0042】
図2および図3に示すように、パージボルト55に形成されたパージ孔56は、タービン車室空間35とキャビティ51とのそれぞれに開口されている。
【0043】
以上に説明した構成の、本実施形態のガスタービン1の使用時の動作について説明する。
まず、図示しない始動装置等によってロータ7を周方向Rへ回転させる。すると、圧縮機2においてロータ7に固定された圧縮機動翼2dが周方向Rへ回転し、圧縮機2の空気取入口2aから空気が取り込まれる。さらに、空気取入口2aから取り込まれた空気は多段に配置された圧縮機静翼2cおよび圧縮機動翼2dを通過して圧縮されて圧縮空気となる。
【0044】
圧縮機2によって圧縮された圧縮空気は、タービン車室空間35内へ流入する。タービン車室空間35内の圧縮空気は、一部はTCAクーラ45へ送られ、また一部はパージボルト55のパージ孔56へ流れ込み、その他は燃焼器3へ送られる。
【0045】
パージ孔56へ流れ込んだ圧縮空気は、パージ孔56を通じてキャビティ51へ流れ込む。パージ孔56を通じてキャビティ51へ流れ込んだ圧縮空気によって、キャビティ51内の圧力は上昇する。キャビティ51の内部の圧力は、タービン流路36の内部の圧力よりも高くなり、これにより、キャビティ51内の圧縮空気は流通規制部材57とタービン動翼6との隙間を通じてタービン流路36へ押し出される。これにより、タービン流路36内を流れる燃焼ガスがキャビティ51に逆流することを抑制できる。
【0046】
次いで、燃焼器3において、圧縮空気に燃料を混合して圧縮空気から燃焼ガスを生成する。燃焼ガスはタービン4へ送られる。そして、タービン静翼10およびタービン動翼6が配列された範囲を燃焼ガスが通過することでロータ7が回転駆動される。これにより、ガスタービン1は、回転動力を出力することができる。そして、ロータ7を回転駆動した後の燃焼ガス(排気ガス)は、排気室8の排気ディフューザ8aで静圧回復した後、大気に放出される。
【0047】
次に、本実施形態の改造方法について図1ないし図4を参照して説明する。
以下では、ガスタービン1の点検時において、タービン動翼6の状態に応じてキャビティ51内の気流を調整する場合を例に説明する。
【0048】
まず、キャビティ51の内部における気体の流れに基づいて、ガスタービン1に予め取り付けられたパージボルト55から交換すべきパージボルト55を選択し、新たに取り付けるべきパージボルト55の数量および内径を定める(準備工程S1)。具体的には、パージ孔56よるパージ量を増やすには、パージ孔56を有するパージボルト55の数量を増大させる方法と、各パージボルト55のパージ孔56の径を大きくする方法とがある。なお、パージ孔56を有するパージボルト55と一般的な中実のボルト(中実軸状体)とを混在させて使用することもできる。
ボルトにあけられる孔の径は、加工限界やボルトの強度により制限されている。しかし、パージボルト55と中実のボルトとを混在させて使用することで、これらの制限によらず、キャビティ51へ流れ込む圧縮空気の流量や流速などをより細かく制御することができる。
続いて、ガスタービンの運転を停止し、パージボルト55を雌ねじ穴52から取り外す。さらに、パージボルト55が取り外されて生じた貫通孔54および雌ねじ孔52に、準備工程S1において定められた内径を有するパージボルト55を挿入して軸カバー34とサポートリング53とを締め付け固定する(交換工程S2)。これにより、新たなパージ孔56によって、タービン車室空間35とキャビティ51とが連通される。
交換工程S2が終了したら、ガスタービン1を元通り組み立てて運転を再開する。
【0049】
以上説明したように、本実施形態のガスタービン1およびその改造方法によれば、タービン車室空間35とキャビティ51とを仕切る壁に形成された雌ねじ孔52にパージボルト55を取り付けることでパージ孔56を有するガスタービン1が構成されているので、異なる内径のパージ孔56が形成されたパージボルト33に交換することによってパージ孔56の形状を容易に変更できる。これにより、タービン翼仕様が変更された場合であっても、ロータ系の冷却空気バランスの調整を容易に実施でき、翼仕様に見合ったパージ空気を供給できる。
【0050】
また、パージボルト55が、ボルトにパージ孔56が形成されたものであるので、パージ孔を有していないガスタービンであっても、一般的なボルトをパージボルト55に置き換えることで容易にパージ孔を設けることができる。したがって、新たにパージ孔を開ける作業や、大掛かりな部品交換などをせずにガスタービンに容易にパージ孔を設けることができる。
特に、パージ孔56がボルトに形成されているので、ガスタービンの点検や部品交換時のボルト着脱作業と同時にパージ孔の設置を行うことができる。また、パージ孔56がボルトに形成されているので、パージボルト55から一般的な中実のボルトに交換することでパージ孔を容易に塞ぐことができる。
【0051】
また、パージ孔56を通じてキャビティ51へ圧縮空気を送るタービン車室空間35に、燃焼器3が設けられているので、燃焼器3を開けてガスタービン1を点検する作業においてパージボルト55の取り付けおよび交換ができる。したがって、パージボルト55を取り付けおよび交換するときにガスタービン1を分解する作業を最小限に抑えることができ、工期を短縮することができる。
【0052】
また、キャビティ51がタービン静翼10とタービン動翼6との間に設けられているので、パージ孔56を通じて空気を効率よくキャビティ51に送り込むことができる。
【0053】
また、キャビティ51が、タービン静翼10とタービン動翼6とのそれぞれ一段目の間に設けられているので、燃焼ガスの温度が最も高い領域においてキャビティ51へ燃焼ガスが逆流することを抑制することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、タービン静翼10およびタービン動翼6の形状に応じて、キャビティ51内における空気の流れが変化する場合がある。本実施形態における改造方法は、タービン静翼10やタービン動翼6を仕様変更する場合に、キャビティ51内の空気の流れを調整する場合にも好適に適用できる。
【0055】
また、本実施形態の改造方法は、パージボルト55が取り付けられて建造された本実施形態のガスタービン1以外であっても、軸カバー34とタービン静翼10の一段目とを固定するボルトを通すための貫通された雌ねじ孔が設けられていれば、雌ねじ孔からボルトを取り外してこの雌ねじ孔に上述のパージボルト55を取り付ける交換工程を行うことで、パージボルト55を有するガスタービンへと容易に改造することができる。
【0056】
また、例えば上述の実施形態において、サポートリング53に流通規制部材57を固定するためのボルトや、サポートリング53にタービン静翼10の第一段目を固定するためのボルトにも、上述のパージ孔56と同様のパージ孔が形成されたものを採用することもできる。
【0057】
また、本発明のガスタービン及び改造方法は、既設のガスタービンを改造する場合だけではなく、ガスタービンを新たに製造する場合にも好適に適用できるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 ガスタービン
2 圧縮機
2b 圧縮機ケーシング(静止部品)
3 燃焼器(静止部品)
3d 燃焼器ケーシング(静止部品)
4 タービン
6 タービン動翼(回転部品)
7 ロータ(軸体)
10 タービン静翼(静止部品)
34 軸カバー(静止部品)
35 タービン車室空間(静止部空間)
51 キャビティ
55 パージボルト(軸状体、筒状軸状体、固定部材)
56 パージ孔
57 流通規制部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を気体が流れる静止部空間を有する静止部と、
前記静止部に対して回転し、前記静止部との間に、前記静止部空間の内部を流れる気体より低圧の気体が流れるキャビティが形成される回転部と、
前記静止部空間と前記キャビティとを連通するように前記静止部を貫通して形成された複数の貫通孔にそれぞれ着脱可能に取り付けられた複数の軸状体と、
を備え、
前記複数の軸状体のうち少なくとも1つの軸状体には、前記静止部空間側から前記キャビティ側へ貫通するパージ孔が形成されている
ことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
前記複数の軸状体は、前記静止部を構成する静止部品同士を固定するための固定部材であることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン。
【請求項3】
前記静止部空間には、前記静止部空間の内部を流れる気体が流れ込むとともに流れ込んだ気体に燃料を供給する燃焼器が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のガスタービン。
【請求項4】
前記キャビティは、
前記静止部を構成する部品の一つであるタービン静翼段と、回転部を構成する部品の一つであって前記軸体の径方向外側へ向かって前記軸体から延びるタービン動翼段との間に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項5】
前記タービン静翼段および前記タービン動翼段はそれぞれ第一段目であることを特徴とする請求項4に記載のガスタービン。
【請求項6】
前記複数の軸状体は、前記パージ孔が形成された筒状軸状体と、中実の中実軸状体と、で構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のガスタービン。
【請求項7】
内部を気体が流れる静止部空間を有する静止部と、前記静止部に対して回転し、前記静止部との間に、前記静止部空間の内部を流れる気体より低圧の気体が流れるキャビティが形成される回転部と、前記静止部空間と前記キャビティとを連通するように前記静止部を貫通して形成された複数の貫通孔にそれぞれ着脱可能に取り付けられ前記静止部を構成する静止部品同士を固定するための固定部材と、を備えるガスタービンを改造する改造方法であって、
前記複数の固定部材のうち少なくとも1つ以上の前記固定部材を前記静止部から取り外し、前記固定部材が取り外されて生じた孔に、前記孔に固定されたときに前記静止部空間と前記キャビティとを連通するパージ孔を構成する孔を有する筒状固定部材を挿入して前記静止部に固定する交換工程を備えることを特徴とする改造方法。
【請求項8】
前記交換工程の前に、タービン静翼段およびタービン動翼段の形状によって定まる前記キャビティの内部における前記気体の流れに基づいて交換すべき前記筒状固定部材の数量と前記パージ孔の内径とを設定する準備工程をさらに備え、
前記交換工程では、前記準備工程において設定された前記数量および前記内径にしたがって前記固定部材を交換する
ことを特徴とする請求項7に記載の改造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−208561(P2011−208561A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76479(P2010−76479)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】