ガスタービンの氷結防止方法
【課題】氷結防止を目的とした制御を適切に実施し得るガスタービンの氷結防止方法を提供する。
【解決手段】ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、圧縮機の氷結を防止する方法であって、流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、遮断弁と流量調節弁との間において流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて流体を流体供給管内に導いて、流体供給管のうち流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁を開いて、遮断弁及びドレン弁を介した流体の流れを形成して流体供給管をウォーミングするステップと、流体供給管の前記部位の均圧終了後に、流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備える。
【解決手段】ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、圧縮機の氷結を防止する方法であって、流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、遮断弁と流量調節弁との間において流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて流体を流体供給管内に導いて、流体供給管のうち流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁を開いて、遮断弁及びドレン弁を介した流体の流れを形成して流体供給管をウォーミングするステップと、流体供給管の前記部位の均圧終了後に、流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの圧縮機入口側が氷結することを防止するガスタービンの氷結防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンの圧縮機では、高圧の燃焼用空気を生成するために大気が用いられることが多いが、圧縮機に吸入される大気温度が低いと圧縮機の入口側が氷結することがある。特に、圧縮機の入口案内翼の角度を調節して吸入空気流量を絞る際、空気流速が増加することにより空気温度が低下し、このとき大気温度が低いと空気中の水分がより氷結し易くなってしまう。
【0003】
圧縮機の入口側が氷結すると、圧縮機の吸気フィルタや入口案内翼等に付着して成長した氷のために圧縮機の吸気量が少なくなり、ガスタービン出力の低下を招くおそれがある。また、圧縮機入口側で生成した氷結結晶が飛散して圧縮機の動静翼に衝突し、圧縮機が損傷してしまう可能性もある。
【0004】
そのため、従来から、圧縮機の入口側の氷結を防止する氷結防止装置が用いられている。こういった装置として、圧縮機から抽気した高温高圧空気を用いて圧縮機の入口側を加温する氷結防止装置が知られている。
例えば、特許文献1には、圧縮機から抽気された空気を圧縮機の吸気フィルタに噴射することによって吸気フィルタの凍結を防止する凍結防止装置が記載されている。この装置では、圧縮機から抽気された高温高圧空気は抽気管を介して圧縮機の入口側に導かれ、抽気管に設けられた抽気調節用弁で流量調節されて吸気フィルタに噴射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−33795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には氷結防止を目的とした具体的な制御内容は記載されておらず、実際の運用に際しては、例えば以下のような問題が発生することが考えられる。
一つは、高温高圧空気の圧縮機入口側への供給開始直後に、圧縮機からの抽気量の調節を適切に行うことが難しいことがある。特許文献1に記載されるように、圧縮機入口側の加温を目的として高温高圧空気を供給する場合、圧縮機入口側が所望の温度となるように抽気調節用弁の開度制御を行うことが考えられる。ところが、空気供給開始直後は抽気管の圧力が十分に上昇していないので、抽気調節用弁を開いても高温高圧空気の圧縮機入口側への供給量は不足しがちであり、抽気調節用弁の開度を急激に大きくすることになる。その結果、空気供給開始直後、圧縮機からの抽気量(圧縮機入口側への高温高圧空気の供給量)は大きく変動し、抽気調節用弁の開度制御を安定して行うことが難しい。
【0007】
もう一つの問題点として、抽気管内のドレンの問題が挙げられる。氷結防止装置を繰り返し使用する場合、高温高圧空気の供給開始前に抽気管内にドレンが溜まっている可能性がある。そのため、抽気開始時に管内に高温高圧空気が流入するとフラッシュが発生するおそれがある。
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述の事情に鑑みて、氷結防止を目的とした制御を適切に実施し得るガスタービンの氷結防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの氷結防止方法は、ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、前記圧縮機の氷結を防止するガスタービンの圧縮機の氷結防止方法であって、前記流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、前記遮断弁と前記流量調節弁との間において前記流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記流体を前記流体供給管内に導いて、前記流体供給管のうち前記流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に前記ドレン弁を開いて、前記遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成して前記流体供給管をウォーミングするステップと、前記流体供給管の前記部位の均圧終了後に、前記流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備える。
【0010】
上記氷結防止方法によれば、ガスタービンの圧縮機の氷結防止を適切に実施することが可能となる。
例えば、氷結防止動作の開始時にまずドレン弁を開くようにしたので、高温高圧流体が導入される前に流体供給管内に溜まっているドレンを排出でき、流体供給管内でのフラッシュの発生を防止できる。
また、均圧化ステップにて、予め流体供給管内における流量調節弁の上流側の部位の圧力を上昇させておくことで、氷結防止を目的とした流体供給ステップの開始直後における流量調節弁の開度制御を安定して行うことができる。
また、ウォーミングステップで、流体供給ステップの前に流体供給管を予め温めておくようにしたので、流体供給ステップにて流体を供給する際にドレンが発生することを抑制できる。さらにこのとき、遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁を開くようにしたので、ドレンラインから排出される流体は、流体供給管への導入前の高温高圧の流体よりも低圧であり、排出流体が周囲に与える影響を小さくできる。
【0011】
一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法は、前記ドレン排出ステップにて前記ドレン弁を開いた状態を維持したまま、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記ウォーミングステップを開始してもよい。
上記ガスタービンの氷結方法では、ドレン排出ステップの後、ドレン弁を開いた状態を維持したまま遮断弁を開くことによって、流体供給管内の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うようにしている。したがって、ウォーミングステップでドレンラインから排出される流体の圧力をより低い圧力として、排出流体が周囲に与える影響をより一層小さくできる。
【0012】
一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法は、前記遮断弁が、第1遮断弁と、該第1遮断弁より最大開度における流量が大きい第2遮断弁とを含み、前記ウォーミングステップでは、前記第2遮断弁が閉じており前記第1遮断弁が開いた状態で前記ドレン弁を開いて前記第1遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成し、前記流体供給ステップでは、前記第2遮断弁を開いて、少なくとも前記第2遮断弁を介して前記流体を前記流量調節弁側に供給してもよい。
上記ガスタービンに氷結方法によれば、ウォーミングステップでは最大開度における流量が比較的小さい第1遮断弁とドレン弁とを介した流体の流れを形成してウォーミングを行うようにしたので、ドレンラインからの排出流体の流量が少なくなり、排出流体が周囲に与える影響をより一層小さくできる。一方、氷結防止を目的とした流体供給ステップでは最大開度における流量が比較的大きい第2遮断弁を介して流体を流量調節弁側に供給するようにしたので、より多くの流体を氷結防止のために利用できるようになる。
【0013】
少なくとも一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法で、前記流体は、前記圧縮機から抽気された圧縮空気であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、氷結防止を目的とした各弁の制御を適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
【図2】第1実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【図3】変形例における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第2実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
【図5】第2実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
[第1実施形態]
図1はガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
同図に示すように、ガスタービン1は、吸気した空気を圧縮する空気圧縮機2と、該圧縮機2が圧縮した空気(流体)と燃料供給系統から供給された燃料との混合気を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器4と、燃焼器4から生成された燃焼ガスによって駆動されるタービン3とを有している。
【0018】
圧縮機2には、その入口側に設けられている吸気ダクト6を介して吸気室8から空気が導かれる。吸気室8には吸気フィルタ7が設けられており、吸気室8に取り込まれた空気中に含まれる塵埃が吸気フィルタ7によって除去される。吸気フィルタ7を通過した空気は、吸気ダクト6の内部を通過して圧縮機2へと導かれる。圧縮機2に導かれた空気は、圧縮機2によって圧縮される。圧縮機2の入口には、圧縮機2に導かれる空気の流量を制御する入口案内翼が設けられている。タービン3は、燃焼器4から燃焼ガスが導かれることによって駆動される。タービン3には、圧縮機2と共通の回転軸5が設けられている。タービン3が燃焼ガスによって駆動されて回転軸5が回転すると、圧縮機2が駆動されて圧縮機2において空気が圧縮される。
【0019】
燃焼器4では、圧縮機2によって圧縮された空気(以下「圧縮空気」という。)が導かれて燃料が燃焼される。燃焼器は、燃料と圧縮空気との混合気を燃焼させることによって燃焼ガスを生成する。
【0020】
氷結防止システム10は、外気温が低い寒冷期や、圧縮機2に設けられている入口案内翼の開度を絞って圧縮機2入口の空気流入速度が高まった場合に、圧縮機2の出口から抽気された高温の圧縮空気を圧縮機2の入口側に導くことにより、圧縮機2の入口温度を上昇させて圧縮機2の氷結を防止する。
【0021】
氷結防止システム10は、圧縮機2の出口側と吸気室8との間に設けられる空気供給管12と、空気供給管12の上流側から順に設けられる遮断弁セット20、流量調節弁26と、空気供給管12内のドレンを排出するためのドレンライン30及びドレン弁32とを備えている。また、上記の各弁を制御するコントローラ35をさらに備えていてもよい。
【0022】
空気供給管12は、圧縮機2の出口側の下流において第1管路14と第2管路16とに分岐しており、これら第1管路14及び第2管路16が再び合流して、吸気ダクト6の入口側まで延びている。遮断弁セット20は、第1管路14に設けられる第1遮断弁(均圧弁)24と、第2管路16に設けられる第2遮断弁(空気供給弁)22を含んでいる。空気供給弁22は、均圧弁24に比べて、最大開度における流量(最大流量)が大きい。
【0023】
第1管路14と第2管路16との合流部の下流側では、ドレンライン30が空気供給管12に接続されており、このドレンライン30にはドレン弁32が設けられている。また、空気供給管12とドレンライン30との接続部の下流側では、空気供給管12に流量調節弁26が設けられている。流量調節弁26の下流側において、空気供給管12は吸気室8内まで延びており、流量調節弁26で流量調節された圧縮空気が空気供給管12から吸気室8内に噴射される。これにより、圧縮機2の入口に導かれる吸気を加熱してもよい。
なお、他の実施形態では、吸気室8内に設置された熱交換器において、空気供給管12を介して熱交換器に供給される圧縮空気との熱交換により圧縮機2の入口に導かれる吸気を加熱してもよい。この場合、熱交換器を通過した圧縮空気は圧縮機2に戻してもよい。
【0024】
ドレンライン30は、第1管路14と第2管路16との合流部よりも流量調節弁26寄りに設けられている。そのため、空気供給管12は、第1管路14と第2管路16との合流部と、空気供給管12へのドレンライン30の接続部との間の部位が占める割合が大きい。そのため、後述するウォーミングステップは、主として、第1管路14と第2管路16との合流部と、空気供給管12へのドレンライン30の接続部との間の長い管路を昇温するために行われる。
【0025】
上述した各弁22,24,26,32は、いずれもコントローラ35によって開閉制御される。このうち、空気供給弁22、均圧弁24及びドレン弁32は、少なくとも一実施形態において、コントローラ35によりON/OFF制御される。一方、流量調節弁26は、コントローラ35により開状態と閉状態との間で開度制御されてもよい。
【0026】
上記構成の氷結防止システム10を用いて圧縮機2の氷結防止を行う際のコントローラ35による具体的な制御の流れを以下に説明する。ここで、図2は第1実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
氷結防止動作の開始前には、空気供給弁22及び均圧弁24、流量調節弁26、ドレン弁32が全て閉じた状態となっている。
コントローラ35により各種入力信号に基づいて氷結防止動作の開始条件を満たしていると判断したら、氷結防止システム10を作動させて圧縮機2の氷結防止操作を開始する。少なくとも一実施形態において、圧縮機2の入口側(吸気室8)への高温高圧空気の供給を開始する前に、次のような準備動作を行う。
【0027】
準備動作として、まずはドレン排出ステップを行う。ドレン排出ステップでは、ドレン弁32を開いて、遮断弁セット20と流量調節弁26との間における空気供給管12に溜まっているドレンをドレンライン30から排出する。このように、高温高圧空気が空気供給管12に流入する前にドレンを排出することにより、空気供給管12内でのフラッシュの発生を防止できる。
【0028】
そして、均圧化ステップを行う。均圧化ステップでは、均圧弁24を閉状態から開状態に切り替えて、圧縮機2の出口側から高温高圧の圧縮空気を均圧弁24を介して空気供給管12内を流通させる。これにより、流量調節弁26は未だ閉じた状態であるから、空気供給管12のうち流量調節弁26より上流側の部位に圧縮空気が行きわたり、該部位が均圧化される。なお、均圧化とは、流量調節弁26の上流側における空気供給管12内の圧力を均一化する動作のことである。
なお、均圧化終了の判断については、空気供給管12のうち均圧弁24の下流側の管路の圧力を検出し、検出された圧力が予め設定された圧力以上となったら均圧化終了と判断してもよいし、予め設定された時間が経過したら均圧化終了と判断してもよい。
【0029】
均圧弁24は、最大開度における流量が比較的少ないため、均圧化ステップが完了するまでにある程度の時間を要する。
この均圧化ステップの完了前に空気供給管12のウォーミングステップを行う。すなわち、均圧化ステップにおいて均圧弁24を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に、均圧弁24が開いた状態でドレン弁32を開く。ウォーミングステップでは、均圧弁24及びドレン弁32の両方が開かれるため、圧縮機2の出口側からの圧縮空気は第1管路14を含む空気供給管12を流れた後、ドレンライン30から排出される圧縮空気の流れが形成される。こうして、冷たい外気に曝されて低温になっていた空気供給管12は、圧縮機2の出口側から供給される高温の圧縮空気によって加熱され、温度上昇する。
一方、低温の空気供給管12に導入された圧縮空気は、空気供給管12に熱を奪われて温度降下する際、ドレンを生じることがある。このようにウォーミングステップ中に生じたドレンは、ドレン弁32を介してドレンライン30から排出される。
【0030】
空気供給管12が所定温度まで暖まってウォーミングが終了したらドレン弁32を閉じる。なお、ウォーミング終了の判断については、空気供給管12のうちウォーミング中に空気流れが形成された部分の温度を検出し、検出された温度が予め設定された温度以上となったらウォーミング終了と判断してもよいし、予め設定された時間が経過したらウォーミング終了と判断してもよい。
なお、幾つかの実施形態では、ウォーミングステップは、図2に示すように、均圧化ステップ終了前に完了される。これにより、ドレンライン30から排出される圧縮空気の圧力は比較的低いから、排出空気が周囲に与える影響を小さくできる。
【0031】
一実施形態では、図2に示すように、上記ドレン排出ステップの終了後、ドレン弁32を開いたままにしておき、上記均圧化ステップの初期の段階で、ウォーミングステップも併せて行う。すなわち、ドレン排出時にドレン弁32を開いた状態をそのまま維持しながら均圧弁24を開いてもよい。これにより、空気供給管12内の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うことになるので、ドレンライン30から排出される空気の圧力をより低い圧力として、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。
【0032】
上記ウォーミングステップ及び上記均圧化ステップの終了後、圧縮機2の入口側(吸気室8)に高温高圧空気を供給する空気供給ステップを行う。すなわち、均圧弁24を閉じて、空気供給弁22を開くとともに、流量調節32を開く側に制御する。これにより、圧縮機2の出口側から抽気した高温高圧空気が圧縮機2入口側の吸気室8に供給される。
【0033】
本実施形態によれば、ガスタービン1の圧縮機2の氷結防止を適切に実施することが可能となる。
すなわち、均圧化ステップでは、予め空気供給管12内における流量調節弁26の上流側の部位の圧力を上昇させておくことで、氷結防止を目的とした空気供給ステップの開始直後における流量調節弁26の開度制御を安定して行うことができる。
また、ウォーミングステップでは、空気供給ステップの前に空気供給管12を予め温めておくようにしたので、空気供給ステップにて流体を供給する際にドレンが発生することを抑制できる。さらにこのとき、均圧弁24を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁32を開くようにしたので、ドレンライン30から排出される空気は、空気供給管12へ導入前の高温高圧空気よりも低圧にして、排出空気が周囲に与える影響を小さくできる。
【0034】
また、ウォーミングステップでは、最大開度における流量が比較的小さい均圧弁24とドレン弁32とを介した空気の流れを形成してウォーミングを行うようにしたので、ドレンライン30からの排出空気の流量が少なくなり、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。一方、氷結防止を目的とした空気供給ステップでは、最大開度における流量が比較的大きい空気供給弁22を介して空気を流量調節弁26側に供給するようにしたので、より多くの流体を氷結防止のために利用できるようになる。
【0035】
また、上述の実施形態の変形例として、図3に示すように、均圧化ステップから空気供給ステップにかけて、均圧弁24を開いた状態に維持してもよい。
【0036】
[第2実施形態]
次に第2実施形態に係る氷結防止の構成について説明する。本実施形態の氷結防止システムは、遮断弁の構成を変更したことを除けば、既に説明した第1実施形態と同様の構成である。したがって、ここでは、第1実施形態と共通する部材には同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図4は第2実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図で、図5は第2実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【0037】
本実施形態では、第1実施形態における遮断弁セット20に替えて、一つの遮断弁28が設けられている。
遮断弁28は、空気供給管12のうち、空気供給管12とドレンライン30との接続部よりも上流側に設けられており、圧縮機2から抽気された圧縮空気の流れを遮断する。遮断弁28は、少なくとも一実施形態において、コントローラ35によってON/OFF制御される。
【0038】
本実施形態に係る氷結防止方法では、図5に示すように、ドレン弁排出ステップにて、ドレン弁32を開いてドレンライン30からドレンを排出した後、均圧化ステップにて、遮断弁28を開いて流量調節弁26よりも上流側の空気供給管12を昇圧し、均圧化する。ウォーミングステップは、遮断弁28を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に、ドレン弁32を開いて、管路16のウォーミングを行う。なお、ウォーミングステップでは、ドレン排出ステップにてドレン弁32が開かれた状態を維持して遮断弁28を開くことにより、空気供給管12の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うことができ、ドレンライン30から排出される空気の圧力をより低い圧力として、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。ウォーミングステップが終了したらドレン弁32を閉じる。
【0039】
均圧化ステップが終了したら、空気供給ステップを開始する。空気供給ステップでは、遮断弁28を開いた状態に維持して流量調節弁26を開く。これにより、圧縮機2から抽気された高温高圧空気が、遮断弁28、流量調節弁26を介して圧縮機2の吸気室8に供給される。なお、上述したように空気供給路12への高温高圧空気の流入を遮断可能な遮断弁28を一つだけしか設けない場合には、空気供給ステップの方が均圧化ステップ及びウォーミングステップより遮断弁28の空気吐出流量が多くなるように、開状態と閉状態との間でコントローラ35による開度制御が可能な制御弁を遮断弁28としてを用いるようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機2の入口側に供給する高温高圧流体として圧縮機2から抽気した高温の圧縮空気を用いる例について説明したが、本発明は、ガスタービン1の外部から供給される高温高圧流体を用いてもよい。例えば、コンバインドサイクル発電装置の場合、蒸気タービンから抽気又は排気した蒸気を高温高圧流体として用いることもできる。
また、上述の実施形態では、空気供給管12からの高温高圧流体を吸気室8又は吸気室8に設置した熱交換器に供給する例について説明したが、高温高圧流体は圧縮機2の入口側に供給される限り、具体的な供給位置については特に限定されない。例えば、空気供給管12からの高温高圧流体は、吸気フィルタ7に直接噴射されてもよいし、吸気ダクト6に導入されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ガスタービン
2 空気圧縮機
3 タービン
4 燃焼器
5 回転軸
6 吸気ダクト
7 吸気フィルタ
8 吸気室
10 氷結防止システム
12 空気供給管
14 第1管路
16 第2管路
20 遮断弁セット
22 空気供給弁(第2遮断弁)
24 均圧弁(第1遮断弁)
26 流量調節弁
28 遮断弁
30 ドレンライン
32 ドレン弁
35 コントローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの圧縮機入口側が氷結することを防止するガスタービンの氷結防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンの圧縮機では、高圧の燃焼用空気を生成するために大気が用いられることが多いが、圧縮機に吸入される大気温度が低いと圧縮機の入口側が氷結することがある。特に、圧縮機の入口案内翼の角度を調節して吸入空気流量を絞る際、空気流速が増加することにより空気温度が低下し、このとき大気温度が低いと空気中の水分がより氷結し易くなってしまう。
【0003】
圧縮機の入口側が氷結すると、圧縮機の吸気フィルタや入口案内翼等に付着して成長した氷のために圧縮機の吸気量が少なくなり、ガスタービン出力の低下を招くおそれがある。また、圧縮機入口側で生成した氷結結晶が飛散して圧縮機の動静翼に衝突し、圧縮機が損傷してしまう可能性もある。
【0004】
そのため、従来から、圧縮機の入口側の氷結を防止する氷結防止装置が用いられている。こういった装置として、圧縮機から抽気した高温高圧空気を用いて圧縮機の入口側を加温する氷結防止装置が知られている。
例えば、特許文献1には、圧縮機から抽気された空気を圧縮機の吸気フィルタに噴射することによって吸気フィルタの凍結を防止する凍結防止装置が記載されている。この装置では、圧縮機から抽気された高温高圧空気は抽気管を介して圧縮機の入口側に導かれ、抽気管に設けられた抽気調節用弁で流量調節されて吸気フィルタに噴射されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−33795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1には氷結防止を目的とした具体的な制御内容は記載されておらず、実際の運用に際しては、例えば以下のような問題が発生することが考えられる。
一つは、高温高圧空気の圧縮機入口側への供給開始直後に、圧縮機からの抽気量の調節を適切に行うことが難しいことがある。特許文献1に記載されるように、圧縮機入口側の加温を目的として高温高圧空気を供給する場合、圧縮機入口側が所望の温度となるように抽気調節用弁の開度制御を行うことが考えられる。ところが、空気供給開始直後は抽気管の圧力が十分に上昇していないので、抽気調節用弁を開いても高温高圧空気の圧縮機入口側への供給量は不足しがちであり、抽気調節用弁の開度を急激に大きくすることになる。その結果、空気供給開始直後、圧縮機からの抽気量(圧縮機入口側への高温高圧空気の供給量)は大きく変動し、抽気調節用弁の開度制御を安定して行うことが難しい。
【0007】
もう一つの問題点として、抽気管内のドレンの問題が挙げられる。氷結防止装置を繰り返し使用する場合、高温高圧空気の供給開始前に抽気管内にドレンが溜まっている可能性がある。そのため、抽気開始時に管内に高温高圧空気が流入するとフラッシュが発生するおそれがある。
【0008】
本発明の少なくとも一つの実施形態は、上述の事情に鑑みて、氷結防止を目的とした制御を適切に実施し得るガスタービンの氷結防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態に係るガスタービンの氷結防止方法は、ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、前記圧縮機の氷結を防止するガスタービンの圧縮機の氷結防止方法であって、前記流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、前記遮断弁と前記流量調節弁との間において前記流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記流体を前記流体供給管内に導いて、前記流体供給管のうち前記流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に前記ドレン弁を開いて、前記遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成して前記流体供給管をウォーミングするステップと、前記流体供給管の前記部位の均圧終了後に、前記流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備える。
【0010】
上記氷結防止方法によれば、ガスタービンの圧縮機の氷結防止を適切に実施することが可能となる。
例えば、氷結防止動作の開始時にまずドレン弁を開くようにしたので、高温高圧流体が導入される前に流体供給管内に溜まっているドレンを排出でき、流体供給管内でのフラッシュの発生を防止できる。
また、均圧化ステップにて、予め流体供給管内における流量調節弁の上流側の部位の圧力を上昇させておくことで、氷結防止を目的とした流体供給ステップの開始直後における流量調節弁の開度制御を安定して行うことができる。
また、ウォーミングステップで、流体供給ステップの前に流体供給管を予め温めておくようにしたので、流体供給ステップにて流体を供給する際にドレンが発生することを抑制できる。さらにこのとき、遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁を開くようにしたので、ドレンラインから排出される流体は、流体供給管への導入前の高温高圧の流体よりも低圧であり、排出流体が周囲に与える影響を小さくできる。
【0011】
一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法は、前記ドレン排出ステップにて前記ドレン弁を開いた状態を維持したまま、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記ウォーミングステップを開始してもよい。
上記ガスタービンの氷結方法では、ドレン排出ステップの後、ドレン弁を開いた状態を維持したまま遮断弁を開くことによって、流体供給管内の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うようにしている。したがって、ウォーミングステップでドレンラインから排出される流体の圧力をより低い圧力として、排出流体が周囲に与える影響をより一層小さくできる。
【0012】
一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法は、前記遮断弁が、第1遮断弁と、該第1遮断弁より最大開度における流量が大きい第2遮断弁とを含み、前記ウォーミングステップでは、前記第2遮断弁が閉じており前記第1遮断弁が開いた状態で前記ドレン弁を開いて前記第1遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成し、前記流体供給ステップでは、前記第2遮断弁を開いて、少なくとも前記第2遮断弁を介して前記流体を前記流量調節弁側に供給してもよい。
上記ガスタービンに氷結方法によれば、ウォーミングステップでは最大開度における流量が比較的小さい第1遮断弁とドレン弁とを介した流体の流れを形成してウォーミングを行うようにしたので、ドレンラインからの排出流体の流量が少なくなり、排出流体が周囲に与える影響をより一層小さくできる。一方、氷結防止を目的とした流体供給ステップでは最大開度における流量が比較的大きい第2遮断弁を介して流体を流量調節弁側に供給するようにしたので、より多くの流体を氷結防止のために利用できるようになる。
【0013】
少なくとも一実施形態において、ガスタービンの氷結防止方法で、前記流体は、前記圧縮機から抽気された圧縮空気であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、氷結防止を目的とした各弁の制御を適切に実施することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
【図2】第1実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【図3】変形例における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【図4】第2実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
【図5】第2実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0017】
[第1実施形態]
図1はガスタービンの氷結防止システムを示す構成図である。
同図に示すように、ガスタービン1は、吸気した空気を圧縮する空気圧縮機2と、該圧縮機2が圧縮した空気(流体)と燃料供給系統から供給された燃料との混合気を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器4と、燃焼器4から生成された燃焼ガスによって駆動されるタービン3とを有している。
【0018】
圧縮機2には、その入口側に設けられている吸気ダクト6を介して吸気室8から空気が導かれる。吸気室8には吸気フィルタ7が設けられており、吸気室8に取り込まれた空気中に含まれる塵埃が吸気フィルタ7によって除去される。吸気フィルタ7を通過した空気は、吸気ダクト6の内部を通過して圧縮機2へと導かれる。圧縮機2に導かれた空気は、圧縮機2によって圧縮される。圧縮機2の入口には、圧縮機2に導かれる空気の流量を制御する入口案内翼が設けられている。タービン3は、燃焼器4から燃焼ガスが導かれることによって駆動される。タービン3には、圧縮機2と共通の回転軸5が設けられている。タービン3が燃焼ガスによって駆動されて回転軸5が回転すると、圧縮機2が駆動されて圧縮機2において空気が圧縮される。
【0019】
燃焼器4では、圧縮機2によって圧縮された空気(以下「圧縮空気」という。)が導かれて燃料が燃焼される。燃焼器は、燃料と圧縮空気との混合気を燃焼させることによって燃焼ガスを生成する。
【0020】
氷結防止システム10は、外気温が低い寒冷期や、圧縮機2に設けられている入口案内翼の開度を絞って圧縮機2入口の空気流入速度が高まった場合に、圧縮機2の出口から抽気された高温の圧縮空気を圧縮機2の入口側に導くことにより、圧縮機2の入口温度を上昇させて圧縮機2の氷結を防止する。
【0021】
氷結防止システム10は、圧縮機2の出口側と吸気室8との間に設けられる空気供給管12と、空気供給管12の上流側から順に設けられる遮断弁セット20、流量調節弁26と、空気供給管12内のドレンを排出するためのドレンライン30及びドレン弁32とを備えている。また、上記の各弁を制御するコントローラ35をさらに備えていてもよい。
【0022】
空気供給管12は、圧縮機2の出口側の下流において第1管路14と第2管路16とに分岐しており、これら第1管路14及び第2管路16が再び合流して、吸気ダクト6の入口側まで延びている。遮断弁セット20は、第1管路14に設けられる第1遮断弁(均圧弁)24と、第2管路16に設けられる第2遮断弁(空気供給弁)22を含んでいる。空気供給弁22は、均圧弁24に比べて、最大開度における流量(最大流量)が大きい。
【0023】
第1管路14と第2管路16との合流部の下流側では、ドレンライン30が空気供給管12に接続されており、このドレンライン30にはドレン弁32が設けられている。また、空気供給管12とドレンライン30との接続部の下流側では、空気供給管12に流量調節弁26が設けられている。流量調節弁26の下流側において、空気供給管12は吸気室8内まで延びており、流量調節弁26で流量調節された圧縮空気が空気供給管12から吸気室8内に噴射される。これにより、圧縮機2の入口に導かれる吸気を加熱してもよい。
なお、他の実施形態では、吸気室8内に設置された熱交換器において、空気供給管12を介して熱交換器に供給される圧縮空気との熱交換により圧縮機2の入口に導かれる吸気を加熱してもよい。この場合、熱交換器を通過した圧縮空気は圧縮機2に戻してもよい。
【0024】
ドレンライン30は、第1管路14と第2管路16との合流部よりも流量調節弁26寄りに設けられている。そのため、空気供給管12は、第1管路14と第2管路16との合流部と、空気供給管12へのドレンライン30の接続部との間の部位が占める割合が大きい。そのため、後述するウォーミングステップは、主として、第1管路14と第2管路16との合流部と、空気供給管12へのドレンライン30の接続部との間の長い管路を昇温するために行われる。
【0025】
上述した各弁22,24,26,32は、いずれもコントローラ35によって開閉制御される。このうち、空気供給弁22、均圧弁24及びドレン弁32は、少なくとも一実施形態において、コントローラ35によりON/OFF制御される。一方、流量調節弁26は、コントローラ35により開状態と閉状態との間で開度制御されてもよい。
【0026】
上記構成の氷結防止システム10を用いて圧縮機2の氷結防止を行う際のコントローラ35による具体的な制御の流れを以下に説明する。ここで、図2は第1実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
氷結防止動作の開始前には、空気供給弁22及び均圧弁24、流量調節弁26、ドレン弁32が全て閉じた状態となっている。
コントローラ35により各種入力信号に基づいて氷結防止動作の開始条件を満たしていると判断したら、氷結防止システム10を作動させて圧縮機2の氷結防止操作を開始する。少なくとも一実施形態において、圧縮機2の入口側(吸気室8)への高温高圧空気の供給を開始する前に、次のような準備動作を行う。
【0027】
準備動作として、まずはドレン排出ステップを行う。ドレン排出ステップでは、ドレン弁32を開いて、遮断弁セット20と流量調節弁26との間における空気供給管12に溜まっているドレンをドレンライン30から排出する。このように、高温高圧空気が空気供給管12に流入する前にドレンを排出することにより、空気供給管12内でのフラッシュの発生を防止できる。
【0028】
そして、均圧化ステップを行う。均圧化ステップでは、均圧弁24を閉状態から開状態に切り替えて、圧縮機2の出口側から高温高圧の圧縮空気を均圧弁24を介して空気供給管12内を流通させる。これにより、流量調節弁26は未だ閉じた状態であるから、空気供給管12のうち流量調節弁26より上流側の部位に圧縮空気が行きわたり、該部位が均圧化される。なお、均圧化とは、流量調節弁26の上流側における空気供給管12内の圧力を均一化する動作のことである。
なお、均圧化終了の判断については、空気供給管12のうち均圧弁24の下流側の管路の圧力を検出し、検出された圧力が予め設定された圧力以上となったら均圧化終了と判断してもよいし、予め設定された時間が経過したら均圧化終了と判断してもよい。
【0029】
均圧弁24は、最大開度における流量が比較的少ないため、均圧化ステップが完了するまでにある程度の時間を要する。
この均圧化ステップの完了前に空気供給管12のウォーミングステップを行う。すなわち、均圧化ステップにおいて均圧弁24を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に、均圧弁24が開いた状態でドレン弁32を開く。ウォーミングステップでは、均圧弁24及びドレン弁32の両方が開かれるため、圧縮機2の出口側からの圧縮空気は第1管路14を含む空気供給管12を流れた後、ドレンライン30から排出される圧縮空気の流れが形成される。こうして、冷たい外気に曝されて低温になっていた空気供給管12は、圧縮機2の出口側から供給される高温の圧縮空気によって加熱され、温度上昇する。
一方、低温の空気供給管12に導入された圧縮空気は、空気供給管12に熱を奪われて温度降下する際、ドレンを生じることがある。このようにウォーミングステップ中に生じたドレンは、ドレン弁32を介してドレンライン30から排出される。
【0030】
空気供給管12が所定温度まで暖まってウォーミングが終了したらドレン弁32を閉じる。なお、ウォーミング終了の判断については、空気供給管12のうちウォーミング中に空気流れが形成された部分の温度を検出し、検出された温度が予め設定された温度以上となったらウォーミング終了と判断してもよいし、予め設定された時間が経過したらウォーミング終了と判断してもよい。
なお、幾つかの実施形態では、ウォーミングステップは、図2に示すように、均圧化ステップ終了前に完了される。これにより、ドレンライン30から排出される圧縮空気の圧力は比較的低いから、排出空気が周囲に与える影響を小さくできる。
【0031】
一実施形態では、図2に示すように、上記ドレン排出ステップの終了後、ドレン弁32を開いたままにしておき、上記均圧化ステップの初期の段階で、ウォーミングステップも併せて行う。すなわち、ドレン排出時にドレン弁32を開いた状態をそのまま維持しながら均圧弁24を開いてもよい。これにより、空気供給管12内の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うことになるので、ドレンライン30から排出される空気の圧力をより低い圧力として、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。
【0032】
上記ウォーミングステップ及び上記均圧化ステップの終了後、圧縮機2の入口側(吸気室8)に高温高圧空気を供給する空気供給ステップを行う。すなわち、均圧弁24を閉じて、空気供給弁22を開くとともに、流量調節32を開く側に制御する。これにより、圧縮機2の出口側から抽気した高温高圧空気が圧縮機2入口側の吸気室8に供給される。
【0033】
本実施形態によれば、ガスタービン1の圧縮機2の氷結防止を適切に実施することが可能となる。
すなわち、均圧化ステップでは、予め空気供給管12内における流量調節弁26の上流側の部位の圧力を上昇させておくことで、氷結防止を目的とした空気供給ステップの開始直後における流量調節弁26の開度制御を安定して行うことができる。
また、ウォーミングステップでは、空気供給ステップの前に空気供給管12を予め温めておくようにしたので、空気供給ステップにて流体を供給する際にドレンが発生することを抑制できる。さらにこのとき、均圧弁24を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間にドレン弁32を開くようにしたので、ドレンライン30から排出される空気は、空気供給管12へ導入前の高温高圧空気よりも低圧にして、排出空気が周囲に与える影響を小さくできる。
【0034】
また、ウォーミングステップでは、最大開度における流量が比較的小さい均圧弁24とドレン弁32とを介した空気の流れを形成してウォーミングを行うようにしたので、ドレンライン30からの排出空気の流量が少なくなり、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。一方、氷結防止を目的とした空気供給ステップでは、最大開度における流量が比較的大きい空気供給弁22を介して空気を流量調節弁26側に供給するようにしたので、より多くの流体を氷結防止のために利用できるようになる。
【0035】
また、上述の実施形態の変形例として、図3に示すように、均圧化ステップから空気供給ステップにかけて、均圧弁24を開いた状態に維持してもよい。
【0036】
[第2実施形態]
次に第2実施形態に係る氷結防止の構成について説明する。本実施形態の氷結防止システムは、遮断弁の構成を変更したことを除けば、既に説明した第1実施形態と同様の構成である。したがって、ここでは、第1実施形態と共通する部材には同一の符号を付してその説明を省略し、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図4は第2実施形態に係るガスタービンの氷結防止システムを示す構成図で、図5は第2実施形態における各弁の動作を示すタイムチャートである。
【0037】
本実施形態では、第1実施形態における遮断弁セット20に替えて、一つの遮断弁28が設けられている。
遮断弁28は、空気供給管12のうち、空気供給管12とドレンライン30との接続部よりも上流側に設けられており、圧縮機2から抽気された圧縮空気の流れを遮断する。遮断弁28は、少なくとも一実施形態において、コントローラ35によってON/OFF制御される。
【0038】
本実施形態に係る氷結防止方法では、図5に示すように、ドレン弁排出ステップにて、ドレン弁32を開いてドレンライン30からドレンを排出した後、均圧化ステップにて、遮断弁28を開いて流量調節弁26よりも上流側の空気供給管12を昇圧し、均圧化する。ウォーミングステップは、遮断弁28を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に、ドレン弁32を開いて、管路16のウォーミングを行う。なお、ウォーミングステップでは、ドレン排出ステップにてドレン弁32が開かれた状態を維持して遮断弁28を開くことにより、空気供給管12の圧力が上昇する前にウォーミングステップを行うことができ、ドレンライン30から排出される空気の圧力をより低い圧力として、排出空気が周囲に与える影響をより一層小さくできる。ウォーミングステップが終了したらドレン弁32を閉じる。
【0039】
均圧化ステップが終了したら、空気供給ステップを開始する。空気供給ステップでは、遮断弁28を開いた状態に維持して流量調節弁26を開く。これにより、圧縮機2から抽気された高温高圧空気が、遮断弁28、流量調節弁26を介して圧縮機2の吸気室8に供給される。なお、上述したように空気供給路12への高温高圧空気の流入を遮断可能な遮断弁28を一つだけしか設けない場合には、空気供給ステップの方が均圧化ステップ及びウォーミングステップより遮断弁28の空気吐出流量が多くなるように、開状態と閉状態との間でコントローラ35による開度制御が可能な制御弁を遮断弁28としてを用いるようにしてもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
例えば、上述の実施形態では、圧縮機2の入口側に供給する高温高圧流体として圧縮機2から抽気した高温の圧縮空気を用いる例について説明したが、本発明は、ガスタービン1の外部から供給される高温高圧流体を用いてもよい。例えば、コンバインドサイクル発電装置の場合、蒸気タービンから抽気又は排気した蒸気を高温高圧流体として用いることもできる。
また、上述の実施形態では、空気供給管12からの高温高圧流体を吸気室8又は吸気室8に設置した熱交換器に供給する例について説明したが、高温高圧流体は圧縮機2の入口側に供給される限り、具体的な供給位置については特に限定されない。例えば、空気供給管12からの高温高圧流体は、吸気フィルタ7に直接噴射されてもよいし、吸気ダクト6に導入されてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ガスタービン
2 空気圧縮機
3 タービン
4 燃焼器
5 回転軸
6 吸気ダクト
7 吸気フィルタ
8 吸気室
10 氷結防止システム
12 空気供給管
14 第1管路
16 第2管路
20 遮断弁セット
22 空気供給弁(第2遮断弁)
24 均圧弁(第1遮断弁)
26 流量調節弁
28 遮断弁
30 ドレンライン
32 ドレン弁
35 コントローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、前記圧縮機の氷結を防止するガスタービンの圧縮機の氷結防止方法であって、
前記流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、前記遮断弁と前記流量調節弁との間において前記流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、
前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記流体を前記流体供給管内に導いて、前記流体供給管のうち前記流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、
前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に前記ドレン弁を開いて、前記遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成して前記流体供給管をウォーミングするステップと、
前記流体供給管の前記部位の均圧終了後に、前記流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備えることを特徴とするガスタービンの氷結防止方法。
【請求項2】
前記ドレン排出ステップにて前記ドレン弁を開いた状態を維持して、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記ウォーミングステップを開始することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【請求項3】
前記遮断弁が、第1遮断弁と、該第1遮断弁より最大開度における流量が大きい第2遮断弁とを含み、
前記均圧化ステップでは、前記第2遮断弁の閉状態で第1遮断弁を開いて、前記第1遮断弁を介して前記流体を前記流体供給管内に導き、
前記流体供給ステップでは、前記第2遮断弁を開いて、少なくとも前記第2遮断弁を介して前記流体を前記流量調節弁に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【請求項4】
前記流体は、前記圧縮機から抽気された圧縮空気であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【請求項1】
ガスタービンの圧縮機入口側に流体供給管を介して高温高圧の流体を導いて、前記圧縮機の氷結を防止するガスタービンの圧縮機の氷結防止方法であって、
前記流体供給管の上流側から順に設けられる遮断弁、流量調節弁を閉じた状態で、前記遮断弁と前記流量調節弁との間において前記流体供給管に接続されるドレンラインに設けられるドレン弁を開いてドレンを排出するステップと、
前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記流体を前記流体供給管内に導いて、前記流体供給管のうち前記流量調節弁の上流側の部位を均圧化するステップと、
前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替える時点から均圧終了時点までの間に前記ドレン弁を開いて、前記遮断弁及び前記ドレン弁を介した前記流体の流れを形成して前記流体供給管をウォーミングするステップと、
前記流体供給管の前記部位の均圧終了後に、前記流量調節弁を開いて前記圧縮機入口へ前記流体を供給するステップとを備えることを特徴とするガスタービンの氷結防止方法。
【請求項2】
前記ドレン排出ステップにて前記ドレン弁を開いた状態を維持して、前記遮断弁を閉状態から開状態に切り替えて前記ウォーミングステップを開始することを特徴とする請求項1に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【請求項3】
前記遮断弁が、第1遮断弁と、該第1遮断弁より最大開度における流量が大きい第2遮断弁とを含み、
前記均圧化ステップでは、前記第2遮断弁の閉状態で第1遮断弁を開いて、前記第1遮断弁を介して前記流体を前記流体供給管内に導き、
前記流体供給ステップでは、前記第2遮断弁を開いて、少なくとも前記第2遮断弁を介して前記流体を前記流量調節弁に供給することを特徴とする請求項1又は2に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【請求項4】
前記流体は、前記圧縮機から抽気された圧縮空気であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガスタービンの氷結防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2013−29103(P2013−29103A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−149771(P2012−149771)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−149771(P2012−149771)
【出願日】平成24年7月3日(2012.7.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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