説明

ガスバリア性積層体

【課題】基材フィルム上に無機酸化物蒸着膜とバリアコート層とを交互に積層した積層体であって、高いガスバリア性を示し、さらに層間剥離を起こしにくいガスバリア性積層体を提供する。
【解決手段】基材フィルム1の一方の面上に、無機酸化物蒸着層3,6とバリアコート層4,7とを、この順序で、交互に2回又はそれ以上繰り返し積層し、且つバリアコート層7が最外層となるように形成したガスバリア性積層体において、基材フィルム1の被蒸着面と無機酸化物蒸着層3との間、及びバリアコート層4の被蒸着面と無機酸化物蒸着層6との間にアンカーコート層2,5を設けたガスバリア性積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好なガスバリア性を有し、いかなるストレスに対しても層間剥離を起こしにくいガスバリア性積層体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材フィルム上に、無機酸化物蒸着膜とガスバリア性複合ポリマーからなるバリアコート層とを交互に積層することにより、ガスバリア性が向上することが知られている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、基材フィルム上に、無機酸化物蒸着膜とバリアコート層とが1回又は複数回繰り返して積層された積層体において、バリアコート層は、一般に塗工厚が厚くなり、また可撓性に欠けるため、その後の印刷工程及びラミネート工程、並びに製袋のような後加工工程において、フィルムを曲げたり伸ばしたりする際に、基材フィルムと無機酸化物蒸着膜との間に応力が集中し、この部分で接着破壊が生じ易いという問題がある。
【0004】
また、無機酸化物蒸着膜とバリアコート層とを複数回繰り返して積層する場合、ゾルゲル法によって形成されるバリアコート層は表面が粗いため、その上に無機酸化物を蒸着させる場合、緻密な蒸着膜を得ることができず、したがって、期待されるガスバリア能が得られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2880654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、基材フィルム上に、無機酸化物蒸着膜とバリアコート層とを複数回繰り返して積層した積層体であって、高いガスバリア性を示し、さらに層間剥離を起こしにくいガスバリア性積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、アルミ箔に匹敵する高いガスバリア性を示し、且つ層間の密着性が優れているために層間剥離を起こしにくい透明ガスバリア性積層体として、プラスチック材料からなる基材フィルムの一方の面上に、無機酸化物蒸着層とバリアコート層とを、この順序で、交互に2回又はそれ以上繰り返し積層し、且つバリアコート層が最外層となるように形成したガスバリア性積層体において、基材フィルムの被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間、及びバリアコート層の被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間にアンカーコート層を設け、該アンカーコート層は、水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を含むアンカーコート剤が反応硬化してなる層であり、該バリアコート層は、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなる層である、上記ガスバリア性積層体を開発した。
【発明の効果】
【0008】
本発明のガスバリア性積層体を構成するアンカーコート層は、本発明のガスバリア性積層体を構成するバリアコート層及び無機酸化物蒸着層と特に親和性が高いため、これら3層が、バリアコート層/アンカーコート層/無機酸化物蒸着層の構成で隣り合った場合、相互作用に基いて強い層間密着が得られる。
【0009】
また、本発明のガスバリア性積層体において、基材フィルムの被蒸着面又はバリアコート層の被蒸着面に、本発明において用いられるアンカーコート剤を塗布することにより、該被蒸着面の平滑性が高まるため、無機酸化物を蒸着させる際に、ムラの無い緻密な蒸着膜が得られる。
【0010】
さらに、本発明のガスバリア性積層体を構成するアンカーコート層は、基材フィルムの被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間の密着を強固なものとするため、本発明のガスバリア性積層体は、外的作用に対して十分な耐性を有し、屈曲や伸縮等のストレスを受けても、クラックの発生や層間剥離が起こりにくいものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るガスバリア性積層体の層構成を示す概略的断面図である。
【図2】本発明に係るガスバリア性積層体の層構成を示す概略的断面図である。
【図3】プラズマ化学気相成長装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【図4】巻き取り式真空蒸着装置についてその一例の概要を示す概略的構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明について、以下に図面等を用いてさらに詳しく説明する。以下、本明細書において使用される樹脂名は、業界において慣用されるものが用いられる。
【0013】
<1>本発明のガスバリア性積層体の層構成
まず、本発明のガスバリア性積層体の層構成について説明する。図1は、本発明のガスバリア性積層体の層構成の一例を示す断面図である。
【0014】
本発明に係るガスバリア性積層体は、図1に示すように、プラスチック材料からなる基材フィルム1の一方の面に、アンカーコート層2、無機酸化物蒸着層3、及びバリアコート層4を順に積層し、さらにその上に、アンカーコート層5、無機酸化物蒸着層6及びバリアコート層7を積層した構成を基本構造とするものである。
【0015】
また、本発明において、図2に示すように、バリアコート層7の上にさらに、アンカーコート層、無機酸化物蒸着層及びバリアコート層からなる積層単位を、1回又はそれ以上繰り返し積層し、ガスバリア性を一層高めることもできる。
本発明において、無機酸化物蒸着層は、単層であっても、2層以上からなる多層であってもよい。
【0016】
<2>基材フィルム
本発明において、基材フィルムとして、化学的ないし物理的強度に優れ、無機酸化物の蒸着膜を形成する条件等に耐え、それら無機酸化物の蒸着膜等の特性を損なうことなく良好に保持し得ることができるプラスチック材料からなるフィルムを使用することができる。
【0017】
このようなプラスチック材料からなるフィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレン系樹脂あるいはポリプロピレン系樹脂等のポリオレフイン系樹脂、環状ポリオレフイン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種のプラスチック材料からなるフィルムを使用することができる。
【0018】
本発明においては、上記のプラスチック材料からなるフィルムの中でも、特に、ポリエステル系樹脂、ポリオレフイン系樹脂、または、ポリアミド系プラスチック材料からなるフィルムを使用することが好ましい。
【0019】
本発明において、上記の各種フィルムとしては、例えば、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて、上記の各種の樹脂を単独で製膜化する方法、あるいは、2種以上の各種の樹脂を使用して多層共押し出し製膜化する方法、さらには、2種以上の樹脂を使用し、製膜化する前に混合して製膜化する方法等により、各種のフィルムを製造し、さらに、所望により、例えば、テンター方式、あるいは、チューブラマ方式等を利用して1軸ないし2軸方向に延伸した各種のフィルムを使用することができる。
【0020】
本発明において、基材フィルムの膜厚としては、6〜200μm、より好ましくは、9〜100μmが好ましい。
【0021】
なお、上記の各種の樹脂1種又はそれ以上を使用し、その製膜化に際して、例えば、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0022】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料等を使用することができ、さらには、改質用樹脂等も使用することができる。
【0023】
また、上記の基材フィルムとしては、必要ならば、その表面に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、フレーム処理等の表面活性処理を任意に施すことができる。
【0024】
<3>アンカーコート層
本発明において、基材フィルム又はバリアコート層の被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間に、アンカーコート層を設ける。これにより、被蒸着面と無機酸化物蒸着層との密着強度が高められ、また、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層からなる無機酸化物蒸着層が得られる。
【0025】
したがって、極めて高いガスバリア性が得られ、且つ、フィルムの変形や屈曲に伴う無機酸化物蒸着膜の破断及びそれによるガスバリア性の低下を防ぐことができる。また、本発明において、アンカーコート層を設けることにより、レトルト殺菌にも耐え得る耐熱性、耐油性に優れるガスバリア性積層体を得ることができる。
【0026】
上記のような効果を得るために、本発明において、アンカーコート層を形成するアンカーコート剤は、水酸基含有アクリル樹脂と、硬化剤としてのイソシアネート化合物と、シランカップリング剤とからなる。
【0027】
a)水酸基含有アクリル樹脂
本発明で用いられる水酸基含有アクリル樹脂は、中性モノマーと、水酸基含有アクリルモノマーとから製造される。
【0028】
中性モノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニルなどが挙げられる。
【0029】
また、水酸基含有アクリルモノマーとしては、例えばメタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピルなど水酸基含有モノマーが挙げられる。
【0030】
水酸基含有アクリル樹脂は、反応速度の制御が容易であるため、特に好適に用いられるが、本発明においては、水酸基含有アクリル樹脂の代わりに、カルボキシル基含有アクリル樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有アクリル樹脂等を用いることもできる。
【0031】
これらの官能基含有アクリル樹脂は、上記の中性モノマーと、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー、又はアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリジンなどのエポキシ基含有モノマー、又はアクリルアミド、N−メテロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどの含窒素モノマーとから製造することができる。
【0032】
本発明で用いられる水酸基含有アクリル樹脂の合成は、公知のラジカル重合開始剤を用いた溶液法で製造することができる。
【0033】
ラジカル開始剤としてはアゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系開始剤、クメンヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル等の過酸化物系開始剤、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸系開始剤などが好適に用いられるが、これらに限定されない。
【0034】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移点(Tg)は、50℃以下であるとブロッキングしやすくなり、また、200℃以上では水酸基含有アクリル樹脂の分子運動が少なく、アクリル樹脂中の水酸基とイソシアネート化合物との反応速度が遅くなり、硬化不良となりやすい。そのため、該ガラス転移点(Tg)は、50〜200℃の範囲であることが好ましく、特に70〜150℃の範囲であることが好ましい。
【0035】
また、水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が10,000より小さいと膜が軟らかくなり、ブロッキングしやすくなり、また100,000より大きいと、粘度が高くなり、塗工適性が低下するため好ましくない。
【0036】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価は、20mgKOH/g未満であると、混入する硬化剤のNCO基との反応にすべてのOH基が使われてしまい、蒸着膜表面のOH基とアクリルポリオール由来のOH基との反応性が低下するため、層間で十分な密着強度が得られず、塗工後のガスバリア性の向上も期待できなくなる。そのため、水酸基価は20〜200mgKOH/gの範囲が好ましく、特に30〜150mgKOH/gの範囲が好適に用いられる。
【0037】
b)イソシアネート化合物
本発明において、硬化剤としてのイソシアネート化合物は、上記の水酸基含有アクリル樹脂と反応してウレタン結合を形成する化合物であって、イソシアネート硬化剤として知られる任意の化合物、例えばトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系ジイソシアネートモノマー、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ジイソシアネートモノマー、及びこれらの重合体、誘導体が用いられる。これらは、単独で又は混合物として用いることができる。
【0038】
c)シランカップリング剤
本発明において、シランカップリング剤は、無機物と反応する加水分解基、及び有機物と反応する有機官能基の両方を一分子中にもつ有機ケイ素化合物からなる。無機物と反応する加水分解基としては、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、アセトキシ基及びクロロ基などが挙げられる。また、有機物と反応する有機官能基としては、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基又はイソシアネート化合物のイソシアネート基と反応する官能基が好ましく、例えばイソシアネート基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基が挙げられる。また、ビニル基及びメタクリルオキシ基などであってもよい。
【0039】
該有機ケイ素化合物は、無機物及び有機物のいずれとも反応しないアルキル基やフェニル基を有していてもよい。また、有機官能基を有しないケイ素化合物、例えば加水分解基のみを有するアルコキシシランのような化合物と混合することもできる。本発明において、シランカップリング剤は、1種類または2種類以上の混合物であっても良い。
【0040】
上記のようなシランカップリング剤は、加水分解基が加水分解してシラノール基(SiOH)を形成し、これが、無機酸化物蒸着層を構成する金属、又は無機酸化物蒸着層表面上の活性な基、例えば、水酸基等の官能基と相互作用し、例えば、脱水縮合反応等の反応を起こして、無機酸化物の蒸着膜表面上にシランカップリング剤が共有結合等で修飾され、更に、シラノール基自体の無機酸化物の蒸着膜表面に吸着や水素結合等により強固な結合を形成する。
【0041】
他方、該有機ケイ素の他端にある有機官能基が、基材フィルム又はバリアコート層の被蒸着面を構成する物質と反応して強固な結合を形成し、強固に密接着して、そのラミネート強度を高め、このようにして、本発明においては、ラミネート強度の高い強固な積層構造を形成可能とするものである。
【0042】
本発明において用いられるシランカップリング剤としては、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプト基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランなどのイソシアネート基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0043】
d)溶剤
本発明において、水酸基含有アクリル樹脂を溶解する溶剤としては、アンカーコート剤の塗工時の流動性を保って平滑なアンカーコート層を与えることができる、任意の溶剤を使用することができる。
【0044】
このような溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコールなどのアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤、2−ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコール系溶剤、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤などを好適に用いることができる。
【0045】
e)組成比
本発明において、アンカーコート剤における、水酸基含有アクリル樹脂とイソシアネート化合物の配合比は特に限定されないが、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比は、0.3〜3.0であることが好ましい。
【0046】
イソシアネート基の量が少なく、該モル比が0.3未満である場合、硬化不良になり得るため、好ましくない。また、イソシアネート基の量が多く、該モル比が3.0より大きい場合、ブロッキング等が発生するため、好ましくない。
【0047】
また、アンカーコート剤における、水酸基含有アクリル樹脂とシランカップリング剤の配合比は、水酸基含有アクリル樹脂の固形分100重量部に対し、シランカップリング剤が3〜80重量部であることが好ましい。シランカップリング剤が3重量部より少ないと、層間で十分な密着性が得られず、また80重量部より多いとブロッキングしやすくなるため好ましくない。
【0048】
f)形成方法
本発明において、アンカーコート剤は、水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を、任意の配合比で混合した複合溶液を調製し、それを基材フィルム又はバリアコート層の被蒸着面上にコーティングして形成する。該複合溶液の調製方法としては、シランカップリング剤と水酸基含有アクリル樹脂を混合し、溶剤を加え、任意の濃度に希釈した後、イソシアネート化合物と混合して、複合溶液を調製するか、又は予めシランカップリング剤を溶剤中に混合しておき、その後、水酸基含有アクリル樹脂を混合させることにより調製することができる。
【0049】
本発明において、アンカーコート層は、上述のようなアンカーコート剤を、例えばロールコート、グラビアコート、ナイフコート、ディップコート、スプレイコート等の公知のコーティング法でコーティングし、溶剤、希釈剤等を乾燥除去し、硬化させることにより、形成することができる。
【0050】
<4>無機酸化物蒸着層
本発明において、無機酸化物蒸着層としては、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
【0051】
好ましいものとしては、ケイ素(Si)又はアルミニウム(Al)の金属の酸化物からなる蒸着膜を挙げることができる。
【0052】
また、上記の金属の酸化物の蒸着膜は、ケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物等のように金属酸化物ともいうことができ、その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、金属元素を表し、Xの値は、金属元素によってそれぞれ範囲が異なる)で表される。
【0053】
また、上記のXの値の範囲として、ケイ素(Si)は0〜2、アルミニウム(Al)は0〜1.5、マグネシウム(Mg)は0〜1、カルシウム(Ca)は0〜1、カリウム(K)は0〜0.5、スズ(Sn)は0〜2、ナトリウム(Na)は0〜0.5、ホウ素(B)は0〜1.5、チタン(Ti)は0〜2、鉛(Pb)は0〜1、ジルコニウム(Zr)は0〜2、イットリウム(Y)は0〜1.5の範囲の値をとることができる。
【0054】
上記において、X=0の場合は、完全な金属であり、透明ではないので使用することができない。また、Xの範囲の上限は、完全に酸化したときの値である。
【0055】
望ましくは、ケイ素(Si)は1.0〜2.0、アルミニウム(Al)は0.5〜1.5の範囲の値のものを使用することができる。
無機酸化物蒸着層の層厚は、使用する金属、又は金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば5〜100nm、好ましくは10〜50nmの範囲内で任意に選択することができる。
【0056】
また、無機酸化物蒸着層として、使用する金属、又は金属の酸化物は、1種又は2種以上の混合物で使用し、異種の材質で混合した無機酸化物蒸着層を構成することもできる。
【0057】
さらに、無機酸化物が、酸化ケイ素である場合は、SiOxCyで表される炭素含有酸化ケイ素であってもよい[式中、xは1.5〜2.2の範囲内にあって、yは0.15〜0.80の範囲内にあるのが好ましく、そしてxが1.7〜2.1の範囲内にあって、yが0.39〜0.47の範囲内にあるのがさらに好ましい]。
【0058】
<5>蒸着方法
本発明において、所望のガスバリア性を得るために、上記無機酸化物蒸着層を、基材フィルム又はバリアコート層の被蒸着面上に設けたアンカーコート層の表面に、化学気相成長法又は物理気相成長法により、又はこれらを併用して形成することができる。
【0059】
本発明の1つの態様において、無機酸化物蒸着層は、物理気相成長法により蒸着された酸化アルミニウムからなる層である。
また別の態様において、無機酸化物蒸着層は、化学気相成長法により蒸着された酸化ケイ素からなる層である。
【0060】
(1)化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)
化学気相成長法には、例えば、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等が含まれる。
【0061】
本発明においては、具体的には、基材フィルム又はバリアコート層の被蒸着面上に設けたアンカーコート層の表面に、有機ケイ素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを使用し、更に、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて、無機酸化物からなる蒸着膜を形成することができる。
【0062】
上記において、低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を使用することができるが、本発明においては、高活性の安定したプラズマを得るために、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが望ましい。
【0063】
本発明における、低温プラズマ化学気相成長法による無機酸化物蒸着層の形成法について、その一例を挙げて説明する。図3は、上記の低温プラズマ化学気相成長法において使用される低温プラズマ化学気相成長装置の概略的構成図である。
【0064】
本発明においては、図3に示すように、低温プラズマ化学気相成長装置21の真空チャンバー22内に配置された巻き出しロール23から、予めアンカーコート層を積層した被蒸着フィルム11を繰り出し、更に、該被蒸着フィルム11を、補助ロール24を介して所定の速度で冷却・電極ドラム25周面上に搬送する。ガス供給装置26、27及び、原料揮発供給装置28から酸素ガス、不活性ガス、蒸着用モノマーガス等を供給し、それらからなる蒸着用混合ガス組成物を調整しながら原料供給ノズル29を通して真空チャンバー22内に該蒸着用混合ガス組成物を導入し、そして、上記の冷却・電極ドラム25周面上に搬送された、被蒸着フィルム11の一方の面に設けたアンカーコート層の上に、グロー放電プラズマ30によってプラズマを発生させ、これを照射して、無機酸化物蒸着層を形成する。
【0065】
その際に、冷却・電極ドラム25は、真空チャンバー22の外に配置されている電源31から所定の電力が印加されており、また、冷却・電極ドラム25の近傍には、マグネット32を配置してプラズマの発生が促進されている。次いで、被蒸着フィルム11は、予めアンカーコート層を積層した側の表面に、無機酸化物蒸着層を形成した後、補助ロール33を介して巻き取りロール34に巻き取られる。なお、図中、35は真空ポンプを表す。
【0066】
図示しないが、本発明において、無機酸化物蒸着膜の層は、単層であっても、2層以上からなる多層であってもよく、また、使用する無機酸化物は、単独で使用しても、2種以上の混合物として使用してもよい。
【0067】
また、上記の低温プラズマ化学気相成長装置において、無機酸化物蒸着膜は、プラズマ化した原料ガスを用いて、被蒸着フィルム上に薄膜状に形成されるので、緻密で、隙間の少ない、可撓性に富む連続層となる。従って、従来の真空蒸着法等によって形成される無機酸化物蒸着膜よりもはるかに高いバリア性を示し、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。
【0068】
(2)物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)
物理気相成長法には、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等が含まれる。
【0069】
本発明における酸化物の蒸着方法について、その一例を挙げてさらに具体的に説明する。図4は、本発明における酸化物の蒸着方法の一例を示す巻き取り式真空蒸着装置の概略的構成図である。
【0070】
図4に示すように、巻き取り式真空蒸着装置41の真空チャンバー42の中で、巻き出しロール43から、予めアンカーコート層を積層した被蒸着フィルム11を繰り出し、該被蒸着フィルム11を、ガイドロール44、45を介して、冷却したコーティングドラム46に案内する。次いで、冷却したコーティングドラム46上に案内された被蒸着フィルム11の一方の面に設けたアンカーコート層の上に、るつぼ47で熱せられた蒸着源48を、必要ならば、酸素ガス吹出口49から酸素ガス等を供給しながら蒸着させ、マスク50を介して無機酸化物蒸着膜を成膜化する。次いで、無機酸化物蒸着膜を積層した被蒸着フィルム11を、ガイドロール51、52を介して、巻き取りロール53に巻き取る。
【0071】
<6>バリアコート層
本発明においては、上記無機酸化物蒸着層上に、さらに、アルコキシドと水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなるバリアコートを設ける。これにより、ガスバリア性をさらに向上させることができる。
【0072】
該ガスバリア性組成物において用いることができるアルコキシドとしては、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドを好ましく用いることができる。
【0073】
また、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール系樹脂若しくはエチレン・ビニルアルコール共重合体のいずれか又はその両方を好ましく用いることができる。
【0074】
本発明において、一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドとしては、金属原子Mとして、珪素、ジルコニウム、チタン、アルミニウムその他を使用することができる。また、本発明において、単独又は二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うことができる。
【0075】
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基その他のアルキル基を挙げることができる。
【0076】
また、上記の一般式R1nM(OR2mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基その他を挙げることができる。
【0077】
尚、本発明において、同一分子中において、これらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0078】
また、本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、上記のアルコキシドの合計量100重量部に対して5〜500重量部の範囲であることが好ましい。上記において、500重量部を越えると、バリア性被膜の脆性が大きくなり、その耐侯性等も低下することから好ましくない。
【0079】
本発明において、ポリビニルアルコール系樹脂として、一般にポリ酢酸ビニルを鹸化して得られるものを使用することができる。具体例としては、株式会社クラレ製のRSポリマーであるRS−110(鹸化度=99%、重合度=1,000)、同社製のクラレポバールLM−20SO(鹸化度=40%、重合度=2,000)、日本合成化学工業株式会社製のゴーセノールNM−14(鹸化度=99%、重合度=1,000)等を使用することができる。
【0080】
また、本発明において、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと、酢酸ビニルの共重合体の鹸化物、即ち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体を鹸化して得られるものを使用することができる。具体例としては、株式会社クラレ製、エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)、日本合成化学工業株式会社製、ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)等を使用することができる。
【0081】
本発明において、本発明に係るバリアコートを形成するガスバリア性組成物を調製するには、上記で挙げたようなシランカップリング剤等も添加することができる。
【0082】
<7>バリアコート層の形成方法
本発明において用いられるガスバリア性組成物は、アルコキシドと水溶性高分子とを、ゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下で、ゾルゲル法によって重縮合することにより調製することができる。
【0083】
該ガスバリア性組成物は、基材フィルム/アンカーコート層(1)/無機酸化物蒸着層(1)からなる3層積層構造、又は、基材フィルム/アンカーコート層(1)/無機酸化物蒸着層(1)/バリアコート層(1)/アンカーコート層(2)/無機酸化物蒸着層(2)からなる6層積層構造、又は、さらにバリアコート層/アンカーコート層/無機酸化物蒸着層からなる積層単位を1回又はそれ以上繰り返し積層した多層積層構造、の無機酸化物蒸着層の上に塗布し、20℃〜200℃、好ましくは140℃以上、且つ基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理することにより、バリアコートを形成することができる。必要ならば、無機酸化物蒸着層の表面を、酸素ガスによりプラズマ処理してもよい。
なお、バリアコートは、2層以上重層して複合ポリマー層を形成してもよい。
【0084】
また、上記のガスバリア性組成物の調製において用いられる、ゾル−ゲル法触媒としては、実質的に水に不溶であり、且つ有機溶媒に可溶な第三級アミン、例えばN,N−ジメチルベンジルアミンを用いることができ、また、酸としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸、並びに酢酸、酒石酸等の有機酸その他を使用することができる。更に、有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール等を用いることができる。
【0085】
更に、上記のガスバリア性組成物に関して、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体は、上記のアルコキシドやシランカップリング剤等を含む塗工液中で溶解した状態にあることが好ましく、そのため上記の有機溶媒の種類が適宜選択される。
本発明において、溶剤中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体は、例えば、ソアノール(日本合成化学社製)として市販されているものを使用することができる。
【0086】
上記のガスバリア性組成物を、無機酸化物蒸着層の上に塗布し、加熱して溶媒及び重縮合反応により生成したアルコールを除去すると、重縮合反応が完結し、透明なバリアコートが形成される。
【0087】
更に、加水分解によって生じた水酸基や、シランカップリング剤由来のシラノール基が無機酸化物蒸着層の表面の水酸基と結合する為、該無機酸化物蒸着層とバリアコートとの密着性、接着性等が良好なものとなる。
【0088】
上述のように形成されることにより、本発明のバリアコートは、結晶性を有する直鎖状ポリマーを含み、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造を取る。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高いため、良好なガスバリア性を示す。
【0089】
本発明においては、無機酸化物蒸着層とバリアコートとが、例えば、加水分解・共縮合による化学結合、水素結合、或いは、配位結合等を形成し、これら2層間の密着性が向上し、相乗効果により、より良好なバリア性の効果を発揮し得るものである。
【0090】
本発明において、上記のガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーター等のロールコート、スプレーコート、ディッピング、刷毛、バーコート、アプリケータ等の塗布手段により、1回或いは複数回の塗布で、乾燥膜厚が0.01〜30μm、好ましくは0.1〜10μmのバリアコートを形成することができる。更に、通常の環境下で、50〜300℃の温度下で、0.05〜60分間加熱・乾燥することにより、縮合が行われ、本発明のバリアコートを形成することができる。
【0091】
<8> バリアコート層のヤング率
本発明において、上記バリアコート層のヤング率を特定のものとすることにより、より高いガスバリア性及び優れた柔軟性が得られる。ここで、上記バリアコート層のヤング率は、15〜30MPaでなければならず、望ましくは15〜25MPa、特に18〜22MPaであることが好ましい。
【0092】
バリアコート層のヤング率を上記特定範囲とすることにより、ガスバリア性積層体自体のガスバリア性が向上すると共に、製袋加工や成型処理等によってクラック等の損傷が発生せず、前記処理後も高いガスバリア性を維持するガスバリア性積層体を得ることができる。
【0093】
バリアコート層のヤング率が15MPa未満であると、ガスバリア性積層体自体のガスバリア性が低下すると共に、製袋加工や成型処理等によりクラックを生じ、さらにガスバリア性が低下する。またバリアコート層のヤング率が30MPaを超えると、十分な柔軟性を得ることができず、製袋加工や成型処理等によりクラックを生じ、ガスバリア性が低下するという問題を生ずる。
【0094】
上記のバリアコート層のヤング率は、無機酸化物蒸着層上へガスバリア性組成物を塗布した後、150〜250℃の温度で、1秒〜2分間加熱処理することにより達成することができる。
【0095】
なお本発明にいうヤング率とは、測定対象となる積層体の25℃における変位量(積層体の長手方向の片端を固定し、逆末端を自由末端とした場合の、固定末端と自由末端との高さの差)、積層体の長さ、幅、各層の厚さ、各層の層密度、各層の曲げの慣性モーメントから、以下の数式を用いて算出したものをいう。
X=[−b×Σ(h×d/2)×3L4/12]/Σ(E×Iy)
(ここでXは測定対象となる積層体の変位量、L、bはそれぞれ前記積層体の長さ、幅、hは前記積層体中の各層の厚さ、dは前記積層体中の各層の層密度、Iyは前記積層体中の各層の曲げの慣性モーメントを表わす)
次に本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
【実施例】
【0096】
〔実施例1〕
数平均分子量25,000、ガラス転移点(Tg)99℃、水酸基価80mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂を、メチルエチルケトン(MEK)/酢酸エチルの混合溶剤(混合比1:1)を用いて、液中の固形分濃度が10%になるように希釈することにより、主剤を調製した。一方、固形分75%のトリレンジイソシアネートを含有する酢酸エチル溶液を、硬化剤として使用した。主剤100重量部に対して硬化剤10重量部を添加し、蒸着用アンカーコート剤を作製した(以下、アンカーコート剤A)。該アンカーコート剤Aを、厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルム(PET)の片面に、グラビアコート法により塗工量が0.3g/m2となるように塗工し、アンカーコート層(1)を形成した。
【0097】
次いで該アンカーコート層(1)上に、エレクトロンビーム(EB)加熱方式による真空蒸着法により、厚さ15nmの酸化アルミニウム蒸着層(1)を形成した。該酸化アルミニウム蒸着層(1)上に、下記組成のガスバリア性組成物(以下、ガスバリア性組成物A)をグラビアコート法により塗工し、150℃で1分間乾燥して、厚さ0.3μm、ヤング率18.8MPaの複合ポリマーからなるバリアコート層(1)を形成した。
【0098】
さらにそのバリアコート層(1)上に、アンカーコート剤Aを、グラビアコート法により塗工量が0.3g/m2となるように塗工し、アンカーコート層(2)を形成した。次いで該アンカーコート層(2)上に、エレクトロンビーム加熱方式による真空蒸着法により、厚さ15nmの酸化アルミニウム蒸着層(2)を形成した。
【0099】
その上に、ガスバリア性組成物Aをグラビアコート法により塗工し、150℃で1分間乾燥して、厚さ0.3μm、ヤング率18.8MPaのバリアコート層(2)を形成した。
【0100】
これにより、2軸延伸ポリエステルフィルム(PET)/アンカーコート層(1)/酸化アルミニウム蒸着層(1)/バリアコート層(1)/アンカーコート層(2)/酸化アルミニウム蒸着層(2)/バリアコート層(2)、からなる本発明のガスバリア性積層体を得た。
【0101】
<ガスバリア性組成物Aの調製>
エチルシリケート34.13g、エタノール25g、2N塩酸1.15g及び水4.58gを混合し、常温で1〜2時間撹拌し、次いでエポキシシランSH6040(東レダウコーニング製)3.41g、ソアノール30L(日本合成化学社製)31.56g及びN,N−ジメチルベンジルアミン0.17gを加えて30分撹拌し、ガスバリア性組成物Aを得た。
【0102】
〔実施例2〕
酸化アルミニウム蒸着層の代わりに、プラズマ化学気相成長法により、厚さ10nmの酸化ケイ素を蒸着した以外は、実施例1と同様にして、本発明のガスバリア性積層体を得た。
【0103】
〔実施例3〕
数平均分子量40,000、ガラス転移点(Tg)68℃、水酸基価43mgKOH/gの水酸基含有アクリル樹脂を、メチルエチルケトン(MEK)/酢酸エチルの混合溶剤(混合比1:1)を用いて、液中の固形分濃度が10%になるように希釈することにより、主剤を調製した。一方、固形分75%のトリレンジイソシアネートを含有する酢酸エチル溶液を、硬化剤として使用した。主剤100重量部に対して硬化剤10重量部を添加し、蒸着用アンカーコート剤を作製した(以下、アンカーコート剤B)。
【0104】
該アンカーコート剤Bを、厚さ12μmの2軸延伸ポリエステルフィルムの片面に、グラビアコート法により塗工量が0.3g/m2となるように塗工し、アンカーコート層(1)を形成した。次いで該アンカーコート層(1)上に、エレクトロンビーム加熱方式による真空蒸着法により、厚さ15nmの酸化アルミニウム蒸着層(1)を形成した。該酸化アルミニウム蒸着層(1)上に、上述のガスバリア性組成物Aをグラビアコート法により塗工し、150℃で1分間乾燥して、厚さ0.3μm、ヤング率19.6MPaの複合ポリマーからなるバリアコート層(1)を形成した。
【0105】
さらにそのバリアコート層(1)上に、アンカーコート剤Bを、グラビアコート法により塗工量が0.3g/m2となるように塗工し、アンカーコート層(2)を形成した。次いで該アンカーコート層(2)上に、エレクトロンビーム加熱方式による真空蒸着法により、厚さ15nmの酸化アルミニウム蒸着層(2)を形成した。
【0106】
その上に、ガスバリア性組成物Aをグラビアコート法により塗工し、150℃で1分間乾燥して、厚さ0.3μm、ヤング率19.6MPaのバリアコート層(2)を形成した。
【0107】
これにより、2軸延伸ポリエステルフィルム(PET)/アンカーコート層(1)/酸化アルミニウム蒸着層(1)/バリアコート層(1)/アンカーコート層(2)/酸化アルミニウム蒸着層(2)/バリアコート層(2)、からなる本発明のガスバリア性積層体を得た。
【0108】
〔実施例4〕
酸化アルミニウム蒸着層の代わりに、プラズマ化学気相成長法により、厚さ10nmの酸化ケイ素を蒸着した以外は、実施例3と同様にして、本発明のガスバリア性積層体を得た。
【0109】
〔比較例1〕
アンカーコート剤を塗工せず、したがってアンカーコート層(1)及び(2)を形成しなかった以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0110】
〔比較例2〕
アンカーコート剤を塗工せず、したがってアンカーコート層(1)及び(2)を形成しなかった以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
【0111】
〔比較例3〕
アンカーコート剤Aの主剤として、数平均分子量25,000、ガラス転移点(Tg)99℃、水酸基価10mgKOH/gである水酸基含有アクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0112】
〔比較例4〕
アンカーコート剤Aの主剤として、数平均分子量40,000、ガラス転移点(Tg)68℃、水酸基価300mgKOH/gである水酸基含有アクリル樹脂を用いた以外は、実施例3と同様にして積層体を得た。
【0113】
〔比較例5〕
アンカーコート剤Aの主剤として、数平均分子量9000、ガラス転移点(Tg)99℃、水酸基価80mgKOH/gである水酸基含有アクリル樹脂を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0114】
〔評価〕
上記で得られた積層体の酸素及び水蒸気透過度を、以下の条件下で測定した。
(1)酸素透過度の測定
米国、MOCON社製OXTRAN2/20を用いて、23℃、90%RH雰囲気下で測定した。
(2)水蒸気透過度の測定
10cm×10cmで作製した平パウチ中に塩化カルシウムを封入し、40℃、90%RH雰囲気下で保管し、その重量変化を水蒸気透過度に換算した。
結果は以下のとおりであった。
【0115】
【表1】

【0116】
また、2液硬化型ウレタン系接着剤を用いて、上記積層体の基材フィルム(PET)側の面と、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP30)とをドライラミネートすることにより、ラミネート強度測定用サンプルを作製し、このサンプルのラミネート強度を、テンシロンを用いてT字剥離方式(測定速度50mm/min)により測定した。
結果は以下のとおりであった。
【0117】
【表2】

【0118】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜4の積層体は、比較例1〜5と比較して、いずれも、極めて低い酸素透過度及び水蒸気透過度を示し、したがって、優れたガスバリア性を有した。
【0119】
また、上記の表2から明らかなように、実施例1〜4の積層体は、いずれも、CPP30のフィルム強度を上回る層間密着強度を有した。これに対し、比較例1〜3の積層体は、基材フィルムであるPETと無機酸化物蒸着層との間で層間剥離が起きた。また、比較例4の積層体はその一部において、また比較例5の積層体はその大部分において、ブロッ
キングが生じたため、ドライラミネート処理に付すことができなかった。
【符号の説明】
【0120】
1 基材フィルム
2、5、8 アンカーコート層
3、6、9 無機酸化物蒸着層
4、7、10 バリアコート層
11 被蒸着フィルム
21 低温プラズマ化学気相成長装置
22、42 真空チャンバー
23、43 巻き出しロール
24、33 補助ロール
25 冷却・電極ドラム
26、27 ガス供給装置
28 原料揮発供給装置
29 原料供給ノズル
30 グロー放電プラズマ
31 電源
32 マグネット
34、53 巻き取りロール
35 真空ポンプ
41 巻き取り式真空蒸着装置
44、45、51、52 ガイドロール
46 コーティングドラム
47 るつぼ
48 蒸着源
49 酸素ガス吹出口
50 マスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材料からなる基材フィルムの一方の面上に、無機酸化物蒸着層とバリアコート層とを、この順序で、交互に2回又はそれ以上繰り返し積層し、且つバリアコート層が最外層となるように形成したガスバリア性積層体において、基材フィルムの被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間、及びバリアコート層の被蒸着面と無機酸化物蒸着層との間にアンカーコート層を設け、該アンカーコート層は、水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を含むアンカーコート剤が反応硬化してなる層であり、該バリアコート層は、一般式R1nM(OR2m(式中、R1、R2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数であり、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である)で表される1種又はそれ以上のアルコキシドと、水溶性高分子とをゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物を塗布してなる層である、上記ガスバリア性積層体。
【請求項2】
水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移点が、50〜200℃である、請求項1に記載のガスバリア性積層体。
【請求項3】
水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量が、10,000〜100,000である、請求項1又は2に記載のガスバリア性積層体。
【請求項4】
アンカーコート剤において、水酸基含有アクリル樹脂中の水酸基に対する、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル比が、0.3〜3.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項5】
水酸基含有アクリル樹脂の水酸基価が、20〜200mg KOH/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項6】
アンカーコート剤が、水酸基含有アクリル樹脂の固形分100重量部に対し、シランカップリング剤3〜80重量部を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項7】
シランカップリング剤が、イソシアネート基、アミノ基、エポキシ基及びメルカプト基から選択される少なくとも1種の有機官能基を有する有機ケイ素化合物からなる、請求項1〜6のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項8】
無機酸化物蒸着層の各層が、化学気相成長法又は物理気相成長法により積層された、請求項1〜7のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項9】
無機酸化物蒸着層が、物理気相成長法により蒸着された酸化アルミニウムからなる層である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項10】
無機酸化物蒸着層が、化学気相成長法により蒸着された酸化ケイ素からなる層である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のガスバリア性積層体。
【請求項11】
水酸基含有アクリル樹脂、イソシアネート化合物及びシランカップリング剤を含むアンカーコート剤が反応硬化してなるアンカーコート層において、該水酸基含有アクリル樹脂の数平均分子量が10,000〜100,000、水酸基価が20〜200mg KOH/gであるアンカーコート層。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82105(P2013−82105A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222602(P2011−222602)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000219912)東京インキ株式会社 (120)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】