説明

ガス化溶融炉

【課題】溶融バーナの使用頻度を低減してスラグの流下を安定させることができる廃棄物ガス化溶融システのガス化溶融炉を提供する。
【解決手段】廃棄物から可燃性ガスを生成する旋回溶融炉12が底部に開口するスラグ出滓口16を備え、旋回溶融炉12の下部に設けられたスラグ抜出シュート14内のスラグ冷却水Wsに廃棄物をガス化して排出されたスラグSをスラグ出滓口16から流下させるとともに、スラグ抜出シュート14内のスラグ出滓口16の近傍に溶融バーナ20が設けられているガス化溶融炉10Aにおいて、スラグ抜出シュート14内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦発生装置30を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば廃棄物等をガス化溶融する廃棄物ガス化溶融システムに適用されるガス化溶融炉に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物ガス化溶融システムは、各種の廃棄物をガス化炉でガス化し、生成したガス化ガスを溶融炉で燃焼するものである。このような廃棄物ガス化溶融システムでは、溶融炉でガス化ガスを燃焼する過程で、ガス化ガス中の煤塵が溶融され、ガラス状のスラグ(灰)が排出される。
【0003】
以下、上述した廃棄物ガス化溶融システムの溶融炉について、図面を参照して要部の構成を簡単に説明する。
図6に示す従来の燃焼溶融炉10は、ガス化炉で廃棄物から発生した可燃性ガスを燃焼する有底円筒状の旋回溶融炉12と、旋回溶融炉12の下部に設けられたスラグ抜出シュート14とを備えており、旋回溶融炉12において煤塵が溶融して排出されたスラグSは、旋回溶融炉12の底部中央に開口するスラグ出滓口16からスラグ抜出シュート14内に貯留されたスラグ冷却水Wsまで流下する。
【0004】
また、スラグ抜出シュート14の内部には、溶融バーナ20がスラグ出滓口16の下方に設置されている。この溶融バーナ20は、スラグ出滓口16からスラグ抜出シュート14内を流下するスラグSの流れが不安定になった場合、すなわち、非常時にのみスラグSを加熱・溶融させて流動性を増すものであり、通常灯油と酸素とにより起動される。
しかし、スラグSが高粘度となるような運転状況においては、溶融バーナ20の連続運用が必要となる可能性もあるため、燃料の灯油消費量が増大してランニングコストの面で不利になる。
【0005】
スラグSの流下が不安定になる原因は、スラグ出滓口16の下方において、スラグSの温度が急激に低下して固化するためである。
従って、スラグSの固化による不具合を改善するため、たとえば下記の特許文献1に記載されているように、スラグ出滓口下のスラグ抜出シュート14から二次燃焼室へ連通するバイパス通路を設けて、溶融炉の高温ガスがスラグ抜出シュート14に流れ込むようにした従来技術がある。また、下記の特許文献2に記載されているように、スラグ出滓口を内部加熱する従来技術も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−83640号公報
【特許文献2】特開2005−337888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、溶融バーナ20を使用してスラグを加熱・溶融する従来技術は、廃棄物の種類や性状によっては溶融バーナ20の連続運用となるので、燃料消費量の増大によるランニングコストの問題を有している。
また、バイパス流路を設ける従来技術の場合、配管の取り回し等の構造が複雑になるという問題を有している。さらに、バイパス流路を設ける従来技術は、スラグ抜出シュート14に対して、高温ガスの他にも煤塵や未燃分のチャーが流れ込んでくるため、スラグ中未燃分が増加する問題や、煤塵によるバイパス流路閉塞の問題が指摘されている。
【0008】
一方、スラグ出滓口の内部を加熱する従来技術の場合には、スラグの融点が1200〜1400℃の高温となるので、同程度までスラグ出滓口を内部加熱すると、スラグ出滓口を構成する耐火材の寿命が短くなるという問題を有している。
このような背景から、溶融バーナを使用してスラグを加熱・溶融する廃棄物ガス化溶融システムのガス化溶融炉においては、ランニングコストを低減して溶融炉からスラグ抜出シュートへのスラグ流下を安定させることが望まれる。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、溶融バーナの使用頻度を低減してスラグの流下を安定させることができる廃棄物ガス化溶融システムの燃焼溶融炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の請求項1に係るガス化溶融炉は、廃棄物をガス化炉でガス化し、生成したガス化ガスを燃焼する旋回溶融炉が底部に開口するスラグ出滓口を備え、前記旋回溶融炉の下部に設けられたスラグ抜出シュート内のスラグ冷却水に前記ガス化ガスを燃焼すると同時にガス化ガス中の煤塵を溶融して排出されたスラグを前記スラグ出滓口から流下させるとともに、前記スラグ抜出シュート内の前記スラグ出滓口近傍に溶融バーナが設けられているガス化溶融炉であって、前記スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたことを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載のガス化溶融炉によれば、スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたので、発生渦の影響を受けて溶融炉内の高温ガス帯が圧力低下したスラグ抜出シュート内のスラグ出滓口下まで及ぶようになり、従って、この高温によりスラグ出滓口から流下するスラグを加熱して固化を抑制することができる。
【0011】
本発明の請求項2に係るガス化溶融炉は、廃棄物から可燃性ガスを生成する溶融炉が底部に開口するスラグ出滓口を備え、前記溶融炉の下部に設けられたスラグ抜出シュート内のスラグ冷却水に前記廃棄物をガス化して排出されたスラグを前記スラグ出滓口から流下させるとともに、前記スラグ抜出シュート内の前記スラグ出滓口近傍に溶融バーナが設けられ、前記スラグ抜出シュート内に設置した監視カメラのカメラ窓にシールガスを流して汚れを防いでいるガス化溶融炉であって、前記スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載のガス化溶融炉によれば、スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたので、発生渦の影響を受けて旋回溶融炉内の高温ガス帯が圧力低下したスラグ抜出シュート内のスラグ出滓口下まで及ぶようになり、従って、この高温によりスラグ出滓口から流下するスラグを加熱して固化を抑制することができる。
そして、渦流形成手段により形成されたスラグ抜出シュート内の発生渦は、溶融炉のバーナにより溶融炉内に形成された旋回流(渦)との相乗効果により、スラグ抜出シュート内に中心部の下降流及び周囲の上昇流よりなる高温ガスの循環流れを形成する。この結果、スラグ抜出シュート内に低温のシールガスが投入されても、スラグ出滓口下の急激な温度低下を緩和することができる。
【0013】
請求項2に記載のガス化溶融炉においては、前記シールガスを酸素富化ガスにすることが好ましく、これにより、高温ガス中に含まれる一酸化炭素及び水素が、酸素富化ガス中の酸素と反応して発熱するので、高温ガスを加熱することができる。この場合の発熱反応は、主に局所濃度が高まるスラグ出滓口下で生じることから、スラグ出滓口下を効果的に加熱して高温にすることができる。
【0014】
請求項1から3のいずれかに記載のガス化溶融炉においては、前記スラグ抜出シュート内にスラグ流下口を形成した仕切板を設け、前記スラグ抜出シュート内を前記渦流形成手段の上下空間に区分することが好ましく、これにより、高温ガス帯の影響が仕切板に遮られて渦流形成手段の下部空間に及ぶことを防止できるようになり、従って、高温ガス帯の高温によるスラグ冷却水の温度上昇を抑えることができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明によれば、溶融バーナを使用してスラグを加熱溶融する廃棄物ガス化溶融システムのガス化溶融炉において、旋回溶融炉内の高温ガス帯の高熱を有効利用することにより、溶融バーナの使用を最小限に抑えてスラグの流下を安定させることができる。このため、廃棄物をガス化する運転時には、溶融バーナの燃料消費量を低減することができるので、低いランニングコストでガス化溶融炉の運転が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る廃棄物ガス化溶融システムのガス化溶融炉について第1の実施形態を示すスラグ流下部周辺の要部構成図であり、(a)は渦発生装置の回転翼を横置きにした状態の縦断面図、(b)は渦発生装置の回転翼を縦置きにした状態(変形例)の横断面図である。
【図2】図1のガス化溶融炉において、渦発生装置によりスラグ抜出シュート内に形成される強制渦の模式図である。
【図3】本発明に係る廃棄物ガス化溶融システムのガス化溶融炉について、第2の実施形態を示すスラグ流下部周辺の要部構成図(縦断面図)である。
【図4】図3のガス化溶融炉について、シールガスとして酸素富化ガスを使用する場合の吹出口配置例を示す横断面図である。
【図5】図3のガス化溶融炉について、仕切板を設けた変形例を示すスラグ流下部周辺の要部構成図(縦断面図)である。
【図6】従来のガス化溶融炉について要部の構成例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るガス化溶融炉の一実施形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係るガス化溶融炉は、たとえば廃棄物ガス化溶融システムにおいて、粉砕された廃棄物を炉内に投入して可燃性ガスを生成するための装置に用いられる。この場合の廃棄物としては、たとえば一般ごみ、産業廃棄物等がある。
一方、廃棄物中の灰は、水砕スラグとしてガス化溶融炉底部より炉外へ排出することが必要となる。
【0018】
<第1の実施形態>
図1に示す実施形態のガス化溶融炉10Aは、有底円筒状の旋回溶融炉12と、この旋回溶融炉12の下部に設けられた有底円筒状のスラグ抜出シュート14とを備えており、スラグ抜出シュート14の内部(底部)にはスラグ冷却水Wsが貯留されている。
旋回溶融炉12は、有底円筒の底部中央に開口するスラグ出滓口16を備えている。このスラグ出滓口16は、旋回溶融炉12内で廃棄物を部分燃焼して排出されたスラグSをスラグ抜出シュート14内のスラグ冷却水Wsに流下させるための通路開口部となる。スラグ冷却水Wsに流下したスラグSは、冷却されて固化した後、スラグ抜出シュート14の図示しない底部に設けた出口からガス化溶融炉10Aの外部へ排出される。
【0019】
スラグ出滓口16の上方には、旋回溶融炉12内で廃棄物の部分燃焼により形成された高温ガス帯が存在している。
一方、スラグ抜出シュート14の内部には、スラグ出滓口16の下方近傍に溶融バーナ20が設けられている。この溶融バーナ20は、たとえばメタンを燃料として燃焼させることにより、スラグ出滓口16から流下するスラグSを加熱溶融させて流動性を増すものであり、スラグ出滓口16からスラグ抜出シュート14内を流下するスラグSの流れが不安定になった場合に、すなわち、高粘度のスラグSが急激な温度低下により固化するような場合に起動して使用される。
【0020】
このように構成されたガス化溶融炉10Aのスラグ抜出シュート14には、スラグ抜出シュート14のシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段として渦発生装置30が設けられている。すなわち、渦発生装置30がスラグ抜出シュート14の内部に渦(図中の矢印C参照)を発生させることにより、円形断面を有するスラグ抜出シュート14の中心部で圧力を降下させ、旋回溶融炉12の高温ガス帯が低圧になったスラグ出滓口16の下まで及ぶようにしている。換言すれば、スラグ抜出シュート14内に設けた渦発生装置30を運転することによって、スラグ抜出シュート14の内部は、円形断面を有するスラグ抜出シュート14の軸中心位置に開口するスラグ出滓口16の下方が低圧になるので、旋回溶融炉12の高温ガス帯がスラグ出滓口16を通過してスラグ抜出シュート14の内部まで及ぶようになる。
【0021】
この渦発生装置30には、たとえば図1(a)に示すように、1または複数の回転翼32を横置きに設置したものがある。なお、渦発生装置30として複数の回転翼32を設置する場合には、たとえばスラグ抜出シュート14の周方向に180度ピッチで2台設置するというように、スラグ抜出シュート14の周方向に等ピッチで配置することが望ましい。
また、図1(b)に示す変形例の渦発生装置30Aは、1または複数の回転翼34を縦置きに設置したものである。なお、図示の渦発生装置30Aは、スラグ抜出シュート14の周方向に90度ピッチで4台の回転翼34が設置されており、複数の回転翼34を設置する場合には、上述した横置きの回転翼32と同様に、スラグ抜出シュート14の周方向に等ピッチで配置することが望ましい。
【0022】
このように、スラグ抜出シュート14内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦発生装置30,30Aを設けることにより、発生渦Cの影響を受ける溶融炉14内の高温ガス帯は、スラグ出滓口16の下方において圧力低下したスラグ抜出シュート14内の領域まで及ぶようになる。
従って、スラグ抜出シュート14内では、高温ガス帯の高温によりスラグ出滓口16から流下するスラグSを加熱して固化を防止または抑制することができる。すなわち、渦発生装置30,30Aは、スラグSがスラグ出滓口16から流れ落ちる領域を高温ガス帯の熱により高温とし、温度低下によるスラグSの固化を防止または抑制してスラグ流下を安定化するものである。
【0023】
ところで、上述した旋回溶融炉12の高温ガス帯がスラグ出滓口16からスラグ抜出シュート14内に進入する深さ(渦の進入深さ;Δh)は、旋回溶融炉12とスラグ抜出シュート14とでガスの出入りがないと仮定した場合、下記の強制渦基礎式(数1参照)により、概略の見積もりが可能である。なお、図2に示す強制渦の模式図において、vは渦流速である。
【数1】

【0024】
ここで、一例としてガス化溶融炉10Aの炉径(直径)が3mの場合、進入深さΔhは0.5mくらい欲しいので、必要となる渦流速vは、下記の計算式(数2参照)により算出される。
【数2】

この結果、渦発生装置30,30Aにより渦流速vが3m/s程度の渦Cを発生させると、スラグ抜出シュート14内においては、スラグ出滓口16の下方を約0.5mまで高温にすることができる。
【0025】
このように、スラグ抜出シュート14内に渦発生装置30,30Aを設けて渦Cを発生させることにより、旋回溶融炉12内の高温ガス帯がスラグ出滓口16を通って流下するスラグSは、温度低下や固化が防止または抑制されて安定した流下をするようになる。この結果、溶融バーナ20の使用頻度を最低限に抑えることができ、メタン等の燃料消費量を減らすことができる。
【0026】
<第2の実施形態>
続いて、本発明に係るガス化溶融炉について、第2の実施形態を図3に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図3に示すガス化溶融炉10Bは、上述した実施形態の構成に加えて、スラグ抜出シュート14内に設置したシュート内監視カメラ40を備えている。このシュート内監視カメラ40は、スラグ抜出シュート14内のスラグ出滓口16やスラグ冷却水Wsの水面を監視するものであり、通常はカメラ窓42にシールガスを流して汚れを防いでいる。
【0027】
本実施形態では、シュート内監視カメラ40のカメラ窓42にシールガスを流して汚れを防いでいるガス化溶融炉10Bに対し、上述した実施形態と同様に、スラグ抜出シュート14内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦発生装置30を設けている。なお、図示の構成例では、2台の回転翼32を横置きに設置しているが、縦置きの回転翼34としてもよい。また、回転翼32,34の設置台数についても、1または複数のいずれでもよい。
【0028】
ところで、上述したシールガスには、外部からスラグ抜出シュート14内に流入した後、スラグ出滓口16を通って溶融炉へ12流出する出口流路しかない。このため、スラグ抜出シュート14の内部には、スラグ出滓口16から旋回溶融炉12へ向かい、全体的に上向きとなるシールガス流(図中の矢印Faを参照)が発生する。
一方、旋回溶融炉12の内部には、バーナ(不図示)によって高温ガスの旋回流(図中の矢印Cgを参照)が発生しており、この旋回流(渦)により高温ガス帯の高温ガスが中心部のスラグ出滓口16からスラグ抜出シュート14内に自然循環してくる。このため、スラグ抜出シュート14内においては、スラグ出滓口16の下部が高温となる。しかしながら、シールガスの流量が多いと、上向きのシールガス流Faにより高温ガスの自然循環が消滅してしまう。
【0029】
このような状況において、スラグ抜出シュート14内に設けた渦発生装置30を運転すると、渦発生装置30によりスラグ抜出シュート14内に形成された発生渦Cの影響を受けて、旋回溶融炉12内の高温ガス帯がスラグ出滓口16から圧力低下したスラグ抜出シュート14内に流入し、スラグ出滓口16の下部が高温となる。この結果、スラグ出滓口16から流下するスラグSを加熱し、固化を抑制することができる。
【0030】
そして、渦発生装置30により形成されたスラグ抜出シュート14内の発生渦Cは、バーナにより旋回溶融炉12内に形成された旋回流Cgとの相乗効果により、スラグ抜出シュート14内に中心部の下降流及び周囲の上昇流よりなる高温ガスの循環流れ(図中の矢印Fgを参照)を形成するので、スラグ抜出シュート14内にシールガスが投入されても、高温ガスの自然循環が消滅することを防止できる。
【0031】
すなわち、スラグ抜出シュート14の内部に渦Cを発生させれば、旋回溶融炉12内の渦Cgとの相乗効果によりスラグ抜出シュート14内に高温ガスの循環流れFgが形成されるので、スラグ抜出シュート14からシュート内監視カメラ40用のシールガスFaがプラスされても、スラグ出滓口16の下方における急激な温度低下を緩和できる。このため、シールガスFaを使用するガス化溶融炉10Bにおいても、スラグSの流下を安定させることができる。
【0032】
ところで、本実施形態のシールガスは、酸素富化ガスを使用することが望ましい。すなわち、たとえば図4に示すように、シールガスとして酸素濃度の高い酸素富化ガスをスラグ抜出シュート14内のカメラ窓42に向けて吹き出すシールガス吹出口44を設置し、酸素濃度の高いシールガスをスラグ抜出シュート14内に投入する。すると、旋回溶融炉12内の高温ガス中に含まれる一酸化炭素及び水素と、酸素富化ガス中の酸素とが反応して発熱するので、この発熱により高温ガスを効率よく加熱することができる。この発熱反応は、主として酸素の局所濃度が高まるスラグ出滓口16の下方において生じることから、スラグ出滓口下を効果的に加熱して高温にすることができる。
なお、シールガス吹出口44を設置する向きは、渦発生装置30がスラグ抜出シュート14内に形成した発生渦Cの接線方向と略一致するように、すなわち、発生渦Cを加速する接線方向に向けて、スラグ抜出シュート14内のカメラ窓42へ酸素富化ガスを吹き出すようにするとよい。
【0033】
また、旋回溶融炉12内に生成された高温ガスの循環でスラグ抜出シュート14の吸熱量が上昇し、スラグ冷却水Wsの温度上昇が問題となる場合には、たとえば図5に示すガス化溶融炉10Cのように、スラグ抜出シュート14内にスラグ流下口18aを形成した仕切板18を設け、スラグ抜出シュート14内を渦発生装置30の上下空間に区分することが望ましい。すなわち、スラグ抜出シュート14内の空間は、スラグ抜出シュート14内に設置した仕切板18によりスラグ流下口18aの開口面積を残して上下に分離されるので、渦発生装置30により発生する渦Cの領域は、スラグ出滓口16の近傍となる仕切板18の上部に制限される。
【0034】
この結果、旋回溶融炉12から流下した高温ガス帯の熱影響は、仕切板18の遮断により最小限に抑えられる。このため、高温ガス帯の熱影響が渦発生装置30の下部空間に及ぶことを防止または抑制できるようになり、従って、高温ガス帯の高温によるスラグ冷却水Wsの温度上昇を抑えることができる。
なお、このような仕切板18は、上述した第1の実施形態においても有効である。
【0035】
このように、上述した本発明の各実施形態によれば、溶融バーナ20を使用してスラグSを加熱溶融する廃棄物ガス化溶融システムのガス化溶融炉10Aにおいて、旋回溶融炉12内に形成される高温ガス帯の高熱を有効利用することにより、溶融バーナ20によるスラグSの加熱溶融を最小限に抑えてスラグの流下を安定させることができる。このため、廃棄物をガス化するガス化溶融炉10Aの運転時には、溶融バーナ20の燃料消費量を低減して低いランニングコストでスラグの流下を安定させることができるので、ガス化溶融炉10Aの安定した運転を実現し、低コストで廃棄物をガス化した可燃性ガスを生成することができる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
10A,10B,10C ガス化溶融炉
12 旋回溶融炉
14 スラグ抜出シュート
16 スラグ出滓口
18 仕切板
18a スラグ流下口
20 溶融バーナ
30,30A 渦発生装置
32,34 回転翼
40 シュート内監視カメラ
42 カメラ窓
44 シールガス吹出口
S スラグ
Ws スラグ冷却水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物から可燃性ガスを生成する溶融炉が底部に開口するスラグ出滓口を備え、前記溶融炉の下部に設けられたスラグ抜出シュート内のスラグ冷却水に前記廃棄物をガス化して排出されたスラグを前記スラグ出滓口から流下させるとともに、前記スラグ抜出シュート内の前記スラグ出滓口近傍に溶融バーナが設けられているガス化溶融炉であって、
前記スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたことを特徴とするガス化溶融炉。
【請求項2】
廃棄物から可燃性ガスを生成する溶融炉が底部に開口するスラグ出滓口を備え、前記溶融炉の下部に設けられたスラグ抜出シュート内のスラグ冷却水に前記廃棄物をガス化して排出されたスラグを前記スラグ出滓口から流下させるとともに、前記スラグ抜出シュート内の前記スラグ出滓口近傍に溶融バーナが設けられ、前記スラグ抜出シュート内に設置したシュート内監視カメラのカメラ窓にシールガスを流して汚れを防いでいるガス化溶融炉であって、
前記スラグ抜出シュート内にシュート内中心部の圧力を降下させる渦流形成手段を設けたことを特徴とするガス化溶融炉。
【請求項3】
前記シールガスを酸素富化ガスにしたことを特徴とする請求項2に記載のガス化溶融炉。
【請求項4】
前記スラグ抜出シュート内にスラグ流下口を形成した仕切板を設け、前記スラグ抜出シュート内を前記渦流形成手段の上下空間に区分したことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のガス化溶融炉。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−215352(P2012−215352A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81256(P2011−81256)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】