説明

ガス分離装置

【課題】充填材を加工せずに反応液の表面張力を低減して反応効率を向上させることができるガス分離装置を提供する。
【解決手段】反応容器2内に配置された板状の充填材3の表面に反応液Lを流下させるとともに、反応容器2内に分離対象ガスを含む処理ガスGを供給し、充填材3の表面に形成された反応液Lの液膜と処理ガスGとを気液接触させることによって分離対象ガスを化学反応させて処理ガスGから分離又は回収するガス分離装置1であって、微細気泡化したガスを発生させる微細気泡発生装置4を有し、反応液Lに微細気泡化したガスを混入させて微細気泡含有反応液BLを生成し、微細気泡含有反応液BLを充填材3の表面に流下させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離装置に関し、特に、排ガス等の処理ガスに含まれる二酸化炭素等の分離対象ガスを反応液と化学反応させて処理ガスから分離又は回収するためのガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化学プラントや火力発電所等において、様々な種類のガスを含む排ガス等の処理ガスから特定のガスを分離するガス分離装置(例えば、蒸留塔、吸収塔、精製塔等)が使用されている。これらのガス分離装置は、モノエタノールアミン水溶液等の反応液と二酸化炭素等の分離対象ガスとを化学反応させることによって分離対象ガスを分離又は回収する。また、ガス分離装置は、反応液と分離対象ガスとの接触面積を増大させる充填材を有し、該充填材表面で反応液と分離対象ガスとを気液接触させて化学反応させている。
【0003】
しかしながら、表面張力の影響により、反応液が充填材の表面を均一に流れない場合があり、充填材表面を流れる反応液の液膜が収束して、反応液と分離対象ガスとの接触面積が減少する。また、反応液の流量が同量である場合には、気液接触面積が減少することによって、反応液が収束して反応液の流速が増加してしまい、充填材表面における反応液の滞留時間が短くなる。その結果、反応液と分離対象ガスとの化学反応量が少なくなるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1に記載された気液接触装置では、充填材の気液接触面が中心線平均粗さ50μm以上の粗面部、複数の穿設孔を有する多孔面部又は網状物からなるように構成されている。かかる構成により、気液接触面積を増加させることができ、気液の接触効率を向上させることができる。
【0005】
また、特許文献2に記載された気液接触装置では、気液接触面が板状体(充填材)の表面に網状体を貼着した素材により構成されている。かかる構成により、気液接触面積を増加させることができ、液体の流下滞留時間を長くすることができ、気液の接触効率を向上させることができる。
【0006】
また、特許文献3に記載されたガス分離装置では、二成分以上のガスを含む混合ガスを、微細気泡化して水を満たしたガス吸収塔中に噴出し、少なくとも一つのガス成分を水に溶解させることによって、残りのガス成分と分離するようにしている。かかるガス分離装置によれば、微細気泡(マイクロバブル又はマイクロナノバブル)を用いることにより気液接触面積を大幅に増加することができ、ガス吸収塔に充填材を充填することにより気泡の上昇を減速させることができ、気液接触時間を更に増加させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−210121号公報
【特許文献2】特開平6−269628号公報
【特許文献3】特開2006−247486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載された発明では、充填材の加工に手間が掛かり、コストが大幅に増加するという問題があった。また、充填材の表面を加工せずに上述した表面張力の影響による問題を解決しようとすれば、反応液の流量を増加させたり、充填材の高さを高くしたりしなければならない。反応液の流量を増加させた場合には、気液接触面積を増加できるものの、反応液の流下速度が速くなってしまい、反応液の滞留時間が短く十分な反応を得ることができない、反応に寄与しない無駄な反応液が増加してしまう等の問題がある。また、充填材の高さを高くした場合には、反応液の滞留時間を確保することができるものの、気液接触効率が悪い、装置が大型化してしまう等の問題がある。
【0009】
また、特許文献3に記載された発明では、水を満たした吸収塔に混合ガスを微細気泡化して供給することによって、混合ガスの一部を水に溶解させていることから、充填材の表面に反応液の液膜を形成し、処理ガスと反応液とを接触させて化学反応させる方式とは、ガス分離方法が根本的に相違する。また、一般に、吸収塔のようなガス分離装置は、化学プラントや火力発電所等の最終処理工程に配置されることが多く、できるだけガス分離に必要となるエネルギーを低減したいという要求がある。かかる要求に対して、特許文献3に記載された発明では、水中に混合ガスを噴出させていることから圧力損失が大きく、エネルギー効率が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、充填材を加工せずに反応液の表面張力を低減して反応効率を向上させることができるガス分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、反応容器内に配置された板状の充填材の表面に反応液を流下させるとともに、前記反応容器内に分離対象ガスを含む処理ガスを供給し、前記充填材の表面に形成された前記反応液の液膜と前記処理ガスとを気液接触させることによって前記分離対象ガスを化学反応させて前記処理ガスから分離又は回収するガス分離装置において、微細気泡化したガスを発生させる微細気泡発生装置を有し、前記反応液に前記微細気泡化したガスを混入させて微細気泡含有反応液を生成し、該微細気泡含有反応液を前記充填材の表面に流下させるようにした、ことを特徴とするガス分離装置が提供される。
【0012】
前記微細気泡発生装置に前記処理ガスの一部が供給され、前記微細気泡発生装置は前記処理ガスを微細気泡化するようにしてもよい。
【0013】
前記反応液を貯留する貯留タンクを有し、該貯留タンク内に前記微細気泡発生装置が配置されていてもよい。また、前記貯留タンクは、前記反応容器の内部に配置されていてもよいし、前記反応容器の外部に配置されていてもよい。
【0014】
前記反応液を前記反応容器内に供給する供給配管を有し、該供給配管に前記微細気泡発生装置が接続されていてもよい。
【0015】
前記充填材を多段に分割し、分割された前記充填材の間に前記微細気泡含有反応液を回収する回収装置を配置し、回収した前記微細気泡含有反応液に微細気泡化したガスを再注入する第二微細気泡発生装置を配置し、下段の前記充填材に再び前記微細気泡含有反応液を流下させるようにしてもよい。
【0016】
前記分離対象ガスは、例えば、二酸化炭素であり、前記反応液は、例えば、アミン化合物水溶液である。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明のガス分離装置によれば、反応液に微細気泡を含有させて充填剤材の表面に流下させるようにしたことから、反応液の表面張力を低減することができ、濡れ性を向上させることができ、流下速度の増加を抑制することができ、十分な気液接触面積を確保することができ、反応液の十分な滞留時間を確保することができる。したがって、充填材を加工せずに反応液の表面張力を低減して反応効率を向上させることができる。また、充填材の加工が必要ないため、低コストで性能向上を図ることができ、装置の大型化を抑制することもできる。
【0018】
特に、微細気泡化に処理ガスの一部を利用することにより、系外からガスを引用する必要がなく、微細気泡化に必要なコスト及びエネルギーを低減することができる。また、反応液に処理ガスの一部を混入させることにより、処理ガス中の分離対象ガスの反応を促進することができるとともに、処理ガスから分離対象ガスを除いた残留ガスにより微細気泡を維持することができ、さらに反応効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。
【図2】図1に示したガス分離装置の作用を示す図であり、(a)はガス分離装置の水平断面図、(b)は充填材の正面図、(c)は充填材の垂直断面図、である。
【図3】本発明の第二実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。
【図4】本発明の第三実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。
【図5】本発明の第四実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係るガス分離装置を備えた火力発電所の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るガス分離装置について、図1〜図6を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。図2は、図1に示したガス分離装置の作用を示す図であり、(a)はガス分離装置の水平断面図、(b)は充填材の正面図、(c)は充填材の垂直断面図、である。
【0021】
本発明の第一実施形態に係るガス分離装置1は、図1に示したように、反応容器2内に配置された板状の充填材3の表面に反応液Lを流下させるとともに、反応容器2内に分離対象ガスを含む処理ガスGを供給し、充填材3の表面に形成された反応液Lの液膜と処理ガスGとを気液接触させることによって分離対象ガスを化学反応させて処理ガスGから分離又は回収するガス分離装置1であって、微細気泡化したガスを発生させる微細気泡発生装置4を有し、反応液Lに微細気泡化したガスを混入させて微細気泡含有反応液BLを生成し、微細気泡含有反応液BLを充填材3の表面に流下させるようにしたものである。
【0022】
前記反応容器2は、略筒状の形状を有し、ガス分離装置1の外殻を形成する。反応容器2の上部には、反応液Lをガス分離装置1内に供給する反応液供給管21が配置されている。反応液Lは、化学プラントや火力発電所等の設備内で精製してから反応液供給管21に供給するようにしてもよいし、精製された反応液Lを貯留する貯液槽から反応液供給管21に供給するようにしてもよい。
【0023】
また、反応容器2の下部には、処理ガスGをガス分離装置1内に供給する処理ガス供給管22が配置されている。処理ガスGは、例えば、化学プラントや火力発電所等の設備内で発生した廃ガス(排ガス)や反応ガスであり、前工程の設備から処理ガス供給管22に供給される。なお、ここでは、反応液Lを反応容器2の上方から下方に流下させ、処理ガスGを反応容器2の下方から上方に送流するように構成しているが、かかる構成に限定されるものではなく、例えば、処理ガスGも反応容器2の上方から下方に送流するようにしてもよい。
【0024】
また、反応容器2の底部には、使用済みの微細気泡含有反応液BL(廃液)を回収するための廃液排出ライン23が接続されている。充填材3を通過して処理ガスGと化学反応した使用済みの微細気泡含有反応液BL(廃液)は、反応容器2の底部に一時的に貯留され、適宜、廃液排出ライン23から外部に排出され回収される。なお、使用済みの微細気泡含有反応液BL(廃液)は、微細気泡の混入から十分な時間が経過していることから、微細気泡が脱泡した状態になっていることが多いと考えられる。
【0025】
また、反応容器2の天井部には、分離対象ガスが除かれた処理ガスG(廃処理ガス)を排出する廃処理ガス排出ライン24が接続されている。充填材3を通過して微細気泡含有反応液BLと化学反応した処理済みの処理ガスG(廃処理ガス)は、煙突から大気中に放出されたり、次工程の処理設備に搬送されたりする。
【0026】
なお、反応容器2には、従来のガス分離装置1と同様に、必要に応じて、廃処理ガスを冷却する冷却装置やドレンを排出するドレン回収装置等を配置するようにしてもよい。
【0027】
前記充填材3は、微細気泡含有反応液BLの液膜を表面に形成し、気液接触面積を確保するとともに、流下速度を遅くして十分な反応時間を確保するための金属板である。かかる充填材3は、従来から種々のものが使用されており、本実施形態においても従来と同様の充填材3を使用することができる。したがって、充填材3は、複数の平板を垂直に並列に配置した構成であってもよいし、板材を格子状に組んだ構成であってもよい。また、本実施形態では、後述するように、充填材3を加工せずに表面張力を低減することができるものであるが、表面を粗面加工した充填材3や表面に網状部材を貼付した充填材3等を除外するものではない。
【0028】
前記微細気泡発生装置4は、直径50μm以下のマイクロバブル又は直径1μm以下のマイクロナノバブルを発生させる装置である。マイクロバブルやマイクロナノバブルは、気泡体積が微小であるため、液中に長時間滞在し続けるという性質を有する。本実施形態において、「微細気泡」とは、マイクロバブル又はマイクロナノバブルを意味するものとする。
【0029】
また、微細気泡発生装置4に処理ガスGの一部が供給され、微細気泡発生装置4は処理ガスGを微細気泡化するように構成されている。処理ガスGは、例えば、処理ガス供給管22から流量調整弁6を介して分岐管22aに分流され、微細気泡化に必要な流用の処理ガスGが微細気泡発生装置4に供給される。このように、微細気泡化に処理ガスGの一部を利用することにより、系外からガスを引用する必要がなく、微細気泡化に必要なコスト及びエネルギーを低減することができる。
【0030】
また、反応液Lに処理ガスGの一部を混入させることにより、処理ガスG中の分離対象ガスの反応を促進することができるとともに、処理ガスGから分離対象ガスを除いた残留ガスにより微細気泡を維持することができ、反応効率を向上させることができる。なお、反応液Lの表面張力を低減するために、処理ガスG以外のガス(空気、不活性ガス、反応液Lや処理ガスGと反応しないガス等)を使用するようにしてもよい。
【0031】
また、ガス分離装置1は、充填材3の上部に微細気泡含有反応液BLを貯留する貯留タンク5を有し、貯留タンク5内に微細気泡発生装置4が配置されている。微細気泡発生装置4には反応液供給管21が接続されており、微細気泡発生装置4は、供給された反応液L及び処理ガスGを利用して、加圧減圧法や気液剪断法により微細気泡含有反応液BLを生成し、貯留タンク5内に放出する。かかる微細気泡発生装置4には、従来から使用されている種々のタイプのものを使用することができる。
【0032】
貯留タンク5は、反応容器2の内部に配置されており、微細気泡含有反応液BLは、貯留タンク5の底部に形成された複数の開孔部から、充填材3に向かって滴下される。なお、微細気泡含有反応液BLの充填材3への供給方法は、滴下式に限定されるものではなく、貯留タンク5の底部に接続された散布ノズルや噴霧ノズルを使用した方式であってもよい。
【0033】
上述したガス分離装置1によれば、反応容器2の上部から反応液Lを微細気泡発生装置4に供給するとともに、処理ガスGの一部を微細気泡発生装置4に供給して微細気泡含有反応液BLを生成して貯留し、貯留タンク5から微細気泡含有反応液BLを充填材3の上部に供給することができ、微細気泡含有反応液BLを充填材3の表面に沿って流下させることができる。
【0034】
また、反応容器2の下部から処理ガスGを内部に供給し、微細気泡含有反応液BLの流れと対向するように、処理ガスGを充填材3の隙間に通過させることができ、微細気泡含有反応液BLと処理ガスGとを気液接触させることができる。この気液接触により、処理ガスGに含まれる分離対象ガスは、微細気泡含有反応液BLと化学反応して微細気泡含有反応液BLに溶解し、反応容器2の底部に回収され、廃液排出ライン23から外部に排出される。一方、分離対象ガスが分離された処理ガスGは、廃処理ガス排出ライン24から外部に排出される。
【0035】
ここで、微細気泡含有反応液BLの作用について、図2を参照しつつ説明する。図2(a)に示したように、ガス分離装置1は、例えば、円筒状の反応容器2と、複数の並列に配置された平板状の充填材3と、を有する。かかる充填材3に微細気泡含有反応液BLを供給すると、図示したように、微細気泡含有反応液BLは、充填材3の表面及び反応容器2の内面に沿って液膜を形成する(灰色に塗り潰した部分)。この液膜の隙間には、処理ガスGが送流される。
【0036】
反応液Lに微細気泡を混入させると、一般に、反応液Lの表面張力が低下することが知られている。したがって、微細気泡含有反応液BLの液膜は、表面張力による収束が抑制され、例えば、図2(b)に示したように、濡れ性が改善され、充填材3の表面に均一に分散して流下することとなる。その結果、流下速度の増加を抑制することができ、十分な気液接触面積を確保することができ、反応液の十分な滞留時間を確保することができる。一方、図2(b)において、従来技術における反応液Lの流れる状態を一点鎖線で示している。このように、濡れ性改善前の状態では、反応液が表面張力によって充填材3の中央部に収束してしまう。その結果、従来技術では、十分な気液接触面積を得ることができず、流下速度も増加してしまうため十分な反応時間を得ることもできない。
【0037】
また、図2(c)に示したように、微細気泡含有反応液BL中に含まれる微細気泡は、表面で破裂してガス抜けすることから、液膜の表面に微細な凹凸が形成され、さらに気液接触面積を増加させる効果を期待することができる。さらに、図2(c)に示したように、微細気泡は、液膜内で上昇することから、微細気泡の上昇によって微細気泡含有反応液BLが撹拌され、液膜内の物質移動を促進し、化学反応に寄与しない反応液Lを低減することができ、反応効率を向上させる効果を期待することもできる。
【0038】
上述したように、本実施形態に係るガス分離装置1によれば、充填材3を加工せずに反応液Lの表面張力を低減して反応効率を向上させることができる。また、充填材3の加工が必要ないため、低コストで性能向上を図ることができ、装置の大型化を抑制することもできる。さらに、反応液Lの体積の一部を微細気泡に置き換えたこと及び反応効率を向上させたことによって、反応液Lの使用量を低減することができ、コスト低減を図ることもできる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態に係るガス分離装置について、図3〜図5を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本発明の第二実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。図4は、本発明の第三実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。図5は、本発明の第四実施形態に係るガス分離装置を示す全体構成図である。なお、各実施形態において、上述した第一実施形態に係るガス分離装置1と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0040】
図3に示した第二実施形態に係るガス分離装置1は、微細気泡含有反応液BLの生成方法及び散布方法を変更したものである。具体的には、微細気泡発生装置4を反応液供給管21の中間部に挿入し、生成した微細気泡含有反応液BLを下流に配置された二流体ノズル7により充填材3に散布するようにしている。すなわち、第二実施形態に係るガス分離装置1は、反応液Lを反応容器2内に供給する供給配管(反応液供給管21)を有し、供給配管(反応液供給管21)に微細気泡発生装置4が接続されている。微細気泡発生装置4には、微細気泡発生ノズルを使用することができ、二流体ノズル7に微細気泡発生ノズルを組み込むようにしてもよい。
【0041】
図4に示した第三実施形態に係るガス分離装置1は、充填材3を多段式に構成したものである。かかる第三実施形態では、充填材3を多段(例えば、上段充填材31及び下段充填材32)に分割し、分割された充填材3(上段充填材31及び下段充填材32)の間に使用済みの微細気泡含有反応液BLを回収する回収装置8を配置し、回収した微細気泡含有反応液BLに微細気泡化したガスを再注入する第二微細気泡発生装置41を配置し、下段充填材32に再び新鮮な微細気泡含有反応液BLを流下させるようにしている。
【0042】
回収装置8は、例えば、反応容器2の内周に沿って配置された環状の溝部により構成される。なお、回収装置8の形状は、図示したものに限定されるものではなく、処理ガスGの送流を阻害せずに使用済みの微細気泡含有反応液BLを回収可能な構成であれば他の形状であってもよい。
【0043】
回収装置8により回収された使用済みの微細気泡含有反応液BLは、反応容器2の外部に配置された回収タンク81内の第二微細気泡発生装置41に供給される。第二微細気泡発生装置41には、流量調整弁6を介して処理ガスGの一部が供給され、使用済みの微細気泡含有反応液BLに再び微細気泡を注入する。再生された微細気泡含有反応液BLは、散布ノズル82により、下段充填材32の上部に供給される。
【0044】
かかる第三実施形態によれば、充填材3が垂直方向に長い場合や微細気泡含有反応液BLにおける微細気泡の滞在時間が短い場合であっても、途中で微細気泡含有反応液BLを再生することができ、反応効率を維持することができる。なお、ここでは、充填材3を二段に分割した場合について説明したが、三段以上に分割するようにしてもよい。
【0045】
図5に示した第四実施形態に係るガス分離装置1は、微細気泡含有反応液BLの貯留タンク5を反応容器2の外部に配置したものである。微細気泡含有反応液BLは、貯留タンク5に接続された散布ノズル9により充填材3の上部に供給される。かかる構成によれば、貯留タンク5を反応容器2の外部に配置したことにより、反応容器2の高さを短縮することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0046】
最後に、上述した実施形態に係るガス分離装置1を火力発電所10に適用した場合について、図6を参照しつつ説明する。ここで、図6は、本発明の実施形態に係るガス分離装置を備えた火力発電所の概略構成図である。
【0047】
火力発電所10は、図6に示したように、石炭等の化石燃料を燃焼させて熱エネルギーに変換するボイラー11と、熱エネルギーを運動エネルギーに変換するタービン12と、運動エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機13と、ボイラー11が排出する排ガスから窒素酸化物を取り除く排ガス脱硝装置14と、排ガスからダストを取り除く電気集塵装置(Electrostatic Precipitator)15と、排ガスから硫黄酸化物を取り除く排ガス脱硫装置16と、排ガスからさらに硫黄酸化物を取り除く前処理塔17と、排ガスから二酸化炭素を取り除く吸収塔18と、吸収塔18の吸収後の液から二酸化炭素を抽出する放散塔19と、を有している。
【0048】
図示した火力発電所10は、重油、LNG(液化天然ガス)、石炭等の化石燃料を燃焼して、ボイラー11で高温高圧の蒸気を生成し、この蒸気でタービン12を駆動させることによって発電機13を回転させて発電する汽力発電方式のものである。
【0049】
ボイラー11から排出された排ガスは、排ガス脱硝装置14、電気集塵装置15、排ガス脱硫装置16、前処理塔17及び吸収塔18の各装置に順次搬送されて、排ガス中に含まれる不純物や汚染物質等の分量が一定の基準値以下となるように処理され、最終的に大気中に放出される。
【0050】
排ガス脱硝装置14は、例えば、アンモニア接触還元法、無触媒還元法、活性炭法、電子線照射法、酸化還元法等を用いて、排ガス中の窒素酸化物を取り除く。また、電気集塵装置15は、例えば、直流電流によってコロナ放電を発生させ、排ガス中のダストを帯電させて電界中に通過させることによって、排ガス中のダストを取り除く。また、排ガス脱硫装置16は、例えば、アルカリ溶液吸収法、石灰スラリー吸収法、水酸化マグネシウムスラリー法、スプレードライヤー法、活性炭吸着法等を用いて、排ガス中の硫黄酸化物を取り除く。また、前処理塔17は、前工程により取り除かれなかった排ガス中の硫黄酸化物(SOx)を取り除く。また、吸収塔18は、前工程により取り除かれなかった排ガス中の二酸化炭素を取り除く。
【0051】
上述した本実施形態に係るガス分離装置1は、前処理塔17や吸収塔18に適用することができる。例えば、吸収塔18に本実施形態に係るガス分離装置1を適用した場合、処理ガスGは前処理塔17から供給される排ガスであり、分離対象ガスは二酸化炭素であり、反応液Lはアミン化合物水溶液である。具体的には、反応液Lは、例えば、モノエタノールアミン(MEA)水溶液であり、二酸化炭素と反応して、カルバミン酸塩・アミン塩(カーバメート)、炭酸塩、重炭酸塩等を発生させる。これらの塩は、廃液として回収され放散塔19に供給される。
【0052】
本実施形態に係るガス分離装置1では、反応液Lに処理ガスGの微細気泡を含有させて微細気泡含有反応液BLを生成しているが、吸収塔18から供給される排ガスには、14〜15%程度の二酸化炭素が含まれており、残りの大部分は空気であるため、微細気泡含有反応液BL中に含まれる処理ガスGが反応液Lと化学反応した場合であっても、混入された処理ガスGのうち80%以上のガスが反応液L中に残留することになり、微細気泡を長時間滞在させることができる。
【0053】
放散塔19は、処理ガスGである排ガスから分離された二酸化炭素を廃液から抽出する。具体的には、放散塔19は、供給された廃液を100℃以上に加熱して二酸化炭素を放散させ、放散された二酸化炭素は気液分離された後、圧縮されて液体COとして回収される。また、二酸化炭素が抽出された廃液は、反応液Lとして吸収塔18に供給されて再利用される。なお、回収された液体COは、二酸化炭素回収・貯留(CCS:Carbon dioxide Capture and Storage)として、地中や海底に貯留されたり、炭素に分解されたり、他の物質と合成されたりする。
【0054】
図6では、本実施形態に係るガス分離装置1を火力発電所10に適用する場合について説明したが、本実施形態に係るガス分離装置1は、蒸留、精製、吸収等の化学プロセスを含む種々の化学プラントにおいて使用される装置(蒸留塔、精製塔、吸収塔等)にも適用することができる。また、分離対象ガスは、二酸化炭素に限定されるものではなく、NOx、SOx等の酸化ガスであってもよいし、その他、本実施形態に係るガス分離装置1によって分離可能なガスであれば任意に選択することができる。また、反応液Lは、アミン化合物水溶液に限定されるものではなく、分離対象ガスに適した反応液Lを任意に選択することができる。
【0055】
本発明は上述した実施形態に限定されず、第一実施形態〜第四実施形態に係るガス分離装置1を適宜組み合わせて使用してもよい等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0056】
1 ガス分離装置
2 反応容器
3 充填材
4 微細気泡発生装置
5 貯留タンク
8 回収装置
21 反応液供給管(供給配管)
22a 分岐管
31 上段充填材
32 下段充填材
41 第二微細気泡発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器内に配置された板状の充填材の表面に反応液を流下させるとともに、前記反応容器内に分離対象ガスを含む処理ガスを供給し、前記充填材の表面に形成された前記反応液の液膜と前記処理ガスとを気液接触させることによって前記分離対象ガスを化学反応させて前記処理ガスから分離又は回収するガス分離装置において、
微細気泡化したガスを発生させる微細気泡発生装置を有し、前記反応液に前記微細気泡化したガスを混入させて微細気泡含有反応液を生成し、該微細気泡含有反応液を前記充填材の表面に流下させるようにした、ことを特徴とするガス分離装置。
【請求項2】
前記微細気泡発生装置に前記処理ガスの一部が供給され、前記微細気泡発生装置は前記処理ガスを微細気泡化する、ことを特徴とする請求項1に記載のガス分離装置。
【請求項3】
前記微細気泡含有反応液を貯留する貯留タンクを有し、該貯留タンク内に前記微細気泡発生装置が配置されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス分離装置。
【請求項4】
前記貯留タンクは、前記反応容器の内部又は外部に配置されている、ことを特徴とする請求項3に記載のガス分離装置。
【請求項5】
前記反応液を前記反応容器内に供給する供給配管を有し、該供給配管に前記微細気泡発生装置が接続されている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス分離装置。
【請求項6】
前記充填材を多段に分割し、分割された前記充填材の間に前記微細気泡含有反応液を回収する回収装置を配置し、回収した前記微細気泡含有反応液に微細気泡化したガスを再注入する第二微細気泡発生装置を配置し、下段の前記充填材に再び前記微細気泡含有反応液を流下させるようにした、ことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のガス分離装置。
【請求項7】
前記分離対象ガスは二酸化炭素であり、前記反応液はアミン化合物水溶液である、ことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のガス分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17982(P2013−17982A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155724(P2011−155724)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】