説明

ガス検出装置

【課題】 本発明のガス検出装置は、センサ素子の温度を昇温させるヒータに定常的に一定電圧を印可するので、昇温させるのに非常に時間がかかることを課題とするものである。
【解決手段】 センサ素子2と、ヒータ3を昇温させるための定電圧回路4と、制御手段5とヒータ3に流れる電流を検出する電流検出手段6を有し、制御手段5はガスを検知するときのみヒータ3に通電するよう制御し、定電圧回路4の出力電圧は、センサ素子2がガスを検出するために必要な温度を保持するために最小限必要な電圧値よりも高い電圧値とする構成とし、また制御手段5は電流検出手段6の検出結果により定電圧回路4の電圧をオンオフさせてヒータ3に電圧を印可し温度を制御する構成としたので、より短時間で正確に昇温可能となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガス検出器の加熱制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の従来の一酸化炭素を検出するガス検出装置は、例えば特開昭63−78059号公報のように検出装置にヒータが備えられており、検出装置が安定して動作するようにしている。また、特開平11−6816号公報のようにパルス状の電圧を印可することで2つの温度領域で加熱制御されているものもある。さらに、小電力化のためにガスを検出するときのみパルス状の電圧を印可するものも考えられている。これを図8から図11により説明する。
【0003】まず、図8を用いてセンサ素子2について説明する。この例では、例えばアルミナのような耐熱性絶縁基板7に酸素イオン導電性を示す安定化ジルコニアのような固体電解質薄膜9を積層している。この安定化ジルコニア薄膜9上に一対の薄膜白金電極10a、10bを例えばスパッタリング法等で積層し、さらに白金電極の一方10bに白金触媒11を積層している。また、耐熱性絶縁基板7の裏面には白金をスパッタリングで生成したヒーター薄膜3を生成している。そして、このセンサ素子2により一酸化炭素を検出する。
【0004】次にセンサ素子2が一酸化炭素を検知する動作、作用について説明する。センサ素子2の白金触媒11を積層した白金電極10bの側では、一酸化炭素は白金触媒11の作用により酸素ガスと反応して二酸化炭素ガスとなり消耗して無くなるため、酸素分圧が上昇する。一方、白金電極10aの側では、一酸化炭素ガスと酸素ガスが共存しているため酸素分圧は相対的に低い。このため、白金電極10bの方が白金電極10aより酸素ガスの分圧は高くなり、安定化ジルコニア9の中を酸素イオンが移動し起電力が発生する。この起電力は一酸化炭素の濃度の対数値に略比例した値が得られる。
【0005】また、図9のブロック図に示すように、ガス検出装置14はセンサ素子2と定電圧回路15と制御回路16とからなり、定電圧回路15はヒータ3に電圧を印可しヒータ3を昇温させる。そして、センサ素子2は、安定した起電力を得るためにヒータ3により400℃〜500℃好ましくは450℃に温度制御されている。
【0006】図10に示すように、ガスを検出するときにはヒータ3にパルス状の矩形波が印可される。その結果、ヒータは図11に示すようなカーブを描き昇温する。そして、充分時間が経過し温度平衡状態に達したときに約450℃になるような電圧値にあらかじめ設定されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来のガス検出器ではセンサが一酸化炭素ガスを検知できる温度、つまり約450℃になるまでに時間がかかるという課題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は上記課題を解決するため、耐熱絶縁性基板と、前記耐熱絶縁性基板に積層した固体電解質薄膜と、前記固体電解質薄膜に積層した一対の白金電極薄膜と、前記白金電極薄膜の一方に積層した白金触媒と、前記白金電極と前記白金触媒と前記固体電解質とを昇温させるために耐熱絶縁性基板に積層したヒータの薄膜で構成されるセンサ素子と、前記ヒータを昇温させるための定電圧回路と、前記定電圧回路の電圧印可時間を制御する制御手段とを有し、ガスを検知するときにヒータを昇温するよう制御され、前記定電圧回路を複数回オンオフすることでヒータの温度を制御し、また前記定電圧回路の電圧値は、センサ素子がガスを検出するために必要な温度を保持するために最小限必要な電圧値よりも高い電圧値とする構成とした。
【0009】上記発明によれば、昇温時に高い電圧を印可して昇温させるので、より短時間で昇温可能となる。また適温になった時点でオンオフを切り替えて制御するので、ヒータの温度が過度に上昇することがない。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1にかかるガス検出装置は、耐熱絶縁性基板と、前記耐熱絶縁性基板に積層した固体電解質薄膜と、前記固体電解質薄膜に積層した一対の白金電極薄膜と、前記白金電極薄膜の一方に積層した白金触媒と、前記白金電極と前記白金触媒と前記固体電解質とを昇温させるために耐熱絶縁性基板に積層したヒータ薄膜で構成されるセンサ素子と、前記ヒータを昇温させるための定電圧回路と、前記定電圧回路の電圧印可時間を制御する制御手段とを有し、ガスを検知するときにヒータを昇温するよう制御され、前記定電圧回路を複数回オンオフすることでヒータの温度を制御し、また前記定電圧回路の電圧値は、センサ素子がガスを検出するために必要な温度を保持するために最小限必要な電圧値よりも高い電圧値とする構成とした。
【0011】そして、昇温時に高い電圧を印可して昇温させるので、より短時間で昇温可能となる。また適温になった時点でオンオフを切り替えて制御するので、ヒータの温度が過度に上昇することがない。
【0012】本発明の請求項2にかかるガス検出装置は、ヒータに流れる電流を検出する電流検出手段を有し、検出した電流値からヒータの温度を算出しその値から定電圧回路のオフ時間を決定する構成とした。
【0013】そして、適温の範囲で定電圧源のオンオフを切り替えて制御できるので、ヒータの温度が過度に上昇することがない。
【0014】本発明の請求項3にかかるガス検出装置は、第2の定電圧回路とヒータに流れる電流を検出する第2の電流検出手段を有し、第1の定電圧回路のオフ時間に、前記第2の定電圧回路により微弱電圧をヒータに印可し、そのときの電圧値と電流値から求められるヒータ抵抗値より温度を算出する構成とし、ヒータの温度が低下したら第1の定電圧回路をオンするよう制御する構成とした。
【0015】そして、第1の定電圧回路がオフしている間も第2の定電圧回路と第2の電流検出手段によりヒータの温度を検出するので、より正確にヒータの温度を制御することができる。
【0016】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0017】(実施例1)図1は本発明の実施例1のガス検出装置1センサ素子2の側面断面図、図2はブロック図、図3はヒータ3に印可する電圧を示す図、図4は、ヒータ3の温度上昇カーブを示す図である。なお、本実施例において、従来例と同様の動作作用を示すものについては説明を省略する。
【0018】図2に示す、定電圧回路4の出力電圧はヒータ3にその電圧を定常的に印可すると450℃以上の温度になるような高めの値としている。
【0019】常温からヒータ3を昇温させるときは、制御手段5はまず定電圧回路4をオンしヒータ3が約450℃になるまで電圧を印可し続ける。その後、定電圧回路4をオンオフすることでヒータ3を約450℃に保つように制御される。そのとき、電流検出手段6によりヒータ3に流れる電流を検出しており、ヒータ3にかかる電圧値とヒータ3に流れる電流値からヒータ抵抗値を算出する。ヒータ3は白金抵抗体なのでその抵抗値は正の温度特性を持っており、算出したヒータ抵抗値よりヒータの温度が分かる。ヒータ3の温度は例えば450℃±10℃程度の範囲で制御される。そのときは、ヒータ3の温度が455℃になったときに定電圧回路4をオフし、445℃になったときに定電圧回路4とオンするよう制御する。このとき定電圧回路4をオフする時間は455℃から10K温度が低下する自然冷却による放熱を考慮し計算するものとする。そのときのヒータ3に印可される電圧波形を表したのが図3で、パルス状の矩形波がヒータに印可される。そのときのヒータ3の温度上昇カーブは図4に示すように常温から455℃までは連続的に上昇し、それ以降は図3の電圧パルスのオンオフに従って455℃から445℃の間を上下するよう制御されている。そして、ガスの検知は、ヒータ3の温度が約450℃に制御されている間に行う。
【0020】従って、以上説明したように、昇温時に高い電圧を印可して昇温させるので、より短時間で昇温可能となる。また適温になった時点でオンオフを切り替えて制御するので、ヒータ3の温度が過度に上昇することがない。
【0021】尚、本実施例では、ヒータの温度は例えば450℃±10℃程度の範囲で制御される例を説明したが、本発明はこれに限られることなくより狭い温度範囲例えば450℃±2℃程度の範囲になるようより細かく制御されても良い。
【0022】尚、図5のように耐熱絶縁性基板7の上にヒータ薄膜3、耐熱絶縁薄膜8、固体電解質薄膜9、白金電極薄膜10a、10b、白金触媒11の順に積層したセンサ素子でも同様の制御をすることで同様の効果があることは言うまでもない。
【0023】ここで説明した定電圧回路4とは例えば電池、または3端子レギュレター、1組、DC−DCコンバータ、AC電源と直流化回路の組み合わせなどである。
【0024】(実施例2)本発明実施例2が実施例1と異なる点は、図6に示すように、第2の定電圧回路12を有し、第1の定電圧回路4がオフしている間にヒータ3に微弱な電圧を印可する点である。このときに第2の定電圧回路12により印可される電圧値は図7に示すように第1の定電圧回路4による電圧値Aにたいして充分小さく、ヒータ3の温度上昇に寄与しない程度の小さな値Bとする。例えば第1の定電圧回路により3〜5V程度の電圧が印可されているとすると、第2の定電圧回路12による印可電圧は1V以下、特に0.1V前後が望ましい。
【0025】これにより第1の定電圧回路4がオフしている間もヒータ3の温度を検出することができる。ヒータ3の温度の検出の仕方は実施例1で説明したのと同じく、第2の電流検出手段13を備えており、電圧値と電流値から抵抗値を求める方法である。
【0026】従って、第1の定電圧回路4のオン時はもちろんのことオフ時もヒータ3の温度が検知できるのでより正確にヒータ3の温度制御が可能となる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように本発明の請求項1に係るガス検出装置は、昇温時に高い電圧を印可して昇温させるので、より短時間で昇温可能となる。また適温になった時点でオンオフを切り替えて制御するので、ヒータの温度が過度に上昇することがないという効果がある。
【0028】また、請求項2に係るガス検出装置は、適切な温度範囲で定電圧源のオンオフを切り替えて制御できる。
【0029】また、請求項3に係るガス検出装置は、第1の定電圧回路のオン時はもちろんのことオフ時もヒータの温度が検知できるのでより正確にヒータの温度制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1におけるガス検出装置の側面断面図
【図2】同ガス検出装置のブロック図
【図3】同ガス検出装置のヒータに印可する電圧を示す図
【図4】同ガス検出装置のヒータの温度上昇を示す図
【図5】実施例1における別の形態のガス検出装置の側面断面図
【図6】実施例2におけるガス検出装置のブロック図
【図7】同ガス検出器のヒータに印可する電圧を示す図
【図8】従来のガス検出装置の側面断面図
【図9】従来のガス検出装置のブロック図
【図10】従来のガス検出器のヒータに印可する電圧を示す図
【図11】従来のガス検出器のヒータの温度上昇を示す図
【符号の説明】
1 ガス検出装置
2 センサ素子
3 ヒータ
4 定電圧回路
5 制御手段
6 電流検出手段
7 耐熱絶縁性基板
9 固体電解質薄膜
10a、10b白金電極薄膜
11 白金触媒
12 第2の定電圧電源
13 第2の電流検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐熱絶縁性基板と、前記耐熱絶縁性基板に積層した固体電解質薄膜と、前記固体電解質薄膜に積層した一対の白金電極薄膜と、前記白金電極薄膜の一方に積層した白金触媒と、前記白金電極と前記白金触媒と前記固体電解質とを昇温させるために耐熱絶縁性基板に積層したヒータの薄膜で構成されるセンサ素子と、前記ヒータを昇温させるための定電圧回路と、前記定電圧回路の電圧印可時間を制御する制御手段とを有し、ガスを検知するときにヒータを昇温するよう制御され、前記定電圧回路を複数回オンオフすることでヒータの温度を制御し、また前記定電圧回路の電圧値は、センサ素子がガスを検出するために必要な温度を保持するために最小限必要な電圧値よりも高い電圧値とする構成とした一酸化炭素ガスを検出するガス検出装置。
【請求項2】 ヒータに流れる電流を検出する電流検出手段を有し、検出した電流値からヒータの温度を算出しその値から定電圧回路のオフ時間を決定する請求項1記載のガス検出装置。
【請求項3】 第2の定電圧回路とヒータに流れる電流を検出する第2の電流検出回路を有し、第1の定電圧回路のオフ時間に、前記第2の定電圧回路により微弱電圧をヒータに印可し、そのときの電圧値と電流値から求められるヒータ抵抗値より温度を算出する構成とし、ヒータの温度が低下したら第1の定電圧回路をオンするよう制御する請求項1記載のガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2002−318221(P2002−318221A)
【公開日】平成14年10月31日(2002.10.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−125445(P2001−125445)
【出願日】平成13年4月24日(2001.4.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】