説明

ガス分離装置、その前壁及び分離ロータ

【課題】ガス及び液体又は液体懸濁液を含む混合物から分離ロータによって分離された液体又は液体懸濁液が、簡単にプロセス流れに再循環でき、同時に、液体又は液体懸濁液から分離されたガスがプロセスの外に案内されるように改良された、ガス分離装置、分離ロータ、および前壁の提供。
【解決手段】本発明によるガス分離装置は、前壁及び前壁と接続して配置された分離チャンバと、シャフトに取り付けられ、分離チャンバ内に配置され、分離チャンバをいわゆる前側チャンバといわゆる後側チャンバとに分割するディスクと、ディスク上に配置されたベーンと、ガスを含む液体又はガスがディスクの後側にある後側チャンバに入ることができるようにする少なくとも1つの開口とを含み、前壁の前側チャンバに向いた表面が少なくとも部分的にリブを備え、それにより、分離チャンバ内での液体の回転が前側チャンバ内では防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離装置、その前壁及び分離ロータに関するものである。本発明は、とりわけ、ガス及び液体を含む、またはガス及び液体懸濁液を含む混合物から前記分離ロータによって分離された液体又は液体懸濁液が、できるだけ簡単にプロセス流れに再循環でき、それと同時に、前記液体又は液体懸濁液から分離されたガスがプロセスの外に案内されるように、ガス分離装置の分離ロータ及び/又は前壁を改良することに係るものである。本発明は、ガスがプロセス液の流れから分離してその流れの特定の地点に向かい、そこから、ガス混合物、すなわちガスと液体との混合物又はガスと懸濁液との混合物がガス分離装置に運ばれるような、あらゆる位置に適用することができる。プロセス流れから、回転装置内の低圧の中央部分又は他の何らかの空洞部に蓄積したガスを分離するために、本発明によるガス分離装置を使用することはとりわけ有利である。言及に値する有利な回転装置は、遠心ポンプ又は特定のガス分離器である。
【0002】
以下の説明では、遠心ポンプに関して、従来技術と本発明の両方をより詳細に論じる。しかし、本発明は、遠心ポンプに使用することのみに限定されるものではなく、遠心ポンプに関連する応用例は、本発明の好ましい実施例として示したものにすぎない。
【背景技術】
【0003】
従来から、ガスを分離することのできる遠心ポンプが知られており、それらのポンプでは、ガスは、ポンプのインペラ(羽根車)の前に蓄積して泡を形成し、そこからガスが、インペラの背板にある開口を介してインペラの後ろの空洞部に放出される。ほとんどの場合、程度の差はあっても、ポンプ輸送される液体又は懸濁液は、ガスと共に運ばれる。インペラの背板の後ろにあるベーン(羽根)を使用する目的は、液体又は懸濁液がインペラの背板の外縁を回って、ポンプ輸送される液体又は懸濁液に戻され、ガスがポンプ・シャフトに沿ってポンプの外に放出されるように、インペラの後側に入り込む液体又は懸濁液を既に分離されたガスから分離するためである。
【0004】
しかし、実際には、非常に多くの応用例で、液体又は懸濁液が依然としてガスと共に運ばれることが示されている。ポンプ輸送される液体又は懸濁液が、(例えば真空ポンプでよい)吸引装置にガスと共に運ばれることを防ぐために、別個の分離チャンバが、分離ロータ用のポンプのいわゆる後壁に接続して配置されてきた。前記空洞部に入ったガスと液体又は懸濁液との混合物は、混合物中のほぼすべての液体、及び存在する可能性のある固体物質が、それが放出され、ポンプ輸送され又はポンプ輸送される液体又は懸濁液に戻され得る場所から、分離チャンバの周縁に集まるように、前記分離ロータによって激しく回転運動させられる。従来構造では、分離ロータのハブ及びそれに取り付けられた放射状の又は傾斜したベーンから成るガス分離ロータが設けられる。従来のガス分離ロータの特異な特徴は、ベーンの間に中間空間、すなわちハブから外縁までのベーン通路が開いていることであり、それによって、ガスが、ベーン通路から実質的に軸線方向にガス放出部に向かって可能な限り簡単に流れることができるようになっている。
【0005】
分離チャンバからの液体又は懸濁液の放出は、液体又は懸濁液をポンプの吸引ダクトまで搬送するように、最も一般的にはポンプの外側に配置される別個のチャネルに沿ってなされる。しかし、前記構造を実現することは、複雑且つ高価である。
【0006】
他方、例えば遠心ポンプに使用される動的密封構成が知られているが、前記密封構成の大部分は、ポンプの後壁と接続された動的密封チャンバからポンプのインペラの後ろにある空洞部に戻る、ポンプ内における内部液体サイクルである。動的密封装置は、周知のように、本質的にどんな機械的接触もなしにポンプの動作中に遠心ポンプを密封することのできる密封装置であり、したがって、液体は、シャフトに沿って軸受及び駆動装置まで(図の右側)全く流れることができない。例えば、特許文献1は、密封装置の構造及び動作原理、並びにポンプにおける従来の動的密封装置の位置を記載している。一例として、動的密封装置は、ポンプ軸受の前にあるポンプの渦形室の後ろ(吸引ダクトの方向から見て)で、ポンプのいわゆる後壁と接続して配置され、ポンプのインペラがそこで回転するポンプの渦形室と直接流れ連通した環状チャンバ中に位置する。ポンプのシャフトに取り付けられた回転ディスクが、前記チャンバを、インペラ側空洞部とポンプ軸受側空洞部とに分割する。前記ディスクは、軸受側空洞部に面する側にベーンを備えているので、エキスペラと呼ぶこともでき、一方、ディスクの反対側は平滑である。前記環状チャンバに液体が入っている場合、前記エキスペラのベーンは、液体を、まず半径方向外向きに、次にエキスペラ・ディスクの外縁を回って、チャンバのインペラ側空洞部までポンプ輸送する傾向がある。ただし、ポンプが動作中の場合は、インペラによってポンプの渦形室に対して生成された圧力が反対方向に作用し、それによって、前記エキスペラ・ベーンによって回転される液体リングがインペラによって生成された圧力を中和する平衡が見出され、ポンプの動作中にはチャンバの軸受側空洞部内のシャフト空間に液体が全く入り込まないように、ポンプが密封される。しかし、ポンプが動作中でない場合は、ポンプ輸送される液体は、チャンバ内のエキスペラ・ディスクの縁部(リム)を回ってシャフト空間に、または、何らかの適切な方式で防止されていなければそこを経て大気に自由に到達できる。この目的で、いわゆる静的密封装置が用いられるが、これは、最も簡単な形態としてはシャフトの周りに配置された回転ディスクであり、シャフト空間に入ってくる液体の圧力によって対向面に押し付けられて、液体がそれ以上流れないようにする。
【0007】
この問題、すなわちガスの分離の点から見て、動的密封に関して不利な点は、従来の動的密封装置のエキスペラ・ディスクには、放出されるガス用の開口がないため、ガス除去遠心ポンプにも、他の何らかのガス分離回転装置にも、或いは他の何らかのガス分離装置にも使用できないことである。
【0008】
ガスを分離する目的で、従来のガス分離チャンバ、その中で回転するガス分離インペラ、及び動的密封装置のエキスペラの構成をあるやり方で組み合わせた1つの解決策が、特許文献2、及び図1の部分断面図に示されている。特許文献2は、かご状のロータ10を使用して、装置に入ってくる木材工業のパルプ中に、パルプ中のガスが装置の中央に分離するような強力な遠心力場を生成する、ガス分離器に関するものである。分離されたガスは、装置の中央部からロータ・ディスク12の開口14を介してディスクの後側に、またそこから更にハブ16と装置の後壁との間の間隙を経て放出される。パルプがガスと共に運ばれる場合、分離チャンバ18が、装置の後壁に接続して配置され、このチャンバはやはり装置のシャフトに取り付けられた分離ロータを備える。分離ロータは、ハブ16、そこから外向きに延びるベーン20、及びベーン20のロータ10に向いた側に取り付けられた一体の(solid)環状ディスク22を備え、前記ディスクは、分離チャンバ18を、前側(ロータ側)チャンバ24と後側チャンバ26とに分割する。この分離装置の動作原理では、分離ロータのベーン20がその到達範囲に入ってきたパルプを旋回させて、分離チャンバの外周まで運ぶので、パルプは分離装置を軸線方向に通過できない。換言すれば、ここまでは、その原理は上記したガス分離ポンプと同様である。ただし、分離ロータのベーン20に取り付けられた環状ディスク22が分離チャンバ18を2つの部分に分割している場合、その遠い側26の中までベーン20がパルプをポンプ輸送し、ポンプ輸送されたパルプは、ディスク22のリムを回って前側チャンバ24に流入することができる。これは容易になっており、閉止部材30が、前側チャンバ24の前壁として働くポンプの後壁28から前記ディスク22まで延びている。前記閉止部材30は、前側チャンバ24と、ガス及びパルプの分離された混合物が最初に到達するシャフト空間との間の、半径方向流れ接続を閉止するために使用される。同様に、開口32が、分離チャンバ18の前壁として働くポンプの後壁28を貫通して、閉止部材30の半径方向外側に配置されており、この開口32を介して、前側チャンバ24に入ったパルプは後壁28の前側の空間に戻され、そこで、実際のガス分離装置のロータ10のディスク12の後方ベーン34は、パルプをプロセスに戻す働きをする。更に、特許文献2による装置では、分離チャンバ18のディスク22の前側チャンバ24に面した表面に乱流生成ベーン36があり、そのベーン36を用いて、戻り開口32にパルプが詰まるのを防いでいることに留意すべきである。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5344163号明細書
【特許文献2】国際公開第90/13344号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図1に示す装置にはいくつかの不利な点がある。第1に、これは、比較的濃い(粘稠度(consistency)の大きい)繊維懸濁液用に設計されており、その流れ力学は、本発明の液体及び非常に低粘稠度の懸濁液とは大きく異なっている。例えば、単なる液体又は低濃度の懸濁液は、分離チャンバ内で非常に容易に回転する。高粘稠度のパルプでは、前記戻り開口にパルプが詰まることを防ぐために、回転ベーンが乱流を生成することが必要であるが、同じベーンを単なる液体に使用した場合、分離チャンバ内の液体の回転が強化されて、ポンプの渦形室への液体の戻りが大幅に妨害される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、それを用いてガスをポンプ輸送される液体から除去することのできるガス分離装置を提供することにより、従来技術のガス分離器及びガス分離装置の問題及び不利な点の少なくとも一部を取り除くことを目的とする。
【0012】
前壁と、それに接続して配置された分離チャンバと、その中に配置され、シャフトに取り付けられた、分離チャンバを前側チャンバおよび後側チャンバに分割するディスクと、ディスク上に配置されたベーンと、ガスを含む液体又はガスがディスクの後ろの空間に入ることができるようにする少なくとも1つの開口とを含む、本発明によるガス分離装置の特徴的構成は、前記ディスクの前側チャンバに向いた表面が平滑であり、前壁の前側チャンバに向いた表面が少なくとも部分的にリブを有し、それにより、分離チャンバ内での液体の回転が前側チャンバ内では防止されるようになっていることである。
【0013】
本発明によるガス分離装置で使用される前壁の特徴的構成は、前壁が、その実質的に放射状の表面の1つの上に、実質的に半径方向に延びるリブを有することである。
【0014】
更に、本発明によるガス分離装置で使用される分離ロータの特徴的構成は、分離ロータのディスクが、その一方の側の表面上に実質的に半径方向に延びるベーンを有し、ディスクの対向する側の表面が平滑であることである。
【0015】
ガス分離装置、その前壁及び分離ロータの他の特徴的構成は、添付の特許請求の範囲で明らかになる。
【実施例】
【0016】
ガス分離装置、その前壁及び分離ロータを、添付の図面を参照して、以下に例として説明する。
【0017】
図2は、本発明の好ましい一実施例によるガス分離装置を示し、この分離装置は、遠心ポンプに接続された例示的な形態で示されている。図中、符号40は遠心ポンプのインペラであり、従来のやり方でポンプに入った液体を、左側から吸引ダクト(図示せず)に沿ってポンプの渦形室の圧力開口(pressure opening)(図示せず)までポンプ輸送する。インペラは、ポンプのシャフト42に取り付けられており、このシャフトは、右側で、図では切り取られているポンプの軸受ハウジングに軸受と共に据え付けられる。インペラ40は、その背板44の前面にある作動ベーンと、背板の後面にあるいわゆる後方ベーン46とから成り、この後方ベーンは、ポンプ輸送される液体の流れが、ポンプのいわゆる後壁50の他方の側に入り込まないようにする働きをする。前記後方ベーン46は、ポンプのシャフト42まで半径方向に延びていてもよく、また、シャフト42の近傍でシャフトの方向に、背板44からポンプの軸受に向かって右方向に更に延びていてもよい。
【0018】
ポンプ内におけるポンプ・インペラの後ろの空間は、同時にポンプの後壁としても働くガス分離装置の前壁50が、小さな隙間を空けてインペラの後方ベーン46へと延びるように、本発明によるガス分離装置まで軸線方向に延びている。ガス分離装置のいわゆる分離ロータは、ポンプのインペラ40と同じシャフト42に取り付けられる。前記分離ロータは、好ましくは、ガス分離装置の前壁50に接続して配置された環状の分離チャンバ62内に設置された、実質的に放射状のディスク60を有する。シャフト42上に取り付けられた回転ディスク60は、本実施例では、チャンバ62を、ディスク60の外縁の外側でチャンバ間の流れ接続ができるように、前側チャンバ64と呼ばれるインペラ側の空洞部と後側チャンバ66と呼ばれるディスクのポンプ軸受側の空洞部とに分割する。前記ディスク60は、軸受側空洞部内の後側チャンバに向いたその表面上に、ディスクの半径方向の幅をかなり越えて延びるベーン68を備え、ディスクの反対側の表面は平滑である。ベーン68の目的は、後側チャンバ66内の液体を前側チャンバ64に向かって外向きにポンプ輸送することであり、これはまた、本実施例では、ポンプのインペラ40によって生成された圧力からインペラ40の後方ベーンによって生成された逆圧を差し引いたものの影響を受ける。換言すれば、後側チャンバ66から前側チャンバ64に向かって、またポンプのインペラ40に向かって作用する圧力が、ベーン68によって生成され、この圧力により、インペラ40の後ろの空間における圧力の釣り合いがとれる。ベーン68の方向は実質的に半径方向であるが、この定義は、場合によってはポンピング・ベーンとして働く程度まで傾斜又は湾曲したベーンを包含する。
【0019】
上記の構造は、原則的には従来技術の遠心ポンプの動的密封に類似したものである。図2による遠心ポンプに関する応用例では、インペラ40は、背板44に通じる多数のガス放出開口48を更に有し、それらの開口を介して、ガス又はガスを含む液体若しくは懸濁液が、インペラの前側から(左側から)その後ろの空間まで流れることができるようになる。当然ながら、場合によっては、ポンプの構造は、前記ガス放出開口が必ずしも必要ではなく、他の何らかの経路を介して、例えばインペラの背板の外縁を回って、ガスがインペラの後ろを流れることができるような構造である。このような場合、ベーン通路は、少なくとも部分的に開いていることが、すなわち、背板の外縁からシャフトに向かって延びる溝であることが有利である。
【0020】
同様に、ガス分離装置の前にある回転装置は、液体の流れ、好ましくはプロセス液の流れを、遠心力場又は同様の力場などの、液体中のガスの高濃度化を促進する差圧を作り出す場にポンプ輸送するガス分離器であってもよい。場合によっては、液体の流れの適当な個所で、流れ力学によりガスが高濃度化した流れの一部分を捉え、それを本発明によるガス分離装置で処理することも可能である。換言すれば、ガス分離装置は、他の何らかの装置のシャフト上に位置する必要がなく、それ自体のシャフト及び駆動装置を備えた別個のユニットであってもよいことは明らかである。
【0021】
図2の例示的なポンプでは、インペラ40の後ろの空洞部は、上記のとおり、ポンプのいわゆる後壁50によって限定され、インペラ40の後方ベーンはそれらの間に小さな隙間を残す。したがって、後方ベーン46は、ガスと液体との混合物又はガスのみがインペラ40の開口48を介してインペラの後ろの空洞部に放出される際に、混合物の液体成分があれば特にそれに半径方向の力をかけ、その力で、液体を、インペラ40の背板44の外縁を回ってポンプ輸送される液体のところに戻る方向に向かわせるように働く。ガスもまた、ポンプのシャフト42に向かって、より低圧の領域に流れる傾向がある。
【0022】
分離するガスをポンプから軸線方向に除去することができるようにするために、任意の形状の1つ又は複数の穴又は開口70が、ディスク60を貫通して配置されており、この開口を介して、ガス又はガスと液体との混合物が、原則的に前側チャンバ64からディスク60の反対側にある後側チャンバ66に流れることができるようになる。図示された穴又は開口70は、そこを介して入ってくるガスと液体との混合物が、分離チャンバ62のディスク60上のベーン68の到達範囲内に入り、それによって、ベーン68が、液体部分を、チャンバ62内で循環する液体リングにポンプ輸送し、ガスをシャフトの近傍に残ったままにするように機能する。これにより、ガスをポンプから例えばチャネル72に沿って放出することが可能になる。後側チャンバ66に入った余分な液体は、液体リングまで流れ、また、液体リングが発達し、常にシャフト42の近くにある前側チャンバ64内に延びる間に、ガス分離装置の前壁50の内縁部52を回ってインペラ40の後方ベーン46の到達範囲内まで放出され、更に、ポンプ輸送される液体のところまで戻される。本発明による戻りサイクルを更に有効に動作させるために、固定のリブ74が、前壁50の前側チャンバ64に向いた側の表面に配置されており、このリブを用いて、前側チャンバ64における液体の回転(及び遠心力の生成)が防止される。リブ74は、好ましくは、その半径方向の寸法が、チャンバのリブのない側の半径方向寸法の少なくとも半分に相当し、その方向は実質的に半径方向である。実際には、この定義は、場合によっては、リブの方向が好ましくは傾斜し、その外側端部が循環する液体リングに向かって傾斜するようにリブが湾曲することを含む。
【0023】
本発明の更なる一実施例によれば、分離装置の分離チャンバ62のディスク60にある開口70の位置及びサイズは、有利には、それぞれの応用例ごとに別々に規定されなければならない。分離チャンバ62のディスクを、ある限定された条件において動的密封として機能させるために、開口70のサイズは、好ましくは、開口内である程度の圧力損失が生じるようなサイズでなければならないが、一方、開口は、ガスと液体との混合物に混入している可能性のある繊維などの固体が、開口のいずれかを詰まらせる可能性がある程小さくてはならない。更に、開口70で生じる前記圧力損失は、本発明の一実施例によれば、分離チャンバのディスクのベーン68によって生成される圧力よりも大きくなければならない。この種の解決策により、ポンプの応用例において、ポンプの吸入圧と分離チャンバのディスクの後ろにあるガス分離空間との間で、確実に適当な差圧が得られるようになる。一方、前記差圧により、多数の応用例において、確実にガス分離装置がガス分離装置として使用でき、すなわち、分離されたガスを大気中に直接放出できるようになる。当然ながら、より困難な応用例では、真空ポンプ又は圧力バルブなどの、何らかの既知の補助装置を使用することが可能である。
【0024】
全く同様に、ガス分離装置の前壁50の内縁部52に対する分離チャンバ62のディスクの開口70の相対位置も、個別に規定しなければならない。好ましい一実施例では、開口70は、内縁部52の半径方向内側に、すなわちシャフト42により近いところに位置する。全く同様に、分離チャンバ62の他方の側にある後側チャンバ66の後壁の内縁部76に対する開口70の相対位置も考慮しなければならない。好ましくは、後壁の内縁部76は、開口70の半径方向内側にあるので、開口を貫流するガスと液体との混合物は、ガス放出チャネルに向かって容易には流出せず、液体はベーン68の到達範囲内に残り、ガスは、シャフト42に近づいて放出経路を探さなければならなくなる。いずれにせよ、開口70は、ディスク60及びインペラ40のシャフト42に比較的近いところに位置する。換言すれば、ディスク60自体の開口70は、ディスクの中央のシャフト開口に近いところに位置する。当然ながら、開口70が、ガス分離装置のシャフト42の外側で、ある距離以内のところに位置すると、開口がシャフト42の表面上にあった場合よりも大きな遠心力が、開口70を介して放出される液体に作用するので有利であるが、必ずしもそうする必要はない。更に、前記開口70はベーン68の到達範囲内に位置するので、前記ベーンは、放出される液体部分を開口を介して半径方向外向きに移動させることができる。
【0025】
図3は、本発明の第2の好ましい実施例によるガス分離装置の構造面での解決策を示す。図3に示される実施例は、ガス分離装置の前壁50の中央開口が比較的大きな直径を有する点で、上記のものと異なる。同様に、突出部80が、分離チャンバ62のディスク60上に、実質的に円筒状に、分離装置のシャフトと同軸に配置されており、前記突出部は、ディスク60のベーン68とはディスク上で反対の側に位置し、ディスク60から、ガス分離装置の前壁50にある中央開口の内縁部又はリム82の内側を延びている。ポンプの応用例では、突出部は、ポンプ・インペラ40の後方ベーン46まで延びている。ガス分離装置内にある、戻ってくるプロセス液のための流路が、前記内縁部82とディスク60の前記突出部80との間の環状の隙間である場合、その隙間を限定する表面の1つは回転しており、戻ってくる液体中の繊維又は他の何らかの固体物質によってそれが詰まる虞はない。本実施例では、ポンプのインペラの後方ベーン46は、前記と同様に、インペラのハブ又はそのシャフトまで延びている。
【0026】
ただし、本発明の別の実施例によれば、遠心ポンプの場合、ポンプ・インペラの後方ベーン46の軸線方向寸法全体に、又はその一部分まで延びる、ディスク60の円筒状の突出部80用の陥凹部を配置することができる。それによって、突出部80とインペラ40の背板44との間の隙間が、少なくともある程度きつく、すなわち小さくなる。
【0027】
様々な実施例及び遠心ポンプに関して上記で示された装置は、ポンプが始動し、動的密封装置を備えた既知のポンプと同様の方式で液体リングが分離チャンバ内に形成された際に、ガス又はガスを含む液体が、インペラの開口48を介してインペラ40の後側まで流れるように動作する。そこでは、ガスは、ポンプのシャフト上の最も低圧の領域に蓄積する。ガス分離チャンバ内では、実質的に同じ液体が、ベーン68の動作によって分離チャンバ62のディスクの後側から前側に、また開口70を介して前側から後側に循環する。ガスが、気泡の外縁部が分離チャンバのディスク60の開口70まで延びる程度まで、ポンプのシャフトの周りに蓄積すると、ガスは、開口70を介してガス放出空間内に、また、そこを介して、例えば配水管(コンジット)72を介してポンプ外に放出されることができる。
【0028】
ポンプの吸入圧が変わると、それが液体リングの動作にも影響することにも留意すべきである。ポンプの吸入圧が上昇すると、開口70の前側の圧力も上昇し、それによって、新しい液体が開口を介して分離チャンバのディスクの後側まで流れることができる。その結果、チャンバ66内の液体リングの回転半径が減少する。全く同様に、ポンプの吸入圧が低下すると、開口70の前側の圧力も低下し、それによって、分離チャンバのディスクのベーン68によって生成される圧力が、ある程度の量の液体を、ポンプの後壁50の内縁部又はリム52を回ってポンプの渦形室まで押し流すことができる。
【0029】
ガス分離装置が遠心ポンプと接続されていない場合も、装置の動作は非常に類似している。実際、装置が別の回転装置と接続されて構成されている場合、動作は実質的に上記のものと同様である。更に、ガスと液体との混合物が流れから直接装置に搬送される場合も、装置の動作は上記のものとはそれほど違わない。例えば、ガスと液体との混合物を、流れ自体の圧力によって、又は場合によってガス分離装置に接続される真空装置(ポンプの応用例でも使用することができる)により生成される差圧によって、流れから直接搬送することができる。それによって、ガスと液体との混合物を、軸線方向に装置に運び、分離装置のディスクの開口70を介してディスクの後ろの後側チャンバまで案内することができる。後側チャンバ内では、ベーンを有するディスクが混合物から液体部分を分離し、それを、分離装置の前壁を介してプロセス液に戻す。
【0030】
本発明は、ガス分離装置及び遠心ポンプ全体だけでなく、ガス分離装置の前壁及び分離ロータにも関することにも留意すべきである。本発明の好ましい一実施例によるガス分離装置の前壁は、装置のシャフト用の中央開口を有するディスクと、開口の外側に、壁の半径方向の一方の側で壁の表面から突出するリブとを有し、そのリブは実質的に半径方向、すなわち半径方向であるか又はある程度傾斜若しくは湾曲している。リブは、上記から明らかになるように、組み立てられたガス分離装置において、そのガス分離チャンバ内に位置している。更に、本発明の更なる一実施例では、前壁の外縁に、リブの設けられた壁の表面から軸線方向に延びるリングがあり、前記リングは、ガス分離装置のガス分離チャンバの外周を形成する。
【0031】
上記の説明から分かるように、従来のガス分離装置よりも大幅に簡単な装置を作製することが可能になった。この装置により、装置の内部/内側チャネル構成を利用することによって、ガスの分離からプロセス液を戻すことが可能になる。上記のことから、異なる状況では、同じ構成要素に異なる用語が使用されることに留意すべきである。換言すれば、ガス分離装置又はチャンバの前壁50が、遠心ポンプではポンプの後壁としても知られていることがそうである。しかし、上記の説明では、常にポンプの後壁50又はガス分離装置の前壁50のどちらかを指しているので、混乱する虞はない。上記のことから、本発明は、いくつかの好ましい実施例のみによって開示されていることにも、やはり留意すべきである。ただし、これらは、それだけで本発明の範囲を規定する特許請求の範囲で規定される範囲から、本発明の範囲を限定することを目的とするものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来技術によるガス分離器の図。
【図2】遠心ポンプと接続された本発明の好ましい一実施例によるガス分離装置の図。
【図3】遠心ポンプと接続された本発明の別の好ましい実施例によるガス分離装置の図。
【符号の説明】
【0033】
40 インペラ
42 シャフト
44 背板
46 後方ベーン
48 開口
50 前壁(後壁)
52 内縁部
60 ディスク
62 分離チャンバ
64 前側チャンバ
66 後側チャンバ
68 ベーン
70 開口
72 チャネル
74 リブ
80 突出部
82 内縁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
前壁(50)と、
前記前壁に接続して配置された分離チャンバ(62)と、
前記分離チャンバ(62)内に配置され、シャフト(42)に取り付けられたディスク(60)であって、前記分離チャンバ(62)をいわゆる前側チャンバ(64)といわゆる後側チャンバ(66)とに分割するディスク(60)と、
前記ディスク(60)に配置されたベーン(68)と、
液体又はガスが前記後側チャンバ(66)に入ることができるようにする少なくとも1つの開口(70)とを含むガス分離装置において、
前記ディスク(60)の前記前側チャンバに向いた表面が平滑であり、前記前壁(50)の前記前側チャンバ(64)に向いた表面が少なくとも部分的にリブ(74)を有し、それにより、前記分離チャンバ(62)内での液体の回転が前記前側チャンバ(64)内で防止されるようになっていることを特徴とする、ガス分離装置。
【請求項2】
前記ディスク(60)の前記少なくとも1つの開口(70)が、前記シャフト(42)に近接して、実質的に前記ガス分離チャンバの前記前壁(50)の内側リム(52)の領域に配置されていることを特徴とする、請求項1に記載されたガス分離装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの開口(70)の前記シャフト(42)からの距離が、前記ベーン(68)の内側先端の対応する距離よりも大きいことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載されたガス分離装置。
【請求項4】
前記少なくとも1つの開口(70)が、前記分離チャンバの後壁の内縁部の半径方向外側に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載されたガス分離装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの開口(70)が、流れを制限する、換言すれば差圧を生成することができることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載されたガス分離装置。
【請求項6】
前記分離チャンバ(62)の前記ディスク(60)が、実質的に軸線方向に前記前壁(50)に向かって延びる円筒形の突出部(80)を有し、前記突出部が、前記少なくとも1つの開口(70)の半径方向外側に配置されていることを特徴とする、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載されたガス分離装置。
【請求項7】
前記前壁(50)が、前記前壁(50)の内縁部(82)と前記ディスク(60)の前記突出部(80)との間に環状の隙間が形成されるような直径の中央開口を有することを特徴とする、請求項6に記載されたガス分離装置。
【請求項8】
前記シャフト(42)が、遠心ポンプの遠心インペラのシャフトとして同時に働き、前記前壁(50)が、前記遠心ポンプの後壁として働くことを特徴とする、請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載されたガス分離装置。
【請求項9】
中央開口を有する実質的に環状のディスクを含む、ガス分離装置用の前壁において、前記前壁(50)が、その実質的に放射状の表面に半径方向に延びるリブ(74)を有することを特徴とするガス分離装置用の前壁。
【請求項10】
前記前壁(50)が、前記前壁の外縁に、前記リブ(74)を有する表面から実質的に軸線方向に延びるリングを含むことを特徴とする、請求項9に記載されたガス分離装置用の前壁。
【請求項11】
前記前壁(50)が、遠心ポンプの後壁として働くことを特徴とする、請求項9又は請求項10に記載されたガス分離装置用の前壁(50)。
【請求項12】
ガス分離装置用の分離ロータであって、実質的に放射状のディスク(60)と、前記ディスク内にある、シャフト用の中央開口と、前記中央開口の距離内に配置された1つ又は複数の開口(70)とを含む、ガス分離装置用の分離ロータにおいて、前記ディスク(60)の半径方向側表面が実質的に半径方向に延びるベーン(68)を有し、対向する側の表面が平滑であることを特徴とする、ガス分離装置用の分離ロータ。
【請求項13】
遠心ポンプの遠心インペラと同じシャフトに取り付けられていることを特徴とする、請求項12に記載された分離ロータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−866(P2007−866A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170799(P2006−170799)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(501260923)ズルツアー プンペン アクチェンゲゼルシャフト (15)
【Fターム(参考)】