説明

ガス微小漏洩検出方法、及びガス微小漏洩検出装置

【課題】 ガス供給路の周辺環境(特に、温度環境)をより考慮して、漏洩判定の精度を向上することができるガス微小漏洩検出方法、及びガス微小漏洩検出装置を提供する。
【解決手段】 ガス漏洩検出装置11は、流路内のガス圧を検出する圧力センサ20、ガス温度を検出する温度センサ21、及び22演算部を備え、該演算部22は、例えば24時間毎にガス圧の上昇値Δpが所定の圧力閾値以上にならなかった単位期間を積算して積算期間Tを取得する期間積算部22c、及び積算期間Tが所定の期間閾値に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定する漏洩判定部22d、を有し、該期間積算部22cは、ガス温度の上昇値Δtが温度閾値以上にならなかった単位期間については積算期間Tに含めないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給源からのガス流路におけるガスの微小漏洩を検出するための検出方法、及び検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガスボンベに収容されたLPガス(液化プロパンガス等)などの高圧ガスを、配管を通じて調理用コンロ等のガス器具に供給している。また、このようなガス供給システムにおいて、微小なガスの漏洩を検出する技術が、例えば特許文献1に開示されている。それによると、ガス供給路に圧力検知手段を設け、予め設定した期間内における検知結果が、所定の値以下であった場合に、ガスが漏洩していると判定こととしている。
【0003】
即ち、ボイル・シャルルの法則からも分かるように、ガス供給路内のガス圧は、特にガスが使用されておらず閉栓されている状況においては、周辺環境の温度変化に応じて変化する。従って、予め設定した期間(例えば、1週間)において、ガス圧の変動が非常に少なかった場合には、ガス供給路の何れかで漏洩が生じている可能性があると推測できる。簡単に言えば、ガス供給路内のガスを長期間継続して観測すれば、温度変化に伴う圧力変化が生じるはずであり、この期間中に大きな圧力変化がなければ、圧力を逃がすガス漏れが生じていると推測できる。特許文献1に係る技術思想は、このような原理に基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−93739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ガス供給路が、地中深くに埋設されている場合のように、その設置場所がそもそも温度変化の乏しい環境である場合もある。この場合、ガスの温度変化が少ないために、長期的に見てもガスの圧力変化も小さくなる。そのため、特許文献1の技術によれば、ガスの漏洩が生じていなくても、長期的なガス圧の変動が小さいことを条件にしてガスの漏洩があると誤判定してしまう。その結果、ガス供給路に対する必要のない点検及び補修のために、メンテナンス作業員が現場に出動するという事態が発生し、好ましくない。
【0006】
そこで本発明は、上述したような事情に鑑みて、ガス供給路の周辺環境(特に、温度環境)をより考慮して、漏洩判定の精度を向上することができるガス微小漏洩検出方法、及びガス微小漏洩検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガス微小漏洩検出方法は、所定の単位期間毎に、ガス流路内のガス圧の上昇値が、所定の圧力閾値以上になることがあったか否かを判定するステップ、前記単位期間毎に、前記ガス流路内のガス温度の上昇値が、所定の温度閾値以上になることがあったか否かを判定するステップ、ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上にならなかった単位期間を積算して積算期間を取得するステップ、ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上になった場合に、前記積算期間をゼロにリセットするステップ、ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間については、前記積算期間に加えないこととするステップ、及び前記積算期間が所定の期間閾値に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定するステップ、を備えている。
【0008】
このような構成とすることにより、ガスの漏洩検出の精度を向上することができる。即ち、ガス圧の変化が小さい単位期間(例えば、24時間)があったとしても、その間のガス温度があまり変化していなければ、ガス圧の変化が小さい要因はガス温度の変化が小さかったからと推測される。従って、ガス温度が所定の閾値以上にならなかった単位期間については積算期間に加えないこととすることにより、ガスの漏洩以外の要因によってガス圧が変化しないこととなった単位期間を除外して積算期間を取得することができるため、積算期間に基づくガスの漏洩検出の精度を向上させることができる。
【0009】
また、本発明に係るガス微小漏洩検出装置は、ガス流路内のガス圧を検出する圧力センサ、前記ガス流路内のガス温度を検出する温度センサ、及び前記圧力センサ及び前記温度センサからの入力情報に基づいて所定の演算を行う演算部、を備え、該演算部は、所定の単位期間毎に、前記圧力センサにより検出したガス圧の上昇値が所定の圧力閾値以上になったか否かを判定する圧力判定部、前記単位時間毎に、前記温度センサにより検出したガス温度の上昇値が所定の温度閾値以上になったか否かを判定する温度判定部、ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上にならなかった単位期間を積算して積算期間を取得する期間積算部、及び前記積算期間が所定の期間閾値に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定する漏洩判定部、を有し、該期間積算部は、ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間については前記積算期間に含めないように構成されている。
【0010】
このようなガス微小漏洩検出装置の構成とすることにより、上述したガス微小漏洩検出方法を具体的に実現することができ、上述したような作用効果を奏することができる。
【0011】
また、前記演算部は、積算期間が前記期間閾値に達するまでに、ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間の累積期間が、前記期間閾値に対して所定の割合以上であった場合は、前記単位期間及び/又は前記期間閾値をより長い期間に再設定するよう構成されていてもよい。
【0012】
このような構成とすることにより、ガス温度の上昇値が所定の温度閾値以上にならなかった(即ち、温度変化が比較的小さかった)単位期間が比較的多かった場合には、単位期間及び/又は期間閾値をより長く再設定することにより、ガス漏洩が存在するとの判定がされにくいように、その環境により適した条件設定に改めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガス供給路の周辺環境(特に、温度環境)をより考慮して、漏洩判定の精度を向上することができるガス微小漏洩検出方法、及びガス微小漏洩検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施の形態に係るガス漏洩検出装置を適用可能なガス供給システムの一例を示す模式図である。
【図2】ガス漏洩検出装置を含むガス測定装置の構成を示すブロック図である。
【図3】ガス漏洩検出装置によるガスの微小漏洩検出動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係るガス漏洩検出方法及びガス漏洩検出装置について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態に係るガス漏洩検出方法及び装置を適用可能な、ガス供給システムの一例を示す模式図である。この図1に示すように、本実施の形態に係るガス供給システムでは、LPガス等を収容するガスボンベ1のガス排出口に、圧力調整器2を介し、ガス流路を形成するガス管3の上流端が接続されている。ガス管3の途中にはガス測定装置4が取り付けられており、ガス管3の下流端には、例えばガスコンロ等のガス器具6がコック5を介して接続されるようになっている。
【0016】
図2は、ガス測定装置4の構成を示すブロック図である。図2に示すように、本実施の形態に係るガス測定装置4は、流量計測装置10とガス漏洩検出装置11とを備えている。流量計測装置10は、公知のガス流量計測装置を採用することができ、例えば、超音波振動子から成る送受信器、及び水晶振動子などから成る発振回路を備えるガス計測装置を使用することができる。
【0017】
一方、ガス漏洩検出装置11は、ガス管3からのガスの微小漏洩を検出するための装置であって、本実施の形態では、上述した流量計測装置10でのガス流量の検出誤差内に収まる程度の流量が、ガス管3から漏洩しているか否かを検出する目的で構成された装置となっている。具体的には、圧力センサ20、温度センサ21、及びプロセッサ又は論理回路などから成る演算部22を備えており、更に演算部22は、圧力判定部22a、温度判定部22b、期間積算部22c、漏洩判定部22d、再設定部22e、及び、経過時間を計測するタイマ22fとして機能する。
【0018】
上記のうち圧力センサ20は、ガス管3内を通流するガスの圧力を測定する公知の圧力センサを採用することができ、温度センサ21も、ガス管3内を通流するガスの温度を測定する公知の温度センサを採用することができる。なお、温度センサとして、本実施の形態で例示する温度センサ21のようにガス漏洩検出用に別途備えることとしてもよいが、別に設けられた機器からの出力に基づいてガスの温度を測定するように構成してもよい。例えば、上述した流量計測装置10が備える水晶振動子などは、その発振周波数が所定の温度特性を有することから、発振周波数と温度との関係を予め取得しておくことにより、発振周波数からガスの温度を取得することができる。このように、専用の温度センサを備えることなく、流量計測装置10の水晶振動子の出力(発振周波数)から、ガスの温度を取得するようにしてもよい。
【0019】
次に、演算部22の構成(機能)について詳述すると、圧力判定部22aは、所定の単位期間毎(例えば、24時間毎)に、圧力センサ20により検出したガス圧のその期間中の上昇値Δpが、所定の圧力閾値Δp1(例えば、20パスカル)以上になったか否かを判定する。温度判定部22bは、単位時間毎(例えば、24時間毎)に、温度センサ21により検出したガス温度の上昇値Δtが所定の温度閾値Δt1(例えば、5度)以上になったか否かを判定する。期間積算部22cは、ガス圧の上昇値Δpが圧力閾値Δp1以上にならなかった単位期間を積算して積算期間T(例えば、30日間)を取得する。
【0020】
漏洩判定部22dは、積算期間Tが所定の期間閾値T1に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定する。そして、再設定部22eは、積算期間Tが期間閾値T1に達するまでに、ガス温度の上昇値Δtが温度閾値Δt1以上にならなかった単位期間の累積期間が、期間閾値T1に対して所定の割合以上(例えば、半分の15日以上)であった場合は、単位期間及び/又は期間閾値T1をより長い期間に再設定する。例えば、単位期間を24時間から36時間や48時間などに再設定してもよいし、期間閾値T1を30日間から45日間や60日間などに再設定してもよい。
【0021】
次に、このようなガス漏洩検出装置11によるガスの微小漏洩検出動作について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。なお、以下では説明の便宜上、上述した単位期間を24時間、期間閾値T1を30日間にそれぞれ設定した場合について例示する。
【0022】
図3に示すように、まず、タイマ22fによって時間の計測(タイマカウント)が行われ(ステップS1)、単位期間、即ち24時間を経過したか否かが判定される(ステップS2)。24時間を経過したと判定した場合(ステップS2:YES)は、タイマ22fがリセットされ(ステップS3)、続いて、この直近の24時間以内に温度センサ21にて検出されたガスの温度の上昇値Δtが温度閾値Δt1(例えば、5度)以上であったか否かを判定する(ステップS4)。
【0023】
その結果、Δt≧Δt1であった場合(ステップS4:YES)は、積算期間Tに1を加算する一方(ステップS5)、Δt<Δt1であった場合(ステップS4:NO)は、積算期間Tに何ら加算しない。即ち、本実施の形態に係るガス漏洩検出装置11では、ガスの温度が予め設定した所定の閾値Δt1を超えない場合には、その単位期間(24時間)を積算期間Tに加えないこととしている。
【0024】
次に、同じ直近の24時間以内に圧力センサ20にて検出されたガスの圧力の上昇値Δpが圧力閾値Δp1(例えば、20パスカル)以上であったか否かを判定する(ステップS6)。その結果、Δp≧Δp1であった場合(ステップS6:YES)は、積算期間Tをクリアしてゼロにする一方(ステップS7)、Δp<Δp1であった場合(ステップS6:NO)は、積算期間Tをそのままにする。そして次に、積算期間Tが所定の期間閾値T1に達したか否かを判定する(ステップS8)。積算期間Tが期間閾値T1に達した場合、即ち、T=T1になったと判定した場合(ステップS8:YES)は、ガスの微小漏洩が発生していると判定してアラームを発動し(ステップS9)、一連の処理フローを一旦終了する。また、積算期間Tが期間閾値T1に達していない場合(ステップS8:NO)は、アラームを発動することなく、一連の処理フローを終了する。なお、このような図3に示す処理フローは、これを終了する毎に、再びステップS1から繰り返し実行される。
【0025】
なお、上述したガスの温度の上昇値Δt、及びガス圧の上昇値Δpは、コック5が閉じられるなどして、流量計測装置10によってガス管3を通じたガスの流量が計測されない状況下、換言すれば、ガス管3内のガスの流量が、流量計測装置10に設定された計測誤差の範囲内に収まっている状況下において計測されたものを使用する。
【0026】
ところで、上記のようにして積算期間Tが期間閾値T1に達した場合であって、且つ、ガス温度の上昇値Δtが温度閾値Δt1以上にならなかった単位期間の累積期間が、期間閾値T1(30日間)に対して所定の割合以上(例えば、半分の15日以上)であった場合は、本実施の形態に係るガス漏洩検出装置11の演算部22は再設定部22eとして機能する。即ち、このような場合にガス漏洩検出装置11は、単位期間及び/又は期間閾値T1をより長い期間に再設定する。例えば、上述したように、単位期間を24時間から36時間や48時間などに再設定してもよいし、期間閾値T1を30日間から45日間や60日間などに再設定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、ガス供給路の周辺環境(特に、温度環境)をより考慮して、漏洩判定の精度を向上することができるガス微小漏洩検出方法、及びガス微小漏洩検出装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0028】
4 ガス測定装置
10 流量計測装置
11 ガス漏洩検出装置
20 圧力センサ
21 温度センサ
22 演算部
22a 圧力判定部
22b 温度判定部
22c 期間積算部
22d 漏洩判定部
22e 再設定部
22f タイマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の単位期間毎に、ガス流路内のガス圧の上昇値が、所定の圧力閾値以上になることがあったか否かを判定するステップ、
前記単位期間毎に、前記ガス流路内のガス温度の上昇値が、所定の温度閾値以上になることがあったか否かを判定するステップ、
ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上にならなかった単位期間を積算して積算期間を取得するステップ、
ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上になった場合に、前記積算期間をゼロにリセットするステップ、
ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間については、前記積算期間に加えないこととするステップ、及び
前記積算期間が所定の期間閾値に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定するステップ、を備えることを特徴とするガス微小漏洩検出方法。
【請求項2】
ガス流路内のガス圧を検出する圧力センサ、
前記ガス流路内のガス温度を検出する温度センサ、及び
前記圧力センサ及び前記温度センサからの入力情報に基づいて所定の演算を行う演算部、を備え、
該演算部は、
所定の単位期間毎に、前記圧力センサにより検出したガス圧の上昇値が所定の圧力閾値以上になったか否かを判定する圧力判定部、
前記単位時間毎に、前記温度センサにより検出したガス温度の上昇値が所定の温度閾値以上になったか否かを判定する温度判定部、
ガス圧の上昇値が前記圧力閾値以上にならなかった単位期間を積算して積算期間を取得する期間積算部、及び
前記積算期間が所定の期間閾値に達した場合に、ガスの漏洩が発生していると判定する漏洩判定部、を有し、
該期間積算部は、ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間については前記積算期間に含めないように構成されていることを特徴とするガス微小漏洩検出装置。
【請求項3】
前記演算部は、積算期間が前記期間閾値に達するまでに、ガス温度の上昇値が前記温度閾値以上にならなかった単位期間の累積期間が、前記期間閾値に対して所定の割合以上であった場合は、前記単位期間及び/又は前記期間閾値をより長い期間に再設定するよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載のガス微小漏洩検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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