説明

ガス化装置、ガス化方法、および液体燃料製造設備

【課題】被ガス化原料をガス化して生成した生成ガス中に含まれるタール成分やチャー等の炭素化合物を、該生成ガスから除去して回収し、前記炭素化合物を再利用して生成ガスを生成することによって、ガス化装置における生成ガスの収率を向上させるとともに、該生成ガス中に含まれる一酸化炭素の量を増加させることができるガス化装置を提供すること。
【解決手段】被ガス化原料3をガス化して生成ガスGを生成するガス化炉2と、前記生成ガスG中に含まれる炭素化合物を除去する洗浄装置10と、前記炭素化合物を燃焼させて二酸化炭素を含む燃焼ガスCGを生成する燃焼装置13と、を備え、前記燃焼ガスCGを、前記洗浄装置10より上流側の生成ガスGであって、該燃焼ガスCGの温度より低い温度領域の生成ガスG中に入れるように構成されたガス化装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被ガス化原料をガス化して、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等の生成ガスを生成するガス化装置およびガス化方法に関するものである。また、前記生成ガスからアルコールを製造する液体燃料製造設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
畜産由来の廃棄物、エネルギー作物などのバイオマスや、プラスチック、ゴムなどの有機廃棄物等の被ガス化原料を、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等の生成ガスにするガス化炉としては、固定床式、流動床式、噴流床式、ロータリーキルン式などがある。
【0003】
ここで、前記種々のガス化炉において、前記被ガス化原料を熱分解によりガス化させて生成した生成ガス中には、タール成分やチャーが含まれるので、ガス化炉の下流側に設けられた洗浄装置による洗浄工程において、前記生成ガス中のタール成分やチャーが除去回収され、生成ガスは洗浄される。
【0004】
特許文献1の流動床式ガス化炉では、回収されたチャーを、そのままガス化炉に戻して再ガス化することが行われている。しかし、ガス化炉内の条件によっては、チャーやタール成分をそのままガス化炉に戻しても効率的な再ガス化が行われない。例えば、ガス化炉内の温度が比較的低温(600℃〜800℃以下)である場合などである。
【0005】
このような低温で運転されるガス化炉を用いたガス化装置では、前記洗浄装置において回収されたチャーおよびタール成分は、廃棄されているのが現状である。このことによって、ガス化炉内温度が比較的低いガス化装置では、目的生成ガスの収率が低くなってしまう問題があった。
【0006】
一方、被ガス化原料をガス化して生成した生成ガスに含まれる一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等の成分比は、被ガス化原料の種類やガス化方法によって異なる。また、前記生成ガスを利用するにあたり、その利用用途によって求められる生成ガスの成分比も異なる。
【0007】
例えば、前記生成ガスを原料として、嫌気性微生物を用いてエタノールの製造を行う場合には、前記嫌気性微生物は一酸化炭素を用いてエタノールを生産するので、生成ガス中に一酸化炭素が多く含まれることが望ましい。また、前記生成ガスを、エンジンを用いた発電設備に利用する場合も、生成ガス中に一酸化炭素が多く含まれることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みなされたものであり、その目的は、被ガス化原料をガス化して生成した生成ガス中に含まれるタール成分やチャー等の炭素化合物を、該生成ガスから除去して回収し、前記炭素化合物を再利用して生成ガスを生成することによって、ガス化装置における生成ガスの収率を向上させるとともに、該生成ガス中に含まれる一酸化炭素の量を増加させることができるガス化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の第1の態様に係るガス化装置は、被ガス化原料をガス化して生成ガスを生成するガス化炉と、前記生成ガス中に含まれる炭素化合物を除去する洗浄装置と、前記炭素化合物を燃焼させて二酸化炭素を含む燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備え、前記燃焼ガスを、前記洗浄装置より上流側の生成ガスであって、該燃焼ガスの温度より低い温度領域の生成ガス中に入れるように構成されているものである。
【0010】
本態様のガス化装置では、ガス化炉において生成した生成ガス中に含まれるチャーやタール成分等の炭素化合物を、洗浄装置において該生成ガスから除去回収し、該炭素化合物を燃焼装置において燃焼させて、二酸化炭素を含む燃焼ガスを生成させる。
【0011】
ここで、前記生成ガス中には、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気が含まれ、式(1)に示されるような、いわゆるシフト反応が起こっている。

CO + HO ⇔ CO + H ・・・ (1)

この反応は平衡反応であり、反応系の温度を平衡状態の温度より高くすると、反応が左に進む、いわゆる逆シフト反応が進行することが知られている。
【0012】
したがって、二酸化炭素を含む前記燃焼ガスを、前記洗浄装置より上流側の生成ガスであって、該燃焼ガスの温度より低い温度領域の生成ガス中に入れると、当該燃焼ガス中の二酸化炭素(CO)と前記生成ガス中に含まれる水素(H)とが反応し、一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を生成する前記逆シフト反応を進行させることができる。
このことによって、前記炭素化合物を再利用して生成ガスを生成し、被ガス化原料のガス化効率(収率)を高めることができるとともに、生成ガス中に含まれる一酸化炭素量を増加させることができる。
【0013】
本発明の第2の態様に係るガス化装置は、第1の態様において、前記ガス化炉は、該ガス化炉内で前記炭素化合物から生成ガスを生成する再ガス化反応が進行しない炉内温度分布であることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、ガス化炉内の温度が、前記炭素化合物をガス化炉に再び戻して行う前記再ガス化反応が進行しない温度に設定されているガス化炉において、前記炭素化合物を前記燃焼装置によって燃焼ガスにして、生成ガス中に入れることによって再利用し、前記ガス化炉におけるガス化効率を高めることができる。更に、生成ガス中に含まれる一酸化炭素量を増加させることができる。
【0015】
尚、前記再ガス化反応が進行しない炉内温度分布は、該ガス化炉内の温度が部分的に高温になり、その高温部分の温度は前記再ガス化反応が起こり得る温度であっても、ガス化炉全体として該再ガス化反応が進行しない条件の炉内温度分布を含むものである。
【0016】
本発明の第3の態様に係るガス化装置は、第1の態様または第2の態様において、前記燃焼装置は、酸素富化状態で燃焼させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
前記「酸素富化状態で燃焼させる」とは、空気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度状態で燃焼させることを意味するものである。
本態様によれば、第1の態様または第2の態様と同様の作用効果に加え、前記燃焼装置において、前記炭素化合物を酸素富化状態で燃焼させることができるので、より高温の燃焼ガスを生成することが可能となり、前記ガス化炉で生成した生成ガスよりも高い温度の燃焼ガスを確実に生成させることができる。
【0018】
本発明の第4の態様に係るガス化装置は、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様において、前記燃焼ガスを入れた生成ガスを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、第1の態様から第3の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果に加え、前記燃焼ガスを生成ガス中に入れ、逆シフト反応を進行させた後、その生成ガスを冷却手段によって冷却し、前記シフト反応が起こらない温度にまで下げることによって、生成ガス中の一酸化炭素の量が多い状態を保つことができる。
【0020】
また、前記シフト反応が完全に止まる温度まで下げない場合でも、温度が下がれば式(1)における可逆反応の速度も遅くなり、生成した一酸化炭素が二酸化炭素に戻ってしまうシフト反応を抑えることができる。したがって生成ガス中の一酸化炭素の量が多い状態を長く保つことができる。
尚、冷却手段によって冷却された生成ガス温度は、該生成ガス中のタール成分が析出してガス化炉内に付着しない程度の温度(約500℃)であることが望ましい。
【0021】
本発明の第5の態様に係るガス化装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つの態様において、前記燃焼ガスを、前記ガス化炉の出口より下流の領域に入れるように構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
前記シフト反応および逆シフト反応は可逆反応であり、その反応系の温度における平衡状態に達するために、ある程度の滞留時間を要する。
本態様によれば、前記燃焼ガスを、前記ガス化炉の出口より下流の領域、すなわち、洗浄装置に至るまでの流路に入れることによって、前記逆シフト反応を進行させるための滞留時間を確保し、逆シフト反応の生成物である一酸化炭素が多い状態の生成ガスを洗浄装置に送ることができる。
【0023】
本発明の第6の態様に係るガス化装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様において、前記ガス化炉は、前記被ガス化原料をガス化する流動床を備え、前記流動床の温度は740℃以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0024】
流動床を備えたガス化炉(以下、流動床式ガス化炉と称する)では、流動媒体による流動床を形成し、酸化剤を吹き込んで該流動媒体を流動化させ、そこへ被ガス化原料を投入してガス化を行う。
【0025】
前記流動媒体としてはSiOを含む珪砂等が用いられるが、前記被ガス化原料中にK(カリウム)、Na(ナトリウム)等のアルカリ金属成分を多く含む場合、前記流動媒体中のSiOと前記被ガス化原料中のアルカリ金属成分が反応し、700℃前後の融点を持つ化合物を形成する場合がある。例えば、SiOとカリウム系化合物との反応により形成された化合物[カリガラス(KO・3SiO)]は、約750℃の融点を持つ。また、SiOとナトリウム系化合物との反応により形成された化合物[ソーダガラス(NaO・3SiO)]は、約635℃の融点を持つ。
【0026】
このような低融点化合物が生成すると、ガス化炉内で融解した該低融点化合物が前記流動媒体を付着させ、該流動媒体の粒子が大粒化する造粒現象を引き起こす。このため、前記流動床の温度が前記融点よりも高くなると、前記流動媒体の造粒現象によって流動床の流動化が妨げられ、被ガス化原料のガス化効率が悪くなる問題がある。したがって、流動床の温度を740℃以下に設定して被ガス化原料のガス化を行うことにより、前記低融点化合物の一部である少なくともカリガラスについて溶融させないようにすることが好ましい。これにより、前記大粒化の程度を小規模に抑えることができる。
【0027】
一方、前記流動床の温度を740℃以下に設定した流動床式ガス化炉は、該ガス化炉内で前記炭素化合物から生成ガスを生成する再ガス化反応が進行しない炉内温度分布になる虞がある。
【0028】
本態様によれば、流動床の温度が740℃以下に設定されている流動床式ガス化炉において、第1の態様から第5の態様のいずれか一つの態様と同様の作用効果を奏し、前記炭素化合物を再利用して生成ガスを生成し、ガス化装置における生成ガスの収率を向上させるとともに、生成した生成ガス中に含まれる一酸化炭素の量を増加させることができる。
【0029】
本発明の第7の態様に係るガス化方法は、ガス化炉において被ガス化原料をガス化し、生成ガスを生成するガス化工程と、前記生成ガス中に含まれる炭素化合物を除去する洗浄工程と、を含み、前記炭素化合物を燃焼させて二酸化炭素を含む燃焼ガスを生成させ、該燃焼ガスを、前記洗浄装置より上流側の生成ガスであって、該燃焼ガスの温度より低い温度領域の生成ガス中に入れることを特徴とするものである。本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果を奏する。
【0030】
本発明の第8の態様に係る液体燃料製造設備は、第1の態様から第6の態様のいずれか一つの態様のガス化装置と、前記ガス化装置で生成された生成ガスを原料としてアルコールを製造するアルコール製造装置と、を備えている。
【0031】
一酸化炭素を原料とした各種アルコールの製造方法が知られている。例えば、一酸化炭素と水素の触媒反応によってメタノールを製造することができる。また、MoS、CoS、KCOの含有割合を調整した触媒を用いることで、混合アルコール中のプロパノールやブタノールの収率を上げることができる。また、一酸化炭素から、嫌気性微生物を用いてエタノールを製造することができる。
【0032】
本態様によれば、一酸化炭素を多く含む生成ガスをガス化装置において生成し、該生成ガスをアルコール製造装置に供給することができるので、一酸化炭素を原料としたアルコールの製造を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ガス化装置のガス化炉において生成した生成ガスの洗浄時に回収されるタール成分やチャー等の炭素化合物を再利用して生成ガスを生成し、ガス化装置における生成ガスの収率を向上させることができる。また、前記生成ガス中に含まれる一酸化炭素の量を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図3】本発明の更に他の実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る液体燃料製造設備を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
本発明に係るガス化装置の一実施形態を図1に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【0036】
[実施例1]
ガス化装置1は、被ガス化原料3をガス化して生成ガスGを生成するガス化炉2と、該ガス化炉2において生成した前記生成ガスG中に含まれるチャーやタール成分等の炭素化合物を除去する洗浄装置10とを備えている。
【0037】
前記ガス化炉2は、固定床式、流動床式、噴流床式、ロータリーキルン式等の種々のガス化炉を用いることができる。図1のガス化炉2は、バブリング型流動床式ガス化炉の例である。前記ガス化炉2は、流動媒体4で流動床9を形成し、酸化剤5を吹き込んで該流動床9を流動化させ、そこへ被ガス化原料3を投入してガス化させるように構成されている。
【0038】
また、前記流動床9の上方のフリーボード部8にも酸化剤5を吹き込み、未反応の揮発成分をガス化させるように構成されている。反応後の被ガス化原料3及び流動媒体4から成る残渣19は、ガス化炉2の下方から該ガス化炉外へ排出される。
【0039】
ガス化炉2において生成した生成ガスGはガス化炉2の出口6から排出され、連通路7を介して該生成ガスGを洗浄装置10へ送られるように構成されている。バブリング型流動床のガス化炉2における被ガス化原料3のガス化温度は、600℃〜800℃である。
【0040】
前記ガス化炉2の下流位置に設けられる洗浄装置10は、チャー、灰分等の固体炭素化合物Csを除くためのサイクロン11と、タール成分等の揮発性炭素化合物Cvを除くための湿式洗浄装置12と、によって構成されている。前記洗浄装置10のサイクロン11によって、生成ガスGから回収された前記固体炭素化合物Cs、および湿式洗浄装置12によって生成ガスGから回収された前記揮発性炭素化合物Cvは、次に説明する燃焼装置13へ導入される。尚、以下、前記固体炭素化合物Csと前記揮発性炭素化合物Cvを合わせて炭素化合物と称する場合がある。
【0041】
燃焼装置13は、前記生成ガスGから除去された炭素化合物を燃焼させ、二酸化炭素を含む燃焼ガスCGを生成させるものである。本実施例においては、前記燃焼装置13は、該燃焼装置13内に酸素17を送り込む酸素供給手段14を備え、空気中の酸素濃度よりも高い酸素濃度状態、すなわち、酸素富化状態での燃焼を行うことができるように構成されている。
【0042】
更に、前記燃焼装置13において生成した前記燃焼ガスCGを、前記洗浄装置10より上流側の生成ガスGであって、該燃焼ガスCGの温度より低い温度領域の生成ガスG中に入れるための燃焼ガス供給手段15が設けられている。本実施例においては、ガス化炉2と洗浄装置10との連通路7内の生成ガスGに、燃焼ガスCGが供給されるように構成されている。
【0043】
次に、本実施形態に係るガス化装置1を用いたガス化方法について説明する。
前記ガス化炉2内の流動媒体4に酸化剤5を供給して流動状態の流動床9を形成する。前記ガス化炉2に設けられた昇温バーナー(図示せず)によって、前記流動床の温度を設定温度まで高め、その流動床9に被ガス化原料3を供給してガス化するガス化工程が行われる。前記被ガス化原料3、および流動媒体4は、スクリューコンベア等によって供給される。
【0044】
被ガス化原料3としては、プラスチック、ゴムなどの有機廃棄物や、バイオマス等が挙げられる。前記バイオマスの種類としては、製材所の残材、間伐材(杉、檜、松、ブナ、ゴム等)、街路樹剪定材、建築廃材、廃電柱、バーク、ダム流木、籾殻、稲わら、麦わら、竹、笹、パーム椰子空果房、パーム椰子の幹、バガス等サトウキビ由来の廃材等の草本系バイオマス、杉木材、松木材、ラワン木材、イチジク木材等の木質系バイオマス、牛糞、鶏糞等の畜産由来のバイオマス、食品残渣、黒液、海草等が挙げられる。
【0045】
前記ガス化工程において生成された生成ガスGは、ガス化炉2の下流側の洗浄装置10に送られ、生成ガスG中に含まれる炭素化合物を除くための洗浄工程が行われる。洗浄工程は、サイクロン11等を用い、チャー、灰分等の固体炭素化合物Csを取り除く工程に続き、湿式洗浄装置12等を用い、タール成分等の揮発性炭素化合物Cvを取り除く工程が行われる。
【0046】
サイクロン11によって生成ガスGから回収された固体炭素化合物Csと、湿式洗浄装置12によって生成ガスGから回収された揮発性炭素化合物Cvは、それぞれ燃焼装置13へ導入される。前記揮発性炭素化合物Cvは湿式洗浄装置において水中に回収されるが、該水と分離された揮発性炭素化合物Cvが前記燃焼装置13へと送られる。分離された水18は再利用又は廃棄される。前記サイクロン11および前記湿式洗浄装置12によって洗浄された生成ガスGは、下流側の他の装置16に送られる。
【0047】
次に、前記燃焼装置13に導入された炭素化合物(固体炭素化合物Csおよび揮発性炭素化合物Cv)を燃焼し、二酸化炭素を含む高温の燃焼ガスCGを生成する。本実施例では、前記燃焼装置13は酸素供給手段14を備えているので、該酸素供給手段14から燃焼装置13内に酸素17を送り込み、前記炭素化合物を酸素富化状態で燃焼することができる。酸素富化状態で前記炭素化合物を燃焼させることによって、より高温の燃焼ガスCGを生成させることができる。また、高温の燃焼ガスCGを効率よく生成するため、前記酸素供給手段14から送り込まれる酸素17は純酸素であることが望ましい。
【0048】
前記燃焼装置13において生成した前記燃焼ガスCGは、燃焼ガス供給手段15によって、連通路7内の生成ガスGに入れられる。前記燃焼装置13における燃焼温度は、前記洗浄装置10より上流側の生成ガスGの温度よりも高い温度の燃焼ガスCGを生成するように設定される。本実施例では、前記連通路7内の生成ガスGよりも高い温度の燃焼ガスCGを生成するように、燃焼装置13の燃焼温度が設定されている。
【0049】
ここで、前記生成ガスG中には、一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気が含まれ、式(1)に示されるような、いわゆるシフト反応が起こっている。

CO + HO ⇔ CO + H ・・・ (1)

この反応は平衡反応であり、反応系の温度を平衡状態の温度より高くすると、反応が左に進む、いわゆる逆シフト反応が進行することが知られている。
【0050】
したがって、前記燃焼ガスCGを、前記洗浄装置10より上流側の生成ガスGであって、該燃焼ガスCGの温度より低い温度領域の生成ガスG中に入れると、当該燃焼ガス中の二酸化炭素(CO)と前記生成ガス中に含まれる水素(H)とが反応し、一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を生成する前記逆シフト反応を進行させることができる。
このことによって、生成ガスG中に含まれる炭素化合物を再利用して、被ガス化原料3のガス化効率(収率)を高めることができるとともに、生成ガスG中に含まれる一酸化炭素量を増加させることができる。
【0051】
前記燃焼ガスCGを生成ガスG中に入れる燃焼ガス供給手段15を設ける位置は、図1のように、該燃焼ガスCGを前記ガス化炉2の出口6より下流の領域に入れるように構成することが望ましい。
【0052】
前記シフト反応および逆シフト反応は可逆反応であり、その反応系の温度における平衡状態に達するために、ある程度の滞留時間を要する。前記燃焼ガスCGを、前記ガス化炉2の出口6より下流の領域、すなわち、洗浄装置10に至るまでの流路に入れることによって、前記逆シフト反応を進行させるための滞留時間を確保し、逆シフト反応の生成物である一酸化炭素が多い状態の生成ガスを洗浄装置10に送ることができる。
【0053】
本実施例においてガス化炉2として用いた流動床式ガス化炉では、流動媒体4としてSiOを含む珪砂等が用いられるが、前記被ガス化原料3中にK(カリウム)、Na(ナトリウム)等のアルカリ金属成分を多く含む場合、前記流動媒体4中のSiOと前記被ガス化原料3中のアルカリ金属成分が反応し、700℃前後の融点を持つ化合物を形成する場合がある。例えば、SiOとカリウム系化合物との反応により形成された化合物[カリガラス(KO・3SiO)]は、約750℃の融点を持つ。また、SiOとナトリウム系化合物との反応により形成された化合物[ソーダガラス(NaO・3SiO)]は、約635℃の融点を持つ。
【0054】
このような低融点化合物が生成すると、ガス化炉2内で融解した該低融点化合物が前記流動媒体4を付着させ、該流動媒体4の粒子が大粒化する造粒現象を引き起こす。このため、流動床9の温度が前記融点よりも高くなると、前記流動媒体の造粒現象によって流動床9の流動化が妨げられ、ガス化効率が悪くなる問題がある。このような場合には、流動床9の温度を740℃以下に設定して、被ガス化原料3のガス化を行うことが好ましい。
また、流動床の温度を低く設定するとガス化効率が低下するため、740℃以下の例えば700℃程度(650℃〜730℃程度)に設定することが望ましい。なお、前記ナトリウム系化合物とSiOの反応により形成された低融点化合物(ソーダガラス)の融点は約635℃であるので、700℃前後に設定した場合には該ナトリウム系の低融点化合物は融解してしまう。しかし、被ガス化原料中に含まれるナトリウム系化合物の量が少なく、前記ナトリウム系の低融点化合物が形成されることによる前記造粒現象の影響が少ない場合には、流動床の温度を低く設定することによるガス化効率の低下の問題を優先し、700℃前後の設定温度によってカリウム系の低融点化合物(カリガラス)の融解を抑えるようにすることが望ましい。
【0055】
しかしながら、前記流動床9の温度が740℃以下に設定されている流動床式ガス化炉2は、該ガス化炉2内で前記炭素化合物から生成ガスGを生成する再ガス化反応が進行しない炉内温度分布になる虞がある。
【0056】
本実施例のガス化装置1によれば、ガス化炉2内の温度が、前記炭素化合物をガス化炉2に再び戻して行う前記再ガス化反応が進行しない炉内温度に設定されるガス化炉2において、前記炭素化合物を再利用し、前記ガス化炉2におけるガス化効率を高めることができる。更に、生成ガスG中に含まれる一酸化炭素量を増加させることができる。
【0057】
尚、前記再ガス化反応が進行しない炉内温度分布は、ガス化炉2内の温度が部分的に高温になり、その高温部分の温度は前記再ガス化反応が起こり得る温度であっても、ガス化炉2全体として該再ガス化反応が進行しない条件の炉内温度分布を含むものである。
【0058】
前記炭素化合物をそのままガス化炉に戻すことによって、該炭素化合物の再ガス化反応が行われる炉内温度分布で運転されるガス化炉を用いた場合でも、本発明によれば、前記逆シフト反応によって生成ガスG中の一酸化炭素の量を増やすことができる点で有利である。
【0059】
[実施例2]
次に、本発明に係るガス化装置の他の実施形態を図2に基づいて説明する。図2は、本発明の他の実施形態に係るガス化装置を示す概略構成図である。
【0060】
図2のガス化装置21のガス化炉2、洗浄装置10、燃焼装置13、およびの燃焼ガス供給手段15の構成は実施例1と同じであるので、同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。前記ガス化装置21の燃焼ガス供給手段25は、燃焼装置13において生成された燃焼ガスCGを、前記ガス化炉2のフリーボード部8内に入れるように構成されている。
【0061】
前記ガス化炉2の運転温度(ガス化温度)、形状、大きさ等の条件や、該ガス化炉2と前記洗浄装置10を接続する連通路7の太さ、長さ等の条件によっては、燃焼ガスCGを生成ガスG中に入れたときに進行する前記逆シフト反応が平衡状態に達するための滞留時間を確保するため、本実施例のガス化装置21のように、前記燃焼ガスCGをガス化炉2のフリーボード部8内に入れることができる。前記ガス化炉2の条件、およびガス化炉2と洗浄装置10への連通路7の条件等を考慮して、燃焼ガス供給手段15を設ける位置を設定することが好ましい。
【0062】
[実施例3]
次に、本発明に係るガス化装置の更に他の実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、本発明の更に他の実施形態に係るガス化装置31を示す概略構成図である。
図3のガス化装置31のガス化炉2、洗浄装置10、燃焼装置13、およびの燃焼ガス供給手段15の構成は実施例1と同じであるので、同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施例のガス化装置31は、前記燃焼ガス供給手段15よりも下流側に、前記燃焼ガスCGを入れた生成ガスGを冷却する冷却手段32を備えている。
【0063】
実施例1と同様に、前記洗浄装置10において、生成ガスG中に含まれる炭素化合物を除去回収し、該炭素化合物を前記燃焼装置13において酸素富化状態で燃焼して、二酸化炭素を含む燃焼ガスCGを生成する。該燃焼ガスCGは、燃焼ガス供給手段15によって、前記洗浄装置10より上流側の生成ガスGであって、該燃焼ガスCGの温度より低い温度領域の生成ガスG中に入れられる。このことによって、前記燃焼ガスCG中の二酸化炭素(CO)と前記生成ガスG中に含まれる水素(H)とが反応し、一酸化炭素(CO)と水蒸気(HO)を生成する逆シフト反応を進行させることができる。
【0064】
ここで、本実施例のガス化装置31では、前記冷却手段32を備えているので、燃焼ガスCGを生成ガスG中に入れ、前記逆シフト反応を進行させた後の生成ガスGを、該冷却手段32によって冷却し、前記シフト反応が起こらないガス温度にまで下げ、生成ガスG中の一酸化炭素の量が多い状態を保つことができる。
【0065】
また、前記シフト反応が完全に止まる温度まで下げない場合でも、温度が下がれば式(1)における可逆反応の速度も遅くなり、生成した一酸化炭素が二酸化炭素に戻ってしまうシフト反応を抑えることができる。したがって生成ガスG中の一酸化炭素の量が多い状態を長く保つことができる。
【0066】
尚、冷却手段32によって冷却された生成ガスGの温度は、該生成ガスG中に残存する揮発成分(タール等)が析出してガス化炉2内に付着しない程度の温度であることが望ましい。また、前記冷却手段32は、前記燃焼ガス供給手段15によって燃焼ガスCGを生成ガスG中に入れた後、前記逆シフト反応を進行させるために十分な滞留時間を確保できる位置に設定されることが望ましい。
【0067】
本実施例に用いるガス化炉はこれに限定されるものではなく、循環型等の他の流動床式ガス化炉、および、固定床式、噴流床式、ロータリーキルン式等のガス化炉も用いることができる。実施例4において、ガス化炉2としてダウンドラフト型固定床式ガス化炉を用いた場合について説明する。
【0068】
[実施例4]
図4に示すガス化装置41では、ガス化炉42としてダウンドラフト型固定床式ガス化炉を用いている。
ガス化炉42は、ガス化炉42上部の開口部44から被ガス化原料43が供給され、前記開口部44から酸化剤45として空気を取り込んで、前記被ガス化原料43を不完全燃焼させてガス化させ、生成ガスGを生成する。また、ガス化炉42は、前記開口部44よりも下流側に、該ガス化炉42外の大気と連通する酸化剤取入口60を備えており、被ガス化原料43のガス化反応効率を高めるため、ガス化炉42外の空気を取り込むように構成されている。反応後の被ガス化原料43の残渣59は、ガス化炉42の下部から炉外へ排出される。
【0069】
前記ガス化炉42において生成した生成ガスGは、該ガス化炉42の出口46から排出され、連通路47を介して、チャー、灰分等の固体炭素化合物Csを除くためのサイクロン48、およびタール成分等の揮発性炭素化合物Cvを除くための湿式洗浄装置49から成る洗浄装置50へ送られる。
【0070】
前記サイクロン48で回収された固体炭素化合物Cs、および前記湿式洗浄装置49で回収された揮発性炭素化合物Cvは、後述する燃焼装置53に導入されるように構成されている。尚、前記揮発性炭素化合物Cvは、前記湿式洗浄装置49において水中に回収されるので、該揮発性炭素化合物Cvと水58とを分離し、分離された揮発性炭素化合物Cvが燃焼装置53に導入される。
【0071】
前記洗浄装置50の生成ガスGの流路の下流側には、誘引送風ファン等の誘引送風手段51が設けられ、前記開口部44および酸化剤取入口60から酸化剤45として空気を取り込むとともに、生成した生成ガスGがガス化炉42の出口46から排出され、洗浄装置50へと送られるように構成されている。また、洗浄装置50において洗浄された生成ガスGは、前記誘引送風手段51の送風力によって他の装置52へと送られる。
【0072】
以上のようなダウンドラフト型固定床式ガス化炉42を用いたガス化装置41において、実施例3と同様に、酸素57を送り込む酸素供給手段54を備えた燃焼装置53、燃焼ガス供給手段55、および、冷却手段56を設けることによって、生成ガスGから除去回収したチャーやタール成分等の炭素化合物の再利用して生成ガスGを生成することができるとともに、生成ガスG中の一酸化炭素量を増やすことができる。
【0073】
[実施例5]
次に、本発明に係る液体燃料製造設備の一実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、液体燃料としてエタノールを製造するエタノール製造設備61を示す概略構成図である。
実施例5のエタノール製造設備61は、被ガス化原料から生成ガスGを生成するガス化装置としてガス化装置31を備えている。ガス化装置31は実施例3のガス化装置と同様の構成であるので、同一部材には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0074】
前記ガス化装置31の下流側には、嫌気性微生物を用いて前記生成ガスGからエタノールを製造するエタノール製造装置63を備えている。また、前記ガス化装置31の洗浄装置10(湿式洗浄装置12)と前記エタノール製造装置33との間に、他の装置を介する構成とすることもできる。本実施例では、前記ガス化装置31の洗浄装置10で洗浄された生成ガスGを精製する精製装置62が備えられている。前記精製装置62は、例えば、洗浄装置10で除去しきれなかった微粒子やタール等を除去することを目的としたフィルターなどであり、本実施例では2つのフィルターを切り替えて用いるように構成されている。
【0075】
本実施例によれば、ガス化装置31において一酸化炭素を多く含む生成ガスGを生成し、該生成ガスGをエタノール製造装置63に供給することができる。嫌気性微生物はエタノールを生産するために一酸化炭素を利用するので、一酸化炭素を多く含む生成ガスGをエタノール製造装置63に供給することによって前記嫌気性微生物によるエタノール生産能が高まり、効率よくエタノールを製造することができる。
尚、本実施例に用いるガス化装置は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明に係るいずれかの態様のガス化装置を用いることができるのは言うまでもない。また、本実施例は、前記エタノール製造装置33を用いてエタノールを製造するエタノール製造設備であるが、一酸化炭素を原料としてメタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコールを製造する製造装置を用いることによって、各種アルコールを製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、被ガス化原料を一酸化炭素、二酸化炭素、水素および水蒸気等の生成ガスにガス化するガス化装置およびガス化方法に利用可能である。また、前記生成ガスからアルコールを製造する液体燃料製造設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ガス化装置、 2 ガス化炉、 3 被ガス化原料、 4 流動媒体、
5 酸化剤、 6 出口、 7 連通路、
10 洗浄装置、 11 サイクロン、 12 湿式洗浄装置、
13 燃焼装置、 14 酸素供給手段、 15 燃焼ガス供給手段、
21、31 ガス化装置、 32 冷却手段、
41 ガス化装置、 42 ガス化炉、 43 被ガス化原料、 44 開口部、
45 酸化剤、 46 出口、 47 連通路、
48 サイクロン、 49 湿式洗浄装置、 50 洗浄装置、
51 誘引送風手段、 53 燃焼装置、 54 酸素供給手段、
55 燃焼ガス供給手段、 56 冷却装置、
61 エタノール製造設備(液体燃料製造設備)、 62 精製装置、
63 エタノール製造装置、 G 生成ガス、 CG 燃焼ガス、
Cs 固体炭素化合物、 Cv 揮発性炭素化合物
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平7−150106号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被ガス化原料をガス化して生成ガスを生成するガス化炉と、
前記生成ガス中に含まれる炭素化合物を除去する洗浄装置と、
前記炭素化合物を燃焼させて二酸化炭素を含む燃焼ガスを生成する燃焼装置と、を備え、
前記燃焼ガスを、前記洗浄装置より上流側の生成ガスであって、該燃焼ガスの温度より低い温度領域の生成ガス中に入れるように構成されたガス化装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたガス化装置において、前記ガス化炉は、該ガス化炉内で前記炭素化合物から生成ガスを生成する再ガス化反応が進行しない炉内温度分布であることを特徴とするガス化装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたガス化装置において、前記燃焼装置は、酸素富化状態で燃焼させるように構成されていることを特徴とするガス化装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載されたガス化装置において、前記燃焼ガスを入れた生成ガスを冷却する冷却手段を備えたことを特徴とするガス化装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたガス化装置において、前記燃焼ガスを、前記ガス化炉の出口より下流の領域に入れるように構成されていることを特徴とするガス化装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載されたガス化装置において、前記ガス化炉は、前記被ガス化原料をガス化する流動床を備え、前記流動床の温度は740℃以下に設定されていることを特徴とするガス化装置。
【請求項7】
ガス化炉において被ガス化原料をガス化し、生成ガスを生成するガス化工程と、
前記生成ガス中に含まれる炭素化合物を除去する洗浄工程と、を含み、
前記炭素化合物を燃焼させて二酸化炭素を含む燃焼ガスを生成させ、該燃焼ガスを、前記洗浄装置より上流側の生成ガスであって、該燃焼ガスの温度より低い温度領域の生成ガス中に入れることを特徴とするガス化方法。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載されたガス化装置と、
前記ガス化装置で生成された生成ガスを原料としてアルコールを製造するアルコール製造装置と、を備えた液体燃料製造設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−235899(P2010−235899A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88242(P2009−88242)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】