説明

ガス化複合発電システム

【課題】ガス化複合発電システムの製造コストを低減し、効率向上を図ること。
【解決手段】ガス化複合発電システム1は、ガス化燃料を生成するガス化装置20と、酸化剤を圧縮する第1の圧縮機10と、この圧縮された酸化剤の少なくとも一部を圧縮し、ガス化剤としてガス化装置へ供給する第2の圧縮機18と、第1の圧縮機で圧縮された酸化剤とガス化装置から供給されるガス化燃料とを混合して燃焼させ、燃焼ガスを生成する燃焼器12と、燃焼器からの燃焼ガスで順次駆動される第1と第2のタービン14、16と、第2のタービンに動力伝達可能に結合される発電機と、を有し、第1と第2の圧縮機と第1のタービンは動力伝達可能に連結され、第1と第2の圧縮機は第1のタービンによって回転駆動され、第1のタービンと、この後流側に配置される第2のタービンとは軸系としては結合されておらず、それぞれ異なる回転数で回転可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス化複合発電システムのガス化剤圧縮機および空気圧縮機の駆動方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス化複合発電システムとは、石炭や残渣油などの固体や液体の燃料源をガス化装置においてガス化し、このガス化燃料をガスタービンの燃焼器で燃焼させ、タービンを駆動して発電すると共に、ガスタービンの排気ガスを排熱回収ボイラに導入し、ここで発生した蒸気によって蒸気タービンを駆動して発電するものである(例えば特許文献1)。
【0003】
ここで、空気吹きのガス化装置の場合、ガスタービンの空気圧縮機の出口空気の一部を抽気し、これを別置きの圧縮機で昇圧してガス化装置に導き、ガス化剤として使用している。これを、例示的に図5を用いて説明する。
図5に示すガス化複合発電システム100は、ガス化装置120、ガスタービン102、および発電機126を有する。また、ガスタービン102は空気圧縮機110、燃焼器112およびタービン114からなる。
ガス化装置120は、ガス化燃料を生成し、燃料供給経路134を介して燃焼器112にガス化燃料を供給するように構成される。空気圧縮機110は、大気から空気を取り入れて昇圧するように構成される。燃焼器112は、空気圧縮機110で昇圧された高圧の空気と、ガス化装置120から供給されるガス化燃料とを混合し、この混合ガスを燃焼させるように構成される。タービン114は、燃焼器112における燃焼ガスから動力を抽出するように構成される。発電機126は、ガスタービン102によって駆動されて発電するように構成される。
ガス化複合発電システム100は、さらに、抽気空気経路136、ガス化剤圧縮機118およびガス化剤供給経路138を有する。
抽気空気経路136は、空気圧縮機110の出口空気の一部を抽気するように構成される。ガス化剤圧縮機118は、ガスタービン102とは別軸として配置され、抽気空気経路136で抽気された空気を昇圧するように構成される。ガス化剤供給経路138は、ガス化剤圧縮機118で昇圧された空気をガス化剤としてガス化装置120へ供給するように構成される。
なお、ここでは排熱回収ボイラや蒸気タービンの構成(ボトミング系統)については記載と説明を省略する。
【0004】
図5に示す複合発電システムにおいて、ガス化装置120から供給されたガス化燃料は、燃焼器112に供給される。次に、空気圧縮機110で圧縮された空気とガス化燃料とを混合し、燃焼器112で燃焼させることによって発生した高温高圧の燃焼ガスのエネルギーによってタービン114が回転駆動される。空気圧縮機110はタービン114と一体に結合されているので、空気圧縮機110はタービン114によって駆動される。
空気圧縮機110で圧縮された空気の一部は抽気されて抽気空気経路136を介してガス化剤圧縮機118で昇圧されてガス化装置120へ導かれ、ここでガス化燃料が生成され、ガス化燃料は燃料供給経路134を介してガスタービン102の燃焼器112へ供給される。
ガスタービン102にて得られた動力は、発電機126を駆動して発電を行う。この場合、軸回転数は一般的に供給電力周波数によって決まるため、複合発電システム100の作動条件によらずに一定回転数(同期回転数)で運転される。また、ガス化剤圧縮機118はモータ128などの駆動機によって駆動される。
【0005】
ガス化複合発電システム100の動力調整は、燃料の流量調整によって行う。前述のとおり、ガス化複合発電システム100では、空気圧縮機110から抽気された空気をガス化剤圧縮機118で昇圧し、この空気を用いてガス化燃料を生成して燃焼器112に供給している。従って、ガス化燃料の流量調整はガス化剤圧縮機118の流量調整を意味する。ガス化剤圧縮機118が軸流圧縮機である場合、ガス化剤圧縮機118の吸込流量の調整はガス化剤圧縮機118の入口に設けられた図示しない可変静翼により行う。この時、調整可能なガス化剤の流量範囲は、可変静翼の開度範囲、またはガス化剤圧縮機118のサージ限界によって制限される。このため、必要となるガス化剤の流量範囲がガス化剤圧縮機118単体にて可能となる調整範囲を超える場合は、図5に示すようにガス化剤をガス化剤圧縮機118の出口からバイパス経路130を介してガス化剤圧縮機118の入口にバイパスして還流させることにより、ガス化剤圧縮機118の吸込流量を確保する。
【0006】
ガス化複合発電システム100の必要燃料流量が小さい部分負荷運転時にガス化剤のバイパスを行う場合、ガスタービン102が要求する以上の量のガス化剤を昇圧することになり、必要以上のガス化剤圧縮機118の動力を消費することになるため、結果的に全体効率が低下する。
【0007】
また、部分負荷運転時にガス化剤圧縮機118の流量調整範囲を制限するのは、ガス化剤圧縮機118の限界圧力比の低下(限界圧力比は流量にほぼ比例する)と、流量低下時のガス化剤圧縮機118の効率の低下が挙げられる。
軸流圧縮機では、吸込流量の低下に伴い、サージによる運転限界圧力比が低下する。このため、ガス化剤圧縮機118の圧力比が高い状態でガス化剤圧縮機118の吸込流量を低下させた場合、ガス化剤圧縮機118のサージ運用限界を超えるため、運転を継続することができなくなる。
一方、サージ圧力比を増加させるために、圧縮機の段数を増加させることも可能であるが、定格負荷運転条件では本来不要な翼列を追加することになるため、ガス化剤圧縮機118の効率が低下し、全体性能も低下することになる。
【0008】
このため、ガス化剤圧縮機118を駆動するモータなどを回転数可変とすることが考えられる。
これらの構成によれば、回転数を調整することによってガス化剤圧縮機118の吸込流量の調整を行うことができる。このため、バイパス運転することなく、ガス化剤の流量条件を設定することが可能となり、ガス化剤圧縮機118の軸動力を低減し、ガス化複合発電システムの部分負荷効率をある程度向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−207353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ガスタービン自体が発電機を一定の定格回転数で駆動している以上、これと一体に結合される空気圧縮機もガスタービンと同じ一定の定格回転数で運転されている。このため、部分負荷においても、空気圧縮機は相当の空気を吸い込み、高い圧力比を発生しているため、相当の軸動力を消費していることになる。更に、ガス化剤圧縮機は空気圧縮機の抽気空気を昇圧していることから、部分負荷においても空気圧縮機の圧力比が高い(出口圧力が高い)ということは、すわなち、ガス化剤圧縮機の吸込圧力も高いことを意味する。この結果、部分負荷においても、空気圧縮機の抽気空気を更に昇圧するガス化剤圧縮機も余分な動力を消費することになる。従って、単にガス化剤圧縮機を回転数可変とするだけでは、部分負荷の効率向上はあまり期待できない。さらに、既存の構成ではガス化剤圧縮機を駆動するための付帯設備を必要とすることから、ガス化複合発電システムの製造コストも増加している。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、構造的にシンプルであり、低コストで、より効率の高いガス化複合発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明に係るガス化複合発電システムは、ガス化燃料を生成するガス化装置と、
酸化剤(例えば空気)を圧縮する第1の圧縮機(例えば空気圧縮機)と、前記第1の圧縮機で圧縮された酸化剤の少なくとも一部または外部(別のプロセス)から供給された酸化剤を圧縮し、ガス化剤として前記ガス化装置へ供給する第2の圧縮機(例えばガス化剤圧縮機)と、前記第1の圧縮機で圧縮された酸化剤と前記ガス化装置から供給される前記ガス化燃料とを混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に後置接続され、前記高温高圧の燃焼ガスで順次駆動される第1と第2のタービン(例えば高圧タービンと低圧タービン)と、前記第2のタービンに動力伝達可能に結合される発電機と、を有し、前記第1と第2の圧縮機と前記第1のタービンは動力伝達可能に連結され、前記第1と第2の圧縮機は前記第1のタービンによって回転駆動され、前記第1のタービンの後流側に前記第2のタービンが配置されており、前記第1と第2のタービンは軸系としては結合されておらず、それぞれ異なる回転数で回転可能であること、を特徴とする。
【0013】
本発明に係るガス化複合発電システムによれば、第1と第2の圧縮機は、第2のタービンとは独立した回転数で回転可能な第1のタービンによって駆動されることから、モータなどの付帯設備を有することなく、第1と第2の圧縮機の可変流量範囲を拡大でき、製造コストの低減およびシステム全体の効率を向上できるという効果を奏する。
【0014】
上記ガス化複合発電システムにおいて、前記第2の圧縮機は増速機または減速機を介して前記第1の圧縮機に結合されていてもよい。
【0015】
このようなガス化複合発電システムでは、第2の圧縮機を第1の圧縮機とは異なる定格回転数で設計をすることが可能となり、第1と第2の圧縮機がそれぞれ最適な空力性能となるように設計できることからシステム全体の効率が向上する。
【0016】
上記ガス化複合発電システムにおいて、前記第2の圧縮機で圧縮された酸化剤を前記第2の圧縮機の入口側に還流させるバイパス流路を有する構成としてもよい。
【0017】
このようなガス化複合発電システムでは、ガス化装置に導かれるガス化剤の流量調整は、第2の圧縮機の回転数だけでなく、ガス化剤のバイパス流量調整によっても行うことができるので、ガス化装置に導かれるガス化剤流量の制御性が向上する。
【0018】
本発明に係るガス化複合発電システムを運転する方法は、ガス化燃料を生成するガス化装置と、酸化剤を圧縮する第1の圧縮機と、第1の圧縮機で圧縮された酸化剤の少なくとも一部または外部(別のプロセス)から供給された酸化剤を圧縮し、ガス化剤として前記ガス化装置へ供給する第2の圧縮機と、前記第1の圧縮機で圧縮された酸化剤と前記ガス化装置から供給される前記ガス化燃料とを混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器に後置接続され、前記高温高圧の燃焼ガスで順次駆動される第1と第2のタービンと、前記第2のタービンに動力伝達可能に結合される発電機と、を有し、前記第1と第2の圧縮機と前記第1のタービンは動力伝達可能に連結され、前記第1と第2の圧縮機は前記第1のタービンによって回転駆動されるガスジェネレータ部を構成し、前記第1のタービンの後流側に第2のタービンが配置されており、前記第1と第2のタービンは軸系としては結合されておらず、それぞれ異なる回転数で回転可能であり、前記第2のタービンは動力伝達可能に前記発電機に結合されてパワータービン部を構成しているガス化複合発電システムにおいて、前記ガス化複合発電システムの部分負荷運転時は定格運転時の回転数よりも低い回転数で前記ガスジェネレータ部を運転し、前記第1と第2の圧縮機出口の流量ないし圧力を定格運転時よりも低下させること、を特徴とする。
【0019】
本発明に係るガス化複合発電システムを運転する方法によれば、ガスジェネレータ部を可変速運転とすることにより、第1および第2の圧縮機の効率を損なうことなく、ガス化複合発電システムの圧力比を低下させることができ、部分負荷運転が可能となることから、システム全体の効率を向上できるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るガス化複合発電システムによれば、製造コストを低減できると共に、システム全体の効率を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガス化複合発電システムの構成概略図である。
【図2a】軸流圧縮機の特性線図である。
【図2b】軸流圧縮機の特性線図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るガス化複合発電システムの構成概略図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るガス化複合発電システムの構成概略図である。
【図5】従来のガス化複合発電システムの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、図1を参照して、本発明の第1の実施形態に係るガス化複合発電システムについて説明する。
図1のガス化複合発電システム1は、空気圧縮機10(第1の圧縮機)と、燃焼器12と、高圧タービン14(第1のタービン)と、低圧タービン16(第2のタービン)と、発電機26と、ガス化剤圧縮機18(第2の圧縮機)、ガス化装置20とからなる。空気圧縮機10と、高圧タービン14と、ガス化剤圧縮機18とは同一回転軸に結合されており、ガスジェネレータ部40を構成している。また、低圧タービン16と発電機26とは同一回転軸に結合されており、パワータービン部42を構成している。ここで、高圧タービン14と低圧タービン16とは軸系としては結合されておらず、異なる回転数で回転可能となるように構成されている。すなわち、ガスジェネレータ部40とパワータービン部42とは、それぞれ異なる回転数で回転可能となるように構成されている。
【0023】
空気圧縮機10は、大気から取り入れた空気を圧縮するように構成されている。ガス化剤圧縮機18は、空気圧縮機10の出口空気の一部が抽気され、抽気空気経路36を介して導かれた空気(抽気空気)をガス化剤(酸化剤)として昇圧するように構成されている。ガス化装置は、燃料源と、ガス化剤圧縮機18で昇圧され、ガス化剤供給経路38を介して導かれたガス化剤とによってガス化燃料が生成されるように構成されている。生成されたガス化燃料は、ガス化燃料供給経路34を介して燃焼器12に供給されるように構成されている。燃焼器12は、空気圧縮機10で圧縮された空気に、ガス化装置20から供給されたガス化燃料を噴射して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成するように構成されている。高圧タービン14は、燃焼器12で生成された高温高圧の燃焼ガスが導かれて回転駆動されると共に、同一回転軸に結合された空気圧縮機10と、ガス化剤圧縮機18とを回転駆動するように構成されている。低圧タービン16は、高圧タービン14の出口ガスが導かれて回転駆動されると共に、同一回転軸に結合された発電機26を回転駆動するように構成されている。発電機26は低圧タービン16によって回転駆動され、発電するように構成されている。
なお、ここでは排熱回収ボイラや蒸気タービンの構成(ボトミング系統)については記載と説明を省略する。
【0024】
ここで、ガス化装置の燃料源としては、石炭や残渣油などが挙げられる。また、燃料源のガス化に空気を用いていることから第1の実施形態は空気吹き式ガス化装置に分類される。
また、空気圧縮機10で圧縮される空気は、燃焼器12における燃焼用空気と、ガス化装置20におけるガス化剤として、いずれも酸化剤として作用することがわかる。
【0025】
次に、本発明の第1実施形態に係るガス化複合発電システムの運転方法について説明する。
ガス化複合発電システム1を図示しない起動装置を用いて起動する。ガス化剤圧縮機18は空気圧縮機10と共に高圧タービン14によって回転駆動され、空気圧縮機10の出口空気から抽気された空気はガス化剤圧縮機18で昇圧されてガス化剤としてガス化装置20に供給される。ガス化装置20では燃料源とガス化剤によってガス化燃料が生成される。空気圧縮機10で圧縮された空気とガス化燃料ガスとを混合し、燃焼器12で燃焼させることによって高温高圧の燃焼ガスを発生させる。発生した高温高圧の燃焼ガスのエネルギーによって高圧タービン14と、その後流側の低圧タービン16とが回転駆動される。そして低圧タービン16は発電機26を駆動し、発電を行う。
【0026】
通常、発電機は一定の周波数(同期周波数、たとえば60Hz)で送電する必要性から、ガス化複合発電システム1の作動条件によらず、パワータービン部42は送電系と同期する一定の回転数(同期回転数、例えば3600min−1)で運転される。
一方、電力需要が少なく、ガス化複合発電システム1を定格出力よりも低い出力(部分負荷)で運転する場合、必要なガス化剤流量と燃焼用空気流量、すなわちガス化剤圧縮機18と空気圧縮機10の吸込流量は定格出力の場合よりも少なくなる。そこで、部分負荷では、ガスジェネレータ部40の回転数を定格回転数から低下させて運転する。これに対し、パワータービン部42は同期回転数に維持される。なお、ここでガスジェネレータ部40の定格回転数とは、ガス化複合発電システム1が定格出力を発生する時の回転数を意味するが、この回転数は前記同期回転数と必ずしも同一に設定する必要はなく、適宜設計条件によって選択することが可能である。
【0027】
次に、電力需要が多くなり、ガス化複合発電システム1を定格出力で運転する場合、必要なガス化剤流量と燃焼用空気流量が多くなることから、ガスジェネレータ部40の回転数を上昇させ、定格回転数に到達させる。これにより、パワータービン部42に流入する燃焼ガスの圧力と温度が上昇し、パワータービン部42の出力が増加することから、ガス化複合発電システム1を定格出力で運転することができる。
【0028】
ここで、図2aと図2bに可変回転数の圧縮機の特性線図を示す。
図2aにおいて、横軸は圧縮機の吸込流量、縦軸は圧縮機の断熱効率を示す。一方、図2bにおいて、横軸は同じく圧縮機の吸込流量、縦軸は圧縮機の吸込圧力と吐出圧力との比(圧力比)を示す。
【0029】
図2aと図2bから解るように、定格回転数である100%回転数から85%回転数まで低下させると、吸込流量は定格流量の45%程度まで減少させることが出来るが、断熱効率は定格時から殆んど低下していないことが解る。従って、ガスジェネレータ部40を可変速運転とすることにより、ガス化剤圧縮機18および空気圧縮機10の効率を損なうことなく、ガス化複合発電システム1の圧力比を低下させることができ、部分負荷運転が可能となる。
【0030】
また、図1の構成では、ガスジェネレータ部40において、空気圧縮機10は機械的な回転制御装置を介することなく高圧タービン14に一体的に結合されているので、機械的な動力の損失もなく、公知のガスタービンと同一の構造を踏襲することが出来ることから構造が簡単であり、ガス化複合発電システム1の信頼性を確保できる。
【0031】
また、図1に示すように、ガス化剤圧縮機18の吐出ガスをガス化剤圧縮機18の入口に還流させるバイパス経路30を設ける構成としても良い。これにより、ガス化剤の流量調整は、ガス化剤圧縮機18の回転数だけでなく、ガス化剤のバイパス流量調整によっても行うことができるので、ガス化装置20に導かれるガス化剤流量の制御性が向上する。
【0032】
[第2の実施形態]
次に、図3を参照して、本発明の第2の実施形態に係るガス化複合発電システムについて説明する。ただし、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明は省略する。
図3に示す第2の実施形態のガス化複合発電システム3において、第1の実施形態のガス化複合発電システム1と異なる点は、ガス化剤圧縮機18が増速機22を介して空気圧縮機10と結合されている点である。なお、増速機22は公知のものを用いることができ、特に限定されるものではない。
【0033】
体積流量ベースで空気圧縮機10の吸込流量よりもガス化剤圧縮機18の吸込流量の方が小さい場合、圧縮機の体格としては、空気圧縮機10よりもガス化剤圧縮機18の方が小さくなる。ここで、空気圧縮機10の効率が最適となるように設計した場合、ガス化剤圧縮機18の回転数が空気圧縮機10の回転数と同一であれば、体格の小さいガス化剤圧縮機18の図示しない回転翼の周速(回転翼の半径と回転角速度の積)が小さくなってしまい、本来期待できる効率よりも低い効率となってしまう。
【0034】
言い換えれば、回転翼の半径が小さいガス化剤圧縮機18の回転翼の周速を確保するためには、空気圧縮機10よりもガス化剤圧縮機18の回転数を大きくする必要がある。このため、本実施形態では、増速機22を介して、ガス化剤圧縮機18を空気圧縮機10よりも大きく、最適な効率を達成する回転数で回転駆動することを可能としている。
【0035】
一方、体積流量ベースで空気圧縮機10よりもガス化剤圧縮機18の吸込流量の方が大きい場合も考えられる。この場合は、圧縮機の体格としては、空気圧縮機10よりもガス化剤圧縮機18の方が大きくなる。このため、各々の圧縮機を最適な回転数で設計して運転する場合は、ガス化剤圧縮機18は減速機を介して空気圧縮機10と結合する構成とし、ガス化剤圧縮機18に対し、空気圧縮機10の回転数が大きくなるようにすれば良い。
【0036】
上記の構成とすることにより、いずれの場合においても、空気圧縮機10とガス化剤圧縮機18とをそれぞれ最適な効率が得られるように設計することが可能となり、ガス化複合発電システム3の効率を最適化することができる。
【0037】
[第3の実施形態]
次に、図4を参照して、本発明の第3の実施形態に係るガス化複合発電システムについて説明する。ただし、第1の実施形態と同一の構成については同一の符号を用い、その説明は省略する。
図4に示す第3の実施形態のガス化複合発電システム4において、第1の実施形態のガス化複合発電システム1とはガス化剤の供給源が異なっている。すなわち、空気圧縮機10の抽気空気をガス化剤として用いるのではなく、他のプロセス46から導入された流体をガス化剤圧縮機24で昇圧し、ガス化剤(酸化剤)として用いる構成となっている。
【0038】
ここで、ガス化複合発電システムにおけるガス化装置としては、第1の実施形態で説明した、ガス化装置に供給されるガス化剤の酸素濃度が21vol%程度である空気吹き式のものの他に、より酸素濃度の高い酸素吹き式(酸素濃度95vol%)や改良空気吹き式(酸素濃度21〜40vol%)のものも計画されている。これらのガス化装置を備えるガス化複合発電システムにおいては、ガスタービンの圧縮機の抽気空気をガス化剤として用いるのではなく、空気を酸素と窒素とに分離するための空気分離装置などに挙げられるような他のプロセス46において生成された、所定の酸素濃度に調整された流体がガス化剤として使用される。
【0039】
このため、図4に示す第3の実施形態では、酸素吹き式または改良空気吹き式ガス化装置を備えるガス化複合発電システムにおいて、別のプロセスにおいて予め生成した流体をガス化剤としてガス化装置に供給するために圧縮するガス化剤圧縮機24を空気圧縮機10に動力伝達可能に結合して駆動する構成とした。ここで、第1の実施形態と同様に、空気圧縮機10と、高圧タービン14と、ガス化剤圧縮機24とは同一回転軸に結合されており、ガスジェネレータ部40を構成している。
【0040】
図4の構成においても、ガス化複合発電システム4の動力調整はガス化燃料の流量調整によって行われる。従って、空気吹き式ガス化装置の場合と同様に、ガス化燃料の流量は燃料のガス化に使用されるガス化剤の流量に対応する。
【0041】
電力需要が少なく、ガス化複合発電システム4を定格出力よりも低い出力(部分負荷)で運転する場合、必要なガス化剤流量と燃焼用空気流量、すなわちガス化剤圧縮機24と空気圧縮機10の吸込流量が少ないことから、ガスジェネレータ部40の回転数を定格回転数から低下させて運転する。これに対し、パワータービン部42は同期回転数に維持される。なお、ここでガスジェネレータ部40の定格回転数とは、ガス化複合発電システム4が定格出力を発生する時の回転数を意味するが、この回転数は前記同期回転数と必ずしも同一に設定する必要はなく、適宜設計条件によって選択することが可能である。
【0042】
次に、電力需要が多くなり、ガス化複合発電システム4を定格出力で運転する場合、必要なガス化剤流量と燃焼用空気流量が多くなることから、ガスジェネレータ部40の回転数を上昇させ、定格回転数に到達させる。これにより、パワータービン部42に流入する燃焼ガスの圧力と温度が上昇し、パワータービン部42の出力が増加することから、ガス化複合発電システム4を定格出力で運転することができる。
【0043】
上記の構成とすることにより、ガスジェネレータ部40を可変速運転とすることができるため、ガス化剤圧縮機24および空気圧縮機10の効率を損なうことなく、ガス化複合発電システム4の圧力比を低下させることができ、部分負荷運転が可能となる。
【0044】
また、ガス化剤圧縮機24の吐出ガスをガス化剤圧縮機24の入口に還流させるバイパス経路30を設ける構成としても良い。このような構成とすることにより、ガス化装置20に導かれるガス化剤の制御性が向上する。
【0045】
また、ガス化剤圧縮機24を増速機または減速機を介して空気圧縮機10と結合して駆動される構成としても良い(図示せず)。このような構成とすることにより、ガス化剤圧縮機24と空気圧縮機10の体格が異なる場合であっても、各々を理想的な回転数で設計することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で各種変更・変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1,3,4 ガス化複合発電システム
10 空気圧縮機(第1の圧縮機)
12 燃焼器
14 高圧タービン(第1のタービン)
16 低圧タービン(第2のタービン)
18,24 ガス化剤圧縮機(第2の圧縮機)
20 ガス化装置
22 増速機
26 発電機
30 バイパス経路
34 ガス化燃料供給経路
36 抽気空気経路
38 ガス化剤供給経路
40 ガスジェネレータ部
42 パワータービン部
46 他のプロセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス化燃料を生成するガス化装置と、
酸化剤を圧縮する第1の圧縮機と、
第1の圧縮機で圧縮された酸化剤の少なくとも一部または外部から供給された酸化剤を圧縮し、ガス化剤として前記ガス化装置へ供給する第2の圧縮機と、
前記第1の圧縮機で圧縮された酸化剤と前記ガス化装置から供給される前記ガス化燃料とを混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器に後置接続され、前記高温高圧の燃焼ガスで順次駆動される第1と第2のタービンと、
前記第2のタービンに動力伝達可能に結合される発電機と、を有し、
前記第1と第2の圧縮機と前記第1のタービンは動力伝達可能に連結され、前記第1と第2の圧縮機は前記第1のタービンによって回転駆動され、
前記第1のタービンの後流側に前記第2のタービンが配置されており、前記第1と第2のタービンは軸系としては結合されておらず、それぞれ異なる回転数で回転可能であること、
を特徴とするガス化複合発電システム。
【請求項2】
請求項1記載のガス化複合発電システムにおいて、
前記第1の圧縮機と前記第2の圧縮機とは増速機または減速機を介して結合されていること
を特徴とするガス化複合発電システム。
【請求項3】
請求項1または2記載のガス化複合発電システムにおいて、第2の圧縮機で圧縮された酸化剤を第2の圧縮機の入口側に還流させるバイパス流路を有すること
を特徴とするガス化複合発電システム。
【請求項4】
ガス化複合発電システムを運転する方法であって、
ガス化燃料を生成するガス化装置と、
酸化剤を圧縮する第1の圧縮機と、
第1の圧縮機で圧縮された酸化剤の少なくとも一部または外部から供給された酸化剤を圧縮し、ガス化剤として前記ガス化装置へ供給する第2の圧縮機と、
前記第1の圧縮機で圧縮された酸化剤と前記ガス化装置から供給される前記ガス化燃料とを混合して燃焼させ、高温高圧の燃焼ガスを生成する燃焼器と、
前記燃焼器に後置接続され、前記高温高圧の燃焼ガスで順次駆動される第1と第2のタービンと、
前記第2のタービンに動力伝達可能に結合される発電機と、を有し、
前記第1と第2の圧縮機と前記第1のタービンは動力伝達可能に連結され、前記第1と第2の圧縮機は前記第1のタービンによって回転駆動されるガスジェネレータ部を構成し、
前記第1のタービンの後流側に第2のタービンが配置されており、第1と第2のタービンは軸系としては結合されておらず、それぞれ異なる回転数で回転可能であり、第2のタービンは動力伝達可能に前記発電機に結合されてパワータービン部を構成しているガス化複合発電システムにおいて、
ガス化複合発電システムの部分負荷運転時は定格運転時の回転数よりも低い回転数でガスジェネレータ部を運転し、前記第1と第2の圧縮機出口の流量ないし圧力を定格運転時よりも低下させること、
を特徴とするガス化複合発電システムの運転方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−202514(P2011−202514A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67883(P2010−67883)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)