説明

ガスバリア性包装材料

【課題】紙容器の材料として使用するのに好適であり、最表層に樹脂層を設けた包装用材料であって、リサイクル性と高いガスバリア性を有するガスバリア性包装材料、及びそれを用いた包装容器を提供する。
【解決手段】 少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層、バリア層、紙基材、第2の熱可塑性樹脂層の順に積層され、前記バリア層はセルロースナノファイバーを含有する。前記紙基材と前記バリア層の間に少なくとも1つの防湿層を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙容器の材料として使用するのに好適なガスバリア性のある包装用材料に関し、特に、最表層に樹脂層を設けた包装用材料に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な包装材料に要求される特性の一つとして、ガスバリア性が挙げられる。例えば外気に含まれる酸素が製品容器内へ入り込み接触すると、内容物が変質・劣化して貯蔵寿命が低減される。また匂いの強い食品や化成品であれば製品からの移り香が問題となる。さらに、匂いの強い環境下で貯蔵する場合には容器外部からの内容物の匂い移りが問題となる。
【0003】
このため従来では高バリア性を持つ包材として、金属を用いた缶製品や、ガラスによるビン製品が用いられていた。しかし近年では環境意識の高まりから、これらの基材からの紙やプラスチック製品への置き換えや、減容器化が求められており、薄くても高いガスバリア性能を有する層を、紙、段ボール原紙、厚紙、及びプラスチック上に設けることによる、ガスバリア特性を付与した包装材料の開発が進んでいる。
【0004】
紙やプラスチック基材へガスバリア特性を付与する方法としては、アルミニウム等の金属からなる金属箔や金属蒸着フィルム、ポリビニルアルコールやエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等の樹脂フィルム、あるいはこれらの樹脂をコーティングしたフィルム、更に酸化珪素や酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着したセラミック蒸着フィルム等を、ガスバリア層として基材に押し出しラミネートする方法や、貼合する方法が提案されており、例えば、特許文献1には、少なくとも、バリア層として、酸化珪素の蒸着薄膜層を形成した蒸着樹脂フィルムを用いる液体紙容器用積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−335362号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アルミ箔を使用すると、基材との分離が難しくリサイクル性が悪化し、使用後に廃棄する際は不燃物として処理しなければならない等の問題がある。セラミック蒸着フィルム等は、蒸着層がセラミック故に可撓性に欠け、成形加工時での応力により、ピンホールやしわが発生しやすく、予定したガスバリア性能を充分に得られないという問題があった。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムが積層された積層材料では充分なガスバリア性能が得られない場合があった。
従って、本発明はリサイクル性と高いガスバリア性を有するガスバリア性包装材料、及びそれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するために、ガスバリア性材料としてとしてセルロースナノファイバーを用いることを特徴とするものである。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層、紙基材、バリア層、第2の熱可塑性樹脂層の順に積層され、前記バリア層はセルロースナノファイバーを含有することを特徴とするガスバリア性包装材料である。また、前記第1の熱可塑性樹脂層と前記第2の熱可塑性樹脂層の間に少なくとも1つの防湿層を有することが好まく、特に前記紙基材と前記バリア層の間に少なくとも1つの防湿層を有することが好ましい。
さらに、本発明は上述のガスバリア性包装材料を用いて得られる包装容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セルロースナノファイバーを含有する塗工液を紙基材上に少量塗工して、バリア層とすることにより使用後に可燃物として処理でき、燃焼時に有害物質が出ず、ヒートシール可能で、かつ、高いバリア性を有するバリア性包装材料及び包装容器を得ることが可能となる。また、防湿層を設けることで、防湿性が向上する。
【0010】
さらに、セルロースナノファイバーを含有するバリア層は水への溶解性が比較的高いため、本発明の包装材料を水に離解して紙基材のセルロース成分を再利用する際に、ラミネートフィルムの分離が容易となる効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバーとは、天然セルロースのミクロフィブリルを利用したナノファイバーであり、従来のセルロース材料に比べて高強度、耐熱性に優れている。本発明において、セルロースナノファイバーは、1本単位のものに限られない。通常は、複数本の束で使用される。好ましいセルロースナノファイバーの幅(長さ方向と直交する方向の寸法であり、1本の場合には直径、複数本束の場合には束の径に相当)は、0.5〜800nm(複数本束にされた場合の幅を含む)である。特にセルロースナノファイバーの入手容易性を考慮すると、セルロースナノファイバーのより好ましい幅は2〜100nmである。セルロースナノファイバーの幅は、ナノサイズであることから、少量の添加でも塗工層中における単位体積あたりのファイバー本数を向上させることができる為、高い酸素バリア性を実現することが出来る。また本発明のセルロースナノファイバーの長さは1〜5μm程度であり、カルボキシル基量としては0.5mmol/g以上であるものが望ましい。
【0012】
本発明に用いることができるセルロースナノファイバーは、水に分散させると透明な液体となり、濃度2%のB型粘度(60rpm、20℃)が500〜2000mPa・sであることが好ましい。これは、適度な粘調性を示すので、所望の濃度に調整するだけで塗料として好適に使用できるためである。
【0013】
(セルロースナノファイバーの製造方法)
このようなセルロースナノファイバーは、例えば、セルロース系原料をN−オキシル化合物と、並びに臭化物、ヨウ化物又は混合物の存在下で、酸化剤を添加して、前記セルロース系原料を処理して酸化されたセルロースを調製し、さらに該酸化されたセルロースを湿式微粒化処理してナノファイバー化することによって製造することができる。
【0014】
上述したN−オキシル化合物としては、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、TEMPOとする)、4−ヒドロキシTEMPO誘導体が好ましい。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を炭素数4以下の直鎖或いは分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化するか、カルボン酸或いはスルホン酸でエステル化したものを使用することが好ましい。特に、炭素数が4以下であれば飽和、不飽和結合の有無に関わらず水溶性となり、酸化触媒として機能する。
【0015】
4−ヒドロキシTEMPO誘導体の使用量は、セルロース系原料をナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜0.5mmol程度である。
【0016】
上記のセルロース系原料の酸化方法は、前記4−ヒドロキシTEMPO誘導体と、並びに臭化物、ヨウ化物及びこれら混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、酸化剤を用い水中にて行うことを特徴とするもので、これにより得られた酸化されたセルロース系原料は効率良くナノファイバー化することができる。この臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度である。
【0017】
酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。生産コストの観点から、使用する酸化剤として現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gのセルロース系原料に対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度である。
【0018】
上記で用いるセルロース系原料は特に限定されるものではなく、各種木材由来のクラフトパルプあるいはサルファイトパルプ、それらを高圧ホモジナイザーやミル等で粉砕した粉末状セルロースや酸加水分解などの化学処理により精製した微結晶セルロース粉末を使用できる。
【0019】
本発明で用いるセルロースナノファイバーは、前述の酸化処理されたセルロースを湿式微粒化処理して解繊処理することにより製造することができる。湿式微粒化処理を行う方法としては、例えば、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザーなど公知の混合・攪拌、乳化・分散装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて処理することによってセルロースナノファイバー化することができる。湿式微粒化処理装置としては、100MPa以上の圧送圧力を可能とする高圧ホモジナイザーの使用が好ましい。
【0020】
(バリア層)
本発明において、バリア層はセルロースナノファイバーを含有する水性の塗工液を紙基材表面等に塗工した後、乾燥して設けられる。セルロースナノファイバーを含有する塗工液を塗工する方法としては、2ロールサイズプレスコーター、ゲートロールコーター、ブレードメタリングコーター、ロッドメタリングコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、ロールコーター、ブラッシュコーター、キスコーター、スクイズコーター、カーテンコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコータ等の公知の塗工機を用いることができる。また、乾燥は公知の乾燥機を用いることができる。
【0021】
また、本発明においてはセルロースナノファイバーを含有する塗工液に無機層状化合物を含有させる事も可能で、無機層状化合物とは層状構造を有する結晶性の無機化合物をいい、例えば、カオリナイト族、スメクタイト族、マイカ族等に代表される粘土鉱物をあげることができる。無機層状化合物である限り、その種類、粒径、アスペクト比等は、そのガスバリアフィルムの使用目的等に応じて適宜選択することができ、特に限定されない。
更に、前記粘土系鉱物以外にも、例えば、前記粘土系鉱物をシランカップリング剤で表面処理した加工処理品または合成マイカ、合成スメクタイト等の様に、化学処理により得られる合成品を挙げることができ、本発明においては、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
また、バリア層中に必要に応じてサイズ剤、耐水化剤、撥水剤、染料等の薬品を、本発明の効果を損なわない程度に混合して使用することができるが、より高い酸素バリア性を求める場合は、上記助剤は配合されないことが好ましい。
【0023】
(紙基材)
本発明において紙基材とは、セルロースを主たる構成成分とする、パルプ繊維が絡み合った集合体であり、塗工紙、非塗工紙、板紙、段ボール原紙なども含まれる。また、バリア材料に高い酸素バリア性を持たせるために、紙基材と酸素バリア層の間に、目止め層を設けることも有効である。目止め層としてはクレー等の顔料とバインダー樹脂とを含有する塗工層や皮膜性を有する樹脂からなる塗工層を例示することができる。
【0024】
(防湿層)
また、液体や水蒸気へのバリアを提供する防湿層を紙基材とバリア層の間に設けることは、高湿度下でのバリア性の低下抑制に有効である。防湿層としては、例えば、ポリエチレン、エチレン−αオレフィン共重合体、ポリプロピレン、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニルの部分あるいは完全けん化物、ポリ塩化ビニリデン樹脂、各種ワックスのうち少なくとも1種以上を含むものからなる。本発明においては、酸素透過度および透過度が共に小さいという点で、防湿層にポリ塩化ビニリデン樹脂を含有することが好ましい。また、上記以外の防湿層として、バリア層と同じく上述の無機層状化合物をバインダー樹脂に添加したものを使用することが出来る。
【0025】
(熱可塑性樹脂層)
本発明における第1、第2の熱可塑性樹脂層は、樹脂層の積層方法には、押し出しラミネート法、共押し出しラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法などがあるが、コスト的な面から、押し出しラミネート法、共押し出しラミネート法を用いることが好ましい。また、Tダイ共押し出し法と併用し多層フィルムを形成することもできる。
熱可塑性樹脂層を形成する樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、環状オレフィンポリマー、PET−G、エチレンビニルアルコールコポリマーなどを使用することができるがヒートシール性、バリア層への密着性を考慮すると低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)または直鎖線状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0026】
積層シートにおける樹脂層の厚さは、紙容器に充填する内容物の種類、内容量、保存期間、充填包装機械適性などにより適宜決定されるが、例えば、3〜100μm、好ましくは10〜50μmである。
【0027】
(包装容器)
本発明のガスバリア性包装材料は、高い柔軟性を有するものであり、略円錐型、立方体、四面体などの任意の形状に成形できることから、その後、種々の形状の容器に通常公知の方法で加工することで、ガスバリア性に優れた種々の形状の包装容器を製造することができる。例えば、牛乳やジュース等の液体飲料を収容する液体紙容器の製造工程は、通常、基材作成、印刷、罫線加工、打ち抜き(ブランク作成)、貼り、内容物充填、封止という工程からなる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例において%、部とあるものはそれぞれ質量%、質量部を示し、塗工量を示す値は断りのない限り乾燥後の固形分質量を示す。
【0029】
<セルロースナノファイバー分散液の製造>
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径24μm)15g(絶乾)を、TEMPO(SigmaAldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(5mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50ml添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの発送圧力で5回処理したところ、透明でゲル状なセルロースナノファイバー分散液が得られた。この分散液を乾燥させ、原子間力顕微鏡(AFM)により観察したところ、最大繊維径が10nmかつ数平均繊維径が6nmであることを確認できた。
【0030】
[実施例1]
セルロースナノファイバー分散液を濃度1%に調整し、スラリー90部に対しイソプロピルアルコールを10部の割合で混合して塗工液を調整した。この塗工液を板紙原紙(坪量:200g/m、針葉樹と広葉樹のパージンパルプから抄造)に固形分で1.5g/m2となるようバー塗工を行い、温度105℃で乾燥させることで、バリア層を積層させた。その後バリア層の上に、共押出しラミネートにより酸変性EVA(製品名:モディックAP、三菱化学社製)を厚み10μm、低密度ポリエチレンを厚み30μmとして、この順に接着層、第1の熱可塑性樹脂層を積層させた。更に、紙の反対面側に低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、ミラソン16P)を溶融押出し、厚み15μmになるようラミネートして、第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0031】
[比較例1]
板紙原紙(坪量200g/m)に対し、実施例1と同様に低密度ポリエチレンを紙の表裏にラミネートし、包装材料を得た。
【0032】
[比較例2]
エチレンビニルアルコール樹脂(EVOH)(商品名:エクセバール、クラレ(株)、固形分濃度10%)90部に対しイソプロピルアルコールを10部の割合で混合して塗工液を調整した。この塗工液を板紙原紙(坪量200g/m)に固形分で3.0 g/m2となるようにバー塗工を行い、105℃で乾燥させた。更に、バリア層の上に共押出しラミネートにより酸変性EVA(製品名:モディックAP、三菱化学社製)を厚み10μm、低密度ポリエチレンを厚み30μmとして、この順に接着層、第1の熱可塑性樹脂層を積層させた。紙の反対面側には実施例1と同様に、低密度ポリエチレンによる第2の熱可塑性樹脂層を設け、包装材料を得た。
【0033】
実施例1、比較例1、2で得られた包装材料について、以下の評価を行った。
<酸素透過度測定>
[差圧法]
ツクバリカセイキ社製気体透過率測定装置(K-315N-03)を測定に用いた。また測定条件は標準温度及び標準圧力(STP)で0%の相対湿度(%RH)とした。尚、測定値が1ml/m・day以下のときに、酸素バリア性が高いと定義した。
【0034】
<熱可塑性樹脂の剥離性>
得られた包装材料を、細かく断裁し、濃度3%となるよう水を加え、水酸化ナトリウムによりpH9になるよう調整した後、TAPPI離解機により離解し、スリットスクリーンに通すことで、熱可塑性樹脂とパルプ繊維の剥離性を確認した。
○:熱可塑性樹脂層からパルプ繊維を半分以上分離することができた
×:熱可塑性樹脂層からパルプ繊維をほとんど分離することができなかった
【0035】
【表1】

【0036】
酸素透過度を測定した結果、実施例1の包装材料は、比較例1、2で得られた包装材料よりガスバリア性が高いことを確認できた。また、実施例1ではセルロースナノファイバーによるバリア層とポリエチレンによる熱可塑性樹脂層がきれいに分離できたものの、比較例3ではEVOHによるバリア層とポリエチレンによる熱可塑性樹脂層を完全に分離することは出来なかった。これは紙に染み込んだセルロースナノファイバーとEVOHの、水への溶解性の違いによるものと考える。
【0037】
さらに、実施例1と比較例1、2の包装材料をそれぞれ所定の幅の帯状にスリットした後、四国化工機株式会社製UP−FUJI−MA80機で内容量250mlのアセプティック型の紙容器を製造し、問題なく成形出来ることを確認した。
【0038】
以上の結果からセルロースナノファイバーを塗工した実施例1の包装材料は、ガスバリア性に優れ、成形性に問題がなく、回収後にラミネート樹脂の剥離が容易なリサイクル性の高い包装材料であるといえる。
【0039】
[実施例2]
板紙原紙(坪量200g/m)にアクリル系エマルション(製品名:アクリットUW-550CS、大成ファインケミカル)を3.0g/m2となるようにバー塗工を行い、温度105℃で乾燥させ、目止め層を形成した。その後、塩化ビニリデン共重合体ラテックス(製品名:サランラテックスL411A、旭化成製)を、塗工量18g/m2となるようにバー塗工を行い、防湿層を積層させた。更に得られた防湿層の上に、実施例1と同様にセルロースナノファイバー分散液を塗工し乾燥させることで、バリア層を積層させた。このバリア層の上に実施例1と同様に低密度ポリエチレンを厚さ30μmでラミネートし、第1の熱可塑性樹脂層を積層させた。この積層体を用いて等圧法により酸素透過度の測定を行った。更に、紙の反対面には低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、ミラソン16P)を溶融押出し、厚み15μmになるようラミネートして、第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0040】
[実施例3]
板紙原紙(坪量200g/m)にアクリル系エマルション(製品名:アクリットUW-550CS、大成ファインケミカル)を3.0g/m2となるようにバー塗工を行って乾燥させ、目止め層を形成した。その後、スチレンブタジエン系共重合体ラテックス(製品名:PNT7868、日本ゼオン製)とマイカ(製品名:マイカA21、(株)山口雲母工業所製)をそれぞれ50質量部の割合で混合し、塗工量20g/m2となるようにバー塗工で防湿層を積層させた。更に、実施例1と同様にセルロースナノファイバー分散液を塗工し、バリア層を形成させた。その後、バリア層上に低密度ポリエチレンをラミネートし、第1の熱可塑性樹脂層を積層した。この積層体を用いて等圧法により酸素透過度の測定を行った。更に、実施例1と同様に紙の反対面側に低密度ポリエチレンによる第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0041】
[実施例4]
実施例2と同様にアクリル系エマルションによる目止め層と、塩化ビニリデン系共重合体ラテックスによる防湿層、セルロースナノファイバーによる層をそれぞれ積層させた後、酸化珪素蒸着PETフィルム(製品名:GLフィルム、凸版印刷製)を280℃で溶融させ、押出しサンドラミネート機により貼り合わせてバリア層を積層させた。その後、実施例1と同様に、低密度ポリエチレンによる第1の熱可塑性樹脂層を積層させた。この積層体を用いて等圧法により酸素透過度の測定を行った。また、実施例1と同様に紙の反対面側に低密度ポリエチレンによる第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0042】
[比較例3]
ポリビニルアルコール樹脂(PVA)(製品名:ポバール117、クラレ社製)を用いた以外は比較例2と同様に、板紙原紙(坪量200g/m)にエチレンビニルアルコール樹脂を塗工し固形分で3.0 g/m2となるよう積層させた。その後、実施例4と同様にバリア層上に低密度ポリエチレンをラミネートし、第1の熱可塑性樹脂層を積層した。この積層体を用いて等圧法により酸素透過度の測定を行った。更に、実施例1と同様に紙の反対面側に低密度ポリエチレンによる第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0043】
[比較例4]
比較例2と同様に、板紙原紙(坪量200g/m)にエチレンビニルアルコール樹脂を塗工し固形分で3.0 g/m2となるよう積層させた。その後、共押出によるラミネートにより、酸変性EVAによる接着層と、低密度ポリエチレンによる第1の熱可塑性樹脂層を積層させた。この積層体を用いて等圧法により酸素透過度の測定を行った。更に、実施例1と同様に、紙の反対面側に低密度ポリエチレンによる第2の熱可塑性樹脂層を設けた。以上の工程を経てガスバリア性包装材料を得た。
【0044】
上記、実施例2〜3と比較例3、4で得られた包装材料について、酸素透過度、水蒸気透過度についての評価を行った。
なお、水蒸気透過度の測定方法は以下の通りである。
<水蒸気透過度測定>
温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下で、透湿度測定器(Dr.Lyssy社製、L80−4000)を用いて測定した。尚、測定値が5g/m・day以下のときに、防湿性が高いと定義した。
【0045】
さらに、実施例2〜3、比較例3、4で製造した包装材料をそれぞれ所定の幅の帯状にスリットした後、四国化工機株式会社製UP−FUJI−MA80機でアセプティック包装を行い、内容物に官能評価水として活性炭濾過水を入れ、内容量250mlの液体紙容器を得ることができた。
【0046】
【表2】

【0047】
酸素透過度測定の結果、防湿層とバリア層を設けた実施例2〜4で得られた包装材料では比較例と比べて、高湿度条件下でもガスバリア性が高いことが示された。また水蒸気透過度の測定結果から、実施例で設けた防湿層には高い防湿効果が認められた。更にこれらの実施例2〜4で得られた包装材料を用いて液体紙容器を成形し官能評価を行ったところ、内容物に異臭・異味等を発生させず、内容物の味覚成分を吸着することが無いことを確認出来た。以上の結果から、防湿層とバリア層を設けた実施例2〜4のガスバリア包装材料は、高湿度条件下でのガスバリア性に優れるため内容物の酸化劣化等を防止することが出来、また高い防湿性を誇ることから内容物の蒸散を防ぎ、且つ内容物のフレーバや味覚及び風味を変化させることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、第1の熱可塑性樹脂層、バリア層、紙基材、第2の熱可塑性樹脂層の順に積層され、前記バリア層がセルロースナノファイバーを含有することを特徴とするガスバリア性包装材料。
【請求項2】
前記紙基材と前記バリア層の間に少なくとも1つの防湿層を有することを特徴とする請求項1に記載されたガスバリア性包装材料。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたガスバリア性包装材料を用いて得られる包装容器。

【公開番号】特開2012−11651(P2012−11651A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149745(P2010−149745)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】