説明

ガスタービン設備の吸気冷却システム及び方法

【課題】外気温が高いときにもガスタービンの出力を向上できると共に、圧縮機の損傷を防止できること。
【解決手段】圧縮機に吸気を導入する吸気ダクト内に吸気冷却スプレイが設置され、前記吸気冷却スプレイにより、圧縮機へ導入される前の吸気に冷却水が噴霧されるガスタービン設備の吸気冷却システムにおいて、吸気ダクト内で吸気冷却スプレイ上流側の吸気のプロセス量を計測するプロセス量計測器24と、スプレイ流量算出器26及び調整回路27を備えた制御装置25とを有し、スプレイ流量算出器26は、プロセス量計測器にて計測されたプロセス量に基づき、吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%とするために冷却水スプレイから噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値Pを算出し、調整回路27は、吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%に近い値に設定するためにスプレイ流量要求値Pを調整してスプレイ流量要求値Qとするよう構成されたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ガスタービン設備の吸気冷却システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンを用いた発電設備は、火力発電設備の主要な方式の一つであり、国内外で広く使用されている。夏の気温が特に高い地域では気温の高い時期に消費電力量が多くなるので、これに合わせて気温の高い時期に発電量を多くする必要がある。ところが、気温の上昇によって空気密度が低下すると、ガスタービン発電設備及びガスタービンを使用したコンバインドサイクル等の複合発電設備の最大発電量は低下してしまう。
【0003】
そこで、圧縮機に導入される吸気中に冷却水を噴霧することにより吸気温度を低下させ、これにより、気温が高いときにも最大発電量の低下を防止するガスタービン設備の吸気冷却システムが、特許文献1及び2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−201958号公報
【特許文献2】特開昭59−39936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のようなガスタービン設備の吸気冷却システムでは、理論的には、圧縮機へ導入される吸気が相対湿度100%になるまで冷却水を噴霧すれば最大の冷却効果が得られる。しかしながら実際には、相対湿度100%では気化しない冷却水が発生し、この気化しない冷却水が多量に発生すると、圧縮機内に流入して圧縮機の翼等に損傷を与える恐れがある。
【0006】
従って、相対湿度100%の代わりに、ある適切な飽和に近い相対湿度となるように冷却水を噴霧することが望まれる。ところが、適切な相対湿度を得るために必要な冷却水流量の具体的な計算方法は知られておらず、また、機械システムの損失なども含めると必ずしも状況によって一致せず、吸気の状態を表すプロセス量から適切な相対湿度を計算することは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、外気温が高いときにもガスタービンの出力を向上できると共に、圧縮機の損傷を防止できるガスタービン設備の吸気冷却システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態におけるガスタービン設備の吸気冷却システムは、吸気を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された吸気と共に燃料を燃焼する燃焼器と、この燃焼器で生じた燃焼ガスの熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換するガスタービンと、を有するガスタービン設備であって、前記圧縮機に吸気を導入する吸気ダクト内に吸気冷却スプレイが設置され、この吸気冷却スプレイにより、前記圧縮機へ導入される前の吸気に冷却水が噴霧されるガスタービン設備の吸気冷却システムにおいて、前記吸気ダクト内で前記吸気冷却スプレイ上流側の吸気のプロセス量を計測するプロセス量計測手段と、スプレイ流量計算手段及び調整回路を備えた制御装置とを有し、前記スプレイ流量計算手段は、前記プロセス量計測手段にて計測されたプロセス量に基づき、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%とするために前記吸気冷却スプレイから噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値を算出し、前記調整回路は、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%に近い値に設定するために前記スプレイ流量要求値を調整するよう構成されたことを特徴とするものである。
【0009】
また、本実施形態におけるガスタービン設備の吸気冷却方法は、吸気を圧縮する圧縮機と、この圧縮機で圧縮された吸気と共に燃料を燃焼する燃焼器と、この燃焼器で生じた燃焼ガスの熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換するガスタービンと、を有するガスタービン設備であって、前記圧縮機に吸気を導入する吸気ダクト内に設置された吸気冷却スプレイから、前記圧縮機へ導入される前の吸気に冷却水を噴霧するガスタービン設備の吸気冷却方法において、前記吸気ダクト内で前記吸気冷却スプレイ上流側の吸気のプロセス量をプロセス量計測手段が計測し、このプロセス量に基づき、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%とするために前記吸気冷却スプレイから噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値を算出し、その後、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%に近い値に設定するために前記スプレイ流量要求値を調整することを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第1実施形態を示す構成図。
【図2】図1の制御装置を示すブロック図。
【図3】湿り蒸気線図を示すグラフ。
【図4】図2の制御装置から出力されるスプレイ流量要求値Qと、スプレイ流量算出器が算出したスプレイ流量要求値Pとの関係を示すグラフ。
【図5】本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第2実施形態の制御装置を示すブロック図。
【図6】発電機出力等と絶対湿度との関係を示すグラフ。
【図7】図5の制御装置から出力されるスプレイ流量要求値Rと、スプレイ流量算出器が算出したスプレイ流量要求値Pとの関係を示すグラフ。
【図8】本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第3実施形態の制御装置を示すブロック図。
【図9】図8の制御装置から出力されるスプレイ流量要求値Rと、スプレイ流量算出器が算出したスプレイ流量要求値Pとの関係に、制御回路による制限値を加算して示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための実施形態を図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(図1〜図4)
図1は、本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第1実施形態を示す構成図であり、図2は、図1の制御装置を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すガスタービン発電設備10は、圧縮機11、燃焼器12、ガスタービン13及び発電機14を有して構成される。圧縮機11は、大気から吸気ダクト15を経て導入される空気(つまり吸気16)を圧縮する。また、燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された吸気16と共に燃料を燃焼して燃焼ガス17を生成する。
【0013】
ガスタービン13は、燃焼器12にて生じた燃焼ガス17の熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換して、圧縮機11及び発電機14を駆動する。発電機14は、ガスタービン13により駆動されて電気を発生する。また、ガスタービン13を駆動した燃焼ガス17は、排ガス18となって大気へ排出される。
【0014】
上述のガスタービン発電設備10における吸気冷却システム20は、圧縮機11に吸気16を導入する吸気ダクト15内に設置された吸気冷却スプレイ21から、圧縮機11へ導入される前の吸気16に冷却水を噴霧するものである。この冷却水の噴霧により、冷却水の蒸発潜熱によって吸気16の温度を低下させることが可能になり、圧縮機11に導入される吸気16の質量流量を増大させることができる。この吸気16の質量流量が増大すると、吸気16(空気)と燃料との比率に基づいて決定される、燃焼器12に供給される燃料の最大投入量も増大できるので、ガスタービン13の最大出力を上昇させることができる。
【0015】
このような吸気冷却システム20は、前記吸気冷却スプレイ21のほかに、冷却水タンク22と、冷却水供給ポンプ23と、プロセス量計測手段としてのプロセス量計測器24と、スプレイ流量計算手段としてのスプレイ流量算出器26及び調整回路27(共に図2)を備える制御装置25と、を有して構成される。
【0016】
吸気冷却スプレイ21は、吸気ダクト15内に例えば複数本設置される。また、冷却水タンク22は冷却水を供給する。冷却水供給ポンプ23は、複数本の吸気冷却スプレイ21に対応して複数台設置され、各吸気冷却スプレイ21に1台の冷却水供給ポンプ23が接続される。各冷却水供給ポンプ23は、冷却水タンク22に貯水された冷却水を吸気冷却スプレイ21へ供給する。この吸気冷却スプレイ21への冷却水の供給流量は、冷却水供給ポンプ23の回転数によって変更可能に構成される。
【0017】
図2に示すように、プロセス量計測器24は、吸気ダクト15内で吸気冷却スプレイ21の上流側の吸気16の状態を表すプロセス量を計測する。このプロセス量としては、図2に示すように、乾球温度、湿球温度、大気圧力、吸気流量などである。この場合、吸気ダクト15内で吸気冷却スプレイ21の上流側における吸気16の相対湿度を直接計測してもよい。本実施形態では、後述の如く、吸気ダクト15内で吸気冷却スプレイ21の上流側における吸気16の相対湿度は、プロセス量計測器24により計測された乾球温度と湿球温度から求められる。ここで、相対湿度とは、空気中に含まれる水蒸気量とその温度と同じ温度における飽和水蒸気量との比の100倍をいう。
【0018】
図2に示すように、制御装置25のスプレイ流量算出器26は、プロセス量計測器24にて計測された吸気ダクト15内における吸気16のプロセス量に基づき、例えば湿り蒸気線図(図3)などを用いて、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度を100%とするために吸気冷却スプレイ21から噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値Pを算出する。
【0019】
例えば図3に示す湿り蒸気線図(Psychometric Chart)において、プロセス量計測器24にて計測された乾球温度Aと湿球温度Bとの交点Xが位置する相対湿度ラインCから、この相対湿度ラインCが示す相対湿度を、吸気ダクト15内でプロセス量計測器24が設置された吸気冷却スプレイ21上流側の吸気16の相対湿度として求める。そして、この位置での絶対湿度α(kg/kg)を、交点Xを通り横軸(乾球温度軸)に平行な直線が縦軸(絶対湿度軸)と交わる点が示す絶対湿度の値から求める。ここで、絶対湿度とは、湿り空気1m中に含まれる水蒸気の重量をいう。
【0020】
次に、交点Xから湿球温度一定のラインDが相対湿度100%ラインEと交わる交点Yを求める。そして、この交点Yを通り横軸に平行な直線が縦軸と交わる点が示す絶対湿度の値から、相対湿度100%における絶対湿度β(kg/kg)の値を求める。スプレイ流量算出器26は、上述のようにして求めた絶対湿度βと絶対湿度αとの差分量(β−α)に、プロセス量計測器24にて計測された吸気16の吸気流量を乗ずることで、スプレイ流量要求値Pを算出する。
【0021】
尚、スプレイ流量算出器26が上述のスプレイ流量要求値Pを算出する方法は、湿り蒸気線図を用いる場合に限らず、例えばプロセス量計測器24により吸気ダクト15内における吸気冷却スプレイ21上流側の相対湿度を直接計測し、この相対湿度の値に基づいて、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度を100%とする上記スプレイ流量要求値Pを算出してもよい。
【0022】
吸気ダクト15の調整回路27は、図2に示すように、吸気ダクト15内における吸気冷却スプレイ21下流の吸気16の相対湿度を100%に近い値(例えば相対湿度95%程度)に設定するためにスプレイ流量要求値Pを調整して、調整後のスプレイ流量要求値Qを求める回路である。具体的には、この調整回路27は、スプレイ流量算出器26が算出したスプレイ流量要求値Pに対する割合(%)を調整する比率調整手段としての比率調整部28と、スプレイ流量算出器26が算出したスプレイ流量要求値Pに対する加減バイアス(+/−)を調整するバイアス調整手段としてのバイアス調整部29との少なくとも一方(本実施形態では両者)を備えて構成される。
【0023】
オペレータは、ガスタービン発電設備10の運転状態や発電量などから判断して、入力装置30を用い、比率調整部28における割合(%)を調整し、バイアス調整部29における加減バイアス(+/−)を調整して、スプレイ流量要求値Pを調整してスプレイ流量要求値Qを設定する。
【0024】
これらのスプレイ流量要求値Pとスプレイ流量要求値Qとの関係は、図4に示すように、比率調整部28、バイアス調整部29による調整がなされない場合には、直線Nに示すように、スプレイ流量要求値Pとスプレイ流量要求値Qとは1対1の関係にあるが、比率調整部28による割合、バイアス調整部29による加減バイアスがそれぞれ調整されたときには、直線M1に示すように、スプレイ流量要求値Qはスプレイ流量要求値Pよりも低い値に調整される。
【0025】
図2に示すように、調整回路27からのスプレイ流量要求値Qは、冷却水供給ポンプ23へ出力されてその回転数が設定される。これにより、冷却水供給ポンプ23は、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度が100%に近い値になるように、吸気冷却スプレイ21へ供給する冷却水の流量を調整する。尚、調整回路27からのスプレイ流量要求値Qは、冷却水供給ポンプ23と吸気冷却スプレイ21との間に設置された流量調整手段、例えば調整弁31(図1)や電動弁などへ出力されてその弁開度が設定され、これにより、吸気冷却スプレイ21へ供給する冷却水流量が調整されてもよい。
【0026】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、次の効果(1)及び(2)を奏する。
(1)制御装置25におけるスプレイ流量算出器26が、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度を100%とするために吸気ダクト15内における吸気冷却スプレイ21から噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値Pを、吸気ダクト15内における吸気16のプロセス量から算出する。その後、制御装置25における調整回路27をオペレータが入力装置30を用いて操作することで、算出されたスプレイ流量要求値Pを、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度を100%に近い値に設定するために調整して、スプレイ流量要求値Qを求めている。このため、吸気ダクト15内に噴霧された冷却水の蒸発潜熱によって、圧縮機11へ供給される吸気16の温度を低下できるので、外気温が高いときにもガスタービン13の出力を向上できると共に、気化しない冷却水が圧縮機11へ供給されることがないので、圧縮機11の特に翼などに損傷を及ぼすことを防止できる。
【0027】
(2)本実施形態の吸気冷却システム20では、前述の如く、吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度が100%に近い値になるように吸気冷却スプレイ21から冷却水を噴霧して、圧縮機11の入口で冷却水が全て気化するように考慮されているが、この相対湿度が100%に近い値は、大雨時に発生する高湿度の大気条件と略同等である。従って、吸気冷却システムを具備しない既存のガスタービン発電設備10に対しても、その機械的設計バランスを崩すことなく、本実施形態の吸気冷却システム20を適用することができる。
【0028】
[B]第2実施形態(図5〜図7)
図5は、本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第2実施形態の制御装置を示すブロック図である。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0029】
本実施形態におけるガスタービン発電設備10の吸気冷却システム40における制御装置41が第1実施形態の吸気冷却システム20の制御装置25と異なる点は、比率調整部28が調整する割合(%)が比率可変設定部42により、バイアス調整部29が調整する加減バイアス(+/−)がバイアス可変設定部43により、それぞれガスタービン13の運転状態を表す信号に対応して変更して設定可能に構成された点である。ここで、ガスタービン13の運転状態を表す信号は、例えば発電機出力、排ガス流量、吸気ダクト15内の吸気流量などである。
【0030】
本実施形態では、発電機出力、排ガス流量、吸気ダクト15内の吸気流量と吸気ダクト15内の絶対湿度との関係を、図6の直線Gに示すように予め求めておく。比率可変設定部42、バイアス可変設定部43は、図6において、発電機出力、排ガス流量、吸気流量の1つまたは複数の信号の値Fから、そのときの吸気ダクト15内における吸気16の絶対湿度γを求める。次に、比率可変設定部42、バイアス可変設定部43は、この求めた絶対湿度γと、相対湿度100%における絶対湿度β(図3)との差分量(β−γ)に基づいて、それぞれ、比率調整部28が調整する割合(%)、バイアス調整部29が調整する加減バイアス(+/−)を決定する(図5)。
【0031】
図5に示すように、スプレイ流量算出器26により算出されたスプレイ流量要求値Pは、比率可変設定部42により決定された割合に基づいて比率調整部28により調整され、更に、バイアス可変設定部43により決定された加減バイアスに基づいてバイアス調整部29により調整されることでスプレイ流量要求値Rとなる。このスプレイ流量要求値Rが冷却水供給ポンプ23、または調整弁31等の流量調整手段へ出力され、これらの冷却水供給ポンプ23または調整弁31等から、スプレイ流量要求値R相当の冷却水、即ち吸気ダクト15内における吸気16の相対湿度を100%に近い値にするために必要な冷却水が吸気冷却スプレイ21へ供給される。
【0032】
上記スプレイ流量要求値Rとスプレイ流量要求値Qとは、図7に示すように、比率調整部28、バイアス調整部29による調整がなされていない場合には、直線Nに示すように1対1の関係になる。これに対し、比率可変設定部42により決定された割合で比率調整部28により、バイアス可変設定部43により決定された加減バイアスでバイアス調整部29により、スプレイ流量要求値Pが調整されてスプレイ流量要求値Rが設定されたときには、このスプレイ流量要求値Rは、曲線M2に示すように、スプレイ流量要求値Pよりも低い値に調整される。
【0033】
尚、本実施形態では、図5に示すように、比率調整部28と比率可変設定部42との間、バイアス調整部29とバイアス可変設定部43との間にそれぞれ切換器44が設置されてもよい。そして、この切換器44を用いた切り換え操作によって、比率調整部28が調整する割合と、バイアス調整部29が調整する加減バイアスとは、ガスタービン13の運転状態を示す信号に対応して比率可変設定部42、バイアス可変設定部43により、またはオペレータが入力装置30を操作することにより、択一に切り換えて変更されてもよい。
【0034】
以上のように構成されたことから、本実施形態によれば、前記第1実施形態の効果(1)及び(2)と同様な効果を奏するほか、次の効果(3)および(4)を奏する。
【0035】
(3)比率調整部28が調整する割合(%)が比率可変設定部42により、バイアス調整部29が調整する加減バイアス(+/−)がバイアス可変設定部43により、それぞれガスタービン13の運転状態を表す信号に対応して変更して設定される場合には、比率調整部28の割合とバイアス調整部29の加減バイアスとをオペレータが変更する必要がない。このため、ガスタービン13の出力向上と圧縮機11の損傷防止に関し、オペレータの負担を低減でき、更に誤操作を防止できる。
【0036】
(4)比率調整部28が調整する割合(%)が比率可変設定部42により、バイアス調整部29が調整する加減バイアス(+/−)がバイアス可変設定部43により、それぞれガスタービン13の運転状態を表す信号に対応して変更して設定される場合には、ガスタービン13の運転状態が突然変化したときに、その変化に対応して比率調整部28の割合、バイアス調整部29の加減バイアスを直ちに調整できる。この結果、ガスタービン13の運転状態の突然の変化に対応して、吸気冷却スプレイ21からの冷却水の噴霧量を迅速に変化させることができるので、圧縮機11へ供給される吸気16の相対湿度を常に適切な値に保持できる。
【0037】
[C]第3実施形態(図8、図9)
図8は、本発明に係るガスタービン設備の吸気冷却システムにおける第3実施形態の制御装置を示すブロック図である。この第3実施形態において、前記第1及び第2実施形態と同様な部分については、同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0038】
本実施形態の吸気冷却システム50における制御装置51が前記第2実施形態の吸気冷却システム40における制御装置41と異なる点は、比率調整部28、バイアス調整部29にて調整されたスプレイ流量要求値Rに対し制限値(つまり上限値)を設定する制限回路52が最終段に設けられた点である。
【0039】
この制限回路52が設定する制限値は、図9に示すように、スプレイ流量算出器26にて算出されたスプレイ流量要求値Pに所定値Tを加算することで設定される。図9の直線Hは、スプレイ流量要求値Pに所定値Tが付加された制限値の直線を示す。
【0040】
従って、本実施形態によれば、前記第1及び第2実施形態の効果(1)〜(4)と同等な効果を奏するほか、次の効果(5)を奏する。
【0041】
(5)吸気冷却システム50の制御装置51に制限回路52が設置されたことで、オペレータが誤操作によって比率調整部28の割合、バイアス調整部29の加減バイアスを調整した後、吸気冷却スプレイ21へ供給される冷却水の状態(例えば温度など)が変化した場合、または、吸気ダクト15内における吸気16のプロセス量やガスタービン13の運転状態を表す信号に異常が発生した場合であっても、制御装置51から冷却水供給ポンプ23等へ出力されるスプレイ流量要求値Rを制限値内に収めることができる。この結果、冷却水供給ポンプ23等から吸気冷却スプレイ21へ供給される冷却水量を安定化できる。
【0042】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を種々変形してもよく、また、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10 ガスタービン発電設備(ガスタービン設備)
11 圧縮機
12 燃焼器
13 ガスタービン
15 吸気ダクト
16 吸気
20 吸気冷却システム
21 吸気冷却スプレイ
23 冷却水供給ポンプ
24 プロセス量計測器(プロセス量計測手段)
25 制御装置
26 スプレイ流量算出器(スプレイ流量計算手段)
27 調整回路
28 比率調整部(比率調整手段)
29 バイアス調整部(バイアス調整手段)
30 入力装置
31 調整弁(流量調整手段)
40 吸気冷却システム
41 制御装置
42 比率可変設定部
43 バイアス可変設定部
44 切換器
50 吸気冷却システム
51 制御装置
52 制限回路
P、Q、R スプレイ流量要求値
T 所定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された吸気と共に燃料を燃焼する燃焼器と、前記燃焼器で生じた燃焼ガスの熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換するガスタービンと、を有するガスタービン設備を備え、
前記圧縮機に吸気を導入する吸気ダクト内に吸気冷却スプレイが設置され、前記吸気冷却スプレイにより、前記圧縮機へ導入される前の吸気に冷却水が噴霧されるガスタービン設備の吸気冷却システムであって、
前記吸気ダクト内で前記吸気冷却スプレイ上流側の吸気のプロセス量を計測するプロセス量計測手段と、
スプレイ流量計算手段及び調整回路を備えた制御装置とを有し、
前記スプレイ流量計算手段は、前記プロセス量計測手段にて計測されたプロセス量に基づき、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%とするために前記吸気冷却スプレイから噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値を算出し、
前記調整回路は、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%に近い値に設定するために前記スプレイ流量要求値を調整するよう構成されたことを特徴とするガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項2】
前記調整回路は、スプレイ流量計算手段が算出したスプレイ流量要求値に対して、その割合を調整する比率調整手段と、加減バイアスを調整するバイアス調整手段との少なくとも一方を有することを特徴とする請求項1に記載のガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項3】
前記比率調整手段が調整する割合が比率可変設定部により、バイアス調整手段が調整する加減バイアスがバイアス可変設定部により、それぞれ、ガスタービンの運転状態を表す信号に対応して変更可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載のガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項4】
前記比率調整手段が調整する割合が比率可変設定部により、バイアス調整手段が調整する加減バイアスがバイアス可変設定部により、それぞれ、ガスタービンの運転状態を表す信号に対応して、またはオペレータの操作により、択一に切り換えて変更可能に構成されたことを特徴とする請求項2に記載のガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項5】
前記調整回路からの出力により、前記吸気冷却スプレイへ冷却水を供給する冷却水供給ポンプの回転数、または前記冷却水供給ポンプと前記吸気冷却スプレイとの間に設置された流量調整手段の開度が、それぞれ設定されるよう構成されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項6】
前記制御装置は、スプレイ流量計算手段にて算出されたスプレイ流量要求値に対し制限値を設定する制限回路を最終段に備え、
前記制限値が、前記スプレイ流量要求値に所定値を加算して決定されたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のガスタービン設備の吸気冷却システム。
【請求項7】
吸気を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機で圧縮された吸気と共に燃料を燃焼する燃焼器と、前記燃焼器で生じた燃焼ガスの熱エネルギーを回転運動エネルギーに変換するガスタービンと、を有するガスタービン設備を備え、
前記圧縮機に吸気を導入する吸気ダクト内に設置された吸気冷却スプレイから、前記圧縮機へ導入される前の吸気に冷却水を噴霧するガスタービン設備の吸気冷却方法であって、
前記吸気ダクト内で前記吸気冷却スプレイ上流側の吸気のプロセス量をプロセス量計測手段が計測し、
前記プロセス量に基づき、前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%とするために前記吸気冷却スプレイから噴霧する冷却水のスプレイ流量要求値を算出し、
前記吸気ダクト内の吸気の相対湿度を100%に近い値に設定するために前記スプレイ流量要求値を調整することを特徴とするガスタービン設備の吸気冷却方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−76348(P2013−76348A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215921(P2011−215921)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)