説明

ガスタービンの冷却装置及び方法

【課題】ガスタービンの冷却装置及び方法を提供すること。
【解決手段】タービン(2)の冷却システムは、タービン(2)のロータキャビティを流れる冷却ガス流(22,24)を生成するように構成されたブロア(12)と、冷却ガス流(22,24)をタービン(2)に送給するように構成された配管(14,18)と、冷却ガス流(22,24)を制御するように構成された1以上の弁(15、17、21、19)とを備える。配管(14,18)は、タービン(2)のロータ(34,36,38)に動作可能に接続される。タービン(2)の冷却方法は、ブロア(12)を用いてタービン(2)のロータキャビティを流れる冷却ガス流(22,24)を生成する段階と、タービン(2)に冷却ガス流(22,24)を送給する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タービンの冷却装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは通常は周囲空気を圧縮する圧縮機を備えていて、空気を燃料と混合して点火し、燃焼器で燃焼ガスを生成する。タービンは、高温燃焼ガスを受け取り、そこからエネルギーを抽出して圧縮機を駆動し、更に、例えば発電機を駆動するための出力を生成する。タービンは通常は1段以上のステータノズル又はベーンと、ロータブレードと、タービンブレードの周りで適切なクリアランスを維持するための環状シュラウドを含む。タービン入口温度は、ガスタービンエンジンの効率向上のため高温化しているので、タービンベーン、ブレード及びシュラウドに対して空気のような冷却流体を供給して、これら部品の温度を材料が耐え得るレベルに維持し、部品の満足できる耐用年数を確保することが必要となる。冷却は通常、圧縮機で圧縮された空気の一部を圧縮機から抽出し、これをタービンの部品に供給して冷却することにより達成される。圧縮機で圧縮されるが燃焼ガスの生成に使用されない空気は、必然的にエンジン効率を低下させる。従って、圧縮機から抽気される冷却空気の量を最小限にするのが望ましい。
【0003】
ターボ機械の性能及び信頼性は、回転ハードウェアと静止ハードウェアの間のクリアランスによって影響される。クリアランスが小さいほど効率は向上するが、摩擦による損傷のおそれも高まる。運転中、ガスタービンのケーシングは、典型的なタービンロータのロータよりも格段に速く冷える。ウォーム又はホットリスタート中、ケーシングとロータの間の熱的な不整合により、ロータがステータよりも大きな初期熱膨張成分をもつようになることがあり、ユニットの速度が増すと、機械的膨張成分が加わる。これは、過渡的クリアランスピンチポイントの原因となる。時間経過とともにステータが加熱されると、ケーシングがロータから離れて膨張し、拡大した定格負荷定格速度(FSFL)クリアランスを生じる。ユニットの構造クリアランスは、過渡的ピンチポイントの際の摩擦を回避しつつ、FSFLで依然として小さくなるように設定しなければならない。最小クリアランスとFSFLクリアランスとの差は、「定格性能」として定義される。定格性能は、ロータとケーシングの間の熱的不整合によって決まる。
【0004】
この問題に対処する従前の取り組みとしては、アクティブクリアランス制御システムが挙げられる。例えば、内側タービンシェルを、始動時に媒体(例えば、空気、N2、蒸気)で加熱してロータから離れるように膨張させるか、或いはFSFLで冷却してシェルがロータに近づくようにする。別の例として、油圧ラムを用いて、ユニットがFSFLに到達した後の位置に軸方向にロータを移動させることができる。タービンにおけるバケット先端とケーシングシュラウドとの角度は、関連する角度よりも大きくなり、圧縮機及びこの角度の不整合により、過渡的ピンチポイントの際のバケット先端とケーシングシュラウドの間の摩擦を排除することができる。
【0005】
過渡的ピンチポイントの際の摩擦を回避する従前の取り組みでは、バケットとケーシングの間の比較的大きなクリアランスが必要とされるか、及び/又はFSFLでのガスタービンの運転中にクリアランスを達成するために高価なシステムを連続稼働させる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5054996号明細書
【特許文献2】米国特許第6382903号明細書
【特許文献3】米国特許第6393825号明細書
【特許文献4】米国特許第6418804号明細書
【特許文献5】米国特許第6464461号明細書
【特許文献6】米国特許第6477773号明細書
【特許文献7】米国特許第6505526号明細書
【特許文献8】米国特許第6506021号明細書
【特許文献9】米国特許第6710479号明細書
【発明の概要】
【0007】
一実施形態では、タービンの冷却システムは、タービンのロータキャビティを流れる冷却ガス流を生成するように構成されたブロアと、冷却ガス流をタービンに送給するように構成された配管と、冷却ガス流を制御するように構成された1以上の弁とを備える。配管は、タービンのロータに動作可能に接続される。
【0008】
タービンを冷却する方法は、ブロアを用いてタービンのロータキャビティを流れる冷却ガス流を生成する段階と、タービンに冷却ガス流を送給する段階とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係るガスタービンの冷却装置を備えるタービンの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、ガスタービン2は、圧縮機セクション4と燃焼器6とを備える。圧縮機は、ステータベーンとロータブレードの交互の列を複数の段に配列して空気を順次圧縮する軸流圧縮機とすることができ、最大圧力で圧縮機出口から吐出されるまで、下流側の段の圧力が次第に高くなる。燃焼器6は、圧縮機部分4で圧縮された出口空気を受け取る。従来の燃料供給導管及び噴射装置(図示せず)が更に設けられ、好適な燃料を圧縮出口空気と混合して、燃焼器6内での燃焼を経て高温燃焼ガスを生成する。
【0011】
タービンセクション8は燃焼器6の下流にあり、高温燃焼ガスのエネルギーをタービンセクション8によって仕事に変換する。高温ガスが膨張し、熱エネルギーの一部が、タービンセクション8のノズルセクションで運動エネルギーに変換される。ノズルセクションは、複数のステータブレード又はノズル28,30,32を含む。例えば、第1段のノズルはステータブレード28を含み、第2段のノズルはステータブレード30を含み、第3段はステータブレード32を含む。
【0012】
タービンセクション8はバケットセクションも含む。バケットセクションでは、運動エネルギーの一部は、ロータホイール34,36,38にそれぞれ接続したバケット40,42,44に伝達され、仕事に変換される。ホイール34及びバケット40が第1段を形成し、ホイール36及びバケット42が第2段を形成し、ホイール38及びバケット44が第3段を形成する。ロータホイールの各ペア間にスペーサ50,52を設けることができる。
【0013】
タービン2の運転停止中に、タービンセクション8のロータを冷却するために、ブロア12が設けられる。ブロア12は、第1段と第2段の間に空気の流れを供給するよう構成された第1段配管14、及び第2段と第3段の間に空気の流れを供給するよう構成された第2段配管18によって、後方ディスクの後方シャフト26の内径に接続することができる。ブロア逆止弁15及び配管逆止弁17を含む逆止弁の第1のセットを第1段配管14に設けてもよい。ブロア逆止弁21及び配管逆止弁19を含む逆止弁の第2のセットを第2段配管18に設けてもよい。混合T字部16,20をそれぞれ第1段及び第2段配管に設けてもよい。或いは、ブロア12を、タービン2から出る空気を引き出す真空装置で置き換えてもよい。
【0014】
ブロア12は、例えば、バケット供給システムとすることができる外部送給ボア(EFB)回路10によりガスタービン2に接続される。既存のガスタービンでは、ブロアは、後方シャフト26の下にあるボアプラグを後付けすることによって、ガスタービン2に後付けすることができる。ブロア配管14,18は、後方シャフト26の内径に接続され、逆止弁15、17、19、21と共に用いることができる。正常運転中、すなわち非運転停止条件では、ブロア12はオフにされ、ブロア逆止弁15、21が閉じられて、配管逆止弁17、19が開放される。
【0015】
ガスタービン2の運転停止、トリップ間、パージ中などの、任意の速度での運転中に、ブロア12は、タービンセクション8のロータを冷却するように動作するとともに、ブロア12は、ロータの冷却速度をガスタービン2のケーシングの冷却速度以上にするサイズ及びタイミングにされる。これにより、ガスタービン2は、常に再始動が可能であり、ステータ温度に等しい又はより低温のロータを有することが可能になる。ブロア12の運転は、コントローラ48により制御することができる。コントローラ48は、特別にプログラムされた汎用コンピュータ又はマイクロコンピュータとすることができる。コントローラ48はまた、ASICであってもよい。コントローラ48は、タービンセクション(例えば、ロータ及びケーシング)内の温度センサからコントローラ48に送られる信号に基づいて、ブロア12の運転を制御することができる。ブロア12は、排気フレーム/ケーシングなどのFSFL運転中に他のプラントハードウェアを冷却するのに用いることができる。
【0016】
第1のブロア逆止弁15及び第2のブロア逆止弁21は、所定のガス流がブロア12で生成したときに開くように構成される。同時に、第1の配管逆止弁17及び第2の配管逆止弁19が閉じて、全てのブロアの流れがタービンセクション8に向けられるように構成される。第1の逆止弁セット15、17及び第2の逆止弁セット19、21は、同じガス流又は異なるガス流で開くように構成することができる点に留意されたい。例えば、第1の逆止弁セット15、17は、第1のガス流で開くように構成してもよく、第2の逆止弁セット19、21は、第1のガス流よりも高温の第2のガス流で開くように構成してもよい。逆止弁以外の他の弁を用いることができる点は理解されたい。更に、コントローラ48で弁の動作を制御するように構成できる点に留意されたい。
【0017】
図1では、第1段の冷却流22を実線で示し、第2段の冷却流24は破線で示し、タービンのパージ54流れは点線で示す。
【0018】
EFB回路10及びブロア12の使用は、機械的膨張時にガスタービン2に十分なクリアランスを与え、従来技術のシステムのアクティブクリアランス制御に比べて低コストで真円度を可能にする。ブロア12とEFB回路10とを備えるガスタービン2は小さなクリアランスで稼働することができ、所要のクリアランスを達成するのに連続稼働させる高価なシステムを必要としない。ブロア12は、ロータがケーシングよりも高温であるときには、非FSFL条件で稼働される。また、ブロア12を用いて、FSFL中の排気フレーム冷却など他のプラント機能を実施することができる。
【0019】
運転停止中にタービンセクション8のロータを冷却するブロアをシミュレートする熱伝導解析を実施し、ステータ時定数を一致させて、ロータの冷却速度をガスタービン2のケーシングの冷却速度と一致させるためにどれほどの空気流が必要とされるかを求めることができる。従って、クリアランスは、運転停止時定数をロータ増大と一致させることにより制御される。始動又はFSFL中のステータの運動に対処するクリアランス制御システムを用いた従来技術のシステムとは違って、ブロア12及びEFB回路10を備えたガスタービン2は、非設計ポイント中のロータに対して作用するので製品コストの点で比較的安価であり、FSFL中にガスタービン2の性能に関して負担をかけないという利点がある。
【0020】
上述の実施形態はガスタービンに関連しているが、上述の冷却装置及び方法は蒸気タービンにも適用できることを理解されたい。
【0021】
現時点で最も実用的且つ好ましい実施形態であると考えられるものに関して本発明を説明してきたが、本発明は、開示した実施形態に限定されるものではなく、逆に請求項の技術的思想及び範囲内に含まれる様々な修正及び均等な構成を保護するものであることを理解されたい。
【符号の説明】
【0022】
2 ガスタービン
4 圧縮機セクション
6 燃焼器
8 タービンセクション
10 外部送給ボア(EFB)回路
12 ブロア
14 配管
15 ブロア逆止弁
16 混合T字部
17 配管逆止弁
18 配管
19 配管逆止弁
20 混合T字部
21 ブロア逆止弁
22 冷却ガス流
24 冷却ガス流
26 後方シャフト
28 ノズル(ステータブレード)
30 ノズル(ステータブレード)
32 ノズル(ステータブレード)
34 ロータ
36 ロータ
38 ロータ
40 バケット
42 バケット
44 バケット
48 コントローラ
50 スペーサ
52 スペーサ
54 パージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービン(2)のロータキャビティを流れる冷却ガス流(22,24)を生成するように構成されたブロア(12)と、
冷却ガス流(22,24)をタービン(2)に送給するように構成された配管(14,18)と、
前記冷却ガス流(22,24)を制御するように構成された1以上の弁(15、17、21、19)と
を備えるタービン(2)用冷却システムであって、上記配管(14,18)がタービン(2)のロータ(34,36,38)に動作可能に接続されている、冷却システム。
【請求項2】
前記1以上の弁(15、21)が、前記タービン(2)の定格負荷定格速度運転中に閉じるように構成され、前記1以上の弁(15、21)が、前記タービン(2)の非ベース負荷運転中に開放されるように構成される、請求項1記載の冷却システム。
【請求項3】
前記ブロアなしでの運転に比べてロータの冷却速度を増大させる空気流を与えるように、前記ブロア(12)の運転を制御するように構成されたコントローラ(48)を更に備える、請求項1又は請求項2記載の冷却システム。
【請求項4】
前記コントローラ(48)が、1以上の弁(15、17、21、19)の動作を制御するよう構成される、請求項3記載の冷却システム。
【請求項5】
前記冷却システムが、外部冷却供給回路(10)に接続される、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の冷却システム。
【請求項6】
前記ブロア(12)が、前記タービン(2)内部から冷却ガスを脱気する真空装置として動作する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の冷却システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の冷却システムを備えるタービン。
【請求項8】
タービン(2)の冷却方法であって、
ブロア(12)を用いてタービン(2)のロータキャビティを流れる冷却ガス流(22,24)を生成する段階と、
タービン(2)に冷却ガス流(22,24)を送給する段階と
を含む方法。
【請求項9】
前記冷却ガス流(22,24)を生成する段階が、前記タービンのケーシングの外で前記ガス流を生成する段階を含み、前記冷却ガス流(22,24)を送給する段階が、前記タービン(2)のロータ(34,36,38)に接続された配管(14,18)を通して前記冷却ガス流(22,24)を送給する段階を含み、冷却ガス流の送給が1以上の弁によって制御される、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記冷却ガス流が、前記ブロアなしでの運転と比較して前記ロータの冷却速度が増すように、前記タービンの非ベース負荷運転中に生成される、請求項8又は請求項9記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−65699(P2010−65699A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207670(P2009−207670)
【出願日】平成21年9月9日(2009.9.9)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY