説明

ガスタービン用のモデルに基づく空気/燃料協調制御装置

【課題】ガスタービンの燃料制御装置及び燃焼用空気制御装置有する制御システムを提供する。
【解決手段】空気/燃料協調制御装置13及び関連方法は、燃料制御装置23、燃焼用空気制御装置25及び定常空気対燃料モデル15を提供する。燃料制御装置は燃料制御出力信号33を生成し、燃焼用空気制御装置は燃焼用空気制御出力信号47を生成する。燃料制御装置は、第1及び第2ループ制御信号の少なくとも1つに基づいて予備燃料制御信号41を決定し、予備燃料制御信号に基づいて燃料制御出力信号を決定する。定常空気対燃料モデルは、予備燃料制御信号を処理して、予想定常燃焼用空気制御信号53を決定する。燃焼用空気制御装置は、第3ループ制御信号37c及び第4ループ制御信号37cの少なくとも1つに基づいて予備燃焼用空気制御信号51を決定し、予備燃焼用空気制御信号及び予想定常燃焼用空気制御信号に基づいて燃焼用空気制御出力信号を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの制御システムに関し、より詳細には、燃料制御装置及び燃焼用空気制御装置の両方を有する制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは一般に発電機に連結されて、発電機を駆動する。クロスチャンネル制御装置を用いて、ガスタービンの燃焼室に供給される燃料及び空気の量を制御することが知られている。既知のクロスチャンネル制御装置は、燃料供給制御装置への入力であるタービン速度誤差信号に作用する。そのようなクロスチャンネル制御装置は速度誤差信号を処理し、その結果処理された速度誤差信号はタービン排気温度誤差信号に付加される。タービン排気温度誤差信号と処理された速度誤差信号の合計は、伝達関数を用いて空気供給制御装置によって処理されて、燃焼室に供給される空気を制御する制御信号を生成する。例えば、米国特許第5,487,265号(1996年1月30日)及び米国特許第5,636,507号(1997年6月10日)を参照のこと。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5487265号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様によれば、本発明はガスタービンの制御システムを提供する。制御システムは、燃料制御アクチュエータ及び燃焼用空気制御アクチュエータを含む。空気/燃料協調制御装置(CAF)は、燃料制御アクチュエータ及び燃焼用空気制御アクチュエータの動作を制御する。空気/燃料協調制御装置は、複数のガスタービン状態入力信号を受信し、入力信号に基づいて、第1誤差信号、第2誤差信号、第3誤差信号及び第4誤差信号を測定する。空気/燃料協調制御装置は、燃料制御装置、燃焼用空気制御装置及び定常空気対燃料モデルを含む。燃料制御装置は、燃料制御出力信号を燃料制御アクチュエータに提供して、燃料制御アクチュエータの動作を制御する。燃料制御装置は、第1ループ制御信号を得るために第1伝達関数を用いて第1誤差信号を処理し、第2ループ制御信号を得るために第2伝達関数を用いて第2誤差信号を処理する。燃料制御装置は、第1ループ制御信号及び第2ループ制御信号の少なくとも1つに基づいて予備燃料制御信号を決定し、予備燃料制御信号に基づいて燃料制御出力信号を決定する。燃焼用空気制御装置は、燃焼用空気制御出力信号を燃焼用空気制御アクチュエータに提供して、燃焼用空気制御アクチュエータの動作を制御する。定常空気対燃料モデルは、燃料制御装置と通信し、予備燃料制御信号を処理して予想定常燃焼用空気制御信号を決定する。燃焼用空気制御装置は、第3ループ制御信号を得るために第3伝達関数を用いて第3誤差信号を処理し、第4ループ制御信号を得るために第4伝達関数を用いて第4誤差信号を処理する。燃焼用空気制御装置は、第3ループ制御信号及び第4ループ制御信号の少なくとも1つに基づいて予備燃焼用空気制御信号を決定し、予備燃焼用空気制御信号及び予想定常燃焼用空気制御信号に基づいて燃焼用空気制御出力信号を決定する。
【0005】
別の態様によれば、本発明はガスタービンの空気供給及び燃料供給を制御する方法を提供する。第1誤差信号は、ガスタービンの第1状態に基づいて生成される。第2誤差信号は、ガスタービンの第2状態に基づいて生成される。第3誤差信号は、ガスタービンの第3状態に基づいて生成される。第4誤差信号は、ガスタービンの第4状態に基づいて生成される。第1誤差信号は、第1ループ制御信号を得るために第1伝達関数に従って処理される。第2誤差信号は、第2ループ制御信号を得るために第2伝達関数に従って処理される。第3誤差信号は、第3ループ制御信号を得るために第3伝達関数に従って処理される。第4誤差信号は、第4ループ制御信号を得るために第4伝達関数に従って処理される。予備燃料制御信号は、第1ループ制御信号及び第2ループ制御信号の少なくとも1つに基づいて生成される。燃料制御出力信号は、予備燃料制御信号に基づいて生成される。燃料制御アクチュエータは、燃料制御出力信号に基づいて燃料流量を調整する。定常空気対燃料モデルが提供される。定常空気対燃料モデルは、予備燃料制御信号から、予想定常燃焼用空気制御信号を生成する。予備燃焼用空気制御信号は、第3ループ制御信号及び第4ループ制御信号の少なくとも1つに基づいて生成される。燃焼用空気制御出力信号は、予備燃焼用空気制御信号及び予想定常燃焼用空気制御信号に基づいて生成される。燃焼用空気制御出力信号は、燃焼用空気制御アクチュエータに提供される。燃焼用空気制御アクチュエータは、燃焼用空気制御出力信号に基づいて燃焼用空気の量を調整する。
【0006】
本発明の前述及びその他の態様は、添付図面を参照しながら以下の説明を読むことで本発明に関わる当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ガスタービン及びガスタービン用制御システムの概略図である。
【図2】入口案内翼位置対燃料ストローク基準を示すグラフである。
【図3】ガスタービン及びガスタービン用制御システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、例示的実施形態が示される添付図面を参照して、本発明の特徴及び態様を以下により完全に説明する。できる限り、同一又は同様の部品を参照するために、図面を通して同一の参照番号を使用する。しかしながら、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。これらの例示的実施形態は、本開示が完全且つ完璧であるように、且つ当業者に本発明の技術的範囲を十分に伝達するように提供される。
【0009】
様々な信号が後述される。当然のことながら、信号は、アナログ信号、デジタル信号、又はレジスタ等の記憶場所に保存されたデータ値であってよい。様々な回路及び回路の一部が後述される。当然のことながら、回路及び回路の一部は、個別電気部品、集積回路を介して、且つ/又はプロセッサによるプログラム命令の実行によって実施できる。
【0010】
本発明の技術的効果は、ヘビーデューティガスタービンの制御に使用される空気/燃料協調(CAF)制御機能の改善である。CAF機能は、希薄ブローアウト、排気過温度、及び圧縮機サージのような問題を回避すべく、系統周波数過渡状態中に空気及び燃料の制御を協調させる。
【0011】
空気/燃料協調制御装置を備えた既知のガスタービンの課題は、空気供給及び燃料供給制御装置への入力の協調が必ずしもそれらの出力、空気及び燃料需要それぞれを協調させるわけではないことである。この理由の1つは、タービン速度誤差とタービン排気温度誤差との関係が直観的ではなく、クロスチャンネル制御装置の設計及び調整を困難にするからである。もう1つの理由は、燃料供給制御装置内の制約がタービン速度誤差を差し迫った燃料供給変化の不十分な指標にするからである。
【0012】
既知のクロスチャンネル制御装置は、速度誤差と排気温度誤差を関連付ける「制御誤差空間」で作動する。しかしながら、速度誤差と排気温度誤差との正確な関係は決定するのが難しい。より良い方法は、制御チャンネル内の誤差信号に作用する各制御伝達関数の後に位置する「要求空間」で作動するクロスチャンネル制御装置を備えることである。要求空間内のクロスチャンネル制御装置は、空気及び燃料供給を協調させるために、定常空気対燃料モデル等の空気と燃料との直接的関係を利用できる。空気と燃料との正確な関係は、誤差信号間の正確な関係よりも容易に決定できる。従って、要求空間に位置するクロスチャンネル制御装置を有する空気/燃料協調制御装置は、既知のクロスチャンネル制御装置よりも容易に設計及び調整できる。要求空間内にクロスチャンネル制御装置を有することは、燃料供給制御装置内の制約を反映することを可能にもする。
【0013】
図1は、ガスタービン11及びガスタービン用の空気/燃料協調制御装置13の概略図であり、制御装置13の要求空間部分で作動するクロスチャンネル制御装置を含んでいる。図1のクロスチャンネル制御装置は、定常空気対燃料モデル15である。更に以下で後述するように、定常空気対燃料モデル15は、ガスタービンの燃料供給と、定常状態下での燃焼用空気供給との関係を提供する。
【0014】
ガスタービン11は、ガスタービンに関する様々な状態を検知する複数のセンサ17を有する。センサの例としては、ガスタービンの回転速度を検知する速度センサ、ガスタービンの排気ガスの温度を検知する温度センサ、ガスタービンによって駆動される発電機19によって供給される電力を検知する電力レベルセンサ、及びガスタービンの圧縮機圧力を検知する圧力センサが挙げられる。ガスタービンに関する更なる状態を検知する追加のセンサは、要求に応じて提供できる。ガスタービンに関する状態の推定は、直接センサに代わり得る。センサ17は、制御装置13への入力としてフィードバック信号21を提供する。
【0015】
次に、空気/燃料協調制御装置13について詳細に述べる。空気/燃料協調制御装置13は、クロスチャンネル制御装置(例えば、定常空気対燃料モデル15)、燃料制御装置23及び燃焼用空気制御装置25等のサブ制御装置を含む。制御装置13は、電子制御装置であってよく、1つ以上のプロセッサを含んでもよい。例えば、制御装置13は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、個別論理回路等の1つ又はそれ以上を含む。制御装置13は、メモリを更に含んでもよく、制御装置に本明細書においてそれに属するものとされる機能性を提供させるプログラム命令を保存できる。メモリは、例えば、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ等の1つ以上の揮発性、不揮発性、磁気、光学、電気媒体を含み得る。制御装置13は、制御装置への様々なアナログ入力を処理する1つ以上のアナログ・デジタル(A/D)変換器を更に含んでもよい。
【0016】
制御装置13は、誤差計算器27a〜27fを含む。各センサ17からのフィードバック信号21は、各誤差計算器27a〜27fに入力されて、関連する基準値29a〜29fと比較される。誤差計算器27a〜27fの出力は誤差信号31a〜31fであり、検知された状態と基準値との差を表す。例えば、ガスタービンの検知された回転速度を速度基準と比較して回転速度誤差信号を決定することができ、ガスタービンの検知された排気ガス温度を温度基準と比較して排気温度誤差信号を決定できる。基準値29a〜29fは、境界値又は目標値であってよい。境界値は、例えば、最高温度又は圧力、或いは最低速度等の、できれば超えるべきではない限界作動状態を決めるものである。目標値は、所望速度等の所望の作動状態を決めるものである。
【0017】
図1において、3つの誤差計算器27a〜27cは、それぞれ燃料制御装置23への入力として誤差信号31a〜31cを提供し、3つの誤差計算器27d〜27fは、それぞれ燃焼用空気制御装置25への入力として誤差信号31d〜31fを提供する。当然のことながら、3つ以上又は以下の誤差計算器が燃料制御装置23及び燃焼用空気制御装置25に誤差信号を提供してもよく、燃料制御装置及び燃焼用空気制御装置は同数の関連する誤差計算器を備える必要はない。
【0018】
誤差信号31a〜31cは、燃料制御出力信号33を生成するために、燃料制御装置23によって処理される。燃料制御装置23は、ガスタービン上の燃料制御アクチュエータ35に燃料制御出力信号33を提供して、燃料制御アクチュエータの動作を制御する。燃料制御アクチュエータ35は、燃料制御出力信号33に応答して、ガスタービンの燃焼室に提供される燃料の量を制御する。燃料制御アクチュエータ35は、例えば、燃料制御装置23からの燃料ストローク基準(FSR)信号に基づいて、1つ以上の燃料弁の燃料ストローク63を制御できる。燃料制御装置23は、燃料制御アクチュエータ35の動作を制御することによって、燃焼領域に提供される燃料の量を制御する。
【0019】
燃料制御装置23は、各伝達関数K(s)〜K(s)を用いて誤差信号31a〜31cを処理する。伝達関数K(s)〜K(s)は、各々が比例積分(PI)制御スキーム、比例積分微分(PID)制御スキーム、又は要求に応じてその他の制御スキームを実施できる。
【0020】
伝達関数K(s)〜K(s)からの出力であるループ燃料制御信号37a〜37cは、燃料制御装置23の選択ロジック39に提供される。燃料制御装置23は、選択ロジック39を介して、ループ燃料制御信号37a〜37cの少なくとも1つに基づいて予備燃料制御信号41を決定する。選択ロジック39は、予備燃料制御信号41としてループ燃料制御信号37a〜37cの1つを選択するためのアルゴリズムを提供できる。選択ロジックは、予備燃料制御信号41としてループ燃料制御信号を選択する際に1つのループ燃料制御信号を他のものよりも優先させる、即ち信号を比較してどちらがより大きい/より小さい値を有するかを決定できる。選択ロジックの例としては、max(min(37a,37b),37c)を挙げることができる。この場合、ループ燃料制御信号37a及び37bが比較され、2つ(37a,37b)の小さい方が更に信号37cと比較され、大きな信号が予備燃料制御信号41として選択される。そのようなアルゴリズムは、最高温度/圧力、最低運転速度等のガスタービン境界条件を決めるときに役立つ可能性がある。選択ロジック39は、境界条件の優先権に基づいてループ燃料制御信号37a〜37cを比較し、ガスタービンが境界条件の一部又は全部の範囲内で作動するように予備燃料制御信号41としてループ燃料制御信号を選択できる。必要に応じて、選択ロジックは、予備燃料制御信号41を得るために、ループ燃料制御信号37a〜37cの2つ以上を数学的に結合(例えば、加算、平均化など)できる。
【0021】
燃料制御装置23は、アクチュエータダイナミクス補償器43を選択的に含む。アクチュエータダイナミクス補償器43は、予備燃料制御信号41を処理して、燃料制御アクチュエータ35と燃焼用空気制御アクチュエータ45との応答特性差を補償する。燃焼用空気制御アクチュエータ45は、ガスタービン11の燃焼室に提供される空気の量を制御する。燃料制御アクチュエータ35及び燃焼用空気制御アクチュエータ45は、異なる応答特性を有する可能性がある。例えば、燃料制御アクチュエータ35は、燃焼用空気制御アクチュエータ45が燃焼室に提供される空気の量を変更できるのよりもより迅速に燃料流量を変更することが可能である。この場合、アクチュエータダイナミクス補償器43は、遅延を予備燃料制御信号41に追加することによって燃料制御出力信号33の変更を遅延させることができる。アクチュエータダイナミクス補償器43は任意であって、実施形態ではアクチュエータダイナミクス補償器43を欠いており、予備燃料制御信号41は燃料制御出力信号33と同等又は同一である。
【0022】
燃焼用空気制御装置25に着目すると、燃焼用空気制御装置は燃焼用空気制御出力信号47を生成する。燃焼用空気制御装置25は、ガスタービン11上の燃焼用空気制御アクチュエータ45に燃焼用空気制御出力信号47を提供して、燃焼用空気制御アクチュエータの動作を制御する。燃焼用空気制御アクチュエータ45は、燃焼用空気制御出力信号47に応答して、ガスタービン11の燃焼室に提供される空気の量を制御する。燃焼用空気制御アクチュエータ45は、例えば、ガスタービン11の入口案内翼65の位置(例えば、角度)を制御できる。燃焼用空気制御装置25は、燃焼用空気制御アクチュエータ45の動作を制御することによって、燃焼領域に提供される空気の量を制御する。
【0023】
燃焼用空気制御装置25は、各伝達関数K(s)〜K(s)を用いて誤差信号31d〜31fを処理する。伝達関数K(s)〜K(s)と同様に、伝達関数K(s)〜K(s)は、例えばPI又はPID制御スキーム等の所望の制御スキームを実施できる。ループ燃焼用空気制御信号37d〜37fは、伝達関数K(s)〜K(s)から出力され、燃焼用空気制御装置25内の選択ロジック49に提供される。燃焼用空気制御装置25は、選択ロジック49を介して、予備燃焼用空気制御信号51を決定する。燃料制御装置23内の選択ロジック39と同様に、選択ロジック49は、予備燃焼用空気制御信号51としてループ燃焼用空気制御信号37d〜37fの1つを選択するためのアルゴリズムを提供できる。選択ロジックは、予備燃焼用空気制御信号51としてループ燃焼用空気制御信号を選択する際に1つのループ燃焼用空気制御信号を他のものよりも優先させる、即ち信号を比較してどちらがより大きい/より小さい値を有するかを決定できる。選択ロジックの例としては、max(min(37d,37e),37f)を挙げることができる。選択ロジックは、排気温度、圧縮機圧力比等に関連するガスタービンの作動境界条件に基づいて決めることができる。選択ロジック49は、境界条件の優先権に基づいてループ燃焼用空気制御信号37d〜37fを比較し、ガスタービンが境界条件の一部又は全部の範囲内で作動するように予備燃焼用空気制御信号51としてループ燃焼用空気制御信号を選択できる。必要に応じて、選択ロジックは、予備燃焼用空気制御信号51を得るために、ループ燃焼用空気制御信号37d〜37fの2つ以上を数学的に結合(例えば、加算、平均化など)できる。
【0024】
空気/燃料協調制御装置13の要求空間部分で作動する定常空気対燃料モデル15は、燃料制御装置23及び燃焼用空気制御装置25の両方と通信する。定常空気対燃料モデル15は、燃料制御装置23から予備燃料制御信号41を受信し、予備燃料制御信号41に基づいて予想定常燃焼用空気制御信号53を計算する。定常空気対燃料モデル15は、予想定常燃焼用空気制御信号53を燃焼用空気制御装置25に提供する。図には示されていないが、定常空気対燃料モデル15は、実際の定常状態への自動適応を含んでもよい。換言すれば、モデルは、燃焼用空気制御出力信号47と予想定常燃焼用空気制御信号との定常差を除去するために自動的に調整できる。この適応は、定常空気対燃料モデル15の精度を向上させる。
【0025】
燃焼用空気制御装置25は、定常空気対燃料モデル15から予想定常燃焼用空気制御信号53を受信する。燃焼用空気制御装置25は、予備燃焼用空気制御信号51及び予想定常燃焼用空気制御信号53の一方又は両方に基づいて燃焼用空気制御出力信号47を決定する。例えば、燃焼用空気制御装置25は、予備燃焼用空気制御信号51及び予想定常燃焼用空気制御信号53を結合して、燃焼用空気制御出力信号47を決定するための加算回路55を含む。予備燃焼用空気制御信号51及び予想定常燃焼用空気制御信号53は加算回路55によって加算することができ、加算回路55の出力は燃焼用空気制御出力信号47である。選択的に、図1に示すように、燃焼用空気制御装置25は、加算回路55からの出力を処理して、燃料制御アクチュエータ35と燃焼用空気制御アクチュエータ45との応答特性差を補償するアクチュエータダイナミクス補償器57を含む。アクチュエータダイナミクス補償器が存在するならば、アクチュエータダイナミクス補償器57の出力は、加算回路55の出力そのままではなく、燃焼用空気制御出力信号47である。
【0026】
予備燃焼用空気制御信号51及び予想定常燃焼用空気制御信号53を結合するために、加算回路55以外のその他の方法を使用してもよい。例えば、状況に応じて一方の入力に他方よりも重みを加えるアルゴリズムを介して結合を行なってもよい。
【0027】
予想定常燃焼用空気制御信号53は、燃料制御装置23及び燃焼用空気制御装置25の動作を協調させる役目をする。そのような協調は、ガスタービンの様々な悪条件が発生する可能性を削減できる。例えば、そのような協調は、希薄ブローアウト、排気過温度及び圧縮機サージの可能性を削減できる。
【0028】
定常空気対燃料モデル15は、予備燃料制御信号41から予想定常燃焼用空気制御信号53を計算するためにそのモデルを使用する。図2に示すように、空気対燃料モデル59は、入口案内翼位置(IGV)を燃料ストローク基準(FSR)と関連付けることができる。或いは、空気対燃料モデルは、空気流を燃料流と直接関連付けることができる。予備燃料制御信号41は、燃料制御アクチュエータ35を直接的又は間接的に制御する。所定の予備燃料制御信号41に関して、定常空気対燃料モデル15は、空気対燃料モデルを用いて対応する予想定常燃焼用空気制御信号53を決定及び出力する。当然のことながら、空気対燃料モデルは、数学的方程式を用いたアルゴリズムを介して、ルックアップテーブルを介して、又はその他の既知のモデリング技術を介して、実施できる。
【0029】
図2に示すように、モデル59は、FSRとIGVとの定常相関関係を提供できる。定常空気対燃料モデル15は、予想定常燃焼用空気制御信号53を出力して、一般に図示の定常経路61に沿ってガスタービン11の動作を維持し、高速過渡状態(定常経路61からの高速偏差)を補償する。図2に湾曲した矢印で図式的に示す、定常経路からの偏差、例えば所定のFSRに対して高すぎる又は低すぎるIGV値は、希薄ブローアウト、排気過温度及び圧縮機サージ等の悪条件の発生をもたらす可能性がある。
【0030】
図2において、定常経路61は区分的線形である。定常経路61は、IGVが低範囲のFSRにわたって一定である水平部分を有する。水平部分の後、定常経路61は、FSRが増加するにつれて一定の右上がり斜線を有する。当然のことながら、定常経路は、湾曲部分、或いは直線及び湾曲部分の組み合わせを有する。
【0031】
図3は、ガスタービン11及び空気/燃料協調制御装置13の概略図である。図3に示す空気/燃料協調制御装置13は、図1に示すものと同様である。しかしながら、図3において、予想定常燃焼用空気制御信号53は、燃焼用空気制御装置25に直接ではなく、境界計算器67に提供される。境界計算器67は、予想定常燃焼用空気制御信号53に付加される可変バイアスを決定する。境界計算器67は、予想定常燃焼用空気制御信号53にバイアスを加減算して、予備燃焼用空気制御信号51に対する上下限境界を出力する。上下限境界信号69は、予備燃焼用空気制御信号と共にクランプ部分71に提供される。クランプ部分の出力73は、上下限境界信号69によってクランプされた予備燃焼用空気制御信号51である。予備燃焼用空気制御信号51が境界内にある場合、クランプ部分の出力73は予備燃焼用空気制御信号に等しい。予備燃焼用空気制御信号51が上限境界より上又は下限境界より下にある場合、クランプ部分の出力73はそれぞれ上限又は下限境界に等しい。
【0032】
任意のアクチュエータダイナミクス補償器57を欠いた図3による実施形態では、クランプ部分の出力73は、燃焼用空気制御出力信号47である。任意のアクチュエータダイナミクス補償器57を含む図3による実施形態では、クランプ部分の出力73はアクチュエータダイナミクス補償器57に提供され、アクチュエータダイナミクス補償器が出力73を処理して、燃料制御アクチュエータ35と燃焼用空気制御アクチュエータ45との応答特性差を補償する。
【0033】
境界を決定するのに使用されるバイアスは可変である。境界計算器67は、予想定常燃焼用空気制御信号53の変化率を分析する。予想定常燃焼用空気制御信号53の変化率が小さい場合、定常又は定常近傍状態が生じ、バイアスは比較的大きく設定される。バイアスを比較的大きく設定することによって、伝達関数K(s)〜K(s)が、予想定常燃焼用空気制御信号53よりも、燃焼用空気制御出力信号47の制御において優位を占めることができる。予想定常燃焼用空気制御信号53の変化率が大きい場合、高速過渡状態が生じ、バイアスは比較的小さく又は0に設定される。バイアスマージンを比較的小さく設定することによって、予想定常燃焼用空気制御信号53が、伝達関数K(s)〜K(s)よりも、燃焼用空気制御出力信号47の制御において優位を占めることができる。高速過渡状態中、ループ燃焼用空気制御信号37d〜37fを無視し、モデル59に従った予想定常燃焼用空気制御信号53に基づいて燃焼用空気制御出力信号47を制御することが望ましい。
【0034】
当然のことながら、クランプ部分71は完全に選択ロジック49の下流ではなく、それに組み込まれてもよい。ループ燃焼用空気制御信号37d〜37fの1つ以上は、クランプ部分の下流で作動する。例えば、クランプ部分への入力は、max(37d,37e)となるのに対して、クランプ部分の出力は37fと比較されて、両者の小さい方がアクチュエータダイナミクス補償器への入力となる。これにより、境界計算器67からの上下限境界信号69よりも37fを生成する制御ループに高い優先権を効果的に与える。
【0035】
要約して言えば、本発明は、ガスタービンのためのモデルに基づく空気/燃料協調制御装置を提供する。
【0036】
本開示が一例であり、詳細を追加、修正又は省略することにより、本開示に含まれる教示の正当な範囲から逸脱することなく様々な変更が可能であることは明白である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲が必然的に限定される範囲を除けば、本開示の特定の詳細に限定されることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(11)の制御システムであって、
燃料制御アクチュエータ(35)と、
燃焼用空気制御アクチュエータ(45)と、
前記燃料制御アクチュエータ(35)及び前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)の動作を制御する空気/燃料協調制御装置(13)であって、複数のガスタービン(11)状態入力信号を受信し、入力信号に基づいて、第1誤差信号(31a)、第2誤差信号(31b)、第3誤差信号(31d)及び第4誤差信号(31e)を測定する、前記空気/燃料協調制御装置(13)とを含んでおり、
前記空気/燃料協調制御装置(13)は、
燃料制御出力信号(33)を燃料制御アクチュエータ(35)に提供して、前記燃料制御アクチュエータ(35)の動作を制御する燃料制御装置(23)であって、
第1ループ制御信号(37a)を得るために第1伝達関数を用いて前記第1誤差信号(31a)を処理し、第2ループ制御信号(37b)を得るために第2伝達関数を用いて前記第2誤差信号(31b)を処理し、
前記第1ループ制御信号(37a)及び前記第2ループ制御信号(37b)の少なくとも1つに基づいて予備燃料制御信号(41)を決定し、前記予備燃料制御信号(41)に基づいて前記燃料制御出力信号(33)を決定する、前記燃料制御装置(23)と、
燃焼用空気制御出力信号(47)を前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)に提供して、前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)の動作を制御する燃焼用空気制御装置(25)と、
前記燃料制御装置(23)と通信し、前記予備燃料制御信号(41)を処理して予想定常燃焼用空気制御信号(53)を決定する定常空気対燃料モデルとを含んでおり、
前記燃焼用空気制御装置(25)は、第3ループ制御信号(37d)を得るために第3伝達関数を用いて前記第3誤差信号(31d)を処理し、第4ループ制御信号(37e)を得るために第4伝達関数を用いて前記第4誤差信号(31e)を処理し、
前記燃焼用空気制御装置(25)は、前記第3ループ制御信号(37d)及び前記第4ループ制御信号(37e)の少なくとも1つに基づいて予備燃焼用空気制御信号(51)を決定し、前記予備燃焼用空気制御信号(51)及び前記予想定常燃焼用空気制御信号(53)に基づいて前記燃焼用空気制御出力信号(47)を決定する、制御システム。
【請求項2】
前記空気・燃料協調制御装置(13)は、前記予備燃焼用空気制御信号(51)に適用される上下限境界を決定するための境界計算器(67)を含んでおり、前記境界計算器(67)は、前記予想定常燃焼用空気制御信号(53)の変化率に基づいて前記上下限境界を決定する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記定常空気対燃料モデル(15)は、実際の定常状態に基づいて自動的に調整される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記ガスタービン(11)状態入力信号の少なくとも1つは、推定された状態に基づいている、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記ガスタービン(11)状態入力信号の少なくとも1つは、前記ガスタービン(11)に関するセンサ(17)によって提供される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項6】
前記ガスタービン(11)に関する前記センサ(17)は、前記ガスタービン(11)の回転速度を検知し、速度信号(37c)を生成する速度センサ(17)と、前記ガスタービン(11)の排気温度を検知し、温度信号(37c)を生成する温度センサ(17)とを含む、請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記燃料制御装置(23)は、前記燃料制御アクチュエータ(35)と前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)との応答特性差を補償するアクチュエータダイナミクス補償器(43)を含んでおり、前記アクチュエータダイナミクス補償器(43)は、前記予備燃料制御信号(41)を処理して、前記燃料制御出力信号(33)を決定する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項8】
前記燃料制御出力信号(33)を決定する際、前記アクチュエータダイナミクス補償器(43)は、遅延を前記予備燃料制御信号(41)に追加する、請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記燃料制御出力信号(33)は、前記予備燃料制御信号(41)に等しい、請求項1に記載の制御システム。
【請求項10】
前記燃焼用空気制御装置(25)は、前記燃料制御アクチュエータ(35)と前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)との応答特性差を補償するアクチュエータダイナミクス補償器(43)を含む、請求項1に記載の制御システム。
【請求項11】
前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)は、入口案内翼の位置を制御する、請求項1に記載の制御システム。
【請求項12】
前記燃料制御アクチュエータ(35)は、燃料ストローク(63)を制御しており、前記定常空気対燃料モデル(15)は、燃料ストローク(63)基準と前記入口案内翼の前記位置との定常相関関係を提供する、請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
ガスタービン(11)の空気供給及び燃料供給を制御する方法であって、
前記ガスタービン(11)の第1状態に基づいて第1誤差信号(31a)を生成するステップと、
前記ガスタービン(11)の第2状態に基づいて第2誤差信号(31b)を生成するステップと、
前記ガスタービン(11)の第3状態に基づいて第3誤差信号(31d)を生成するステップと、
前記ガスタービン(11)の第4の検知された状態に基づいて第4誤差信号(31e)を生成するステップと、
第1ループ制御信号(37a)を得るために第1伝達関数に従って前記第1誤差信号(31a)を処理するステップと、
第2ループ制御信号(37b)を得るために第2伝達関数に従って前記第2誤差信号(31b)を処理するステップと、
第3ループ制御信号(37d)を得るために第3伝達関数に従って前記第3誤差信号(31d)を処理するステップと、
第4ループ制御信号(37e)を得るために第4伝達関数に従って第4誤差信号(31e)を処理するステップと、
前記第1ループ制御信号(37a)及び前記第2ループ制御信号(37b)の少なくとも1つに基づいて、予備燃料制御信号(41)を生成するステップと、
前記予備燃料制御信号(41)に基づいて燃料制御出力信号(33)を生成するステップと、
前記燃料制御出力信号(33)を燃料制御アクチュエータ(35)に提供するステップと、
前記燃料制御アクチュエータ(35)によって、前記燃料制御出力信号(33)に基づいて燃料流量を調整するステップと、
定常空気対燃料モデル(15)を提供するステップと、
前記定常空気対燃料モデル(15)によって前記予備燃料制御信号(41)から、予想定常燃焼用空気制御信号(53)を生成するステップと、
前記第3ループ制御信号(37d)及び前記第4ループ制御信号(37e)の少なくとも1つに基づいて、予備燃焼用空気制御信号(51)を生成するステップと、
前記予備燃焼用空気制御信号(51)及び前記予想定常燃焼用空気制御信号(53)に基づいて、燃焼用空気制御出力信号(47)を生成するステップと、
前記燃焼用空気制御出力信号(47)を燃焼用空気制御アクチュエータ(45)に提供するステップと、
前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)によって、前記燃焼用空気制御出力信号(47)に基づいて燃焼用空気の量を調整するステップとを含む、方法。
【請求項14】
実際の定常状態に基づいて前記定常空気対燃料モデル(15)を自動的に調整するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記燃料制御アクチュエータ(35)と前記燃焼用空気制御アクチュエータ(45)との応答特性差を補償するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate