説明

ガスタービン発電設備

【課題】大気温度の高い運転環境でも発電機の出力を増加させることができ、ガスタービン出力を有効に利用して発電することができるガスタービン発電設備を提供する。
【解決手段】吸気冷却を行うガスタービン20の軸出力で水冷の発電機30を駆動して発電するガスタービン発電設備10であって、発電機30に空冷熱交換器51から発電機冷却水を供給する水冷冷却系統50に設置した補助熱交換器60と、吸気冷却を行う吸気冷却水供給系統40から吸気冷却水の一部を補助熱交換器60に導入する補助冷却循環流路61とを備え、補助熱交換器60で吸気冷却水により冷却された発電機冷却水が発電機30に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気冷却を行うガスタービンの軸出力で水冷の発電機を駆動して発電するガスタービン発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービン及び発電機の回転軸を連結し、ガスタービンの軸出力で発電機を駆動して発電を行うガスタービン発電設備が知られている。
ガスタービンの出力は、圧縮機に吸入する大気温度が下がると増加する特性を有しているので、吸気冷却を行ってガスタービン出力を増加させることが可能である。従来の吸気冷却は、吸気フィルタを通過した大気が冷却コイルを通過することにより、冷水との熱交換により吸熱されて吸気温度を低下させるものである。
【0003】
一方、発電機側においても発電時の発熱があるため、たとえばケーシング内において、回転体に対する抵抗の小さい水素と冷却水との熱交換による冷却が行われている。このため、発電機の出力能力は、冷却水温度により決まることとなる。
しかし、冷却水の冷却には大気との熱交換により冷却水を冷却する空冷式の熱交換器を使用するので、冷却水温度は大気温度の影響を受けて変動し、従って、発電機の出力も大気温度の影響を受けることは避けられない。
【0004】
ガスタービン発電設備に関する従来技術としては、たとえば下記の特許文献1及び2に開示されたものがある。
特許文献1には、外気温度が高い状態でガスタービン出力を意図的に増加した場合、発電機の出力をガスタービン出力に対応して増大させる技術が開示されている。また、特許文献2には、密閉冷却を行うガスタービン発電機のブラックスタートを可能とし、冷却水の安定供給に優れた冷却系統が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−256870号公報
【特許文献2】特開昭61−171833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来のガスタービン発電設備においては、たとえば図4に示すように、同一大気温度において、発電機の能力(破線)がガスタービンの出力(実線)よりも高くなるように設定されている。このため、吸気冷却等によりガスタービン側の出力が高くなると、すなわち吸気冷却により温度低下した大気が圧縮機に吸気されると、発電機側に能力不足となる領域(ハッチング部参照)が生じることとなる。
一方、発電機の出力能力は、大気で冷却する冷却水温度により決まるため、現状では発電機の出力が大気温度の影響を受けることは避けられない。
【0007】
この結果、従来のガスタービン発電設備は、吸気冷却によりガスタービン出力を増加させることは可能であるが、発電機側の出力能力には制限があって負荷をとれないという問題を有している。すなわち、大気温度の高い運転環境になると、ガスタービン側の出力は吸気冷却により増加可能であるが、発電機側の出力はガスタービンの出力増加に追従できないため、ガスタービンの出力を有効に利用した発電ができなくなる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大気温度の高い運転環境でも発電機の出力を増加させることができ、ガスタービン出力を有効に利用して発電することができるガスタービン発電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明に係るガスタービン発電設備は、吸気冷却を行うガスタービンの軸出力で水冷の発電機を駆動して発電するガスタービン発電設備であって、前記発電機に空冷熱交換器から発電機冷却水を供給する水冷冷却系統に設置した補助熱交換器と、前記吸気冷却を行う吸気冷却水供給系統から吸気冷却水の一部を前記補助熱交換器に導入する補助冷却循環流路とを備え、前記補助熱交換器で前記吸気冷却水により冷却された前記発電機冷却水が前記発電機に供給されることを特徴とするものである。
【0009】
このようなガスタービン発電設備によれば、発電機に空冷熱交換器から発電機冷却水を供給する水冷冷却系統に設置した補助熱交換器と、吸気冷却を行う吸気冷却水供給系統から吸気冷却水の一部を補助熱交換器に導入する補助冷却循環流路とを備え、補助熱交換器で吸気冷却水により冷却された発電機冷却水が発電機に供給されるので、外気温度が高い運転状況においては、空冷熱交換器で冷却された発電機冷却水を補助熱交換器で冷却することができる。
すなわち、大気温度の影響を受ける空冷冷却器で発電機冷却水が所望の水温まで冷却できない高外気温の場合でも、吸気冷却水供給系統には冷却装置(たとえばターボ冷凍機)が設けられているので、外気温度の影響を受けることのない吸気冷却水により所望の発電機冷却水温まで冷却することが可能になる。
【0010】
上記の発明において、前記補助熱交換器は前記空冷熱交換器と直列に接続されていることが好ましく、これにより、空冷熱交換器及び補助熱交換器の二段冷却となる。従って、いずれか一方の熱交換器にトラブルが生じても他方の熱交換器により冷却できるため、簡単で信頼性の高い装置構成となる。
このように、空冷熱交換器及び補助熱交換器の二段冷却とする場合には、補助熱交換器のバイパス流路を設けることが好ましい。このようなバイパス流路は、たとえば外気温度が低い場合のように、補助熱交換器を使用しなくてもよい運転状況において、圧力損失の大きい補助熱交換器をバイパスして流す発電機冷却水の水冷冷却系統を形成できる。
【0011】
上記の発明において、前記補助熱交換器が前記空冷熱交換器と並列に接続されていることが好ましく、これにより、運転状況に応じて熱交換器の使用を適宜選択することで、効率のよい運転が可能になる。
【発明の効果】
【0012】
上述した本発明のガスタービン発電設備によれば、外気温度が高い運転状況では、空冷熱交換器で冷却された発電機冷却水を補助熱交換器でさらに冷却することができるため、大気温度の高い運転環境でも発電機の出力を増加させることができるようになり、ガスタービン出力を有効に利用した発電が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るガスタービン発電設備の一実施形態を示す系統図である。
【図2】空冷熱交換器及び補助熱交換器を直列に接続した構成例を示す発電機冷却水の水冷冷却系統図である。
【図3】空冷熱交換器及び補助熱交換器を並列に接続した構成例を示す発電機冷却水の水冷冷却系統図である。
【図4】ガスタービン出力能力及び発電機出力能力について、大気温度を横軸にして縦軸に出力を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るガスタービン発電設備の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示す実施形態のガスタービン発電設備10は、吸気冷却を行うガスタービン20の軸出力で水冷の発電機30を駆動して発電する。
ガスタービン20は、圧縮機21と、燃焼器(ガスタービン燃焼器)22と、タービン23とを具備して構成される原動機の一種であり、燃料の燃焼等で生成された高温のガスでタービン23を回して回転運動エネルギーを得る内燃機関である。
【0015】
圧縮機21は大気中の空気を取り込んで圧縮し、高圧の圧縮空気を吐出する。圧縮機21から吐出された圧縮空気は、燃焼用空気として燃焼器22に取り入れられ、燃焼器22に供給された燃料とともに燃焼して高温の燃焼ガスとなる。この燃焼ガスはタービン23に取り入れられ、動翼及び静翼間を燃焼ガスが流れることにより膨張してタービン23を回転駆動する。
圧縮機21とタービン23との間は主軸24で連結され、さらに、主軸24は発電機30の主軸31とも同軸に連結されている。
【0016】
圧縮機21で圧縮する空気(吸気)は、大気中から吸入された後に吸気フィルタ25、冷却コイル26及びミストエリミネータ27を通過し、粒子状異物等の除去や冷却が行われる。
冷却コイル26は、導入した吸気を冷却水との熱交換により吸気冷却するための熱交換器である。この冷却コイル26には、吸気冷却用の冷水を供給する吸気冷却水供給系統40が接続されている。すなわち、吸気フィルタ25を通過した吸気が冷却コイル26に導入されて通過することにより、吸気は冷水との熱交換により吸熱されるため、吸気温度を低下させることができる。
【0017】
吸気冷却水供給系統40は、たとえばターボ冷凍機のような冷水製造装置41を備え、冷却水配管42で冷却コイル26と接続されている吸気冷却水の循環系統である。
冷水製造装置41から供給される低温の吸気冷却水は、冷却水配管42を通って冷却コイル26に導かれる。冷却コイル26に導かれた吸気冷却水は、吸気との熱交換により温度上昇する。こうして温度上昇した吸気冷却水は、冷却水配管42を通って冷水製造装置41に導かれ、再度の冷却により低温の吸気冷却水となって再循環される。すなわち、吸気冷却水供給系統40は、図示しないポンプにより吸気冷却水が循環して温度変化を繰り返すように形成された閉回路の循環系統である。
【0018】
一方、発電機30の冷却は、発電機冷却水を循環させて冷却する水冷方式とされる。発電機30に発電機冷却水を供給する水冷冷却系統50は、発電機30と空冷熱交換器51との間が冷却水配管52で接続された閉回路の循環流路である。
空冷熱交換器51は、発電機冷却水と大気とを熱交換させることで、発電機30を冷却して温度上昇した発電機冷却水を大気が吸熱して冷却する熱交換器である。
すなわち、水冷冷却系統50は、発電機冷却水が循環して温度変化を繰り返すように形成された閉回路の循環系統である。
【0019】
本実施形態では、発電機30に空冷熱交換器51から発電機冷却水を供給する水冷冷却系統50に、吸気冷却水供給系統40から吸気冷却水の一部を導入する補助熱交換器60が設置されている。この補助熱交換器60は、たとえば図1及び図2に示すように、空冷熱交換器51と直列に接続されている。なお、図2の符号53は、発電機冷却水を循環させるポンプである。
【0020】
本実施形態のガスタービン発電設備10は、吸気冷却を行う吸気冷却水供給系統40から分岐し、吸気冷却水の一部を補助熱交換器60に導入する補助冷却循環流路61を備えている。そして、補助熱交換器60は、空冷熱交換器51で冷却された発電機冷却水をさらに冷却するため、すなわち、大気温度より低温の吸気冷却水を用いて発電機冷却水をより低温に冷却するため、空冷熱交換器51の下流側となる位置に設置されている。
従って、発電機30を冷却する熱交換器部(不図示)には、補助熱交換器60で吸気冷却水により冷却された低温の発電機冷却水が供給される。
【0021】
このように構成されたガスタービン発電設備10は、発電機30に供給する発電機冷却水の水温が、空冷熱交換器51での冷却に加えて、補助熱交換器60において吸気冷却水によりさらに冷却された低温となる。このようにして、補助熱交換器60による発電機冷却水を行えば、外気温度が高い運転状況においても、空冷熱交換器51で冷却された発電機冷却水を、冷水製造装置41から安定した水温の冷水供給を受ける補助熱交換器60でさらに冷却できるため、外気温度の影響を受けない発電機冷却が可能となる。
すなわち、大気温度の影響を受ける空冷熱交換器51で発電機冷却水が所望の水温まで冷却できない高外気温の場合でも、吸気冷却水供給系統40には冷水の安定供給が可能な冷水製造装置41を備えているので、外気温度の影響を受けることのない吸気冷却水により所望の発電機冷却水温まで確実に冷却することができる。
【0022】
この結果、上述した実施形態のガスタービン発電設備10において、外気温度が高い運転状況では、空冷熱交換器51で冷却された発電機冷却水を補助熱交換器60でさらに冷却することができるため、大気温度の高い運転環境でも発電機30の出力を増加させることが可能になり、従って、ガスタービン出力を有効に利用して発電できる。
【0023】
ところで、上述した補助熱交換器60は、図2に示すように、空冷熱交換器51と直列に接続されたものでもよいし、あるいは、図3に示すように、空冷熱交換器51と並列に接続されたものでもよい。
図2に示す直列配置の場合、空冷熱交換器51及び補助熱交換器60による二段冷却となる。従って、空冷熱交換器51または補助熱交換器60のいずれか一方にトラブルが生じても、他方の正常な熱交換器により発電機冷却水の冷却を継続できるため、流路切換等が不要な簡単で信頼性の高い装置構成となる。
【0024】
また、空冷熱交換器51及び補助熱交換器60の二段冷却とする場合には、補助熱交換器60のバイパス流路70を設けることが好ましい。このようなバイパス流路70は、たとえば外気温度が低い場合のように、空冷熱交換器51で十分な冷却能力を得られるために補助熱交換器60の使用が不要となるような運転状況で使用される。
【0025】
具体的には、通常運転時に閉とする開閉弁71を開操作するとともに、通常運転時に開とする補助熱交換器元弁72を閉じることにより、圧力損失の大きい補助熱交換器60をバイパスして流す発電機冷却水の水冷冷却系統50を形成できる。このように、圧力損失の低い水冷冷却系統50にしてガスタービン発電設備10を運転すれば、ポンプ53の消費動力を低減できる。
【0026】
また、補助熱交換器60及び空冷熱交換器51を並列に接続する場合には、ガスタービン発電設備10の運転状況に応じて、発電機冷却水の冷却に使用する熱交換器を適宜選択することで、効率のよい運転が可能になる。
具体的には、たとえば補助熱交換器60及び空冷熱交換器51の上流側及び下流側に流路切換弁54,55を設置し、大気温度が低い場合は空冷熱交換器51を選択使用して発電機冷却水を冷却し、大気温度が高い場合は補助熱交換器60を選択使用して発電機冷却水を冷却する。
【0027】
また、補助熱交換器60及び空冷熱交換器51の上流側及び下流側に設置する弁配置や弁構造によっては、補助熱交換器60または空冷熱交換器51のいずれか一方を選択使用するだけでなく、補助熱交換器60及び空冷熱交換器51の両方を同時に使用した発電機冷却水の冷却も可能である。
【0028】
このように、上述した本実施形態のガスタービン発電設備10によれば、空冷熱交換器51による発電機冷却水の冷却や補助熱交換器60による発電機冷却水の冷却について、外気温度等の運転状況に応じた最適の熱交換器による冷却方式を選択できるため、大気温度の高い運転環境でも発電機の出力を容易に増加させることができるようになり、ガスタービン出力を有効に利用した発電が可能になる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0029】
10 ガスタービン発電設備
20 ガスタービン
21 圧縮機
22 燃焼器
23 タービン
30 発電機
40 吸気冷却水供給系統
41 冷水製造装置
50 水冷冷却系統
51 空冷熱交換器
60 補助熱交換器
61 補助冷却循環流路
70 バイパス流路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気冷却を行うガスタービンの軸出力で水冷の発電機を駆動して発電するガスタービン発電設備であって、
前記発電機に空冷熱交換器から発電機冷却水を供給する水冷冷却系統に設置した補助熱交換器と、前記吸気冷却を行う吸気冷却水供給系統から吸気冷却水の一部を前記補助熱交換器に導入する補助冷却循環流路とを備え、
前記補助熱交換器で前記吸気冷却水により冷却された前記発電機冷却水が前記発電機に供給されることを特徴とするガスタービン発電設備。
【請求項2】
前記補助熱交換器が前記空冷熱交換器と直列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン発電設備。
【請求項3】
前記補助熱交換器のバイパス流路を設けたことを特徴とする請求項2に記載のガスタービン発電設備。
【請求項4】
前記補助熱交換器が前記空冷熱交換器と並列に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のガスタービン発電設備。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−15048(P2013−15048A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147324(P2011−147324)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】