説明

ガスタービン制御装置

【課題】ガスタービン制御装置の保守性の向上を図る。
【解決手段】ガスタービン制御装置は、バルブの開度に連動する可動鉄芯と、可動鉄芯の周囲に配置される1次コイル32と、1次コイル32に対応して設けられる2つの2次コイルと、を有する差動トランスより、1次コイル32及び2つの2次コイルに対する可動鉄芯の位置が変化する場合に、電源から1次コイル32に加えられる励磁電圧の電圧値及び励磁電圧によって2つの2次コイルに生じる誘起電圧の電圧値が入力される入力部と、2つの2次コイルのそれぞれの誘起電圧から求められた誘起電圧の電圧値の差を励磁電圧の電圧値で除して、可動鉄芯の位置を示す情報を演算する位置演算部38と、演算された可動鉄芯の位置に基づいて、バルブの開度を求め、バルブの開度を指示する開度指示値を、バルブの開度を制御する開度制御部に出力する出力部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電設備が備えるガスタービンを制御するガスタービン制御装置に係り、特に、ガスタービンに併設されるバルブの開度を制御する場合に適用して好適なガスタービン制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービン設備のバルブの開度検出器として差動トランスを備えるガスタービン制御装置がある。差動トランスは、1次コイルと2つの2次コイルによって構成され、1次コイルと2つの2次コイルの間には、可動鉄芯を備える。可動鉄芯は、バルブの開度に連動して位置が変わる。
【0003】
ガスタービン制御装置が1次コイルを交流(一定周波数の励磁電圧)で励磁すると、可動鉄芯の変位量に応じて、2つの2次コイルに誘起電圧が発生する。そして、ガスタービン制御装置は、2つの2次コイルが発生した誘起電圧の電圧値を取り込み、その電圧差を計算する。ガスタービン制御装置が備えるデータベースには、0%〜100%の範囲で規定されるバルブの開度と、開度に対応する電圧差の関係が保存されている。このため、ガスタービン制御装置は、電圧差からバルブの開度を求めることができ、この開度が所定の値となるようにバルブの開度を制御していた。
【0004】
特許文献1には、バルブ位置を計測する位置計測システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−139100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ガスタービン制御装置は、1次コイルを励磁する交流(一定周波数電圧)電圧発生機構を備える。交流電圧発生機構は、経年劣化すると、励磁電圧が下がるため、2つの2次コイルの電圧差が小さくなり、バルブの実際の開度よりも小さく計測してしまう。この結果、計測した開度と実際の開度が乖離することがあった。そして、計測した開度と実際の開度を合わせるためには、定期的にバルブの位置と2つの2次コイルの電圧差を測定し、ガスタービン制御装置のプログラムを調節する必要があった。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、ガスタービン制御装置の保守性の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ガスタービン制御装置は、バルブの開度に連動する可動鉄芯と、可動鉄芯の周囲に配置される1次コイルと、1次コイルに対応して設けられる2つの2次コイルと、を有する差動トランスより、1次コイル及び2つの2次コイルに対する可動鉄芯の位置が変化する場合に、電源から1次コイルに加えられる励磁電圧及び励磁電圧によって2つの2次コイルに生じる誘起電圧の電圧値が入力される入力部と、2つの2次コイルのそれぞれの誘起電圧から電圧値の差を求め、誘起電圧の電圧値の差を励磁電圧の電圧値で除して、可動鉄芯の位置を示す情報を演算する位置演算部と、演算された可動鉄芯の位置に基づいて、バルブの開度を求め、バルブの開度を指示する開度指示値を、バルブの開度を制御する開度制御部に出力する出力部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ガスタービン制御装置は、差動トランスから入力される2つの2次コイルの電圧差を1次コイルの電圧値で除することによって、可動鉄芯の位置を示す情報を求め、この情報に基づいて、バルブの開度を指示する開度指示値を開度制御部に出力できる。このため、1次コイルを励磁する交流(一定周波数電圧)電圧発生機構が経年劣化しても、計測した開度と実際の開度とが一致し、定期的に実施が必要であったガスタービン制御装置のプログラムの調節を不要とするという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態におけるガスタービン制御システムの例を示す構成図である。
【図2】本発明の一実施の形態におけるガスタービン制御装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施の形態におけるガスタービン制御装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施の形態におけるバルブ制御装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施の形態における電圧比とバルブの開度の関係例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照して説明する。本実施の形態では、ガスタービン21の出力を制御し、発電を行うガスタービン制御システム100の構成及び動作の例について説明する。
【0012】
図1は、ガスタービン制御システム100の構成例を示す。
【0013】
ガスタービン制御システム100は、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas、以下、「燃料ガス」と呼ぶ。)を燃焼させる燃焼機2と、燃焼機2が排出する燃焼ガスによって駆動するガスタービン21と、ガスタービン21の動作を制御するガスタービン制御装置20を備える。
【0014】
また、ガスタービン21は、空気を圧縮する空気圧縮機1と、燃焼機2と、タービン3を備える。燃焼機2は、空気圧縮機1で圧縮された空気と共に、燃料として投入される燃料ガスを燃焼して燃焼ガスを生成する。燃焼機2に投入される燃料は、燃料ガスの他に、重油、及び原油から石油を精製する際に発生するオフガスがある。
【0015】
空気圧縮機1の入り口に設置される空気圧縮機入口案内翼4は、空気圧縮機1の吸込み空気流量を調節する機能を有しており、不図示のバルブを備える。タービン3は、燃焼ガスによって駆動し、発電機5を発電させる。発電機5で発生した電力は、送電系統6によって送電される。送電系統6には、発電機遮断器11や系統遮断器12が接続される。発電機遮断器11の開閉状態を検出した開閉検出信号13は、ガスタービン制御装置20に入力し、系統遮断器12の開閉状態を検出した開閉検出信号14は、ガスタービン制御装置20に入力する。
【0016】
ガスタービン21には、通常、複数缶の燃焼機が設置されているが、図1には、2缶の燃焼機2,2′のみを示している。
ここで、領域22aは、燃焼機2を軸方向から視認した場合における、燃焼バーナの構成例を示し、領域22bは、燃焼機2を側面方向から断面視した場合における、燃焼バーナの構成例を示す。
【0017】
燃焼機2の内部上流側には、複数の燃焼バーナが設置される。燃焼バーナの内訳は、燃焼機軸方向中心位置に設置される1系統の拡散燃焼用バーナ7と、拡散燃焼用バーナ7の周囲に設置される4系統の予混合燃焼用バーナ8a〜8dである。即ち、本例のガスタービン21は、1つの缶の燃焼機に対して、5系統のバーナを備える。
【0018】
ガスタービン21が備える他の燃焼機2′についても、燃焼機2と同様の構成としてある。例えば、燃焼機2′は、1系統の拡散燃焼用バーナ7′と、拡散燃焼用バーナ7′の周囲に設置される4系統の予混合燃焼用バーナ8a′〜8d′を備える。
なお、燃焼機は、本例の燃焼機2に示される5系統のバーナの構成以外にも、燃焼用バーナを1系統のみ備えるものを用いてもよい。
【0019】
ガスタービン21に燃料ガスを供給する燃料供給経路には、基燃料供給系統19aと、母燃料供給系統19bと、子燃料供給系統19cがある。基燃料供給系統19aは、調整弁9を備え、母燃料供給系統19bに接続される。調整弁9は、バルブを備え、燃料ガスを遮断する弁と、燃料ガスの圧力を調整する弁の機能を兼用する。
【0020】
燃焼機2,2′に燃料ガスを供給する母燃料供給系統19bは、基燃料供給系統19aから5系統に分岐される。5系統の母燃料供給系統19bは、それぞれ燃料ガス流量調節弁10a〜10eを備える。また、それぞれの燃料ガス流量調節弁10a〜10eは、不図示のバルブを備える。燃料ガス流量調節弁10a〜10dは、燃焼機2,2′の4系統の予混合燃焼用バーナ8a〜8d,8a′〜8d′に供給する燃料ガスの流量を調節する。また、燃料ガス流量調節弁10eは、燃焼機2,2′の1系統の拡散燃焼用バーナ7,7′に供給する燃料ガスの流量を調節する。
【0021】
さらに、母燃料供給系統19bには、不図示のマニホールドを介して、子燃料供給系統19c,19c′が接続される。子燃料供給系統19c,19c′は、燃焼機の缶数分だけ用意される。子燃料供給系統19cは、母燃料供給系統19bから供給される燃料ガスの流量を調節し、燃焼機2の拡散燃焼用バーナ7,予混合燃焼用バーナ8a〜8dに燃料ガスを供給する。同様に、子燃料供給系統19c′は、母燃料供給系統19bから供給される燃料ガスの流量を調節し、燃焼機2の拡散燃焼用バーナ7′,予混合燃焼用バーナ8a′〜8d′に燃料ガスを供給する。
【0022】
そして、ガスタービン制御装置20は、空気圧縮機入口案内翼4、調整弁9及び燃料ガス流量調節弁10a〜10eを制御して、拡散燃焼用バーナ7,7′、予混合燃焼用バーナ8a〜8d,8a′〜8d′に供給する燃料ガスの流量の増減を制御する。
【0023】
一方、ガスタービン制御装置20は、給電指令値と、発電機5が出力するフィードバック値15を比較し、タービン3の速度を測定したタービン速度フィードバック値16、タービン3の排気温度を測定した排気温度フィードバック値17等の供給を受けて、ガスタービン21の運転状態を監視する。そして、ガスタービン制御装置20は、燃料ガスの供給量を指令する主燃料指令値を出力し、この主燃料指令値によって決まる燃料ガスの流量を変化させることにより、発電機5が出力する電力値が所定の値となるように制御する。
【0024】
主燃料指令値は、予め定められた運転負荷に応じた燃料ガスの流量を調整することを目的として5つの燃料指令値18a〜18eに分割される。そして、5つの燃料指令値18a〜18eは、それぞれ対応する5つの母燃料供給系統19bに備えられた燃料ガス流量調節弁10a〜10eを駆動し、各母燃料供給系統19bの燃料ガスの流量を調節する。
【0025】
なお、差動トランス34(後述する図3参照)は、上述した空気圧縮機入口案内翼4、調整弁9及び燃料ガス流量調節弁10a〜10eが備えるバルブにそれぞれ設置される。そして、ガスタービン制御装置20は、差動トランス34によってバルブの開度を計測することによって、燃料ガスの流量に適しするようにバルブの開度を制御できる。
【0026】
本例のガスタービン制御システム100は、以下に記す第1の目的を達成するために、発電を行う場合に適用されるが、第2〜第5の目的に適用してもよい。
第1の目的は、電力会社が企業や一般家庭向けに電力を供給することである。
第2の目的は、ガス会社等が電力会社に電力を売電することである。
第3の目的は、ガス会社等が電力会社の保有する既存電線網を借用して契約する企業に直接電力を売電することである。
第4の目的は、石油会社の石油精製工場において原油から石油を精製する際に発生するオフガスと呼ばれる使途のない排出ガスを焼却処分せずに有効活用することである。
第5の目的は、化学プラント工場において工場内で使用する蒸気を創出する熱源とすることである。
【0027】
図2は、ガスタービン制御装置20の内部構成例を示す。
【0028】
ガスタービン制御装置20は、空気圧縮機入口案内翼4、調整弁9,燃料ガス流量調節弁10a〜10eが備えるバルブの開度を演算する、第1のCPU23a〜第3のCPU23c(以下、「3台のCPU」と略称する。)を備える。3台のCPUは、それぞれ第1の電源装置24a〜第3の電源装置24cを備える。第1の電源装置24a〜第3の電源装置24cには、それぞれ直流電源と交流電源が1系統ずつ供給される。これにより、ある1系統の電源に異常が発生して電源供給が停止しても、他の1系統より電源が供給され続けるため、ガスタービン制御装置20は継続して運転することが可能である。
【0029】
また、ガスタービン制御装置20は、上述した各種のフィードバック値や計測値等が入力される入力部25aを備える。そして、3台のCPUには、それぞれ同じ入力信号が入力部25aを介して入力される。この入力信号は、例えば、後述する差動トランス34から供給される、バルブの開度を示す開度情報が含まれる。そして、3台のCPUは、それぞれ内蔵するプログラムを用いて、入力信号に対して各種の演算処理を行う。
【0030】
ここで、入力部25aの他の構成例について、参考として説明する。
第1に、1つの信号を分配器で増幅した後、3台のCPUがそれぞれ個別に備える入力部に信号が入力されるものがある。
第2に、1つの信号を共通の入力部に入力した後、3台のCPUがそれぞれの回線で信号が入力されるものがある。
第3に、1つの信号を共通の入力部に入力した後、3台のCPUが同じ回線で順番に信号が入力されるものがある。
第4に、1つの信号を共通の入力部に入力した後、主系のCPUのみが信号を直接入力し、他の2つのCPUは主系のCPUから通信回線を介してその入力信号が入力されるものがある。
【0031】
また、ガスタービン制御装置20は、各部に演算結果を出力する出力部25bを備える。出力部25bは、3台のCPUのそれぞれに対して3台のサブCPU(後述する図5参照)を備える。そして、出力部25bは、出力結果がディジタル値の場合は3台のCPUが演算した値の最頻値(3台中、2台のCPUが演算した値が最頻である場合、これら2台のCPUが演算した値)を、バルブの開度を制御する開度制御部29(後述する図5参照)に出力する。
【0032】
なお、出力部25bは、出力結果がアナログ値の場合、3台のCPUが演算した値の中間値をガスタービン制御装置20の出力とする。また、出力部25bは、後述する図5に示すように、コイル28a〜コイル28cが発生する電磁力を制御する開度制御部29に対して個別に3本の制御線を介して開度指令値を出力する。しかし、出力部25bは、複数の開度指令値から一の値を選択して、開度制御部29に1本の制御線を介して出力するようにしてもよい。
【0033】
ここで、出力部25bの他の構成例について、参考として説明する。
第1に、3台のCPUがそれぞれ個別に備える出力部から信号を出力した後、外部の処理装置が最頻値及び中間値を選択するものがある。
第2に、3台のCPUがそれぞれの回線で信号を出力した後、出力部で最頻値及び中間値を選択するものがある。
第3に、3台のCPUが共通の回線で順番に信号を出力した後、出力部で最頻値及び中間値を選択するものがある。
第4に、主系のCPUが通信回線を介して他の2つのCPUから出力信号を収集し、主系CPU内で最頻値及び中間値を選択した後、主系のCPUのみが出力信号を出力するものがある。
【0034】
図3は、3台のCPUがそれぞれ備える計測部35の内部構成例を示す。
【0035】
バルブの開度を計測するために用いられる可動鉄芯変圧器31は、バルブの開度に連動する不図示の可動鉄芯と、可動鉄芯の周囲に配置される1つの1次コイル32と、1次コイル32に対応して設けられる第1の2次コイル33a,第2の2次コイル33b(以下、「2つの2次コイル」と略称する。)と、を有する差動トランス34を備える。本例では、1次コイル32の一部に、第2の2次コイル33bが含まれる構成としている。上述した調整弁9,燃料ガス流量調節弁10a〜10eは、それぞれ可動鉄芯変圧器31の一部として構成される。
【0036】
なお、本例のガスタービン制御システム100において、冗長化のため、バルブ1個に対して可動鉄芯変圧器31が2個設けられているものの、以下の説明では、1個の可動鉄芯変圧器31について説明する。また、図3において、入力部25aの記載は省略する。
【0037】
可動鉄芯は、バルブの開度が変わると変位する。一方、ガスタービン制御装置20が1次コイル32を一定周波数の交流電圧で励磁すると、2つの2次コイルに誘起電圧が発生する。そして、1次コイル32及び2つの2次コイルに対する可動鉄芯の位置が変化する場合に、電源から1次コイル32に加えられる励磁電圧及び励磁電圧によって2つの2次コイルに生じる誘起電圧の電圧値が変化する。これら励磁電圧及び誘起電圧の電圧値は、上述した入力部25aに入力される開度情報に含まれる。
【0038】
例えば、可動鉄芯が2つの2次コイルの中央にある時は、可動鉄芯が左右対称の位置で停止しており、2つの2次コイルの誘起電圧は等しくなるため、電圧差が0となる。しかし、可動鉄芯が2つの2次コイルの中央からずれると、2つの2次コイルの誘起電圧の電圧値が異なる。また、2つの2次コイルの誘起電圧の電圧値の差は、可動鉄芯が2つの2次コイルの中央に対して、右にある場合と左にある場合で逆になる。この現象を利用して、ガスタービン制御装置20は、2つの2次コイルの誘起電圧の電圧値を取り込み、可動鉄芯の左右の変位の大きさを、正負の直流電圧の大きさに変換することによって、可動鉄芯の変位を測定する。
【0039】
ここで、本例のガスタービン制御装置20は、1次コイル32と、2つの2次コイルの電圧比を計算することで、上述した電圧発生機構の経年劣化によらず、所定の変位出力を求めるものである。
そして、ガスタービン制御装置20は、可動鉄芯の位置を計測する計測部35を備える。計測部35は、上述した3つのCPUがそれぞれ有しており、3つのCPUが同時に可動鉄芯の位置を演算することで、演算結果の信頼性を高めている。
【0040】
ここで、計測部35の内部構成例について説明する。
計測部35は、所定の周波数でタイミング信号を励振する発振部36と、2つの2次コイルから供給される誘起電圧の電圧値のうち、一の電圧値から他の電圧値を減じて電圧値の差分を演算する減算部37を備える。本例では、説明を容易とするため、第2の2次コイル33bが出力する電圧値を「A」とし、第1の2次コイル33aが出力する電圧値を「B」とする。そして、減算部37は、電圧値「A」から電圧値「B」を減ずることによって、電圧差「A−B」を求める。
【0041】
また、ガスタービン制御装置20は、可動鉄芯の位置を示す情報を演算する位置演算部38を備える。位置演算部38は、2つの2次コイルのそれぞれの誘起電圧から電圧値の差を求め、誘起電圧の電圧値の差を、1次コイル32から供給された励磁電圧の電圧値で除して、可動鉄芯の位置を示す情報を演算する。
【0042】
ここで、位置演算部38の内部構成例について説明する。
位置演算部38は、1次コイル32から供給される励磁電圧の電圧値より、電圧の第1の振幅値「C」を算出する第1の振幅値算出部39aと、減算部37が出力する差分電圧値「A−B」より、第2の振幅値「D」を算出する第2の振幅値算出部39bを備える。
【0043】
また、ガスタービン制御装置20は、第2の振幅値「D」を第1の振幅値「C」で除して除算値「D/C」を求める除算部40と、除算値「D/C」より可動鉄芯の位置を演算する位置情報演算部41を備える。位置情報演算部41は、不図示の内部テーブルを参照した上で、可動鉄芯の位置を演算し、可動鉄芯の位置を示す位置情報を出力する。本例では、位置情報として、可動鉄芯の位置を示す位置番号を出力する。これにより、可動鉄芯の位置(変位量)が判明する。
【0044】
ここで、第2の2次コイル33bの電圧値をV2Aとし、1次コイル32の励磁電圧値を示す電圧Vと、可動鉄芯の位置によって変化する関数P2A(x)と、定数C2Aを用いると、次式(1)が得られる。式(1)によって求められる、電圧値V2Aは、減算部37に供給される電圧値「A」に対応する。
【0045】
2A=V・C2A・P2A(x)…式(1)
【0046】
式(1)と同様に、第1の2次コイル33aについても、次式(2)が得られる。式(2)によって求められる、電圧値V2Bは、減算部37に供給される電圧値「B」に対応する。
【0047】
2B=V・C2B・P2B(x)…式(2)
【0048】
よって、2つの2次コイルの電圧比は、次式(3)より求まる。
【0049】
電圧比=V2A/V2B
=C2A・P2A(x)/C2B・P2B(x)…式(3)
【0050】
式(3)で求められた電圧比には、1次コイル32の電圧Vの寄与がなくなるため、交流電圧発生機構の経年劣化による電圧Vの電圧降下の影響を受けないことが分かる。しかし、この計算だけでは、2つの2次コイルの電圧差が0となる付近でバルブの制御が不安定になることが判明した。
【0051】
図4は、2つの2次コイルの電圧比と、バルブの開度の例を示す。
【0052】
このグラフより、2つの2次コイルの電圧差が0となる付近で、電圧比の1次微分が不連続になることが示される。そして、バルブの開度が50%となる付近で電圧比に飛びがあるため、この開度付近ではバルブの制御が不安定になってしまう。
【0053】
このため、除算部40は、2つの2次コイルの電圧差を1次コイル32の電圧値で除する次式(4)を用いる。式(4)によって導出される各値のうち、Vは、第1の振幅値算出部39aが出力する振幅値「C」に対応する。また、V(C2A・P2A(x)―C2B・P2B(x))は、第2の振幅値算出部39bが出力する第2の振幅値「D」に対応する。
【0054】
2つの2次コイルの電圧差/1次コイルの電圧
=V(C2A・P2A(x)―C2B・P2B(x))/V
=C2A・P2A(x)―C2B・P2B(x)…式(4)
【0055】
式(4)で求められた値は、1次コイル32の電圧Vの寄与がなくなるため、電圧Vの電圧降下の影響を受けない。また、2つの2次コイルの電圧差が0となる付近では、電圧比の1次微分について連続となる。このため、定期的にバルブの位置と、2つの2次コイルの電圧差を測定すれば、ガスタービン制御装置20のプログラムを調節しなくてもよくなる。
【0056】
図5は、3台のCPUがバルブの開度を調節する機構の構成例を示す。
【0057】
バルブの開度は、バルブの周囲に配置され、バルブに電磁力を及ぼすコイル28a〜28cによって制御される。コイル28a〜28cは、出力部25bを介して、3台のCPUにそれぞれ接続される。3台のCPUが出力する出力値は、出力部25b内で電磁気学的にその平均値として出力される。バルブの制御は高速制御が求められる為、バルブを制御するための演算処理は3台のCPUがそれぞれ個別にもつ、3台のサブCPU(第1のサブCPU26a〜第3のサブCPU26c)が専門に行う。本例では、3台のサブCPUが出力部25bに格納される。
【0058】
そして、出力部25bは、3台のサブCPUが演算した、バルブの開度を指示する開度指令値を、開度制御部29に出力する。開度制御部29は、開度指令値を受け取ると、コイル28a〜28cの電磁力を制御し、バルブの開度を調整する。
【0059】
以上説明した本実施の形態に係るガスタービン制御装置20によれば、差動トランス34から入力される2つの2次コイルの電圧差を1次コイル32の電圧値で除することによって、可動鉄芯の位置を示す情報を求める。そして、この情報に基づいて、バルブの開度を指示する開度指示値を開度制御部29に出力できる。このため、1次コイル32を励磁する交流(一定周波数電圧)電圧発生機構が経年劣化しても、計測した開度と実際の開度とが一致し、定期的に実施が必要であったガスタービン制御装置のプログラムの調節を不要とするという効果がある。このため、バルブと作動トランスを備えるガスタービン制御装置20の保守性の向上を図ることができるという効果がある。
【0060】
また、開度制御部29は、電磁力によってバルブの開度を制御するコイル28a〜28cによって形成されるため、遠隔制御が容易であり、バルブの開度を所定の値に維持しやすくなるという効果がある。
【符号の説明】
【0061】
1…空気圧縮機、2,2′…燃焼機、3…タービン、4…空気圧縮機入口案内翼、5…発電機、6…送電系統、7,7′…拡散燃焼用バーナ、8a,8a′…予混合燃焼用バーナ、9…調整弁、10a〜10e…燃料ガス流量調節弁、11…発電機遮断器、12…系統遮断器、19a…基燃料供給系統、19b…母燃料供給系統、19c,19c′…子燃料供給系統、20…ガスタービン制御装置、21…ガスタービン、23a〜23c…第1のCPU〜第3のCPU、24a〜24c…第1の電源装置〜第3の電源装置、25a…入力部、25b…出力部、26a〜26c…第1のサブCPU〜第3のサブCPU、28a〜28c…コイル、29…開度制御部、31…可動鉄芯変圧器、32…1次コイル、33a…第1の2次コイル、33b…第2の2次コイル、34…差動トランス、35…計測部、36…発振部、37…減算部、38…位置演算部、39a…第1の振幅値算出部、39b…第2の振幅値算出部、40…除算部、41…位置情報演算部、100…ガスタービン制御システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブの開度に連動する可動鉄芯と、前記可動鉄芯の周囲に配置される1次コイルと、前記1次コイルに対応して設けられる2つの2次コイルと、を有する差動トランスより、前記1次コイル及び前記2つの2次コイルに対する前記可動鉄芯の位置が変化する場合に、電源から前記1次コイルに加えられる励磁電圧の電圧値及び前記励磁電圧によって前記2つの2次コイルに生じる誘起電圧の電圧値が入力される入力部と、
前記2つの2次コイルのそれぞれの誘起電圧から求められた前記誘起電圧の電圧値の差を前記励磁電圧の電圧値で除して、前記可動鉄芯の位置を示す情報を演算する位置演算部と、
演算された前記可動鉄芯の位置に基づいて、前記バルブの開度を求め、前記バルブの開度を指示する開度指示値を、前記バルブの開度を制御する開度制御部に出力する出力部と、を備えることを特徴とするガスタービン制御装置。
【請求項2】
請求項1記載のガスタービン制御装置において、
前記位置演算部は、
前記1次コイルから供給される前記励磁電圧の電圧値から第1の振幅値を算出する第1の振幅値算出部と、
前記2つの2次コイルから供給される前記誘起電圧の電圧値のうち、一の電圧値から他の電圧値を減じて得られる差分値から第2の振幅値を算出する第2の振幅値算出部と、
前記第2の振幅値を前記第1の振幅値によって除して除算値を得る除算部と、
前記除算値に基づいて、前記可動鉄芯の位置を演算し、前記可動鉄芯の位置を示す情報を出力する位置情報演算部と、を備えることを特徴とするガスタービン制御装置。
【請求項3】
請求項2記載のガスタービン制御装置において、
前記開度制御部は、電磁力によって前記バルブの開度を制御するコイルによって形成されることを特徴とするガスタービン制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−256174(P2010−256174A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106697(P2009−106697)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】