説明

ガス器具の接続部構造

【課題】たとえ狭い空間内においても、ビルトインタイプのガス器具を建屋側のガス配管に容易に接続することが可能なガス器具の接続部構造。
【解決手段】ビルトインタイプのガス器具1が、ガス栓2を介して建屋B側のガス配管Pに接続されているガス器具の接続部構造で、ガス栓2とワンタッチ式カプラ3の一方3aがガス配管P側に接続され、ワンタッチ式カプラ3の他方3bがガス器具1側に接続され、そのガス器具1側に接続された器具側カプラ3bとガス配管P側に接続された建屋側カプラ3aとが接続されて、ガス器具1が建屋B側のガス配管Pに接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルトインタイプのガス器具が、ガス栓を介して建屋側のガス配管に接続されているガス器具の接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルトインタイプのガス器具は、従来、ガス栓が一体的に組み込まれた専用のガスコックを介して建屋側のガス配管に接続されていた。
その専用のガスコックとしては、建屋側のガス配管であるフレキシブル管に接続される配管側接続部と、ガス器具側に接続される連結部材を有し、その連結部材がガス器具側の雄ねじ部に螺合する雌ねじ部を備え、かつ、雌ねじ部を回転操作するために、その外周にスパナなどの工具と係合可能な略六角形の工具掛け部を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第2904342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、ビルトインタイプのガス器具を建屋側のガス配管に接続する場合、まず、ビルトイン用の台所用家具を設置し、さらに、台所用家具にガス器具を組み込んだ後、そのガス器具を建屋側のガス配管に接続することになり、そのため、ガス器具とガス配管との接続は、例えば、台所用家具の内部空間など、比較的狭い空間内で行うことになる。
その場合、上記特許文献に開示のガスコックを使用すると、例えば、ガス器具側の雄ねじ部と連結部材側の雌ねじ部を螺合させる際、連結部材外周の工具掛け部にスパナなどの工具を係合して回転操作する必要があり、それを狭い空間内で行わねばならないので、接続作業が非常に困難なものとなる欠点があった。
【0005】
本発明は、このような従来の欠点に着目したもので、その目的は、たとえ狭い空間内においても、ビルトインタイプのガス器具を建屋側のガス配管に容易に接続することが可能なガス器具の接続部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、ビルトインタイプのガス器具が、ガス栓を介して建屋側のガス配管に接続されているガス器具の接続部構造であって、前記ガス栓とワンタッチ式カプラの一方が前記ガス配管側に接続され、ワンタッチ式カプラの他方が前記ガス器具側に接続され、そのガス器具側に接続された器具側カプラとガス配管側に接続された建屋側カプラとが接続されて、前記ガス器具が建屋側のガス配管に接続されているところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、ガス栓とワンタッチ式カプラの一方がガス配管側に接続され、ワンタッチ式カプラの他方がビルトインタイプのガス器具側に接続され、そのガス器具側に接続された器具側カプラとガス配管側に接続された建屋側カプラとが接続されて、ガス器具が建屋側のガス配管に接続されているので、ビルトインタイプのガス器具と建屋側のガス配管とを接続する際、ワンタッチ式カプラを接続するだけで、つまり、器具側カプラと建屋側カプラとをワンタッチ接続するだけで済む。
したがって、たとえ台所用家具の内部空間のような狭い空間内においても、建屋側のガス配管に対してビルトインタイプのガス器具を容易、確実に接続することができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、前記ガス配管からのガスの流出を阻止する安全弁が前記建屋側カプラに設けられているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、ガス配管からのガスの流出を阻止する安全弁が建屋側カプラに設けられているので、例えば、何らかの理由によって、器具側カプラと建屋側カプラの接続が不測に解除されても、建屋側カプラに設けられた安全弁によりガス配管からのガスの流出は確実に阻止される。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、前記ガス配管からのガスの流出を阻止する過流出防止弁が前記ガス栓に設けられているところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、ガス配管からのガスの流出を阻止する過流出防止弁がガス栓に設けられているので、この場合にも、何らかの理由によって、器具側カプラと建屋側カプラの接続が不測に解除されても、ガス栓に設けられた過流出防止弁によりガス配管からのガスの流出は確実に阻止される。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続を解除する解除操作部と、その解除操作部による解除操作を規制するストッパとが、前記ワンタッチ式カプラに設けられているところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、建屋側カプラと器具側カプラとの接続を解除する解除操作部がワンタッチ式カプラに設けられているので、必要な場合には、解除操作部を操作して建屋側カプラと器具側カプラとの接続を解除することができる。
そして、その解除操作部による解除操作を規制するストッパもワンタッチ式カプラに設けられているので、必要な場合に建屋側カプラと器具側カプラとの接続を解除することができるにもかかわらず、解除操作部の解除操作を規制するストッパによって、建屋側カプラと器具側カプラとの接続が誤って不測に解除されることが防止される。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記器具側カプラが前記ガス器具の背面に配置されているところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、器具側カプラがガス器具の背面に配置されているので、その器具側カプラおよび器具側カプラに接続される建屋側カプラなどをガス器具の背面に配置することができ、したがって、ガス器具の下方、つまり、ガス器具がビルトインされる台所用家具などの内部空間を自由に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明によるガス器具の接続部構造の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明が対象とするガス器具は、いわゆるビルトインタイプのガス器具で、図1に示すように、システムキッチンで使用される台所用家具Fなどに一体的に組み込まれて使用される。図示のガス器具1はガスコンロで、そのガスコンロ1が、建屋B側に配設されたガス配管Pにガス栓2とワンタッチ式カプラ3を介して接続されている。
ワンタッチ式カプラ3は、図2の(a)、(b)に詳しく示すように、建屋B側のガス配管Pに接続される一方のカプラ、つまり、建屋側カプラ3aと、ガスコンロ1側に接続される他方のカプラ、つまり、器具側カプラ3bを備え、建屋側カプラ3aとガス栓2が一体化された構成とされている。
【0017】
ガス栓2は、開閉用操作部4とそれに連動する弁体5を備え、さらに、ガス配管Pが接続される入口開口6と出口通路7を備え、開閉用操作部4の回動操作に伴って弁体5が回動し、ガス配管Pからのガスが出口通路7へ通流する開弁状態とガスの通流を停止する閉弁状態とに切り換え可能に構成されている。
そのガス栓2と一体化された建屋側カプラ3aは、いわゆる雌型のカプラで、器具側カプラ3bが挿入される接続用開口8を備え、安全弁用スプリング9によって閉弁方向に付勢された安全弁10が内装されている。その安全弁10の外周部には、パッキンホルダ用スプリング11により接続用開口8側に付勢されたパッキンホルダ12が外嵌され、さらに、その外周部には、スリーブスプリング13により接続用開口8側に付勢された解除操作部としてのスリーブ14が外嵌されている。
【0018】
解除操作部としてのスリーブ14は、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bが接続された状態において、両カプラ3a,3bの接続を解除するためのもので、建屋側カプラ3aの軸心方向に沿って移動自在に構成され、図2の(a)に示すように、両カプラ3a,3bが分離された状態でボール15に係合している。
他方、器具側カプラ3bは、いわゆる雄型のカプラで、ガスコンロ1に接続される出口開口16を備え、さらに、安全弁10に当接して安全弁10を開弁操作する安全弁用段部17、パッキンホルダ12に当接してパッキンホルダ12を押し込み操作するパッキンホルダ用段部18、ボール15が嵌入するボール用溝19などを備えている。
【0019】
建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bとの接続は、いわゆるワンタッチ式で、建屋側カプラ3aの接続用開口8に器具側カプラ3bを挿入するだけで自動的に接続される。
すなわち、建屋側カプラ3aの接続用開口8に器具側カプラ3bを挿入すると、図2の(b)に示すように、器具側カプラ3bの安全弁用段部17が、安全弁用スプリング9の付勢力に抗して安全弁10を押し込み操作して開弁し、同時に、パッキンホルダ用段部18が、パッキンホルダ用スプリング11の付勢力に抗してパッキンホルダ12を押し込み操作する。
パッキンホルダ12の押し込みに伴って、ボール15に対するスリーブ14の係合が外れて、スリーブ14がスリーブスプリング13の付勢力によりストップリング20に当接するとともに、ボール15が器具側カプラ3bのボール用溝19に嵌入して、両カプラ3a,3bが接続され、かつ、その接続状態が維持される。
【0020】
つぎに、このワンタッチ式カプラ3を使用して、建屋B側に配設されたガス配管Pにビルトインタイプのガスコンロ1を接続する手順について説明する。ただし、以下に説明する手順は単なる一例であるため、実際の実施に際しては、手順の一部が相前後することもあり得る。
まず、ガス工事の専門家が、図3の(a)に示すように、建屋側カプラ3aと一体化されたガス栓2の入口開口6に建屋Bの壁面や床面から延出している可撓性のガス配管Pを接続し、かつ、必要なガス停止処置を行ってガス工事を終了する。
その後、図3の(b)に示すように、例えば、大工の専門家が台所用家具Fを設置し、さらに、台所用家具Fにガスコンロ1を組み込む。図示の例では、ガスコンロ1の下面に器具側カプラ3bが配置されており、この器具側カプラ3bは、ガスコンロ1の設置時に予め取り付けられている。
【0021】
したがって、台所用家具Fにガスコンロ1を組み込んだ後においては、図3の(c)に示すように、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bを接続すればよく、必ずしもガス工事の専門家が接続作業を行う必要はない。
そして、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bを接続した状態では、スリーブ14をガス栓2側へ押し込み操作してボール15に対する係合を解除しない限り、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bの接続が解除されることはないので、両カプラ3a,3bが不測に外れる可能性は少ない。その上、図2の(b)において仮想性で示すように、スリーブ14の押し込み操作を規制する環状のストッパ21が、建屋側カプラ3aに外嵌されているので、両カプラ3a,3bが不測に外れる可能性は更に少なくなる。また、たとえ両カプラ3a,3bが不測に外れたとしても、安全弁用スプリング9の付勢力によって安全弁10が自動的に閉弁され、ガス配管Pからのガスの流出は阻止されることになる。
【0022】
〔別実施形態〕
つぎに、別の実施形態について説明するが、先の実施形態で説明した構成部品や同じ作用を有する構成部品については、重複説明を避けるため、同じ符号を付すことにより説明を省略する。
【0023】
(1)先の実施形態では、ガス栓2がワンタッチ式カプラ3の建屋側カプラ3aと一体化された構成のものを示したが、図4に示すように、ガス栓2と建屋側カプラ3aとが別体に構成されたものを使用して実施することもできる。
その場合には、建屋Bの壁面内に配管されたガス配管Pにガス栓2の入口開口6を接続し、ガス栓2の出口通路7に可撓性のガス配管Pを接続し、その可撓性のガス配管Pの先端にワンタッチ式カプラ3の建屋側カプラ3aを接続することになる。
【0024】
(2)これまでの実施形態では、ガスコンロ1の下面に器具側カプラ3bを配置した例を示したが、図5に示すように、ガスコンロ1の背面に器具側カプラ3bを配置して実施することもできる。
その場合には、建屋Bの壁面内に配管されたガス配管Pにガス栓2と建屋側カプラ3aとが一体化されたものを使用し、かつ、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bが同じ高さレベルになるように設定することにより、図5の(a)に示すように、ガスコンロ1を建屋Bの壁面側に押し込むことによって、図5の(b)に示すように、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bをワンタッチで接続することができるので、両カプラ3a,3bの接続作業を簡単に行うことができる。
もちろん、ガスコンロ1の背面に器具側カプラ3bを配置した場合においても、図3および図4を用いて説明した接続方法が適用可能であることはいうまでもない。
【0025】
(3)これまでの実施形態では、建屋側カプラ3aに安全弁10を内装して、建屋側カプラ3aと器具側カプラ3bとの接続が解除された際に、ガス配管Pからのガスの流出を阻止するように構成した例を示したが、安全弁10に代えて、ガス栓2に従来公知の過流出防止弁を設けて、ガス配管Pからのガスの流出を阻止するように構成することもできる。
また、ガス器具1の一例としてガスコンロを例示して説明したが、ガス器具1としては、特にガスコンロに限るものではなく、ガスコンロ以外の各種のガス器具にも適用可能であり、さらに、都市ガス用のガス器具はもとより、プロパン用のガス器具にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】ガス器具の接続部構造を示す一部切欠き側面図
【図2】ガス栓とワンタッチ式カプラを示す断面図
【図3】ガス器具の接続手順を示す説明図
【図4】別の実施形態によるガス器具の接続部構造を示す一部切欠き側面図
【図5】別の実施形態によるガス器具の接続部構造を示す一部切欠き側面図
【符号の説明】
【0027】
1 ガス器具
2 ガス栓
3 ワンタッチ式カプラ
3a 建屋側カプラ
3b 器具側カプラ
10 安全弁
14 解除操作部
21 ストッパ
B 建屋
P ガス配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルトインタイプのガス器具が、ガス栓を介して建屋側のガス配管に接続されているガス器具の接続部構造であって、
前記ガス栓とワンタッチ式カプラの一方が前記ガス配管側に接続され、ワンタッチ式カプラの他方が前記ガス器具側に接続され、そのガス器具側に接続された器具側カプラとガス配管側に接続された建屋側カプラとが接続されて、前記ガス器具が建屋側のガス配管に接続されているガス器具の接続部構造。
【請求項2】
前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、前記ガス配管からのガスの流出を阻止する安全弁が前記建屋側カプラに設けられている請求項1に記載のガス器具の接続部構造。
【請求項3】
前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続が解除された際に、前記ガス配管からのガスの流出を阻止する過流出防止弁が前記ガス栓に設けられている請求項1に記載のガス器具の接続部構造。
【請求項4】
前記建屋側カプラと器具側カプラとの接続を解除する解除操作部と、その解除操作部による解除操作を規制するストッパとが、前記ワンタッチ式カプラに設けられている請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス器具の接続部構造。
【請求項5】
前記器具側カプラが前記ガス器具の背面に配置されている請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス器具の接続部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−45605(P2008−45605A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219912(P2006−219912)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【Fターム(参考)】