説明

ガスバリア性包装材およびその製造方法

【課題】耐着色性に優れるガスバリア性包装材を提供する。
【解決手段】基材層、接着層、ガスバリア層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層を積層してなるガスバリア性包装材であり、前記アンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥したものであり、上記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層と接触する面がオゾン処理されたものであることを特徴とする。オゾン処理によって耐着色性を付与し、ラミネート強度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色性物質を内容物とした場合にも包装材への着色を防止することができるガスバリア性包装材に関し、包装材を構成するアンカーコート層に溶融押出しするポリオレフィン系樹脂層にオゾン処理を行うことで、着色を防止することができるガスバリア性包装材、およびオゾン処理によって生産効率を向上することができるガスバリア性包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品や電子部品その他の包装材として、プラスチック基材フィルムにガスバリア層やヒートシール層を積層したフィルムがあり、ガゼット型、ピロー型などに製袋された包装容器が多用されている。
【0003】
このようなプラスチック素材を含む包装材や包装容器は、用途に応じた各種の特性が付与され、多面的に使用されている。このような特性として、たとえば、プラスチック素材を含む包装材や包装容器の再使用を目的としてリターナブル容器が開発されている。再使用のための非着色性や非着臭性の付与を目的としたもので、乳酸単量体単位を分子内に有し、乳酸単量体成分含有量が50重量%以上である脂肪族ポリエステル重合体からなる、非着色性および/または非着臭性を有する食品用リターナブル容器である(特許文献1)。生分解性プラスチックは食品などと接触した場合に着色する場合があり、繰り返し使用には適切な素材でない点に鑑みてなされたものであり、乳酸単量体成分含有量の最低含有量を特定することで非着色性を確保する、とものである。
【0004】
また、耐アルコール性のガスバリア性フィルムとして、アルコール濃度が50質量%以上の液体、または該液体の含浸物を包装する包装袋であって、バリヤー層の上にヒートシール層を押出しラミネート法によって積層する際に、特定組成のアンカーコート剤を被覆することを特徴とするアルコール含有物用包装袋がある(特許文献2)。アルコール濃度が50質量%以上の場合は、長期の保存中にアルコール成分が積層体に浸透し、特にバリヤー層とヒートシール層との間の接着層を侵すため、ヒートシール層とバリヤー層とがデラミネーションを生ずる場合があることに鑑みてなされたものである。バリア層とヒートシール層との積層にドライラミネート用接着剤を使用すると塗布の際に有機溶剤を使用する必要があり、環境負荷が大きく、また、ヒートシール層の積層に押出しラミネーション法を採用すると、従来のポリエチレンイミン系AC剤などでは、高濃度のアルコールを含む場合に耐アルコール性が不足する。しかしながら、AC剤として不飽和カルボン酸またはその無水物0.01〜5質量%含むポリオレフィン共重合樹脂を不揮発性水性化助剤を用いずに数平均粒子径1μm以下に分散した水性分散液は、デラミネーションを防止できる、という。
【0005】
なお、特許文献2では、バリア層としてアルミニウム箔を使用し、ヒートシール層としてエチレン−メタクリル酸のランダム共重合体を使用した包装体では、アルコールを含む内容物を包装してもデラミネーションを防止できるが包装体の引裂き性が低下する問題が生ずるが、上記所定のAC剤によって切り裂き性も向上するという。
【特許文献1】特開2000−119377号公報
【特許文献2】特開2008−94471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、キムチやカレーなどの着色性食品は使用によって包装材が着色し、この着色は、食器洗い用洗剤などでは容易に除去することができない。内容物が着色成分を含有する場合、ヒートシール層などのプラスチック層が着色することは一般的に発生し、特に内容物に直接接触する包装材の最内層側に多発する。そしてこの着色が、包装材の再使用を妨げる一因となっている。
【0007】
耐着色性に関する技術を提供する上記特許文献1は、非着色性の食品用リターナブル容器を提供するものであるが、本来、プラスチック基材として生分解性のポリ乳酸を対象とするものであり、他のプラスチック素材を対象とするものではない。したがって、生分解性プラスチック以外のプラスチック素材を使用する場合にも、耐着色性を有するガスバリア性包装材の開発が望まれる。
【0008】
また、包装材として押し出しラミネーションによってガスバリア層とヒートシール層とを積層できれば、ヒートシール層にドライラミネーション用接着剤に使用する溶剤が残存することがなく、安全性に優れる。このような包装材として特許文献2のアルコール含有物用包装袋があるが、アルコールと共に着色性成分を含有する場合もありうるが、特許文献2は、ガスバリア層とヒートシール層とのデラミネーションを防止するものであり、耐着色性に関する記載は存在しない。したがって、ガスバリア層とヒートシール層とを押出しラミネーションによって積層することができ、かつ耐着色性を有するガスバリア性包装材の開発が望まれる。
【0009】
また、着色性物質によって着色された包装材の色は、着色性物質の色と同一であるとは限らず、プラスチックフィルムを構成する成分によって異なる発色をする場合もある。従って、再使用を目的としない場合でも、着色性成分による着色を防止しうる、ガスバリア性包装材の開発が望まれる。
【0010】
更に、前記ガスバリア層として、無機酸化物などを蒸着したガスバリア性積層フィルムやアルミニウム箔があり、内容物の確認のためには透明蒸着フィルムが好適であるが、アルミニウム箔を使用すれば遮光性を確保することができる。したがって、透明蒸着フィルムやアルミニウム箔の双方をガスバリア層とした場合にも、耐着色性に優れるガスバリア性包装材の開発が望まれる。
【0011】
更に、内容物としてカレー粉、キムチの素(粉末)、唐辛子などの香辛料は、使用時にノッチなどを介して開封する場合があり、手切れ性に優れることも要求される。従来のAC剤やノーアンカーのEMAA仕様の包装袋は、バリア層とヒートシール層間のデラミネーションによってラミ強度が低下し、これに伴って手切れ性も低下する場合がある。特に、カレー粉やキムチなどの香辛料はデラミネーションが発生し易く、このような香辛料を内容物とする場合にもラミ強度を低下させず、十分な耐着色性を有し、かつ確保しうるガスバリア性包装体の開発が望まれる。
【0012】
更に、包装材は、各種の用途に使用されるため、その生産効率に優れることが要求される。従って、製造時に生産効率に優れる包装材の製造方法が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、ガスバリア層に押し出しラミネーション法によってヒートシール層を積層した包装材について詳細に検討した結果、所定のAC剤を使用し、更に、AC剤層に溶融押出しするポリオレフィン系樹脂層の表面にオゾン処理を行うと耐着色性およびラミネート強度に優れること、このため香辛料や着色性内容物の収納に好適に使用することができること、さらに、溶融押出しするポリオレフィン系樹脂層の前記AC剤層と接触する面にオゾン処理を行うと、ライン速度を早くしても耐着色性およびラミネート強度に優れるガスバリア性包装材が製造しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明は、外層から内層に向かって基材層、接着層、ガスバリア層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなるガスバリア性包装材であって、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥したものであり、上記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層と接触する面がオゾン処理されたものであることを特徴とする、ガスバリア性包装材を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記ガスバリア性包装材からなる包装容器を提供するものである。
また、本発明は、外層から内層に向かって基材層、ガスバリア層およびポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなるガスバリア性包装材の製造方法であって、前記基材層とガスバリア層とを接着層を介して積層して積層体を製造する工程、前記積層体のガスバリア層に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を、塗布および乾燥してアンカーコート層を形成する工程、前記ポリオレフィン系樹脂を溶融押出し、前記アンカーコート層と接する面にオゾン処理を行いながら前記アンカーコート層に積層する工程とからなることを特徴とする、ガスバリア性包装材の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、従来のAC剤を使用することができるため、従来の設備をそのまま使用して、かつ優れた耐着色性を有するガスバリア性包装材を製造することができる。
本発明のガスバリア性包装材は、所定のAC剤の使用によって耐アルコール性や手切れ性にも優れるため、内容物としてアルコールを含有する場合でも、長期保存性に優れるガスバリア性包装材を提供することができる。
【0017】
本発明のガスバリア性包装材は、ガスバリア層とオレフィン系樹脂層とを所定のアンカーコート層を介して接着するため、従来の有機溶媒を使用するラミネート用接着剤を使用せず、有機溶剤の排出量を低減することができ、環境に対する負荷を軽減することができる。
【0018】
本発明によれば、ガスバリア層に所定のAC剤層を形成した後にヒートシール層と押出しラミネートによって接着して調整することができ、AC剤層に溶融押出しするポリオレフィン系樹脂層にオゾン処理を行うことで押出しラミネート工程のフィルム送り出し速度を向上させることができるため、オゾン処理によって耐着色性を付与し、かつ生産効率も向上させることができる、優れたガスバリア性包装材の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、外層から内層に向かって基材層、接着層、ガスバリア層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなるガスバリア性包装材であって、前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥し、更に、上記ポリオレフィン系樹脂層がオゾン処理されたことを特徴とする、ガスバリア性包装材である。
【0020】
(1)ガスバリア性包装材の構成
本発明のガスバリア性包装材の好適な態様の一例を図面を用いて説明する。
図1は、外層から内層に向かって基材層(10)、アンカーコート層(15)、接着層(20)、ガスバリア層(30)、アンカーコート層(40)、表面にオゾン処理面(53)が形成されたポリオレフィン系樹脂層(50)が積層されてなるガスバリア性包装材の断面図である。前記基材層(10)にアンカーコート層(15)が積層され、このアンカーコート層(15)に接着層(20)およびガスバリア層(30)が積層され、前記ガスバリア層(30)にアンカーコート層(40)が積層され、次いで、溶融押出しされたポリオレフィン系樹脂層(50)の表面にオゾン処理面(43)を行った後に前記アンカーコート層(40)に積層されたものである。なお、基材層(10)とガスバリア層(30)との接着は、例えばラミネート用接着剤を接着層(20)を介して行うことができ、このようにして調製されたガスバリア性包装材の場合にはアンカーコート層(15)は不要である。
【0021】
また、本発明は、所定のアンカーコート層(40)に積層するポリオレフィン系樹脂層(50)の表面にオゾン処理面(53)を形成することで耐着色性を確保でき、かつラミネート強度を向上た点に特徴があり、この趣旨からポリオレフィン系樹脂層が2層以上であってもよい。これを図2に示す。図2は、アンカーコート層(40)に、溶融押出ししたポリオレフィン系樹脂(50)の表面にオゾン処理面(53)を行い、かつ前記ポリオレフィン系樹脂(50)の溶融押出しラミネートによってポリオレフィン系樹脂フィルム(55)を接着して調製されたガスバリア性包装材の断面図である。
【0022】
(2)基材層
本発明のガスバリア性包装材を構成する基材層としては、機械的、物理的、化学的強度を有し、製袋工程での耐熱性に優れる樹脂フィルムを使用することが好ましい。
【0023】
このような基材層を構成する樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂、その他等の各種の樹脂からなるフィルムを使用することができる。特に、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂のフィルムがある。
【0024】
上記樹脂は、上記樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法、その他等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸ないし2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを使用することができる。
【0025】
本発明では、基材層として、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムなどの二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD−6などのポリアミドフィルムを二軸延伸した二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンなどの二軸延伸ポリオレフィンフィルムなどを好適にすることが使用できる。
【0026】
また、基材層としては、上記のほか、紙や合成紙なども使用することができる。基材層としては、上記のいずれかを単独で使用するほか、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0027】
本発明において、基材層の厚さは、6〜100μmであることが好ましく、より好ましくは12〜16μmである。
(3)接着層
本発明では、前記基材層とガスバリア層との接着方法に応じて各種の接着層を使用することができる。例えば、基材層とガスバリア層とをドライラミネートする場合には、接着層としてラミネート用接着剤を使用することができる。
【0028】
ラミネート用接着剤としては、二液硬化型ポリウレタン系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルへキシルエステルなどのホモポリマーもしくはこれらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレンなどとの共重合体などからなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸などのモノマーとの共重合体などからなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂などからなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、反応型(メタ)アクリル酸系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴムなどからなる無機系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラスなどからなる無機系接着剤、その他の接着剤を使用することができる。これらの接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型などのいずれの組成物形態でもよく、反応機構として、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶着型、熱圧型などのいずれでもよい。なお、ラミネート用接着剤の使用量には特に限定はないが、一般には、0.1〜10g/m2(乾燥状態)である。上記ラミネート用接着剤は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。
【0029】
なお、基材層が紙基材である場合は、ウェットラミネート法で貼り合わせることもできる。その場合は、接着層として、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのエマルジョン接着剤を使用することができる。
【0030】
一方、基材層とガスバリア層とを押出しラミネートによって積層する場合には、接着層として溶融押出し可能な樹脂を接着層として使用することができる。このような樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、ポリエチレン系共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。接着層の厚さは、10〜50μmである。
【0031】
なお、溶融押出しによって基材層とガスバリア層とを積層する場合は、基材層に予めアンカーコート剤を塗布しておくことが好ましい。このようなアンカーコート剤としては、イソシアネート系(ウレタン系)、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系、その他のアンカーコーティング剤が例示できる。
【0032】
(4)ガスバリア層
ガスバリア層としては、酸素透過性、水蒸気透過性を制限できる各種のガスバリア性基材を使用することができる。例えば、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン・ビニルアルコール共重合体、基材フィルムに有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜が設けられた蒸着フィルム、アルミニウム箔などを例示することができる。
【0033】
(a)アルミニウム箔
アルミニウム箔は厚さ6〜20μmで十分なガスバリア性を付与することができる。
(b) ポリビニルアルコール
本発明では、ガスバリア層として、ポリビニルアルコールを好適に使用することができる。ポリビニルアルコールからなるガスバリア層の厚さに制限はないが、好ましくは12〜25μmである。ポリビニルアルコールは単層フィルムとして使用することができるが、水溶性高分子であるため、耐水性に優れる基材フィルムにポリビニルアルコールからなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、前記した基材層を好適に使用することができる。なお、ポリビニルアルコールからなる塗布膜は、好ましくは0.5〜3μmである。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を例示することができる。
【0034】
(c) エチレン・ビニルアルコール共重合体
本発明では、ガスバリア層として、エチレン・ビニルアルコール共重合体も好適に使用することができる。エチレン・ビニルアルコール共重合体からなるガスバリア層の厚さに制限はないが、好ましくは12〜25μmである。エチレン・ビニルアルコール共重合体は単層フィルムとして使用することができるが、基材フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、前記した基材層を好適に使用することができる。これにより、機械的特性など基材フィルムに応じた各種の特性を向上させることができる。なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体からなる塗布膜は、好ましくは0.5〜3μmである。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を例示することができる。
【0035】
(d) 蒸着フィルム
本発明では、基材フィルムに有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜が設けられた蒸着フィルムをガスバリア層として使用することができる。このような基材フィルムは、前記した基材層を好適に使用することができる。蒸着層の厚みは、150〜2000Åの範囲が適当である。
【0036】
有機珪素化合物、金属または金属酸化物の蒸着は、化学気相成長法、物理気相成長法によって行うことができる。化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の蒸着膜を形成することができる。
【0037】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
【0038】
上記の低温プラズマ化学気相成長法による蒸着膜の形成法の一例を低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である図3を用いて説明する。
本発明では、プラズマ化学気相成長装置221の真空チャンバー222内に配置された巻き出しロール223から基材フィルム201を繰り出し、更に、該基材フィルム201を、補助ロール224を介して所定の速度で冷却・電極ドラム225周面上に搬送する。一方、ガス供給装置226、227および、原料揮発供給装置228等から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスその他等を供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル229を通して真空チャンバー222内に導入する。該蒸着用混合ガス組成物を上記冷却・電極ドラム225周面上に搬送された基材フィルム201の上に供給し、グロー放電プラズマ230によってプラズマを発生させ照射し、蒸着膜を製膜化する。次いで、上記で蒸着膜を形成した基材フィルム201を補助ロール233を介して巻き取りロール234に巻き取れば、プラズマ化学気相成長法による有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム225は、真空チャンバー222の外に配置されている電源231から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム225の近傍には、マグネット232を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガスなかの1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図3中、符号235は真空ポンプを表す。
【0039】
本発明では、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10-1〜1×10-8Torr位、好ましくは、真空度1×10-3〜1×10-7Torr位に調整することが好ましい。
【0040】
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合させ、この混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入させる。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは真空度1×10-1〜1×10-2Torrであることが好ましく、また、基材フィルムの搬送速度は、10〜300m/分、好ましくは50〜150m/分である。このようにして得られる有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜の形成は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、当該形成される蒸着膜は、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となり、従って、蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、形成される蒸着膜と基材フィルムとの密接着性が高いものとなる。更に、蒸着膜の形成時の真空度は、1×10-1〜1×10-4Torr、好ましくは、1×10-1〜1×10-2Torrであって、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10-4〜1×10-5Torrに比較して低真空度であるから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
【0041】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密な、柔軟性等に富む薄膜を形成するものであり、通常、一般式SiOX(ただし、Xは、0〜2の数を表す)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。上記酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ただし、Xは、1.3〜1.9の数を表す。)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
【0042】
本発明において、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、更に、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有する蒸着膜からなることを特徴とするものである。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている場合、更に、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有する場合があるものである。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカ、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。本発明では、上記蒸着膜として、有機珪酸化合物を含有する蒸着膜であることが好ましい。なお、上記以外でも、蒸着過程の条件等を変化させることにより、蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合があり、一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
【0043】
更に、本発明では、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜において、上記の化合物の含有量が蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が高められ、他方、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
【0044】
本発明において、上記の蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
【0045】
本発明において、上記蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Å位であることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生する場合があり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を奏することが困難になる場合がある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚を変更する手段としては、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行うことができる。
【0046】
本発明では、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜として、蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜の状態でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した蒸着膜を構成することもできる。
【0047】
本発明において、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、その他等を使用することができる。これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、または、ヘキサメチルジシロキサンを原料として使用することが、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から、特に好ましい。なお、上記において、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を使用することができる。
【0048】
一方、本発明では、物理気相成長法によっても有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。このような物理気相成長法として、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)などにより有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。
【0049】
具体的には、有機珪素化合物、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、または、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、更に酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いて蒸着膜を形成することができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による蒸着膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図4を参照して説明する。
【0050】
まず、巻き取り式真空蒸着装置241の真空チャンバー242の中で、巻き出しロール243から繰り出す基材フィルム201は、ガイドロール244、245を介して、冷却したコーティングドラム246に案内される。上記の冷却したコーティングドラム246上に案内された基材フィルム201の上に、るつぼ247で熱せられた蒸着源248、例えば、金属アルミニウム、あるいは、酸化アルミニウム等を蒸発させ、更に、必要ならば、酸素ガス吹出口249より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク250、250を介して、例えば、酸化アルミニウム等を蒸着してなる蒸着膜を成膜化し、次いで、上記において、例えば、前記蒸着膜を形成した基材フィルム201を、ガイドロール251、252を介して送り出し、巻き取りロール253に巻き取ると物理気相成長法による蒸着膜を形成することができる。なお、上記巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の蒸着膜を形成し、次いで、その上に蒸着膜を更に形成し、または、上記巻き取り式真空蒸着装置を2連に連接し、連続的に蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる前記蒸着膜を形成してもよい。
【0051】
金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜としては、基本的には、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。よって、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物と称することができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。
【0052】
また、上記のXの値の範囲としては、ケイ素(Si)は0を超え2以下、アルミニウム(Al)は0を超え1.5以下、マグネシウム(Mg)は0を超え1以下、カルシウム(Ca)は0を超え1以下、カリウム(K)は0を超え0.5以下、スズ(Sn)は0を超え2以下、ナトリウム(Na)は0を超え0.5以下、ホウ素(B)は0を超え1、5以下、チタン(Ti)は0を超え2以下、鉛(Pb)は0を超え1以下、ジルコニウム(Zr)は0を超え2以下、イットリウム(Y)は0を超え1.5以下の範囲である。上記においてX=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。一般的に、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲である。なお、前記蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜は、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した蒸着膜を構成することもできる。
【0053】
前記蒸着フィルムは、前記蒸着膜上に、更に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、該組成物を上記基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ上記の基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成したものであってもよい。このようなガスバリア性組成物は、特開2008−054565号公報などに詳細に記載されている。
【0054】
(5)アンカーコート層
本発明でガスバリア層に形成するアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥して形成することができる。
【0055】
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。なお、不飽和カルボン酸はアンモニアやトリエチルアミンなどの有機アミン化合物を含む塩基性化合物によって中和されていてもよい。
【0056】
本発明で使用するポリオレフィン共重合体は、上記不飽和カルボン酸やその無水物をポリオレフィン樹脂中に共重合したものであり、その形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。上記不飽和カルボン酸またはその無水物は、ポリオレフィン共重合体中に、0.01〜5質量%の範囲で共重合されることが好ましい。これにより、不揮発性水性化助剤を実質的に含まずに水性分散体を調製することができるからである。この不揮発性水性化助剤は、被膜形成後にもポリオレフィン共重合樹脂中に残存し、被膜を可塑化することにより、ポリオレフィン共重合樹脂の特性、例えば耐水性等を悪化させる場合がある。本発明では不揮発性水性化助剤が実質的に含まれないため、被膜特性、特に耐水性に優れる。なお、「水性化助剤」とは、水性分散体の製造において、水性化促進や水性分散体の安定化の目的で添加される薬剤や化合物のことであり、「不揮発性」とは、常圧での沸点を有さないか、もしくは、常圧で高沸点(例えば300℃以上)であることを指す。不揮発性水性化助剤を実質的に含有しない」とは、不揮発性水性化助剤を積極的には系に添加しないことにより、結果的にこれらを含有しないことを意味する。こうした不揮発性水性化助剤は、含有量がゼロであることが特に好ましいが、本発明の効果を損ねない範囲で、ポリオレフィン共重合樹脂成分に対して0.1質量%未満程度含まれていても差し支えない。
【0057】
また、前記ポリオレフィン共重合樹脂の数平均粒子径は、水性分散体の保存安定性に優れる点で1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下である。さらに、重量平均粒子径も、1μm以下が好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0058】
上記ポリオレフィン共重合樹脂からなる水性分散体を得るための方法は特に限定されないが、たとえば、粒子径1cm以下、好ましくは0.8cm以下の粒状ないしは粉末状の上記組成のポリオレフィン共重合樹脂、塩基性化合物、水、さらに必要に応じて有機溶剤を、好ましくは密閉可能な容器中で加熱、攪拌する。容器としては、固/液撹拌装置や乳化機を使用することができ、0.1MPa以上の加圧が可能な装置を使用することが好ましい。樹脂が水性媒体中で浮遊状態となる程度の低速の撹拌でも十分水性化が達成されるため、簡便な装置でも水性分散体の製造が可能である。温度40℃以下の温度で攪拌混合し、次いで、槽内の温度を80〜200℃に保ち、5〜120分間攪拌を続けることによりポリオレフィン共重合体樹脂を十分に水性化させ水性分散液を得ることができる。
【0059】
本発明では、このようにして得られた水性分散液を、前記ガスバリヤ層に乾燥時の厚みが0.1〜2μm、より好ましくは0.1〜0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥して形成する。
【0060】
(6)ポリオレフィン系樹脂層
本発明において、前記アンカーコート層に積層するポリオレフィン系樹脂層は、包装材のヒートシール層を構成するものであり、前記アンカーコート層に表面がオゾン処理されたポリオレフィン系樹脂を押出しラミネートし、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを前記アンカーコート層の上に表面がオゾン処理されたポリオレフィン系樹脂を押出しラミネートを介して積層し、ガスバリア性包装材を製造することができる。
【0061】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、これらの金属架橋物、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他等の樹脂を使用することができる。これらの中から、容器の熱接着面の材質に合わせて適するものを選択して使用することができる。
【0062】
また、ガスバリア性包装材をイージーピール性にする場合は、ポリオレフィン系樹脂層を2層構成とし、前記アンカーコート層に接する側の面は、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体層とし、さらに100質量部のポリブテン−1に30〜80質量部の低密度ポリエチレンまたはエチレン系共重合体を混合した混合樹脂層を使用することが好ましい。これにより、イージーピール性を付与することができる。
【0063】
本発明において、ヒートシール性フィルムの厚さとしては、20〜200μm位、好ましくは、40〜100μm位が望ましいものである。
本発明では、溶融押出したポリオレフィン系樹脂層にオゾン処理を行ってオゾン処理面を形成した後にアンカーコート層に積層する点に特徴がある。ポリオレフィン系樹脂層のオゾン処理により耐着色性およびラミネート強度を向上させることができる。また、ポリオレフィン系樹脂層のアンカーコート層と接触する面にオゾン処理を行うことで、ライン速度を上昇させることができる。
【0064】
オゾン処理は、オゾンガスをポリオレフィン系樹脂層のアンカーコート層と接する面に20〜50L/分、5〜10g/m3で噴霧する条件でよい。オゾン処理によって耐着色性が付与される理由は明確ではないが、上記アンカーコート層のカルボン酸基と、オゾンによって酸化された押出しポリオレフィン系樹脂の水酸基とが反応し、ポリオレフィン共重合樹脂を網目状に強固に結合するためと考えられる。
【0065】
(7)他の層
本発明のガスバリア性包装材には、これを構成するいずれかの層間に所望の印刷模様層を形成することができる。上記の印刷模様層としては、例えば、基材フィルムやガスバリア性塗布膜の上に、通常のグラビアインキ組成物、オフセットインキ組成物、凸版インキ組成物、スクリーンインキ組成物、その他のインキ組成物を使用し、例えば、グラビア印刷方式、オフセット印刷方式、凸版印刷方式、シルクスクリーン印刷方式、その他の印刷方式を使用し、例えば、文字、図形、絵柄、記号、その他からなる所望の印刷絵柄を形成することにより構成することができる。
【0066】
また、本発明のガスバリア性包装材は、変形防止強度、落下衝撃強度、耐ピンホール性、耐熱性、密封性、品質保存性、作業性、衛生性、その他等の種々の条件を向上させるため、上記ガスバリア性包装材を構成するいずれかの層に他の層を積層してもよい。
【0067】
(8)ガスバリア性包装材の製造方法
本発明のガスバリア性包装材の製造方法に限定はないが、前記基材層とガスバリア層とを接着層を介して積層して積層体を製造する工程、前記積層体のガスバリア層に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を、塗布および乾燥してアンカーコート層を形成する工程、前記ポリオレフィン系樹脂を溶融押出し、前記アンカーコート層と接する面にオゾン処理を行いながら前記アンカーコート層に積層する工程とによって製造することができる。本発明では、アンカーコート層に積層する前記ポリオレフィン系樹脂層面にオゾン処理を行うことで、ラインスピードを向上させることができ、かつ耐着色性を付与することができる。
【0068】
前記基材層とガスバリア層とを接着層を介して積層して積層体を製造する工程としては、接着層としてラミネート用接着剤を使用し、基材層とガスバリア層とをドライラミで接着してもよく、接着層として溶融樹脂を使用し、基材層とガスバリア層とを前記接着層の溶融押出しラミネート法によって接着しても良い。
【0069】
次いで、得られた積層体のガスバリア層に前記した不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥する。水性分散液の塗工は、ロールコート、グラビアコート、キスコートその他のコート法や印刷法によって行うことができる。アンカーコート層の厚さは、乾燥時の厚みが0.1〜2μmである。本発明では、積層体をライン速度30〜200m/分、より好ましくは100〜160m/分で移送し、積層体のガスバリア層にアンカーコート層を塗工し、および乾燥する。
【0070】
次いで、上記ライン速度を維持したまま、溶融押出ししたポリオレフィン系樹脂層に濃度20〜50L/分、5〜10g/m3のオゾンガスを噴霧してオゾン処理を行い、オゾン処理面を前記アンカーコート層に積層する。オゾン処理によって、ライン速度を低下させることなく、かつラミネート強度に優れるガスバリア性包装材を製造することができ、生産性を向上させることができる。
【0071】
本発明では、上記のように、オゾン処理したポリオレフィン系樹脂を前記アンカーコート層に溶融押出しコートすることで、本発明のガスバリア性包装材を製造することができるが、ポリオレフィン系樹脂フィルムを押し出し溶融し、上記した条件でオゾン処理し、オゾン処理面を前記アンカーコート層と積層しつつポリオレフィン系樹脂フィルムを積層して、本発明のガスバリア性包装材を製造してもよい。これにより、ポリオレフィン系樹脂が2層以上で形成されるが、これによって更にラミネート強度を向上させ、手切れ性や保存性を向上することができる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂の押出し温度は、その種類に応じて適宜選択することができる。
【0072】
(9)包装容器
上記ガスバリア性包装材を使用して包装用容器を製造することができる。例えば、上記ガスバリア性包装材のポリオレフィン系樹脂層を対向させて、それを折り重ねるか、或いはその二枚を重ね合わせ、更にその周辺端部をヒートシールしてシール部を設けて包装容器を構成することができる。その製袋方法としては、上記の積層材を、その内層の面を対向させて折り曲げるか、あるいはその二枚を重ね合わせ、更にその外周の周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして、製造することができる。
【0073】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、本発明においては、上記のような包装用容器には、例えば、ワンピースタイプ、ツウーピースタイプ、その他等の注出口、あるいは開閉用ジッパー等を任意に取り付けることができる。
【0074】
本発明において、上記のようにして製造した包装用容器は、カレー粉、粉末キムチのもとなどの耐内容物性が求められる食品の収納に好適に使用することができる。また、着色性物質を収納しても耐着色性に優れるため、開閉用ジッパー等を任意に取り付け、リターナブル包装容器としても好適に使用することができる。
【実施例】
【0075】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。

(実施例1)
(1)ガスバリア性包装材の製造
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、イソシアネート系アンカーコート剤を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥してアンカーコート層を形成した。次いで、前記アンカーコート層に、低密度ポリエチレンを押出し温度330℃で厚み15μmに押し出し、厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合わせた。
【0076】
次いで、ライン速度100m/分で、前記アルミニウム箔に、無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液(分散樹脂の数平均粒子径0.6μm、不揮発性水性化助剤不使用)を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、加熱乾燥してアンカーコート層を形成した。
【0077】
ついで、このアンカーコート層に、前記したライン速度100m/分で、低密度ポリエチレンを押出し温度330℃で厚み25μmに押出し、押出し層の表面にオゾンガスを30L/分、8.5〜9.0g/m3で噴霧してオゾン処理を行い、前記アンカーコート層と押出しコートして、本発明のガスバリア性包装材を作製した。これをガスバリア性包装材(1)とする。
【0078】
ガスバリア性包装材(1)の層構成は、PETフィルム(厚み12μm)/イソシアネート系のAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み15μm)/AL箔(厚み7μm)/前記水性分散液によるAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み25μm)である。
【0079】
(2)耐着色性の評価
前記ガスバリア性包装材(1)を縦100mm、横100mmの方形に切断し、前記LDPE層を対抗するように成形し、外周の三方を幅10mmでヒートシールして包装容器を調製した。この容器に(i)カレー粉15g、(ii)粉末キムチの素15g、(iii)粉末唐辛子15g、(iv)ケチャップと食酢と食用油とを質量比1:1:1で混合した混合液20g、(v)エタノール80容積%水溶液20gをそれぞれ充填した。
【0080】
これを60℃、1ヶ月保存し、着色性を評価した。結果を表1に示す。
(3)デラミネーションの有無
前記ガスバリア性包装材(1)を縦100mm、横100mmの方形に切断し、前記LDPE層を対抗するように成形し、外周の三方を幅10mmでヒートシールして包装容器を調製した。この容器に(i)カレー粉15g、(ii)粉末キムチの素15g、(iii)粉末唐辛子15g、(iv)ケチャップと食酢と食用油とを質量比1:1:1で混合した混合液20g、(v)エタノール80容積%水溶液20gをそれぞれ充填した。
【0081】
これを60℃、1ヶ月保存し、ガスバリア層とヒートシール層との間の剥離の有無の観察を行った。結果を表2に示す。
(4)ラミネート強度の測定
上記(3)でデラミネーションが無かった包装材について、ラミネート強度の測定を行った。ラミネート強度は、ガスバリア性包装材(1)を15mm幅に切断して試験片とし、テンシロン測定器を使用し、前記試験片15mmの端部からアルミニウム箔と最内層であるLDPE層との間を剥がしてツマミを形成し、90度剥離により50mm/分の剥離速度で測定し、15mm当たりの剥離強度(単位:N/15mm)で評価した。結果を表3、表5に示す。
【0082】
(5)手切れ性の評価
上記(3)の保存後の手切れ性を官能で評価し、結果を表4に記載した。なお、表4において、◎:良く切れる、○切れる、△切れにくい、×切れないである。

(実施例2)
アルミニウム箔に代えて、厚さ12μmの二軸延伸PETフィルムにアルミニウム酸化物を厚さ400Åに蒸着した蒸着PETフィルムを使用した以外は、実施例1と同様に操作し、本発明のガスバリア性包装材を作製した。これをガスバリア性包装材(2)とする。
【0083】
ガスバリア性包装材(2)の層構成は、PETフィルム(厚み12μm)/イソシアネート系のAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み15μm)/アルミナ蒸着PET(厚み12μm)/前記水性分散液によるAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み25μm)である。
【0084】
上記ガスバリア性包装材(2)を使用し、実施例1と同様に耐着色性、デラミネートの有無、ラミネート強度を評価した。結果を表1〜3に示す。

(比較例1)
前記ポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液に代えてイソシアネート系アンカーコート剤(三井化学ポリウレタン社製、商品名「A3210」)を使用した以外は実施例1と同様に操作し、ガスバリア性包装材を作製した。これを比較ガスバリア性包装材(1)とする。
【0085】
比較ガスバリア性包装材(1)の層構成は、PETフィルム(厚み12μm)/イソシアネート系のAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み15μm)/AL箔(厚み7μm)/イソシアネート系のAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み25μm)である。
【0086】
上記ガスバリア性包装材(1)を使用し、実施例1と同様に耐着色性、デラミネートの有無、ラミネート強度、手切れ性を評価した。結果を表1〜4に示す。

(比較例2)
厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムに、イソシアネート系アンカーコート剤を乾燥時の厚みが0.5μmとなるように塗布、乾燥してアンカーコート層を形成した。次いで、前記アンカーコート層に、低密度ポリエチレンを押出し温度330℃で厚み15μmに押し出し、厚さ7μmのアルミニウム箔を貼り合わせた。
【0087】
次いで、前記アルミニウム箔に、エチレン−メタクリル酸ランダム共重合体(EMAA樹脂)を押出し温度295℃で厚み25μmに押出し、ガスバリア性包装材を作製した。これを比較ガスバリア性包装材(2)とする。
【0088】
比較ガスバリア性包装材(2)の層構成は、PETフィルム(厚み12μm)/イソシアネート系のAC層(厚み0.5μm)/LDPE層(厚み15μm)/AL箔(厚み7μm)/EMAA樹脂層(厚み25μm)である。
【0089】
上記比較ガスバリア性包装材(2)を使用し実施例1と同様に、デラミネートの有無、ラミネート強度、手切れ性を評価した。結果を表2〜4に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

(実施例3)
ライン速度100m/分を、ライン速度120、140、160に代えた以外は実施例1と同様に操作してガスバリア性包装材を作製した。得られたガスバリア性包装材について、実施例1の(4)と同様に操作してラミネート強度を測定した。結果を表5に示す。

(比較例3)
オゾン処理を行わない以外は実施例3と同様に操作して、ガスバリア性包装材を作製した。得られたガスバリア性包装材について、実施例1の(4)と同様に操作してラミネート強度を測定した。結果を表5に示す。

【0094】
【表5】

(結果)
(1)実施例1および比較例1の結果から、アンカーコート剤として無水マレイン酸2質量%を含有するポリオレフィン共重合樹脂の水性分散液を使用し、更にアンカーコート層に積層するポリオレフィン系樹脂層にオゾン処理を行うことで、耐着色性を確保し、かつ長期に亘りラミネート強度を維持しうることが判明した。
【0095】
(2)実施例1および実施例2の結果から、この耐着色性および高いラミネート強度は、ガスバリア層としてアルミニウム箔を使用する場合に限定されず、アルミニウム酸化物の蒸着層をガスバリア層として積層する場合も同様であり、透明ガスバリア性包装材、遮光ガスバリア性包装材の双方において、耐着色性およびラミネート強度の向上が確保された。
【0096】
(3)表3の結果から、比較例1や比較例2のガスバリア性包装材は、内容物の種類によってラミネート強度が低下したが、実施例1および実施例2で作製した本発明のガスバリア性包装材は、カレー粉やキムチの素など刺激性の高い内容物を収納した場合にも、長期保存後のラミネート強度を高く維持しうることが判明した。
【0097】
(4)表4の結果から、実施例1で作製した本発明のガスバリア性包装材は、保存試験後も手切れ性に優れることが判明した。この結果は、表3に示すように、本発明のガスバリア性包装材のラミネート強度の高いことによるものと考えられる。
【0098】
(5) 実施例3、比較例3、表5の結果から、ライン速度が100m/分では、オゾン処理の有無によるラミネート強度の差は少ないが、ライン速度が160m/分に高速になるにつれ、オゾン処理のない場合にラミネート強度が低下した。このことは、ポリオレフィン系樹脂層のオゾン処理によってラミネート強度の高いガスバリア性包装材を、効率的に生産できることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明のガスバリア性包装材は、耐内容物性に優れるためデラミネーションを生ずることなく、耐着色性に優れ、長期に亘り内容物を安定して収納することができ、かつ長期保存後の手切れ性も優れる。このため、香辛料などの保存に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、外層から内層に向かって基材層(10)、アンカーコート層(15)、接着層(20)、ガスバリア層(30)、アンカーコート層(40)、表面にオゾン処理面(53)が形成されたおよびポリオレフィン系樹脂層(50)が積層されてなるガスバリア性包装材の断面図である。
【図2】図1のポリオレフィン系樹脂層が、2層からなる、本発明のガスバリア性包装材の断面図である。
【図3】低温プラズマ化学蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【図4】巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図である。
【符号の説明】
【0101】
10・・・基材層、
15・・・アンカーコート層、
20・・・接着層、
30・・・バリヤー層、
40・・・アンカーコート層、
50・・・ポリオレフィン系樹脂層、
53・・・オゾン処理面、
55・・・ポリオレフィン系樹脂層(フィルム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外層から内層に向かって基材層、接着層、ガスバリア層、アンカーコート層、ポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなるガスバリア性包装材であって、
前記積層体のアンカーコート層は、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を塗布および乾燥したものであり、
上記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層と接触する面がオゾン処理されたものであることを特徴とする、ガスバリア性包装材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂層は、前記アンカーコート層に表面がオゾン処理されたポリオレフィン系樹脂を押出しラミネートして形成されたものである、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを前記アンカーコート層の上に表面がオゾン処理されたポリオレフィン系樹脂を押出しラミネートを介して積層されたものである、請求項1記載のガスバリア性包装材。
【請求項3】
前記ガスバリア層は、アルミ箔、または基材フィルムに有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜が設けられた蒸着フィルムである、請求項1または2記載のガスバリア性包装材。
【請求項4】
前記蒸着フィルムは、前記蒸着膜上に、更に一般式R1nM(OR2m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1〜8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更に、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたことを特徴とする、請求項3記載のガスバリア性包装材。
【請求項5】
前記基材層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記ガスバリヤ層はアルミニウム箔であり、
前記ポリオレフィン系樹脂層は、低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂層は、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン−α・オレフィン共重合体層と、100質量部のポリブテン−1に30〜80質量部の低密度ポリエチレンまたはエチレン系共重合体を混合した混合樹脂層との2層からなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
【請求項7】
着色性物質の包装に使用されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のガスバリア性包装材。
【請求項8】
請求項1〜7に記載のガスバリア性包装材からなる包装容器。
【請求項9】
外層から内層に向かって基材層、ガスバリア層およびポリオレフィン系樹脂層をこの順に積層してなるガスバリア性包装材の製造方法であって、
前記基材層とガスバリア層とを接着層を介して積層して積層体を製造する工程、
前記積層体のガスバリア層に、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂が、不揮発水性化助剤を実質的に含まずに、数平均粒子径が1μm以下で分散された水性分散液を、塗布および乾燥してアンカーコート層を形成する工程、
前記ポリオレフィン系樹脂を溶融押出し、前記アンカーコート層と接する面にオゾン処理を行いながら前記アンカーコート層に積層する工程とからなることを特徴とする、ガスバリア性包装材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−23238(P2010−23238A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183841(P2008−183841)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】