説明

ガス流からの不純物減少のための方法及びシステム

【課題】触媒組成物に触媒毒性の供給ガス流中の広い範囲の微量の不純物を除去するための方法及びシステムを利用可能とする。
【解決手段】硫化カルボニル、二硫化炭素、金属カルボニル化合物、硫化水素及びシアン化水素、アンモニア、並びに砒素及び塩素化合物を供給ガスから減少させるための方法であって、前記ガスを、活性炭を含む第一の精製剤、アルミナを含む第二の精製剤、酸化亜鉛を含む第三の精製剤、ゼオライト材料を含む第四の精製剤、並びに酸化亜鉛及び酸化銅を含む第五の精製剤に連続的に接触させるステップを含む前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス流、特に水素及び一酸化炭素が豊富なガス流に含まれる不純物減少のための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
水素及び一酸化炭素が豊富なガスは、一般に、合成ガスとして知られている。合成ガスはメタノール、ジメチルエーテル、アンモニアなどの化学物質の製造又はフィッシャー・トロプシュ合成のために有用な供給原料である。
【0003】
天然ガス及びナフサのような幾つかの供給源からの水蒸気改質による合成ガスの製造は当該分野において周知である。最近、天然ガス及び液体炭化水素源の供給力減少のため、石炭、石油コークス(petcoke)、バイオマス、及び、種々の性質を有する廃棄物などの、固体及び液体燃料のガス化を用いた合成ガス製造への関心が高くなっている。
【0004】
ガス化により製造された合成ガスの使用に伴う問題は、次に続くガスから化学物質への転化において使用される特定の触媒に対して毒作用 を及ぼす比較的高い含有量の不純物である。
【0005】
触媒毒性の 混入物質は主に硫黄化合物、特に硫化カルボニル、金属カルボニル、シアン化水素と共に二硫化炭素及び硫化水素、アンモニア、並びに砒素及び塩素化合物 を含む。
【0006】
これらの化合物は、触媒活性物質として例えば銅、亜鉛若しくはゼオライトを含む触媒を、金属硫化物、シアン化物、砒化物及び 塩化物を形成することで、不可逆に被毒させる。
【0007】
下流の触媒の深刻な被毒を防止するためには、合成ガス中の混入物質の含有量を、低ppb範囲、好ましくは10ppbより低い量にまで実質的に減少させなければならない。
【0008】
合成ガス中の大量の硫化水素は、工業的プロセスにおいて、物理的溶媒として有機化合物を使用する既知のSelexol及びRectisolプロセスや、化学的溶媒としてモノエタノールアミン(MEA)及びメチルジエタノールアミン(MDEA)プロセスのようなアルカノールアミンを使用するアミン洗浄プロセスなどの、化学的若しくは物理的溶媒による洗浄プロセスによって、標準的には、ppmの範囲にまで減少される。
【0009】
さらに、ガス流からの微量の硫黄化合物の削減も当該分野において既知である。
【0010】
欧州特許出願公開第320979号A2明細書には、銅−亜鉛脱硫剤の使用により硫黄含有量を5ppbより小さくする炭化水素流の脱硫が開示されている。
【0011】
硫化水素の除去のための、クロム、鉄、コバルト、銅、カドミウム、水銀又は亜鉛アルミナスピネルの吸着剤としての使用は、米国特許第4263020号明細書から既知である。
【0012】
酸化鉄ベースの材料を有する単一保護床中で、合成ガス流から硫化カルボニル、硫化水素及びシアン化水素を2ppb未満まで除去する方法は、国際公開第2007/093225号に開示されている。この文献はさらに、同時又は連続的な酸化亜鉛での処理によるシアン化水素、硫化水素及びアンモニアの量の削減についても開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】欧州特許出願公開第320979号A2明細書
【特許文献2】米国特許第4263020号明細書
【特許文献3】国際公開第2007/093225号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
先行文献には、供給ガスの化学物質への転化 のためのその後の触媒プロセスにおいて触媒毒となる供給ガス中の全ての不純物の完全な除去は教示されていない。
【0015】
従って、本発明の主な目的は、下流の触媒組成物に触媒毒性の 供給ガス流中の広い範囲の微量の不純物を除去するための方法及びシステムを利用可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この主目的に沿って、本発明は、硫化カルボニル、金属カルボニル、二硫化炭素、硫化水素、シアン化水素、アンモニア、並びに砒素及び塩素化合物を供給ガスから減少させるための方法であって、
前記ガスを、活性炭を含む第一の精製剤、アルミナを含む第二の精製剤、酸化亜鉛を含む第三の精製剤、ゼオライト材料を含む第四の精製剤、並びに酸化亜鉛及び酸化銅を含む第五の精製剤に連続的に接触させるステップを含む前記方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
活性炭は、アルミナを含む精製剤に接触させる前に、触媒毒性の 化合物の一部を吸着させることによって供給ガスから除去するために必要である。これには複数の点で利点がある。活性炭は比較的安価な材料であり、そして使用済み材料を容易に新しい活性炭材料に置き換えることができる。硫化水素及びアンモニアの収着によって、第二の床上で生じる加水分解反応の平衡が右に傾き、それにより、反応装置の効率が改善する:
(1)COS+HO=CO+H
(2)CS+2HO=CO+H
(3)HCN+HO=CO+NH
【0018】
活性炭へのカルボニル化合物の吸着によって、より高価な酸化亜鉛を含む精製剤を有する後の床における硫化水素及び砒素の除去のためのより高価な材料を節約する。さらに、塩素の部分吸収によって、後の床における特定の吸収剤の使用を最小限とする。
【0019】
第二の床において、硫化カルボニル、二硫化炭素及びシアン化水素は、各々、アルミナ上で、平衡反応(1)〜(3)によって、硫化水素とアンモニアに加水分解される。
【0020】
上記反応により形成された硫化水素は、酸化亜鉛を有する後に続く床において除去されなければならない。
【0021】
カルボニル及びシアニド化合物の加水分解に加えて、同様に供給ガス中に存在する塩素化合物がアルミナを含む精製剤によって吸収される。
【0022】
プロセスへの供給ガス中に存在する硫化水素および上記に述べた先行する処理における加水分解中に形成した硫化水素の除去のための第三の亜鉛含有精製剤に、第二の精製剤からの加水分解流出物が送られる。水素吸収に加えて、酸化亜鉛含有精製剤は、上記に示した平衡反応(1)によって加水分解されなかった残留量の硫化カルボニルを除去する。
【0023】
第一の精製剤への入口における供給ガスに含まれるアンモニアと、第二の精製剤との接触によって反応(3)で形成されたアンモニアの量が、ゼオライト材料を含む第四の精製剤と接触により吸着される。一般に、モルデナイト及びクリノプチロライトのような天然に生ずるゼオライト、並びに、SM−20、ZSM−5及びY−ゼオライトのような合成ゼオライトなどの全ての酸性ゼオライトがアンモニアの減少に適している。
【0024】
供給ガス中の砒素化合物は、第五の精製剤によりCuAs及びZnAsを形成することにより、捕捉される。
【0025】
上記で開示された金属化合物に加えて、精製剤は、さらなる化合物で促進されても良い。例えば、第二の剤中には、1〜40重量%の炭酸カリウムを含むことが好ましい。第三の剤は20重量%までの酸化銅を含んでいても良く、第五の剤は15重量%までのアルミナを含んでいても良い。
【0026】
これまでに述べたように、本発明の方法は、合成ガス中の微量の有害 不純物を減少させるように設計されている。この目的を達成するために、本発明における「減少」の意味するところが、第一の精製剤への入口における供給ガス中でのppm範囲から、第五の精製剤の出口での低ppb範囲までの不純物量の減少であることに留意すべきである。
【0027】
本発明の方法によれば、例えば、硫化水素のような硫黄化合物の大量除去は、第一の精製剤の上流で、化学的又は物理的溶媒による供給ガスの慣用の洗浄により行っても良い。
【0028】
精製剤は、固定床として配置することが好ましい。床番号1、3及び4のように吸着精製を行う場合、 剤は二つの並列する床に配置することができる。これにより、精製プロセスの中断なしに、不純物の脱着又は使用済み剤から新しい剤への交換による使用済み剤の再生が可能となる。
【0029】
使用済み精製剤の再生は、加熱、化学反応、又は単なる交換によって行うことができる。
【0030】
本発明は、さらに、合成ガスからの混入物質を減少させるためのシステムを提供し、当該システムは、活性炭を含む精製剤を有する第一の床、アルミナを含む精製剤を有する第二の床、酸化亜鉛を含む精製剤を有する第三の床、ゼオライト材料を含む精製剤を有する第四の床、並びに、酸化亜鉛及び酸化銅を含む精製剤を有する第五の床を連続的に含む。
【0031】
システムの種々の精製剤の機能及び各々の剤に任意付加成分として含まれる促進剤の含有量は、すでに上記に記載した。
【0032】
本発明のシステムにおいては、第一、第三及び第四の床が、二つの並列する床の形で二つあってもよい 。
【0033】
20〜260℃の温度及び140barまでの圧力で実施することが好ましい第一の床における第一の精製剤を除いて、本発明の方法とシステムは、200〜250℃の温度及び15〜140barの圧力で実施することが好ましい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化カルボニル、二硫化炭素、金属カルボニル化合物、硫化水素及びシアン化水素、アンモニア、並びに砒素及び塩素化合物を供給ガスから減少させるための方法であって、
前記ガスを、活性炭を含む第一の精製剤、アルミナを含む第二の精製剤、酸化亜鉛を含む第三の精製剤、ゼオライト材料を含む第四の精製剤、並びに酸化亜鉛及び酸化銅を含む第五の精製剤に連続的に接触させるステップを含む前記方法。
【請求項2】
第二の精製剤が、炭酸カリウムをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第三の精製剤が、酸化銅をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第四の精製剤が、酸性ゼオライトから成る請求項1に記載の方法。
【請求項5】
第五の精製剤が、アルミナをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第一の精製剤に前記ガスを接触させる前に、化学的又は物理的溶媒による洗浄ステップをさらに含む、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
混入物質を合成ガスから減少させるためのシステムであって、
活性炭を含む精製剤を有する第一の床、アルミナを含む精製剤を有する第二の床、酸化亜鉛を含む精製剤を有する第三の床、ゼオライト材料を含む精製剤を有する第四の床、並びに、酸化亜鉛及び酸化銅を含む精製剤を有する第五の床を連続的に含む前記システム。
【請求項8】
第二の精製剤が、炭酸カリウムをさらに含む請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
第三の精製剤が、酸化銅をさらに含む請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
第四の精製剤が、酸性ゼオライトから成る請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
第五の精製剤が、アルミナをさらに含む請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
少なくとも第一、三及び四床が、それぞれ二つの並列の床として配列されている、請求項7〜11の何れか一項に記載のシステム。

【公開番号】特開2010−47469(P2010−47469A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−186944(P2009−186944)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(590000282)ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット (50)
【Fターム(参考)】