説明

ガス中のアンモニア濃度を検出する方法およびセンサ

ガス中の総アンモニア(NH)濃度を測定するための混成電位センサ装置及び方法を提供する。ガスを、まず、二個の検出チャンバ内に方向付けられる二つの流れに分けられる。各ガス流れは、特定の触媒システムによって調整される。第一のチャンバでは、幾つかの場合、少なくとも約600℃の温度で、ガスは、アンモニアのほぼ全てがNOに変換されるように処理され、そして、NOに対するNOの定常状態平衡濃度が定められる。第二のチャンバでは、ガスは、比較的低い温度、好ましくは450℃未満の温度で、触媒を用いて、アンモニアの大部分が窒素(N)及び水蒸気(H0)に変換されるように処理される。各ガスは、NOに対し感度が高い混成電位センサシステムの検知電極の上方を通過する。二つのガスセンサの読取りの差は、排ガス中の総NH濃度の測定を提供することができる。触媒システムはまた、ガス中のCHやCO等のようないずれの未燃焼炭化水素をも酸化し、かつ、SOのような部分的な汚染物質を取り除くように機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2004年12月28日に出願され、かつ、発明の名称が「アンモニアガスセンサ方法および装置」である、Balakrishnan Nair and Jesse Nachlasの米国特許仮出願第60/593,250号及び、2005年12月22日に出願され、かつ、代理人の整理番号CER−041512をもつ、発明の名称「アンモニアガスセンサ方法および装置」である、米国特許出願の利益に関するものであり、かつこの利益を主張する。これらの出願は、それらの全てをこの参照によって本願明細書中に取り込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、複数のガスまたは複数のガス流れ中のアンモニアガスの測定に関するものである。いくつかの実施形態では、本発明は、自動車及びトラックのような移動源と発電所のような固定源との両方からの流れ中のアンモニア測定、特に、選択的な接触還元のようなプロセスにおける窒素酸化物NOxの放出を軽減するために最初に加えられる気体アンモニアまたは尿素の残留物の測定に関するものである。
【背景技術】
【0003】
放出制御システムに関し、500℃より高い温度でNHを検出及び測定できるアンモニアセンサが技術的に必要である。典型的には、制御適用に関し、測定の精度は±1ppmであることが必要であり、検出限界は1ppmと同じく低いことを必要とする。関連する特許及び他の文献の再調査は、現在知られており、かつ使用されるアンモニアセンサが、1ppmの検出限界を提供すると同時に、500℃より高い温度で適当な機能を発揮できないことが明らかとなった。ガス選択性及び感度を改良するために提案される技術は、ポリマーモレキュラーシーブの使用を含む。これらの技術は、高温での使用を本質的に除外する。ポリマーがこのような温度では化学的に安定ではないためである。
【0004】
NH検出用の光センサは、IR検出器及び光ファイバベースのセンサを含む。光センサは、一般に、他のガス構成成分に対しほとんど交差感受性がなく正確なガス測定を行うことができる。しかしながら、光学システムに関しては、ガスの投入が、分析チャンバに移動させなければならず、長い遅延時間を生じる。その上、このような光センサ用の関連装置は、一般に分厚く、非常に高価である。加えて、ポリマー/揮発性の検出材料の使用は、比較的冷たいガス温度(すなわち、一般には100℃未満)を必要とする。
【0005】
半導体センサは、典型的には、金属酸化物またはポリマーのような半導体に基づく、現在使用されているセンサの一種であり、かつ、吸着種の機能として、コーティングの抵抗またはキャパシタンスの変化を測定する。一般に、半導体酸化物に関する主な問題は、それらがガスの吸着に基づくバルク特性を測定するということであり、全てのガスはある程度までは、高表面積のセラミック基板上に吸着する傾向があるので、二次汚染の重大な問題があり、かなりの測定誤差を生じる。エンジン排気流中のアンモニア測定に関する主な問題は、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)による二次汚染である。この問題を解決するために、試みられた一つのアプローチは、「電子鼻」を用いることであり、この電子鼻は、ガス混合物の存在下で、一連の応答を生じさせ、平行に動作する複数の半導体センサに基づくものである。これは、NH濃度から算出するために、非常に複雑な電子回路パッケージを必要とすることとなり、これは、望ましくなく、コスト効果がない。
【0006】
半導体センサにおいて直面する他の問題は、それらが使用するための低い最高温度を有することである。ポリマーベースのセンサは、ポリマーが化学的に安定である温度未満(一般には150℃未満)でのみ有用である。金属酸化物の半導体センサは、典型的には、約300℃が最も感度が高く、それらは、一般に、450℃より高い温度でそれらの感度を喪失する。ほとんどのガスの吸着が、その温度超えで次第になくなる。さらに、多くの環境において、半導体センサは、ガス吸着によって動力学的に制限されるので、典型的には、アンモニア濃度のばらつきに対し、長い応答時間を有することが認められた。その後、種々のガス種についての情報から引き出すため、一連のセンサのセンサ応答を解析することができる。
【0007】
このアプローチは、二つの課題、すなわち、(1)半導体ベースのセンサの制限された温度性能(一般には450℃未満)と、(2)種々の検出素子の信号からの意味のあるガス濃度から引き出すために必要とされる、付随の電子機器の複雑性とを有する。一般に、これらのタイプのセンサは、エンジン制御用としてよりもむしろ、大気質モニタリング用としてのほうがより適している。
【0008】
魅力的な代案は、排ガス炭化水素モニタリング用として、固体電気化学セラミックセンサである。これらの装置は、電位差測定センサ及び電流測定センサに広義に分類することができ、モニタされたパラメータが、一定の加電圧で、装置を通る電気化学的電位又は電流であるかどうかにそれぞれ基づくものである。電位差測定センサは、平衡電位ベースの装置及び混成電位ベースの装置に更に分類することができる。平衡電位ベースのセンサは、I型、II型及びIII型センサとして、ウェプナ氏によって最初に分類された3つの主なカテゴリがある。この分類は、電気化学的電位の性質と関連し、ターゲットガスの装置との相互作用に基づくものである。I型センサは、ターゲットガスの、固体電解質(例えばイットリア安定化ジルコニア−YSZによるOセンサ、O2−イオン伝導体)内における可動イオンとの相互作用に起因する電位を生じさせる。一方、II型センサは、ターゲットガスの、固体電解質(例えばCO‐Kイオン相互作用に基づくセンサ)内における固定イオンとの相互作用に起因する電位を生じさせる。III型センサは、補助フェーズの援助なしに、このような直接関係を示さない。II型及びIII型センサは、不安定であり、高温で爆発する場合がある、一般には硝酸塩のように、用いられる材料の性質に起因する高温用途には明らかに不向きである。NH検出用のI型センサは、実現可能であるが、非実用的である。測定を妨害するであろう排気流中の酸素の存在によって、精巧なポンピングセルは、ガス検出の前に酸素を除去する必要がある。これは、装置を複雑にし、魅力的なオプションでない地点まで作業コストを増大させる。ガス検出用の電流測定装置に対し、初期の酸素除去の同じ問題が存在する。
【0009】
電気化学センサの中で、現在までのところ、排ガスモニタリング用の最善のオプションは、混成電位ベースのセラミックセンサであった。この特許はアンモニアの検出を対象としたものであり、主要な要素は、触媒システムの使用にあるものの、検出される最終種はNOであり、NO検出用混成電位センサの検討が関連する。初期の研究は、主としてNO検出用の混成電位センサ上で、ヤマゾエやミウラをリーダーとする日本のグループによって行なわれた。混成電位センサは、酸素イオン伝導性膜上に、金属、金属酸化物またはペロブスカイト検知電極からなり、それら混成電位センサは、排ガスNOセンサとして用いるために非常に魅力的にする多くの性質を有する。それらは、650℃もの高い温度で有効に動作することができる。更に、それらは、酸素除去のために精巧なポンピングセルを必要とせず、静水圧プレス成形、焼結、インク加工、電極塗布及びポストファイアリング(後還元)のような、比較的容易で、コスト効率の良い従来のセラミック加工技術を用いて、非常にコンパクトな形状に製造することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、それは、これら及び他の考慮すべき問題を解決するためにデザインされたアンモニア検出システムの方法及び代案の形態を提供するための技術の改良にあるだろう。このような方法及び装置は、本願明細書において提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高温で用いられるため、また、ガス流れ中の総NH濃度の測定に役立つガスセンサを提供するため、限定されるものではないが、移動排気源(自動車及びトラックを含む)及び固定排気源(発電所を含む)のような排気流中のアンモニアガスを測定する方法及びデザインを対象とする。この方法は、選択的な触媒還元のようなプロセスにおいてNO放出を軽減するため、場合によっては、このような排気流に加えられる気体アンモニアまたは尿素の残留物を検出するために用いることができる。
【0012】
したがって、いくつかの実施形態では、本発明は、高温使用に適したアンモニアセンサおよび/または排ガス流れ中の総NH濃度を測定するセンサを提供する。いくつかの形態では、本発明のセンサ及び方法は、二つのチャンバ間の総NO濃度の明確な差を提供するため、ガスが異なる触媒システムで処理される二つの検出チャンバの使用を含む。いくつかの実施形態では、本発明のセンサは、1ppmと低いNH濃度の測定が可能であるかもしれない。
【0013】
いくつかの実施形態では、本発明は、酸素及びNO濃度がNHと同時に測定することができるように、NHセンサ本体内に、NOおよび/または酸素センサを更に組み込むことができ、それによって、酸素及びNO濃度の関数である信号に基づいて総NH濃度の正確な決定を可能にする。
【0014】
本発明の他の利点及び態様は、以下の図面の説明及び発明の詳細な説明を読むことで、明らかになるであろう。これらおよび本発明の他の特徴並びに利点は、以下の図、記載及び特許請求の範囲からより十分に明らかになるであろうし、または、以下で説明するように、本発明の実施によって知ることができる。
【0015】
本発明の、上述された及び他の特徴並びに利点が得られる方法を容易に理解するために、上記で簡潔に記載した本発明のより詳細な記載は、図面において説明される特定の実施形態を参照することにより示されるであろう。これらの図面は本発明の典型的な実施形態のみを示したものであって、それゆえに、その範囲に制限されるように考慮されるべきでないことを理解するとき、本発明は、付加的な特異性及び詳細を図面の使用を通じて記載及び説明されるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0016】
本発明の、現在の好ましい実施形態は、図面を参照することで最もよく理解され、図中、同種の部分には同じ番号を一貫して示す。本発明の構成要素を、本願明細書で一般に記載され、かつ図面で説明されるように、多種多様な異なる構成で配置及び設計することができることを容易に理解されるであろう。したがって、図1〜図4に示されるような本発明のアンモニアセンサ及びその濃度検出方法の以下の実施形態のより詳細な説明は、特許請求の範囲に記載されたような本発明の範囲を限定することを目的とせず、単に本発明の代表的な好適実施形態を示しているにすぎない。
【0017】
本発明の一実施形態は、図1に線図的に示されるNHセンサである。したがって、最初に図1を参照すると、本発明のアンモニアセンサ10の模式図が示され、この図は、NH濃度の正確な測定を達成するために必要とされる基本的な特徴がガス流12であることを説明する。本発明の方法および装置のいくつかの実施形態において、選択的である第一工程では、ガス流12を脱硫化する。本発明の装置および/または方法の、この脱硫化段階20は、いくつかの実施形態では、CaO、MgOのような吸収材料、またはガス流12からSOを除去する機能をもたらす材料からなるペロブスカイト群からの化合物で構成することができる。これは、センサパッケージの残部を分解することなしに、修理中に定期的に交換できる、パックされたペレットまたは浸潤支持体の形であることができる。他の好適な形態は、当業者に知られているであろう。
【0018】
本発明の方法および/または装置から脱硫器20を含むかまたは省略するかの決定は、ガス流れ12を生じさせる燃料の硫黄含有量に主として依存する。本発明の装置および方法で用いられるいずれの脱硫器20の大きさ及び容積は、特定の用途によって決定されるであろう。いくつかの場合において、排ガス12が排気装置内で15ppm未満の二酸化硫黄しか含有しないのであれば、脱硫器20は必要とはされないかもしれないと考えられる。
【0019】
本発明の装置及び方法における次の工程または構成要素は、図1に示されるように、ガス試料が、第一及び第二の流れ、すなわち、流れ1(30a)及び流れ2(30b))に分けられることである。これは、当業者に知られた多種多様な構造的手段を用いて達成されることができ、投入ガス12を2つの流れ30a及び30bに分離するためのスプリット通路及び、最初の流入流れ12の一部を切り離す出力ラインを含んでいてもよく、これに限定されるものではない。
【0020】
第一の流れ、すなわち流れ1(30a)は、その後、第一の触媒段階40によって低温(一般に約200〜500℃)で、第一の流れ30aのガスの大部分がN及びHOに変換されるように処理することができる。この反応は、一般に下記のように進行する。
2NH+1.5O→N+3H
【0021】
好適な酸化触媒は、いくつかの形態では、ニッケルアルミン酸塩(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)ならびに銅(Cu)及び、これらの成分を含有する種々の混合物及び複合物を含む。NHをNおよびHOに低温酸化するための他の触媒は、当業者に知られているであろうし、かつ本発明の範囲内にある。
【0022】
本発明のこの方法及びそれを実施する装置において、流れ2(30b)は、本発明の方法及び装置に従って低温触媒40では処理されない。その代わりに、流れ2(30b)は、ニッケルアルミン酸塩(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)、並びに、いずれの混合物または複合物の群から選ばれる触媒によって高温で処理されて、NOの形成を促進する。この工程では、温度が約600℃よりも高くすることができ、場合によっては、約650℃よりも高くすることができ、これにより、次の反応が生じる。
2NH+2.5O→2NO+3H
【0023】
これに続いて、各流れは、その後、高温、好ましくは約700℃よりも高い温度で、次の触媒50を通過するであろう。このステージの触媒50は、未燃焼炭化水素を酸化し、かつCOをCOに変換するように機能する、RuOまたはCoOのような酸化触媒、または銀または白金のような金属からなる。このステージの触媒50はまた、NOとNOとの間の定常状態濃度比率を定めるように作用し、これによって、存在する総NOガス中に占めるNOの百分率は、最適には約1〜5%の範囲内であり、少なくとも約0.5〜10%の範囲内にある。流れ2(30b)では、NHはまた、この高温で、ほぼ完全にNOに酸化されるであろう。
【0024】
各流れ内のガスは、触媒システムによって調整された後、別個のセンサキャビティ60a、60b内を通り、前記センサキャビティ60a、60bにおいて、二つの別個の電圧信号が、各ガス流れ、すなわち流れ1(30a)及び流れ2(30b)内に存在する総NOの濃度に比例して発生する。各流れ内のNO濃度に対応する二つの信号間の差は、排ガス中のNH濃度の測定単位である。
【0025】
他の実施形態では、本発明の触媒/センサシステムは、小型化したり、単一のハウジング内に結合することができる。この形態において、ハウジングの外側シェルは、ガスを少なくとも二つの流れ内に分け、その後、各流れを、触媒システムを通り、次いで、ハウジングから出るため、センサ電極を通って案内するように設計することができる。いくつかの実施形態では、ハウジングは金属である。この方法では、ガスが、センサ電極と接触する前に、それぞれの触媒システムによって調整され、これによって、総NO濃度の正確な測定を可能にする。装置内における種々の温度区域は、触媒の各段階を加熱するため、装置内に設けた別個のヒータを一体化することによって達成することができる。アンモニアセンサであることに加えて、装置がガスのNO濃度の測定を提供できることもまた想定される。
【0026】
他の好ましい実施形態では、図1に線図的に示される触媒/センサシステム及び方法10は、ハウジングボディ内に酸素センサを組み込むことによって改良することができ、結果として、迅速に変化する酸素濃度をもつガス環境内で行うことができるセンサシステムがもたらされる。この形態では、酸素イオン伝導性電解質膜を、酸素センサ及びNHセンサの両方に用いることができる。
【0027】
本願の図面中に示されかつ明細書中に記載されている実施形態はまた、デザインされた他の構成要素に拡張することができ、例えば平板セラミック多層パッケージデザイン、単一の電解質ディスクタイプデザイン等であることは理解される。
【0028】
本発明のシステム及び方法の他の実施形態を図2に示す。この実施形態は、流れ1(130a)の触媒による低温酸化140において、Oと反応するNOの代わりに、選択的接触還元触媒が、NOとの反応によってNHを酸化して、NとHOを生じるために用いられることができる点で図1に示される第1の実施形態とは異なる。これは、以下の式に従う反応において消費されるNOに起因する比較的低いNO濃度を提供することができる。
4NH+6NO→5N+6H
【0029】
電子補償は、NOの消費に起因して必要とされるかもしれない。
【0030】
いくつかの実施例が、本発明の特定の実施形態の構成、用途及び試験を論じるため、以下に記載する。これらの実施例は、事実上の典型例であって、いずれの方法でも、本発明の範囲を限定するために解釈されるべきではない。
【実施例】
【0031】
実施例1
実験は、二つの異なる温度で触媒を用いるコンセプトを試験するため設定された。すなわち、ガスが高温触媒を通過すると、NHの全てがNOに変換され、また、ガスが低温触媒を通過すると、NHがNとHOに変換される。触媒は、ある高純度Al絶縁フェルトを、およそ1mm×1mm×1mmの小片に切り刻むことによって製造された。その後、前記小片は、RuCl溶液に浸漬され、次いで、80℃で1時間乾燥させた。乾燥させた前記小片は、その後、外径3/8インチのステンレス鋼管である試験装置に、この管の各端に取り付けられる圧縮取付具を用いて試験装置に取り付けられた。前記小片は、それらの層の各側部上に一片のニッケルメッシュを用いて同じ場所に保持されて、それら小片がステンレス鋼管内の適当な位置に維持され、かつそれらの小片が流動ガスによって移動するのを防止する。その後、前記試験装置は、小さな管状の抵抗加熱炉に取り付けられ、この抵抗加熱炉は、この炉に接続されるPID温度コントローラを有する。その後、触媒は、流動空気内で600°Cまで加熱されて、RuClをRuOに変換する。実験的な試験装備を完成するため、混成電位タイプNOセンサが、ガス配管システムに接続されて、ガスが触媒を通過した後、ガスはNOセンサに進むであろう。
【0032】
その後、触媒及びNOセンサは、種々のガス組成の流れを混合しかつ制御するための4台のMKS社製マスフローコントローラを用いてガス混合システムに接続した。触媒は、その後、300℃の温度まで加熱され、種々のNH濃度が、触媒を通り、そしてNOセンサ上で混合されかつ通過する。次に、触媒は700℃まで加熱され、同じシーケンスの測定を繰り返した。種々のNH濃度及び二つの温度でのNOセンサの電圧応答が図3に示されている。この結果は、ガスが高温触媒を通過すると、NHの全てがNOに変換され、一方、ガスが300℃で低温触媒を通過すると、大部分のガスはNとHOに変換されることを示す。いずれか一つの理論にも限定されることなしに、この触媒は、低温ではN及びHOへの100%の変換をもたらさないので、NとHOへの約100%の変換を達成できる触媒の使用によって、より望ましい結果を達成されるであろうことが考えられることに注目すべきである。これは、より良い精度及び感度を有するセンサに導くであろう。したがって、次の工程は、より最適な酸化性能を見いだすための種々の触媒の研究であると考えられる。
【0033】
実施例2
第二の実験は、二つの異なる温度で触媒を用いるコンセプトを試験するため設定された。すなわち、ガスが高温触媒を通過すると、NHの全てはNOに変換され、また、ガスが低温触媒を通過すると、NHはNとHOに変換される。触媒は、10重量%のLa/Alを混合することによって製造され、次いで、15重量%のNi組成を作り出すため、硝酸ニッケルを含浸させた。この前駆物質粉末を、その後、空気中にて約800℃で乾燥及び焼成した。焼成された粉末は、その後、外径3/8インチのステンレス鋼管である試験装置に、この管の各端に取り付けられる圧縮取付具を用いて試験装置に取り付けられた。前記焼成された粉末は、その層の各側部上に一片のニッケルメッシュを用いて同じ場所に保持されて、前記焼成粉末がステンレス鋼管内の適当な位置に維持され、かつ前記焼成粉末が流動ガスによって移動するのを防止する。その後、前記試験装置は、小さな管状の抵抗加熱炉に取り付けられ、この抵抗加熱炉は、この炉に接続されるPID温度コントローラを有する。実験的な試験装備を完成するため、混成電位タイプNOセンサが、ガス配管システムに接続されて、ガスが触媒を通過した後、ガスはNOセンサに進むであろう。
【0034】
その後、触媒及びNOセンサは、種々のガス組成の流れを混合しかつ制御するための4台のMKS社製マスフローコントローラを用いてガス混合システムに接続した。触媒は、その後、400℃の温度まで加熱され、種々のNH濃度が、触媒を通り、そしてNOセンサ上で混合されかつ通過する。次に、触媒は約700℃まで加熱され、同じシーケンスの測定を繰り返した。種々のNH濃度及び二つの温度でのNOセンサの電圧応答が図4に示されている。この結果は、ガスが高温触媒を通過すると、NHの全てがNOに変換され、一方、ガスが400℃で低温触媒を通過すると、ガスの全てがNとHOに変換されることを示す。この触媒の使用は、低温でNとHOへのほぼ100%の変換をもたらすようにみえる。したがって、この触媒組成物は、NHのNとHOへのほぼ100%の選択酸化を生じさせ、これによって、この触媒とともに使用される混成電位タイプのNOセンサの有効な使用が、NHセンサをうまく構成することを可能にする。
【0035】
本発明の特定の実施形態が図示され、かつ記載されているものの、本発明の精神から著しく逸脱することなしに多くの改良を生み出すことができ、また、保護の範囲は、特許請求の範囲によって限定されるのみである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の方法を明示及び実施するために用いられる装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明の方法を明示及び実施するために用いられる装置の代案の実施形態の他の概略図である。
【図3】図3は、二種類の異なる温度でRuO触媒に対するNH濃度の関数として、電圧応答を説明するチャートである。
【図4】図4は、二種類の異なる温度でNiAl触媒に対するNH濃度の関数として、電圧応答を説明するチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス中のアンモニア濃度を検出する方法であって、
ガス源の流れを受ける工程と、
前記ガス源の流れを、ガスの第一及び第二の流れに分ける工程と、
前記ガスに存在するNHをNに変換できる条件下で、前記ガスの第一及び第二の流れの一方を、第一の触媒システムにさらす工程と、
前記ガスに存在するNHをNOに変換できる条件下で、前記ガスの第一及び第二の流れの残りの一方を、第二の触媒システムにさらす工程と、
前記ガスの第一及び第二の流れに存在するNOのレベルを検出する工程と、
前記ガスの第一及び第二の流れ間のNO濃度の差を算出する工程と
を有する、ガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項2】
前記第一の触媒システムは、アルミン酸ニッケル(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)、並びにこれらのいずれかの混合物または複合物からなる群から選ばれる低温触媒を有する請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項3】
前記第二の触媒システムは、アルミン酸ニッケル(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)、並びにこれらのいずれかの混合物または複合物からなる群から選ばれる高温触媒を有する請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項4】
NOとNOとの間の定常状態平衡濃度比を定めるため、前記ガスの第一及び第二の流れを、第三の触媒システムを通じてさらす工程をさらに有する請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項5】
前記第三の触媒システムは、RuO、CuO、Ag及びPtからなる群から選ばれる触媒を含む請求項4に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項6】
前記ガス中に存在するNHをNに変換できる条件下で、前記ガスの第一及び第二の流れの一方を、第一の触媒システムにさらす工程の前に、前記ガス源の流れからSOを吸収する工程をさらに有する請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項7】
前記ガスの第一及び第二の流れ内に存在するNOのレベルを検出する工程は、NOに対し選択的である、複数の混成電位ベースの検出素子によって達成される請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項8】
前記混成電位ベースの検出素子は、酸素イオン伝導性の電解質上に堆積させた検知電極を有し、電位は、前記検知電極と、前記ガス中の前記NO濃度の機能に対応する参照電極との間で測定される請求項7に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項9】
前記ガスの第一及び第二の流れに存在するNOのレベルを検出する工程は、半導体金属酸化物コーティングを具える検出素子によって達成され、該検出素子上へのNOの吸着は、前記ガスの第一及び第二の流れ内におけるNO濃度とともに測定することができ、かつNO濃度と関連する可能性がある抵抗またはキャパシタンスのような前記検出素子の物理的パラメータの変化をもたらす請求項1に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項10】
前記混成電位ベースの検出素子は、前記NO検知電極として、WOを有するNO混成電位電極を含む請求項7に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項11】
前記混成電位ベースの検出素子は、約5〜40体積%の電解質を含有する電極を具える請求項10に記載のガス中のアンモニア濃度を検出する方法。
【請求項12】
ガス源の流れ中の総アンモニア(NH)濃度を測定するセンサであって、
前記ガス源の流れをガスの第一及び第二の流れに分けるための第一及び第二の流路と、
前記ガスの第一の流れ中に存在するNHをNに変換するための、前記第一の流路にさらされる第一の触媒システムと、
前記ガスの第二の流れ中に存在するNHをNOに変換するための、前記第二の流路にさらされる第二の触媒システムと、
前記ガスの第一及び第二の流れ中に存在するNOのレベルを検出するセンサ素子とを具えるセンサ。
【請求項13】
前記第一の触媒システムは、アルミン酸ニッケル(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)並びにそれらのいずれかの混合物または複合物からなる群から選ばれる一の触媒を具える請求項12に記載のセンサ。
【請求項14】
前記第二の触媒システムは、アルミン酸ニッケル(NiAl)、五酸化バナジウム(V)、酸化モリブデン(MoO)、酸化タングステン(WO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化セリウム(CeO)、酸化銅(CuO)、酸化マンガン(MnO)、酸化ルテニウム(RuO)、銀(Ag)、白金(Pt)及び銅(Cu)並びにそれらのいずれかの混合物または複合物からなる群から選ばれる一の触媒を具える請求項12に記載のセンサ。
【請求項15】
前記センサ素子は、NOに対し選択的である電流測定センサまたは混成電位ベースの検出素子を具える請求項12に記載のセンサ。
【請求項16】
前記混成電位ベースの検出素子は、酸素イオン伝導性の電解質上に堆積させた検知電極を具え、電位は、前記検知電極と、前記ガス中の前記NO濃度の関数に対応する参照電極との間で測定される請求項15に記載のセンサ。
【請求項17】
前記検出素子のうちの少なくとも一つは、半導体金属酸化物コーティングを具え、前記検出素子上におけるNOの吸着は、前記ガスの第一及び第二の流れ中のNO濃度を測定することができ、かつ前記NO濃度との関連の可能性がある抵抗またはキャパシタンスのような前記検出素子の物理的パラメータの変化をもたらす請求項12に記載のセンサ。
【請求項18】
SO吸収段階を更に具える請求項12に記載のセンサ。
【請求項19】
前記SO吸収段階は、CaO、MgOまたはペロブスカイトを含む請求項18に記載のセンサ。
【請求項20】
RuO、CuO、Agまたはそれらの混合物を含む平衡化を更に具える請求項12に記載のセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−525823(P2008−525823A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549600(P2007−549600)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/047312
【国際公開番号】WO2006/071953
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(500318449)セラマテック インコーポレイテッド (8)
【出願人】(507215518)
【Fターム(参考)】