説明

ガスバリア性フィルム

【課題】ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられてなる、ガスバリア性に優れるガスバリア性フィルムの提供。
【解決手段】ポリアミド系樹脂フィルム基材111の少なくとも一方の面に、易接着層112とアンカーコート層113と無機酸化物の蒸着薄膜層114とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられていると共に、その複合層の表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が5nm以下であり、かつ1μm角あたりの表面積が101000nm2以下であることを特徴とする、ガスバリア性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられてなる、ガスバリア性に優れるガスバリア性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品、精密電子部品等の包装には、ガスバリア性に優れる包装材料を使用することがある。たとえば、高ガスバリア性包装材料で食品を包装した場合には、食品が含むタンパク質や油脂等の変質等を抑制し、風味や鮮度を長期にわたって維持することができる。また、高ガスバリア性包装材料で医薬品を包装した場合には、有効成分の変質や散逸等を防止でき、高ガスバリア性包装材料で電子部品を包装した場合には、金属の腐食や絶縁不良の発生等を防止できる。
【0003】
このようにして使用されている高ガスバリア性包装材料は、一般的には、ガスバリア層がその一部に積層された多層構造を有している。このガスバリア層は、たとえば、アルミニウム等の金属、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン−ビニルアルコール共重合体けん化物(EVOH)、メタキシレンジアミンとアジピン酸との重縮合反応により得られるポリアミドであるナイロンMXD6等からなっている。このようなガスバリア層が設けられている高ガスバリア性包装材料は、比較的高いガスバリア性を示すものの、何らかの欠点を有している。
【0004】
たとえば、金属箔がガスバリア層として積層されている高ガスバリア性包装材料は、温度や湿度等の環境の変化に拘わらず、優れたガスバリア性を示す。しかしながら、この包装材料を用いて作製された包装体は、内容物を視認することができず、廃棄の際には不燃物として扱わなければならず、しかも内容物を入れた後の異物検査に金属探知機を使用できない等、種々の欠点がある。また、この包装体で内容物を包装してなる包装品は、マイクロ波加熱処理には不向きである。
【0005】
また、PVDCの層を有する高ガスバリア性包装材料は、安価であり、比較的高いガスバリア性を有しているが、焼却した際に有害ガスを発生することが危惧される。
【0006】
さらに、EVOHの層またはナイロンMXD6の層を有する高ガスバリア性包装材料は、そのガスバリア性の環境依存度が大きい。特に、高温高湿度環境の下では、ガスバリア性が著しく劣化するという欠点を有している。
【0007】
このような状況に対応し、特許文献1及び2では、真空蒸着やスパッタリング等の気相堆積法により、プラスチックフィルム基材上に、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム等の無機酸化物の蒸着薄膜層を形成してなるガスバリア性フィルムが提案されている。このガスバリア性フィルムは、透明性を有すると共に、ガスバリア性に優れている。したがってこのガスバリア性フィルムは、高ガスバリア性包装材料として適している。
【0008】
しかし、このようなガスバリア性に優れる透明蒸着フィルムは以下のような問題も有している。
【0009】
すなわち、酸化珪素の蒸着薄膜は高いガスバリア性や防湿性等を確保するために厚い膜厚が必要とされるが、膜厚を厚くした場合にはカールが発生しやすく、ハンドリング性が悪くなり、乱暴に扱うと蒸着薄膜にクラック(割れ)が入り、ガスバリア性や防湿性等が
低下するという問題がある。また、蒸着薄膜が着色するという問題もある。また、酸化アルミニウムの蒸着薄膜は酸化珪素の蒸着薄膜に比べ、薄い膜厚である程度のガスバリア性や防湿性を発現することができるが、膜厚が薄くなると、安定したガスバリア性や防湿性が発現できないという問題がある。また、ガスバリア性を発現させるために膜厚を厚くすれば、蒸着薄膜が着色してしまうという欠点も有している。
【0010】
以上のような問題を解決し、ガスバリア性に優れるフィルムを提供するために、例えば特許文献3では蒸着薄膜層の表面を平滑にする手法を挙げ、表面粗さ(Rms)及び蒸着層の粒径について規定している。また、特許文献4でも同じ手法を挙げ、中心面平均粗さ(SRa)、山数(SPc)について規定している。さらに、特許文献5においてはフィルム基材の表面粗さを特定している。しかしいずれの手法においても十分なガスバリア性が得られておらず、透明で高ガスバリア性フィルムを提供することができていない。
【特許文献1】米国特許第3442686号明細書
【特許文献2】特開昭49−041469号公報
【特許文献3】特許第3675904号
【特許文献4】特開平11−320794号公報
【特許文献5】特開2003−300270号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のような問題を解消するためになされた本発明の課題とするところは、ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられていて、蒸着薄膜層の厚さが薄くとも優れたガスバリア性が発現できるようにしたガスバリア性フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を達成すべくなされ、請求項1に記載の発明は、ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられていると共に、その複合層の表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が5nm以下であり、かつ1μm角あたりの表面積が101000nm2以下であることを特徴とするガスバリア性フィルムである。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記易接着層は、窒素原子とアジピン酸とビスフェノールグリジルエーテルとを含んでいることを特徴とする。
【0014】
さらにまた、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記アンカーコート層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と金属アルコキシドまたはその加水分解生成物との反応生成物を含んでいることを特徴とする。
【0015】
さらにまた、請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物のいずれかであることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記複合層の無機酸化物の蒸着薄膜層の上には、水と水溶性高分子と、金属アルコキシド、その加水分解生成物、及び塩化錫からなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリ
ア性被膜層が設けられていることを特徴とする。
【0017】
さらにまた、請求項6に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記複合層の無機酸化物の蒸着薄膜層の上には、水溶性高分子とテトラアルコキシシランまたはその加水分解生成物とトリアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする。
【0018】
さらにまた、請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のガスバリア性フィルムにおいて、前記コーティング液のトリアルコキシシランの珪素と結合したアルコキシ基以外の有機官能基は疎水性有機官能基であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のガスバリア性フィルムは、ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層の無機酸化物の蒸着薄膜層が密着性良好な状態で積層されて設けられているので、蒸着薄膜層の厚さが薄くとも優れたガスバリア性を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照にしながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの概略の断面構成を示している。
【0022】
このガスバリア性フィルム11は、基本的には、ポリアミド系樹脂フィルム基材111の少なくとも一方の面に、易接着層112とアンカーコート層113と無機酸化物の蒸着薄膜層114とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられてなるものである。図1には、上記構成の複合層の上にガスバリア性被覆層がさらに積層されたものの例が示してある。なお、用語「フィルム」と用語「シート」とは厚さに応じて使い分けることがあるが、ここでは、厚さの大小とは無関係に用語「フィルム」を使用している。
【0023】
ポリアミド系樹脂フィルム基材111は、ホモポリアミド、コポリアミド、またはそれらの混合物等のポリアミド系樹脂からなるフィルム状の基材である。
【0024】
上記したホモポリアミドとしては、たとえば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリ−ω−アミノヘプタン酸(ナイロン7)、ポリ−ω−アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2,6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4,6)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン6,6)、ポリヘキサミエチレンセバカミド(ナイロン6,10)、ポリへキサメチレンデカミド(ナイロン6,12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8,6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10,6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10,10)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン12,12)、メタキシレンジアミン−6ナイロン(MXD6)等を挙げることができる。
【0025】
また、コポリアミドとしては、たとえば、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサミチレンジアンモニウムセバケート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/へキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジペート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体等を挙げることができる。
【0026】
このようなポリアミド系樹脂フィルム基材111には、ポリアミド以外の材料、たとえば、可塑剤、低弾性率のエラストマー、ラクタム類、またはそれらの混合物がさらに含まれていてもよい。
【0027】
可塑剤としては、たとえば、芳香族スルホンアミド類、p−ヒドロキシ安息香酸、またはエステル類の可塑剤を使用することができる。低弾性率のエラストマーとしては、たとえば、アイオノマー樹脂、変性ポリオレフィン系樹脂、熱可塑性ポリウレタン、ポリエーテルブロックアミド、ポリエステルブロックアミド、ポリエーテルエステルアミド系エラストマー、変性アクリルゴム、または変性エチレンプロピレンゴムを使用することができる。
【0028】
ポリアミド系樹脂フィルム基材111の厚さに制限はないが、基材として十分な強度を確保しうる厚さを有している必要がある。しかし、ポリアミド系樹脂フィルム基材111が厚過ぎる場合は、柔軟性が不十分となることがある。したがって、ポリアミド系樹脂フィルム基材111の厚さは、たとえば10μmないし100μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0029】
一方、易接着層112は、ポリアミド系樹脂フィルム基材111の一方の面に形成される層である。この易接着層112は、これに隣接して積層されているアンカーコート層113と共に、無機酸化物の蒸着薄膜層114とフィルム基材111間の密着性を向上させるために設けられるものである。そして、易接着層112は、アンカーコート層113と共に、たとえば、本発明のガスバリア性フィルムを構成主体として作製される包装材料を用いて液体を含有する内容物を長期保存したような場合において、ポリアミド系樹脂フィルム基材111に対する無機酸化物の蒸着薄膜層114の密着性低下を抑制するように働く。
【0030】
このような易接着層112の構成材料としては、たとえば、アジピン酸をポリエステルの二塩基酸として含む水分散性ポリエステルポリウレタン、そのプレポリマー、アジピン酸をポリエステルの二塩基酸として含む水分散性ポリエステルポリウレタンポリ尿素樹脂、そのプレポリマー、または、それらの2種以上を含んだ混合物を主成分として含有するコーティング液を具体例として挙げることができる。密着性を向上させるために、このような組成のコーティング液に含まれるポリマーの主鎖または末端に、水酸基、カルボキシ基、またはアミノ基を導入してもよい。
【0031】
上記したコーティング液中には、ビスフェノールグリジルエーテルがさらに含有されていてもよい。ビスフェノールグリジルエーテルは、前記したコーティング液の主成分の硬化を促進する硬化剤である。ビスフェノールグリジルエーテルを使用することにより架橋を生じさせ、これにより、耐水性、耐熱性、接着性及び被膜凝集性に優れた易接着層112が得られる。
【0032】
ビスフェノールグリシジルエーテルとしては、たとえば、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させ、その反応性生物の分子末端をエポキシ化させたものを使用することができる。ビスフェノール類としては、例えば、4,4’−ジヒドロキシ−フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−ジフェニル)−エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−ジフェニル)−エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−n−ブタン、またはビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキシル−メタンを使用することができる。これらの中でも、一般に「ビスフェノールA」と呼ばれている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンまたは一般に「ビスフェノールF」と呼ばれている4,4’−ジヒドロキシ−フェニルメタンが好適に用いられる。
【0033】
易接着層112は、たとえば、フィルム基材111上に、上述した成分を有むコーティング液からなる塗膜を塗布し、この塗膜を乾燥させることにより得られる。なお、このコーティング液には、上述した成分に加え、添加剤をさらに含有させておいてもよい。添加剤としては、例えば、帯電防止剤、滑剤、消泡剤、界面活性剤を挙げることができる。また、コーティング液の塗布には、たとえば、グラビアロール法、リバースグラビアコート法、ロールコート法、エアーナイフ法、マイヤーバーコート法、インバースロール法等を利用することができる。
【0034】
コーティング液の塗布に先立ち、濡れ性および/または密着性を改善するために、ポリアミド系樹脂フィルム基材111の被塗布面に前処理を施しておいてもよい。この前処理としては、たとえば、コロナ放電処理またはプラズマ処理を挙げることができる。
【0035】
ポリアミド系樹脂フィルム基材111を延伸したものとする場合は、この易接着層112を形成するためのコーティング液は、延伸したフィルム基材111に塗布してもよく、ポリアミド系樹脂フィルムの延伸中に塗布するようにしてもよい。後者の方法は、生産性が高く、効率的であり、この延伸成膜工程において易接着層112が高温で熱処理されるため、前者の方法と比較してポリアミド系樹脂フィルム基材111と易接着層112との密着力をより強くすることができる。
【0036】
ポリアミド系樹脂フィルムの延伸成膜工程中に易接着層112を形成するには、たとえば、以下のような方法を挙げることができる。
【0037】
まず、易接着層112を形成するためのコーティング液の塗膜をポリアミド系樹脂フィルム上に塗布し、これを予熱後、塗膜と共にポリアミド系樹脂フィルムに対して同時二軸延伸処理を行う。そして、ヒートセット処理を行うことにより、フィルム基材111上に易接着112を設けるようにすればよい。
【0038】
また、延伸成膜工程中に易接着層112を形成するほかの方法としては、たとえば、逐次二軸延伸法を挙げることができる。この方法では、まず、ポリアミド系樹脂フィルムを周速度が異なる加熱ローラ間に通して縦延伸を行い、続いて、縦延伸したポリアミド系樹脂フィルムに易接着層112を形成するためのコーティング液の塗膜を塗布した後、横延伸処理し、さらに、ヒートセット処理を行うことにより、フィルム基材111上に易接着層112を設けるようにすればよい。
【0039】
このようにして設けられる易接着層112の厚さは、たとえば、0.01μmないし0.2μm程度の範囲のものとすることが好ましい。薄い層は厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、十分な密着性を得がたい。また、層を厚くすると、その膜厚の増加に伴う密着性向上の効果が小さくなる。それゆえ、過剰に厚い易接着層は経済的ではない。
【0040】
一方、アンカーコート層113は、易接着層112上に形成され、易接着層112と共に、無機酸化物の蒸着薄膜層114とフィルム基材111間の密着性を向上させる。
【0041】
このようなアンカーコート層113は、たとえば、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と金属アルコキシドまたはその加水分解生成物との反応生成物を含んでなる層である。
【0042】
金属アルコキシドは、一般式M(OR)nで表される化合物である。ここで、Mは、チタン、アルミニウム、ジルコニウム等の金属または珪素を示し、Rは、CH3基やC25基等のアルキル基を示している。また、nは、元素Mの価数を示している。
【0043】
このような金属アルコキシドとしてアルコキシシランを使用する場合、例えば、一般式Si(OR14またはR2Si(OR33で表される化合物或いはそれらの混合物を使用することができる。ここで、R1及びR3は、CH3基、C35基、C24OCH3基等の加水分解性基を示し、R2は、有機官能基を示している。
【0044】
また、アルコキシシランの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。また、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシランのようなイソシアネート基を含むもの、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランのようなメルカプト基を含むものや、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−フェニルアミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノ基を含むものを用いてもよい。
【0045】
さらに、γ−グリシドオキシプロピルトリメトキシシランやβ−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のようにエポキシ基を含むものや、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン等のような金属アルコキシドにアルコール等を付加し水酸基等を付加したものでもよい。これらの中から2種以上のものを用いてもよい。
【0046】
これらのアルコキシシランは、その一端に存在する有機官能基が、2種以上のアルコキシシランを混合することで相互作用を示し、さらに、無機酸化物の蒸着薄膜層114表面の極性の高い水酸基等と強い相互作用を示すことにより無機酸化物の蒸着薄膜層及びフィルム基材111及び易接着層112との高い密着性を発現し、目的の物性を得ることができるものである。
【0047】
アンカーコート層113は少なくとも2種以上の金属アルコキシドを含有していることがより好ましい。この場合、金属アルコキシドの一種がアミノ基を含有するアルコキシシランである場合は、アミノ基を含有するアルコキシシラン以外の金属アルコキシドとしては、アミノ基と反応し得る官能基を分子内に有する化合物(化合物(A))とすることが好ましい。ここでいう官能基とはエポキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基、オキサゾリニル基等である。
【0048】
このような化合物(A)の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリイソプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のエポキシ基とSi(OR4)基(R4は、水素原子、低級アルキル基またはアシル基を表す。)を有するシランカップリング剤、γ−イソシアノプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアノプロピルメチルジエトキシシラン等のイソシアネート基およびSi(OR4)基(R4は、水素原子、低級アルキル基またはアシル基を表す。)含有シランカップリング剤、トリレンジイソシアネート、1,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類等が挙げられる。そして、これらの1種または2種以上を用いることができる。また、化合物(A)がアミノ基と反応し得る官能基を有する高分子有機化合物、またはさらにSi(OR4)基を有する高分子有機化合物であってもよい。
【0049】
上述した各成分を主体とするコーティング液の溶媒としては、たとえば、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール、メチルエチルケトン等のケトン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、水、またはそれらの混合物等を使用することができる。
【0050】
コーティング液には、添加剤をさらに含有させることができる。添加剤としては、たとえば、3級アミン、イミダゾール誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等の硬化促進剤、フェノール系、硫黄系及びホスファイト系の酸化防止剤、レべリング剤、レオロジー調整剤、触媒、架橋反応促進剤、充填剤、またはそれらの混合物等を使用することができる。
【0051】
このような組成のコーティング液の易接着層112上への塗布には、一般的な塗布方法を利用することが出来る。たとえば、ディッピング法、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、ダイコート法、スクリーン印刷法、スプレーコート法、またはグラビアオフセット法等を利用することができる。
【0052】
コーティング液の塗布に先立ち、たとえば濡れ性及び/または密着性を改善するために易接着層112の表面に前処理を施しておいてもよい。この前処理としては、例えばコロナ放電処理またはプラズマ処理を挙げることができる。
【0053】
コーティング液の塗膜が薄い場合、厚さが均一な連続膜として形成することは難しく、十分な密着性が得られないことがある。また、コーティング液の厚い塗膜は柔軟性が低く、ガスバリア性フィルム11を撓ませた場合や引っ張った場合に亀裂を生じる可能性がでてくる。従って、アンカーコート層113の厚さは、例えば0.01μmないし1μm程度の範囲とすることが好ましい。0.05μmないし0.5μm程度の範囲であればより好ましい。
【0054】
このようなアンカーコート層113上に積層されている無機酸化物の蒸着薄膜層114は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、或いはそれらの混合物等の無機酸化物の蒸着薄膜からなり、透明性を有しかつ酸素、水蒸気等に対するガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウムや酸化珪素からなるも
のが好ましい。ただし無機酸化物の蒸着薄膜層114は、上述した無機酸化物からなるものに限定されず、上記条件に適合する材料であれば他の無機酸化物も用いることができる。
【0055】
無機酸化物の蒸着薄膜層114の厚さは、用いられる無機酸化物の種類、構成により最適条件が異なるが、一般的には5〜300nm程度の範囲が望ましく、その値は適宜選択され得る。ただし膜厚が5nm未満であると均一な膜が得られないことや膜厚が十分ではないことがあり、ガスバリア材としての機能を十分に果たすことができない場合がある。また膜厚が300nmを越える場合は無機酸化物の蒸着薄膜層にフレキシビリティを保持させることが難しく、成膜後に折り曲げ、引っ張り等の外力が加わると、亀裂を生じるおそれがでてくる。好ましくは、10〜150nm程度の範囲にあればよい。
【0056】
無機酸化物の蒸着薄膜層114をアンカーコート層113上に形成する手段としては各種の手段を採用することが可能であるが、真空蒸着法により形成することが一般的である。この真空蒸着法以外の手段としてスパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)等を用いることもできる。但し生産性を考慮すれば、現時点では真空蒸着法が最も優れている。この真空蒸着法による真空蒸着装置の加熱手段としては電子線加熱方式、抵抗加熱方式、誘導加熱方式のいずれかを適宜用いればよい。また無機酸化物の蒸着薄膜層114とフィルム基材111間の密着性及び無機酸化物の蒸着薄膜層の緻密性を向上させるために、プラズマアシスト法やイオンビームアシスト法を用いることも可能である。また、無機酸化物の蒸着薄膜層の透明性を上げるために蒸着の際、酸素ガス等を吹き込んで反応蒸着を行うようにしても一向に構わない。
【0057】
一方、無機酸化物の蒸着薄膜層114上に積層されているガスバリア性被膜115の形成材料としては、たとえば、水溶性高分子と1種以上の金属アルコキシド及び/またはその加水分解物からなるもの、さらには前記金属アルコキシドが、テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウム、またはこれらの混合物のいずれかからなるコーティング液を具体例として挙げることができる。高いガスバリア性を付与するガスバリア性被膜層115の他の例としては、水溶性高分子と塩化錫からなるもの、さらには前記水溶性高分子が、ポリビニルアルコールからなるコーティング液の塗膜を乾燥して得られる被膜を挙げることができる。より具体的には、水溶性高分子と塩化錫を水系(水或いは水/アルコール混合)溶媒で溶解させたコーティング液、或いはこの溶液に金属アルコキシドを直接、或いは予め加水分解させたものを混合した溶液の塗膜を無機酸化物の蒸着薄膜層114にコーティングし、加熱乾燥して形成したものを挙げることができる。以下、ガスバリア性被膜層115を形成する上記した組成のコーティング液について更に詳細に説明する。
【0058】
上記コーテイング液を構成する水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。特にポリビニルアルコール(以下、PVAという)を用いた場合はガスバリア性が最も優れるようになる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから酢酸基が数%しか残存していない完全PVAまでを含み、特にその種類に限定されるものではない。
【0059】
また塩化錫は塩化第一錫(SnCl2 )、塩化第二錫(SnCl4 )、或いはそれらの混合物であってもよく、無水物でも水和物でも用いることができる。
【0060】
さらに金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン〔Si(OC2 5 4 〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3 7 3 〕等の一般式、M(OR)n
(M:Si、Ti、Al、Zr等の金属、R:CH3 、C2 5 等のアルキル基)で表せるものである。中でもテトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムは加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。
【0061】
上述した各成分を含有するコーティング液の薄膜を無機酸化物の蒸着薄膜層上に塗布し、乾燥させることによりをガスバリア性被覆層115を形成することができる。ガスバリア性を損なわない範囲で、上述したコーティング液にはイソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤等の添加剤を加えるようにしてもよい。
【0062】
例えばガスバリア性被膜層115を構成するコーティング液に加えられるイソシアネート化合物としては、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(以下TDIという)、トリフェニルメタントリイソシアネート(以下TTIという)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(以下TMXDIという)等のモノマー類と、これらの重合体、または誘導体等が挙げられる。
【0063】
ガスバリア性被膜層115を形成するためのコーティング液の塗布方法には、通常用いられるディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法等の従来公知の薄膜形成手段を用いることができる。またガスバリア性被膜層115の厚さは、被膜層を形成するコーティング液の種類や加工条件によって異なるが、乾燥後の厚さが0.01μm以上であれば良い。但し、厚さが50μm以上では膜にクラックが生じ易くなるため、0.01〜50μm程度の範囲とすることが好ましい。
【0064】
無機酸化物の蒸着薄膜層114、またはガスバリア性被膜115上にはさらに他の層を積層することも可能である。たとえば印刷層、介在フィルム層、ヒートシール層等である。
【0065】
印刷層は包装材料や包装袋等として実用に供するために設けられるものであり、ウレタン系、アクリル系、ニトロセルロース系、ゴム系、塩化ビニル系等の従来から用いられているインキバインダー樹脂に各種顔料、体質顔料及び可塑剤、乾燥剤、安定剤等の添加剤が添加されてなるインキにより構成される文字、絵柄等である。形成方法としては、たとえばオフセット印刷法、グラビア印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷方式を挙げることができる。厚さは0.1〜2.0μm程度でよい。
【0066】
また介在フィルム層は、本発明のガスバリア性フィルムを主構成材料としてなる包装材料から作製された包装袋において、たとえば、それに対してボイル処理やレトルト殺菌処理等が施された時に必要とされる破袋強度を高めるために設けられるもので、たとえば機械強度や熱安定性を考慮して二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等から構成される層である。厚さは、材質や要求品質等に応じて決められるが、一般的には10〜30μm程度であればよい。
【0067】
以上、本発明のガスバリア性フィルムを構成する複合層の概略の構成について説明したが、この複合層はその表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が5nm以下であり、かつ1μm角あたりの表面積が101000nm2以下であることが必要である。これらの数値は、通常市販されている走査プローブ顕微鏡(以下「SPM」という。)により測定した画像から求めることができる。ここで、粗さとは、測定面積において大きなうねりの上に存在する微小な凹凸の粗さのことを意味する。
【0068】
複合層の最上層に位置する無機酸化物の蒸着薄膜層はそこに蒸着されている無機酸化物の粒子が、より緻密に隙間なく堆積して成膜されたものとすることで、ガスバリア性が向
上する。特に、複合層を構成する無機酸化物の蒸着薄膜層の表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)を5nm以下とし、かつ1μm角あたりの表面積を101000nm2以下とすると、薄膜粒子が緻密に堆積され、無機酸化物の蒸着薄膜層114とフィルム基材111間の密着性が一段と向上するようになる。
【0069】
蒸着薄膜層を成膜する際の処理条件や蒸着材料の種類等を適宜に選択したり、易接着層やアンカーコートを形成するためのコーティング液の塗布条件、塗布後の延伸条件等の作製条件、さらには上記した各コーティング液の種類や組成等を適宜に選択して、本発明のガスバリア性フィルムを作製することにより、このような表面粗さの特性を有する複合層が設けられるようにすればよい。
【0070】
また、成膜前にフィルム基材の表面や、易接着層やアンカーコート層の表面をスパッタリングやプラズマで適度に荒らすようにしてもよい。
【実施例】
【0071】
以下に、本願発明の一実施例を図面に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0072】
まず、以下のようにして、易接着層形成用のコーティング液A1、アンカーコート層形成用のコーティング液B1〜B3、ガスバリア性被膜層形成用のコーティング液C1を調製した。
<コーティング液Alの調製>
アジピン酸をポリエステルの二塩基酸成分とした水分散性ポリエステルポリウレタンとビスフェノールAグリシジルエーテルとを100:6の固形分質量比で含有した水溶液を調製し、コーティング液Alとした。
<コーティング液B1の調製>
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンとビニルトリエトキシシランを等量混合し、この混合液を、水とエタノールの混合物に添加し、固形分が10%となるように調製し、コーティング液B1とした。
<コーティング液B2の調製>
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)アミンとビニルトリエトキシシランを質量比70:30の割合にて混合し、この混合液を、水とエタノールの混合物に添加し、固形分が7%となるように調製し、コーティング液B2とした。
<コーティング液B3の調製>
水酸基価が5mgKOH/gのポリエステル樹脂を20質量%の濃度で含有した7gの酢酸エチル溶液を準備した。この溶液に、キシリレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートとを80:20の質量比で含有した1.5gの混合物を混合した。次いで、この溶液を、固形分濃度が2質量%となるように酢酸エチルで希釈し、さらに、10分間攪拌し、コーティング液B3とした。
<コーティング液C1の調製>
まず、10gのテトラエトキシシランに、90gの0.1N塩酸水溶液を添加した。次いで、この混合液を30分間攪拌して、テトラエトキシシランの加水分解を生じさせた。これにより、SiO2換算で固形分を3質量%の濃度で含有した加水分解溶液を得た。次に、PVAと水とイソプロピルアルコールとを混合して、65gのPVA溶液を調製した。水とイソプロピルアルコールとの質量比は90:10とした。また、このPVA溶液のPVA濃度は、4質量%とした。
【0073】
これら加水分解溶液とPVA溶液とを混合して、コーティング液を調製し、コーティング液C1とした。
【0074】
続いて、下記のようにして透明ガスバリア性フィルムBF1〜10を作製した。
<透明ガスバリア性フィルムBF1の作製>
まず、Tダイ法により、ナイロン6からなる厚さが150μmの未延伸のフィルムを成膜した。
【0075】
次に、このフィルムの一方の面の上に、マイヤーバーコート法によりコーティング液A1の塗膜を塗布した。この塗膜を乾燥させた後、未延伸のフィルムを、縦方向に3.0倍、横方向に3.3倍になるように同時二軸延伸した。そして、210℃の温度でヒートセット処理を行い、一方の面に厚さが0.05μmの易接着層を有する厚さ15μmのフィルム基材を得た。
【0076】
その後、易接着層上に、グラビアコート法によりコーティング液B1の塗膜を塗布した。そして、この塗膜を乾燥させることにより、厚さが0.05μmのアンカーコート層を得た。
【0077】
続いて、抵抗加熱方式を用いて真空蒸着装置により酸化珪素からなる厚さが50nmの無機酸化物の蒸着薄膜層をアンカーコート層上に形成し、透明ガスバリア性フィルムBF1を得た。
【0078】
得られた透明ガスバリア性フィルムBF1の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面について、走査プローブ顕微鏡(SPM)セイコーインスツルメント社製SPI−3800Nを用い、測定モード:DFM、カンチレバー:SI−DF20で、1×1μmの測定範囲で面形状の測定を行い、表面粗さ及び表面積を測定した。表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.18nmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100900nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF2の作製>
アンカーコート層上にコーティング液B2の塗膜を塗布した後、この塗膜を乾燥させることにより、厚さが0.04μmのアンカーコート層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムBF1の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF2を作製した。この無機酸化物層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.52μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は102000nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF3の作製>
アンカーコート層上にコーティング液B3の塗膜を塗布した後、この塗膜を乾燥させることにより、厚さが0.03μmのアンカーコート層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムBF1の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF3を作製した。この無機酸化物層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は6.31μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100800nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF4の作製>
コーティング液Alにより易接着層を形成しなかった以外は、透明ガスバリア性フィルムBF3の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF4を作製した。この無機酸化物層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は7.34μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は102800nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF5の作製>
透明ガスバリア性フィルムBF1と同様の方法で作製した透明ガスバリア性フィルムの無機酸化物の蒸着薄膜層上に、グラビアコート法により、コーティング液C1の薄膜を塗布し、しかる後にこの塗膜を加熱乾燥させることにより、厚さが0.3μmのガスバリア性被膜層を有する透明ガスバリア性フィルムBF5を得た。この透明ガスバリア性フィルムBF5の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.31μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100800nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF6の作製>
アンカーコート層上にコーティング液B2の塗膜を塗布した後、この塗膜を乾燥させる
ことにより、厚さが0.05μmのアンカーコート層を得たこと以外は、透明ガスバリア性フィルムBF5の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF6を作製した。この透明ガスバリア性フィルムBF6の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.27μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100700nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF7の作製>
アンカーコート層上にコーティング液B3の塗膜を塗布した後、この塗膜を乾燥させることにより、厚さが0.035μmのアンカーコート層を得たこと以外は、透明ガスバリア性フィルムBF5の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF7を作製した。この透明ガスバリア性フィルムBF7の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.82μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は102300nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF8の作製>
易接着層を設けなかった以外は、透明ガスバリア性フィルムBF7の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF8を作製した。この透明ガスバリア性フィルムBF8の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は10.50μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100900nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF9の作製>
抵抗加熱方式を用いて真空蒸着装置により酸化珪素からなる厚さが50nmの無機酸化物の蒸着薄膜層を形成する代わりに、電子線加熱方式を用いた真空蒸着装置により酸化アルミニウムからなる厚さが15nmの無機酸化物の蒸着薄膜層を形成したこと以外は、透明ガスバリア性フィルムBF5の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF9を作製した。この透明ガスバリア性フィルムBF9の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は4.85μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は100700nm2であった。
<透明ガスバリア性フィルムBF10の作製>
易接着層を設けなかった以外は、透明ガスバリア性フィルムBF9の作製方法と同様の方法により、透明ガスバリア性フィルムBF10を製造した。この透明ガスバリア性フィルムBF10の無機酸化物の蒸着薄膜層の表面粗さRz(十点平均粗さ)は12.65μmあり、かつ1μm角あたりの表面積は101200nm2であった。
【0079】
以上のようにして作製された透明ガスバリアフィルムBF1〜10に係る表面粗さ及び表面積の測定結果を、酸素透過度ともに表1に示す。
【0080】
【表1】

表1に示の結果より、実施例BF1は、BF2〜4よりバリア性が優れていること、BF5、6はBF7、8よりガスバリア性が優れていること、BF9はBF10よりガスバリア性が優れていることがわかる。BF7、8、10はガスバリア性被膜層を有しているが、それでも10cc前後の値であり、ガスバリア性が十分ではない。すなわち、表面粗さRz(十点平均粗さ)が5μm以下であり、かつ1μm角あたりの表面積が101000nm2以下であるバリアフィルム以外は、ガスバリア性が十分ではない。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の一実施形態に係る透明ガスバリア性フィルムの概略の断面構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0082】
11・・・透明ガスバリア性フィルム
111・・・ポリアミド系樹脂フィルム基材
112・・・易接着層
113・・・アンカーコート層
114・・・無機酸化物の蒸着薄膜層
115・・・ガスバリア性被膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系樹脂フィルム基材の少なくとも一方の面に、易接着層とアンカーコート層と無機酸化物の蒸着薄膜層とが順次積層されてなる複合層が少なくとも設けられていると共に、その複合層の表面の表面粗さRz(十点平均粗さ)が5nm以下であり、かつ1μm角あたりの表面積が101000nm2以下であることを特徴とするガスバリア性フィルム。
【請求項2】
前記易接着層は、窒素原子とアジピン酸とビスフェノールグリジルエーテルとを含んでいることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項3】
前記アンカーコート層は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物と金属アルコキシドまたはその加水分解生成物との反応生成物を含んでいることを特徴とする請求項1または2に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項4】
前記無機酸化物は、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物のいずれかであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のガスバリア性フィルム。
【請求項5】
前記複合層の無機酸化物の蒸着薄膜層の上には、水と水溶性高分子と、金属アルコキシド、その加水分解生成物、及び塩化錫からなる群より選択される少なくとも1つの化合物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記複合層の無機酸化物の蒸着薄膜層の上には、水溶性高分子とテトラアルコキシシランまたはその加水分解生成物とトリアルコキシシランまたはその加水分解生成物とを含有するコーティング液からなる薄膜の乾燥被膜であるガスバリア性被膜層が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記コーティング液のトリアルコキシシランの珪素と結合したアルコキシ基以外の有機官能基は疎水性有機官能基であることを特徴とする請求項6に記載のガスバリア性フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−149300(P2010−149300A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327393(P2008−327393)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】